説明

偏光性積層体とその製造方法

【課題】衝撃に対し強い、偏光度の高い、ソルベントクラックの起こりにくい、穴あけ加工しても微細クラックの発生しにくい偏光性積層体、例えば打撃に強くてより安全性の高い、且つ眩しさをより効果的に防止可能なゴーグル、サングラス、度付きサングラス類、シールド類を得る。
【解決手段】ほぼ同じ厚さの2枚の保護シートと、それらに挟持された偏光子シートとからなり、且つ、保護シートと偏光子シートの間が接着されている偏光性積層体において、保護シートがポリアミド系樹脂シート、またはポリウレタン系樹脂シートのいずれかであり、且つ、光学レンズとしての機能を有することを特徴とする偏光性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃に強い偏光性積層体を提供する技術に関する。なかでも、ゴーグル、サングラス、度付きサングラス類、シールド類に適する偏光性能のある光学レンズを提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スキー、スノーボード、アイススケート、ヨット、ボート、バイク、オートバイのようなスポーツ分野や、一般製造業、建築土木などの産業分野、普通の屋外生活でも、直射光や反射光による眩しさを防止すると共に、風、雪、雨、海水、水、砂、薬品、異物などから眼を保護する目的で、偏光機能を持つ樹脂製レンズをはめたゴーグルやめがね類が使用されている。
【0003】
従来からあった偏光機能を持つ樹脂製レンズの一つの態様として、レンズをキャスト成形する際に、偏光子シートを挿入したモールド内に原料モノマーを充填し、重合する方法でつくるキャスト成形法偏光レンズがある。キャスト成形法の代表的な偏光レンズには、偏光性CR39レンズがある。
【0004】
また、偏光機能を持つ樹脂製レンズのもう一つの態様として、2枚のポリカーボネート保護シートの間に偏光子シートを挟持したポリカーボネート製偏光板をレンズ状に曲げ加工し、金型にインサートして、レンズの凹面側へ、さらにポリカーボネート樹脂層を熱接着するインサート射出成形法の偏光性ポリカーボネートレンズがある(特開平8−52817号公報)。
【0005】
また、インサート射出成形法の一つの態様として、アセチルセルロース系保護シートでつくったアセチルセルロース系偏光板やポリカーボネート偏光板の片面に透明ナイロン樹脂シートやポリウレタン樹脂シートを接着し、曲げ加工したものへ、さらに透明ナイロン樹脂やポリウレタン樹脂をインサート射出成形する偏光性透明ナイロンレンズや偏光性ポリウレタンレンズがある(特開2002−189199号公報)。
【特許文献1】特開平8−52817号公報
【特許文献2】特開2002−189199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏光性CR39レンズのようなキャスト法偏光性レンズは一般に耐衝撃強度が弱い欠点がある。その欠点を補う目的で造られるようになったのが偏光性ポリカーボネートレンズである。
【0007】
しかし、偏光性ポリカーボネートレンズにも、界面活性剤やベンゼン、トルエンなど多くの有機薬品に弱い欠点があった。その代表は、有機溶剤などと接触した時に見られるソルベントクラックである。ソルベントクラックは、レンズの外観を損ない、耐衝撃強度を弱める。
【0008】
また、偏光性ポリカーボネートレンズには、レンズを穴あけ加工すると、穴の周囲に微細なクラックが発生する問題もあった。
【0009】
特開2002−189199号公報に見られる偏光性透明ナイロンレンズや偏光性ポリウレタンレンズは、アセチルセルロース系保護シートの耐衝撃性の低さや耐水性の低さ、ならびに、穴あけ加工時の穴近辺に発生する保護シートの微細クラックの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決する本発明の技術手段は、ほぼ同じ厚さの2枚の保護シートと、それらに挟持された偏光子シートとからなり、且つ、保護シートと偏光子シートの間が貼着されている偏光性積層体において、保護シートがポリアミド系樹脂シート、またはポリウレタン系樹脂シートのいずれか、より好ましくは、延伸倍率1.05〜4倍の範囲で調製されたポリアミド系樹脂シート、またはポリウレタン系樹脂シートのいずれかであり、且つ、光学レンズとしての機能を有することにある。
【0011】
本発明の他の技術手段は、上記偏光性積層体が曲げ加工されていることにある。
【0012】
本発明の他の技術手段は、曲げ加工された上記偏光性積層体の凹面側に、ポリアミド系樹脂成形体、またはポリウレタン系樹脂成形体が貼着または熱融着されていることにある。
【0013】
本発明の他の技術手段は、曲げ加工された上記偏光性積層体の凹面側に、ポリアミド系樹脂成形体、またはポリウレタン系樹脂成形体が射出成形されていることにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、衝撃に対して強い、偏光度の高い、界面活性剤などの有機薬品に対してソルベントクラックが起こりにくい、穴あけ加工しても穴の周辺に微細なクラックが発生しにくい偏光性積層体とその製造方法を提供できる。本品を用いれば、打撃に強くてより安全性の高い、且つ眩しさをより効果的に防止可能なゴーグル、サングラス、度付きサングラス類、シールド類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の偏光性積層体は、偏光子シートを2枚の保護シートで挟持する積層構造をとる。
【0016】
偏光子シートは、通常、シート厚さが0.15mm以下で均一な厚みのポリビニルアルコールの一軸延伸シートである。ポリビニルアルコール偏光子シートは、延伸する前の未延伸段階のシートにヨウ素または二色性染料を吸着(ドーピング)させ、ホウ酸や金属イオンを添加した温水中で一軸方向に数倍の倍率で延伸して造られる。
【0017】
ヨウ素ドーピング法は染料ドーピング法に比べ、偏光子シートに固有の着色を与えることが少ないうえ、高い偏光度が得られやすいが、反面、耐熱性が劣る。染料ドーピング法は、より高い耐熱性を持つが、ドーピング用染料固有の色相が偏光子シートに現れ、可視光透過率が低下しやすい。
【0018】
本発明では、偏光子シートの製法として、ヨウ素ドーピング法と染料ドーピング法のいずれでもよいが、耐熱性の高い染料ドーピング法がより推奨される。
【0019】
本発明の保護シートに用る樹脂は、耐衝撃強度が高く、透明性の高い樹脂が好ましい。なかでも、ポリアミド系樹脂とポリウレタン系樹脂が、ソルベントクラック耐性と穴あけ加工時の微細クラック耐性の面から、とくに好ましい。
【0020】
本発明で好ましく用いられるポリアミド系樹脂はアミノ基とカルボキシル基の縮合重合体であり、シートへの加工の容易さから熱可塑性であることが好ましい。
【0021】
熱可塑性ポリアミド系樹脂を得るためのジアミン成分としては、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、3,3−ジメチルー4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、トリメチルヘキサメチレンジアミンなど、また、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
【0022】
また、εカプロラクタムなどラクタム類の開環重縮合物も、熱可塑性ポリアミド系樹脂を作ることができる。
【0023】
こうしたポリアミド系樹脂として、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12や、いわゆる透明ナイロンがある。
【0024】
なかでも、保護シートとして測定したヘイズ値が2%以下、好ましくは1.5%以下で、かつ、ISO868で測定したショアーA硬度が75以上、好ましくは80以上であるポリアミド系樹脂が本発明に適する。
【0025】
ヘイズ値が2%を超えると、本発明の偏光性積層体の透明性を損なう傾向がある。また、ショアーA硬度が75未満では、偏光性積層体の表面硬度が弱くなり、傷が付きやすくなる。また、偏光性積層体の表面をハードコート処理した場合でも、ショアーA硬度が75未満では、十分な表面硬度を与えにくい傾向がある。
【0026】
こうしたヘイズ値とショアーA硬度を満足するポリアミド系樹脂として、非晶性ないし微結晶性の透明ナイロンがあり、エムス(EMS-CHEMIE)社のグリルアミド(GRILAMID)TR55、グリルアミドTR90、グリルアミドTR90UV、またデグッサ(DEGUSSA)社のトロガミド(TROGAMID)CX7323、さらにはアーケマ(ARKEMA)社のリルサン(RILSAN)CLEAR G350などを例示できる。
【0027】
本発明で好ましく用いられるポリウレタン系樹脂は、イソシアネート基と水酸基の付加重合体であり、シートへの加工の容易さから熱可塑性であることが好ましい。ジイソシアネートと分子内に水酸基を2つ持つ化合物の直鎖状ポリウレタンが好ましく用いられる。
【0028】
こうしたポリウレタンを得るためのジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、メタキシレンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添TDI、水添MDIなどの脂肪族ジイソシアネート類がある。
【0029】
また、分子内に水酸基を2つ持つ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパングリコール、1,4−ブタングリコール、1,6−ヘキサングリコールなどの脂肪族系グリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系グリコール類、カプロラクトン系、アジペート系、コポリエステル系などのエステル系グリコール類、カーボナート系グリコール類、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族環含有グリコール類などがある。
【0030】
直鎖状ポリウレタンとしては、なかでも、保護シートとして測定したヘイズ値が2%以下、好ましくは1.5%以下で、かつ、ISO868で測定したショアーA硬度が75以上、好ましくは80以上であるポリウレタンが本発明に適する。
【0031】
ヘイズ値が2%を超えると、偏光性積層体の透明性を損なう傾向がある。また、ショアーA硬度が75未満では、偏光性積層体の表面硬度が弱くなり、傷が付きやすくなる。偏光性積層体の表面をハードコート処理した場合でも、ショアーA硬度が75未満では、十分な表面硬度を与えにくい傾向がある。
【0032】
こうしたヘイズ値とショアーA硬度を満足するポリウレタン系樹脂としては、芳香族ジイソシアネート類や脂肪族ジイソシアネート類とポリエーテル系グリコール類、ポリエステル系グリコール類とのポリウレタンを挙げることができる。
【0033】
その一例として、BASF社のポリエステル系ポリウレタン エラストラン(ELASTOLLAN)ET590、エラストランET595、エラストランET598や同社のポリエーテル系ポリウレタンなどを例示できる。
【0034】
本発明での用いる保護シートは、上記したようなポリアミド系樹脂、あるいはポリウレタン系樹脂の厚さ0.05〜1mm、好ましくは0.1〜0.9mmのシートである。厚さが0.05mm以下では偏光性積層体の強度が弱くなりやすい。また、厚さが1mmを超えると、偏光性積層体を球面などへ曲げ加工する場合に、加工しにくくなる傾向がある。
【0035】
かかる保護シートは、溶媒キャスト法や溶融プレス法や押し出し成形法で造ることができる。分子配向性が実質的に無いことでは、溶媒キャスト法と溶融プレス法が好ましいが、生産性の低い問題がある。生産性を考えれば、押し出し成形法が好ましい。
【0036】
押し出し成形法の一つのありようを述べる。横長の口金(スリット)から溶融押し出しした樹脂を、把持装置あるいは引き取りロールに受け、把持装置で2軸方向に、あるいは引き取りロールで1軸方向に拡張しながら、あるいは拡張せずに製膜する方法である(Tダイ法)。
【0037】
2軸方向に拡張する方法は、製膜装置が大掛かりになり、かつ、厚みや樹脂の分子配向性をコントロールしにくい傾向があり、1軸方向の引き取りが推奨される。
【0038】
1軸の押し出し成形法は、スリットから吐出した溶融樹脂を数本の引き取りロールで順次冷却しつつ、長尺シートにする方法である。最後は、ロール状に巻き取るか、裁断する。
【0039】
シート厚みと分子配向性は、溶融樹脂をうける最初のロールの引き取り速度vと最終ロールの引き取り速度Vでコントロールできる。
【0040】
すでにできあがった未延伸シートをバッチワイズ方式で延伸する場合は、未延伸シートの繰り出し速度vと最終ロールの引き取り速度Vでコントロールできる。
【0041】
シート温度が樹脂のガラス転移温度以上であれば、Vがvより大きくても、破断を起こさずに長尺シートを造ることができる。今、V/vを延伸倍率とすると、本発明が好ましく適用されるのはV/vが1.05〜5、より好ましくは1.1〜4.5の場合である。
【0042】
V/vが5を超えるとシートが破断しやすくなったり、シートの幅方向の光学歪に斑がでやすくなったりする傾向がある。V/vが1.05未満では、シートの幅方向の光学歪に斑がでやすくなる傾向がある。光学歪の斑は、シートを2枚の偏光板の間にはさんむと、色むらとして観察される。
【0043】
本発明で用いるポリアミド系樹脂とポリウレタン系樹脂の保護シートには、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、調光色素などの色素類、帯電防止剤などが含まれていてもよい。
【0044】
本発明の偏光性積層体は、上記偏光子シートの両面に、上記ポリアミド系樹脂かポリウレタン系樹脂の保護シートを重ね合わせ、貼着することによって製造される。
【0045】
この時、貼着する保護シートは、両面がポリアミド系樹脂であってもよいし、ポリウレタン系樹脂であってもよい。また、ポリアミド系樹脂とポリウレタン系樹脂を片面ずつ貼着してもよい。
【0046】
貼着には、透明度が高く、経時的に黄変しにくく、耐熱性に優れた接着剤、または粘着剤を用いる。その例を挙げると、ポリウレタン系、ポリチオウレタン系、エポキシ系、酢酸ビニル系、アクリル系の接着剤、または粘着剤がある。
【0047】
これらの接着剤または粘着剤は、グラビアコーティング法、オフセットコーティング法など通常用いられている塗布方法により、保護シートまたは偏光子シートへ均一に塗布する。強度の低い偏光子シートの両面へ塗布するよりも、強度のある保護シートの片面に塗布する方が、作業性としては推奨される。
【0048】
接着剤層または粘着剤層の厚さは、1〜100μm、好ましくは1.5〜80μmである。接着剤層または粘着剤層の厚さが1μm未満では接合力が低く、100μmを超えると偏光性積層体の端面から接着剤や粘着剤がしみ出ることがある。
【0049】
貼付後の偏光性積層体は、径の大きいロールに巻き取るか、シート状に裁断する。偏光性積層体は、厚みがおよそ2mm程度以下のものになる。
【0050】
本発明の偏光性積層体をそのまま、あるいは曲げて、サングラスやゴーグルやシールドの光学レンズとして使用することができる。曲げる場合は、シリンダー状、あるいは球面状にするのが普通である。
【0051】
曲面形状には、シリンダー形状と球面形状が含まれる。シリンダー形状の場合は、事前の曲げ加工をしなくても、ゴーグルやシールドのレンズ嵌合溝にセットするだけでシリンダー形状にすることが可能な場合があるが、球面形状の場合は、事前の曲げ加工を必要とされる。
【0052】
曲げ加工は、偏光性積層体を事前に小シート片に裁断しておくとやりやすい。裁断した小シート片を球面形状あるいはシリンダー形状をした金型にセットし、ガラス転移温度以上の温度で熱プレスするか、ガラス転移温度以上の環境下で減圧吸引するなどして熱賦形する。
【0053】
いずれのケースでも、偏光性積層体の好ましい厚みは0.5〜2mm、より好ましくは1〜1.7mmである。
【0054】
偏光性積層体の厚みが0.5mm以下では、光学レンズとして強度が不足し、1.7mmを超えると、レンズ端部に行くほど増加するマイナスサイドの屈折力が目立つようになり、視覚上の歪みを生じやすくなる。
【0055】
本発明の一態様として、偏光性積層体を球面形状、あるいはシリンダー形状に曲げ加工し、その凹面側に、さらにポリアミド系樹脂成形体、またはポリウレタン系樹脂成形体を貼着する(接着法)、または熱融着する(熱融着法)、またはインサート射出成形して光学レンズにする場合がある。この目的に適する偏光性積層体の好ましい厚みは0.3〜1.4mm、より好ましくは0.4〜1.2mmである。
【0056】
この場合の偏光性積層体の厚みは、0.3mm以下では偏光性積層体を造りにくく、1.4mmを超えると、凹面側にさらにインサート射出成形する場合にレンズとして必要とされる射出成形層の厚みが薄くなり、射出成形がうまくいかないことがある。
【0057】
接着法は、曲げ加工した偏光性積層体の凹面側の形状と同じ形状の凸面側を備えたレンズ様成形体をあらかじめ射出成形するか、シートの曲げ加工で造っておき、透明度が高く、経時的に黄変しにくく、耐熱性に優れたポリウレタン系、ポリチオウレタン系、エポキシ系、酢酸ビニル系、アクリル系などの接着剤、または粘着剤で偏光性積層体の凹面側へ貼付する方法である。
【0058】
接着力を増すために、偏光性積層体とレンズ様成形体の接着面をプラズマ処理したりコロナ放電処理したり、酸アルカリ処理をすることがある。
【0059】
凹面側へ貼着するレンズ様成形体は、ポリアミド系樹脂、またはポリウレタン系樹脂であることが、耐衝撃強度やソルベントクラック耐性や、レンズの穴あけ加工時の微細なクラック耐性の面で好ましい。
【0060】
レンズ様成形体は、その部分のヘイズ値が2%以下、好ましくは1.5%以下で、かつ、ISO868で測定した樹脂のショアーA硬度が75以上、好ましくは80以上であることが推奨される。
【0061】
ヘイズ値が2%を超えると、光学レンズの透明性を損なう傾向がある。また、ショアーA硬度が75未満では、光学レンズの表面硬度が弱くなり、傷が付きやすくなる。また、できあがった光学レンズの表面をハードコート処理した場合でも、ショアーA硬度が75未満では、十分な表面硬度を与えにくい傾向がある。
【0062】
本発明の偏光性積層体を光学レンズとして使う場合、サングラスにしても、ゴーグルにしても、度付きレンズにしても、シールドにしても、打撃や飛来物などに対するとびぬけた抵抗力は必要とされないが、レンズが曲がりにくいこと、つまりレンズの腰が強いことは、それらへの抵抗力を増す。
【0063】
こうした観点から、レンズ様成形体に用いるポリアミド系樹脂、あるいはポリウレタン系樹脂は、ISO868で測定したショアーD硬度が65以上、好ましくは70以上であることが推奨される。
【0064】
あるいは、ISO178で測定した曲げ弾性率が1000MPa以上、好ましくは1100MPa以上であることが推奨される。
【0065】
ショアーD硬度が65未満の時、あるいは曲げ弾性率が1000MPa未満の時は、レンズが曲がりやすくなり、フレームの種類によっては、打撃などの外力によってフレームから脱落しやすくなる。
【0066】
本発明でもっとも好ましいレンズ様成形体用のポリアミド系樹脂、あるいはポリウレタン系樹脂は、ISO868で測定したショアーD硬度が65以上、好ましくは70以上、且つ、ISO178で測定した曲げ弾性率が1000MPa以上、好ましくは1100MPa以上の場合である。
【0067】
レンズ様成形体には、厚みが0.7mm以上、好ましくは0.8mm以上のものを用いることが推奨される。厚みが0.7mm未満では射出成形しにくいのと、耐衝撃強度に対する補強効果が足りないのとで、偏光性積層体に貼付する意味がうすれかねない。
【0068】
レンズ様成形体の全域にわたり同じ厚みである場合は、矯正度数の付かない光学レンズ(度なしレンズ)になる。しかし、光学レンズとしての厚みが1.7mmを超えると、たとえ球面形状にしても、レンズ端部に行くほど増加するマイナスサイドの屈折力が目立つようになり、視覚上の歪みを生じやすくなる。その場合の対応策として、レンズ端面にむけて、徐々に厚みを減らしてプラスサイドの屈折力をつけることによって、マイナス屈折力を消去することが好ましく行われる。
【0069】
レンズ様成形体に矯正度数を与える場合(度付きレンズを造る場合)は、レンズ様成形体の屈折力を調節、設計することによって、光学レンズの矯正度数を調節する。
【0070】
度付きレンズのうち、乱視レンズや累進屈折力レンズやバイフォーカルレンズのように度数に方向性のある場合は、偏光軸の方向とレンズ様成形体の度数の方向が適切な関係になるように貼着する。
【0071】
レンズ様成形体に用いる樹脂には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、調光色素などの色素類、帯電防止剤などが含まれてもよい。
【0072】
曲げ加工した偏光性積層体の凹面側にポリアミド系樹脂成形体、またはポリウレタン系成形体を熱融着する熱融着法は、生産性や精密性などから、基本的には特願平10−49707に示されるようなインサート射出成形法が好ましい。
【0073】
即ち、熱融着する面を内側に向けた偏光性積層体を金型の片面に配置し、樹脂層をインサート射出成形する方法である。なかでも、射出圧縮成形法は、金型の中に樹脂を低圧で射出した後、金型を高圧で閉じて樹脂に圧縮力を加える方法をとるため、成形体に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性を生じにくい。また、樹脂に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂を冷却することができるので、寸法精度の高い成形品が得られる。
【0074】
本発明でインサート射出成形に用いる樹脂は、保護シートのポリアミド系樹脂、またはポリウレタン系樹脂と熱融着する必要があることから、基本的には、ポリアミド系樹脂、またはポリウレタン系樹脂である。
【0075】
なかでも、熱融着側の保護シートと同じポリアミド系樹脂、またはポリウレタン系樹脂である場合は熱融着が容易であり、且つ、熱融着界面での屈折率差がでないため、界面での無用な反射を抑えられて、光学レンズとしてはより好ましくなる。
【0076】
ポリアミド系樹脂の保護シートにポリウレタン系樹脂を射出成形する場合、あるいは、ポリウレタン系樹脂の保護シートにポリアミド系樹脂を射出成形する場合も、熱融着できる場合がある。
【0077】
インサート射出成形する樹脂は、その部分のヘイズ値が2%以下、好ましくは1.5%以下で、かつ、ISO868で測定した樹脂のショアーA硬度が75以上、好ましくは80以上であることが推奨される。
【0078】
ヘイズ値が2%を超えると、光学レンズの透明性を損なう傾向がある。また、ショアーA硬度が75未満では、光学レンズの表面硬度が弱くなり、傷が付きやすくなる。また、光学レンズの表面をハードコート処理した場合でも、ショアーA硬度が75未満では、十分な表面硬度を得られにくい傾向がある。
【0079】
本発明の偏光性積層体は光学レンズとして使われる。接着法と同様、熱融着法においても、とくに打撃や飛来物など外力に対するとびぬけた抵抗力は必要とされないが、レンズが曲がりにくいこと、つまりレンズの腰が強いことは、それらへの抵抗力を増す。
【0080】
こうした観点から、インサート射出成形する樹脂は、ISO868で測定したショアーD硬度が65以上、好ましくは70以上であることが推奨される。
【0081】
あるいは、ISO178で測定した曲げ弾性率が1000MPa以上、好ましくは1100MPa以上であることが推奨される。
【0082】
ショアーD硬度が65未満の時、あるいは曲げ弾性率が1000MPa未満の時は、レンズが曲がりやすくなり、フレームの種類によっては、打撃などの外力によってフレームから脱落しやすくなる。
【0083】
本発明でもっとも好ましいインサート射出成形樹脂は、ISO868で測定したショアーD硬度が65以上、好ましくは70以上、且つ、ISO178で測定した曲げ弾性率が1000MPa以上、好ましくは1100MPa以上の場合である。
【0084】
また、インサート射出成形する樹脂部は、厚みが0.7mm以上、好ましくは0.8mm以上が推奨される。厚みが0.7mm未満ではインサート射出成形しにくいのと、耐衝撃強度に対する補強効果が足りないのとで、偏光性積層体に貼付する意味がうすれる可能性がある。
【0085】
インサート射出成形する樹脂部分の全域にわたり同じ厚みである場合は、接着法と同様、度なしレンズになる。しかし、光学レンズとしての厚みが1.7mmを超えると、接着法と同様、たとえ球面形状にしても、レンズ端部に行くほど増加するマイナスサイドの屈折力が目立つようになり、視覚上の歪みを生じやすくなる。その場合の対応策として、レンズ端面にむけて徐々に厚みを減らし、プラスサイドの屈折力をつけることによってマイナス屈折力を消去することが好ましく行われる。
【0086】
矯正レンズにする場合は、インサート射出成形する樹脂部分の屈折力をそのように調節、設計する。
【0087】
度付きレンズのうち、乱視レンズや累進屈折力レンズやバイフォーカルレンズのように度数に方向性のある場合は、接着法と同様、偏光軸の方向とインサート射出成形する樹脂部分の度数の方向が適切な関係になるように曲げ加工した偏光性積層体を金型にセットする。
【0088】
インサート射出成形する樹脂には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、調光色素などの色素類、帯電防止剤などが含まれてもよい。
【0089】
本発明の偏光性積層体は、サングラスや矯正レンズやゴーグル類やシールド類などの防眩用光学レンズとして用いられることが多い。そのため、好ましい実施態様としては、光学レンズとしての偏光度が50%以上、可視光透過率が10〜75%、なかでも15〜70%に調整することが推奨される。
【0090】
偏光度が50%を切ると、ぎらつき防止効果が弱くなり、また、可視光透過率が10%未満では、視界が暗すぎて行動の障害になりかねない。また、可視光透過率が75%を越えると、眩しさに対する緩和効果が低減する。
【0091】
可視光透過率は偏光子シートの偏光度によってコントロールできるほか、偏光子シートや保護シート、あるいはレンズ様成形体、あるいはインサート射出成形する樹脂部分、あるいは偏光子シートと保護シートを貼付する接着剤や粘着剤、あるいはレンズ様成形体の貼着用接着剤や粘着剤の中に染料、顔料等色素を含有させたり、染色したりする方法で補うことができる。
【0092】
それらに用いる色素は、染料、顔料いずれでも良いが、透明感の高さでは一般に染料の方が好ましい。一方、水、熱、光などに対する長期の耐久性面では、顔料の方が一般に好ましい。
染料、顔料の種類については、色あせなどに対する長期の耐久性能を持つものであれば特に限定しない。一般的には、アゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、オキサジン系染料などが含まれる。また顔料については、フタロシアニン系、キナクリドン系、アゾ系などの有機顔料、ウルトラマリンブルー、クロムグリーン、カドミウムイエローなどの無機顔料が含まれる。
【0093】
本発明の偏光性積層体を用いる光学レンズは、表面がハードコート加工されていることが好ましい。ハードコートとしては、シラン系、エポキシ系などの熱硬化型ハードコート、アクリル系、エポキシ系などの活性光線硬化型ハードコートなど一般に用いられているいずれのタイプのハードコートでも良い。
【0094】
ハードコートは通常0.5〜15μm程度の膜厚で付与するが、密着性向上等を目的に、アクリレート系などのプライマーコート層をコートした上にハードコート加工することがある。
【0095】
また、本発明の偏光性積層体を用いる光学レンズは、少なくともいずれかの側が反射防止加工されていることが好ましい。反射防止加工は、通常はハードコートの上へ真空蒸着法により、隣接層どうしでは互いに屈折率の異なる2〜8層程度の無機質膜を光学膜厚で積層するか、湿式法で1〜3層程度の有機膜を光学膜厚で積層する。
【0096】
また、本発明の偏光性積層体を用いる光学レンズは、少なくともいずれかの側が防曇加工されていることが好ましい。防曇加工は、ポリビニルアルコール系やポリビニルピロリドン系などの親水性樹脂や界面活性剤を、1〜50μm程度の膜厚で付与する。
【0097】
また、本発明の偏光性積層体を用いる光学レンズは、少なくともいずれかの側が、防汚加工されていることが好ましい。防汚加工は、通常は反射防止膜の指紋汚れなどの汚染を防止し、且つ、容易に拭き取れるようにすることを目的に、真空蒸着法や湿式法によって、フッ素系有機化合物を数10nmから10数μmオーダまでの膜厚で付与する。
【0098】
また、本発明の偏光性積層体を用いる光学レンズは、少なくともいずれかの側がミラー加工されていることが好ましい。ミラー加工は、ハードコートの上へ、真空蒸着法などにより、アルミニウムや銀、金、白金などの金属膜、あるいは金属酸化物膜などを付与する。
【0099】
次に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0100】
EMS社のTR90UV透明ナイロン(ショアーD硬度82、曲げ弾性率1530MPa)をTダイから押し出し、ロールで巻き取って未延伸長尺シートをつくった。
【0101】
このシートを165℃の雰囲気中で2.5倍に1軸延伸し(V/v=2.5)、最終厚み約600μmの透明ナイロンの保護シートを得た。
【0102】
ポリビニルアルコールフィルムを2色性染料でグレー色に染色し、染色浴のなかで1軸方向に5倍延伸し、緊張状態のまま乾燥して、厚さ150μmの偏光子を得た。
【0103】
ポリビニルアルコール偏光子を2枚の上記透明ナイロン保護シートにはさみ、ポリウレタン系接着剤で接着し、厚さ約1.45mmの偏光性積層体をつくった。得られた偏光性積層体の偏光度は97%、可視光透過率は33%である。
【0104】
上記偏光性積層体をプレス成形法で曲げ加工してレンズを得た。該レンズの凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、透明ナイロンの保護シートに由来する色むらは観察されなかった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されなかった。
【0105】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0106】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、次の方法で、界面活性剤によるソルベントクラックテストをした。即ち、コバ擦り後のレンズの端面を対角線に万力ではさみ、レンズに応力をかけ、端面に花王社の界面活性剤ファミリーフレッシュ(主成分はアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)を塗布し、50℃の環境に1週間おいた。界面活性剤の塗布部にソルベントクラックは発生しなかった。
【0107】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺にクラックは発生しなかった。
【実施例2】
【0108】
EMS社のTR90UV透明ナイロンをTダイから押し出し、ロールで巻き取って未延伸長尺シートをつくった。
【0109】
このシートを162℃の雰囲気中で3.2倍に1軸延伸し(V/v=3.2)、最終厚み300μmの透明ナイロンの保護シートを得た。
【0110】
ポリビニルアルコールフィルムを2色性染料でグレー色に染色し、染色浴のなかで1軸方向に5倍延伸し、緊張状態のまま乾燥して、厚さ150μmの偏光子を得た。
【0111】
ポリビニルアルコール偏光子を2枚の上記透明ナイロン保護シートにはさみ、ポリウレタン系接着剤で接着し、厚さ810μmの偏光性積層体をつくった。得られた偏光性積層体の偏光度は97%、可視光透過率は32%である。
【0112】
上記偏光性積層体をプレス成形法で曲げ加工してレンズ状積層体を得た。該レンズ状積層体の凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、透明ナイロンの保護シートに由来する色むらは観察されなかった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されなかった。
【0113】
上記レンズ状積層体の凸面側を凹金型にセットし、凹金型に設けた吸引孔により凹金型の成形面に吸引しておき、凸金型との間で成形用キャビティーを形成した。
【0114】
該レンズ状積層体の凹面側にポリアミド系樹脂成形体を熱融着するためにTR90UV透明ナイロンをインサート射出成形し、レンズ厚み約2.0mmの偏光性積層体をつくった。
【0115】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0116】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、実施例1の方法でソルベントクラックテストをしたが、界面活性剤の塗布部にソルベントクラックは発生しなかった。
【0117】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺にクラックは発生しなかった。
【実施例3】
【0118】
DEGUSSA社のTROGAMID CX7323透明ナイロン(ショアーD硬度81、曲げ弾性率1700MPa)をTダイから押し出し、ロールで巻き取って未延伸長尺シートをつくった。
【0119】
このシートを147℃の雰囲気中で4.0倍に1軸延伸し(V/v=4.0)、最終厚み320μmの透明ナイロンの保護シートを得た。
【0120】
ポリビニルアルコールフィルムを2色性染料でグレー色に染色し、染色浴のなかで1軸方向に5倍延伸し、緊張状態のまま乾燥して、厚さ150μmの偏光子を得た。
【0121】
ポリビニルアルコール偏光子を2枚の上記透明ナイロン保護シートにはさみ、ポリウレタン系接着剤で接着し、厚さ860μmの偏光性積層体をつくった。得られた偏光性積層体の偏光度は97%、可視光透過率は33%である。
【0122】
上記偏光性積層体をプレス成形法で曲げ加工してレンズ状積層体を得た。該レンズ状積層体の凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、透明ナイロンの保護シートに由来する色むらは観察されなかった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されなかった。
【0123】
上記レンズ状積層体の凸面側を凹金型にセットし、凹金型に設けた吸引孔により凹金型の成形面に吸引しておき、凸金型との間で成形用キャビティーを形成した。
【0124】
該レンズ状積層体の凹面側にポリアミド系樹脂成形体を熱融着するためにTROGAMID CX7323透明ナイロンをインサート射出成形し、レンズ厚み約2.2mmの偏光性積層体をつくった。
【0125】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0126】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、実施例1の方法でソルベントクラックテストをしたが、界面活性剤の塗布部にソルベントクラックは発生しなかった。
【0127】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺にクラックは発生しなかった。
【実施例4】
【0128】
BASF社のELASTOLLAN ET598熱可塑性ポリエステル系ポリウレタン(ショアーA硬度98)をTダイから押し出し、ロールで巻き取って未延伸長尺シートをつくった。
【0129】
このシートを90℃の雰囲気中で2.2倍に1軸延伸し(V/v=2.2)、最終厚み約300μmのポリウレタンの保護シートを得た。
【0130】
ポリビニルアルコールフィルムを2色性染料でグレー色に染色し、染色浴のなかで1軸方向に5倍延伸し、緊張状態のまま乾燥して、厚さ150μmの偏光子を得た。
【0131】
ポリビニルアルコール偏光子を2枚の上記ポリウレタン保護シートにはさみ、ポリウレタン系接着剤で接着し、厚さ820μmの偏光性積層体をつくった。得られた偏光性積層体の偏光度は97%、可視光透過率は34%である。
【0132】
上記偏光性積層体をプレス成形法で曲げ加工してレンズ状積層体を得た。該レンズ状積層体の凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、ポリウレタンの保護シートに由来する色むらは観察されなかった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されなかった。
【0133】
上記レンズ状積層体の凸面側を凹金型にセットし、凹金型に設けた吸引孔により凹金型の成形面に吸引しておき、凸金型との間で成形用キャビティーを形成した。
【0134】
該レンズ状積層体の凹面側にポリアミド系樹脂成形体を熱融着するためにTR90UV透明ナイロンをインサート射出成形し、レンズ厚み約2.0mmの偏光性積層体をつくった。
【0135】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0136】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、実施例1の方法でソルベントクラックテストをしたが、界面活性剤の塗布部にソルベントクラックは発生しなかった。
【0137】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺にクラックは発生しなかった。
【実施例5】
【0138】
EMS社のTR90UV透明ナイロンをTダイから押し出し、ロールで巻き取って未延伸長尺シートをつくった。
【0139】
このシートを162℃の雰囲気中で1.1倍に1軸延伸し(V/v=1.1)、最終厚み350μmの透明ナイロンの保護シートを得た。
【0140】
ポリビニルアルコールフィルムを2色性染料でグレー色に染色し、染色浴のなかで1軸方向に5倍延伸し、緊張状態のまま乾燥して、厚さ150μmの偏光子を得た。
【0141】
ポリビニルアルコール偏光子を2枚の上記透明ナイロン保護シートにはさみ、ポリウレタン系接着剤で接着し、厚さ810μmの偏光性積層体をつくった。得られた偏光性積層体の偏光度は97%、可視光透過率は33%である。
【0142】
上記偏光性積層体をプレス成形法で曲げ加工してレンズ状積層体を得た。該レンズ状積層体の凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、透明ナイロンの保護シートに由来する色むらは観察されなかった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されなかった。
【0143】
上記レンズ状積層体の凸面側を凹金型にセットし、凹金型に設けた吸引孔により凹金型の成形面に吸引しておき、凸金型との間で成形用キャビティーを形成した。
【0144】
該レンズ状積層体の凹面側にポリアミド系樹脂成形体を熱融着するためにTR90UV透明ナイロンをインサート射出成形し、レンズ厚み約2.0mmの偏光性積層体をつくった。
【0145】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0146】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、実施例1の方法でソルベントクラックテストをしたが、界面活性剤の塗布部にソルベントクラックは発生しなかった。
【0147】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺にクラックは発生しなかった。
【実施例6】
【0148】
DEGUSSA社のTROGAMID CX7323透明ナイロンをTダイから押し出し、ロールで巻き取って、厚さ約1mmの未延伸長尺シートをつくった(V/v=1.0)。
【0149】
ポリビニルアルコールフィルムを2色性染料でグレー色に染色し、染色浴のなかで1軸方向に5倍延伸し、緊張状態のまま乾燥して、厚さ150μmの偏光子を得た。
【0150】
ポリビニルアルコール偏光子を2枚の上記透明ナイロン保護シートにはさみ、ポリウレタン系接着剤で接着し、厚さ約2.3mmの偏光性積層体をつくった。得られた偏光性積層体の偏光度は97%、可視光透過率は34%である。
【0151】
上記偏光性積層体をプレス成形法で曲げ加工してレンズ状積層体を得た。該レンズ状積層体の凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、透明ナイロンの保護シートに由来する色むらは観察されたが気にならない程度であった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されたが気にならない程度であった。
【0152】
上記レンズ状積層体の凸面側を凹金型にセットし、凹金型に設けた吸引孔により凹金型の成形面に吸引しておき、凸金型との間で成形用キャビティーを形成した。
【0153】
該レンズ状積層体の凹面側にポリアミド系樹脂成形体を熱融着するためにTROGAMID CX7323透明ナイロンをインサート射出成形し、レンズ厚み約3.6mmの偏光性積層体をつくった。
【0154】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0155】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、実施例1の方法でソルベントクラックテストをしたが、界面活性剤の塗布部にソルベントクラックは発生しなかった。
【0156】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺にクラックは発生しなかった。
【実施例7】
【0157】
BASF社のELASTOLLAN ET590熱可塑性ポリエステル系ポリウレタン(ショアーA硬度90)をTダイから押し出し、ロールで巻き取って、厚さ約1mmの未延伸長尺シートをつくった(V/v=1.0)。
【0158】
ポリビニルアルコールフィルムを2色性染料でグレー色に染色し、染色浴のなかで1軸方向に5倍延伸し、緊張状態のまま乾燥して、厚さ150μmの偏光子を得た。
【0159】
ポリビニルアルコール偏光子を2枚の上記ポリウレタン保護シートにはさみ、ポリウレタン系接着剤で接着し、厚さ約2.3mmの偏光性積層体をつくった。得られた偏光性積層体の偏光度は97%、可視光透過率は33%である。
【0160】
上記偏光性積層体をプレス成形法で曲げ加工してレンズ状積層体を得た。該レンズ状積層体の凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、ポリウレタンの保護シートに由来する色むらは観察されたが気にならない程度であった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されたが気にならない程度であった。
【0161】
上記レンズ状積層体の凸面側を凹金型にセットし、凹金型に設けた吸引孔により凹金型の成形面に吸引しておき、凸金型との間で成形用キャビティーを形成した。
【0162】
該レンズ状積層体の凹面側にポリアミド系樹脂成形体を熱融着するためにTR90UV透明ナイロンをインサート射出成形し、レンズ厚み約3.7mmの偏光性積層体をつくった。
【0163】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0164】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、実施例1の方法でソルベントクラックテストをしたが、界面活性剤の塗布部にソルベントクラックは発生しなかった。
【0165】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺にクラックは発生しなかった。
【0166】
比較例
2枚のポリカーボネートシートの間にポリビニルアルコール製の偏光子を挟持した住友ベークライト社のポリカーボネート偏光板(厚さ約0.8mm、グレー色、偏光度98.5%、可視光透過率30%)をプレス成形法で曲げ加工してレンズ状積層体を得た。
【0167】
該レンズ状積層体の凹面側に1枚の偏光板をはさんで凹面側から透過光を観察したところ、ポリカーボネートの保護シートに由来する色むらは観察されなかった。また、凸面側に同様のことをして凸面側から観察しても色むらは観察されなかった。
【0168】
上記レンズ状積層体の凸面側を凹金型にセットし、凹金型に設けた吸引孔により凹金型の成形面に吸引しておき、凸金型との間で成形用キャビティーを形成した。
【0169】
該レンズ状積層体の凹面側にポリカーボネート成形体を熱融着するために宇部興産社のポリカーボネートをインサート射出成形し、レンズ厚み約2.0mmの偏光性積層体をつくった。
【0170】
ディッピング法により、厚さ4μmのシラン系熱硬化タイプのハードコート膜をレンズの両面に付与した。レンズ表面をスチールウール摩擦して表面硬度を観察したところ、十分な表面硬度を持ち、サングラスとして、光学的にも表面硬度的にも十分な機能を持っていた。
【0171】
ハードコート済みの上記レンズの端面をコバ擦り機で研磨し、実施例1の方法でソルベントクラックテストをしたところ、界面活性剤の塗布部にソルベントクラックが多数発生した。
【0172】
また、ハードコート済みの上記レンズを直径1mmの電気ドリルで穴あけ加工した。穴の周辺に微細なクラックが発生することがあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ同じ厚さの2枚の保護シートと、それらに挟持された偏光子シートとからなり、且つ、保護シートと偏光子シートの間が接着されている偏光性積層体において、保護シートがポリアミド系樹脂シート、またはポリウレタン系樹脂シートのいずれかであり、且つ、光学レンズとしての機能を有することを特徴とする偏光性積層体。
【請求項2】
偏光性積層体が曲げ加工されていることを特徴とする請求項1記載の偏光性積層体。
【請求項3】
曲げ加工された偏光性積層体の凹面側に、ポリアミド系樹脂成形体、またはポリウレタン系樹脂成形体が貼着または熱融着されていることを特徴とする請求項2記載の偏光性積層体。
【請求項4】
曲げ加工された偏光性積層体の凹面側に、ポリアミド系樹脂、またはポリウレタン系樹脂を射出成形することを特徴とする請求項2または3記載の偏光性積層体の製造方法。
【請求項5】
ほぼ同じ厚さの2枚の保護シートと、それらに挟持された偏光子シートとからなり、且つ、保護シートと偏光子シートの間が接着されている偏光性積層体において、保護シートが延伸倍率1.05〜4倍の範囲で調製されたポリアミド系樹脂シート、またはポリウレタン系樹脂シートのいずれかであり、且つ、光学レンズとしての機能を有することを特徴とする偏光性積層体。
【請求項6】
偏光性積層体が曲げ加工されていることを特徴とする請求項5記載の偏光性積層体。
【請求項7】
曲げ加工された偏光性積層体の凹面側に、ポリアミド系樹脂成形体、またはポリウレタン系樹脂成形体が貼着または熱融着されていることを特徴とする請求項6記載の偏光性積層体。
【請求項8】
曲げ加工された偏光性積層体の凹面側に、ポリアミド系樹脂、またはポリウレタン系樹脂を射出成形することを特徴とする請求項6または7記載の偏光性積層体の製造方法。

【公開番号】特開2009−294445(P2009−294445A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148083(P2008−148083)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)
【Fターム(参考)】