説明

偏光板およびその製造方法

【課題】偏光フィルムや位相差フィルム等の他の光学フィルムのクラックや剥がれ、光抜けが抑制され、寸法変化の小さい偏光板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも偏光フィルムと保護フィルムを備える偏光板であって、前記偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが積層されており、前記保護フィルムとは反対側の最表面に粘着剤層が設けられており、前記偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下であり、前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以上であることを特徴とする、偏光板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、液晶表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として、広く用いられている。かかる偏光板として、従来より、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを接着したものが使用されているが、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話などモバイル機器への展開、さらには大型テレビへの展開などに伴い、薄肉軽量化が求められている。
【0003】
特許文献1(特開2008−165199号公報)には、従来の偏光フィルム(直線偏光板)に位相差フィルムを積層させてなる楕円偏光板を、貯蔵弾性率の低い軟らかい粘着剤を用いて液晶セルに貼合することにより、偏光フィルムの熱収縮等に起因する位相差フィルムのクラックを防止する方法が開示されている。しかし、弾性率の低い粘着剤を使用しているため、偏光板の寸法変化が大きいという問題があった。
【0004】
また、特許文献2(特開2002−122739号公報)には、偏光フィルムの保護層のMD方向の線膨張係数と偏光板を構成する粘着剤の弾性率の積を特定の範囲にすることで、光抜けの現象を緩和させる方法が開示されている。しかし、この方法も偏光フィルムの膨張・収縮を、線膨張率の低い保護フィルムと弾性率の低い粘着剤を用いて緩和しているため、偏光板の寸法変化が大きいという問題があった。
【0005】
また、特許文献3(国際公開第2009/069799号)には、偏光フィルムの片面に透明保護層(トリアセチルセルロースフィルム)を積層てなる偏光板に、さらに位相差板を積層してなる円偏光板を、貯蔵弾性率の高い粘着剤を使用して液晶セルに貼合することにより、液晶セルに貼り合わせて高温環境下に晒されたときに、偏光フィルムの端部に発生しやすい盛り上がりや光漏れを抑制する方法が開示されている。しかし、この方法で偏光板の寸法は抑制できたとしても、偏光フィルムの収縮により、位相差フィルム等の光化学フィルムにクラックが生じる懸念は残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−165199号公報
【特許文献2】特開2002−122739号公報
【特許文献3】国際公開第2009/069799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、偏光フィルムや位相差フィルム等の他の光学フィルムのクラックや剥がれ、光抜けが抑制され、寸法変化の小さい偏光板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも偏光フィルムと保護フィルムを備える偏光板であって、
前記偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが積層されており、
前記保護フィルムとは反対側の最表面に粘着剤層が設けられており、
前記偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下であり、
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以上であることを特徴とする、偏光板である。
【0009】
前記偏光フィルムの前記保護フィルムとは反対側に少なくとも1枚の光学フィルムを備え、最も前記偏光フィルムから遠い前記光学フィルムの前記偏光フィルムとは反対側の面に前記粘着剤層が設けられていることが好ましい。
【0010】
前記偏光フィルムを、前記偏光フィルムの吸収軸方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに2.5N以下であることが好ましい。また、前記偏光フィルムの厚みが10μm以下であることが好ましい。
【0011】
前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率が0.15MPa以上であることが好ましい。また、前記光学フィルムが保護フィルムまたは位相差フィルムであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、液晶セルの少なくとも片側に、前記粘着剤層を介して上記の偏光板が貼合された液晶表示装置にも関する。
【0013】
また、本発明は、基材フィルムの一方の面にプライマー溶液を塗工してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、
前記プライマー層の上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記ポリビニルアルコール系樹脂層をこの順で備えた積層フィルムを得る、ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程と、
前記ポリビニルアルコール系樹脂層に偏光フィルム化処理を施して偏光フィルムとし、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記偏光フィルム層をこの順で備えた偏光性積層フィルムを得る、偏光フィルム化処理工程と、
前記偏光性積層フィルムの前記基材フィルムとは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程と、
前記基材フィルムを偏光性積層フィルムから剥離する基材フィルム剥離工程と、
前記保護フィルムとは反対側の最表面に粘着剤層を積層する粘着剤層積層工程と、をこの順で含む、偏光板の製造方法であって、
前記偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下であり、
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以上であることを特徴とする、偏光板の製造方法にも関する。
【0014】
前記基材フィルム剥離工程と前記粘着剤層積層工程との間に、
前記基材フィルムが剥離された面側に少なくとも一枚の光学フィルムを積層する光学フィルム積層工程を含むことが好ましい。
【0015】
前記粘着剤積層工程において、前記偏光フィルムから最も遠い前記光学フィルムの前記偏光フィルムとは反対側の面に前記粘着剤層を積層することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、基材フィルムの一方の面にプライマー溶液を塗工してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、
前記プライマー層の上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記ポリビニルアルコール系樹脂層をこの順で備えた積層フィルムを得る、ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程と、
前記ポリビニルアルコール系樹脂層に偏光フィルム化処理を施して偏光フィルムとし、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記偏光フィルム層をこの順で備えた偏光性積層フィルムを得る、偏光フィルム化処理工程と、
前記偏光性積層フィルムの前記基材フィルムとは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程と、
前記基材フィルムを偏光性積層フィルムから剥離する基材フィルム剥離工程と、
前記保護フィルムとは反対側の最表面に、粘着剤層付き光学フィルムを粘着剤層側が最表面となるように積層する粘着剤層付き光学フィルム積層工程と、をこの順で含む、偏光板の製造方法であって、
前記偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下であり、
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以上であることを特徴とする、偏光板の製造方法にも関する。
【0017】
前記基材フィルム剥離工程と、前記粘着剤層付き光学フィルム積層工程との間に、
前記基材フィルムが剥離された面側に少なくとも一枚の他の光学フィルムを積層する光学フィルム積層工程を含むことが好ましい。
【0018】
前記ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程で得られた前記積層フィルムにおいて、前記ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは20μm以下であることが好ましい。
【0019】
前記偏光フィルム化処理工程は、
前記積層フィルムを延伸する延伸工程と、
前記ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性物質で染色する染色工程とを含むことが好ましい。
【0020】
前記延伸工程において、延伸倍率は5倍超であることが好ましい。また、前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率が0.15MPa以上であることが好ましい。また、前記光学フィルムが保護フィルムまたは位相差フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、収縮力が小さい偏光フィルムと弾性率の高い粘着剤を組み合わせることにより、偏光フィルムや位相差フィルム等の他の光学フィルムのクラックや剥がれ、光抜けが抑制され、寸法変化の小さい偏光板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の偏光板の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明の偏光板の製造方法の別の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る偏光板における各構成要素の配置関係を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の偏光板の製造方法の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の偏光板の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。図1に示す本発明の偏光板の製造方法は、基材フィルムの一方の表面上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムとするポリビニルアルコール系樹脂層形成工程(S10)と、上記ポリビニルアルコール系樹脂層に偏光フィルム化処理を施し偏光フィルムとする偏光フィルム化処理工程(S20)と、上記偏光フィルムの基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程(S30)と、基材フィルムを積層フィルムから剥離する基材フィルム剥離工程(S40)と、保護フィルムとは反対側の最表面に粘着剤層を積層する粘着剤層積層工程(S60)とをこの順に備える。なお、基材フィルム剥離工程(S40)と粘着剤層積層工程(S60)との間に、基材フィルムが剥離された面側に少なくとも一枚の光学フィルムを積層する光学フィルム積層工程(S50)を含んでいてもよい。
【0025】
図2は、本発明の偏光板の製造方法の別の実施形態を示すフローチャートである。図2に示す本発明の偏光板の製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程(S10)から基材フィルム剥離工程(S40)までは図1に示す製造方法と同様である。図2に示す製造方法は、基材フィルム剥離工程(S40)よりも後の工程として、保護フィルムとは反対側の最表面に、粘着剤層付き光学フィルムを粘着剤層側が最表面となるように積層する粘着剤層付き光学フィルム積層工程(S60’)を備える。なお、基材フィルム剥離工程(S40)と粘着剤層付き光学フィルム積層工程(S60’)との間に、基材フィルムが剥離された面側に少なくとも一枚の光学フィルムを積層する光学フィルム積層工程(S50)を含んでいてもよい。
【0026】
偏光フィルム化処理工程(S20)は、積層フィルムを延伸する延伸工程(S21)、および、ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性物質で染色する染色工程(S22)を含む。偏光フィルム化処理工程(S20)において、延伸工程(S21)および染色工程(S22)は、この順に限定されることはなく、染色工程(S22)の後に延伸工程(S21)を行っても、延伸工程(S21)と染色工程(S22)とを同時に行ってもよい。
【0027】
[基材フィルム]
本発明で用いられる基材フィルムの材料としては、たとえば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート等のセルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物、共重合物などが挙げられる。基材フィルムは、上述の樹脂1種類のみを用いた単層であっても構わないし、樹脂を2種類以上をブレンドしたものであっても構わない。もちろん、単層でなく多層膜を形成していても構わない。
【0028】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。セルローストリアセテートの市販品の例としては、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)などが挙げられる。
【0029】
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有するポリマーであり、主に、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体である。用いられる多価カルボン酸は、主に2価のジカルボン酸が用いられ、たとえば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどがある。また、用いられる多価アルコールも主に2価のジオールが用いられ、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0030】
ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレート、などが挙げられる。これらのブレンド樹脂や、共重合体も好適に用いることが出来る。
【0031】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合されたポリマーからなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性を有する樹脂である。また、高い透明性を有することから光学用途でも好適に用いられる。光学用途では光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネートなども市販されており、好適に用いることが出来る。
【0032】
このようなポリカーボネート樹脂は広く市販されており、たとえば、パンライト(登録商標)(帝人化成(株))、ユーピロン(登録商標)(三菱エンジニアリングプラスチック(株))、SDポリカ(登録商標)(住友ダウ(株))、カリバー(登録商標)(ダウケミカル(株))などが挙げられる。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、安定的に高倍率に延伸しやすく好ましい。また、プロピレンにエチレンを共重合することで得られるエチレン−プロピレン共重合体などを用いることも出来る。共重合は他の種類のモノマーでも可能であり、プロピレンに共重合可能な他種のモノマーとしては、たとえば、エチレン、α−オレフィンを挙げることができる。α−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが好ましく用いられ、より好ましくは、炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例を挙げれば、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどである。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有率は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトル測定を行なうことにより求めることができる。
【0034】
上記のなかでも、ポリプロピレン系樹脂フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、および、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0035】
また、ポリプロピレン系樹脂フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックであることが好ましい。実質的にアイソタクチックまたはシンジオタクチックの立体規則性を有するポリプロピレン系樹脂からなるポリプロピレン系樹脂フィルムは、その取扱い性が比較的良好であるとともに、高温環境下における機械的強度に優れている。
【0036】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、好ましくはノルボルネン系樹脂が用いられる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、たとえば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、およびこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびにそれらの水素化物などが挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0037】
環状ポリオレフィン系樹脂としては種々の製品が市販されている。具体例としては、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。たとえば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(たとえば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂として、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0039】
基材フィルムには、上記の熱可塑性樹脂の他に、任意の適切な添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、および着色剤などが挙げられる。基材フィルム中の上記にて例示した熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の含有量が50重量%未満の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現されないおそれがあるからである。
【0040】
基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性の点から1〜500μmが好ましく、1〜300μmがより好ましく、さらには5〜200μmが好ましい。基材フィルムの厚さは、5〜150μmが最も好ましい。
【0041】
基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂層との密着性を向上させるために、少なくともポリビニルアルコール系樹脂層が形成される側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよい。また密着性を向上させるために、基材フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層が形成される側の表面にプライマー層等の薄層を形成してもよい。
【0042】
[プライマー層]
プライマー層としては、基材フィルムとポリビニルアルコール樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑樹脂が用いられる。具体的にはアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0043】
プライマー層を構成する樹脂は、溶媒に溶解した状態で用いてもよい。樹脂の溶解性により、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルムの如き塩素化炭化水素類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類など、一般的な有機溶媒を用いることもできる。ただ、有機溶媒を含む溶液を用いてプライマー層を形成すると基材を溶解させてしまうこともあるので、基材の溶解性も考慮して溶媒を選択するのが好ましい。環境への影響を考慮すると水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成するのが好ましい。中でも、密着性がよいポリビニルアルコール系樹脂は好ましく用いられる。
【0044】
プライマー層として使用されるポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール樹脂およびその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。上述のポリビニルアルコール系樹脂材料の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いるのが好ましい。
【0045】
プライマー層の強度を上げるために上記の熱可塑性樹脂に架橋剤を添加してもよい。樹脂に添加する架橋剤は、有機系、無機系など公知のものを使用することができる。使用する熱可塑性樹脂に対して、より適切なものを適宜選択すればよい。たとえば、エポキシ系、イソシアネート系、ジアルデヒド系、金属系の架橋剤を選択することができる。エポキシ系の架橋剤としては、一液硬化型のものや二液硬化型のもののいずれも用いることができる。エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類が挙げられる。
【0046】
イソシアネート系の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類が挙げられる。
【0047】
ジアルデヒド系の架橋剤としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等が挙げられる。
【0048】
金属系の架橋剤としては、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物が挙げられ、金属の種類は特に限定されず適宜選択すればよい。金属塩、金属酸化物、金属水酸化物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、チタン、珪素、ホウ素、亜鉛、銅、バナジウム、クロム、スズ等の二価以上の原子価を有する金属の塩およびその酸化物、水酸化物が挙げられる。
【0049】
有機金属化合物とは金属原子に、直接有機基が結合しているか、または、酸素原子や窒素原子などを介して有機基が結合している構造を、分子内に少なくとも1個有する化合物である。有機基とは、少なくとも炭素元素を含む官能基を意味し、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基などであることができる。また、結合とは共有結合だけを意味するものではなく、キレート状化合物などの配位による配位結合であってもよい。
【0050】
上記金属有機化合物の好適な例としては、チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物、アルミニウム有機化合物、および珪素有機化合物が挙げられる。これら金属有機化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0051】
上記チタン有機化合物の具体例としては、例えば、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート等のチタンオルソエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート類;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート類;等が挙げられる。
【0052】
上記ジルコニウム有機化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0053】
上記アルミニウム有機化合物の具体例としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム有機酸キレート等が挙げられる。上記珪素有機化合物の具体例としては、例えば、上述したチタン有機化合物およびジルコニウム有機化合物で例示した配位子を有する化合物が挙げられる。
【0054】
上記の低分子架橋剤の他にも、メチロール化メラミン樹脂、やポリアミドエポキシ樹脂などの高分子系の架橋剤なども用いることができる。かかるポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている「スミレーズ(登録商標)レジン650(30)」や「スミレーズ(登録商標)レジン675」(いずれも商品名)などがある。
【0055】
熱可塑性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン、ジアルデヒド、金属キレート架橋剤などが特に好ましい。
【0056】
プライマー層を形成するために用いる熱可塑性樹脂と架橋剤の割合は、樹脂100重量部に対して、架橋剤0.1〜100重量部程度の範囲から、樹脂の種類や架橋剤の種類などに応じて適宜決定すればよく、とりわけ0.1〜50重量部程度の範囲から選択するのが好ましい。また、プライマー層用塗工液は、その固形分濃度が1〜25重量%程度となるようにするのが好ましい。
【0057】
プライマー層の厚みは、0.05〜1μmが好ましい。さらに好ましくは0.5〜1.0μmである。0.05μmより薄くなると基材フィルムとポリビニルアルコール層との密着力向上の効果が小さく、1μmより厚くなると、偏光板が厚くなるため好ましくない。
【0058】
プライマー層の形成にあたり、使用する塗工方式は特に制限されるものでなく、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、などを公知の方法から適宜選択して採用できる。
【0059】
[ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程]
ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程(S10)においては、基材フィルムの一方の表面上にポリビニルアルコール系樹脂からなる樹脂層(ポリビニルアルコール系樹脂層)を形成する。ポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール樹脂およびその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。上述のポリビニルアルコール系樹脂材料の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いるのが好ましい。
【0060】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、100〜10000が好ましく、1000〜10000がより好ましい。特に、1500〜8000がより好ましく、さらには2000〜5000であることが最も好ましい。ここでいう平均重合度もJIS K 6726(1994)によって定められた方法によって求められる数値である。平均重合度が100未満では好ましい光学特性を得るのが困難である。10000超では水への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂層の形成が困難になってしまう。
【0061】
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化品であることが好ましい。ケン化度の範囲は、80.0モル%〜100.0モル%が好ましく、90.0モル%〜99.5モル%がより好ましく、さらには94.0モル%〜99.0モル%が最も好ましい。ケン化度が80.0モル%未満であると、偏光板にした後の耐水性・耐湿熱性に著しく劣る不具合がある。また、ケン化度が99.5モル%を超えるポリビニルアルコール系樹脂を使用した場合には、著しく染色速度が遅くなり、十分な偏光性能を有する偏光性積層フィルムが得られない場合があり、また製造において通常の数倍もの時間を要する不具合を生じる場合がある。
【0062】
ここでいうケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式で定義される数値である。JIS K 6726(1994)で規定されている方法で求めることができる。
【0063】
ケン化度(モル%)=(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)×100
ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、すなわち結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
【0064】
また、本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものなどが挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じる。
【0065】
このような特性を有するポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば(株)クラレ製のPVA124(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(ケン化度:95.0〜96.0モル%)およびPVA617(ケン化度:94.5〜95.5モル%);例えば日本合成化学工業(株)製のAH−26(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、およびN−300(ケン化度:98.0〜99.0モル%);例えば日本酢ビ・ポバール(株)のJC−33(ケン化度:99.0モル%以上)、JM−33(ケン化度:93.5〜95.5モル%)、JM−26(ケン化度:95.5〜97.5モル%)、JP−45(ケン化度:86.5〜89.5モル%)、JF−17(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(ケン化度:98.0〜99.0モル%)およびJF−20(ケン化度:98.0〜99.0モル%)などが挙げられ、本発明において好適に用いることができる。
【0066】
上述のポリビニルアルコール系樹脂中には、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤等の添加剤が添加されていてもよい。可塑剤としては、ポリオールおよびその縮合物などを用いることができ、たとえばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが例示される。添加剤の配合量は、特に制限されないがポリビニルアルコール系樹脂中20重量%以下とするのが好適である。
【0067】
ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは、好ましくは3μm超かつ20μm以下であり、より好ましくは5〜20μmである。3μm以下であると延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまい、20μmを超えると、偏光板の厚みが厚くなるので好ましくない。
【0068】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂層は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒に溶解させて得たポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムの一方の表面上に塗工し、溶剤を蒸発させることにより形成される。このような方法によれば、ポリビニルアルコール系樹脂層を薄く形成することが可能となる。
【0069】
ポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルムに塗工する方法としては、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを公知の方法から適宜選択して採用できる。乾燥温度は、たとえば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。乾燥時間は、たとえば2〜20分である。
【0070】
なお、本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂層は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムを基材フィルムの一方の表面上に貼着することにより形成することも可能である。
【0071】
[偏光フィルム化処理工程(S20)]
(延伸工程)
延伸工程(S21)では、基材フィルムおよびポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルムを延伸する。その際、一軸延伸することが好ましい。また、積層フィルムの元長に対して、5倍超の延伸倍率となるように一軸延伸することが好ましい。より好ましくは、5倍超かつ17倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。さらに好ましくは5倍超かつ8倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。延伸倍率が5倍以下だと、ポリビニルアルコール系樹脂層が十分に配向しないため、結果として、偏光フィルムの偏光度が十分に高くならない。一方、延伸倍率が17倍を超えると延伸時の積層フィルムの破断が生じ易くなると同時に、積層フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性・ハンドリング性が低下するおそれがある。
【0072】
延伸工程(S21)における延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。多段で行う場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超えの延伸倍率となるように延伸処理を行うことが好ましい。
【0073】
延伸工程(S21)において一軸延伸を行う場合は、積層フィルムの長手方向に対して行う縦延伸処理や、幅方向に対して延伸する横延伸処理、斜め延伸処理などを実施することができる。縦延伸方式としては、ロール間延伸方法、圧縮延伸方法などが挙げられ、横延伸方式としてはテンター法などが挙げられる。
【0074】
また、延伸処理は、湿潤式延伸方法と乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、積層フィルムを延伸する際の温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
【0075】
(染色工程)
染色工程(S22)では、積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を、二色性物質で染色する。二色性物質としては、たとえば、ヨウ素や有機染料などが挙げられる。有機染料としては、たとえば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが使用できる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
【0076】
染色工程は、たとえば、上記二色性物質を含有する溶液(染色溶液)に、基材フィルムおよびポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルム全体を浸漬することにより行う。染色溶液としては、上記二色性物質を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されても良い。二色性物質の濃度としては、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.02〜7重量%であることがより好ましく、0.025〜5重量%であることが特に好ましい。
【0077】
二色性物質としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、さらにヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は重量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
【0078】
染色溶液への積層フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒〜15分間の範囲であることが好ましく、20秒〜6分間であることがより好ましい。また、染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
【0079】
染色工程は、積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層に、二色性物質を吸着させて、二色性物質を配向させる。染色工程(S22)は、延伸工程(S21)の前、同時または後に行うことができるが、ポリビニルアルコール系樹脂層に吸着させた二色性物質を良好に配向させる点から、積層フィルムに延伸工程(S21)を施した後に行うのが好ましい。
【0080】
(その他の工程)
偏光フィルム化処理工程(S20)において、延伸工程(S21)および染色工程(S22)に加えて、架橋工程を行うことができる。架橋工程は、たとえば、架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に積層フィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。たとえば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0081】
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、たとえば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、6〜15重量%であることがより好ましい。
【0082】
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、ポリビニルアルコール系樹脂層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、たとえば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。ヨウ化物の含有量は、0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。
【0083】
架橋溶液への積層フィルムの浸漬時間は、通常、15秒〜20分間であることが好ましく、30秒〜15分間であることがより好ましい。また、架橋溶液の温度は、10〜80℃の範囲にあることが好ましい。
【0084】
架橋工程は、架橋剤を染色溶液中に配合することにより、架橋工程と染色工程(S22)とを同時に行うこともできる。また、架橋工程と延伸工程(S21)とを同時に行ってもよい。
【0085】
偏光フィルム化処理工程(S20)においては、最後に洗浄工程および乾燥工程を行うことが好ましい。洗浄工程としては、水洗浄処理を施すことができる。水洗浄処理は、通常、イオン交換水、蒸留水などの純水に、延伸工程(S21)および染色工程(S22)を経た積層フィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4℃〜20℃の範囲である。浸漬時間は通常2〜300秒間、好ましくは3秒〜240秒間である。
【0086】
洗浄工程は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。また、洗浄工程の後に、ニップロールやエアナイフなどを用いた水切りの工程を設けてもよい。
【0087】
洗浄工程後に、積層フィルムを乾燥させることが好ましい。かかる乾燥においては、60℃以上の温度で乾燥工程を含むことが好ましく、70℃以上の温度での乾燥工程を含むことがより好ましい。もちろん、温度の異なる多段階の乾燥工程を含んでいてもよい。その場合は、多段階の乾燥工程のうち、いずれかの乾燥工程が60℃以上であればよい。
【0088】
温度以外にも乾燥力を強化するために、風量や風向などの熱風の循環方法を最適化したり、局所的に熱をかけることができるIRヒーターなどを併設してもよい。これらの補助によって乾燥の効率はさらに向上し、生産性向上に寄与する。
【0089】
乾燥温度の上限は、水の沸点よりも低い温度であることが好ましく100℃未満であることが好ましい。さらには、95℃以下であることが好ましく、90℃以下であることが最も好ましい。
【0090】
以上の偏光フィルム化処理工程(S20)により、ポリビニルアルコール系樹脂層が偏光フィルムとしての機能を有することになる。本明細書においては、偏光フィルム化処理工程(S20)を経たポリビニルアルコール系樹脂層を偏光フィルムと言う。
【0091】
得られた偏光フィルムは、偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下である。また、偏光フィルムの吸収軸方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに2.5N以下であることが好ましい。また、得られた偏光フィルムの厚みは10μm以下であることが好ましい。
【0092】
[保護フィルム貼合工程]
保護フィルム貼合工程(S30)では、偏光フィルムの基材フィルム側の面とは反対側の面に保護フィルムを貼合する。保護フィルムを貼合する方法としては、粘着剤で偏光フィルムと保護フィルムを貼合する方法、接着剤で偏光フィルム面と保護フィルムを貼合する方法が挙げられる。
【0093】
(保護フィルム)
本発明に用いられる保護フィルムとしては、光学機能を有さない単なる保護フィルムであってもかまわないし、位相差フィルムや輝度向上フィルムといった光学機能を併せ持つ保護フィルムであってもかまわない。保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなど、当分野において従来より広く用いられてきているフィルムを挙げることができる。
【0094】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、適宜の市販品、例えば、Topas(登録商標)(Ticona社製)、アートン(登録商標)(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(登録商標)(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(登録商標)(三井化学(株)製)を好適に用いることができる。このような環状ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム((株)オプテス製)などの予め製膜された環状ポリオレフィン系樹脂製のフィルムの市販品を用いてもよい。
【0095】
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と垂直の方向、またはその両方へ延伸される。加熱炉の温度は、通常、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。延伸の倍率は、一つの方向につき通常1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。
【0096】
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光フィルムと接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を行うのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理、コロナ処理が好適である。
【0097】
酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、たとえば、フジタック(登録商標)TD80(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UF(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD80UZ(富士フィルム(株)製)、フジタック(登録商標)TD40UZ(富士フィルム(株)製)、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株)製)、KC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)を好適に用いることができる。
【0098】
酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面には、視野角特性を改良するために液晶層などを形成してもよい。また、位相差を付与するため酢酸セルロース系樹脂フィルムを延伸させたものでもよい。酢酸セルロース系樹脂フィルムは、偏光フィルムとの接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
【0099】
上述したような保護フィルムは、ロール状態にあると、フィルム同士が接着してブロッキングを生じ易い傾向にあるので、好ましくは、ロール端部に凹凸加工を施したり、端部にリボンを挿入したり、プロテクトフィルムを貼合したりして、ロール巻きされる。
【0100】
保護フィルムの厚みは薄いものが好ましいが、薄すぎると、強度が低下し、加工性に劣る。一方、厚すぎると、透明性が低下したり、積層後に必要な養生時間が長くなったりするなどの問題が生じる。したがって、保護フィルムの厚みは、90μm以下が好ましく、より好ましくは5〜60μmである。また、市場からはパネル、モジュールを含めた薄型化への要求があるため、偏光板に関しても薄さが求められていることから、偏光フィルムと保護フィルムの合計の厚みが100μm以下であることが好ましく、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
【0101】
また、保護フィルム表面に、直接、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの光学層を形成することもできる。保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法はとくに限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0102】
(粘着剤を用いた保護フィルムの貼合)
保護フィルムと偏光フィルムとの貼合に粘着剤が用いられる場合、粘着剤は、通常、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などの架橋剤を加えた組成物からなる。さらに微粒子を含有して光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。
【0103】
粘着剤層の厚みは1〜40μmであることが好ましいが、加工性、耐久性の特性を損なわない範囲で、薄く塗るのが好ましく、より好ましくは3〜25μmである。3〜25μmであると良好な加工性を有し、かつ偏光フィルムの寸法変化を押さえる上でも好適な厚みである。粘着剤層が1μm未満であると粘着性が低下し、40μmを超えると粘着剤がはみ出すなどの不具合を生じ易くなる。
【0104】
粘着剤により保護フィルムを偏光フィルムに貼合する方法においては、保護フィルム面に粘着剤層を設けた後、偏光フィルムに貼合してもよいし、偏光フィルム面に粘着剤層を設けた後、ここに保護フィルムを貼合してもよい。
【0105】
粘着剤層を形成する方法は特に限定されるものではなく、偏光フィルムや保護フィルム上に、上記したベースポリマーをはじめとする各成分を含む溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、保護フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてもよいし、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、保護フィルム面もしくは偏光フィルム面に転写して積層してもよい。また、粘着剤層を保護フィルムもしくは偏光フィルム面に形成する際には必要に応じて保護フィルムもしくは偏光フィルム面、または粘着剤の片方若しくは両方に密着処理、たとえば、コロナ処理等を施してもよい。
【0106】
(接着剤を用いた保護フィルムの貼合)
保護フィルムと偏光フィルムとの貼合に接着剤が用いられる場合、接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤が挙げられる。保護フィルムとしてケン化処理などで親水化処理された酢酸セルロース系フィルムを用いる場合、偏光フィルムとの貼合用の水系接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好適に用いられる。接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。このような水系の接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常1μm以下となり、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。
【0107】
水系接着剤を用いて偏光フィルムと保護フィルムとを貼合する方法は特に限定されるものではなく、たとえば偏光フィルムおよび/または保護フィルムの表面に接着剤を均一に塗布し、塗布面にもう一方のフィルムを重ねてロールなどにより貼合し、乾燥する方法などが挙げられる。通常、接着剤は、その調製後、15〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は、通常15〜30℃の範囲である。
【0108】
水系接着剤を使用する場合は、偏光フィルムと保護フィルムとを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するため、積層フィルムを乾燥させる。乾燥炉の温度は、30℃〜90℃が好ましい。30℃未満であると偏光フィルム面と保護フィルム面が剥離しやすくなる傾向がある。90℃以上であると熱によって光学性能が劣化するおそれがある。乾燥時間は10〜1000秒とすることができる。
【0109】
乾燥後はさらに、室温またはそれよりやや高い温度、たとえば、20〜45℃程度の温度で12〜600時間程度養生しても良い。養生のときの温度は、乾燥時に採用した温度よりも低く設定されるのが一般的である。
【0110】
また偏光フィルムと保護フィルムを貼合する際の接着剤として、光硬化性接着剤を用いることもできる。光硬化性接着剤としては、たとえば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。
【0111】
偏光フィルムと保護フィルムを光硬化性接着剤にて貼合する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、たとえば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光フィルムおよび/または保護フィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物である偏光フィルムまたは保護フィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、または両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
【0112】
偏光フィルムまたは保護フィルムの表面に接着剤を塗布した後、偏光フィルムおよび保護フィルムを接着剤塗布面を介してニップロールなどで挟んで貼り合わせることにより接着される。また、偏光フィルムと保護フィルムとを重ね合わせた状態で偏光フィルムと保護フィルムとの間に接着剤を滴下した後、この積層フィルムをロール等で加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質としては金属やゴム等を用いることが可能である。さらに、偏光フィルムと保護フィルムの間に接着剤を滴下した後、この積層フィルムをロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、これらロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。上記ニップロール等を用いて貼り合わされた後の接着剤層の、乾燥または硬化前の厚さは、5μm以下かつ0.01μm以上であることが好ましい。
【0113】
偏光フィルムおよび/または保護フィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0114】
接着剤として光硬化性樹脂を用いた場合は、偏光フィルムと保護フィルムとを接合後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
【0115】
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2であることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱および光硬化性接着剤の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光フィルムの劣化を生じるおそれが少ない。光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤に応じて適用されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線照射後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上でかつ2μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上でかつ1μm以下である。
【0116】
活性エネルギー線の照射によって光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光フィルムの偏光度、透過率および色相、ならびに保護フィルムの透明性など、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
【0117】
[基材フィルム剥離工程]
本発明の偏光板の製造方法では、保護フィルムを偏光フィルムに貼合する保護フィルム貼合工程(S30)の後、基材フィルム剥離工程(S40)を行う。基材フィルム剥離工程(S40)では、基材フィルムを積層フィルムから剥離する。基材フィルムの剥離方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板で行われる剥離フィルム(セパレートフィルム)の剥離工程と同様の方法で剥離できる。保護フィルム貼合工程(S30)の後、そのまますぐ剥離してもよいし、保護フィルムを貼合工程(S30)の後、一度ロール状に巻き取った後、後工程で巻き出しながら剥離してもよい。
【0118】
[光学フィルム積層工程]
以上のようして製造される本発明の偏光板は、光学フィルム積層工程(S50)において、実用に際して他の光学フィルムを積層してもよい。なお、上記保護フィルムがこれらの光学フィルムの機能を有していてもよい。他の光学フィルムの例としては、保護フィルム、位相差フィルム、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム、表面に反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム、視野角補償フィルムが挙げられる。好ましくは、保護フィルムまたは位相差フィルムである。
【0119】
保護フィルムとしては、上述の保護フィルムと同様のものが挙げられる。位相差フィルムとしては、たとえば、トリアセチルセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂または環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムが挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、アートン(登録商標)フィルム(JSR(株)製)、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム((株)オプテス製)などが挙げられる。
【0120】
ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、例えばDBEF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)、APF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)が挙げられる。視野角補償フィルムとしては基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム、が挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、WVフィルム(富士フィルム(株)製)、NHフィルム(新日本石油(株)製)、NRフィルム(新日本石油(株)製)などが挙げられる。
【0121】
[粘着剤層積層工程]
図1に示される粘着剤層積層工程(S60)では、上記保護フィルムとは反対側(基材フィルムが剥離された面側)の最表面に粘着剤が積層される。前記基材フィルムが剥離された面側に少なくとも一枚の光学フィルムを積層する場合、本工程において、偏光フィルムから最も遠い光学フィルムの偏光フィルムとは反対側の面に粘着剤層を積層することが好ましい。
【0122】
本発明の偏光板は、所定の収縮力を低く抑えた偏光フィルムと、保護フィルムとを備える偏光板であって、その最も外側に23℃での貯蔵弾性率が0.20MPa以上の粘着剤層を形成したものであり、この偏光板は前記粘着剤層を介して液晶セルに貼り付けられる。
【0123】
従来の偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂層の単独膜を延伸、染色して作成されていたため、薄型化するには単独膜をそのまま薄くする必要があった。しかしながら、かかる薄型化は後工程での操作性が悪化するため非常に困難であり、また、このようにして得られる偏光フィルムは、収縮力の大きいものであった。従って、かかる偏光フィルムの収縮力を緩和するため、偏光板全体の寸法変化の悪化を認めつつも偏光板最外層に23℃での貯蔵弾性率が小さい粘着剤層を設けざるを得ない状況であった。
【0124】
これに対し、本発明では、基材フィルムを利用することにより作製される薄型で収縮力の低い所定の偏光フィルムを備え、さらに、偏光板最外層として23℃の貯蔵弾性率が0.20MPa以上の粘着剤層を設けることにより、偏光フィルムなどのクラックや剥れ、光抜けが抑制でき、加えて、偏光板を高温環境下から室温環境下に移した際の寸法挙動の変化をより有効に抑制することが可能となる。
【0125】
また、偏光板最外層に設ける粘着剤層において、23℃での貯蔵弾性率を0.20MPa以上とするだけでなく、80℃での貯蔵弾性率を0.15MPa以上とすることにより、特に高温環境下での寸法挙動の変化をより有効に抑制することが可能となる。
【0126】
23℃における貯蔵弾性率が0.2MPaより小さいと、例えば、高温環境下から室温環境下に移した際の寸法挙動が大きくなる虞がある。また、80℃における貯蔵弾性率が0.15MPaより小さいと高温環境下での寸法変化が大きくなる虞がある。
【0127】
粘着剤から形成される粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は0.20MPa以上である。好ましくは、粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率が0.15MPa以上である。
【0128】
本工程で用いられる粘着剤は、従来から画像表示装置のために用いられてきた種々の粘着剤をベースに形成されうる。例えば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテルなどのものがある。また、エネルギー線硬化型、熱硬化型などであってもよい。これらの中でも、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした感圧粘着剤が好適である。
【0129】
アクリル系樹脂としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸アルキルの単独重合体や、(メタ)アクリル酸アルキルの2種以上の共重合体、さらには(メタ)アクリル酸アルキルの1種または2種以上と極性モノマーとの共重合体が好適に用いられる。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシ基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーを挙げることができる。
【0130】
これらのアクリル系樹脂は、単独でももちろん使用可能であるが、通常架橋剤が併用されている。架橋剤としては、2価または多価金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの、ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオール化合物であって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものなどが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が有機系架橋剤として広く使用されている。
【0131】
エネルギー線硬化型感圧粘着剤とは、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルムなどの被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力の調整ができる性質を有する感圧粘着剤である。エネルギー線硬化型感圧粘着剤としては、特に紫外線硬化型感圧粘着剤を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型感圧粘着剤は、一般にはアクリル系樹脂と、エネルギー線重合性化合物とを主成分としてなる。通常はさらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、光開始剤、光増感剤などを配合することもできる。
【0132】
本発明で用いる感圧粘着剤には、上記のベースポリマーおよび架橋剤のほか、必要に応じて、感圧粘着剤の粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調整するために、例えば天然物や合成物である樹脂類、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、染料、顔料、消泡剤、腐食剤、光重合開始剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。さらに、微粒子を含有させて光散乱性を示す感圧粘着剤層とすることもできる。
【0133】
本発明規定される粘着剤層は、23℃において0.20MPa以上の貯蔵弾性率を示す感圧粘着剤で構成される。貯蔵弾性率は、市販の粘弾性測定装置、例えば後述する実施例に示すように、REOMETRIC社製の粘弾性測定装置“DYNAMIC ANALYZER RDA II”を用いて測定することができる。通常の画像表示装置またはそれ用の光学フィルムに用いられている感圧接着剤の貯蔵弾性率は、高々0.10MPa程度であり、それに比べて、本発明で規定する粘着剤層の貯蔵弾性率(0.20MPa以上)は相対的に高い値である。
【0134】
貯蔵弾性率をこのような高い値とする手段は特に限定されないが、例えば、上記したような通常の感圧接着剤に、オリゴマー、具体的にはウレタンアクリレート系のオリゴマーを配合することが有効である。好ましくは、このようなウレタンアクリレート系オリゴマーを配合した上で、イソシアネート系架橋剤を添加したものが低温領域から高温領域まで高い貯蔵弾性率を示すようになる。ウレタンアクリレート系オリゴマーが配合された感圧粘着剤、あるいはそれを支持フィルム上に塗工し、紫外線硬化させたフィルム状感圧接着剤は、公知である。
【0135】
感圧粘着剤層の厚みは、1〜40μmであることが好ましい。薄型の複合偏光板を得るためには、加工性や耐久性などの特性を損なわない範囲で、感圧粘着剤層を薄く形成するのが望ましく、例えば、3〜25μmとすることが、良好な加工性を保ちつつ、偏光フィルムの寸法変化を抑えるうえで好適である。
【0136】
粘着剤層を形成する方法に特別な制限はなく、例えば、偏光フィルムや光学フィルム上に上記の如き粘着剤を用いて粘着剤層を形成した後、シリコーン系等の離型処理が施された樹脂フィルムからなるセパレータを積層する方法や、上記の如きセパレータ上に粘着剤層を形成した後、偏光フィルムや光学フィルム上に転写する方法などによって設けることができる。また、粘着剤層を偏光フィルムや光学フィルム上に形成する際には、必要に応じて偏光フィルムや光学フィルムまたは粘着剤の貼り合わされる側の面(片方または両方)に、密着性を向上させるための処理、例えばコロナ処理などを施してもよい。
【0137】
[粘着剤層付き光学フィルム積層工程]
図2に示される粘着剤層付き光学フィルム積層工程(S60’)では、上記保護フィルムとは反対側(基材フィルムが剥離された面側)の最表面に、あらかじめ片面に粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学フィルムが粘着剤層側が最表面となるように積層される。ここで、粘着剤層は上記粘着剤層積層工程と同様のものであり、光学フィルムは上記光学フィルム積層工程と同様のものである。
【0138】
上記粘着剤層は上記偏光板の液晶セルと貼合される面、つまり偏光板の最も外側に位置するのが好ましい。これは偏光フィルムに近いほど偏光フィルムの収縮の影響を受けてしまうからである。上記粘着剤層は偏光フィルムから遠い位置に設けることが寸法変化を小さくする上で好ましい。
【0139】
なお、液晶表示装置を作製する際には、液晶セルの少なくとも片側に、上記粘着剤層を介して上記の偏光板が貼合される。
【実施例】
【0140】
以下に、実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0141】
[貯蔵弾性率の測定法]
以下の例において、粘着剤(感圧接着剤)の貯蔵弾性率は、直径8mm、厚さ1mmの円柱を試験片とし、REOMETRIC社製の測定器“DYNAMIC ANARYZER RDA II”を用いて、周波数1Hzの捻り剪断法で23℃および80℃における貯蔵弾性率(G’)を測定した。
【0142】
[粘着剤]
以下の例においては、粘着剤として次のものを用いた。
【0143】
(粘着剤A)
アクリル酸ブチルとアクリル酸の共重合体にウレタンアクリレートオリゴマーを配合し、さらにイソシアネート系架橋剤を添加した有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレートフィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工したシート状粘着剤。なお、この粘着剤Aの貯蔵弾性率を前述の方法により測定したところ、粘着剤Aの貯蔵弾性率は、23℃において0.41MPa、80℃において0.19MPaであった。
【0144】
(粘着剤B)
アクリル酸ブチルとアクリル酸メチルと2-フェノキシエチルアクリレートと2-ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体にイソシアネート系架橋剤を添加してなるアクリル系粘着剤(C)の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレートフィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工してなるセパレートフィルム付きシート状粘着剤。なお、この粘着剤Bの貯蔵弾性率を前述の方法により測定したところ、粘着剤Bの貯蔵弾性率は、23℃において0.08MPa、80℃において0.04MPaであった。
【0145】
(粘着剤C)
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にイソシアネート系架橋剤を添加してなる有機溶剤溶液を離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレートフィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが15μmとなるように塗工してなるセパレートフィルム付きシート状粘着剤。なお、この粘着剤Cの貯蔵弾性率を前述の方法により測定したところ、粘着剤Cの貯蔵弾性率は、23℃において0.05MPa、80℃において0.04MPaであった。
【0146】
(粘着剤D)
アクリル酸ブチルとアクリル酸との共重合体にウレタンアクリレートオリゴマーおよびイソシアネート系架橋剤が添加された粘着剤層が、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ)の離型処理面に、5μmの厚みで形成されたシート状粘着剤を用いた。なお、この粘着剤Dの貯蔵弾性率を前述の方法により測定したところ、粘着剤Dの貯蔵弾性率は、23℃において0.50MPa、80℃において0.21MPaであった。
【0147】
[粘着剤付位相差フィルム]
以下の例においては、粘着剤付位相差フィルムとして次のものを用いた。
【0148】
(粘着剤付位相差フィルムX)
厚みが20μmのノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムの片面にコロナ処理を施した後、粘着剤Aを貼着したもの(位相差フィルム/粘着剤A/セパレートフィルム)。
【0149】
(粘着剤付位相差フィルムY)
厚みが20μmのノルボルネン系樹脂からなる位相差フィルムの片面にコロナ処理を施した後、粘着剤Bを貼着したもの(位相差フィルム/粘着剤B/セパレートフィルム)。
【0150】
<実施例1>
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製「住友ノーブレン W151」、融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両側にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(住友化学(株)製「住友ノーブレンFLX80E4」、融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルムを、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルムの合計厚みは90μmであり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
【0151】
(2)プライマー層の形成
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製「Z−200」、平均重合度1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られたポリビニルアルコール水溶液を、25cm×35cmにカットした上記基材フィルムの片側にコロナ処理を施し、その処理面上に、卓上バーコーターを用いて塗工し、80℃で10分間乾燥させることにより、厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
【0152】
(3)ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、上記プライマー層上に卓上バーコーターを用いて塗工し、80℃で5分間乾燥させることにより、「基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層」からなる3層構造の積層フィルムを作製した。このときのポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは11μmであった。
【0153】
(4)偏光フィルム化処理工程
(延伸工程)
上記の積層フィルムから、端部を切り落とし、幅18cm×長さ30cmの積層フィルムを得た。この積層フィルムをテンター延伸装置にて160℃の延伸温度で、幅方向に5.8倍に自由端一軸延伸した。このときのポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは5.1μmであった。
【0154】
(染色工程・架橋工程)
次に、延伸された上記積層フィルムの中央部から、10cm×15cmのフィルムを切り出して、次の手順でポリビニルアルコール系樹脂層の染色および架橋を行った。まず、切り出された積層フィルムを、30℃のヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である30℃の染色溶液に150秒間程度浸漬して、ポリビニルアルコール系樹脂層の染色を行ない、ついで10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次に、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である76℃の架橋溶液に600秒間浸漬させた。その後、10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に80℃で300秒間乾燥させることにより、ポリビニルアルコール系樹脂層を偏光フィルム化し、10cm×15cmの「基材フィルム/プライマー層/偏光フィルム」からなる3層構造の偏光性積層フィルムを得た。このときの偏光フィルム(ポリビニルアルコール系樹脂層)の厚みは5.1μmであった。
【0155】
得られた偏光性積層フィルムの偏光フィルムのみについて、下記の測定方法により吸収軸と直交する方向の収縮力と、吸収軸方向の収縮力とを測定した。その結果、偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の収縮力は0.28Nであり、吸収軸方向の収縮力は1.2Nであった。
【0156】
(収縮力の測定方法)
偏光性積層フィルムの、収縮力を測定したい方向が長軸となるように幅2mm、長さ50mmにスーパーカッター(株式会社荻野精機製作所製)でカットした。得られた短冊状のチップ(偏光性積層フィルム)から基材フィルムを剥離して偏光フィルムのみとし、試験片とした。
【0157】
試験片の収縮力を熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型式TMA/6100)を用いて測定した。この測定は、寸法一定モードにおいて実施し(チャック間距離を10mmとした)、試験片を20℃の室内に十分な時間放置した後サンプルの室内の温度設定を20℃から80℃まで1分間で昇温させ、昇温後はサンプルの室内の温度を80℃で維持するように設定した。昇温後さらに4時間放置した後、80℃の環境下で試験片の長辺方向の収縮力を測定した。この測定において静荷重は0mNとし、治具にはSUS製のプローブを使用した。
【0158】
(5)保護フィルム貼合工程
まず、ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られたポリビニルアルコール水溶液に、ポリビニルアルコール粉末2重量部に対して1重量部の架橋剤(住化ケムテックス(株)製「スミレーズレジン650」)を混合し、接着剤溶液を調製した。
【0159】
次に、得られた偏光性積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層上に、上記接着剤溶液を塗布した後、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製「KC4UY」)を貼合し、「基材フィルム/プライマー層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」の5層からなる基材フィルム付偏光板を得た。
【0160】
(6)基材フィルム剥離工程
得られた10cm×15cmの基材フィルム付偏光板から基材フィルムを剥離し、「プライマー層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」の4層からなる偏光板αを作製した。
【0161】
(7)粘着剤層積層工程
得られた偏光板αのプライマー層側の表面にコロナ処理を施し、その表面に粘着剤Aを貼着して、「セパレートフィルム/粘着剤A/プライマー層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」からなる粘着剤付偏光板を作成した。
【0162】
(8)評価用サンプルの作製
得られた粘着剤付偏光板を表1に示すとおりの寸法、軸角度でカットし評価用サンプルを作製した。なお、表1中の「偏光フィルムの軸角度」とは、保護フィルム10側からみたときの、偏光板1の長辺方向Cに対する偏光フィルム11の吸収軸11Aの反時計回りの角度αである(図3参照)。また、「位相差フィルムの軸角度」とは、保護フィルム10側からみたときの、偏光板1の長辺方向Cに対する位相差フィルム12の遅相軸12Bの反時計回りの角度βである(図3参照)。
【0163】
<比較例1>
粘着剤Aに代えて粘着剤Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、「セパレートフィルム/粘着剤C/プライマー層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」からなる粘着剤付偏光板を作成した。また、実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。
【0164】
<実施例2>
実施例1の偏光板αのプライマー層側の表面にコロナ処理を施した後、その表面に粘着剤Dを貼着した。また、粘着剤付位相差フィルムXの位相差フィルム側を、粘着剤Dを介して、偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が45°傾くように貼合した。なお、あらかじめ粘着剤付位相差フィルムXの粘着剤とは逆の面にはコロナ処理が施されている。このようにして、「セパレートフィルム/粘着剤A/位相差フィルム/粘着剤D/プライマー層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」からなる、位相差フィルムを備えた粘着剤付偏光板を作製した。また、実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。
【0165】
<比較例2>
粘着剤付位相差フィルムYに代えて粘着剤付位相差フィルムYを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、「セパレートフィルム/粘着剤B/位相差フィルム/粘着剤D/プライマー層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」からなる位相差フィルムを備える粘着剤付偏光板を作成した。また、実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。
【0166】
<比較例3>
(1)偏光フィルムの作製
本比較例では、基材フィルムを使用せずに偏光フィルムを作製した。まず、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコール樹脂フィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、30℃のヨウ素とヨウ化カリウムとを含む水溶液である染色溶液に60秒間浸漬した。その後、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液である72℃の架橋溶液に300秒間浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、80℃で3分間乾燥して、ポリビニルアルコール樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。
【0167】
このときの偏光フィルムの厚みは28μmであり、前記の方法で収縮力を測定すると、延伸方向と直交する方向の収縮力は2.10N、延伸方向の収縮力は3.70Nであった。
【0168】
(2)偏光板の作製
得られた偏光フィルムに、実施例1の保護フィルム貼合工程で調製したものと同様の接着剤溶液を塗布した後、トリアセチルセルロース(TAC)からなる保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製「KC4UY」)を貼合し、「偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」の3層からなる偏光板βを得た。
【0169】
(3)位相差フィルムの貼合
偏光板βの偏光フィルム側に、厚み33μmのノルボルネン系位相差フィルムを、偏光フィルムの吸収軸に対して位相差フィルムの遅相軸が45°傾くように、保護フィルムの貼合に用いたものと同様の接着剤で貼合し、「位相差フィルム/接着剤層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」からなる5層の偏光板を作製した。なお、貼合の前に、位相差フィルムの貼合面にはあらかじめコロナ処理を施しておいた。
【0170】
(4)粘着剤層の形成
得られた偏光板の位相差フィルム面にコロナ処理を施し粘着剤Bを貼着し、「セパレートフィルム/粘着剤B/位相差フィルム/接着剤層/偏光フィルム/接着剤層/保護フィルム」からなる、位相差フィルムを備えた粘着剤付偏光板を作成した。
【0171】
(5)評価用サンプルの作製
得られた粘着剤付偏光板を実施例1と同様に、表1に示す軸角度、寸法の通りにカットし評価用サンプルを作製した。
【0172】
[偏光板の耐久性評価]
実施例1、2および比較例1〜4で作製した評価用サンプルのセパレートフィルムを剥離し、各評価用サンプルの粘着剤層を厚さ0.7mmのガラス板に貼り付け、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で20分間オートクレーブ処理を行った。自然冷却後、それぞれのサンプルを、温度が85℃に保たれたオーブンに投入し、500時間保持する加熱試験を行った。この加熱試験後のサンプルについて、初期の寸法からの寸法変化量([試験後の値]−[初期値])をNEXIV VMR−12072(ニコン(株)製)にて測定した。結果を表2に示す。
【0173】
【表1】

【0174】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも偏光フィルムと保護フィルムを備える偏光板であって、
前記偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが積層されており、
前記保護フィルムとは反対側の最表面に粘着剤層が設けられており、
前記偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下であり、
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以上であることを特徴とする、偏光板。
【請求項2】
前記偏光フィルムの前記保護フィルムとは反対側に少なくとも1枚の光学フィルムを備え、最も前記偏光フィルムから遠い前記光学フィルムの前記偏光フィルムとは反対側の面に前記粘着剤層が設けられている、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光フィルムの吸収軸方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに2.5N以下である、請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記偏光フィルムの厚みが10μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率が0.15MPa以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
【請求項6】
前記光学フィルムが保護フィルムまたは位相差フィルムである、請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板。
【請求項7】
液晶セルの少なくとも片側に、前記粘着剤層を介して請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板が貼合された液晶表示装置。
【請求項8】
基材フィルムの一方の面にプライマー溶液を塗工してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、
前記プライマー層の上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記ポリビニルアルコール系樹脂層をこの順で備えた積層フィルムを得る、ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程と、
前記ポリビニルアルコール系樹脂層に偏光フィルム化処理を施して偏光フィルムとし、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記偏光フィルム層をこの順で備えた偏光性積層フィルムを得る、偏光フィルム化処理工程と、
前記偏光性積層フィルムの前記基材フィルムとは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程と、
前記基材フィルムを偏光性積層フィルムから剥離する基材フィルム剥離工程と、
前記保護フィルムとは反対側の最表面に粘着剤層を積層する粘着剤層積層工程と、をこの順で含む、偏光板の製造方法であって、
前記偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下であり、
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以上であることを特徴とする、偏光板の製造方法。
【請求項9】
前記基材フィルム剥離工程と前記粘着剤層積層工程との間に、
前記基材フィルムが剥離された面側に少なくとも一枚の光学フィルムを積層する光学フィルム積層工程を含む、請求項8に記載の偏光板の製造方法。
【請求項10】
前記粘着剤積層工程において、前記偏光フィルムから最も遠い前記光学フィルムの前記偏光フィルムとは反対側の面に前記粘着剤層を積層する、請求項9に記載の偏光板の製造方法。
【請求項11】
基材フィルムの一方の面にプライマー溶液を塗工してプライマー層を形成するプライマー層形成工程と、
前記プライマー層の上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記ポリビニルアルコール系樹脂層をこの順で備えた積層フィルムを得る、ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程と、
前記ポリビニルアルコール系樹脂層に偏光フィルム化処理を施して偏光フィルムとし、前記基材フィルム、前記プライマー層および前記偏光フィルム層をこの順で備えた偏光性積層フィルムを得る、偏光フィルム化処理工程と、
前記偏光性積層フィルムの前記基材フィルムとは反対側の面に保護フィルムを貼合する保護フィルム貼合工程と、
前記基材フィルムを偏光性積層フィルムから剥離する基材フィルム剥離工程と、
前記保護フィルムとは反対側の最表面に、粘着剤層付き光学フィルムを粘着剤層側が最表面となるように積層する粘着剤層付き光学フィルム積層工程と、をこの順で含む、偏光板の製造方法であって、
前記偏光フィルムの吸収軸と直交する方向の幅2mmあたりの収縮力が、80℃の温度で240分間保持したときに1.0N以下であり、
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が0.20MPa以上であることを特徴とする、偏光板の製造方法。
【請求項12】
前記基材フィルム剥離工程と、前記粘着剤層付き光学フィルム積層工程との間に、
前記基材フィルムが剥離された面側に少なくとも一枚の他の光学フィルムを積層する光学フィルム積層工程を含む、請求項11に記載の偏光板の製造方法。
【請求項13】
前記ポリビニルアルコール系樹脂層形成工程で得られた前記積層フィルムにおいて、前記ポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは20μm以下である、請求項8〜12のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項14】
前記偏光フィルム化処理工程は、
前記積層フィルムを延伸する延伸工程と、
前記ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性物質で染色する染色工程とを含む、
請求項8〜13のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項15】
前記延伸工程において、延伸倍率は5倍超である、請求項14に記載の偏光板の製造方法。
【請求項16】
前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率が0.15MPa以上である、請求項8〜15のいずれかに記載の偏光板の製造方法。
【請求項17】
前記光学フィルムが保護フィルムまたは位相差フィルムである、請求項8〜16のいずれかに記載の偏光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72951(P2013−72951A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210973(P2011−210973)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】