説明

偏光板および液晶表示装置

【課題】長期間に亘って寸法安定性に優れ、特に大画面LCD用として好適に用いられる偏光板、および該偏光板を用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】偏光フィルムの両面に保護フィルムを有し、少なくとも液晶セルを有する液晶表示装置に用いられる偏光板であって、偏光板における両面保護フィルムのうち、少なくとも片方の保護フィルムが、保護フィルムを示唆走査熱量計(DSC)で測定した保護フィルムのガラス転移点温度(Tg)におけるエンタルピー変化(ΔH)が0.3J/g以上となるように、ガラス転移温度(Tg)−40℃以上、ガラス転移点温度(Tg)以下の温度範囲に加熱処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間に亘り寸法安定性に優れ、特に大画面液晶ディスプレイ用として好適な偏光板及び該偏光板を用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LCD用偏光板としては、ヨウ素・ポリビニルアルコール系の偏光フィルムの両面を三酢酸セルロース(TAC)フィルムで挟み込んだものが主流である(特許文献1参照)。この偏光板の製造方法としては、水系でヨウ素・ポリビニルアルコール系偏光フィルムの延伸工程を行い、該偏光フィルムを連続的に三酢酸セルロース(TAC)フィルムで挟持する挟み込み工程を含んでなる。該挟み込み工程において、偏光フィルム中の残留水分を三酢酸セルロース(TAC)フィルムが吸収するので、工程適性が良好であり、低コストで偏光度の高い偏光板を製造できる。
しかし、前記偏光板では、三酢酸セルロースフィルムの特性である高吸湿性を有するため、長期使用により寸法安定性が低下し、特に、大画面LCDにおいては画面周辺部において長期収縮が生じ、それが原因となって、偏光板のヨウ素配向が乱れ、光漏れが生じてしまうという問題がある。
そこで、このような問題を解決するため、ドライ工程で製造できる染料系の偏光フィルムが提案されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2000−329936号公報
【特許文献2】特開2002−82222号公報
【特許文献3】特開2002−90528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、染料系の偏光フィルムは、前記ヨウ素・ポリビニルアルコール系の偏光フィルムに比べて偏光度が小さく、大画面LCDに要求される高コントラストを達成することが困難であるという問題がある。したがって長期間に亘り寸法安定性に優れ、特に大画面LCD用として好適に用いられる偏光板、および該偏光板を用いた高視野角、高コントラスト、高画質な表示特性を示す大画面の液晶表示装置は、必要十分な性能が得られておらず、その速やかな開発が望まれているのが現状である。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、長期間に亘って寸法安定性に優れ、特に大画面LCD用として好適に用いられる偏光板、および該偏光板を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。すなわち、偏光板の両面における保護フィルムのうち、少なくとも片方の保護フィルムを、その保護フィルム自身の製膜後から保護フィルムを偏光フィルムに貼り合わせる偏光板製造までの間に、ガラス転移点温度(Tg)−40℃以上、ガラス転移点温度(Tg)以下の一定温度に加熱保持する熱処理を施すことで、ガラス転移点温度(Tg)以下の温度で使用する場合の寸法安定性を著しく高めることができた。これにより、長期寸法安定性の高い偏光板が得られ、特に、大画面LCD用として好適に用いることができた。
【0005】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記目的は下記構成により達成される。すなわち、
(1) 偏光フィルムの両面に保護フィルムを有し、少なくとも液晶セルを有する液晶表示装置に用いられる偏光板であって、
前記偏光板における両面保護フィルムのうち、少なくとも片方の保護フィルムが、該保
護フィルムを示唆走査熱量計(DSC)で測定した前記保護フィルムのガラス転移点温度(Tg)におけるエンタルピー変化(ΔH)が0.3J/g以上となるように、前記ガラス転移温度(Tg)−40℃以上、ガラス転移点温度(Tg)以下の温度範囲に加熱処理されている保護フィルムである偏光板。
(2) (1)記載の偏光板であって、
前記少なくとも片方の保護フィルムが、前記ガラス転移温度(Tg)が80℃以上で、かつ吸水率が2%以下の保護フィルムである偏光板。
(3) (1)または(2)記載の偏光板であって、
前記少なくとも片方の保護フィルムが、ノルボルネン系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルムから選択される保護フィルムである偏光板。
(4) (1)〜(3)のいずれか1項記載の偏光板であって、
偏光フィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて延伸したヨウ素・ポリビニルアルコール系の偏光フィルムである偏光板。
(5) 少なくとも一対の電極及び該電極間に封入される液晶分子を有する液晶セルと、
前記液晶セルの両面に配される(1)〜(4)のいずれか1項記載の偏光板と、を備えた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長期間に亘って寸法安定性に優れ、特に大画面LCD用として好適に用いられる偏光板、および該偏光板を用いた高視野角、高コントラスト、高画質な表示特性を示す大画面の液晶表示装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係る偏光板および液晶表示装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(偏光板)
本発明の偏光板は、偏光フィルムの両面に保護フィルムを有し、少なくとも液晶セルを有する液晶表示装置に用いられる偏光板であって、前記偏光板における少なくとも片方の保護フィルムが、該保護フィルムを示唆走査熱量計(DSC)で測定した前記保護フィルムのガラス転移点温度(Tg)におけるエンタルピー変化(ΔH)が0.3J/g以上となるように、前記ガラス転移温度(Tg)−40℃以上、ガラス転移点温度(Tg)以下の温度範囲に加熱処理されている偏光板である。さらに必要に応じてその他の部材を有してなる。
加熱処理の温度に関してはTg−40℃以上、Tg以下であればよいが、Tg−20℃以上、Tg-1℃以下が望ましく、Tg−10℃以上、Tg−3℃以下が最も効率的に熱処理を行うことが出来、最も望ましい温度範囲である。加熱処理時の注意点としては一定温度で行うか、もしくは高い温度から低い温度へ徐冷しながら行う必要がある。低い温度から高い温度へ変化させた場合、効果が小さいか、もしくはまったく得られないため、温度管理は厳密に行う必要がある。
熱処理時の形態はどのような形態でも原理的には可能であるが、フィルム製膜後、フィルムのみ巻き芯に巻いたロール形態で行うことが望ましい。その際、巻き芯として、内部を中空にした物を用い、空気高温槽中で熱風を循環させながら、ロール外側および巻き芯内部から加熱し、出来るだけ均一にロールを加熱しながら熱処理することが望ましい。
ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、示差走査熱分析計(DSC)を用い、サンプルフィルム10mgをチッ素気流中、20℃/分で昇温させていったときに、ベースラインから偏奇しはじめる温度と新たなペースラインに戻る温度の算術平均温度、もしくはガラス転移温度(Tg)に吸熱ピークが現われた時はこの吸熱ピークの最大値を示す温度をガラス転移温度(Tg)として定義する。
【0008】
また、エンタルピー変化(ΔH)とは、DSCを用いてガラス転移温度(Tg)を測定
する場合に現れる吸熱ピークの単位サンプルフィルム重量当たりの熱量を意味する。エンタルピー変化(ΔH)は、その値が大きければ大きいほど好ましく、熱処理時間を増やすほどΔHは大きくなるが、一般にΔHの増加は、ポリマーの種類により異なるが、3〜5J/gが上限となる。
【0009】
ここで、図1は、本発明の偏光板10の一例を示す概略断面図を示している。偏光フィルム1の両面に上側保護フィルム3及び下側保護フィルム4が接着層(不図示)により貼着されている。この図1における偏光板10では、図示を省略しているが、下側保護フィルム4の下方に液晶表示装置の液晶セルが配置される。液晶セル側の下側保護フィルム4には等方性フィルム(例えば、セルロース系フィルム)が用いられ、最表面側の上側保護フィルム3には溶融成膜フィルム(例えば、ポリエステル系樹脂フィルム)が用いられる。
【0010】
−偏光フィルム−
前記偏光フィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素を吸着させて延伸したフィルムが好適であり、これらの中でも、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて延伸したヨウ素・ポリビニルアルコール(PVA)系の偏光フィルムが消光比、コストの点で特に好ましい。
【0011】
前記ヨウ素・ポリビニルアルコール系の偏光フィルムの製造方法としては、ポリビニルアルコールを水又は有機溶媒に溶解した原液を流延成膜して、浴中で延伸(湿式延伸)してヨウ素染色するか、延伸と染色を同時に行うか、染色して延伸した後、ホウ素化合物処理する方法などが挙げられる。
前記原液調製に際して使用される溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類;又はこれらの混合物が挙げられる。
前記延伸は一軸方向に2.5倍以上が好ましく、4.5倍以上がより好ましい。この場合、直角方向にも延伸(幅方向の収縮を防止する程度或いはそれ以上の延伸)を行っても差し支えない。前記延伸温度は、30〜130℃の範囲が好ましい。
なお、前記ポリビニルアルコール系フィルムの延伸は、上記湿式延伸に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式浴に浸漬する前に延伸する乾式延伸方法等の他の延伸方法を採用してもよい。
【0012】
前記ポリビニルアルコール系フィルムへのヨウ素による染色、つまりヨウ素の吸着はフィルムにヨウ素を含有する液体を接触させることによって行われる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられる。ヨウ素の濃度は0.1〜2.0g/l、ヨウ化カリウムの濃度は10〜50g/lが好ましい。また、ヨウ素/ヨウ化カリウムの質量比は20〜100が好ましい。前記染色時間は30〜500秒程度が好適である。
【0013】
−保護フィルム−
前記保護フィルムとしては、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上で、かつ吸水率が2%以下のノルボンネン系樹脂フィルムまたはポリエステル系樹脂フィルムが用いられる。
【0014】
ノルボルネン系高分子としては、ノルボルネンおよびその誘導体、テトラシクロドデセンおよびその誘導体、ジシクロペンタジエンおよびその誘導体、メタノテトラヒドロフルオレンおよびその誘導体などのノルボルネン系モノマーの主成分とするモノマーの重合体
であり、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体、およびの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が最も好ましい。ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体または環状共役ジエンの重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、さらに好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、フイルム(A)の機械的強度、および成形加工性とが高度にバランスされて好適である。代表的なポリマーとして、特開2003−327800号公報、特開2004−233604号公報に記載されたポリマーが挙げられる。
【0015】
前記ポリエステル系樹脂フィルムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体フィルム、などが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが特に好ましい。
【0016】
前記ポリエステル系樹脂フィルムとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、ルミラー(東レ株式会社製)などが好適に挙げられる。
【0017】
上記の透明樹脂をシートまたはフィルム状に成形する方法は、例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることができる。加熱溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できるが、これらの方法の中でも、機械的強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押出成形法、インフレーション成形法、およびプレス成形法が好ましく、押出成形法が最も好ましい。
【0018】
前記ノルボルネン系樹脂フィルムまたはポリエステル系樹脂フィルムの示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)におけるエンタルピー変化ΔHは0.3J/g以上が好ましい。前記ΔHが0.3J/g未満であると、長期寸法安定性が不十分となり、経時変化によってLCD画面端部で光漏れが生じてしまうことがある。
ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、示差走査熱分析計(DSC)を用い、サンプルフィルム10mgをチッ素気流中、20℃/分で昇温させていったときに、ベースラインから偏奇しはじめる温度と新たなペースラインに戻る温度の算術平均温度、もしくはガラス転移温度(Tg)に吸熱ピークが現われた時はこの吸熱ピークの最大値を示す温度をガラス転移温度(Tg)として定義する。
【0019】
また、エンタルピー変化(ΔH)とは、DSCを用いてガラス転移温度(Tg)を測定する場合に現れる吸熱ピークの単位サンプルフィルム重量当たりの熱量を意味する。エンタルピー変化(ΔH)は、その値が大きければ大きいほど好ましく、熱処理時間を増やすほどΔHは大きくなるが、一般にΔHの増加は、ポリマーの種類により異なるが、3〜5J/gが上限となる。
【0020】
前記ノルボルネン系樹脂フィルムまたはポリエステル系樹脂フィルムは、上述したように、エンタルピー変化ΔHが0.3J/g以上を満たすように、該樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)−40℃以上、ガラス転移点温度(Tg)以下の温度でアニーリング処
理(BTA処理、below Tg annealing処理)する。加熱処理の温度に関してはTg−20℃以上、Tg-1℃以下がより望ましく、Tg−10℃以上、Tg−3℃以下が最も効率的に熱処理を行うことが出来、最も望ましい温度範囲である。加熱処理時の注意点としては一定温度で行うか、もしくは高い温度から低い温度へ徐冷しながら行う必要がある。低い温度から高い温度へ変化させた場合、効果が小さいか、もしくはまったく得られないため、温度管理は厳密に行う必要がある。
熱処理時の形態はどのような形態でも原理的には可能であるが、フィルム製膜後、フィルムのみ巻き芯に巻いたロール形態で行うことが望ましい。その際、巻き芯として、内部を中空にした物を用い、空気高温槽中で熱風を循環させながら、ロール外側および巻き芯内部から加熱し、出来るだけ均一にロールを加熱しながら熱処理することが望ましい。このアニーリング処理は、例えば、24時間以上、好ましくは24時間〜48時間で行うことが好ましい。
【0021】
(偏光板の製造方法)
前記偏光板の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ロール形態で供給される長尺の偏光フィルムに対し、保護フィルムを長手方向が一致するようにして連続して貼り合わせることが好ましい。
【0022】
前記貼り合わせ方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明接着層を介した接着処理、透明粘着層を介した接合処理などが挙げられる。
前記透明接着層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、構成部材の光学特性変化を防止する観点から、接着処理時の硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものがより好ましい。
前記透明粘着層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、合成ゴムなどが挙げられ、これらの中でも、光学的透明性や粘着特性、耐候性などの観点からアクリル系ポリマーがより好ましい。
【0023】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、少なくとも一対の電極及び該電極間に封入される液晶分子を有する液晶セルと、該液晶セルの両面に配される偏光板とを備え、前記偏光板として前記本発明の偏光板を用いてなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0024】
前記液晶素子の表示モードとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensatory Bend)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードなどが挙げられるが、これらの中でも、高コントラスト比であることなどから、TNモードが好適に挙げられる。
【0025】
ここで、図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略構成図である。
図2に示すように、液晶表示装置100は、対向配置される一対の上側偏光板101及び下側偏光板102の間に配置される液晶素子130(液晶セル)を備えてなる。上側偏光板101及び下側偏光板102のいずれかの保護フィルムにはノルボンネン系樹脂フィルムまたはポリエステル系樹脂フィルムが用いられている。
【0026】
前記液晶素子130は、ガラス基板よりなる上側基板131と下側基板132とが対向
配置され、これらの上側基板131及び下側基板132の間には液晶136が封入されている。前記上側基板131及び下側基板132の対向面には、不図示の画素電極、回路素子(薄膜トランジスタ(TFT))144等が形成されている。前記上側基板131及び下側基板132の液晶136が接する対向面には上側配向膜142及び下側配向膜143が形成されている。該配向膜の前記液晶136が接する面上は、液晶分子の配列方向を揃えるために、ラビング処理が施されている。図2中140は、カラーフィルタ、141はスペーサをそれぞれ表す。
【0027】
前記その他の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記偏光板の片面又は両面に有する透明保護膜、反射防止膜、防眩処理膜などが挙げられる。
【0028】
前記反射防止膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素系ポリマーのコート膜、多層金属蒸着膜等の光干渉性の膜、などが挙げられる。
前記防眩処理膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、微粒子含有の樹脂塗工膜、エンボス加工、サンドブラスト加工、エッチング加工等の適宜な方式で表面に微細凹凸構造が付与された膜などが挙げられる。
【0029】
本発明の液晶表示装置は、長期間に亘り寸法安定性に優れ、光漏れのない本発明の前記偏光板を用いているので、高視野角、高コントラスト、高画質な表示特性を示す大画面の液晶表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(比較例1)
−偏光板の作製−
厚さ75μmの長尺ポリビニルアルコールフィルム(株式会社クラレ製、9P75R)をガイドロールを介して連続搬送しつつ、ヨウ素とヨウ化カリウム配合の染色浴(30℃)に浸漬して染色処理と2.5倍の延伸処理を施した後、ホウ酸とヨウ化カリウムを添加した酸性浴(60℃)中において合計で5倍となる延伸処理と架橋処理を施した。得られた厚み約30μmのヨウ素・PVA偏光フィルムを乾燥機中で、50℃にて30分間乾燥させた。以上により、ヨウ素・PVA偏光フィルムを作製した。
【0031】
次に、トリアセチルセルロース(TAC)の塩化メチレン溶液を、鏡面加工したステンレス板上に均一に塗布し、50℃にて5分間予備乾燥させた後、ステンレス板より剥離し、フィルムに応力がかからない状態で150℃にて10分間乾燥させて、厚さ70μmの保護フィルムを作製した。
得られたヨウ素・PVA偏光フィルムの両面に、厚さ20μmのアクリル系粘着層を介して、前記保護フィルムを接着した。以上により、比較例1の偏光板を作製した。
【0032】
(実施例1)
−偏光板の作製−
比較例1において、ヨウ素・PVA偏光フィルムの液晶セルと貼り合わせる側の面に厚さ130℃にて24時間アニーリング処理(BTA処理、below Tg annealing処理)した100μmのノルボルネン系樹脂フィルム(ゼオノア、日本ゼオン株式会社製、エンタルピー変化ΔH=0.5J/g)を厚さ20μmのアクリル系粘着層を介して接着した以外は、比較例1と同様にして、実施例1の偏光板を作製した。
【0033】
(実施例2)
−偏光板の作製−
比較例1において、ヨウ素・PVA偏光フィルムの液晶セルと貼り合わせる側の面に厚さ165℃にて24時間アニーリング処理した100μmのノルボルネン系樹脂フィルム(アートン、JSR株式会社製、エンタルピー変化ΔH=0.5J/g)を厚さ20μmのアクリル系粘着層を介して接着した以外は、比較例1と同様にして、実施例1の偏光板を作製した。
【0034】
(実施例3)
−偏光板の作製−
実施例1において、ノルボルネン系樹脂フィルム(ゼオノア、日本ゼオン株式会社製)のアニーリング時間を12時間(エンタルピー変化ΔH=0.3J/g)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の偏光板を作製した。
【0035】
(実施例4)
−偏光板の作製−
実施例2において、ノルボルネン系樹脂フィルム(アートン、JSR株式会社製)のアニーリング時間を12時間(エンタルピー変化ΔH=0.3J/g)とした以外は、実施例2と同様にして、実施例4の偏光板を作製した。
【0036】
(比較例2)
−偏光板の作製−
実施例1において、ノルボルネン系樹脂フィルム(ゼオノア、日本ゼオン株式会社製)のアニーリング時間を5時間(エンタルピー変化ΔH=0.2J/g)とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の偏光板を作製した。
【0037】
(比較例3)
−偏光板の作製−
実施例2において、ノルボルネン系樹脂フィルム(アートン、JSR株式会社製)のアニーリング時間を5時間(エンタルピー変化ΔH=0.2J/g)とした以外は、実施例2と同様にして、比較例3の偏光板を作製した。
【0038】
次に、得られた実施例1〜3及び比較例1〜2の各偏光板を縦40cm×横50cmの大きさに切り取ったサンプルについて、以下のようにして、周辺部の収縮率、及び光漏れについて評価した。結果を表1に示す。
【0039】
<周辺部の収縮率の測定>
各偏光板について、80℃Dryおよび60℃90%にて120時間の加熱試験を行った前後における寸法変化率を下記数式1から求めた。
【0040】
【数1】


【0041】
<光漏れの評価方法>
偏光板の経時配向乱れによる光漏れは、図3のコーナー部分(A、B、D、E)に顕著に顕れる。そこで、光漏れの評価方法としては、縦260mm×横450mmの各偏光板をクロスニコルの配置でガラス板上に貼り付けた。なお、貼り付けにはアクリル系接着剤を使用した。次に、図3に示す、A、B、D、E(これらはすべてコーナーから1cm内側の位置)、及びC(中央部)の各点での輝度をYA、YB、YC、YD、及びYEとすると、コーナー部(A、B、D、E)の輝度と中央部(C)の輝度の差である光漏れXは、下記数式2から求めることができ、下記基準により光漏れを評価した。なお、ここで定義した光漏れは、各偏光板を80℃Dryおよび60℃90%にて120時間の加熱試験後、測定した数値から算出したものである。
ここでDryとは、空気中の相対湿度が10%以下の雰囲気中で処理することを意味する。
【0042】
〔数式2〕
光漏れX=〔(YA+YB+YD+YE)/4〕−YC
〔評価基準〕
○:0<X≦0.5cd/m2
×:0.5cd/m2<X
【0043】
【表1】

【0044】
−液晶表示装置の作製−
実施例1〜4及び比較例1〜2の各偏光板を用いて、公知の方法(特開平11−248921号公報)により液晶表示装置を作製した。得られた各液晶表示装置について、表示性能を評価したところ、比較例1〜2の液晶表示装置と比較して、実施例1〜4の液晶表示装置は、長期間に亘り寸法安定性に優れ、光漏れのない本発明の前記偏光板を用いているので、高視野角、高コントラスト、高画質な表示特性を示すことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の偏光板は、長期間に亘って寸法安定性に優れ、光漏れが生じることがなく、パソコン用モニター、ノートパソコン、テレビモニター等の大画面用液晶ディスプレイ(LCD)などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の偏光板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、光漏れの評価方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 偏光フィルム
3 上側保護フィルム
4 下側保護フィルム
10 偏光板
100 液晶表示装置
101 上側偏光板
102 下側偏光板
130 液晶セル
131 上側基板
132 下側基板
136 液晶
140 カラーフィルタ
141 スペーサ
142 上側配向膜
143 下側配向膜
144 薄膜トランジスタ(TFT)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムの両面に保護フィルムを有し、少なくとも液晶セルを有する液晶表示装置に用いられる偏光板であって、
前記偏光板における両面保護フィルムのうち、少なくとも片方の保護フィルムが、該保護フィルムを示唆走査熱量計(DSC)で測定した前記保護フィルムのガラス転移点温度(Tg)におけるエンタルピー変化(ΔH)が0.3J/g以上となるように、前記ガラス転移温度(Tg)−40℃以上、ガラス転移点温度(Tg)以下の温度範囲に加熱処理されている保護フィルムである偏光板。
【請求項2】
請求項1記載の偏光板であって、
前記少なくとも片方の保護フィルムが、前記ガラス転移温度(Tg)が80℃以上で、かつ吸水率が2%以下の保護フィルムである偏光板。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の偏向板であって、
前記少なくとも片方の保護フィルムが、ノルボルネン系フィルム、ポリエステル系樹脂フィルムから選択される保護フィルムである偏光板。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の偏光板であって、
偏光フィルムが、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて延伸したヨウ素・ポリビニルアルコール系の偏光フィルムである偏光板。
【請求項5】
少なくとも一対の電極及び該電極間に封入される液晶分子を有する液晶セルと、
前記液晶セルの両面に配される請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の偏光板と、を備えた液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−86022(P2009−86022A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252227(P2007−252227)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】