説明

偏光板ユニット、光学ユニット、及びプロジェクター

【課題】偏光板を設置するガラス基板における面内温度差を低減し、面内の照度ムラを抑制する偏光板ユニット、光学ユニット、及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】偏光板ユニット5は、ガラス基板51とガラス基板51に設置される偏光板(射出側偏光板344)とを備え、ガラス基板51は、略正方形の外形を有し、射出側偏光板344は、ガラス基板51の対角方向に偏光軸3441を合わせて設置されている。また、偏光板ユニット5は、液晶パネル342から射出される所定の偏光方向を有する偏光光を、偏光軸3441の方向に合わせるように位相をずらす位相差板(射出側位相差板343)を備え、射出側偏光板344は、射出側位相差板343から射出された光を入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板ユニット、光学ユニット、及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターの液晶パネルの後段に用いられる射出側偏光板(偏光板ユニット)は、光源からの光(液晶パネルからの射出光)により発熱する。なお、偏光板ユニットは、偏光板と偏光板を保持するガラス基板とで構成されている。そして、偏光板ユニットが発熱することにより、投写画面に照度ムラ(コントラスト低下)が発生する。
【0003】
図4は、従来の偏光板ユニット6に対して黒表示画像を入射させて射出された場合の画像を模式的に示す図である。また、図4は、偏光板ユニット6の面内温度の分布を模式的に示す図にも略対応している。従って、図4では、偏光板ユニット6のガラス基板61に対応させて符号を付記している。なお、偏光板ユニット6は、射出側偏光板(図示省略)と射出側偏光板を設置するガラス基板61とで構成されている。また、偏光板は、偏光軸62の方向が垂直方向に対して0度に設定されている。
【0004】
図4に示すように、ガラス基板61の中央部D1及び中央部D1の上下左右(0度(垂直方向)あるいは90度(水平方向))の領域D2では、黒表示されるが、4つの角部分の領域D3では、白抜けの状態となる。このような偏光板ユニット6をプロジェクターに用いて画像を投写した場合、投写画像において、4つの角部分に照度ムラ(コントラスト低下)が発生することになる。
なお、特許文献1では、このような状態を改善するため、ガラス基板に線膨張係数の絶対値が低いガラス基板を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−9454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
4つの角部分に照度ムラが発生する要因として、偏光板は、液晶パネルに合わせて偏光軸方向が通常、垂直方向に対して0度あるいは90度に設定されており、この場合、照度ムラは偏光軸方向に対して±45度方向の応力成分の影響を受けることが上げられる。詳細には、このような偏光板を設置する矩形のガラス基板の面内温度において、通常は中央部が最も高温となり、中央部から最も離れた4つの角部分が最も低温となる。このような面内温度差により、中央部に対して4つの角部分における応力(応力差)が最も大きくなる。4つの角部分は、照度ムラへの影響が大きい偏光軸方向に対して±45度方向でもあるので、温度差により発生する応力により照度ムラが発生してしまう。このように、温度差を原因とした応力差が大きくなる箇所と応力差が照度ムラに影響する箇所が近いことが課題となっている。
また、特許文献1においては、線膨張係数の絶対値が低いガラス基板を用いても照度ムラは程度の差はあるものの発生するという課題がある。また、ガラス基板の材質が線膨張係数の低い材料となるため、光源の明るさを向上させた場合には、発熱量が増加する。これにより、プロジェクターの高輝度化や小型化には必ずしも好適とはならない等の課題がある。
従って、偏光板を設置するガラス基板における面内の照度ムラを抑制する偏光板ユニット、光学ユニット、及びプロジェクターが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る偏光板ユニットは、ガラス基板とガラス基板に設置される偏光板とを備える偏光板ユニットであって、ガラス基板は、略正方形の外形を有し、偏光板は、ガラス基板の対角方向に偏光軸を合わせて設置されていることを特徴とする。
【0009】
このような偏光板ユニットによれば、ガラス基板は、略正方形の外形を有し、偏光板は、ガラス基板の対角方向に偏光軸を合わせて設置されるため、ガラス基板における応力差による照度ムラを抑制することができる。温度差を原因としたガラス基板への応力が大きくなる箇所はガラス基板内で最もガラス基板の中央との温度差が大きくなる箇所であり、ガラス基板の4つの角部分となる。また、応力差が照度ムラに影響する箇所は偏光軸方向に対して±45度方向となる箇所である。偏光軸をガラス基板内で最も温度差が大きくなる場所、すなわち略正方形のガラス基板の対角方向に合わせることにより、照度ムラの原因となる偏光軸方向に対して±45度方向は、ガラス基板の上下左右の外周辺の中央部分の方向となる。ガラス基板の外周辺において、上下左右の外周辺の中央部分は、ガラス基板の中央部からの距離が最も短くなる部分のため、4つの角部分に比べ、中央部との面内温度差が小さくなり、応力差を低減するこができる。従って、従来に比べて、照度ムラを抑制した偏光板ユニットを実現することができる。
また、ガラス基板を略正方形とすることにより、ガラス基板の上下左右の外周辺の各中央部は、それぞれガラス基板中央からの距離は同じになるため、外周辺における温度差は小さくなる。よってガラス基板全体の応力差が低減され照度ムラを抑制することができる。また、正方形とすることでガラス基板の面積は大きくなるので、偏光板の冷却効率を向上することができる。
【0010】
[適用例2]本適用例に係る光学ユニットは、入射する光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルと、上述した偏光板ユニットと、を備えた光学ユニットであって、偏光板ユニットは液晶パネルの光束射出側に配置され、液晶パネルと偏光板ユニットとの間には、液晶パネルから射出される所定の偏光方向を有する偏光光を、偏光軸の方向に合わせるように位相をずらす位相差板を備えることを特徴とする。
【0011】
このような光学ユニットによれば、偏光板ユニットが液晶パネルの光束射出側に配置され、液晶パネルと偏光板ユニットとの間には、液晶パネルから射出される所定の偏光方向を有する偏光光を、偏光板ユニットの偏光軸の方向に合わせる位相差板を備えることにより、液晶パネルの構成を従来通りとしたまま、液晶パネルから射出された偏光光の効率を低下させることなく偏光板ユニットに入射させることができると共に、照度ムラを抑制することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る光学ユニットにおいて、偏光板ユニットおよび位相差板は液晶パネルの光束入射側に配置されていることが好ましい。
【0013】
このような光学ユニットによれば、液晶パネルの光束入射側に配置される偏光板ユニットも上記構成とすることにより、偏光板ユニットにおける照度ムラを抑制することができる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係るプロジェクターは、上述した光学ユニットを備え、光学ユニットで変調された光を投写することを特徴とする。
【0015】
このようなプロジェクターによれば、照度ムラを抑制し、コントラスト低下を抑制できるプロジェクターを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るプロジェクターの概略構成を模式的に示す図。
【図2】偏光板ユニットの構成を示す正面図。
【図3】光学ユニットの構成を模式的に示す斜視図。
【図4】従来の偏光板ユニットに対して黒表示画像を入射させて射出された場合の画像を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態)
【0018】
図1は、実施形態に係るプロジェクター1の概略構成を模式的に示す図である。図1を参照して、本実施形態のプロジェクター1の概略構成を説明する。
本実施形態のプロジェクター1は、光源装置30(光源301)から射出される光束を画像情報に応じて変調してスクリーン(図示省略)等の投写面に拡大投写する装置である。
【0019】
図1を含む以降の図面では、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜異ならせて示している。また、図1〜図3の図面では、説明の便宜上、XYZ直交座標系で記載する。XYZ直交座標系は、光源装置30から射出された光束の進行方向(照明光軸OAに沿う方向)をY方向(+Y方向)とし、Y方向に直交し、画像光が投写される方向(Y方向基端側から見て右方向)をX方向(+X方向)とする。更に、X方向及びY方向に直交し、かつ、据置き姿勢での上方向をZ方向(+Z方向)とする。
【0020】
図1に示すように、プロジェクター1は、光学ユニット3、制御部(図示省略)、制御部等に電力を供給する電源ユニット(図示省略)、及びプロジェクター1内部を冷却する冷却機構(図示省略)等を備え、これら各装置が外装筺体2内部に収容されている。
【0021】
光学ユニット3は、制御部による制御に基づき、光源装置30から射出された光束を光学的に処理して画像情報に応じた画像光を形成して投写するユニットである。光学ユニット3は、光源装置30、照明光学装置31、色分離光学装置32、リレー光学装置33、電気光学装置34、及びこれら光学装置30〜34を内部に収容すると共に、投写レンズ35を所定の位置で支持固定する光学部品用筺体36を備えて構成されている。
【0022】
光源装置30は、光源301及びリフレクター302を備える。光源装置30は、光源301から射出された光束をリフレクター302によって射出方向を揃え、照明光軸OAに対して平行化して照明光学装置31に向けて射出する。照明光軸OAは、光源装置30から被照明領域側に射出される光束の中心軸である。本実施形態の光源装置30は、超高圧水銀ランプを採用している。
【0023】
照明光学装置31は、第1レンズアレイ311と、第2レンズアレイ312と、偏光変換素子313と、重畳レンズ314と、平行化レンズ315と、を備えている。第1レンズアレイ311は、光源装置30から射出された光束を部分光束に分割し、照明光軸OAに沿った方向に射出する。第2レンズアレイ312は、第1レンズアレイ311から射出された部分光束をそれぞれ重畳レンズ314に向けて射出する。
【0024】
偏光変換素子313は、第2レンズアレイ312から射出されたランダム偏光光となる各部分光束を後述する液晶パネル342で利用可能な略1種類の偏光光に揃える機能を有する。なお、第2レンズアレイ312から射出され、偏光変換素子313によって略1種類の偏光光に変換された各部分光束は、重畳レンズ314によって、液晶パネル342の表面に略重畳される。なお、重畳レンズ314から射出された光束は、平行化レンズ315により平行化されて液晶パネル342に重畳される。平行化レンズ315は、後述する3色の色光毎に設けられている。
【0025】
色分離光学装置32は、第1ダイクロイックミラー321と、第2ダイクロイックミラー322と、反射ミラー323と、を備えている。色分離光学装置32は、照明光学装置31から射出された光束を、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光の3色の色光に分離する。
【0026】
リレー光学装置33は、入射側レンズ331と、リレーレンズ333と、反射ミラー332,334と、を備えている。リレー光学装置33は、色分離光学装置32で分離されたR光をR光用の液晶パネル342Rまで導く。なお、本実施形態では、リレー光学装置33がR光を導く構成としているが、これに限定されず、例えば、B光を導く構成としてもよい。
【0027】
電気光学装置34は、色光毎に、入射側偏光板341と、光変調装置としての液晶パネル342と、位相差板(射出側位相差板343)と、射出側偏光板344とを備えている。また、電気光学装置34は、クロスダイクロイックプリズム345を備えている。なお、色光に対応して、各部材を示す符号の末尾には、R光用には「R」、G光用には「G」、B光用には「B」を付記している。なお、射出側位相差板343と射出側偏光板344とは、後述する偏光板ユニット5を構成している。
【0028】
液晶パネル342(342R,342G,342B)は、色分離光学装置32で色光毎に分離された光束を画像情報に応じて変調する。クロスダイクロイックプリズム345は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状を有し、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。クロスダイクロイックプリズム345は、液晶パネル342R,342G,342Bで変調された各色光を合成し、投写レンズ35に射出する。
【0029】
投写レンズ35は、複数のレンズを組み合わせた組レンズで構成され、電気光学装置34で変調され合成された光束をスクリーン等の投写面上に拡大投写する。
【0030】
図2は、本実施形態の偏光板ユニット5の構成を示す正面図である。図3は、本実施形態の光学ユニット3の構成を模式的に示す斜視図である。なお、本実施形態の偏光板ユニット5は、各色光用に、3つの偏光板ユニット5(R光用の偏光板ユニット5R、G光用の偏光板ユニット5G、B光用の偏光板ユニット5B)を備えており、いずれの構成も略同様であるため、図2では、説明の便宜上、B光用の偏光板ユニット5Bを取り上げて、偏光板ユニット5を説明する。また、光学ユニット3においても、各色光用に、電気光学装置34(クロスダイクロイックプリズム345は省く)を備えていており、いずれの構成も略同様であるため、図3では、説明の便宜上、B光用の電気光学装置34の構成を取り上げて光学ユニット3を説明する。図2、図3を参照して、偏光板ユニット5及び光学ユニット3の構成及び動作を説明する。
【0031】
図2に示すように、偏光板ユニット5B(5)は、略正方形の外形を有するガラス基板51と、ガラス基板51に設置される矩形状の偏光板としての射出側偏光板344B(344)とを有して構成される。また、本実施形態の偏光板ユニット5B(5)は、図1、図3に示すように、液晶パネル342B(342)と射出側偏光板344B(344)との間に設置される位相差板としての射出側位相差板343B(343)を備えて構成されている。
【0032】
図2に示すように、射出側偏光板344は、偏光軸3441を、ガラス基板51の対角方向に合わせて設置されている。なお、本実施形態では、偏光軸3441は、対角方向として、ガラス基板51の右上方向(+X方向で+Z方向)の角部511と、左下方向(−X方向で−Z方向)の角部512とに合わせている。言い換えると、偏光軸3441は、射出側偏光板344に正対し、ガラス基板51の中心C1を通る左右対称となる中心軸C2に対して、時計回り方向に45度傾斜している。
【0033】
ここで、図3を参照して、液晶パネル342の構成に関して説明する。
液晶パネル342は、いわゆる高温ポリシリコンTFT液晶パネルとして構成されている。液晶パネル342は、詳細には、画素電極(図示省略)がマトリクス状に形成されたアクティブマトリクス基板342B1と、対向電極(図示省略)および遮光膜(図示省略)が形成された対向基板342B2と、これらの基板342B1,342B2間に封入、挟持される液晶(図示省略)とから概略構成されている。
【0034】
また、アクティブマトリクス基板342B1及び対向基板342B2のそれぞれには、配向処理としてのラビング処理が施されている。詳細には、アクティブマトリクス基板342B1に形成した配向膜(図示省略)の表面には、垂直方向(Z方向)に対して0度をなす方向(ラビング方向B1で示す)にラビング処理が行われ、対向基板342B2に形成した配向膜(図示省略)の表面には、垂直方向(Z方向)に対して90度をなす方向(ラビング方向B2で示す)にラビング処理が行われる。この結果、液晶は、アクティブマトリクス基板342B1と対向基板342B2との間で、長軸方向が90度捩じれる。すなわち、液晶は、90度のツイスト角をもって捩じれ配向されている。
【0035】
次に、図3を参照して、光学ユニット3の構成と動作を説明する。なお、色光を表す符合Bは省略して説明する。
図3に示すように、光学ユニット3は、液晶パネル342の入射側に入射側偏光板341が設置され、射出側に射出側偏光板344が設置される。また、本実施形態では、液晶パネル342と射出側偏光板344との間には、液晶パネル342を透過してきた所定の偏光方向を有する偏光光を、射出側偏光板344の偏光軸3441の方向に合わせるように位相をずらす(回転させる)位相差板としての射出側位相差板343が設置されている。
【0036】
光学ユニット3は、光源装置30(図1参照)から射出され、偏光変換素子313(図1参照)により偏光方向が揃えられた偏光光L(本実施形態では偏光方向は水平方向に揃えられている)は、図3に示すように、水平方向の偏光軸3411を有する入射側偏光板341に入射する。そして入射側偏光板341を通過した偏光光(光)は、矢印3421で示すように、ラビング方向B2に平行に、液晶パネル342に入射する。液晶パネル342に入射した光のうち、液晶に電圧が印加されていない画素に入射した光は、矢印3422で示すように、ラビング方向B1に偏光軸が90度捩じられた後、射出側位相差板343に射出される。
【0037】
次に、射出側位相差板343に入射した光(矢印3431で示す)は、時計回り方向に45度回転された光(矢印3432で示す)として射出側偏光板344に射出される。射出側偏光板344に入射した光は、射出側偏光板344の偏光軸3441が、時計回り方向に45度傾斜しているため、この射出側偏光板344を透過する。
【0038】
なお、液晶パネル342に入射した光のうち、液晶に電圧が印加された画素に入射した光は、偏光軸が90度捩じられないまま出射されるので、射出側偏光板344に吸収されて遮断される。
【0039】
光学ユニット3により、偏光板ユニット5の射出側偏光板344からは、偏光軸3441に沿った方向の光(偏光光)が射出される。また、射出側偏光板344で遮断された光により、射出側偏光板344は発熱する。この熱がガラス基板51に伝達してガラス基板51が発熱する。
【0040】
図2に戻り、発熱するガラス基板51の面内において、中央部A1が最も高温となる。また、ガラス基板51は、略正方形のため、ガラス基板51の中央部A1との温度差が最も大きくなる部分(面内温度差が最も大きくなる部分)は、中心C1との距離が最も長くなる部分となる4つの角部(例えば、角部511(領域A2))となる。また、ガラス基板51の上下左右の外周辺において中央部A1との温度差が最も小さくなる部分(面内温度差が最も小さくなる部分)は、中心C1との距離が最も短くなる部分となる上下左右の外周辺の中央部分(例えば、中心軸C2と上側の外周辺の交点513部分(領域A3))となる。
【0041】
なお、本実施形態では、射出側偏光板344の偏光軸3441は、略正方形であるガラス基板51の角部511と角部512を結ぶ対角方向、すなわちガラス基板51の中央部A1との温度差が最も大きくなる4つの角部に合わせている。言い換えると、ガラス基板51の中心C1を通る中心軸C2に対して、時計回り方向に45度傾斜させている。
【0042】
そして、照度ムラの原因となる偏光軸3441方向に対して±45度方向の部分は、本実施形態の場合、ガラス基板51の上下左右の外周辺の中央部分となり、詳細には、ガラス基板51の中心軸C2と上下の外周辺が交わる部分と、中心C1を通るX軸と左右の外周辺が交わる部分となる。従って、例えば上述した交点513部分(領域A3)となる。
【0043】
これにより、偏光板ユニット5は、照度ムラの原因となる、偏光軸3441方向に対して±45度方向の部分を、ガラス基板51の中央部A1との温度差が最も小さくなる(中央部A1との応力差が最も小さくなる)部分(例えば、交点513部分(領域A3))と一致させている。また、言い換えると、応力差が大きくなる部分(ガラス基板51の4つの角部分(例えば、角部511(領域A2))と、応力差が照度ムラに影響する部分(偏光軸3441方向に対して±45度方向となる部分)とをずらしている。
【0044】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の偏光板ユニット5は、略正方形の外形を有するガラス基板51と、ガラス基板51に設置される矩形の射出側偏光板344とを備える。そして、射出側偏光板344は、ガラス基板51の対角方向(角部511,512方向)に偏光軸3441を合わせて設置される。これにより、応力差が大きくなる部分(ガラス基板51の4つの角部分(例えば、角部511(領域A2))と、応力差が照度ムラに影響する部分(偏光軸3441方向に対して±45度方向となる部分)とをずらすことができる。詳細には、本実施形態では、照度ムラの原因となる偏光軸3441方向に対して±45度の方向は、ガラス基板51の上下左右の外周辺の中央部分(例えば、交点513部分(領域A3))の方向となる。ガラス基板51において、上下左右の外周辺の中央部分(例えば、交点513部分(領域A3))は、ガラス基板51の外周辺において中央部A1からの距離が最も短くなる部分のため、4つの角部分(例えば、角部511(領域A2))に比べ、中央部A1との面内温度差が小さくなり、応力差を小さく(低減)するこができる。従って、従来に比べて、照度ムラを抑制することができる偏光板ユニット5を実現できる。
【0045】
本実施形態の偏光板ユニット5は、ガラス基板51が、略正方形をなしていることにより、上下左右の外周辺の各中央部は、ガラス基板51の中央からの距離が同じになるため、外周辺における温度差が小さくなり、応力差を低減することができる。ガラス基板51が、例えば、矩形(長方形)をなしている場合では2つの短い辺の中央部分は、2つの長い辺の中央部分に比べて、中央部との温度差が大きくなり、応力差も大きくなる。従って、照度ムラが発生し易くなる。ガラス基板51を略正方形とすることによって、応力差を低減して照度ムラを抑制することができる。
また、ガラス基板51を略正方形とすることによって、矩形(長方形)の場合に対して面積は大きくなるので、偏光板の冷却効率を向上することができる。
【0046】
本実施形態の光学ユニット3は、偏光板ユニット5が液晶パネル342の光束射出側に配置され、液晶パネル342と偏光板ユニット5との間には、液晶パネル342から射出される所定の偏光方向を有する偏光光を、偏光板ユニット5の偏光軸3441の方向に合わせる射出側位相差板343を備える。これにより、液晶パネル342の構成を従来通りとしたまま、液晶パネル342から射出された偏光光の効率を低下させることなく、射出側偏光板ユニット5に入射させることができると共に、照度ムラを抑制することができる。
【0047】
本実施形態のプロジェクター1は、光学ユニット3を備え、光学ユニット3で変調された光を投写することにより、照度ムラを抑制し、コントラスト低下を抑制できるプロジェクター1を実現できる。
【0048】
本実施形態の偏光板ユニット5によれば、従来のように、線膨張係数の絶対値が低いガラス基板を用いずとも、照度ムラを抑制することができるため、光源装置30の明るさを向上させた場合や、光学ユニット3を小さくした場合にも適用することができる。従って、プロジェクター1の高輝度化や小型化に対して好適となる。
【0049】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0050】
前記実施形態の偏光板ユニット5において、射出側偏光板344は、偏光軸3441をガラス基板51の対角方向に合わせて設置されている。詳細には、偏光軸3441は、ガラス基板51の右上方向(+X方向で+Z方向)の角部511と、左下方向(−X方向で−Z方向)の角部512とに合わせている。言い換えると、偏光軸3441は、ガラス基板51の中心C1を通る左右の対称となる中心軸C2に対して、時計回り方向に45度傾斜している。しかし、これに限られず、偏光軸3441は、中心C1を通る中心軸C2に対して、反時計回りの方向に45度傾斜していてもよい。
【0051】
前記実施形態の偏光板ユニット5は、B光用の偏光板ユニット5Bを取り上げて説明しているが、R光用の偏光板ユニット5R、G光用の偏光板ユニット5Gに対しても同様に適用できる。また、前記実施形態の光学ユニット3としてB光用の電気光学装置34を取り上げて説明したが、R光用の電気光学装置34や、G光用の電気光学装置34に対しても同様に適用できる。
【0052】
前記実施形態の光学ユニット3は、偏光板ユニット5が液晶パネル342の光束射出側に配置され、液晶パネル342と偏光板ユニット5との間には位相差板(射出側位相差板343)を備えている。しかし、これに限られず、偏光板ユニットおよび位相差板は液晶パネル342の光束入射側にも配置されていることでもよく、偏光板ユニットにおける照度ムラをさらに抑制することができる。
【0053】
前記実施形態のプロジェクター1は、R光、G光、B光に対応する3つの液晶パネル342を用いる、いわゆる3板方式を採用している。しかし、これに限られず、単板方式の光変調装置を採用してもよい。また、コントラストを向上させるための光変調装置を追加して採用してもよい。
【0054】
前記実施形態の光源装置30は、超高圧水銀ランプを採用しているが、これに限られず、高輝度発光する種々の放電型のランプを採用することができ、例えば、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等を採用することができる。また、これに限られず、光源装置30は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)素子、シリコン発光素子等の各種固体発光素子を採用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…プロジェクター、3…光学ユニット、5…偏光板ユニット、30…光源装置、51…ガラス基板、342…液晶パネル、343…射出側位相差板、344…射出側偏光板、3441…偏光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と当該ガラス基板に設置される偏光板とを備える偏光板ユニットであって、
前記ガラス基板は、略正方形の外形を有し、
前記偏光板は、前記ガラス基板の対角方向に偏光軸を合わせて設置されていることを特徴とする偏光板ユニット。
【請求項2】
入射する光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルと、
請求項1に記載の偏光板ユニットと、を備えた光学ユニットであって、
前記偏光板ユニットは前記液晶パネルの光束射出側に配置され、前記液晶パネルと前記偏光板ユニットとの間には、前記液晶パネルから射出される所定の偏光方向を有する偏光光を、前記偏光軸の方向に合わせるように位相をずらす位相差板を備えることを特徴とする光学ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の光学ユニットであって、
前記偏光板ユニットおよび前記位相差板は前記液晶パネルの光束入射側に配置されていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の光学ユニットを備え、当該光学ユニットで変調された光を投写することを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113870(P2013−113870A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257166(P2011−257166)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】