説明

偏光板及びその製造方法

【課題】ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面には接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムを積層してなる偏光板において、カールの発生を抑制する。
【解決手段】ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムを積層して偏光板を製造するにあたり、該酢酸セルロース系フィルムは、80℃で24時間放置した後に発生するカールの凸面側で前記偏光フィルムに接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムが積層され、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムが積層された偏光板及びその製造方法に関するものである。詳しくは、かかる構成において、カールの発生を抑え、液晶セルに貼合するときに気泡の混入が起こりにくい偏光板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は通常、二色性色素が吸着配向したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面に、接着剤を介して、透明樹脂フィルム、例えば、トリアセチルセルロースに代表される酢酸セルロース系の保護フィルムを積層した構成となっている。また、シクロオレフィン系樹脂フィルムなどが延伸された光学フィルムを、粘着剤を介して偏光板に貼り合わせることで、液晶セルに適用して液晶表示装置としたときに、様々な角度からの視認性が改良され、良好な視野角が得られる。
【0003】
ポリビニルアルコール系の偏光フィルムにシクロオレフィン系樹脂フィルムを貼り合わせることも知られており、例えば、特開平 5-212828 号公報(特許文献1)には、ポリビニルアルコール系シートの少なくとも片面に、アクリル系粘着剤を介して熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シートを積層し、加熱圧着して偏光板とすることが記載されている。しかしながら、アクリル系などの粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)は、それ自体の厚みが10〜50μm 程度になるため、液晶表示装置が厚くならざるを得ず、また、偏光フィルムとシクロオレフィン系樹脂フィルムを1枚づつ貼りあわせるために煩雑さを伴った。
【0004】
一方、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを貼り合わせることも知られており、例えば、特開 2005-70140 号公報(特許文献2)、特開 2005-181817号公報(特許文献3)及び特開 2005-208456号公報(特許文献4)には、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに、ウレタン樹脂、特にポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を含む水系の接着剤を介して、シクロオレフィン系樹脂フィルムを積層することが記載されている。これらの公報に記載の技術によれば、ロール・トゥ・ロール方法によりポリビニルアルコール系偏光フィルムにシクロオレフィン系保護フィルムを直接積層することができる。
【0005】
また、偏光フィルムの両面に保護フィルムを積層した偏光板において、その偏光板が一方の面側に反る、いわゆるカールが問題になることもある。このようなカールに対して、例えば、特開 2004-184809号公報(特許文献5)には、カールを有する2枚の保護シートを、カールの向きがそれぞれ逆方向となるように偏光フィルムの両面に貼り合わせる手法が開示されている。
【0006】
さらに、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面にシクロオレフィン系樹脂フィルムを、他方の面に酢酸セルロース系フィルムを貼合することも知られており、例えば、前記特許文献4や特開 2005-352011号公報(特許文献6)には、このような構成が開示されている。ポリビニルアルコール系偏光フィルムの一方の面にシクロオレフィン系樹脂フィルムが貼合され、他方の面に酢酸セルロース系フィルムが貼合された偏光板は、非対称構成であり、なおかつ、シクロオレフィン系樹脂フィルム自体のカールが極めて小さいために、ポリビニルアルコール系偏光フィルムの両面に酢酸セルロース系フィルムを積層した対称構成を有する偏光板と比較して、カール量が大きくなりやすく、液晶セルへの貼合時に気泡が混入しやすいという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平5−212828号公報
【特許文献2】特開2005−70140号公報
【特許文献3】特開2005−181817号公報
【特許文献4】特開2005−208456号公報
【特許文献5】特開2004−184809号公報
【特許文献6】特開2005−352011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面には接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムを積層してなる偏光板において、カールの発生を抑制することにある。
【0009】
本発明者らは、かかる目的のもとで鋭意研究を行った結果、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムが積層され、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムが積層されてなる偏光板において、酢酸セルロース系フィルムの偏光フィルムへの接着面に着目することで、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムが積層され、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムが積層されてなり、その酢酸セルロース系フィルムは、80℃で24時間放置した後に発生するカールの凸面側が前記偏光フィルムへの接着面とされている偏光板が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムを積層して偏光板を製造するにあたり、その酢酸セルロース系フィルムは、80℃で24時間放置した後に発生するカールの凸面側で前記偏光フィルムに接着する偏光板の製造方法も提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムが積層され、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムが積層されてなる偏光板において、カールの発生を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面には接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムを積層したものである。
【0014】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムは、具体的には、一軸延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向したものである。
【0015】
偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度、好ましくは1,500〜5,000程度である。
【0016】
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、10〜150μm 程度である。
【0017】
偏光フィルムは通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、製造される。
【0018】
一軸延伸は、染色の前に行ってもよいし、染色と同時に行ってもよいし、染色の後に行ってもよい。一軸延伸を染色の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行うなどの乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常2〜8倍程度である。
【0019】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として具体的には、ヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0020】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり 0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり 0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
【0021】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部程度、好ましくは1×10-3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
【0022】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度、好ましくは5〜12重量部程度である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
【0023】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒程度である。
【0024】
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色及びホウ酸処理が施されて、偏光フィルムが得られる。この偏光フィルムの厚みは、5〜40μm 程度である。本発明では、この偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面には接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムを積層する。
【0025】
シクロオレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂である。このシクロオレフィン系樹脂は、上記シクロオレフィンの開環重合体や2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であることができるほか、シクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物などとの付加共重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも有効である。
【0026】
シクロオレフィンと鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体とする場合、鎖状オレフィンの例としては、エチレンやプロピレンなどが挙げられ、またビニル基を有する芳香族化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレンなどが挙げられる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは50モル%以下、例えば、15〜50モル%程度であってもよい。特に、シクロオレフィンと鎖状オレフィンとビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体とする場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、このように比較的少ない量であることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%程度、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%程度である。
【0027】
市販の熱可塑性シクロオレフィン系樹脂として、ドイツの Ticona 社から販売されている“Topas ”、JSR(株)から販売されている“アートン”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア(ZEONOR)”及び“ゼオネックス(ZEONEX)”、三井化学(株)から販売されている“アペル”など(いずれも商品名)がある。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜して、フィルムとすることになるが、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法など、公知の方法が適宜用いられる。製膜されたシクロオレフィン系樹脂フィルムも市販されており、例えば、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ”及び“SCA40 ”、(株)オプテスから販売されている“ゼオノアフィルム”など(いずれも商品名)がある。
【0028】
シクロオレフィン系樹脂フィルムは、一軸や二軸に延伸されて、所定の複屈折特性を示すようにしたものであってもよい。この場合の延伸倍率は、通常 1.1〜5倍程度、好ましくは1.1〜3倍である。
【0029】
本発明においてもう一方の保護フィルムとなる酢酸セルロース系フィルムは、セルロースの部分又は完全酢酸エステル化物であって、例えば、トリアセチルセルロースフィルムやジアセチルセルロースフィルムなどが挙げられる。市販のトリアセチルセルロースフィルムとしては、富士写真フイルム(株)から販売されている“フジタック TD80 ”、“フジタック TD80UF ”及び“フジタック TD80UZ ”、コニカミノルタオプト(株)から販売されている“KC8UX2MW”及び“KC8UY ”などがある。
【0030】
酢酸セルロース系フィルムは、接着剤との接着力を上げるため、その表面にケン化処理を施しておくのが好ましい。ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法により、行うことができる。
【0031】
また、偏光フィルムへの貼合に先立って、水中に浸漬し、次いで乾燥する前処理を施しておくのが、カールを少なくするうえで好ましい。前処理の第一処理工程では、酢酸セルロース系フィルムを10〜50℃の温度で5〜10秒間水中に浸漬して、膨潤させる。この際、温度が高くなると、フィルム上にスジ状の欠陥が生ずることがあるため、好ましくは20〜45℃で行われる。第二処理工程では、酢酸セルロース系フィルム表面の乾燥処理を行う。乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥処理の温度は通常30〜100℃程度、好ましくは40〜60℃である。乾燥処理の時間は通常20〜600秒程度であり、好ましくは20〜60秒程度である。この際、酢酸セルロース系フィルムと偏光フィルムを貼合する面は、ロールの繰り出し方向を適宜変更することで調整することができる。
【0032】
酢酸セルロース系フィルムは、その偏光フィルムに接合される面と反対側の面に、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理、反射防止処理などの表面処理が施されていてもよい。また、液晶性化合物やその高分子量化合物などからなるコート層が形成されていてもよい。
【0033】
そして本発明では、酢酸セルロース系フィルムを80℃で24時間放置した後に発生するカールの凸面側で、ポリビニルアルコール系偏光フィルムに接着する。偏光板の保護フィルムとして用いられる酢酸セルロース系フィルムは、一般に、樹脂を溶剤に溶かした状態で、金属ベルトなどからなる支持体上に流延し、溶剤を揮発させる溶剤キャスト法により製造される。その際、空気側となる面はA面と呼ばれ、逆の支持体側となる面はB面と呼ばれる。後述する実施例で用いたフィルムは、A面側が凸になった。上記の如く、凸面側を偏光フィルムへの接着面とすることで、逆にした場合に比べ、得られる偏光板のカール量が少なくなる。
【0034】
偏光フィルムの両面に配置されるシクロオレフィン系樹脂フィルム及び酢酸セルロース系フィルムそれぞれの厚みは、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣るものとなり、一方で厚すぎると、透明性が低下したり、偏光板の重量が大きくなったりするなどの問題が生じる。そこで、シクロオレフィン系樹脂フィルムの適当な厚みは、例えば、5〜200μm程度であり、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。また、酢酸セルロース系フィルムの適当な厚みは、20〜200μm程度、好ましくは20〜100μm である。
【0035】
偏光フィルムの一方の面には、接着剤を介して、上で説明したようなシクロオレフィン系樹脂フィルムが、そして他方の面には、接着剤を介して、やはり上で説明したような酢酸セルロース系フィルムが、それぞれ積層されて、偏光板となる。
【0036】
偏光フィルムとシクロオレフィン系樹脂フィルムとの接合に用いる接着剤、また偏光フィルムと酢酸セルロース系フィルムとの接合に用いる接着剤は、接着剤層を薄くする観点から、水系のもの、すなわち、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものが好ましい。例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を用いた組成物が、好ましい接着剤として挙げられる。また、適当な接着性が得られるかぎり、偏光フィルムの両面に適用される接着剤は同じ組成であるのが、製造工程を簡素化できることから好ましい。
【0037】
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、そのポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合は、その水溶液が接着剤となる。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部である。
【0038】
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤には、接着性を上げるために、グリオキザールや水溶性エポキシ樹脂などの硬化性成分ないし架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂は、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂であることができる。かかるポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、住化ケムテックス(株)から販売されている“スミレーズレジン 650”や“スミレーズレジン 675”、また日本PMC(株)から販売されている“WS-525”などがある。これら硬化性成分ないし架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対し、固形分として通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。その添加量が少ないと、接着性向上効果が小さくなり、一方でその添加量が多いと、接着剤層が脆くなる傾向にある。
【0039】
接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤組成物の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂それ自体は公知であり、例えば特開平 7-97504号公報に、フェノール系樹脂を水性媒体中に分散させるための高分子分散剤の例として記載されており、また前述の特許文献2〜4には、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を接着剤として、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムにシクロオレフィン系樹脂フィルムを接合する形態が示されている。
【0040】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、例えば、親水性基含有化合物、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネートを反応させて得られる親水性基含有ウレタン樹脂を、水中に乳化させる方法により、製造できる。この際、ポリエステルポリオールに加えて、その他の高分子量ポリオール成分や低分子量の活性水素含有化合物を併用することもできる。高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオールなどが挙げられる。また低分子量の活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンの如きポリヒドロキシ化合物、エチレンジアミン、ピペラジンの如きジアミン化合物などが挙げられる。なかでも、低分子量の活性水素含有化合物を併用することは、好ましい形態である。
【0041】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、重量平均分子量が 5,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量が10,000以上300,000以下である。その重量平均分子量が 5,000より小さいと、接着剤層の強度が充分に得られず、また 300,000より大きいと、それを水分散液としたときの粘度が高くなり、取り扱いにくくなる。
【0042】
かかるポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂が水中に分散した状態で、水系接着剤とされる。この水系接着剤の粘度は、2,000mPa・sec 以下であるのが取り扱い上好ましく、さらには1,000mPa・sec以下、とりわけ500mPa・sec 以下であるのが一層好ましい。粘度が低いほど接着剤の塗布が行いやすく、また、得られた偏光板の外観も良好なものとなる。この水系接着剤におけるポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の固形分濃度は、粘度と接着強度の観点から、10〜70重量%の範囲が好ましく、とりわけ20重量%以上、また50重量%以下であるのが一層好ましい。
【0043】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水分散液にはさらに、ポリエチレングリコールやポリオキシエチレンなど、また界面活性剤などが添加されていてもよい。さらには、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール系樹脂などの水溶性樹脂が添加されていてもよい。
【0044】
市販のポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂として、例えば、大日本インキ化学工業(株)から販売されている“ハイドラン AP-20”、“ハイドラン APX-101H” などが挙げられる。
【0045】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水分散液からなる接着剤は、さらにグリシジルオキシ基を有する化合物を含有するのが好ましい。グリシジルオキシ基を有する化合物を併用することにより、偏光フィルムとそれに積層されるシクロオレフィン系樹脂フィルム又は酢酸セルロース系フィルムとの接着性が向上する。ここでいうグリシジルオキシ基とは、純化学的には2,3−エポキシプロポキシ基とでも呼ぶべきものである。グリシジルオキシ基を有する化合物の例として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0046】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物の混合比は、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の固形分100重量部に対して、グリシジルオキシ基を有する化合物が5〜100重量部程度の範囲となるように適宜選択するのが好ましく、さらにはグリシジルオキシ基を有する化合物が5〜60重量部、とりわけ5〜30重量部の範囲となるように選択するのがより好ましい。グリシジルオキシ基を有する化合物の比率をあまり下げると、充分な接着強度が得られず、またその比率があまり大きいと、接着剤の粘度が高くなって、取り扱いにくくなる。
【0047】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物とを含有する水系接着剤は、実質的に有機溶剤を用いる必要がないことから、環境上や作業者の健康上の障害を起こすおそれがないとともに、グリシジルオキシ基を有する化合物を併用したことで、高い接着力を与える。
【0048】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を接着剤として用いる場合は、酢酸セルロース系フィルムに対する接着性を上げるため、イソシアナト基を有する化合物、とりわけ分子内に少なくとも2個のイソシアナト基を有するポリイソシアネート化合物を併用することが好ましい。かかるイソシアナト基含有化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の単量体あるいはオリゴマーや、これらの化合物とポリオールとの反応物が挙げられる。このために用いるポリオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらイソシアナト基含有化合物の分子量は、上記のオリゴマーやポリオールとの反応物の場合であっても、重量平均分子量で 5,000以下が好ましい。好適な市販のイソシアナト基含有化合物としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)から販売されている“ハイドラン アシスター C1”などが挙げられる。
【0049】
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とイソシアナト基含有化合物の混合比は、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の固形分100重量部に対して、イソシアナト基含有化合物が5〜100重量部程度の範囲となるように適宜選択するのが好ましく、さらにはイソシアナト基含有化合物が5〜60重量部、とりわけ5〜30重量部の範囲となるように選択するのがより好ましい。イソシアナト基含有化合物の比率をあまり下げると、充分な接着強度が得られず、またその比率があまり大きいと、接着剤の粘度が高くなって、取り扱いにくくなる。
【0050】
偏光フィルムにシクロオレフィン系樹脂フィルムや酢酸セルロースフィルムを接着剤で接合する方法は、通常一般に知られているものでよく、例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光フィルム及び/又はそこに接合されるフィルムの接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。接着剤を塗布した後、偏光フィルムとそれに接合されるフィルムをニップロールなどにより挟んで、貼り合わせる。
【0051】
また、接着表面には、接着性を上げるため、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。
【0052】
偏光フィルムの一方の面にシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面に酢酸セルロース系フィルムを積層した後は、乾燥処理が施される。乾燥処理は、例えば、熱風を吹き付けることにより行われるが、そのときの温度は40〜100℃程度、好ましくは60〜100℃の範囲から適宜選択される。乾燥時間は 20〜1,200秒程度である。乾燥後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度であり、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm 以下、さらに好ましくは1μm 以下である。接着剤層の厚みが大きくなりすぎると、偏光板の外観不良となりやすい。
【0053】
貼合後、室温以上の温度で少なくとも半日、通常は数日間以上の養生を施すことで、十分な接着強度が得られる。好ましい養生温度は、30〜50℃、さらに好ましくは35〜45℃である。養生温度が50℃以上になると、ロール巻き状態において、いわゆる「巻き締まり」が起こりやすくなる。なお、養生時の湿度は適度にあっても構わず、相対湿度が0%RH〜70%RH程度の範囲にあればよい。養生時間は、通常1日〜10日、好ましくは2日〜7日である。
【0054】
本発明の偏光板において、シクロオレフィン系樹脂フィルムと反対側に配置される酢酸セルロースフィルムの表面には、粘着剤を介して光学機能性フィルムを貼着してもよい。光学機能性フィルムとしては、例えば、基材表面に液晶性化合物が塗付され、配向されている光学補償フィルム、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光分離フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止処理付きフィルム、反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能を併せ持つ半透過反射フィルムなどが挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗付され、配向されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、富士写真フイルム(株)から販売されている“WVフィルム”、新日本石油(株)から販売されている“NHフィルム”や“NRフィルム”(いずれも商品名)などがある。ある種の偏光光を透過し、それとは逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光分離フィルムに相当する市販品としては、 Minnesota Mining and Manufacturing 社(3M社)(日本では住友スリーエム(株))から販売されている“DBEF”(商品名)などがある。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり、重量基準である。
【0056】
[製造例1]偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が 0.05/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコール樹脂にヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。
【0057】
[製造例2]接着剤の調製
水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレから入手した“クラレポバール KL318”〕3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂〔住化ケムテックス(株)から入手した“スミレーズレジン 650”(固形分濃度30%の水溶液)〕 1.5部を添加して、ポリビニルアルコール系接着剤とした。
【0058】
[実施例1]
厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト(株)から入手した“KC8UX2MW”〕をケン化処理し、次に30℃で10秒間水中に浸漬して膨潤処理を行い、その後80℃で53秒間の乾燥を行った。このフィルムにつき、80℃で24時間放置した後のカールを観察し、凸面となる側を確認した。この凸面となる側は、メーカーからの情報と照らし合わせると、A面(溶剤キャスト時の空気側)であった。
【0059】
製造例1で得られた偏光フィルムの片面に、製造例2で得られた接着剤を介して、上記のトリアセチルセルロースフィルムをそのカールの凸面側で貼合し、偏光フィルムの他方の面には同じ接着剤を介してノルボルネン系樹脂からなる厚さ73μm の保護フィルムを貼合した。その後、60℃から90℃の温度で5分間乾燥し、さらに40℃の環境下で7日間養生して、偏光板を得た。
【0060】
得られた偏光板を、その吸収軸(延伸方向)に対して各辺が45°の角度をなすように15cm×15cmの大きさの正方形に切断し、温度23℃、相対湿度50%で1時間調湿した後に、カール量を測定した。その結果、偏光板の4角のカールは0〜20mmであった。
【0061】
なお、偏光板のカール量は以下のようにして測定した。すなわち、図1に示すように、基準面5(例えば、机の上の平面など)に、カールした偏光板1を、その凹面を上にして置く。この図では、偏光板にカールがないと仮定した場合の面を、四角形ABCDで表される仮想面3として表示している。そして仮想面3における一つの角Aが、カールした偏光板1ではA1の位置にあり、別の角Cがカールした偏光板1ではC1の位置にあり、また別の角B及びDがカールした偏光板1ではB1及びD1の位置にあり、B1とBは同じ位置で、D1とDも同じ位置にあるように表示している(つまり、偏光板の角Bと角Dでは浮きがない状態に相当する)。ただし実際には、偏光板の4角のうち3角が、又は4角の全てが浮き上がることもある。こうして、偏光板の4角A1,B1,C1,D1のそれぞれについて、基準面からの高さHを測定し、それをカール量とした。
【0062】
[比較例1]
トリアセチルセルロースフィルムの偏光フィルムへの接着面をカールの凹面側とした以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板について、実施例1と同様に切断し、調湿した後、カール量を測定した。その結果、偏光板の4角のカールは0〜60mmであり、実施例1に比べて、カール量の最大値が3倍になっていた。
【0063】
[実施例2]
トリアセチルセルロースフィルムのケン化処理及び膨潤処理後の乾燥を60℃で53秒間とした以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板について、実施例1と同様に切断し、調湿した後、カール量を測定した。その結果、偏光板の4角のカールは0〜3mmであった。
【0064】
[比較例2]
トリアセチルセルロースフィルムの偏光フィルムへの接着面をカールの凹面側とした以外は、実施例2と同様にして偏光板を得た。得られた偏光板について、実施例1と同様に切断し、調湿した後、カール量を測定した。その結果、偏光板の4角のカールは0〜10mmであり、実施例2に比べて、カール量の最大値が3倍を超えていた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例における偏光板のカール量測定状態を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1……カールした偏光板、
3……偏光板がカールしていないと仮定したときの基準面上の仮想面、
5……基準面、
A,B,C,D……仮想面上の角、
A1,B1,C1,D1……カールした偏光板の角、
H……カール量(基準面から偏光板の角までの高さ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムが積層され、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムが積層されてなり、その酢酸セルロース系フィルムは、80℃で24時間放置した後に発生するカールの凸面側が前記偏光フィルムへの接着面とされていることを特徴とする偏光板。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの一方の面に、接着剤を介してシクロオレフィン系樹脂フィルムを積層し、他方の面に接着剤を介して酢酸セルロース系フィルムを積層して偏光板を製造するにあたり、酢酸セルロース系フィルムは、80℃で24時間放置した後に発生するカールの凸面側で前記偏光フィルムに接着することを特徴とする偏光板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−256569(P2007−256569A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80246(P2006−80246)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】