説明

偏光板用接着剤、それを用いた偏光板

【課題】 疎水性保護フィルムと偏光フィルムとの貼り合わせにおいて、良好な接着性が得られる偏光板用接着剤の提供である。
【解決手段】 ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とし、エチレン性不飽和単量体と重合開始剤を含有する偏光板用接着剤。偏光フィルムの少なくとも一方の面に、ケン化度が30〜70モル%のポリビニルアルコール系樹脂を主体とする接着剤層を介して、接着面の水の接触角が20〜90度である保護フィルムが積層されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせてなる偏光板において、かかる貼り合わせに用いられる偏光板用接着剤、およびかかる偏光板用接着剤を用いてなる偏光板に関する。さらに詳しくは、疎水性表面をもつ保護フィルムに対して良好な接着性を有する偏光板用接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は液晶テレビ、コンピューターディスプレイ、携帯電話やデジタルカメラなどの画像表示装置として広く用いられている。かかる液晶表示装置は、液晶が封入されたガラス基板の両側に偏光フィルムが積層された構成となっており、必要に応じて位相差板などの各種光学機能フィルムがこれに積層されている。
偏光フィルムとしては高ケン化度のポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する。)中にヨウ素などの二色性材料が分散、吸着され、延伸後、あるいは延伸と同時にホウ酸などの架橋剤によって架橋された一軸延伸フィルムが広く用いられている。
このPVA系樹脂の一軸延伸フィルムを用いた偏光フィルムは高湿度下において収縮しやすく、通常は、少なくとも一方の面、望ましくは両面に保護フィルムを貼り合わせることで耐湿性や強度を補い、これらを合わせて偏光板として用いられている。
【0003】
かかる保護フィルムとしては、透明性、機械強度、および耐湿性に優れる点からトリアセチルセルロースなどのセルロースエステル系樹脂が広く用いられている。さらに、より高度な耐熱性が求められる用途に対しては、ノルボルネン系樹脂などの環状オレフィン樹脂を用いた保護フィルムが使用されている。
【0004】
これらの保護フィルムは、接着剤によって偏光フィルムと貼り合わされるが、かかる接着剤としては、親水性表面をもつ偏光フィルムに対する接着性の点から、PVA系樹脂、特に偏光フィルムと同様の高ケン化度PVA系樹脂を主体とするものが好ましく用いられている。
一方、保護フィルムは耐湿性の要求から疎水性の材料が用いられるため、上述の高ケン化度PVA系樹脂を主体とする接着剤との接着性は低く、通常、その改善のため、接着面に親水化処理が施されている。
例えば、セルロースエステル系樹脂フィルムの場合には表面をアルカリ液で処理し、エステル基の一部を加水分解によって水酸基に変換したものが用いられている。また、環状オレフィン系樹脂からなる保護フィルムの場合も、コロナ放電処理やプラズマ処理によって、親水性を高めたものが用いられている。
【0005】
かかる保護フィルムの親水化処理は偏光フィルムとの接着面のみに行われるべきであるが、処理法の原理的な問題や装置の制約、および処理時の不備などによって反対側の面にその影響が及ぶ場合があり、これは、偏光板の耐湿性を低下させる原因となりうる。
【0006】
また、セルロースエステル系樹脂のケン化処理は強アルカリ性の処理液を必要とするため、作業時等の危険性や廃液処理の問題を有し、環状オレフィン系樹脂に用いられるコロナ放電処理やプラズマ処理は、高コストの設備を必要とし、さらに使用時に大きな電力を必要とすることから、製造コスト増につながる。
よって、疎水性保護フィルムの親水化処理を必要としない偏光板用接着剤が強く求められている。
【0007】
なお、偏光フィルムとノルボルネン系重合体フィルムの接着剤として、PVA系樹脂と、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する重合体成分を含有する接着剤が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
しかしながら、特許文献1に記載の接着剤は、その実施例に示された通り、コロナ処理が施されたノルボルネン系重合体フィルムに対しては良好な接着性を示すが、親水化処理を施していない疎水性フィルム、例えば、ケン化処理を施していないセルロースエステル系樹脂フィルムに対する接着性については、まだまだ改良の余地があるものであった。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−175721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、疎水性表面をもつ保護フィルムと、偏光フィルムとの貼り合わせにおいて、良好な接着性が得られる偏光板用接着剤の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、PVA系樹脂を主成分とし、エチレン性不飽和単量体と重合開始剤を含有する偏光板用接着剤によって本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、偏光板用接着剤として、PVA系樹脂とともに、エチレン性不飽和単量体とその重合開始剤を用いることを最大の特徴とするものである。かかる構成によって得られる効果、すなわち偏光フィルムと疎水性保護フィルムとの良好な接着性は、接着剤中のエチレン性不飽和単量体が疎水性保護フィルムの表面をわずかに侵食することによって接着剤のアンカー効果を高めるとともに、疎水性保護フィルムとの界面で重合体となることによって、接着性の向上に寄与しているものと推測される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偏光板用接着剤は偏光フィルム、および疎水性保護フィルムとの接着性に優れ、特に疎水性保護フィルムに対して、その表面を親水化処理することなく用いることが可能であることから、耐湿性に優れた偏光板が得られ、さらに製造工程の短縮、および製造コストの削減か可能となることから、工業的に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の偏光板用接着剤は、PVA系樹脂を主体とし、これにエチレン性不飽和単量体と重合開始剤を配合したものである。
【0013】
(PVA系樹脂)
まず、本発明の偏光板用接着剤で用いられるPVA系樹脂について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂は、酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体を重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られるものであり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とビニルエステル構造単位から構成される。
【0014】
かかるPVA系樹脂としては、ケン化度(JIS K 6726に準拠して測定)が30〜100モル%のものを用いることができるが、本発明の課題である疎水性表面をもつ保護フィルムとの良好な接着性を得るためには、ケン化度が30〜70モル%、特に30〜60モル%のものが好適である。
かかるケン化度が高すぎると、疎水性表面をもつ保護フィルム面との接着性が不充分となったり、エチレン性不飽和単量体との相溶性低下による著しい相分離によって接着層の凝集力が低下する傾向があり、逆に低すぎると偏光フィルム面との接着性が低下する傾向がある。
【0015】
また、PVA系樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常は300〜4000であり、特に400〜3000、さらに500〜2000であるものが好ましく用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると接着層の凝集力不足により、十分な接着性が得られない場合があり、逆に大きすぎると接着剤を溶液で使用する場合の粘度が高くなり、作業性が低下したり、基材への均一な塗工が困難になる傾向がある。
【0016】
本発明で用いられるPVA系樹脂としては、ビニルアルコール構造単位のみ、あるいはビニルアルコール構造単位とケン化度に応じて残存する酢酸ビニル構造単位のみからなるPVAや、本発明の目的を大きく阻害しない範囲で、これら以外の構造単位を有する各種変性PVA系樹脂を用いることが可能である。かかる変性PVA系樹脂としては、ビニルエステル系単量体の重合時に、他の単量体を用いて共重合し、ケン化して得られたものや、PVAに後反応によって官能基を導入したものを挙げることができる。
かかる変性PVA系樹脂の変性量は、通常、全構造単位に対し、0.1〜20モル%の範囲、特に1〜10モル%の範囲である。
【0017】
ビニルエステル系単量体との共重合に用いられる他の単量体としては、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、ビニレンカーボネート、等が挙げられる。
【0018】
また、ビニルエステル系単量体を重合、および共重合する際の重合条件(溶媒、浴比、圧力、温度など)などによって、主鎖中の異種結合による1,2−グリコール結合(通常は、1,3−グリコール結合)の量を適宜調整したものを用いることもできる。かかる1,2−グリコール結合量は、通常、1.0〜3.5モル%であり、この値が小さいものほど結晶性が向上し、逆の大きいものほど水溶液としたときの粘度安定性が向上する傾向がある。
【0019】
また、後反応によってPVAに導入される官能基としては、カルボキシル基、アセトアセチル基、ポリアルキレンオキサイド基、ヒドロキシアルキル基、シアノエチル基、アセタール基などを挙げることができる。
【0020】
これらの変性PVA系樹脂を用いることによって、本発明の接着剤に様々な機能を付与することができ、中でも、官能基同士の反応、あるいは架橋剤の併用によってPVA系樹脂を架橋させれば、接着層の耐湿性、耐水性を向上させることが可能である。かかる目的に対しては、反応性に富む官能基を有する変性PVA系樹脂が好ましく、特に、種々の架橋剤との反応を利用することができるアセトアセチル基を有する変性PVAが好適である。
以下、アセトアセチル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVA系樹脂と略記する。)について説明する。
【0021】
AA化PVAはビニルアルコール構造単位と酢酸ビニル構造単位に加えて、アセトアセチル基を含有する構造単位を有するものである。
PVA系樹脂にアセトアセチル基を導入する方法としては、例えば、(i)PVA系樹脂の水酸基とジケテンを反応させ、アセト酢酸エステル基とする方法、(ii)PVA系樹脂とアセト酢酸エステルのエステル交換反応による方法、(iii)酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができる。中でも、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂が得られることから、(i)の方法で製造するのが好ましい。以下、かかる方法について説明する。
【0022】
原料として用いるPVA系樹脂としては、ビニルアルコール構造単位とケン化度に応じて残存する酢酸ビニル構造単位のみからなるPVAが通常用いられるが、上述の各種変性PVA系樹脂を用いることも可能である。かかるPVA系樹脂の製造法、重合度、ケン化度等については、上述の通りである。
【0023】
かかるPVA系樹脂とジケテンとの反応は、(α)PVA系樹脂の粉体にガス状或いは液状のジケテンを直接反応させる方法、(β)その際に、PVA系樹脂粉体を酢酸等の有機酸によって予め膨潤させておく方法、(γ)PVA系樹脂を溶解し、ジケテンとの反応性を有さないDMSO等の有機溶剤に両者を溶解して反応させる方法などが挙げられ、PVA系樹脂のケン化度が90モル%以上である場合には(β)の方法、30〜80モル%の場合には(γ)の方法が好ましく用いられる。
【0024】
本発明で用いられるAA化PVA系樹脂の重合度、ケン化度は原料として用いたPVA系樹脂と同一である。また、AA化PVA系樹脂中のアセトアセチル基含有量(以下、AA化度と略記する。)は、通常、0.1〜20モル%であり、さらには1〜10モル%、特に3〜5モル%であるものが好適に用いられる。かかる含有量が少なすぎると、耐水性が不十分となったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に多すぎると、水溶性が低下したり、水溶液の安定性が低下する傾向がある。
【0025】
なお、接着剤中のPVA系樹脂のすべてがAA化PVA系樹脂であることが好ましいが、AA化PVA系樹脂以外のPVA系樹脂が併用されていてもよく、その含有量は通常20重量%以下であり、特に10重量%以下であることが好ましい。
かかるAA化PVA系樹脂以外の各種のPVA系樹脂の例としては、未変性のPVAや上述の各種変性PVA系樹脂を挙げることができる。
【0026】
(エチレン性不飽和単量体)
次に、本発明の偏光板用接着剤に用いられるエチレン性不飽和単量体について説明する。かかるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルエステル系単量体、アクリル酸またはそのエステル系単量体、アクリルアミド系単量体、ビニルエーテル系単量体、ビニルイミダゾール系単量体等を挙げることができる。
【0027】
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、1−メトキシビニルアセテート、酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
【0028】
アクリル酸またはそのエステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。なお、ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、またはメタアクリル酸を意味するものである。
【0029】
アクリルアミド系単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ジアセトンアクリルアミド等を挙げることができる。
【0030】
ビニルエーテル系単量体としては、メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0031】
ビニルイミダゾール系単量体としては、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール等を挙げることができる。
【0032】
その他、ヘキセン、オクテン等のオレフィン系単量体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル系単量体;(メタ)アクリルニトリル等のアクリロニトリル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;フマル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、無水トリメット酸等のカルボキシル基含有化合物及びそのエステル;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有化合物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物;は酢酸イソプロペニル、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0033】
かかるエチレン性不飽和単量体は、疎水性保護フィルム表面との親和性と、表面への侵食性に優れ、かつ常温で液体であるものが好ましく用いられる。中でも、アクリル酸またはそのエステル系単量体や、ビニルイミダゾール系単量体が、接着層の接着力向上に効果的である。
【0034】
また、各種官能基を含有する単量体を用いることも好ましい実施態様であり、例えば、アリル基、グリシジル基、加水分解性シリル基、アセトアセチル基、ビニル基、カルボニル基を有する単量体を挙げることができる。
【0035】
アリル基含有単量体としては、例えば、トリアリルオキシエチレン、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート等のアリル基を2個以上有するモノマー、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル等があげられる。
【0036】
グリシジル基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0037】
加水分解性シリル基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等があげられる。
【0038】
アセトアセチル基含有単量体としては、例えば、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピルクロトナート、2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等があげられる。
【0039】
ビニル基含有単量体としては、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーであることが好ましく、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等があげられる。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、ダイアセトンアクリルアミド等があげられる。
【0040】
中でも、疎水性保護フィルムとの親和性に優れ、さらに、反応性に富む官能基であるアセトアセチル基を含有する単量体が好ましく、特にアセトアセトキシエチルメタアクリレートが好ましく用いられる。
【0041】
本発明の偏光板用接着剤におけるエチレン性不飽和単量体の含有量は、通常、PVA系樹脂100重量部に対して10〜1000重量部であり、特に50〜700重量部、さらに100〜500重量部の範囲が好ましく用いられる。かかるエチレン性不飽和単量体の含有量が少なすぎると疎水性表面をもつ保護フィルム表面との接着性が不充分となる傾向があり、逆に多すぎると偏光フィルム表面との接着性が不充分となる傾向がある。
なお、かかるエチレン性不飽和単量体は、単独で用いてもよいが、複数の単量体を併用することも可能である。
【0042】
(重合開始剤)
次に、本発明の偏光板用接着剤に用いられる重合開始剤について説明する。かかる重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、電子線重合開始剤などの公知の開始剤を用いることが可能である。
【0043】
かかる熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
【0044】
また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
電子線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
かかる重合開始剤の含有量は、通常、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して0.1〜10重量部であり、特に1〜5重量部、さらに2〜3重量部の範囲が好ましく用いられる。かかる重合開始剤の含有量が少なすぎるとエチレン性不飽和単量体が重合されずに残存し、接着性を阻害する原因とる傾向がある。また、かかる含有量が過度に多すぎても、その効果には上限があり、経済的に不利である。
【0047】
(偏光板用接着剤)
次に、本発明の偏光板用接着剤について説明する。
接着剤の形態としては特に限定されないが、被着体である偏光フィルムあるいは保護フィルムの表面に均一な接着剤層を形成するために、液状であることが好ましく、本発明の偏光板用接着剤を液状とするには、各種溶剤の溶液あるいは分散液とする必要がある。特性が均一な接着層を得るためには、接着剤は溶液であることが望ましいが、分散液であってもその分散状態が良好であれば問題なく使用することができる。
かかる溶液あるいは分散液に用いられる溶剤としては、安全性の点、およびPVA系樹脂、エチレン性不飽和単量体に対する溶解性の点から、水と、水との混和性が高い有機溶剤の混合物が好適に用いられる。かかる有機溶剤としては、乾燥工程の短縮という観点から、沸点が100℃以下、特に80℃以下であるものが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数が1〜3である低級アルコール系溶剤や、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤が好ましく用いられ、中でも低沸点であり、低ケン化度のPVA系樹脂、およびエチレン性不飽和単量体の溶解性に優れるメタノールが好適に用いられる。
【0048】
かかる水/有機溶剤混合溶剤における両者の含有比率としては特に限定されるものでなく、乾燥条件や用いる有機溶剤の種類によって適宜選択すればよいが、通常、水/有機溶剤(重量比)が80/20〜20/80、特に70/30〜30/70、さらに60/40〜40/60の範囲が好適に用いられる。かかる有機溶剤の含有比率が高すぎると接着剤溶液の粘度安定性が低下する傾向にあり、低すぎると接着剤成分の溶解性が不充分となったり、保存中、あるいは使用中に析出、分離する場合がある。
【0049】
かかる接着剤溶液の固形分濃度は、所望の塗工量や塗工装置の特性によって一概に言えないが、通常は0.5〜30重量%であり、特に1〜20重量%、さらに3〜10%の範囲が好ましく用いられる。かかる濃度が低すぎる場合には乾燥に長時間を要するため生産性を損ない、逆に高すぎる場合には粘度が高くなり、均一な塗工が困難になる傾向がある。
【0050】
本発明の偏光板における接着剤層は、偏光フィルムと保護フィルムとの接着において、良好な接着強度を示すが、さらなる接着力の向上、あるいは耐水性や耐湿性を向上させる目的で、PVA系樹脂に対する架橋剤を併用することも好ましい実施態様である。かかる架橋剤としては、PVA系樹脂の架橋剤として公知のものを使用することができる。
特に、PVA系樹脂としてAA化PVA系樹脂を用いた場合には、架橋剤を併用することによって優れた耐水性、耐湿性を得ることができ、好ましい実施態様である。
【0051】
かかる架橋剤としては、例えば、多価金属化合物、ホウ素化合物、アミン化合物、ヒドラジン化合物、シラン化合物、メチロール基含有化合物、アルデヒド基含有化合物、エポキシ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物、ポリアミド樹脂等が挙げられるが、特に、多価金属化合物、アルデヒド基含有化合物、アミン化合物、ヒドラジン化合物、イソシアネート化合物が好適である。
【0052】
かかる多価金属化合物としては、アルミニウム原子、亜鉛原子、鉄原子、ジルコニウム原子、チタン原子、ガリウム原子、インジウム原子、ルテニウム原子、ハフニウム原子を含有する化合物であり、特に、ジルコニウム原子を有する化合物が好適である。
かかるジルコニウム原子を有する化合物としては、無機酸や有機酸の単塩および複塩、有機金属化合物、金属錯体、酸化化合物(ジルコニル化合物)などのいずれであってもよく、具体例としては、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、ジルコニウム酸、ジルコニウム酸塩、塩化ジルコニル(第一希元素化学社製「ジルコゾールZC」)、塩基性塩化ジルコニル(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZC−2」)、硫酸ジルコニル、硝酸ジルコニル(第一希元素化学社製「ジルコゾールZN」)、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニウムアンモニウム(第一稀元素化学社製「ジルコゾールAC−7」)、炭酸ジルコニウムカリウム(第一稀元素化学社製「ジルコゾールZK−10」)、酢酸ジルコニル、ステアリン酸ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、クエン酸ジルコニル、乳酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニル、リン酸ジルコニル、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(松本製薬工業社製「オルガチックスZC−150」)、ジルコニウムモノアセチルアセトネート(松本製薬工業社製「オルガチックスZC−540」)、ジルコニウムビスアセチルアセトネート(松本製薬工業社製「オルガチックスZC−550」)、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート(松本製薬工業社製「オルガチックスZC−560」)、ジルコニウムアセテート(松本製薬工業社製「オルガチックスZC−115」)、などが挙げられる。
これらのジルコニウム原子を含む化合物の中でも、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、酢酸ジルコニル、塩基性塩化ジルコニル、酸塩化ジルコニル、硝酸ジルコニルなどのジルコニル化合物が好ましく、特に、塩基性塩化ジルコニル、硝酸ジルコニルが本願発明の目的を顕著に発揮できる点で好適に用いられる。
【0053】
かかるアルデヒド基含有化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド等のモノアルデヒド類、グリオキザール、グルタルアルデヒド、マロンジアルデヒド、テレフタルアルデヒド、ジアルデヒド澱粉などを挙げることができ、中でもグリオキザールやグリオキシル酸のアルカリ(土類)金属塩が好適に用いられる。
【0054】
かかるヒドラジン化合物としては、ヒドラジン、ヒドラジンの塩酸,硫酸,硝酸,亜硫酸,リン酸,チオシアン酸,炭酸等の無機酸塩、およびギ酸,シュウ酸等の有機酸塩類、ヒドラジンのメチル,エチル,プロピル,ブチル,アリル等の一置換体、1,1−ジメチル,1,1−ジエチル等の対称二置換体などのヒドラジン誘導体、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素ファインテクノ社製「アミキュアVDH」等)、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド(味の素ファインテクノ社製「アミキュアUDH」等)、ポリアクリル酸ヒドラジド、N−アミノポリアクリルアミド、N−アミノアクリルアミド/アクリルアミド共重合体、などのヒドラジド化合物等を挙げることができ、特にアジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、N−アミノポリアクリルアミド、N−アミノアクリルアミド/アクリルアミド共重合体、等の多価ヒドラジド化合物が本願発明の目的を顕著に発揮できる点で好適に用いられる。
【0055】
かかるアミン化合物としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N−アミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式ポリアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、2、4’−トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、アミノ基変性PVA系樹脂、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンなどのアミノ基含有水溶性ポリマーを挙げることができ、特に1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、メタキシリレンジアミン、アミノ基変性PVA系樹脂、ポリエチレンイミン等が本願発明の目的を顕著に発揮できる点で好適に用いられる。
【0056】
これらの架橋剤の中でも、AA基との反応性に優れ、少量の添加により効率よく耐水性を付与できることから、アルデヒド基含有化合物、中でもグリオキザールやグリオキシル酸のアルカリ(土類)金属塩、特にグリオキシル酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0057】
かかる架橋剤の配合量としては、特に限定されるものではなく、所望の耐水性などから選定すればよいが、通常、PVA系樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、特に1〜30重量部、さらに3〜20重量部の範囲が好ましく用いられる。かかる架橋剤の配合量が多すぎると接着剤溶液の粘度安定性が悪くなる傾向にある。
【0058】
また、さらに本発明の目的を損なわない範囲、通常30重量%以下、特に20重量%以下で他の樹脂、例えばデンプン、セルロース等の多糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂、さらにはウレタン系接着剤やエマルジョン型接着剤を併用することができる。
また、同様に各種添加剤として、消泡剤、レベリング剤、着色剤、染料、顔料、蛍光増白剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤、熱安定化剤、界面活性剤、乾燥剤、消臭剤、抗菌剤、防腐剤、消泡剤等を含有させることができる。
【0059】
(偏光フィルム)
次に、本発明の偏光板用接着剤によって保護フィルムと貼りあわされる偏光フィルムについて説明する。
かかる偏光フィルムとしては、特に制限はなく、公知のものを使用することができる。例えば、(i)PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン−ビニルアルコール樹脂系フィルム、等のビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性色素などの二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの(例えば、特開2001−296427号公報、特開平7−333426号公報参照。)、(ii)(i)において二色性材料とともに液晶性を有する複屈折材料をビニルアルコール系樹脂フィルム中に有するもの(例えば、特開2007−72203号公報参照。)、(iii)二色性材料を含有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルムを一軸延伸したもの(例えば、特開2001−356213号公報参照。)、(iv)PVA系樹脂やエチレン−ビニルアルコール樹脂を脱水あるいは脱酢酸して連続するポリエン構造を導入し、これを延伸して得られるポリエン系フィルム(例えば、特開2007−17845号公報参照。)、などを挙げることができる。
中でも、偏光特性が優れる点から、PVA系フィルムにヨウ素が吸着された一軸延伸フィルムが好適である。
【0060】
かかる偏光フィルムの厚さは、通常0.1〜100μmであり、特に0.5〜80μm、さらに1〜60μmのものが好適に用いられる。
【0061】
(保護フィルム)
次に、本発明の偏光板用接着剤によって偏光フィルムと貼り合わされる保護フィルムについて説明する。
かかる保護フィルムは、偏光フィルムの少なくとも一方の面、望ましくは両面に貼り合わせることで、偏光フィルムの問題点である高湿度下での耐久性不足を補うもので、本発明では特に偏光フィルムと接着される面が疎水性であるものを用いることを特徴とするもので、かかる接着面の水の接触角は20〜90度の範囲にあるものである。さらに、かかる接触角は、特に30〜80度、ことに30〜60度のものが好適に用いられる。なお、かかる保護フィルム表面の接触角は、23℃、50%RHの雰囲気下、液滴法によって測定したものである。かかる水の接触角が小さすぎるものや、大きすぎるものは、偏光フィルムとの接着性が不充分となる傾向がある。
さらに、本発明で用いられる保護フィルムに求められる特性としては、透明性、機械強度、熱安定性、水分遮蔽性、光学的等方性などを挙げることができる。
【0062】
かかる保護フィルムの材料としては、上述の水との接触角が上述の範囲の疎水性を示すものであれば、特に限定されるものではないが、光学特性や耐久性などの点から、セルロースエステル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂が好適に用いられる。
また、その他の材料として、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂、(含フッ素)ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0063】
かかるセルロースエステル系樹脂フィルムに用いられるセルロースエステル系樹脂としては、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースが代表的であるが、その他にもセルロースの低級脂肪酸エステルや、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートなどの混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0064】
前述の環状オレフィン系樹脂フィルムに用いられる環状オレフィン系樹脂としてはノルボルネン系樹脂を挙げることができる。かかるノルボルネン系樹脂には、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体、ノルボルネンモノマーを付加重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加共重合させた樹脂などを包含するものである。
ノルボルネン系モノマーの具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二量体;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体;テトラシクロペンタジエンなどの七環体;これらのメチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル、ビニルなどのアルケニル、エチリデンなどのアルキリデン、フェニル、トリル、ナフチルなどのアリールなどの置換体;さらにこれらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基などの炭素、水素以外の元素を含有する基を有する置換体などが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂フィルムの市販品としては、JSR社製「ARTON」、日本ゼオン社製「ZEONOR」、「ZEONEX」、日立化成工業社製「OPTOREZ」、三井化学社製「APEL」などを挙げることができる。
【0065】
また、前述の(メタ)アクリル系樹脂フィルムに用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂、ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーなどが挙げられる。
かかる(メタ)アクリル系樹脂フィルムの市販品としては、三菱レイヨン社製「アクリペットVRL20A」、「アクリペットIRD−70」、UMGABS社製「MUX−60」などが挙げられる。
【0066】
なお、従来は、偏光フィルムとの接着剤として高ケン化度のPVA系樹脂を主体とするものが用いられていたため、かかる接着剤に対する接着性を向上させるため、セルロースエステル系樹脂からなるフィルムに対するアルカリ液によるケン化処理や、環状オレフィン系樹脂からなるフィルムに対するコロナ放電処理やプラズマ処理などの、表面親水化処理が行われていた。しかしながら、本発明の偏光板用接着剤は、PVA系樹脂にエチレン性不飽和単量体が配合されており、疎水性表面をもつ保護フィルムとの親和性が高いため、これらの処理を施さないものを使用するすることが可能である。
ただし、処理後の水との接触角が本発明で規定する範囲内になる程度であれば、保護フィルムに対し、上述の各種親水化処理を施すことを妨げるものではなく、特にコロナ放電処理やプラズマ処理は、接着性をさらに向上させるための有効な手段の一つである。
【0067】
また、保護フィルム表面の接着剤との親和性を高めるために、親水化以外の各種表面処理を行うことも可能であり、保護フィルムの表面に(メタ)アクリル酸エステル系ラテックスやスチレン系ラテックス、ポリエチレンイミン、ポリウレタン/ポリエステル共重合体などを含有する易接着層やアンカーコート層を設けたり、シランカップリング剤やチタンカップリング剤などのカップリング剤による表面処理方法などを挙げることができる。なお、上述の各種表面処理法を併用することも可能である。
また、帯電防止剤を表面に塗布あるいはフィルム中に含有させたものも好ましく用いられる。
【0068】
かかる保護フィルムの厚みは特に限定されないが、通常は偏光フィルムよりも厚いものが用いられ、偏光フィルムの基材として強度付与の機能をもつものであり、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
【0069】
また、かかる保護フィルムは、偏光フィルムと積層されない面にハードコート層を設けたり、スティッキング防止、反射防止、アンチグレアなどの各種処理を施すことも可能である。さらに、位相差板や視野角拡大フィルムなどの、各種光学機能フィルムを、積層することも可能である。
【0070】
(偏光板)
本発明の偏光板は、偏光フィルムの少なくとも一方の面、好ましくは両面に、本願の偏光板用接着剤によって保護フィルムを貼り合わせてなるものであり、通常は、液状とした本願の接着剤を偏光フィルムあるいは保護フィルム、あるいはその両方に均一に塗布し、両者を貼り合わせた後に圧着、加熱乾燥することで形成される。
かかる液状接着剤を偏光フィルムあるいは保護フィルム上に塗工するにあたっては、ロールコーター法、エアードクター法、ブレードコーター法、噴霧法、浸漬法や、偏光フィルムと保護フィルムを貼り合わせる直前に、該フィルム間に適量供給して流し込んだ後、両者を貼り合わせる等の公知の方法を用いることができる。
貼り合わせ、および圧着には、例えばロールラミネーターなどを用いることができ、その圧力は0.1〜10MPaの範囲から選択される。また、加熱乾燥条件としては、通常5〜150℃、特に30〜120℃において、10〜60分、さらには30秒〜30分、特に1〜20分の条件で行われる。
【0071】
なお、本発明の偏光板用接着剤中のPVA系樹脂としてAA化PVA系樹脂を用い、その架橋剤を併用した場合には、かかる接着剤の加熱乾燥過程においてAA化PVA系樹脂の架橋反応が進行する。
また、重合開始剤として、熱重合開始剤を用いた場合には、同様に、加熱乾燥時にエチレン性不飽和単量体の重合が進行し、通常は、乾燥の時間内に重合も完了するが、重合開始剤の含有量が少ない場合、あるいは乾燥温度が低い場合には、乾燥時間を延長して重合を完了させることが好ましい。
【0072】
また、重合開始剤として光重合開始剤や電子線重合開始剤を用いた場合には、加熱乾燥の後、得られた偏光板に直接、あるいは間接的に可視光、紫外線、あるいは電子線などを適宜照射することによって、偏光板用接着剤中のエチレン性不飽和単量体を重合させることが可能である。
【0073】
本発明の偏光板における接着剤層の厚さは、通常0.01〜10μm、特に0.05〜5μmの範囲から選定され、かかる厚さが薄すぎると接着力が不充分となる傾向があり、厚すぎると均一な塗工が困難になったり、厚さムラが生じて外観が悪くなる傾向がある。よって、本発明の接着剤の塗工量は、その濃度によって一概に言えないが、かかる接着剤層の厚さとなる量とすればよい。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0075】
実施例1
(1)接着剤の作製
平均重合度600、ケン化度35モル%のPVAの10%水溶液にメタノールを加え、固形分濃度5重量%、水/メタノールの比率5/5(重量比)の溶液とし、その2000重量部にエチレン性不飽和単量体として1−ビニルイミダゾール(1−VI)200重量部(PVAに対して200重量%)、重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンとベンゾフェノンの共融混合物(商品名「イルガキュア500」、長瀬産業社製)6重量部(1−VIに対して3重量%)添加して接着剤とした。
(2)偏光フィルムの作製
重合度2600、ケン化度99.8モル%のPVA系樹脂からなる厚さ50μmのPVAフィルムを30℃の水中に浸漬し、ついでヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム20g/Lを含有する30℃の染色液に浸漬・延伸、さらにホウ酸50g/L、ヨウ化カリウム50g/Lを含有する53℃のホウ酸処理液に浸漬・延伸して、延伸倍率4.0倍、厚さ28μmの偏光フィルムを得た。
(3)偏光板の作製
(2)で得られた偏光フィルム上に(1)で得られた接着剤を接着面を覆うのに必要充分量滴下し、これに厚さ80μmのトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを貼り合わせ、0.33MPaの圧力をかけてラミネートし、70℃で10分間乾燥して偏光板を得た。
なお、かかるトリアセチルセルロースからなる保護フィルムの水の接触角は、接触角計(協和界面科学社製)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、液滴法にて測定(n=10の平均値)で測定したところ、60度であった。
【0076】
(4)評価
〔接着強度〕
得られた偏光板から、偏光フィルムの延伸方向を長辺として100mm×25mmのサンプルを切り出し、保護フィルムと偏光フィルム間の接着強度を評価した。かかる評価は、島津製オートグラフAG−ISを用い、180度ピール法、試験速度300m/分で行った。結果を表1に示す。
【0077】
比較例1
実施例1において、エチレン性不飽和単量体と重合開始剤を配合しなかった以外は実施例1と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0078】
実施例2
実施例1において、接着剤として 平均重合度2000、ケン化度50モル%、AA化度4.5モル%のAA化PVAを用い、得られた固形分濃度5重量%、水/メタノールの比率5/5(重量比)の溶液2000重量部に、架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウム(GOA−Na)10重量部(AA化PVA系樹脂に対して10重量%)加え、これにエチレン性不飽和単量体として2−アセトキシエチルアクリレート(AAEA)100重量部(AA化PVAに対して100重量%)、重合開始剤としてメチルエチルケトンパーオキサイド(商品名「パーキュアーHB」、ジメチルフタレート溶液、日本油脂社製)2重量部(AAEAに対して2重量%)添加したものを用いた以外は実施例1と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0079】
比較例2
実施例2において、エチレン性不飽和単量体と重合開始剤を配合しなかった以外は実施例2と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0080】
比較例3
実施例2において、AA化PVA系樹脂とグリオキシル酸ナトリウムを用いず、水/メタノール(5/5)(重量比)のみの液2000重量部に、AAEA100重量部、メチルエチルケトンパーオキサイド(商品名「パーキュアーHB」、ジメチルフタレート溶液、日本油脂社製)2重量部(AAEAに対して2重量%)添加したものを用いた以外は実施例2と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表2に示す
【0081】
実施例3
実施例2において、エチレン性不飽和単量体として2−アセトキシエチルメタクリレート(AAEM)を用い、その添加量を200重量部(AA化PVAに対して200重量%)とし、重合開始剤(パーキュアHB)の添加量を4重量部(AAEMに対して2重量%)とした以外は実施例2と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0082】
実施例4
実施例3において、AAEMの添加量を500重量部(AA化PVAに対して500重量%)とし重合開始剤(パーキュアHB)の添加量を10重量部(AAEMに対して2重量%)とした以外は実施例2と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0083】
実施例5
実施例4において、AA化PVA系樹脂としてケン化度が60モル%、平均重合度2000、AA化度4.2モル%のものを用いた以外は実施例4と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0084】
比較例4
実施例5において、エチレン性不飽和単量体と重合開始剤を配合しなかった以外は実施例5と同様に偏光板用接着剤を作製し、同様に偏光板を作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の偏光板用接着剤は偏光フィルム、および疎水性保護フィルムとの接着性に優れ、特に疎水性保護フィルムに対して、その表面を親水化処理することなく用いることが可能であることから、耐湿性に優れた偏光板が得られ、さらに製造工程の短縮、および製造コストの削減か可能となることから、工業的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とし、エチレン性不飽和単量体と重合開始剤を含有することを特徴とする偏光板用接着剤。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が30〜70モル%である請求項1記載の偏光板用接着剤。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂がアセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂である請求項1または2記載の偏光板用接着剤。
【請求項4】
偏光フィルムと保護フィルムを請求項1〜3いずれか記載の偏光板用接着剤によって貼り合わせた後、接着剤中のエチレン性不飽和単量体を重合してなる偏光板。
【請求項5】
保護フィルムの水の接触角が20〜90度である請求項4記載の偏光板。

【公開番号】特開2011−132403(P2011−132403A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294462(P2009−294462)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】