説明

偏光板用表面フィルム及びこれを用いた偏光板

【課題】ディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力する様な、画像表示媒体への付加情報提供用に好適に使用することができ、このような機能を有するシートを使用者が後から貼り付けるのではなく、最初から組み込まれたものを提供すること。
【解決手段】基板の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターンが印刷され、その上に又は裏面に反射防止層又は防眩層が形成されてなるフィルムであって、該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことを特徴とする偏光板用表面フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板の表面に貼着するか、又は偏光版の一部として用いる偏光板用の表面フィルム及びこの表面フィルムを用いた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手書きした文字、絵及び記号などを、情報処理装置が扱うことのできる電子データに変換する必要性が高まっており、特に、スキャナーなどの読取装置を経由せず、手書き情報をリアルタイムでコンピューター等へ入力する方式への需要が高まっている。
それに対応して、例えば、手書き入力する為のペン及び被書込面を備えた入力手段と、該入力手段による手書き入力時の入力軌跡を読み取る入力軌跡読取手段と、該入力軌跡情報を電子データ化する入力軌跡変換手段と、該入力軌跡変換手段により変換したデータを情報処理装置に対して送信する入力軌跡データ送信手段を備えた書込型入力装置であって、前記入力軌跡読取手段が、被書込面上に形成された位置情報を提供するマークを、ペンに設置されたセンサーで読み取ることにより行われ、該被書込面が、位置情報を提供するマークとして赤外線を吸収する特殊なドットパターンが印刷されている特殊な用紙であり、前記ペンが該被書込面に対して赤外線を照射する赤外線照射部と、該ドットパターンにより反射された赤外線パターンを検知する赤外線センサーを備えている書込型入力装置が提案されている。
また、書込用パネルに感圧式センサーや静電式のセンサー、光センサーなどを設置し、該パネル表面にスタイラス型ペンや指などを使用して手書きした際の筆圧や静電気、影を検知することで入力軌跡を取得するタイプの書込型入力装置も提案されている。
【0003】
しかしながら前者の装置では、手書きした内容(入力軌跡)を電子データ化できるが、直接の入力対象は専用の用紙であり、電子データ化された入力軌跡情報を表示するには別途ディスプレイ装置が必要となる。紙の上に軌跡を記録できるよう黒鉛やインキを搭載したペン先を使うことで、軌跡情報を紙上で視認することはできるが、いずれにしろ例えばディスプレイに表示された図表に対して手書き入力をするといった、直感的でインタラクティブな運用には向いておらず、入力時の作業スペースもより広く必要となる。また、紙上に軌跡を記録する場合には、一度手書き入力が終わった用紙は使用できないため、消耗品である入力用紙を常備しておく必要があり、特に移動体用途には不向きである。
一方、後者の装置であると、被書込パネルに感圧式センサーや静電式のセンサーなどを備えるため、入力装置としては前者の装置に比べ小型化が難しく、重量、厚みが増加してしまう。またコスト的にも高価である。加えて、感圧式センサーや静電式のセンサーは、手や袖口が触れた際には、誤作動する可能性があり、通常のノート等に書く時の様に手の平の小指側側面を接触させてしまう書き方をする場合には、不向きなものとなる。このような装置は、書込パネルに透明な材料を用いディスプレイ前面に設置したり、書込パネル自体にディスプレイ機能を持たせることで、例えばディスプレイに表示された図表に対して手書き入力をするといった直感的でインタラクティブな運用が可能となるが、本方式の場合高価であるため大画面化が難しく、またサイズや重量の軽減が難しい為、携帯電話等の移動体用途にも不向きである。
【0004】
そこで、このような不具合を解決すべく、ディスプレイ装置の表示面に直接手書きした内容を情報処理装置に入力することを可能にしたものであって、コンパクトで安価に製造することが可能な入力装置が望まれていた。これを実現する為には、例えば、前者の書込型入力装置において、被書込手段であるところのドットパターンが印刷された用紙を可視領域の光に対して透明化し、ディスプレイ装置の前方または前面に設置すればよい。
このような要求を満たすシートとして、例えば、特許文献1には、ディスプレイ装置の前面若しくは前方に装着されるシートであって、入力用電子ペン等による入力軌跡の位置を示すための位置情報を提供可能なドットパターンからなるマークを所定波長の光を照射されて当該入力軌跡読取手段に読み取り可能な光を発光するインキを用いて印刷したものが開示されている。しかしながら、特許文献1には、そのような透明シートを具現化するインキの種類などは記載されておらず、シートのアイデアもしくは願望が記載されているに過ぎず、具体的なシートの例示はない。
また、上述のような透明シートは、使用者がモニターサイズに切り出し、斜めにならないように貼り付けるという煩雑な作業が必要であり、このような作業を必要とせず、モニター画面に直接手書きすることで、データ入力が可能なシステムが望まれる。
【0005】
【特許文献1】特開平2003−256137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、例えば、ディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力する様な、画像表示媒体への付加情報提供用に好適に使用することができ、しかも、このような機能を有するシートを使用者が後から貼り付けるのではなく、最初から組み込まれたものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基板の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターンが印刷され、その上に又はその裏面に反射防止層又は防眩層が形成されてなるフィルムを偏光板用の表面フィルムとして用いることで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基板の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターンが印刷され、その上に反射防止層又は防眩層が形成されてなるフィルムであって、該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことを特徴とする偏光板用表面フィルム、
(2)基板の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターンが印刷され、その裏面に反射防止層又は防眩層が形成されてなるフィルムであって、該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことを特徴とする偏光板用表面フィルム、及び
(3)上記偏光板用表面フィルムを用いた偏光板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偏光板用表面フィルムは、例えば、ディスプレイ装置に直接手書きして手書き情報の位置座標をデータ入力する様な、画像表示媒体への付加情報提供用に好適に使用することができ、しかも画像表示媒体の視認性を妨げない。また、該偏光板用表面フィルムを用いた本発明の偏光板は、ディスプレイ装置に組み込まれているために、特に使用者が後からこのような機能を付与するための透明シート等を貼り付けるなどの作業を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の偏光板用表面フィルムについて図1〜図4を用いて説明する。
本発明の偏光板用表面フィルムの第一の態様は、図1に示すように、基板11の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターン12が印刷されてなり、透明パターン12を構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことを特徴とする。そして、所望に応じて、透明パターン12とほぼ同じ厚さ、又は透明パターン12を覆う厚さで透明化層13が形成され、その上に反射防止層又は防眩層14が形成されるものである。
【0010】
この第一の態様の偏光板用表面フィルム10を用いた偏光板は、図2に示すように、偏光板20の一部として偏光板用表面フィルム10が組み込まれたものであり、反射防止層又は防眩層14が最外層となるように配置される。より具体的には、通常偏光板は、偏光子22に対して、接着剤層23を介して、両面に保護層(11及び21)が貼着されるが、一方の保護層を偏光板用表面フィルム10の基材11が兼ねるものである。すなわち、偏光子22の一方の面に本発明の偏光板用表面フィルム10が接着剤層23を介して基板11側で貼着され、他方の面に保護層21が接着剤層23を介して貼着された構成をとる。このような構成をとることにより、液晶ディスプレイの製造過程において、従来と同様に偏光板を装填するだけで、手書き情報の位置座標をデータ入力し得る機能を付与することができる。
なお、上記態様では、偏光板用表面フィルム10の基材11が、偏光子22の保護層を兼ねる態様であるが、先に偏光子22の両面に接着剤層23を介して保護層を形成しておき、一方の保護層の上に本発明の偏光板用フィルム10を接着剤等で貼着する態様も、この第一の態様に包含されるものである。
【0011】
次に、本発明の偏光板用表面フィルムの第二の態様は、図3に示すように、基板11の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターン12が印刷されてなり(図3では基板11の下側)、基板11の裏面(透明パターン12の反対側の面、図3では基板11の上側)に反射防止層又は防眩層14が形成されるものである。
【0012】
この第二の態様の偏光板用表面フィルム10を用いた偏光板は、図4に示すように、偏光板20の一部として偏光板用表面フィルム10が組み込まれたものであり、反射防止層又は防眩層14が最外層となるように配置される。より具体的には、偏光子22に対して、偏光板用表面フィルム10の透明パターン12が対向するように配され、接着剤層を介して(図示せず)偏光子22と偏光板用表面フィルム10を貼着させるものである。この第二の態様において、透明パターン12とほぼ同じ厚さ、又は透明パターン12を覆う厚さで透明化層13が形成されていてもよく、該透明化層13が偏光子22と基板11とを接着させる接着剤層を兼ねていてもよい。また、透明化層13に代えて、接着剤層を配し(図示せず)、偏光子22と基板11とを接着させてもよい。
【0013】
以下、本発明の偏光板用表面フィルム10及び本発明の偏光板20を構成する各構成要素について詳細に説明する。
本発明の偏光板用表面フィルム10は、基板11の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターン12が印刷されてなり、透明パターン12を構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことを特徴とする。
【0014】
ここで用いる基板としては、上述のように偏光板の一部として使用されるため、透明であることが好ましく、また、偏光子22の保護層としての役割も兼ね備えることを考慮すると、トリアセチルセルロース(以下「TAC」という。)シクロオレフィンポリマー(以下「COP」という。)及びポリカーボネート(以下「PC」という。)から選ばれる1種であることが好ましい。
なお、前記基板としてTACフィルム等の高分子フィルムを用いる場合には、該フィルムが溶媒に溶解ないしは膨潤し易い場合があり、その場合には、透明パターン印刷時に使用するコーティング液中の溶媒で基板が侵されないように、基板上にバリア層を設けることが好ましい。また、非可視光線反射材料として、後に詳述する液晶材料を用いる場合などは、該バリア層が配向膜を兼ねるようにしてもよく、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)やHEC(ヒドロキシエチルセルロース)等の水溶性物質をバリア層として用いればよい。
【0015】
上記TACフィルムは偏光子の好適な保護膜として知られ、特に、偏光子としてポリビニルアルコール(以下「PVA」という。)−ヨウ素系を用い、保護膜としてTACフィルムを用いた偏光板は、優れた光学特性を有し、広い波長範囲で高い偏光率を示すととともに、明るさ、コントラストにおいても優れている。
【0016】
また、COPとは脂環式構造を有する重合体樹脂であり、シクロオレフィンを重合又は共重合した樹脂である。シクロオレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これらシクロオレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
【0017】
またシクロオレフィンと共重合可能な単量体としては、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
また、COPは水素添加して、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであってもよい。
【0018】
本発明の表面フィルムの基材として用いられるPCは、ビスフェノールAを骨格に持つ通常のPCに加え、PCと他の樹脂との樹脂組成物をも包含するものである。
なお、本発明の偏光板20における保護層21も、基板11と同様に、TAC、COP、及びPCから選ばれる材料を用いることが好ましい。また、保護層21と基板11は同じ材料であっても、また異なる材料であってもよい。
【0019】
基板11の厚さについては、180〜400μmの範囲が好ましい。基材の厚さが180μm以上であると、該基材が偏光子の保護膜を兼ねた場合に、偏光子の十分な保護機能を果たすことができる。一方、400μm以下であると、偏光板の薄型化が可能となり好ましい。
また、基板11は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は素材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。また、片面又は両面にプライマー処理を施したものも用いることができる。
【0020】
本発明では、非可視光線反射性の規則性を有する透明パターン12を構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことが特徴である。非可視光線としては、赤外線又は紫外線が好ましい。赤外線として、好ましくは800〜2500nmの近赤外領域の光であり、800〜950nmに選択反射ピーク波長を有する赤外線であるとさらに好ましい。また、紫外線として、好ましくは200〜400nmに選択反射ピーク波長を有する紫外線である。
また、本発明において、透明パターンが規則性を有するとは、非可視光線反射により位置情報を提供可能な機能を有する程度に規則性を有するという意味であって、例えば、図5に示すように、一見不規則なパターン配列であっても、該機能を有していれば、規則性を有する透明パターンに含まれる。
【0021】
本発明の偏光板用表面フィルム10で用いることができる透明パターン12の非可視光線を反射する材料(非可視光線反射材料)としては、可視領域で透明(波長380nm〜780nmに於いて平均透過率が60%以上、好ましくは80%程度以上)であり、かつ非可視光線反射性能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、コレステリック構造を有する液晶材料、非可視光線反射顔料が好ましい。
【0022】
以下、本発明の偏光板用表面フィルム10に適用できるコレステリック構造を発現する液晶材料について説明する。
前記液晶材料は、コレステリック液晶相を呈する液晶材料であって、非可視光線領域の波長、特には赤外線領域の波長に対して波長選択反射性を持つ固定化されたコレステリック構造を有し、コレステリック規則性を有するものであれば特に限定されるものではないが、重合性のネマチック液晶に重合性のカイラル剤を混合した重合性のカイラルネマチック液晶材料(重合性モノマーもしくは重合性オリゴマー)、又は高分子コレステリック液晶材料を使用することができる。
【0023】
本発明においては、上記重合性液晶材料の中でも、重合性官能基としてアクリレート構造を有する重合性モノマー又は重合性オリゴマーを用いることが好ましい。
尚、液晶とは、狭義には、光学異方性を持つ流動性の液状物を言うが、本発明において液晶という場合は、これ以外に、かかる液状の狭義の液晶を重合、冷却等により、光学異方性を維持したまま固定化させた物も包含する意味で用いる。
【0024】
また、上記コレステリック構造を呈する(発現する)液晶材料としては、非可視光線領域の少なくとも一部の波長に於いて高反射率(通常5〜50%程度)を呈するものであれば、本来、可視光線領域の波長に於いて必ずしも高透過性は要求されない。これは、仮に上記コレステリック構造を呈する液晶材料が完全不透明であったとしても当該液晶材料の非形成部(余白部)の面積を適度に大きく取り、其処からの透過光を利用すれば、当該透明パターン全体としては、所望の透明性を得ることが可能だからである。但し、当該液晶材料自体の可視光線透過率は高い方が好ましいことは勿論である。そして、通常、斯かるコレステリック構造を呈する液晶材料は、高反射波長域を非可視光線領域に持って行くと、可視光線領域に於いては、数μm程度の厚みで70%程度以上の可視光線透過率を得る。一方、非可視光線領域に於いては5〜50%程度の高反射率を得ることが一般的である。
また、上記重合性液晶材料がコレステリック相を呈する温度範囲については特に制限はなく、コレステリック相の状態で固定化できればよいが、コレステリック相を呈する温度が30〜140℃の範囲にある材料は、パターン印刷時の乾燥工程と、液晶の相転移を同時に行えるため好ましい。
【0025】
以上のような材料であれば、液晶分子をコレステリック液晶の状態のままで光学的に固定化することができ、シートとしての取り扱いが容易な、常温で安定したパターンを形成することができる。
また、高いガラス転移点を有し、加熱後冷却することにより常温でガラス状態に固化することが可能な液晶ポリマー(高分子コレステリック液晶)を用いることもできる。これらの材料も同様に、液晶分子をコレステリック規則性を有した液晶の状態のままで光学的に固定化することができ、光学フィルムとしての取り扱いが容易な、常温で安定したパターンを形成することができるからである。
なお、コレステリック液晶の製膜法は、特開2001−5684号公報や特開2001−110045号公報にも記載されている。
【0026】
本発明で用いることができるネマチック液晶分子(液晶性モノマー)としては、例えば下記式(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。ここに例示した化合物はアクリレート構造を有し、紫外線照射等により重合させることが可能である。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

[化合物(11)において、X1は2〜5(整数)である。]
【0029】
また、前記液晶ポリマーとしては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9−133810号公報に開示されているような液晶性高分子、特開平11−293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0030】
前記カイラル剤は、不斉炭素原子を有し、ネマチック液晶と混合することでカイラルネマチック相を形成する材料であって、重合性を有するものであれば特に制限はないが、式(12)に例示するような、アクリレート構造を有する材料は、紫外線照射により重合可能であるため好ましい。
【0031】
【化3】

[Xは2〜5(整数)である。]
【0032】
本発明において、透明パターンの材料としてコレステリック構造を持った液晶材料を用いる場合に透明パターンの非可視光線を反射する性質は、コレステリック構造の波長選択反射性(X線回折に於けるBragg反射と同様な原理)を利用したものであり、その選択反射ピーク波長(Bragg反射条件を満たす波長)は、パターン内に含まれるコレステリック構造のピッチ長で決定されるが、液晶材料としてネマチック液晶とカイラル剤を用いる場合には、カイラル剤の添加量を調整することによりピッチ長を制御できる。目標とする非可視光線領域の選択反射ピーク波長を得る為のカイラル剤添加量は、使用する液晶の種類やカイラル剤の種類により異なり、例えば式(11)の液晶および式(12)のカイラル剤を用いる場合には、液晶100質量部に対しカイラル剤3質量部程度の添加で赤外領域に反射ピークを持つコレステリック相が形成される。液晶材料に高分子コレステリック液晶を用いる場合は、目的とするピッチ長を有するポリマー材料を選べばよい。
【0033】
前記ネマチック液晶分子とカイラル剤との重合体は、例えば、重合性ネマチック液晶と重合性カイラル剤に公知の光重合開始剤等を添加し、紫外線を照射してラジカル重合させることにより得られる。
また、本発明において、前述した液晶材料により透明パターンを印刷する際、重合性モノマー又は重合性オリゴマーやカイラル剤を溶媒に溶解したコーティング液を用いると好ましい。
この溶媒としては、材料に対し十分な溶解性を持つ限り特に限定されず公知のものを用いればよく、例えば、アノン(シクロヘキサノン)、シクロペンタノン、トルエン、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N−ジメチルアセトアミド)、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル等の一般的な溶媒や、それらの混合溶媒が挙げられる。
【0034】
次に、本発明の偏光板用表面フィルム10に適用できる非可視光線反射顔料について説明する。この非可視光線反射顔料としては、例えば、赤外線反射顔料及び紫外線反射顔料などが挙げられる。
前記赤外線反射顔料とは、近赤外線領域で反射を示す(着色)顔料であり、JIS A5759で定義される建築用熱線遮蔽及びガラス飛散防止フィルムで規定されている分光反射率(Rλi)により算出される日射反射率で780〜2100nmの波長領域で積分反射率が50%以上の近赤外線反射着色顔料であり、無機系赤外線反射顔料と有機系赤外線反射顔料に大別される。
【0035】
無機系赤外線反射顔料としては、目的の波長で所望の反射率を示すものであれば公知の材料を用いることができ、例えば、熱線反射性能を示す、太陽光の反射率の高い白色顔料又は金属粉顔料、具体的には、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化スズやスズドープ酸化インジウム(ITO)、スズドープ酸化アンチモン等複合金属酸化物の無機粉体やアルミニウム、金、銅等の金属粉が好ましく用いられる。また、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ(Al23)、クレー、タルクなども使用できる。
また、赤外線や遠赤外線反射性能、熱線反射性能を有する三酸化アンチモンやジクロム酸アンチモン、SiO2(石英)、Al23(アルミナ)、MgO−Al23−SiO2(コージェライト)、Ca227(アパタイト)、MnO2、Fe23、ZrO2、ZrSiO4(ジルコン)、FeTiO3(イルメナイト)、Cr23、FeCr24(クロマイト)、V25、Bi23、MoO3、SnO2、ZnO、ThO2、La23、CeO2、Pr611、Nd23、Y23等の無機粉体も目的の波長で所望の反射率を示す場合は好ましく用いられる。
この他、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料なども用いることができる。
【0036】
実際に、透明パターンに用いるインキに含有させて使用する場合には、上記成分を複数種有する複合金属酸化物として用いる。そのような無機系赤外線反射顔料として市販されている具体例としては、例えば、イエロー10401、イエロー10408、ブラウン10348、グリーン10405、ブルー10336、ブラウン10364、ブラウン10363(いずれも商品名;CERDEC社製)、AB820ブラック、AG235ブラック、AY150イエロー、AY610イエロー、AR100ブラウン、AR300ブラウン、AA200ブルー、AA500ブルー、AM110グリーン(いずれも商品名;川村化学株式会社製)、ピグメントブラック28(CuCr24)、ピグメントブラック27{(Co,Fe)(Fe,Cr)24}、ピグメントグリーン17(Cr23)(いずれも商品名;東罐株式会社製)等のうち目的の波長で所望の反射率を示すものが好ましく用いられる。
これらの中でも、特に、AB820ブラック、AG235ブラック、ピグメントブラック28、ピグメントブラック27が好ましい。
【0037】
有機系赤外線反射顔料としては、目的の波長で所望の反射率を示すもので有れば公知の材料を用いることができ、例えば、特開2005−330466号公報及び特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、中でも、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系及びアゾメチンアゾ系の有機色素が好ましく挙げられる。
【0038】
実際に、前記インキに含有させて使用する場合に市販されている具体例としては、例えば、SYMULER FAST YELLOW 4192(ベンツイミダゾロン)、FASTONGN SUPER RED 500RG(キナクリドン)、FASTONGN SUPER RED ATY(ジアミノアンスラキノニル)、FASTONGN SUPER VIOLET RVS(ジオキサジン)、FASTONGN SUPER MAGENTA R(キナクリドン)、FASTONGN SUPER BLUE 6070S (インダンスロン)、FASTONGN BLUE RSK(フタロシアニンα)、FASTONGN BLUE 5380(フタロシアニンβ)、FASTONGN GREEN MY(ハロゲン化フタロシアニン)(いずれも商品名;大日本インキ工業株式会社製)等のうち目的の波長で所望の反射率を示すものが好ましく用いられる。
これらの中でも、特に、フタロシアニンα、フタロシアニンβ、ハロゲン化フタロシアニンが好ましい。
【0039】
また、以上のような赤外線反射顔料は大半が着色物であるため、ディスプレイの視認性を損なう等の不具合が予想される場合は、粒子径が可視光の波長以下、好ましくは100nm以下の超微粒子を用いると、パターンの透明性が向上する。
前記赤外線反射顔料を用いて、インキを調製する際に、前記顔料の分散性を向上するために分散剤を用いてもよく、分散剤の種類としては特に限定されず公知のものを用いればよく、市販されている具体的な例としては、例えば、ディスパービック183、110、111、116、140、161、163、164、170、171、174、180、182、2000、2001、2020(商品名;ビックケミー株式会社製)等が挙げられる。
なお、分散剤の量は、前記顔料100質量部に対して、1〜50質量部であると好ましい。
【0040】
また、前記赤外線反射顔料を用いたインキを印刷する際、前記赤外線反射顔料を溶剤に分散したコーティング液を用いると好ましい。
この溶剤としては、特に限定されず公知のものを用いればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールのようなアルコール類、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類、ジアセトンアルコールのようなケトール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類等が挙げられる。
【0041】
また、前記赤外線反射顔料の濃度は透明インキ全量に対して5〜60質量%であると好ましい。また、分散剤の添加量を考慮すると、赤外線反射顔料の量は前記コーティング液に含まれる固形分100質量部中の30〜85質量部、好ましくは40〜80質量部、さらに好ましくは50〜70質量部である。
【0042】
次に、紫外線反射顔料としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、インジウム、スズ等の酸化物、亜鉛の硫化物、珪素、ホウ素などの窒化物等が挙げられる。
【0043】
本発明の偏光板用表面フィルム10において、透明パターンの印刷方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、孔版印刷法、インキジェット印刷法等が挙げられる。
【0044】
なお、本発明の偏光板用表面フィルム10において、必ずしも必要ではないが、透明パターンとして液晶材料を用いる場合には、液晶配向の安定化などのために、配向膜を基板と透明パターンの間に設けておくことが好ましい。配向膜の材料は特に限定されず、例えば、PI(ポリイミド)、PVA、HEC、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PE(ポリエステル)、PVCi( ポリビニルシンナメート)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、シンナモイルを含むポリシラン、クマリン、カルコン等の公知の配向膜の材料を用いることができる。これらの材料を用いて形成した配向膜は、ラビング処理等を施してもよい。また、配向膜として延伸した樹脂シートを基板に接着してもよい。
【0045】
また、透明パターン12の基板11に直交する面で切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した場合に、透明パターン12が一定の繰返し周期からなる多層構造(多層膜構造とも呼称する)を含むことが非可視光線反射性を確保するために好ましい。
【0046】
また、本発明の偏光板用表面フィルムの基板と透明パターンの間に、透明パターン12を形成するインキをはじく材料を下地層として設けることもできる。このような下地層は、透明パターン12を形成するドット印刷時のインキの各々の液滴をはじく。これらの液滴は、はじかれた結果として盛り上がり、大きく湾曲する。これらの湾曲は液滴の乾燥及び架橋により固定化され、透明パターン12は湾曲部を有する多層構造を含むこととなる。この湾曲部の形成により、広い読取角度を有する非可視光線反射性のフィルムを得ることができる。
なお、下地層の厚みは、通常0.1〜10μm程度であり、薄膜を形成でき、安価であるという観点より、0.1〜5μmが好ましい。
【0047】
また、下地層を形成する下地組成物に用いられる材料としては、透明パターンを形成するインキの液滴をはじく性質を持つ物質を選択する。また、特に塗工による層形成が可能である点で、有機系樹脂、無機系樹脂等を用いた透明な樹脂が好ましい。この下地組成物に用いる樹脂としては特に限定は無く、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、耐久性、耐溶剤性、広い読取角度を得る観点から、架橋により硬化するタイプの樹脂が好ましく、さらには、紫外線、電子線等の電離放射線により短時間で架橋させることができる電離放射線硬化性樹脂がより好ましい。これら樹脂自体が透明パターン形成用インキに対する十分な撥液性を持たない場合は、更に撥液性レベリング剤を添加してもよい。
【0048】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、基板11の材料がTACの場合、熱可塑性樹脂として、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂が好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂、硬化性アクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等をさらに添加して使用することができる。
【0049】
下地組成物に用いられる材料としては、上述のように電離放射線硬化性樹脂が好ましく、種々の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーが好適に用いられる。例えば、反応性モノマーとしては、多官能性(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。反応性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば上述の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
また、反応性モノマー又は反応性オリゴマーの重合開始剤としては、上述のビスアシルフォスフィンオキサイド系やα−アミノケトン系の光重合開始剤等が挙げられる。
【0050】
本発明に係る下地組成物に用いられる撥液性レベリング剤としては、透明パターン12を形成するインキをはじくものであれば何でもよく、特に限定されない。レベリング剤の種類としては、シリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル酸共重合物系、チタネート系等の種々の化合物を用いることができる。固定化されたコレステリック構造を形成する液晶材料のインキをはじくためには、特に、アクリル酸共重合物系レベリング剤(例えば、ビックケミー社製、商標名「BYK361」)が好ましい。添加量は、所望とする読取角度に応じて、適宜調整すればよい。下地組成物の材料として選択した樹脂自体が、透明パターン形成用インキに対して十分な撥液性を既に有する場合は、撥液性レベリング剤の添加は省略し得る。自身が高撥液性の樹脂としては、ケイ素樹脂、フッ素樹脂等がある。
【0051】
前記下地層中には、広い読取角度を得る観点から、上述のレベリング剤(撥液性物質)を添加することに加えて、更に、微粒子を添加して、その上に形成される液晶のコレステリック構造のBragg反射面に凹凸や褶曲を形成してもよい。
微粒子としては、通常用いられるものを特に制限なく適量添加することができるが、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、硝子、炭酸カルシウム、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の透明な粒子が挙げられる。粒子形状は、球、回転楕円体、多面体、截頭多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。これらの中でも、透明性が高く、球状の粒子を得やすい点で、α−アルミナ及びシリカが好ましく、球状のものが特に好ましい。また、微粒子の粒径は、50μm〜5mm程度である。或いは、透明パターン表面を上に凸の曲面(例えば、半球面状のような曲面)に湾曲させたり、透明パターン表面に微凹凸をエンボス加工によって賦形してもよい。
【0052】
前記下地層は、上述のようにして得られる下地組成物のインキを、塗工法や印刷法等の公知の層形成法で形成することができる。具体的には、ロールコート、コンマコート、ダイコート等の塗工法、又は、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法により形成すればよい。
【0053】
本発明の偏光板用表面フィルム10は、前記透明パターン12の上又は基板11の裏面(透明パターンが形成されていない面)に反射防止層又は防眩層14が形成されていることを特徴とする。
反射防止層は、太陽や蛍光灯などからの外光が、画像表示装置の表示画面に入射して反射することから生じる画面の映り込みを低減させる機能、及び表面の反射率を抑えることで、画像のコントラストがよくなり、その結果、画像の視認性を向上させる機能を有する。
【0054】
本発明における反射防止層は、前記第一の態様においては、透明パターン12の上に、第二の態様においては、基板11の裏面に、透明な誘電体層を一層以上積層した構成を有しており、該誘電体層のうち最外層の屈折率をその直下の層よりも低屈折率となるように構成し、かつ該誘電体層の光学的厚み(屈折率×幾何学的厚み)を反射防止すべき光の波長の1/4とするのがよい。かかる構成により各層界面からの反射光を干渉により減少させることができる。
反射防止層の代表的な層構成としては、基板11上に、又は透明パターン12上に、(1)低屈折率層、(2)高屈折率層/低屈折率層、(3)低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、(4)高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層、等が挙げられる。
【0055】
反射防止層を構成する各層の材料としては、低屈折率層については、フッ化マグネシウム(MgF2)、氷晶石等の無機物、あるいは低屈折率樹脂組成物が挙げられる。低屈折率樹脂組成物としては、例えば分子中にフッ素原子を含む電離放射線硬化型樹脂中に、平均粒子径5〜300nm程度の透明微粒子を分散させたものからなる組成物を用いることができる。一方、高屈折率層については、二酸化チタン、硫化亜鉛等の無機物が挙げられる。
反射防止層の形成方法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスのいずれも用いることができる。ドライプロセスは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどにより各層を形成させる方法であり、一方ウェットプロセスは、各層を形成する塗工液を、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて塗工し、加熱硬化させて、各層を形成させる方法である。
【0056】
防眩層は、層表面の微凹凸、あるいは層内部に分散する異屈折率微粒子によって光を拡散(散乱)させることにより、画像表示装置における表示画面のギラツキやチラツキ感を防止する機能を有するものである。
該防眩層としては、従来公知のもの、例えば無機粒子、好ましくはシリカ粒子を含む層、あるいは外光を乱反射する微細な凹凸表面を有する層などが挙げられる。
この防眩層の形成方法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスのいずれも用いることができる。ドライプロセスとしては、エンボス版を用いた熱プレスにより表面に微凹凸を形成させる方法、サンドブラスト法により、表面に微凹凸を形成させる方法などがある。
【0057】
一方、ウェットプロセスとしては、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、t−ブチルアクリレートなどから得られたポリアクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、ジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びシリコーン系樹脂などの硬化型樹脂中に、通常平均粒子径が30μm以下、好ましくは2〜15μm程度のシリカ粒子を、樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部程度分散してなる硬化性組成物をグラビアコート、リバースロールコート、ダイコートなどで、乾燥後の厚さが5〜30μm程度となるように、塗布乾燥し、必要に応じて熱、紫外線又は電子線の照射で硬化させる方法などがある。
防眩層の耐擦傷性の面から、前述の電離放射線硬化型重合性化合物と、シリカ粒子と、所望により光重合開始剤などを含む塗工液を塗布して塗膜を形成させ、電離放射線を照射して、該塗膜を硬化させることにより、防眩層を形成するのが好ましい。
【0058】
本発明の偏光板用表面フィルム10は、基板11と反射防止層又は防眩層14との間に透明パターン12とほぼ同じ厚さ、又は透明パターン12を覆う厚さで透明化層13が形成されていることが好ましい。
基板11上に、透明パターン12とほぼ同じ厚さで透明化層13が形成される場合においては、(透明パターン12の厚さ)−(透明化層13の厚さ)が0.15μm以下で、透明パターン間が埋められていることが好ましい。また、透明パターン12を覆う厚さで透明化層13が形成されている場合も透明化層13の表面の凹凸段差は0.15μm程度以下の平坦性を有することが好ましい。
このようにすることにより、モアレ(縞)を低減することができる。なお、モアレとは、ある程度の規則性がある繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことである。LCDなどの画像表示装置は、微細な発光ドットの配列により画像を表現しており、この場合のモアレは、ディスプレイの発光ドットの配列が前記ドットパターンと干渉することで発生する。
【0059】
透明化層13の材質としては、特に限定されず、樹脂や金属酸化物、ガラス等の各種透明材料が使用可能であるが、特に塗工による層形成が可能という点で有機系樹脂、無機系樹脂などの透明樹脂層が好ましい。また、透明化層は、ハードコート層、粘着剤層、接着剤層、衝撃吸収層、各種フィルター層等の、透明化以外の機能を1つ以上併せ持ったものであってもよい。
特に、上記第一の態様の場合には(図1及び図2参照)、最表層に近いために、ハードコート層としての機能を有することが好ましく、上記第二の態様の場合には(図3及び図4参照)、偏光子22との接着性を考慮して、粘着剤層又は接着剤層としての機能を有することが好ましい。
【0060】
透明化層13に用いる樹脂としては、後述の如くドットパターンとの屈折率差が十分小さく、ドットパターンに比べて読み取りに使用される赤外線の反射率が十分低い、透明な樹脂であれば特に限定は無く、基板11や透明パターン12を形成するインキ等への密着性などを勘案して公知の樹脂を適宜採用すればよい。具体的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられ、これらのなかでも、耐久性、耐溶剤性等の点から、架橋により硬化するタイプの樹脂が好ましく、更には、電離放射線により短時間で架橋させることができる電離放射線硬化性樹脂が好ましい。この電離放射線硬化性樹脂は、透明パターンによる凹凸を埋め易いという点では、無溶剤又は無溶剤に近い状態で塗工形成できるため有利である。
【0061】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、基板がTACの場合、熱可塑性樹脂として、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂が好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂、硬化性アクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等をさらに添加して使用することができる。
【0062】
前記電離放射線硬化型樹脂としては、紫外線や電子線等の電離放射線で硬化する(メタ)アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマー、反応性希釈剤が挙げられ、これらの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する表記である。
その他、カチオン重合性官能基を有する樹脂、例えばエポキシ樹脂等も用いることができる。
【0063】
また、前記電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用する場合には、光重合開始剤を併用することが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0064】
また、透明樹脂層中には、適宜必要に応じて、樹脂に加え、例えば、塗液やインキに於ける公知の各種添加剤や各種色素を添加してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散安定剤等が挙げられ、色素としては、例えば、外光反射防止用色素等のディスプレイ用フィルターに於いて公知の色素が挙げられる。
透明化層13は、前記樹脂に加え、通常は溶剤と、その他必要に応じ各種添加剤、色素等とを含む組成物を、塗液又はインキとして用いて、塗工法や印刷法等の公知の層形成法で形成することができる。具体的には、透明パターン12を印刷済みの基板11の該印刷面に対して、ロールコート、コンマコート、ダイコート等の塗工法、又は、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法により形成すればよい。印刷法は任意形状での部分形成が容易であるが、塗工法でも間欠塗工で部分形成可能である。
【0065】
なお、透明化層13の厚さは、赤外線反射パターン12の厚さ、必要とされる透明化の程度等に応じて適宜な厚さとすればよく、特に制限は無いが、通常は透明パターン12の厚さとほぼ同じか、透明パターンを覆う厚さであることが好ましい。
【0066】
また、本発明の偏光板用表面フィルム10における、透明パターン12又は透明化層13と、反射防止層又は防眩層14との間には、ペン型等の入力端末で手書入力する際に、繰り返し入力端末が接触しても耐えられる強度を与えるために、さらにハードコート層を設けてもよい。また、ハードコート層は、反射防止層又は防眩層を形成するためのインキ(塗工液)が、透明パターン及び基材に浸透することを防ぐ浸透防止層の機能をも併せ持つ。該インキが基材等に浸透してしまうと、反射防止機能及び防眩機能を発揮することができない。なお、上記透明化層、透明パターン及び基材に浸透防止のための処置が施されている場合には、浸透防止機能を有するハードコート層は必ずしも必要ではない。
ハードコート層の材質としては、特に限定されず、通常のシートやレンズの分野において用いられているものが使用できる。例えば、紫外線、電子線、熱等で架橋硬化したアクリル樹脂、珪素系樹脂等が代表的なものである。
【0067】
本発明の偏光板用表面フィルム10は、偏光板20の一部として用いられ、該画像に附帯する各種情報(位置座標等)を提供する用途に用いられる。この画像表示媒体としては、各種形態の画像情報を表示するものが対象となる。表示する画像情報は、静止画、動画の何れでも形式でもよく、情報の種類としては、文字、数字、図形、バーコード等の暗号コード、写真画像(風景、人物、絵画、其の他各種)等各種のものが対象となる。具体的な画像表示媒体としては、偏光板を用いる液晶ディスプレイに好適に用いられる。
【0068】
本発明の偏光板用表面フィルムにおいて、透明パターンは、センサーを備えた入力端末にて読み取った部分的なパターンから、フィルム面上における入力端末の位置情報を導き出すことができるよう設定されたものである。
本発明における透明パターン12は、例えばドットの形状を複数設定し、平面内に於いて、所定範囲内に配置されたこれら複数形状のドットの組み合わせをパターン化したもの、縦横に配置した罫線の太さを変えて、所定範囲内の前記罫線の重なり部分の大きさの組み合わせをパターン化したようなもの、x、y座標の値を直接ドットの縦横の大きさと結びつけたもの等が挙げられるが、特に簡素で好適なものとしては、縦横に等間隔に並ぶ基準点を設定して、この基準点に対して上下左右に変位したドットを配置し、これらドットの当該基準点からの相対的な位置関係を利用する方法が挙げられる。この方法はドットのサイズを小さく一定にできるため入力装置の高分解能化に有利である。
【0069】
本発明の偏光板用表面フィルムにおいて、入力端末に備えられた非可視光線センサーにより反射パターンを検知するには、センサーが照射、検知する波長における非可視光線反射率が大きいほうが好ましい。通常は、センサーが照射、検知する波長において反射率5〜50%程度であり、20%以上であると好ましい。
なお、非可視光線反射材料としてコレステリック構造を有する液晶材料を用いる場合には、コレステリック構造による反射は、コレステリック螺旋と同じ向きの円偏光のみを反射する性質があるため、最大でも50%程度にしか到達しない。
コレステリック構造による反射の場合、一般に印刷厚みが厚い方が反射強度が大きくなるが、厚すぎると液晶の配向性の乱れや透明性の低下、乾燥負荷増大を招くため、非可視光線反射パターンの印刷厚みは通常1〜20μm程度であり、好ましくは3〜10μm程度である。
また、非可視光線反射材料として非可視光線反射顔料を用いる場合、非可視光線反射パターンの印刷厚みは0.1μm以上であればよいが、通常は1〜20μm程度である。一般的に膜厚が厚いほど反射率は向上するが、着色も濃くなり透明性を損なうので適宜調整する必要がある。
【0070】
本発明の偏光板用表面フィルムにおいて、ドットパターンのドット形状は隣接するドットと容易に区別できれば特に制限はなく、通常は、平面視形状が、円、楕円、多角形などの形状が用いられる。またドットの立体形状についても特に制限はなく、通常は、ペン型入力端末がこれと接触した際に、抵抗無く滑らかに摺動し、ドットと該端末とが相互に損傷し難い点から、略円盤状であることが好ましいが、半球状や凹面状、多角形状であってもよい。
【0071】
ここで手書き入力情報を扱う情報処理装置としては、偏光板を搭載する液晶ディスプレイを用いたものであれば特に制限はなく、携帯電話、PDA等の各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などが例示できる。
【0072】
本発明で用いることができる入力端末31としては、図6に示すように、非可視光線iを発し、前記パターンの反射光rを検知できるものであれば特に限定されず公知のセンサーを用いればよい。例えば、ペン型の入力端末31が読取データ処理装置32も具備する例として、特開2003−256137号公報に開示されている。また、インキや黒鉛等を備えないペン先、非可視光線照射部を備えたCMOSカメラ、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等を内蔵しているものなどが挙げられる。
ペン型入力端末31の動作としては、ペン先を平面視が図5に示すように透明パターン12が印刷された偏光板用表面フィルム10の前面に接触させてなぞるように描画すると、ペン型入力端末31がペン先に加わった筆圧を検知し、CMOSカメラが作動して、ペン先近傍の所定範囲を非可視光線照射部から発する所定波長の非可視光線で照射するとともに、パターンを撮像する(パターンの撮像は、例えば、1秒間に数10から100回程度行われる)。ペン型入力端末31が読取データ処理装置32を具備する場合には、撮像したパターンをプロセッサで解析することにより手書き時のペン先の移動に伴う入力軌跡を数値化・データ化して入力軌跡データを生成し、その入力軌跡データを情報処理装置へ送信する。
なお、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等の部材は、図6に示すように、読取データ処理装置32として、ペン型入力端末31の外部にあってもよい。この場合には、ペン型入力端末31は読取データ処理装置32にコード33で接続されていても、電波、非可視光線等を用い無線で読取データを送信してもよい。
この他、入力端末31は、特開2001−243006号公報に記載された読取器のようなものであってもよい。
【0073】
本発明において適用できる読取データ処理装置32は、入力端末31で読み取った連続的な撮像データから位置情報を算出し、それを時間情報と組み合わせ、情報処理装置で扱える入力軌跡データとして提供する機能を有するものであれば特に限定されず、プロセッサ、メモリ、通信インタフェース及びバッテリ等の部材を具備していればよい。
また、読取データ処理装置32は、特開2003−256137号公報のように入力端末31に内蔵されていてもよく、また、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に内蔵されていてもよい。また、読取データ処理装置32は、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に無線で位置情報を送信してもよく、コード等で接続された有線接続で送信してもよい。
【実施例】
【0074】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)各塗工液の調製
(1−1)非可視光線(赤外線)反射性の透明パターン用塗工液の調製
両末端に重合可能なアクリロイル基、中央部にメソゲン構造、前記アクリロイル基との間にスペーサーを有し、ネマチック−アイソトロピック転移温度が110℃付近であるモノマー(前記化合物(11)で示される分子構造を有するもの、平均屈折率n1=1.56)100質量部と、両末端に重合可能なアクリロイル基を有するカイラル剤(上記化学式(12)で示される分子構造を有するもの)3質量部とをシクロヘキサノンに溶解させたアノン溶液を調製した。なお、このアノン溶液には、4質量部の光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン株式会社製、商品名;ルシリンTPO)を添加した。
【0075】
(1−2)撥インキ性下地用塗工液の調製
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA、日本化薬株式会社製、商品名;KAYARAD PET−30)100質量部とレベリング剤(ビックケミー株式会社製、商品名;BYK361)0.06質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製、商品名;イルガキュア184)4質量部を添加混合し、さらにメチルエチルケトンを樹脂分が50質量%になるように、添加適合して撥インキ性下地用塗工液を調製した。
【0076】
(1−3)透明化層兼ハードコート層用塗工液の調製
表面を修飾した外殻の内部が空洞ではない中実シリカ微粒子Bをメチルイソブチルケトンに分散させた分散液(中実シリカ微粒子;35質量%)を25質量%、ウレタンアクリレート(日本合成株式会社製、商品名;紫光UV1700−B)を25質量%、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名;イルガキュア184)0.2質量%、及び溶媒としてメチルエチルケトン49.8質量%を混合して、透明化層兼ハードコート層用塗工液を調製した。
【0077】
(1−4)反射防止層(低屈折率層)用塗工液の調製
表面修飾中空シリカゾルをメチルイソブチルケトンに分散させた分散液(中空シリカゾル;20質量%含有)11.6質量%、表面を修飾した外殻の内部が空洞ではない中実シリカ微粒子Aをメチルイソブチルケトンに分散させた分散液(中実シリカ微粒子;20質量%含有)0.7質量%、PETA(日本化薬株式会社製、商品名;KAYARAD PET−30、PETA;10質量%含有)9.6質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬株式会社製、DPHA;10質量%含有)3.2質量%、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名;イルガキュア127)0.06質量%、変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、商品名;X−22−164E)0.04質量%、及び溶媒としてメチルイソブチルケトン74.8質量%を混合して、反射防止層(低屈折率層)用塗工液を調製した。
【0078】
(2)偏光板用表面フィルムの製造
(2−1)ドットパターンの印刷
上記(1−2)の撥インキ性下地用塗工液を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)透明基板(富士フィルム(株)製、商品名;TD80UL)上に、バーコーターにてよって1μmの厚みで塗工し、紫外線照射(紫外線照射装置;フュージョンUVシステムジャパン(株)製、光源;Hバルブ、照射線量;120mJ/cm2)により硬化した。次に、この基板上に上記(1−1)の赤外線反射性の透明パターン用塗工液を、グラビア印刷法にて6〜8μmの厚みでドットパターンを塗布し、紫外線照射により硬化した。
【0079】
(2−2)透明化層兼ハードコート層の形成
上記ドットパターンを印刷した上に、バーコーターによって前記(1−3)の透明化層兼ハードコート層用塗工液をコーティングし、乾燥後、紫外線を照射し(紫外線照射装置;前出、照射線量;10mJ/cm2)、硬化処理することによって、膜厚約15μmの透明化層兼ハードコート層を形成した。
透明化層兼ハードコート層形成後の表面の硬度を鉛筆硬度測定によって評価したところ、4Hであった。なお、鉛筆硬度は所定の鉛筆を用いて、500g荷重で5本線を引き、その後のハードコート層の傷の有無を目視評価して行った。
【0080】
(2−3)反射防止層の形成
次に、透明化層兼ハードコート層上に、バーコーターによって前記(1−4)の反射防止層用塗工液をコーティングし、乾燥後、紫外線を照射し(紫外線照射装置;前出、照射線量;200mJ/cm2)、硬化処理することによって、反射防止層(低屈折率層)を形成し、偏光板用表面フィルムを得た。反射防止層(低屈折率層)の膜厚は、(株)島津製作所製、分光光度計「UV−3100PC」を用いて、入射角と反射角がそれぞれ5度のときの反射率の極小値が約550nmになるように設定した。
【0081】
(3)偏光板の製造
PVA−ヨウ素系の偏光子の一方の面に接着剤を介してTACフィルムを貼付し、他方の面に接着剤(上記と同様)を介して、上記で調製した偏光板用表面フィルムを、図2に示すように、TAC基板側が偏光子に対向するように貼着して、偏光板を製造した。
【0082】
(4)評価
上記偏光板用表面フィルムにおいて、(株)島津製作所製、分光光度計「UV−3100PC」を用いて、入射角と反射角がそれぞれ5度のときの最低反射率を測定した結果、最低反射率が1.4%であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の偏光板用表面フィルムは、偏光板の一部を構成し、液晶ディスプレイの製造過程において、従来と同様に偏光板を装填するだけで、手書き情報の位置座標をデータ入力し得る機能を付与することができる。従って、特に使用者が後からこのような機能を付与するための透明シート等を貼り付けるなどの作業を必要とせず、最初からこのような機能が組み込まれた液晶ディスプレイを提供することができる。
このような液晶ディスプレイは、実用性能が高く、携帯電話、PDA等の各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などの種々の情報処理装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の偏光板用表面フィルムの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の偏光板の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の偏光板用表面フィルムの構成を示す断面図である。
【図4】本発明の偏光板の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の偏光板用表面フィルムにおけるドットパターンの配列例を示す要部拡大平面図である。
【図6】本発明の偏光板用表面フィルムを用いるシステムの概略図である。
【符号の説明】
【0085】
10:偏光板用表面フィルム
11:基板
12:透明パターン
13:透明化層
14:反射防止層又は防眩層
20:偏光板
21:保護層
22:偏光子
23:接着剤層
31:入力端末(ペン型)
32:読取データ処理装置
33:コード
34:ディスプレイ装置
i:非可視光線(入射光)
r:反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターンが印刷され、その上に反射防止層又は防眩層が形成されてなるフィルムであって、該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことを特徴とする偏光板用表面フィルム。
【請求項2】
基板の表面に非可視光線反射性の規則性を有する透明パターンが印刷され、その裏面に反射防止層又は防眩層が形成されてなるフィルムであって、該透明パターンを構成するインキが非可視光線を反射する材料を含むことを特徴とする偏光板用表面フィルム。
【請求項3】
前記透明パターンとほぼ同じ厚さ、又は前記透明パターンを覆う厚さで透明化層が形成されている請求項1又は2に記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項4】
前記基板がトリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、及びポリカーボネートから選ばれる1種である請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項5】
前記基板の厚さが180〜400μmである請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項6】
前記透明化層が、電離放射線により架橋が形成される透明樹脂層である請求項3〜5のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項7】
前記透明化層が接着層又は粘着層である請求項3〜6のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項8】
前記非可視光線が、赤外線又は紫外線である請求項1〜7のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項9】
前記透明パターンが800〜950nmに選択反射ピーク波長を有する請求項1〜8のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項10】
前記透明パターンが200〜400nmに選択反射ピーク波長を有する請求項1〜8のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項11】
前記非可視光線を反射する材料が、非可視光線領域の波長に対して波長選択反射性を持つ、固定化されたコレステリック構造を有する液晶材料である請求項1〜10のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項12】
前記非可視光線を反射する材料が、非可視光線反射顔料を含有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項13】
前記透明パターンがドットパターンである請求項1〜12のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項14】
前記偏光板用表面フィルムが、非可視光線の照射及び検知が可能な入力端末を用いて、前記表面フィルムの反射パターンを読み取ることで、表面フィルム上における入力端末の位置に関する情報を提供可能である請求項1〜13のいずれかに記載の偏光板用表面フィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の偏光板用表面フィルムを用いた偏光板。
【請求項16】
ポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に請求項1に記載の偏光板用表面フィルムが貼着され、他方の面に、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、及びポリカーボネートから選ばれる材料で構成されるフィルムが貼着される偏光板であって、該偏光子と偏光板用表面フィルムの基板が接着剤層を介して貼着されることを特徴とする偏光板。
【請求項17】
ポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に請求項2に記載の偏光板用表面フィルムが貼着され、他方の面に、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、及びポリカーボネートから選ばれる材料で構成されるフィルムが貼着される偏光板であって、該偏光子と偏光板用表面フィルムの透明パターン及び/又は透明化層が対向するように、偏光子と偏光板用表面フィルムが貼着されることを特徴とする偏光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−37311(P2009−37311A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199285(P2007−199285)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】