説明

偏光素子、偏光素子の製造方法、液晶装置、及び投射型表示装置

【課題】グリッドパターンのオーバーエッチが防止されるとともに高いアスペクト比を有する偏光素子、偏光素子の製造方法、液晶装置、及び投射型表示装置を提供する。
【解決手段】基材100A上に形成されて複数のスリット状の開口部113を有する金属膜110Mからなる偏光素子部110と、基材100Aと偏光素子部110との間に設けられ、偏光素子部110のエッチング時に金属膜110Mとともに一部がエッチングされてなるエッチング犠牲層115とを備える偏光素子1である。エッチング犠牲層115は、金属膜110Mに対するエッチングレートと同等以上のエッチングレートを有する材料から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光素子、偏光素子の製造方法、液晶装置、及び投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタのライトバルブに使用される偏光素子として、ガラス基板上に形成されたグリッド状パターンからなる偏光素子が提案されている。ここで、グリッド幅をL、グリッドのスペースSとして規定されるL/S比は、偏光素子の光学特性を決める重要なパラメータとなり、例えばグリッドのスペースを広げラインを細める、すなわちL/S比を小さくすることで高い光学特性が得られるようになっている。
【0003】
ところで、上記グリッドパターンは例えばAlをドライエッチングしてパターニングすることで形成される。そのため、偏光素子における光学特性は、Alのドライエッチング状況に影響を受ける。しかしながら、グリッドパターン(偏光素子部)のL/S比が小さい高アスペクト比構造のものを形成する場合、ドライエッチング制御が困難となる問題があった。そこで、Alとの選択比が大きいタングステン(W)をマスクとして用い、サイドエッチの防止を図った技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−136103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タングステンマスクを用いただけではドライエッチング時の終点制御(サイドエッチ防止)が依然として困難であり、高アスペクト比構造のグリッドパターンを精度良く形成できない可能性がある。また、上記従来技術ではAlの下地層としてTiN層を用いている。そのため上記技術を偏光素子の製造技術に適用しようとすると、ガラス基板表面に光透過性の低いTiN層が形成されることで所望の光学特性が得られない可能性がある。したがって、上記エッチング技術に代わる新たな技術の提供が望まれていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、グリッドパターンのオーバーエッチが防止されるとともに高いアスペクト構造を有する偏光素子、偏光素子の製造方法、液晶装置、及び投射型表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の偏光素子は、基材上に形成されて複数のスリット状の開口部を有する金属膜からなる偏光素子部と、前記基材と前記偏光素子部との間に設けられ、前記偏光素子部のエッチング時に前記金属膜とともに一部がエッチングされてなるエッチング犠牲層と、を備え、前記エッチング犠牲層は、前記金属膜に対するエッチングレートと同等以上のエッチングレートを有する材料から構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明の偏光素子によれば、金属膜に対しエッチングレートが同等以上の犠牲層を備えているので、エッチング時に前記犠牲層が掘り込まれることでエッチング時の終点制御のマージンが拡がる。よって、金属膜がサイドエッチされて偏光素子部がオーバーエッチされることが防止されたものとなり、高アスペクト構造を実現できる。したがって、高アスペクト比構造を有するとともにオーバーエッチが防止された高い光学特性を備えた偏光素子となる。
【0008】
また、上記偏光素子においては、前記エッチング犠牲層は樹脂材料からなるのが好ましい。
このようにすれば、例えば偏光素子を液晶装置内部に搭載する場合、偏光素子部上に配向膜を形成するに際しラビング処理を行った場合でも、樹脂材料からなるエッチング犠牲層によってラビング圧力が緩和され、偏光素子部の破損を防止できる。
さらに、前記樹脂材料はメタクリル系樹脂又はアクリル系樹脂からなるのが望ましい。
この材料を用いれば上述したエッチング犠牲層を好適に形成することができる。
【0009】
また、上記偏光素子においては、前記エッチング犠牲層の膜厚が10nm以上10μm以下であるのが好ましい。
この膜厚からなるエッチング犠牲層を用いれば、上述した効果を十分に得ることができる。
【0010】
本発明の偏光素子の製造方法は、基材上に複数のスリット状の開口部を有する金属膜からなる偏光素子部を有する偏光素子を製造する方法において、前記基材上に、前記金属膜と同等以上のエッチングレートを有するエッチング犠牲層を形成する工程と、該エッチング犠牲層上に前記金属膜を形成し、エッチングによって前記金属膜をパターニングし前記偏光素子部を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の偏光素子の製造方法によれば、金属膜に対しエッチングレートが同等以上の犠牲層を形成しているので、金属膜のエッチング時に前記犠牲層が掘り込まれることで金属膜がサイドエッチされることが防止される。よって、偏光素子部がオーバーエッチされるのを防止でき、高アスペクト比の偏光素子を形成でき、光学特性の高い偏光素子を提供できる。
【0012】
また、上記偏光素子の製造方法によれば、前記エッチング犠牲層の形成材料として樹脂材料を用いるのが好ましい。
【0013】
このようにすれば、例えば偏光素子を液晶装置内部に搭載する場合、偏光素子部上に配向膜を形成するに際しラビング処理を行う場合でも、樹脂材料からなるエッチング犠牲層によってラビング圧力を緩和できるので、偏光素子部の破損を防止できる。よって、液晶装置内部に偏光素子を良好に内蔵することが可能となる。
さらに、前記樹脂材料としてメタクリル系樹脂又はアクリル系樹脂を用いるのがより好ましい。このようにすれば、上述したエッチング犠牲層を好適に用いることができる。
【0014】
また、上記偏光素子の製造方法によれば、スピンコート法を用いて前記樹脂材料を形成するのが好ましい。
このようにすれば、平坦性の高いエッチング犠牲層を簡便に形成することができる。
【0015】
本発明の液晶装置は、上記偏光素子を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の液晶装置によれば、光学特性に優れた偏光素子を備えているので、信頼性に優れた液晶装置を提供できる。
【0017】
上記液晶装置においては、一対の基板間に液晶層を挟持してなり、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の前記液晶層側に前記偏光素子が形成されているのが好ましい。
このようにすれば、光学特性に優れた上記偏光素子が内部に搭載されるので、液晶装置自体の薄型化を図ることができる。
【0018】
本発明の投射型表示装置は、上記液晶装置を光変調装置として備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の投射型表示装置によれば、光変調を良好に行うことができるので、高精度で高輝度な表示を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明における偏光素子の製造方法及び偏光素子の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0021】
(偏光素子)
図1(a)は本実施形態の偏光素子1を示す部分断面図である。図1(b)は、偏光素子を構成する偏光素子部110を示す斜視図である。図2は、偏光素子1の動作説明図である。
偏光素子1は、基材100Aを覆う下地層(エッチング犠牲層)115と、この下地層115上に形成された偏光素子部110とを備えている。ワイヤーグリッド構造を有する偏光素子部110は、下地層115の表面に、複数のスリット状の開口部113を有して形成された金属膜を主体としてなる。金属膜110Mは平面視で縞状にパターン形成されており、例えば幅が30nm、高さが100nm、ピッチが140nmとなっている。
【0022】
ここで、金属膜110MをL、金属膜110M間のスペースSとして規定されるL/S比は、偏光素子1の光学特性を決める重要なパラメータとなっている。具体的に本実施形態では、L/S比(3/11)と小さくすることで高い光学特性を備えたものとなっている。
【0023】
基材100Aは、ガラスや石英、プラスチック等の透明基板からなる。
また金属膜110Mを構成する金属材料としてアルミニウム(Al)を用いた。なお、金属膜110Mを構成する金属としては、アルミニウム以外にも、例えば金、銅、パラジウム、白金、ロジウム、シリコン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、クロム、チタン、ルテニウム、ニオブ、ネオジウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、ビスマス、若しくはその合金のいずれかを用いることができる。
【0024】
前記下地層115は基材100A表面に形成されるものであり、前記偏光素子部110のエッチング時(パターニング時)に前記金属膜110Mとともに一部がエッチングされたものとなっている。すなわち、下地層115はエッチングにより金属膜110Mをパターン形成する際に一部が掘り込まれることでエッチング終点制御のマージンを拡げる機能を奏するものである。また下地層115は前記金属膜110Mに対しエッチングレートが同等以上の材料から構成される。
【0025】
前記下地層115の材料としては、上述した機能を奏するものであれば、有機、無機材料を問わず採用可能である。本実施形態では、樹脂材料からなる下地層115を用いた。この樹脂材料としては、メタクリル系樹脂(PMMA;ポリメチルメタクリレート)、アクリル系樹脂(UV硬化樹脂)を例示でき、具体的にはOEBR−1000(東京応化工業株式会社)、PAK−01(東洋合成工業株式会社)、ダウコーティングHSQ(東レ)を用いた。
また、前記下地層115における樹脂以外の形成材料としては、SiO、SiN、SiON、Al、TiO、SnO等を例示できる
【0026】
このような偏光素子1は、図2に示すように、可視光の波長よりも狭いピッチで形成された縞状パターンを有していることで、偏光素子1に入射した光の偏光方向により偏光選択が行なわれる。具体的には、金属膜110Mの延在方向と垂直な方向に偏光軸を有する直線偏光Etを透過する一方、金属膜110Mの延在方向と平行な方向に偏光軸を有する直線偏光Erを反射する。したがって、本実施形態の偏光素子1は、金属膜110Mの延在方向(図1(b)のX軸方向)と平行な反射軸と、かかる反射軸と直交する向き(図1(b)のY軸方向)の透過軸とを有する。
【0027】
本実施形態に係る偏光素子1は、金属膜110Mに対しエッチングレートが同等以上の下地層115を備えているので、例えば金属膜110Mのパターニング時に下地層115を掘り込ませることで金属膜110Mがサイドエッチされることでエッチング時の終点制御のマージンが拡がり偏光素子部110がオーバーエッチされることが防止されたものとなる。したがって、高アスペクト比構造を有するとともにオーバーエッチが防止された光学特性の高いものとなる。
【0028】
(偏光素子の製造方法)
次に、上述した偏光素子1の製造方法について、図3を参照しながら説明する。図3は偏光素子1の製造工程を示す断面図である。
【0029】
まず、図3(a)に示すように、透明なガラス基板等からなる基材100Aを用意し、基材100Aの一面側に、スピンコート法により上述したような樹脂材料(メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂)を成膜して下地層115とする。その後、下地層115上に、スパッタ法等を用いてベタ状にアルミニウム膜を成膜して金属膜110aを形成する。さらに、金属膜110a上に、スパッタ法等を用いてベタ状にシリコン酸化膜116aを形成する。このシリコン酸化膜116aは、上記金属膜110aをパターニングする際のハードマスクとして機能するものである。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、シリコン酸化膜116a上にレジストを塗布してこれをプリベークすることでレジスト層114aを形成する。次に、例えば波長が266nmのレーザ光を露光光として用いた二光束干渉露光法によりレジスト層114aを露光する。ここでは、ピッチが可視光の波長以下(例えば140nm)の微細な縞状パターンとなるように露光を行う。露光を行った後、さらにレジスト層114aをベーク(PEB)し、その後にレジスト層114aを現像する。これにより、図3(c)に示すように、縞状のパターンを有するエッチングマスク114がシリコン酸化膜116a上に形成される。
【0031】
ここで、二光束干渉露光法を行う露光装置は、例えば図4に示すものを用いることができる。露光装置120は、露光光を照射するレーザ光源121と、回折型ビームスプリッタ122と、モニタ123と、ビームエキスパンダ124、125と、ミラー126、127と、基材100Aを載置するステージ128とを備えている。
【0032】
レーザ光源121は、例えば第4高調波の波長が266nmであるNd:YVO4レーザ装置である。回折型ビームスプリッタ122は、レーザ光源121から出力された1本のレーザビームを分岐して2本のレーザビームを生成する分岐手段である。そして、回折型ビームスプリッタ122は、入射するレーザビームをTE偏光としたときに強度の等しい2本の回折ビーム(±1次)を発生させる構成となっている。モニタ123は、回折型ビームスプリッタ122から出射した光を受光して電気信号に変換する。露光装置120では、この変換された電気信号に基づいて2本のレーザビームの交差角度などの調整を行えるようになっている。
【0033】
ビームエキスパンダ124は、レンズ124aと空間フィルタ124bとを備えており、回折型ビームスプリッタ122で分岐された2本のレーザビームのうちの一方のビーム径を例えば300mm程度に広げる構成となっている。同様に、ビームエキスパンダ125も、レンズ125aと空間フィルタ125bとを備えており、2本のレーザビームのうちの他方のビーム径を広げる構成となっている。ミラー126、127は、ビームエキスパンダ124、125を透過したレーザビームをそれぞれステージ128に向けて反射させる構成となっている。ここで、ミラー126、127は、反射したレーザビームを交差させることで干渉光を発生させ、この干渉光を基材100A上のレジスト層114aに照射する。
このような露光装置120を用いてレジスト層114aに干渉光を照射することで、レーザ光源121の波長よりも狭い形成ピッチでレジスト114を形成することができる。このレジスト114は上述したL/S比(3/11)を満足する位置に形成されたものとなる。
【0034】
次に、レジスト114を介してドライエッチング処理を行い、シリコン酸化膜116aをパターニングし、図3(d)に示すようにマスク116を形成する。なお、前記レジスト114はマスク116を形成した後に剥離してもよい。仮にレジスト114を剥離しない場合でも、後述の金属膜110aのパターニング時にエッチングされることで除去されるため問題はない。
続けて、マスク116を介したドライエッチング処理により、金属膜110aをパターニングする。具体的には、三塩化ホウ素(BCl)、塩素(Cl)及び四塩化炭素(CCl)をエッチングガスとして用いたイオンエッチング装置により前記エッチングマスク114を介してエッチングを行う。
【0035】
上述したように、上記マスク116はL/S比(3/11)が小さく、高アスペクト構造の偏光素子部112に対応するものとなっている。このような高アスペクト構造を形成する場合、その終点制御が特に困難となる。
本実施形態によれば、金属膜110aがパターニングされることで金属膜110aの下層に設けられる下地層115が露出する。この下地層115は、前記金属膜110aと同等以上のエッチングレートを有する材料(メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂)から構成されているので、図5に示すようにドライエッチングは金属膜110aをサイドエッチすることなく前記下地層115の一部を掘り込むように進行する。よって、エッチングマスク114の幅よりも平面視した状態で内側までドライエッチングが進行する、所謂オーバーエッチが発生することを防止できる。これにより、図3(d)に示したように、複数のスリット状の開口部113を有する金属膜110Mからなる偏光素子部110が基材100A上に形成される。さらに、金属膜110Mの上面にはその延在方向に沿ってマスク116が形成されている。
【0036】
以上の工程により、偏光素子1を製造することができる。ここで図6(a)は、本実施形態の製造方法を用いて製造された本発明に係る偏光素子1の電子顕微鏡写真である。かかる(a)図に示すように、本実施形態により得られる偏光素子1では、下地層115上に形成された金属膜110Mが複数のスリット状の開口部が形成されたものとなっている。このように本実施形態の製造方法によれば、高アスペクト比のワイヤーグリッドを構成する金属膜110Mを確実に製造することができる。
【0037】
一方、図6(b)は、下地層115を形成しない従来の製造方法を用いて、基材100A上にドライエッチングにより形成された偏光素子部110の電子顕微鏡写真である。写真から明らかなように、下地層115を形成することなく金属膜110Mのエッチングを行うと、金属膜110Mにおけるドライエッチングの終点制御を良好に行うことが困難となり、金属膜110Mがオーバエッチングされてしまい、良好なグリッド構造が得られなくなる。このように金属膜110Mが良好なグリッド構造を構成できないと、偏光素子の光学特性が低下する。
【0038】
(プロジェクタ)
図7は、本発明の投射型表示装置の一実施形態として、プロジェクタの要部を示す概略構成図である。本実施形態のプロジェクタは、光変調装置として液晶装置を用いた液晶プロジェクタである。
【0039】
図7において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は液晶装置からなる光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズである。
【0040】
光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。なお、光源810としては、メタルハライド以外にも超高圧水銀ランプ、フラッシュ水銀ランプ、高圧水銀ランプ、Deep UVランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ等を用いることも可能である。
【0041】
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用液晶光変調装置822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用液晶光変調装置823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819及び出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0042】
各光変調装置822〜824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0043】
ここで、本実施形態のプロジェクタ800においては、光変調装置822〜824として図8に示すような液晶装置を採用している。
【0044】
(液晶装置)
図8は液晶装置822〜824の断面模式図であって、該液晶装置822〜824は、一対の基板10,20間に液晶層50が挟持された構成を有している。
【0045】
基板10は素子基板であって、基板本体10A上に、ワイヤーグリッド偏光層18と、画素電極9と、配向膜21とを備えた構成となっている。なお、基板10は、画素電極9に対する電圧印加をスイッチング駆動するTFT素子(図示略)を備えている。一方、基板20は対向基板であって、基板本体20A上に、ワイヤーグリッド偏光層18と、対向電極23と、配向膜22とを備えた構成となっている。
【0046】
本実施形態では、ワイヤーグリッド偏光層18、基板本体(基材)10A(20A)によって、ワイヤーグリッド型の偏光素子19が構成されている。基板本体10A,20Aは、液晶装置用の基板であると同時に、偏光素子用の基板としての機能もかねている。偏光素子19は、上述した偏光素子の製造方法を用いて製造されたものである。なお、前記基板本体10A,20Aとワイヤーグリッド偏光層18との間には樹脂材料から構成される下地層151(不図示)が形成されている。
【0047】
ワイヤーグリッド型の偏光素子19上に形成される前記配向膜21,22は、例えばポリイミド等の有機材料にラビング処理を施したものが用いられる。ラビング処理が行われると、ワイヤーグリッド偏光層18にラビング圧力が加わる。この時、ワイヤーグリッド偏光層18と基板本体10A,20Aとの間に樹脂材料からなる下地層151がラビング圧力を緩和し、ワイヤーグリッド偏光層18が破損するのを防止できる。
【0048】
図8の構成においては、一対の基板10,20が、シール材(図示略)を介して貼り合わせられ、その内部に液晶が封入されている。この場合、液晶層50の液晶モードとしてTN(Twisted Nematic)モードが採用されているが、その他にもSTN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等を採用することができる。
【0049】
ここで、基板10側に設けられるワイヤーグリッド偏光層18と、基板20側に設けられるワイヤーグリッド偏光層18とは、互いの金属突起体18Aが交差するよう構成されている。
【0050】
このようなワイヤーグリッド偏光層18により、光源810から射出された各色光を偏光選択して直線偏光のみを液晶層50に透過させることが可能となっている。
図8に示したように、ワイヤーグリッド偏光層18は、液晶層50に入射する光の波長よりも小さいピッチでストライプ状に配列された多数の金属突起体18Aにより構成されていることにより、金属突起体18Aの延在方向に対して略平行方向に振動する偏光に対しては反射させ、金属突起体18Aに延在方向に対して略垂直方向に振動する偏光については透過させる反射型偏光素子として機能させることができる。
【0051】
つまり、ワイヤーグリッド偏光層18は、当該ワイヤーグリッド偏光層18に入射した光の偏光方向により、偏光選択が行なわれる。そのため、図9に示すように、ワイヤーグリッド偏光層18の延在方向と垂直な方向に偏光軸を有する直線偏光Xを透過させ、ワイヤーグリッド偏光層18の延在方向と平行な方向に偏光軸を有する直線偏光Yを反射することになる。
【0052】
したがって、ワイヤーグリッド偏光層18は、光反射型偏光子と同じ作用、すなわち光軸(透過軸)と平行な偏光を透過させ、垂直な偏光に対しては反射させる作用を有している。
【0053】
このような液晶装置822〜824は、上述したように、図8に示す基板10(20)の内側に組み込まれたワイヤーグリッド偏光層18を介して液晶層50に直線偏光が入射され、該液晶層50において位相制御が行われる。つまり、電極9,23に対する印加電圧により液晶層50の駆動制御を行い、当該入射光の位相を制御するものとしている。よって、位相制御された光は、反対側の基板20(10)の内側に組み込まれたワイヤーグリッド偏光層18を選択透過して、変調されることになる。本実施形態に係るワイヤーグリッド偏光層18は上述したように高アスペクト構造を有したものであることから、優れた光学特性を得ることができる。
【0054】
本実施形態においては、偏光素子を液晶パネル内に組み込んだ構成であることから、基板本体10A,20Aが、液晶装置用の基板と、偏光素子用の基板との機能をかねることになる。これにより、部品点数を削減することができるので装置全体が薄型化でき、液晶装置の機能を向上させることができる。さらに、装置構造が簡略化されるので、コスト削減を図ることができる。
【0055】
また、図4に示すように、液晶装置822〜824で変調された各色光は、上述した通り、クロスダイクロイックプリズム825に入射して形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0056】
上記プロジェクタ800は、偏光素子を組み込んだ液晶装置を光変調手段として備えている。
上述したように、本実施形態の液晶装置822〜824は、上述したように高アスペクト構造のワイヤーグリッド偏光層18を有しているので表示不良や信頼性の低下が生じず、また低消費電力で表示の明るさにも優れたものである。よって、本発明のプロジェクタ800は、上記液晶装置822〜824を光変調手段として備えたことから、信頼性が高く優れた表示特性を有したものとなっている。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、実施形態ではスイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、実施形態では3板式のプロジェクタ(投射型表示装置)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。
【0058】
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、上述した各実施形態またはその変形例に係る液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】偏光素子を示す部分断面図及び斜視図である。
【図2】偏光素子の動作説明図である。
【図3】偏光素子の製造工程説明図である。
【図4】偏光素子の製造に用いる露光装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】図4に続く偏光素子の製造工程説明図である。
【図6】偏光素子の断面構造及び従来の構造を示す写真である。
【図7】プロジェクタを示す概略構成図である。
【図8】光変調装置として用いられる液晶装置の概略構成図である。
【図9】偏光層の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1…偏光素子、100A…基材、110…偏光素子部、110M…金属膜、115…下地層(エッチング犠牲層)、113…開口部、800…プロジェクタ、822〜824…液晶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成されて複数のスリット状の開口部を有する金属膜からなる偏光素子部と、
前記基材と前記偏光素子部との間に設けられ、前記偏光素子部のエッチング時に前記金属膜とともに一部がエッチングされてなるエッチング犠牲層と、を備え、
前記エッチング犠牲層は、前記金属膜に対するエッチングレートと同等以上のエッチングレートを有する材料から構成されることを特徴とする偏光素子。
【請求項2】
前記エッチング犠牲層は樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
前記樹脂材料はメタクリル系樹脂又はアクリル系樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の偏光素子。
【請求項4】
前記エッチング犠牲層の膜厚が10nm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項5】
基材上に複数のスリット状の開口部を有する金属膜からなる偏光素子部を有する偏光素子を製造する方法において、
前記基材上に、前記金属膜と同等以上のエッチングレートを有するエッチング犠牲層を形成する工程と、
該エッチング犠牲層上に前記金属膜を形成し、エッチングによって前記金属膜をパターニングし前記偏光素子部を形成する工程と、を備えることを特徴とする偏光素子の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング犠牲層の形成材料として樹脂材料を用いることを特徴とする請求項5に記載の偏光素子の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂材料としてメタクリル系樹脂又はアクリル系樹脂を用いることを特徴とする請求項6に記載の偏光素子。
【請求項8】
スピンコート法を用いて前記樹脂材料を形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の偏光素子。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光素子を備えたことを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
一対の基板間に液晶層を挟持してなり、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の前記液晶層側に前記偏光素子が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の液晶装置。
【請求項11】
請求項9又は10のいずれか一項に記載の液晶装置を光変調装置として備えたことを特徴とする投射型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−304522(P2008−304522A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149097(P2007−149097)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】