説明

偏波モード分散生成装置、偏波モード分散補償装置及び偏波モード分散エミュレーター

【目的】2次PMDの発生が抑圧された状態で連続的に可変的な1次PMDを発生させることが可能であって、実装が容易であり、高速で動作し、しかも制御が容易である。
【解決手段】PMD生成装置46は、偏波面コントローラ12、第1複屈折媒体14と第1モードミキサ16と第2複屈折媒体18とを含む単位機能ブロック48、第2モードミキサ20、及び反射鏡22を具えて構成される。入力光信号11-1は偏波面コントローラに入力され、偏波モードの方向を示す主偏波状態を指定する座標軸の方向と第1複屈折媒体の結晶軸の方向が平行となる状態に調整されて入力光信号13-1として第1複屈折媒体に入力される。そして、単位機能ブロック46、第2モードミキサ20、及び反射鏡22にいたるまでの光路を往復することによって、2次PMDの発生が抑圧された状態で1次PMDが付加されたPMD付加光信号11-2が生成されて出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光通信システムにおける光信号の時間波形が歪む要因の一つである偏波モード分散(PMD: Polarization Mode Dispersion)を補償する装置、及び光通信システムのPMD耐性の評価等に必要とされる擬似的PMDを発生させるPMDエミュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
高速光通信において通信性能を制限する要因の一つは、光信号を構成する光パルスが光ファイバ伝送路を伝播することによってその時間波形が歪むことにある。光パルスの時間波形が歪む要因の一つが、光ファイバ伝送路が有する複屈折率構造に基づいて発生するPMDであり、PMDは以下に示すメカニズムによって発現する。
【0003】
光ファイバの製造過程における製造誤差、光ファイバ伝送路の敷設状況による曲げ、捩れ、押圧等による応力の影響により、光ファイバのコアの断面形状が真円からずれることによって光ファイバに複屈折性が生じる。この複屈折性によって、光ファイバを伝播する光パルスの位相速度が光電場の振動方向に依存する現象が生じる。このように複屈折媒体を光パルスが伝播する際の位相速度が大きくなる振動方向が進相軸(fast axis)、小さくなる方向が遅相軸(slow axis)と呼ばれる。
【0004】
光パルスが光ファイバを伝播すると、この複屈折性に起因して、光パルスの直交する偏波成分の間に伝播時間差、すなわち微分群遅延(DGD:Differential Group Delay)が生じる。この現象がPMDである。以後、光パルスの光搬送波の偏波成分というところを、単に光パルスの偏波成分ということもある。
【0005】
図1(A)〜(D)を参照して、このPMDによって、この光ファイバを伝播する光パルスの時間波形が歪む現象を説明する。図1(A)〜図1(D)は、光パルスが複屈折性を有する光ファイバを伝播することによって受ける光パルスの時間波形の変化の様子の説明に供する図である。
【0006】
図1(A)は、光通信システムの概略的基本構成を示すブロック構成図であり、送信器40と受信器44とが光ファイバで構成される光ファイバ伝送路42によって接続されており、光信号43がこの光ファイバ伝送路42を伝播して送信器40から受信器44に伝送される。
【0007】
図1(B)は送信器40から出力される光信号の時間波形を示す図であり、図1(C)は受信器44で受信される光信号の時間波形を示す図であり、図1(D)は光ファイバ伝送路42を伝播中の光信号の時間波形を直交2偏波成分に分けてそれぞれの偏波成分の時間波形およびそれらの時間軸上での位置関係を模式的に示す図である。図1(B)及び図1(C)において横軸は時間軸を縦軸は信号強度をそれぞれ任意スケールで示してあり、図1(D)において横軸は時間軸示しており、直交するPSP+軸及びPSP-軸の方向に対する光強度をそれぞれの軸に対して模式的に示してある。ここで、PSP+軸は進相軸であり、PSP-軸は遅相軸であり、PSP+軸及びPSP-軸は、偏波モードの方向を示す主偏光状態(PSP: Principal States of Polarization)を指定する座標軸である。
【0008】
送信器40から出力された直後の光信号は、図1(B)に示すように時間歪のない光パルスから構成されている。図1(B)では、「1,1,0,1」で与えられる2値デジタル光信号を例にとって示してあり、1ビットあたりの時間スロットの幅はTbである。一方、受信器44で受信される光信号は、図1(C)に示すようにその時間波形が歪んでいる。
【0009】
光ファイバ伝送路42を伝播する前、すなわち送信器40から出力された直後の光信号43を構成する光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分は、時間軸上でそのピーク位置が一致している。しかしながら、光ファイバ伝送路42が有する複屈折性によって、光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分の群速度が異なり、光パルスが有限長だけ光ファイバ伝送路42を伝播すると光パルスのPSP+軸方向偏波成分とPSP-軸方向偏波成分とのそれぞれのピーク位置が、図1(D)に示すようにずれる。この時間軸上でのピーク位置のずれ量がDGDである。
【0010】
光信号43は、受信器44において光電変換器等で強度信号として電気信号に変換される。このため、光信号43が電気信号に変換された受信信号の時間波形は、光信号43を構成する光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分を足し合わせた光強度の時間波形と相似形の時間波形となる。
【0011】
従って、光信号43を構成する光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分の時間軸上で両者のピーク位置が一致していれば、その時間波形は図1(B)に示すように単峰性のパルス波形となり、その時間波形に歪は存在しない。これに対して、DGDによって光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分の時間軸上で両者のピーク位置が一致していなければ、その時間波形は図1(C)に示すように多峰性のパルス波形となり、その時間波形は歪む。
【0012】
光ファイバ伝送路で発現するPMDの大きさの程度はPMD係数(単位:ps/km1/2)で与えられる。国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU-T: International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)の勧告によれば、標準の単一モードファイバ(Single Mode Fiber)のPMD係数は、0.2 ps/km1/2以下であることが望ましいとされている。
【0013】
敷設された光ファイバで生じるDGDの平均値の大きさは、PMD係数に伝送距離の平方根を掛け算することによって求められる。すなわち、(平均のDGDの大きさ(ps))=(PMD係数(ps/km1/2))×(伝送距離の平方根(km1/2))である。例えば、PMD係数が0.2 ps/km1/2である単一モードファイバによる光ファイバ伝送路では、100 kmで、(0.2 ps/km1/2)×(1001/2km1/2)=(0.2×10)psとなるから、平均2 psのDGDが発生する。
【0014】
一般に、敷設年代の古い光ファイバ伝送路ほどそのPMD係数が大きく、1980年代に敷設された光ファイバ伝送路のPMD係数は5 ps/km1/2に及ぶものもあることが報告されている。因みに、現在は0.02 ps/km1/2以下の光ファイバが開発さている。
【0015】
光信号の1ビット分に割り当てられる時間スロットの幅(図1(B)にTbとして示してあり、ビット周期ともいう。)の30%程度にDGDの値が達すると、ビットエラーレート等で与えられる伝送品質が急激に劣化することが経験則として把握されている。例えば、この出願の発明者らは、Tb=6.25 psでDGDが1.8 psに達すると受信信号のQ値が急激に低下することを確かめている。すなわち、伝送速度が高いということはビット周期が短いことを意味するので、伝送速度が高くなるほどPMDの伝送品質に与える影響が大きくなる。
【0016】
光ファイバ伝送路網を拡張させていくに当たり、構築コストには経済上の制約があること等を勘案すると、古い時代に敷設された光ファイバ伝送路を活かし、これに新たな光ファイバ伝送路を追加していくという方針がとられる。従って、このように拡張された光ファイバ伝送路網を利用する光通信においては、光信号がPMD係数の大きな光ファイバ伝送路によって伝送されることを前提にしてPMDの影響を低減する技術が必須となる。
【0017】
また、PMD係数から見積もられるDGD値は時間的な平均値であり、時間に対して刻々と変動する性質を備えている。また、光ファイバ伝送路42を構成している光ファイバのPMD(後述するPMDベクトル)は、その大きさや方向が光ファイバの伝送軸方向に一定ではなく距離と共にランダムに変化する。そこで、このような光ファイバは、便宜上複数の短い間隔に分割して、分割されたそれぞれの区間のPMDベクトルがランダムに変化しているものと見なすことが可能である。
【0018】
すなわち、分割されたそれぞれの区間に対応する長さの短い光ファイバが光導波方向に沿って複数個配列されて接続されたものと見なし、それぞれの短い光ファイバのPMDベクトルがランダムに異なっているものと見なすことができる。そこで、上述の光ファイバを短い光ファイバが光導波方向に沿って複数個配列されて接続されたものと見なすことを、以後短い光ファイバが多数個縦続接続されているものと見なすと表現する。
【0019】
ここで、PMDベクトルとは、その大きさがDGDの大きさを示し、その方向が主偏光状態の単位ストークスベクトルに平行な方向として定義されるベクトルである。
【0020】
図2(A)及び(B)を参照して、PMDベクトルがランダムに変化しているもとの見なした場合の光ファイバの概略的模式図及び、短い光ファイバが多数個縦続接続されているものと見なした場合のDGDの値の分布を与える関係について説明する。
【0021】
図2(A)及び(B)は、光ファイバのPMDベクトルの分布についての説明に供する図である。図2(A)は光ファイバを短い光ファイバが多数個縦続接続されたものと見なした場合の短い光ファイバ部分ごとの複屈折の進相軸あるいは遅相軸の方向を模式的に示す図である。図2(B)は複屈折性が分布した光ファイバ伝送路において、各複屈折結晶間の偏光状態が時間に関してランダムに変化した場合の光ファイバ伝送路全体がとるDGD値の分布を示す図であり、横軸はDGD値をps(ピコ秒)単位で目盛って示してあり、縦軸はDGDの値の出現頻度を目盛って示してある。
【0022】
それぞれの短い光ファイバのPMDベクトルの大きさを与えるDGDの値の分布は、図2(B)に示すマックスウエル分布となることが知られている。図2(B)では、光ファイバ伝送路の平均DGDの値をΔτとしてある。
【0023】
光ファイバ伝送路のDGDの値の逆数が光パルス信号のスペクトル帯域幅より大きくなると、高次PMDの影響を無視することができなくなる。高次PMDは、光パルス信号の周波数(波長)に対する、偏波モードの方向を示すPSPの変化に加え、進相軸に平行な光電場成分と遅相軸に平行な光電場成分との伝播速度の差が光搬送波の周波数(波長)に依存して変化する現象として知られている。この現象は、偏波依存波長分散(PCD: Polarization dependent Chromatic Dispersion)とも呼ばれている。ここで、PSPの変化はPMDベクトルの終端のポアンカレ球上での回転として表される。
【0024】
上述のPMDベクトルの方向及び大きさは一般に光搬送波の波長に依存するが、PMDの波長に対する変化に対して光信号の波長スペクトル帯域幅を無視できる場合は、波長依存性のないPMD成分である1次PMDに対して対処するだけで足りる。しかしながら、光信号の波長スペクトル帯域幅を無視できない場合は、波長依存性を具えるPMD成分である高次PMDについても対処することが必要となる。
【0025】
高次PMDに対し、光信号の波長スペクトル帯域幅を無視できる場合とは、光ファイバ伝送路のPMD係数そのものが小さい場合あるいは伝送路で発生し得るDGDの逆数が光信号帯域に対して十分に小さい場合である。
【0026】
高次PMDについては以下のように、説明することもできる。光ファイバ伝送路を光パルスが伝播する場合、光パルスの波長スペクトル成分のうち短波長成分と長波長成分とでは、その進相軸及び遅相軸の向きも異なっている。すなわち、光ファイバ伝送路の導波方向をz軸にとった場合、光ファイバに進相軸及び遅相軸の向きにz軸依存性が存在することで、伝送路全体としての進相軸及び遅相軸の向きが波長成分ごとに異なり、またDGDの値も波長成分ごとに異なることにより、光パルスの時間波形が複雑に変形する。このように、進相軸及び遅相軸の向きの変化及びDGDの値が波長に依存して変化することに起因して発生するPMDが高次PMDである。
【0027】
PMDの波長依存性を考慮しない捉え方が1次PMDであり、2次PMDはこれらの波長依存性が一定の割合で変化する現象である。また、より高次のPMDは波長依存性が一定の割合ではなくより複雑な割合で変化する現象である。
【0028】
伝送速度を高くするためには光パルスの時間幅を狭くする必要があり、光パルスの時間幅が狭くなるとこの光パルスの波長スペクトルの帯域幅は広くなる。そのため、高い伝送速度の光通信システムの光ファイバ伝送路のPMDの影響について検討するに当たっては、1次PMDのみならず高次PMDを考慮することが重要となる。
【0029】
以上説明した様に、考慮すべきPMDは、PMD係数で与えられる光ファイバ伝送路の状態、及び光信号のビット周期の大きさによってその上限が決定される。従って、光ファイバ伝送路のPMDの影響を緩和する技術が必要となる。また、光通信システムを構築及び運用するに当たっては、まず、光ファイバ伝送路で生じ得るPMDに対する耐力をテストする技術が必要となるが、光ファイバ伝送路のPMDは外部環境などの不確定要因によりランダムに発生するため再現することが難しい。そこで、光ファイバ伝送路のPMDを模倣する検査装置(以後、PMDエミュレーターということもある。)が提供されることが望まれる。
【0030】
一方、光ファイバ伝送路のPMDの影響を緩和するためのPMD補償方法としては、ビットレートを保ったまま、信号のシンボルレートを小さくできる多値変調方式が広く検討されている。多値変調方式としては、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、あるいはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)等がある。
【0031】
また、受信側において光学段で補償する方法や、電気段で波形等化する方法が知られている。光学段補償方法は、光ファイバ伝送路のPMDと逆特性のPMD(等化PMDということもある。)を、光学素子を組み合わせて構成される光学回路によって実現し、光ファイバ伝送路のPMDを補償する方法である。
【0032】
一方、電気段補償方法は、受信光信号を光電変換し、アナログ電子回路であるトランスバーサルフィルタによって波形等化を行う方法である。また、電気段補償方法の他の方法として、シンボルレートの2倍以上のA/D(Analog-to-Digital)変換を行い、FIR(Finite-Impulse-Response)フィルタによってデジタル信号処理をして波形等化を行う方法も知られている。
【0033】
電気段補償方法は、PMDの変動に対する適応等化速度に優れるが、信号のシンボルレートによって動作限界が存在する。また、デジタル信号処理に基づく方法では、高速のA/D変換器と論理回路が必要となることから、低消費電力化に課題が残る。
【0034】
一方、光学段補償方法は、装置の大きさが電気段補償方法で利用される電気回路(電気等化IC)と比較して大きくなるという問題点がある。また、光学段補償方法は、補償動作速度が遅く、装置の価格が高額であるという短所も有している。しかしながら、処理する信号のビットレートや信号の変調フォーマットに低依存で動作し、かつ電力を必要とする機能部分は光素子を動的に駆動するための駆動制御部分だけであり、低消費電力化を図りやすいという利点を有している。その上、光学段補償方法に使われるPMD補償装置は、上述した光ファイバ伝送路のPMD補償を行うための装置として利用可能であると共に、光ファイバ伝送路で発生するPMDをエミュレートするためのPMDエミュレーターとしても利用可能であるという利点も併せ持っている。
【0035】
光学段補償方法を実現するためのPMD生成装置は、主に偏波面コントローラとDGD発生器とを組み合わせて構成される。光ファイバ伝送路のDGDを信号のビットレート周期の10%以下に抑圧することを想定すると、高速信号においては、DGD発生器においてDGDを可変的に変化させてPMDを補償することが望ましい。また、同様の理由から、PMD生成装置をPMDエミュレーターとして機能させる場合においても、高速信号を処理することを想定して、DGD発生器においてDGDを可変的に変化させてPMDを補償することが望ましい。
【0036】
DGDを可変的に変化させることができる可変DGD発生器は、直交偏波モード間の光路長差を発生させるための機械的に駆動される可動鏡が利用されて構成されるタイプ、あるいは、複屈折媒体と偏波面回転手段とを組み合わせて構成されるタイプが知られている。
【0037】
例えば、入射光に対して所定の群遅延時間を2回与え、かつ先の群遅延時間を付与してから後の群遅延時間を付与するまでの間に偏光状態を可変に回転させる構成とされた可変DGD発生器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この種の可変DGD発生器は、光サーキュレータ、ファラデー回転子、偏光保持ファイバ(PMF: Polarization Maintaining Fiber)、あるいは複屈折媒体、及び反射ミラーから構成される。
【0038】
図3を参照して、特許文献1に開示された可変DGD発生器の概略的構成とその動作について説明する。この可変DGD発生器は、複屈折媒体50とモードミキサ52と反射ミラー54とを具え、複屈折媒体50とモードミキサ52とで形成される光経路を、光パルスを往復させることでPMDを発生させるPMD生成装置である。
【0039】
入力光パルス49が複屈折媒体50に入力されると、複屈折媒体50の進相軸と遅相軸のそれぞれの方向の偏波成分の伝播速度が異なるので、入力光パルス49の偏波状態(SOP: State of Polarization)がストークス空間でストークス空間を規定する直交3軸の内の一つの軸(例えばS1軸)を中心として回転され光パルス51として出力されモードミキサ52に入力される。光パルス51はモードミキサ52で同様にそのSOPが、複屈折媒体50における回転軸と直交する軸(例えばS3軸)を中心として回転され光パルス53として出力され反射ミラー54で反射されて光パルス55となり再びモードミキサ52に入力されてSOPがS3軸を中心に回転され光パルス57として出力される。光パルス57は複屈折媒体50に入力されてSOPがS1軸を中心に回転されて出力光パルス59として出力される。出力光パルス59は、入力光パルス49にDGDが付加されたPMD含有光パルスである。
【0040】
このような構成によってPMDベクトルを発生させると、1次PMDの発生に伴って2次PMDも発生し、この2次PMDも付加されてPMD含有光パルスとして出力される。従って、図3に示す構成のPMD生成装置によって、入力光パルスのPMDを等化すると、等化されて1次PMDは除去されるが、2次PMDが新たに発生するという問題が生じる。
【0041】
また、DGD値が2のべき乗の関係にある複数の複屈折媒体を、これら複屈折媒体の2つの固有軸を選択するように動作する磁気光学(MO: Magnet Optic)スイッチを介して接続し、固有軸間の偏光状態をバイナリー変化させてDGDを可変とする構成の可変DGD発生器が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。このタイプの可変DGD発生器は、MO型偏光光スイッチと長さの異なる複数の複屈折結晶から構成されている。
【0042】
また、可変位相シフタを挟んで接続された4つの複屈折媒体により、DGD発生器自身の高次PMDの発生を抑圧しつつDGDを可変に発生する方法も開示されている。この方法を実現する装置としては、4つの複屈折媒体と3つの偏光回転手段とから構成された可変DGD発生器が使われている(非特許文献2参照)。
【0043】
図4を参照して、非特許文献2に開示された可変位相シフタを挟んで接続された4つの複屈折媒体により、DGD発生器自身の高次PMDの発生を抑圧しつつDGDを可変に発生させる
PMD生成装置の概略的構成及びその動作について説明する。
【0044】
図4に示すPMD生成装置は、合同な構成の第1ブロック60と第2ブロック70との間に第2モードミキサ68を挟んで構成されている。第1ブロック60は、第1複屈折媒体62、第1モードミキサ64、及び第2複屈折媒体66を具えて構成されており、第2ブロック70は、第1複屈折媒体72、第1モードミキサ74、及び第2複屈折媒体76を具えて構成されている。以後第1ブロック60及び第2ブロック70を単位機能ブロックということもある。
【0045】
入力光パルス61が第1ブロック60の第1複屈折媒体62に入力されると、第1複屈折媒体62の進相軸と遅相軸のそれぞれの方向の偏波成分の伝播速度が異なるので、入力光パルス61のSOPがストークス空間を規定する直交3軸の内の一つの軸(例えばS1軸)を中心として回転され光パルス63として出力され第1モードミキサ64に入力される。光パルス63は第1モードミキサ64で同様にそのSOPが、第1複屈折媒体62で生じるSOP回転軸と直交する軸(例えばS3軸)を中心として回転され光パルス65として出力され第2複屈折媒体66に入力される。光パルス65はそのSOPがS1軸を中心として回転され光パルス67として出力され第2モードミキサ68に入力される。
【0046】
第2モードミキサ68に入力された光パルス67は、そのSOPがS1軸を中心として回転され光パルス69として出力され第2ブロック70の第1複屈折媒体72に入力される。光パルス69は第1複屈折媒体72によってそのSOPがS1軸を中心として回転され光パルス73として出力される。光パルス73は第1モードミキサ74で同様にそのSOPがS3軸を中心として回転され光パルス75として出力され第2複屈折媒体76に入力される。光パルス75はそのSOPがS1軸を中心として回転され出力光パルス77として出力される。出力光パルス77は、入力光パルス61にDGDが付加されたPMD含有光パルスである。
【0047】
図4に示す構成によってPMDベクトルを発生させると、第1ブロック60と第2ブロック70が完全に合同な構成とされていれば、第1ブロック60で発生した2次PMDを第2ブロック70によって相殺することが可能である。このことを実現させるためには、第1ブロック60の第1モードミキサ64と第2ブロック70の第1モードミキサ74とで発生させるDGDを等しくなるように制御する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開2003−228026号公報
【非特許文献】
【0049】
【非特許文献1】Lianshan Yan, et al., "Programmable Group-Delay Module Using Binary Polarization Switching", Journal of Lightwave Technology Vol. 21, No. 7, pp. 1676-1684 July 2003
【非特許文献2】P. B. Phua, et al., "Variable Defferential-Group-Delay Module Without Second-Order PMD", Journal of Lightwave Technology Vol. 20, No. 9 pp. 1788-1794 September 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
PMD補償装置及びPMDエミュレーターに対して要請される特性は、高速で動作すること、小型であること、高精度なPMDを発生させること、長時間安定した動作をすること、高次PMDの発生が小さいこと、消費電力が小さいこと、外部環境の影響を受けにくいこと、実装が容易であってかつ制御が容易であること等である。このうち特に、PMD補償装置及びPMDエミュレーターに共通して利用されるPMD生成装置には、2次PMDの発生が抑圧された状態で1次PMDを発生させることが可能であって、高速で動作すること、実装が容易であってかつ制御が容易であるという特長を有することが求められている。また、特に近年盛んに研究開発が進められている偏波多重信号に対するPMD耐力テストとして用いるPMDエミュレーターとしては、敷設光ファイバにおいて発生するPMDと同じような、PMDベクトルを変化させた際に出力SOPが連続に変化する能力が求められる。
【0051】
光ファイバ伝送路のPMDはミリ秒の速さで変動するという観測例があり、PMD補償装置及びPMDエミュレーターを構成するPMD生成装置には、この速さに対応可能な動作速度が要請される。機械式の可動鏡によるDGDの調整速度は数十ミリ秒が限度である。更に可動鏡の可動部の長期使用による磨耗や振動による動作不良もあり、機械式の可動鏡によるDGD発生器を使用して構成されるPMD生成装置には、高速動作性、長時間の安定動作の補償という面から課題をはらんでいる。
【0052】
上述の非特許文献1に開示された、複屈折媒体の2つの固有軸を選択するように動作するMOスイッチを介して接続し、固有軸間の偏光状態をバイナリー変化させてDGDを可変とする構成の可変DGD発生器は、発生可能なDGDの値が複屈折媒体の組み合わせによって離散的な値に決定されるため、高精度でのPMDを発生させるためにはDGDの値を細かく変化させなければならないが、そのために複屈折媒体とMOスイッチを多数用意する必要がある。また、DGD可変動作に伴って直交固有軸間の遅延差をピコ秒単位で切り変えるため、DGD発生器からの出力SOPが急激に変化する。更に発生させるDGD量を切り変える際に、切り変え開始から切り変え完了までの間は、複数の複屈折媒体の固有軸が直交状態にないために瞬間的に高次PMDが発生するという問題がある。
【0053】
上述の特許文献1に開示されている、複数の複屈折媒体間の偏波状態を連続的に回転させ複屈折媒体間のモード結合状態を変化させる方法は、特定波長で観測されるDGDの値を連続的に変化させることが可能であるが、2次PMDが発生するという問題がある。2つの複屈折媒体のDGDの大きさをそれぞれτ1及びτ2とし、その間の偏波面回転量をθとすると、このDGD発生器で発生するDGDの値τと、2次PMDの値の大きさ|τω|は、それぞれ次式(1)及び(2)で与えられる。
【0054】
τ=(τ12+τ22+2τ1τ2cos2θ)1/2 (1)
|τω|=τ1τ2sin2θ (2)
【0055】
上述した非特許文献2に開示された方法によれば、連続的にDGDの大きさを変化させ、かつ高次PMDの発生を抑えることが可能である。それぞれの単位機能ブロックでは、可変偏光回転素子によって偏波状態を回転させ、上述の式(1)に従ってDGDの値を変化させる。この動作に伴って上述の式(2)で与えられる2次PMDが発生するが、1次PMDベクトルと2次PMDベクトルとはストークス空間で直交する性質を利用して、DGD成分のみを残し2次PMD成分を相殺することが可能である。
【0056】
この方法では、等しいPMDベクトルを有する2つの単位機能ブロックの対称構造を利用して2次PMD成分を相殺して1次PMDを発生させるため、各単位機能ブロックは等しい光学的特性を有していることが要請される。従って、合計4つの複屈折媒体と2つの偏波回転素子の光学的特性を等しくする必要がある。各複屈折媒体によるDGD値の均一性、偏波回転素子の偏波面の回転量の均一性を確保することが不可欠であり、この条件を満たす複屈折媒体及び偏波回転素子を選定して実装すること、及び2つの偏波回転素子をその光学的特性を等しく制御することは、現実には非常に難しい。また、上述したように、2つのモードミキサを完全に等しく動作するように制御する必要があり、温度調節やデバイス間の相対位相関係の維持が必要とされる等、制御上及び実装上多くの困難が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0057】
この出願の発明者は、単位機能ブロックとモードミキサと反射鏡とをこの順に配置して、モードミキサからの出力光をこの反射鏡で反射させて再び単位機能ブロックに戻す構成とし、入力光信号に対して同一光路を往復させる構造とすることで、上述の合同の形態の単位機能ブロックをモードミキサに関して対称な形態に配置して形成されるPMD生成装置の持つ、光学的特性の等しい各単位機能ブロックを2つ用意し、かつ双方同時に光学的特性を等しく制御しなければならないという問題が解決することに思い至った。
【0058】
すなわち、反射型としてPMD生成装置を構成して入力光信号を単一の単位機能ブロックを往復させることで、同一の構成の2つの単位機能ブロックを通過させることに相当する動作を行わせることが可能となる。従って、各単位機能ブロックに対して等しい光学的特性を有していることを要請し、合計4つの複屈折媒体と2つの偏波回転素子の光学的特性を等しく制御しなければならないという困難が解決されるとの認識に至った。
【0059】
そこで、この発明の目的は、2次PMDの発生が抑圧された状態で連続的に可変的な1次PMDを発生させることが可能であって、実装が容易であり、高速で動作し、しかも制御が容易であるPMD生成装置を提供すること、及びこのPMD生成装置によって実現されるPMD生成方法を提供することにある。
【0060】
また、この発明の更なる目的は、このPMD生成装置を利用して構成されるPMD補償装置及びPMDエミュレーター、並びにこのPMD補償装置及びPMDエミュレーターによって実現されるPMD補償方法及びPMDエミュレート方法を提供することにある。
【0061】
上述の理念に基づくこの発明の第1の要旨によれば、以下のPMD生成装置及びこのPMD生成装置によって実現されるPMD生成方法が提供される。
【0062】
この発明の第1の要旨によるPMD生成装置は、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡を具え、これらの光学素子がこの順に配列されて形成される。そして、入力光信号が第1複屈折媒体から入力されて、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの経路を往復して、1次PMDが入力光信号に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号が生成されて出力される構成とされている。
【0063】
第1複屈折媒体の前段に、第1複屈折媒体の結晶軸へ入射される入力光信号のSOPを任意に調整できるように、偏波面コントローラを第1複屈折媒体の前段に更に設けるのが好適である。
【0064】
第1モードミキサを、第1複屈折媒体の側から第2複屈折媒体の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサを、第2移相子を配置して構成するのが好適である。第1の1/4波長板と第2の1/4波長板の光学軸は、複屈折結晶の固有軸から45度傾けて配置される。この第1モードミキサによる偏光回転軸(S3)は、複屈折結晶の伝搬に伴う偏光回転軸(S1)とストークス空間で直交する。
【0065】
また、第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率差を利用して構成される透過性光学セラミックス製の偏波面回転素子とするのが好適である。
【0066】
この発明の第1の要旨によるPMD生成装置によれば、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に入力光信号を入力させて、この光路を往復させることによって、PMDを発生させこのPMDを入力光信号に付加してPMD付加光信号を生成するPMD生成方法が実現される。
【0067】
このPMD生成方法は、上述の光路に入力光信号が入力されてから出力されるまでの間に、入力信号の直交する偏波成分の間の伝播時間差である微分群遅延を生じさせ1次PMDを発生させる1次PMD発生ステップと、1次PMDの発生に伴って発生する2次PMDを相殺させる2次PMD相殺ステップとを含んで構成される。
【0068】
このPMD生成方法は、第1複屈折媒体へ入力される入力光信号のSOPを任意に調整する偏波面調整ステップを更に含んで構成するのが好適である。
【0069】
また、上述の理念に基づくこの発明の第2の要旨によれば、以下のPMD補償装置及びこのPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法が提供される。
【0070】
この発明の第2の要旨によるPMD補償装置は、PMD生成装置、偏波解析器、演算器、及びドライバを具え、入力光信号を入力させて、この入力光信号のPMDを等化する等化PMDを発生させ、この等化PMDを光信号に付加してPMD補償光信号を生成して出力するPMD補償装置である。
【0071】
PMD生成装置は、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されており、入力光信号を第1複屈折媒体から入力して、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの経路を往復させて出力させることによって、暫定等化PMDを入力光信号に付加して暫定PMD補償光信号を生成する。
【0072】
偏波解析器は、暫定PMD補償光信号のPMD補償の程度をPMD補償パラメータとして数値化して出力する。演算器は、PMD補償パラメータに基づいて、暫定PMD補償光信号のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号を算出して出力する。ドライバは、PMD補償指示信号に基づいて、PMD補償光信号を生成するようにPMD生成装置を制御する。
【0073】
PMD生成装置において、第1複屈折媒体の前段に、伝送路の進相軸を通過した偏光成分が、PMD生成装置の遅相軸に入力されるようにSOPを調整する偏波面コントローラを更に配置するのが好適である。
【0074】
第1モードミキサを、第1複屈折媒体の側から第2複屈折媒体の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサを、第2移相子を配置して構成するのが好適である。第1の1/4波長板と第2の1/4波長板の光学軸は、複屈折結晶の固有軸から45度傾けて配置される。この第1モードミキサによる偏光回転軸(S3)は、複屈折結晶の伝搬に伴う偏光回転軸(S1)とストークス空間上で直交する。
【0075】
また、第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率差を利用して構成される透過性光学セラミックス製の偏波面回転素子とするのが好適である。
【0076】
この発明の第2の要旨によるPMD補償装置によれば、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に入力光信号を入力させて、この光路を往復させることによって、PMDを等化する等化PMDを発生させこの等化PMDを入力光信号に付加してPMD補償光信号を生成するPMD補償方法が実現される。
【0077】
このPMD補償方法は、PMD生成ステップと、偏波解析ステップと、演算ステップと、等化PMD制御ステップとを含んで構成される。
【0078】
PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ入力光信号に付加して暫定PMD補償光信号を生成するステップである。偏波解析ステップは、暫定PMD補償光信号のPMD補償の程度をPMD補償パラメータとして数値化して出力するステップである。演算ステップは、PMD補償パラメータに基づいて、暫定PMD補償光信号のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号を算出して出力するステップである。等化PMD制御ステップは、PMD補償指示信号に基づいて、PMD補償光信号のPMDの値を制御して、PMD補償光信号を出力するステップである。
【0079】
このPMD補償方法は、伝送路の進相軸を通過した偏光成分が、PMD生成装置の遅相軸へ入力されるようにSOPを調整する偏波面調整ステップを更に含めて構成するのが好適である。
【0080】
また、上述の理念に基づくこの発明の第3の要旨によれば、以下のPMDエミュレーター及びこのPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法が提供される。
【0081】
この発明の第3の要旨によるPMDエミュレーターは、PMD生成装置、偏波解析器、演算器、ドライバ、及び主偏波状態制御部(PSP制御部)を具え、PMDを含まない入力光信号を入力させて、予め設定された大きさのPMDが付加されたエミュレートPMD含有光信号を生成し、エミュレートPMD含有光信号の主偏波状態を、予め設定された主偏波状態に調整して出力するPMDエミュレーターである。
【0082】
PMD生成装置は、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されており、入力光信号を、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの経路を往復させることによって、模倣PMDを発生させ入力光信号に付加してPMD含有光信号を生成する。
【0083】
偏波解析器は、PMD含有光信号のPMD補償の程度をPMDパラメータとして数値化して出力する。
【0084】
演算器は、PMDパラメータに基づいてPMD含有光信号のPMD補償の程度が予め設定されたPMDの値に近づく方向にPMD付加指示信号を出力する。
【0085】
ドライバは、PMD付加指示信号に基づいてエミュレートPMD含有光信号を生成するようにPMD生成装置及びPSP制御部を制御する。
【0086】
PSP制御器は、暫定PMD含有光信号のPSPを予め設定されたPSPに調整して出力する。
【0087】
PMD生成装置において、第1複屈折媒体の前段に、進相軸と遅相軸へのパワー分岐比を指定する偏波面コントローラを更に配置するのが好適である。
【0088】
第1モードミキサを、第1複屈折媒体の側から第2複屈折媒体の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサを、第2移相子を配置して構成するのが好適である。
【0089】
また、第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率差を利用して構成される透過性光学セラミックス製の偏波面回転素子とするのが好適である。
【0090】
この発明の第3の要旨によるPMDエミュレーターによれば、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路にPMDを含まない入力光信号を入力させて、この光路を往復させることによって、予め設定された大きさのPMDが付加され、かつ予め設定されたPSPのエミュレートPMD含有光信号を生成するPMDエミュレート方法が実現される。
【0091】
このPMDエミュレート方法は、PMD生成ステップと、偏波解析ステップと、演算ステップと、エミュレートPMD制御ステップと、主偏波状態制御ステップとを含んで構成される。PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ、この暫定PMDが付加されたPMD含有光信号を生成するステップである。偏波解析ステップは、PMD含有光信号のPMD補償の程度をPMDパラメータとして数値化して出力するステップである。演算ステップは、PMDパラメータに基づいて、PMD含有光信号のPMDの大きさが予め設定されたPMDの値に近づく方向にPMD付加指示信号を出力するステップである。エミュレートPMD制御ステップは、PMD付加指示信号に基づいて、PMD含有光信号のPMDの値を制御してエミュレートPMD含有光信号を生成するステップである。主偏波状態制御ステップは、エミュレートPMD含有光信号の偏波面を回転させて、予め設定されたPSPのエミュレートPMD含有光信号を出力するステップである。
【0092】
このPMDエミュレート方法は、進相軸と遅相軸へのパワー分岐比を指定する偏波面調整ステップを更に含んで構成するのが好適である。
【発明の効果】
【0093】
この発明の第1の要旨のPMD生成装置によれば、入力光信号が第1複屈折媒体から入力されて、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡に至るまでの経路を往復して出力される。
【0094】
このような構成とすることによって、第1複屈折媒体、第1モードミキサ及び第2複屈折媒体を具えて構成される単位機能ブロックを入力光信号が往復することとなり、2つの合同の形態の単位機能ブロックをモードミキサに関して対称な形態に配置して形成されるPMD生成装置と同様の機能を有するPMD生成装置として機能する。
【0095】
すなわち、反射型としてPMD生成装置を構成して入力光信号を単一の単位機能ブロックを往復させることで、同一の構成の2つの単位機能ブロックを通過させることに相当する動作を行わせることが可能となっている。従って、1つの単位機能ブロックが入力光信号の往路と復路として共通に利用される構成となっており、この1つの単位機能ブロックの偏波面回転量等の光学的特性を制御するだけでよいこととなり、2つの同一の構成の単位機能ブロックを配置しこの2つの単位機能ブロックの光学的特性を等しく制御しなければならないという従来技術が有していた困難が解決される。
【0096】
また、単位機能ブロックを1つ構成するだけですむことから、PMD生成装置の構成が容易となり、かつ制御も容易となる。
【0097】
この発明の第1の要旨のPMD生成装置において、第1複屈折媒体の前段に偏波面コントローラを設ける構成とすれば、偏波面調整ステップを実現することが可能である。偏波面調整ステップは、PMD補償の場合、伝送路の進相軸を通過した偏波成分のSOPをPMD生成装置の遅相軸へ一致させるステップであり、エミュレーターの場合は、PMD生成装置の進相軸と遅相軸へのパワー分岐比を調整するステップである。
【0098】
第1モードミキサを、第1複屈折媒体の側から第2複屈折媒体の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサを、第2移相子を配置して構成することによって、2次PMDの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0099】
2次PMDの発生を効果的に抑制するには、往路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルと復路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルとは、その大きさが等しく向きが逆であることが必要である。すなわち、往路でのSOPの回転方向と復路でのSOPの回転方向とが等しくなる状態を実現することが必要である。そこで、第1モードミキサを第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成することによって、詳細は後述するが、偏波軸変換を往路と復路とで対称にすることが可能となり、往路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルと復路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルとは、その大きさが等しく向きが逆となる状況を実現できる。
【0100】
第1移相子を、カー効果による直交偏波成分間の屈折率差を利用して構成される透過性光学セラミックス製の偏波面回転素子とすることによって、高速動作が実現される。
【0101】
1次PMD発生ステップと、1次PMDの発生に伴って発生する2次PMDを相殺させる2次PMD相殺ステップとは、入力光信号が第1複屈折媒体から入力されて、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの経路を往復することによって実現される。
【0102】
この発明の第2の要旨のPMD補償装置によれば、上述のこの発明の第1の要旨のPMD生成装置と、偏波解析器、演算器、及びドライバを具えて構成されている。そのため、この発明の第1の要旨のPMD生成装置によって得られる効果はそのまま、この発明の第2の要旨のPMD補償装置によっても得られる。
【0103】
PMD生成装置によって、入力光信号が、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの経路を往復させられて出力さることによって、暫定等化PMDを入力光信号に付加して暫定PMD補償光信号を生成する。
【0104】
そして、偏波解析器によって、暫定PMD補償光信号のPMD補償の程度がPMD補償パラメータとして数値化して出力され、演算器によって、暫定PMD補償光信号のPMDの大きさが常に減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号が算出され、ドライバによって、PMD補償光信号を生成するようにPMD生成装置が制御される。
【0105】
従って、この発明の第2の要旨のPMD補償装置によれば、入力光信号の偏波状態が時間的に変動してもそれに応じて、入力光信号のPMDを等化する等化PMDを発生させるようにPMD生成装置が制御され、PMD補償光信号が生成されて出力される。
【0106】
この発明の第2の要旨によるPMD補償装置によれば、PMD生成ステップと、偏波解析ステップと、演算ステップと、等化PMD制御ステップとを含んで構成されるPMD補償方法が実現される。PMD生成ステップはPMD生成装置によって実現され、偏波解析ステップは偏波解析器によって実現され、演算ステップは演算器によって実現され、等化PMD制御ステップとは、ドライバによって実現される。また、偏波面調整ステップは、偏波面コントローラによって実現される。
【0107】
この発明の第3の要旨のPMDエミュレーターによれば、上述のこの発明の第1の要旨のPMD生成装置と、偏波解析器、演算器、ドライバ、及びPSP制御部を具えて構成されている。そのため、この発明の第1の要旨のPMD生成装置によって得られる効果はそのまま、この発明の第3の要旨のPMDエミュレーターによっても得られる。
【0108】
PMD生成装置によって、入力光信号が、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの経路を往復させられて、暫定等化PMDが付加されて暫定PMD含有光信号が生成される。
【0109】
PSP制御部によって、暫定PMD含有光信号の主偏波状態を予め設定されたPSPに調整して出力し、そして、偏波解析器によってPMD含有光信号のPMD補償の程度がPMDパラメータとして数値化して出力され、演算器によってPMD含有光信号のPMDの大きさが予め設定されたPMDの値に近づく方向にPMDを発生させるためのPMD付加指示信号が算出され、ドライバによってエミュレートPMD含有光信号を生成するようにPMD生成装置及びPSP制御器が制御される。
【0110】
従って、この発明の第3の要旨のPMDエミュレーターによれば、予め設定された大きさのPMDが付加され、かつ予め設定されたPSPのエミュレート偏波モード分散含有光信号が生成される。
【0111】
この発明の第3の要旨のPMDエミュレーターによれば、PMD生成ステップと、偏波解析ステップと、演算ステップと、エミュレートPMD制御ステップ、主偏波状態制御ステップとを含んで構成されるPMDエミュレート方法が実現される。PMD生成ステップは、PMD生成装置によって実現され、偏波解析ステップは、偏波解析器によって実現され、演算ステップは、演算器によって実現され、エミュレートPMD制御ステップは、ドライバによって実現され、主偏波状態制御ステップは、PSP制御部によって実現される。また、偏波面調整ステップは、偏波面コントローラによって実現される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】光パルスが複屈折性を有する光ファイバを伝播することによって受ける時間波形の変化の様子の説明に供する図である。(A)は、光通信システムの概略的基本構成を示すブロック構成図であり、(B)は送信器から出力される光信号の時間波形を示す図であり、(C)は受信器で受信される光信号の時間波形を示す図であり、(D)は光ファイバ伝送路を伝播中の光信号の時間波形を直交2偏波成分に分けてそれぞれの偏波成分の時間波形およびそれらの時間軸上での位置関係を模式的に示す図である。
【図2】光ファイバのPMDベクトルの分布についての説明に供する図である。(A)は光ファイバを短い光ファイバが多数個縦続接続されたものと見なした場合の短い光ファイバ部分ごとの複屈折の進相軸あるいは遅相軸の方向を模式的に示す図であり、(B)は複屈折性が分布した光ファイバ伝送路において、各複屈折結晶間の偏光状態が時間に関してランダムに変化した場合の光ファイバ伝送路全体がとるDGD値の分布を示す図である。
【図3】複屈折媒体とモードミキサと反射ミラーとを具えたPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図4】可変位相シフタを挟んで接続された4つの複屈折媒体により、DGD発生器自身の高次PMDの発生を抑圧しつつDGDを可変に発生させるPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図5】この発明の実施形態のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図6】この発明の実施形態のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【図7】この発明の実施形態のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【図8】光信号のストークスパラメータ(S1、S2、S3)をそれぞれS1軸、S2軸、S3軸に表示するストークス空間の単位球であるポアンカレ球を表す図である。
【図9】入力光信号が第1複屈折媒体に入力され、再び第1複屈折媒体からPMDが付加あるいは補償されて出力されるまでに受けるSOPの変化の様子をPMDベクトルのストークス空間における変化に対応付けて示す図である。
【図10】試作されたPMD生成装置の概略的構成図である。
【図11】第1移相子で発生させる直交偏波モード間で生じる位相差に対する第1モードミキサで発生されるDGDの関係を示す図である。
【図12】生成するPMDの値を0 psに設定した場合のPMD付加光信号の時間波形を示し、(A)はシミュレーションによって得られた時間波形を示し、(B)は実験によって得られた時間波形を光サンプリングオシロスコープで観測した結果を示す図である。
【図13】生成するPMDの値を2 psに設定した場合のPMD付加光信号の時間波形を示し、(A)はシミュレーションによって得られた時間波形を示し、(B)は実験によって得られた時間波形を光サンプリングオシロスコープで観測した結果を示す図である。
【図14】生成するPMDの値を3 psに設定した場合のPMD付加光信号の時間波形を示し、(A)はシミュレーションによって得られた時間波形を示し、(B)は実験によって得られた時間波形を光サンプリングオシロスコープで観測した結果を示す図である。
【図15】生成するPMDの値を4 psに設定した場合のPMD付加光信号の時間波形を示し、(A)はシミュレーションによって得られた時間波形を示し、(B)は実験によって得られた時間波形を光サンプリングオシロスコープで観測した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下、図5〜図14を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、図5〜図7はこの発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係などを概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の素子および動作条件などを取り上げることがあるが、これら素子および動作条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。
【0114】
図5〜図7に示した装置の構成要素については、共通する構成要素に対しては同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、図6及び図7において、光信号の通路を太線で示し電気信号の通路を細線で示してある。
【0115】
<この発明の実施形態のPMD生成装置>
図5を参照して、この発明の実施形態のPMD生成装置の構成及びその動作について説明する。図5は、この発明の実施形態のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【0116】
この発明の実施形態のPMD生成装置46は、第1複屈折媒体14、第1モードミキサ16、第2複屈折媒体18、第2モードミキサ20、及び反射鏡22を具え、これらの光学素子がこの順に配列されて形成される。更に、第1複屈折媒体14の前段に、入力光信号に対して、PMD生成装置46で発生するDGDを付与する偏光軸を調整する偏波面コントローラ12が設けられている。第1複屈折媒体14、第1モードミキサ16、及び第2複屈折媒体18は、単位機能ブロック48を構成している。
【0117】
入力光信号9は、光サーキュレータ10を介して入力光信号11-1としてこの発明の実施形態のPMD生成装置46に入力され、1次PMDが入力光信号に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて出力される構成とされている。
【0118】
上述した非特許文献2に開示されたPMD生成装置とこの発明の実施形態のPMD生成装置46との対応関係は次のようになっている。すなわち、この発明の実施形態のPMD生成装置46が、入力光信号11-1を、単位機能ブロック48、第2モードミキサ20、及び反射鏡22にいたるまでの光路を往復させる構成としたことによって、図4に示したPMD生成装置の合同な構成の第1ブロック60と第2ブロック70とが、単位機能ブロック48に対応することとなっている。そして、図4に示したPMD生成装置の第2モードミキサ68がこの発明の実施形態のPMD生成装置46の第2モードミキサ20と対応する。
【0119】
第1複屈折媒体14の前段に偏波面コントローラ12が設けられているので、PMD補償の目的でPMD生成装置を利用するときは、偏波面コントローラ12は伝送路のPMDの影響を受けた光信号の進相軸と、PMD生成装置の遅相軸とを一致させる目的で用いられ、入力光信号11-1のSOPが変動しても適応的に調整することが可能となる。また、PMDエミュレータとしてPMD生成装置を利用するときは、PMD生成装置の進相軸と遅相軸間のパワー分岐比を変化させる目的で、偏波面コントローラ12を利用することができる。
【0120】
すなわち、入力光信号11-1が偏波面コントローラ12に入力されると、所望の(補償器として用いる場合は、伝送路のPMDの影響を受けた光信号の進相軸と、PMD生成装置の遅相軸とが一致するように、エミュレーターとして用いる場合は、直交軸間のパワー分岐比が設定した値となるように)偏光変換が成され、入力光信号13-1として第1複屈折媒体14に入力される。入力光信号13-1が第1複屈折媒体14に入力されると、第1複屈折媒体14の進相軸と遅相軸のそれぞれの方向の偏波成分の伝播速度が異なるので、入力光信号13-1のSOPがストークス空間を規定する直交3軸の内の一つの軸(例えばS1軸)を中心として回転され光信号15-1として出力され第1モードミキサ16に入力される。光信号15-1は第1モードミキサ16で同様にそのSOPが、複屈折媒体における回転軸と直交する軸(例えばS3軸)を中心として回転され光信号17-1として出力され第2複屈折媒体18に入力される。光信号17-1はそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号19-1として出力され第2モードミキサ20に入力される。
【0121】
第2モードミキサ20に入力された光信号19-1は、そのSOPがS1軸を中心として回転され光信号21-1として出力され反射鏡22で光信号21−2として反射されて第2モードミキサ20に入力される。光信号21-2は、第2モードミキサ20でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号19-2として出力され第2複屈折媒体18に入力される。光信号19-2は、第2複屈折媒体18でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号17-2として出力され第1モードミキサ16に入力される。光信号17-2は、第1モードミキサ16でそのSOPがS3軸を中心として回転され光信号15-2として出力され第1複屈折媒体14に入力される。光信号15-2は、第1複屈折媒体14でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号13-2として出力され偏波面コントローラ12に入力され、PMD付加光信号11-2として出力される。
【0122】
PMD付加光信号11-2は光サーキュレータ10を介して出力信号であるPMD付加光信号23として出力される。
【0123】
<この発明の実施形態のPMD補償装置>
図6を参照して、この発明の実施形態のPMD補償装置の構成及びその動作について説明する。図6は、この発明の実施形態のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【0124】
この発明の実施形態のPMD補償装置は、PMD生成装置46、偏波解析器26、演算器28、及びドライバ30を具え、入力光信号11-1を入力させて、この入力光信号11-1のPMDを等化する等化PMDを発生させ、この等化PMDを光信号に付加してPMD補償光信号11-2を生成して出力するPMD補償装置である。ただし、この発明の実施形態のPMD補償装置を構成するPMD生成装置46には、上述したこの発明の実施形態のPMD生成装置46が利用されている。従って、上述したPMD生成装置46の動作についてはその重複する説明を省略する。
【0125】
入力光信号9は、光サーキュレータ10を介して入力光信号11-1としてPMD生成装置46に入力され、1次PMD(等化PMD)がこの入力光信号に付加され、かつこの1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されてPMD生成装置46から出力される。
【0126】
PMD生成装置46から出力されるPMD付加光信号11-2は、光サーキュレータ10を介してPMD付加光信号23として光分岐器24に入力され2分岐された一方の光信号が、暫定PMD補償光信号25-2として偏波解析器26に入力される。また、光分岐器24で分岐されたもう一方の暫定PMD補償光信号25-1は、そのPMDの大きさが0となるように制御された時点でPMD補償光信号となる。実際の運用形態では、暫定PMD補償光信号25-1あるいは25-2のPMDの大きさを厳密な意味で0とすることはできないので、予め定めたPMDの大きさ以下になった時点で、PMD補償光信号として生成されたものとして扱われる。
【0127】
偏波解析器26に暫定PMD補償光信号25-2が入力されると、偏波解析器26は、暫定PMD補償光信号25-2のPMD補償の程度をPMD補償パラメータ27として数値化して出力する。
【0128】
PMD補償パラメータ27は、暫定PMD補償光信号25-2の偏光度(DOP: Degree of Polarization)を利用することが可能である。DOPとは、光パルスの全光強度に対する偏光成分の光強度の占める割合として定義される値であるので、ストークスパラメータ(S0, S1, S2, S3)によって次式(3)で与えられる。
DOP={S12+S22+S32}1/2/S0 (3)
従って、ストークスパラメータが算出されれば、DOPは式(3)を用いて算出される。
【0129】
DOPはPMDが小さい場合は大きな値をとり、PMDが大きな場合は小さな値となる。従って、DOPの値が大きくなるように制御すればよいこととなる。このDOPを大きくするように制御する方法が、以下に説明するように知られている。
【0130】
なお、DOPをモニターしてPMDを補償する方法は、波形歪みの補償の対象である光信号の伝送ビットレートに依存せずに実行できること、及び任意のRZ(Return to Zero)フォーマットの光信号に対しても適用が可能であるという特長を有している。
【0131】
偏波解析器26は、DOP計測器(図示を省略してある。)及び演算処理装置(図示を省略してある。)を利用して周知の構成として形成することが可能である。DOP計測器には、例えば、ジェネラルフォトニクス社のDOP計測器POD-101A等が適宜利用できる。そして、偏波解析器26に、DOP計測器POD-101Aを利用し、DOP計測器POD-101Aから出力されるストークスパラメータを含むPMD補償パラメータ27を、USBインターフェース(図示を省略してある。)を介して、演算器28に供給する。演算器28には、PMD補償パラメータ27からDOPを算出するプログラムがインストールされているパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。すなわち、このパーソナルコンピュータによって、PMD補償パラメータ27からDOPを算出させる構成とする。
【0132】
DOPを算出するプログラムがインストールされているパーソナルコンピュータを利用して、後述するこの発明の実施形態のPMD補償方法のPMD生成ステップ、偏波解析ステップ、演算ステップ、及び等化PMD制御ステップの各ステップを手動操作することによって実行することが可能である。
【0133】
例えば、PMD生成ステップ、偏波解析ステップ、演算ステップ、及び等化PMD制御ステップの各ステップを、手動によってドライバ30を操作して制御することによって実行することが原理的に可能である。このとき、操作者は、偏波解析器26から出力されたDOPの値を読み取って、この値に対してDOPの値を増やすかあるいは減らすかを判断し、ドライバ30を操作してPMD補償装置46を制御する。もちろん、これらのステップに対して、汎用コンピュータ等を利用して、以下に説明するように適宜自動化することも可能であることはいうまでもない。
【0134】
演算器28は、上述のようにPMD補償パラメータ27に基づいてDOPを算出すると共に、暫定PMD補償光信号25-2のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号29を算出して出力させる構成とする。演算器28によってPMD補償指示信号29を算出する際のアルゴリズムとしては、周知の山登り法や粒子群最適化(PSO: Particle Swarm Optimization)アルゴリズム等の最適化アルゴリズムが適宜利用することが可能である。この最適化アルゴリズムの実行は手動でも可能であるが、入力光信号11-1の偏波状態が時間的に早い速度で変化する場合には、暫定PMD補償光信号25-2のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号29を算出するソフトウエアが組み込まれた汎用コンピュータ等を利用して適宜自動化することが望ましい。
【0135】
ドライバ30は、PMD補償指示信号29に基づいて、PMD補償光信号11-2(すなわちPMD補償光信号25-1)を生成するようにPMD生成装置46を制御する。具体的には、PMD補償指示信号29に基づいて、偏波面コントローラ12、第1モードミキサ16及び第2モードミキサ20に対して、それぞれ制御信号31-1、31-2及び31-3を供給して制御する。
【0136】
この発明の実施形態のPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法は、PMD生成装置46によって実現されるPMD生成ステップと、偏波解析器26によって実現される偏波解析ステップと、演算器28によって実現される演算ステップと、ドライバ30によって実現される等化PMD制御ステップとを含んで構成される。
【0137】
PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ入力光信号11-1に付加して暫定PMD補償光信号11-2(すなわち暫定PMD補償光信号25-2)を生成するステップである。偏波解析ステップは、暫定PMD補償光信号25-2のPMDの大きさに対応するPMD補償パラメータであるDOPに変換して出力するステップである。演算ステップは、偏波解析器26から出力されたDOPに基づいて、暫定PMD補償光信号25-2のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号29を算出して出力するステップである。等化PMD制御ステップは、PMD補償指示信号29に基づいて、暫定PMD補償光信号25-2のDOPの値をモニターしてPMD生成装置46を制御し、PMD補償光信号25-1を出力するステップである。
【0138】
すなわち、偏波解析器26で暫定PMD補償光信号25-2のPMD補償の程度に対応するPMD補償パラメータであるDOPが求められPMD補償パラメータ27が出力される。このPMD補償パラメータ27によって指示されたDOPに基づいて、暫定PMD補償光信号25-2のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号29が生成されて出力される演算ステップが実行される。このPMD補償指示信号29に基づきドライバ30から、制御信号31-1、31-2及び31-3が生成されて出力され、偏波面コントローラ12、第1モードミキサ16及び第2モードミキサ20に対してそれぞれ制御信号31-1、31-2及び31-3が供給され、偏波面コントローラ12、第1モードミキサ16及び第2モードミキサ20の状態が調整される。これによって、暫定PMD補償光信号25-2のDOPが変動するのでこの変動したDOPが偏波解析器26で測定されて同様の制御が行われるというフィードバック制御システムが形成される。
【0139】
<この発明の実施形態のPMDエミュレーター>
図7を参照して、この発明の実施形態のPMDエミュレーターの構成及びその動作について説明する。図7は、この発明の実施形態のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【0140】
この発明の実施形態のPMDエミュレーターは、PMD生成装置46、偏波解析器26、演算器28、ドライバ30、及びPSP制御部32を具え、PMDを含まない入力光信号11-1を入力させて、予め設定された大きさのPMDが付加されたエミュレートPMD含有光信号11-2を生成し、エミュレートPMD含有光信号11-2の主偏波状態を、予め設定されたPSPに調整して出力するPMDエミュレーターである。ただし、この発明の実施形態のPMDエミュレーターを構成するPMD生成装置46には、上述したこの発明の実施形態のPMD生成装置46が利用されている。従って、上述したPMD生成装置46の動作についてはその重複する説明を省略する。
【0141】
また、上述のこの発明の実施形態のPMD補償装置の動作説明において、PMD補償光信号11-2、暫定PMD補償光信号25-2、暫定PMD補償光信号25-1、PMD補償パラメータ27、PMD補償指示信号29とあるところを、この発明の実施形態のPMDエミュレーターの動作説明においては、エミュレートPMD含有光信号11-2、暫定PMD含有光信号25-2、暫定PMD含有光信号25-1、PMDパラメータ27、PMD付加指示信号29と表記する。これは、PMD補償装置ではPMD生成装置46において、入力光信号に含まれるPMDを等化するためにPMDを発生させるのに対して、PMDエミュレーターでは同じくPMD生成装置46において、PMDを含まない入力光信号に対して意図的にPMDを付加するためにPMDを発生させている。何れの装置においてもPMD生成装置46がPMDを発生させていることには変わりがないので、上述のように同一の記号によって両者の信号を示してある。
【0142】
PMDを含まない入力光信号9は、光サーキュレータ10を介してPMDを含まない入力光信号11-1としてPMD生成装置46に入力され、1次PMDがこの入力光信号に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されてPMD生成装置46から出力される。
【0143】
PMD生成装置46から出力されるPMD付加光信号11-2は、光サーキュレータ10を介して暫定PMD含有光信号23として光分岐器24に入力され2分岐された一方の光信号が、暫定PMD含有光信号25-2として偏波解析器26に入力される。
【0144】
また、光分岐器24で分岐されたもう一方の暫定PMD含有光信号25-1は、その主偏波状態が予め設定された主偏波状態に制御された時点、すなわちPMDの大きさが予め設定された主偏波状態を表す大きさと等しくなるように制御された時点でエミュレートPMD含有光信号となる。実際の運用形態では、暫定PMD含有光信号25-1あるいは25-2のPMDの大きさが厳密な意味で予め設定された主偏波状態を表す大きさと等しくなるようにすることはできないので、暫定PMD含有光信号25-2のPMDと予め定めたPMDとの差が、予め定めた値以下になった時点で、エミュレートPMD含有光信号として生成されたものとして扱われる。
【0145】
偏波解析器26に暫定PMD含有光信号25-2が入力されると、偏波解析器26は、暫定PMD含有光信号25-2のPMDの大きさをPMDパラメータ27として数値化して出力する。PMDパラメータ27は、暫定PMD含有光信号25-2のDOPを利用することが可能である。DOPはPMDが小さい場合は大きな値をとり、PMDが大きな場合は小さな値となる。従って、DOPの値が大きくなるように制御すればよいこととなる。このDOPを大きくするように制御する方法は、上述したこの発明の実施形態のPMD補償装置の場合と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0146】
演算器28は、PMDパラメータ27に基づいてDOPを算出すると共に、暫定PMD含有光信号25-2の大きさが予め設定されたPMDの大きさに近づく方向にPMD付加指示信号29を出力する。
【0147】
ドライバ30は、PMD付加指示信号29に基づいて、PMD含有光信号11-2(すなわちPMD含有光信号25-1)を生成するようにPMD生成装置46を制御する。具体的には、PMD付加指示信号29に基づいて、偏波面コントローラ12、第1モードミキサ16及び第2モードミキサ20に対して、それぞれに制御信号31-1、31-2及び31-3を供給して制御する。
【0148】
PSP制御部32は、暫定PMD含有光信号25-1の主偏波状態を予め設定された主偏波状態に調整して出力する。
【0149】
この発明の実施形態のPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法は、PMD生成装置46によって実現されるPMD生成ステップと、偏波解析器26によって実現される偏波解析ステップと、演算器28によって実現される演算ステップと、ドライバ30によって実現される等化PMD制御ステップと、を含んで構成される。
【0150】
PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ入力光信号11-1に付加して暫定PMD含有光信号11-2(すなわち暫定PMD含有光信号25-2)を生成するステップである。偏波解析ステップは、暫定PMD含有光信号25-2のPMD補償の程度に対応するPMDパラメータであるDOPに変換して出力するステップである。演算ステップは、偏波解析器26から出力されたDOPに基づいて、暫定PMD含有光信号25-2のPMDの大きさが予め設定されたPMDの大きさに近づく方向にPMD付加指示信号29を算出して出力するステップである。等化PMD制御ステップは、PMD付加指示信号29に基づいて、暫定PMD含有光信号25-2のPMDの値を制御して、PMD含有光信号25-1を出力するステップである。偏波解析器26で、PMD含有光信号11-2すなわち、暫定PMD含有光信号25-2のDOPが求められPMDパラメータ27が出力される。このPMDパラメータ27によって指示されたDOPに基づいて、暫定PMD含有光信号25-2のPMDの大きさが予め設定されたPMDの値に近づく方向に等化PMDを発生させるためのPMD付加指示信号29が生成されて出力される演算ステップが実行される。このPMD付加指示信号29に基づきドライバ30から、制御信号31-1、31-2及び31-3が生成されて出力され、偏波面コントローラ12、第1モードミキサ16及び第2モードミキサ20に対してそれぞれ制御信号31-1、31-2及び31-3が供給され、偏波面コントローラ12、第1モードミキサ16及び第2モードミキサ20の状態が調整される。これによって、暫定PMD付加光信号25-2のDOPが変動するのでこの変動したDOPが偏波解析器26で測定されて同様の制御が行われるというフィードバック制御システムが形成される。
【0151】
<モードミキサと複屈折媒体の配置関係>
図8(A)及び(B)を参照して、第1モードミキサ16、第2モードミキサ20、第1複屈折媒体14、及び第2複屈折媒体18の配置方法につき説明する。図8(A)及び(B)は、第1モードミキサ16と第2モードミキサ20、第1複屈折媒体14、及び第2複屈折媒体18における光信号のSOPがポアンカレ球上で描く円軌道における回転の中心軸を示す図である。図8(A)及び(B)は、光信号のストークスパラメータ(S1、S2、S3)をそれぞれS1軸、S2軸、S3軸に表示するストークス空間の単位球であるポアンカレ球を表す図である。
【0152】
複屈折媒体の2つの偏波固有軸に光強度が分配されるように光信号が入力されると、直交偏波成分間で位相差が生じるため、出力される光信号のSOPは複屈折媒体の長さに対してストークス空間のポアンカレ球面上の回転として表される変換を受ける。ここで、光信号が第1複屈折媒体14と第2複屈折媒体18を通過するときのSOPがポアンカレ球上で描く円軌道における回転の中心軸を、図8(A)に示すように、S1軸とする。
【0153】
第1モードミキサ16は、制御信号31-2が与えられるとその出力光信号のSOPがポアンカレ球上で描く円軌道における回転の中心軸がS3軸となるように、その結晶軸を設定して配置する。すなわち、図8(B)に示すストークス空間のS3軸を中心として入力光信号のストークスベクトルが回転するように、第1モードミキサ16の結晶軸を設定して配置する。
【0154】
第2モードミキサ20は、制御信号31-3が与えられるとその出力光信号のSOPがポアンカレ球上で描く円軌道における回転の中心軸が複屈折媒体を通過したときのSOP回転軸と等しくなるように、その結晶軸を設定して配置する。すなわち、図8(A)に示すストークス空間のS1軸を中心として入力光信号のストークスベクトルが回転するように、第2モードミキサ20の結晶軸を設定して配置する。
【0155】
<単位機能ブロックの機能>
図9を参照して、第1複屈折媒体14、第1モードミキサ16、第2複屈折媒体18、第2モードミキサ20、及び反射鏡22を具えて構成されるPMD生成装置46について説明する。図9は、入力光信号が第1複屈折媒体14に入力され、再び第1複屈折媒体14からPMDが付加あるいは補償されて出力されるまでに受けるSOPの変化の様子を、PMDベクトルのストークス空間における変化に対応付けて示す図である。
【0156】
図9において、θbは第1複屈折媒体14を通過することによってもたらされる直交偏波間の位相差の発生によるPMDベクトルの先端のS1軸を回転中心とする回転角である。第1複屈折媒体14と第2複屈折媒体18において付加されるDGDの値は等しいので、第2複屈折媒体18を通過することによってもたらされる直交偏波間の位相差の発生によるPMDベクトルの先端のS1軸を回転中心とする回転角もθbに等しい。
【0157】
また、θ1は、第1モードミキサ16を通過することによってもたらされる直交偏波間の位相差の発生によるPMDベクトルの先端のS3軸を回転中心とする回転角である。θ2は、第2モードミキサ20を通過することによってもたらされる直交偏波間の位相差の発生によるPMDベクトルの先端のS1軸を回転中心とする回転角である。
【0158】
ここで、実際に単位機能ブロック48を形成するに当たって、第1複屈折媒体14と第2複屈折媒体18とで発生する位相差を完全に等しく設定することは非常に難しいが、仮に両者の位相差が異なっている場合は、複屈折媒体で生じる偏光回転軸と等しい偏光回転軸を有する、第2モードミキサ20で発生する位相差θ2の値を調整することで解決される。
【0159】
まず、PMD生成装置46の往路において発生するPMDベクトルについて検討する。この往路において、図9にPと示すように、1次PMDベクトル成分と2次PMDベクトル成分とが発生する。図9でPと示されたPMDベクトルは、光信号19-1のPMDを与えるPMDベクトルである。
【0160】
光信号19-1は、第2モードミキサ20を通過して反射鏡22で反射され再び第2モードミキサ20を通過した後、第2複屈折媒体18を通過して光信号17-2として出力されると、この光信号17-2のPMDを与えるPMDベクトルは、図9でQと示されたPMDベクトルに変換される。続いて、光信号17-2が第1モードミキサ16を通過して光信号15-2として出力されると、この光信号15-2のPMDを与えるPMDベクトルは、図9でRと示されたPMDベクトルに変換される。続いて、光信号15-23が第1複屈折媒体14を通過して、光信号13-2として出力されると、最初の光信号19-1のPMDを与えるPMDベクトルの位置Pに変換されて戻される。しかしながら、ここで、1次PMDは往路と復路とで発生しその大きさ方向とも等しいので、図9でPと示された位置にPMDベクトルの方向が戻った際には、1次PMDベクトルの大きさは2倍の大きさとなっている。それに対して2次のPMDベクトルはPと示された位置に戻った際には、2次PMDは往路と復路とで発生しその大きさが等しく方向が逆向きであるので、ちょうど相殺されて消滅する。
【0161】
以上説明した様に、この発明の実施形態のPMD生成装置46は、入力される入力光信号11-1に対して、1次PMDが入力光信号に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて出力される構成とされている。
【0162】
<試作されたPMD生成装置>
図10を参照して、この出願の発明者が試作したPMD生成装置について説明する。図10は、試作されたPMD生成装置の概略的構成図である。
【0163】
試作されたPMD生成装置は、第1モードミキサ16を第1の1/4波長板84、第1移相子86、及び第2の1/4波長板88を配置して構成し、第2モードミキサ20は、第2移相子92を配置して構成した。これ以外の構成は、図5を参照して説明したこの発明の実施形態のPMD生成装置46と同一である。すなわち、試作されたPMD生成装置は、筺体100に、偏波面コントローラ12(偏波面コントローラ80)、第1複屈折媒体14(第1複屈折媒体82)、第1モードミキサ16(第1の1/4波長板84、第1移相子86、及び第2の1/4波長板88)、第2複屈折媒体18(第2複屈折媒体90)、第2モードミキサ20(第2移相子92)、及び反射鏡22(反射鏡94)を具え、これらの光学素子がこの順に配列して形成した。偏波面コントローラ12(偏波面コントローラ80)と、第1モードミキサ16、及び第2モードミキサ20内の移相子の可変偏光回転機能は、全て同一の電気光学効果を用いて実現することが可能である。例えば、文献(H. Jiang, et al., "Transparent Electro-Optic Ceramics and Devices,"Proc. of SPIE, 2005, Vol. 5644, pp. 380-394)のFigure 13に示されているように、偏波面コントローラは、4つの電気光学素子の偏光固有軸の任意の軸を基準に、0度、+45度、-45度、0度とする配置とすることで任意の偏光変換が可能となる。このように、PMD生成装置内の全ての駆動部分を同一の素子で構成できるため、実装などの製造時の取り扱いが容易となる。
【0164】
偏波面コントローラ80によって、第1複屈折媒体14へ入射される入力光信号11-1のSOPが調整される。図10において、第1複屈折媒体82、第1移相子86及び第2複屈折媒体90の光信号の入射面に示す十次のクロスする線分は結晶軸の方向を示し、また、第1の1/4波長板84及び第2の1/4波長板88の光信号の入射面に示す斜めの対角線も結晶軸の方向を示している。
【0165】
図10に示すように、第1モードミキサ16を第1の1/4波長板84、第1移相子86、及び第2の1/4波長板88を配置して構成し、第1の1/4波長板84と第2の1/4波長板88の結晶軸を互いに平行となるように、かつ第1移相子86の結晶軸と45°の角度をなすように配置する。このように左右対称の配置とすることによって、往路と復路とで発生するPMDベクトルを等しくなるようにすることが可能である。
【0166】
第1移相子86で発生するDGDをδとするとこの第1移相子86のジョーンズ行列Rは次式(4)で与えられ、一方第1の1/4波長板84と第2の1/4波長板88のジョーンズ行列Qは次式(5)で与えられる。ここで、iは虚数単位である。
【0167】
【数1】

【0168】
ここでは、第1移相子86の進相軸をx軸、遅相軸をy軸としてある。
【0169】
以上のように、第1モードミキサ16を第1の1/4波長板84、第1移相子86、及び第2の1/4波長板88を配置して構成すると、この第1モードミキサ16のジョーンズマトリックスTは次式(6)で与えられる。
【0170】
【数2】

【0171】
従って、この第1モードミキサ16へ入力されるSOPを45度直線偏光とすると、第1モードミキサ16を往復して出力される出力光のSOPを与えるジョーンズベクトルJは次式(7)で与えられる。
【0172】
【数3】

【0173】
すなわち、第1移相子86で発生するDGD(大きさがδ)によって出力光のSOPを与えるPMDベクトルはストークス空間で回転することが分かる。つまり、第1モードミキサ16を第1の1/4波長板84と第2の1/4波長板88で第1移相子86を挟む対称系の配置とすることで、往路と復路とで等しいPMDベクトルで表されるPMDを発声させることが可能となり、2次PMDを効果的に抑圧することが可能となる。
【0174】
この発明の実施形態のPMD生成装置46においては、第1複屈折媒体14(第1複屈折媒体82)及び第2複屈折媒体18(第2複屈折媒体90)としてイットリウムバナデート(YVO4)結晶を用いた。
【0175】
ここで、一例として、第1複屈折媒体14(第1複屈折媒体82)及び第2複屈折媒体18(第2複屈折媒体90)のDGDの大きさを5 ps(ピコ秒)に設定した場合における、第1モードミキサ16で発生する直交偏波間の位相差と、第1移相子86で発生させるDGDとの関係について示す。この発明の実施形態のPMD生成装置46においては、第1移相子86で発生させるDGDをコントロールすることで、第1モードミキサ16で発生されるDGDが確定される。
【0176】
図11は、第1移相子86で発生させる直交偏波モード間の位相差に対する第1モードミキサ16で発生されるDGDの関係を示す図である。横軸に第1移相子86で発生させるDGDをps(ピコ秒)単位で目盛って示し、縦軸に第1モードミキサ16で発生される直交偏波間の位相差を角度位相の単位で目盛って示してある。この関係は第1複屈折媒体14(第1複屈折媒体82)及び第2複屈折媒体18(第2複屈折媒体90)に設定するDGDの大きさに依存するので、このDGDの値ごとに同様の関係を求めておく必要がある。
【0177】
<PMD生成特性の評価シミュレーションと実験>
図12(A)及び(B)〜図14(A)及び(B)を参照して、設計したPMD生成装置のシミュレーションモデルを作り、動作を確認する実験を行った結果について説明する。図12(A)及び(B)は、生成するPMDの値を0 psに設定した場合のPMD付加光信号の時間波形を示し、図12(A)はシミュレーションによって得られた時間波形を示し、図12(B)は実験によって得られた時間波形を光サンプリングオシロスコープで観測した結果を示している。図13(A)及び(B)〜図14(A)及び(B)についても同様に、生成するPMDの値を2 ps、3 ps、及び4 psに設定した場合のPMD付加光信号の時間波形を示している。
【0178】
このPMD生成特性の評価シミュレーションと実験においては、160-Gbit/sのキャリア抑圧(CR: carrier-suppressed)-RZ信号(CS-RZ信号)を入力光信号11-1として、この発明の実施形態のPMD生成装置46に入力し、DGD発生量を決定する第1移相子86で与える位相量であるDGDを変化させて、PMD生成装置46から出力されるPMD付加光信号11-2の時間波形について、シミュレーション及び実験を行った。第1複屈折媒体14への入力信号である入力光信号13-1のSOPは第1複屈折媒体14の結晶軸から偏波面がπ/4傾いた直線偏光とした。
【0179】
いずれの図においても、シミュレーションによって得られた時間波形と光サンプリングオシロスコープで観測した時間波形とは非常に似た形状となっていることが分かる。このことから、この発明の実施形態のPMD生成装置によれば、2次PMDを発生させることなく所望の1次PMDが生成されることが実証された。
【符号の説明】
【0180】
10:光サーキュレータ
12、80:偏波面コントローラ
14、82:第1複屈折媒体
16:第1モードミキサ
18、90:第2複屈折媒体
20、92:第2モードミキサ(第2移相子)
22、94:反射鏡
24:光分岐器
26:偏波解析器
28:演算器
30:ドライバ
32:PSP制御部
40:送信器
42:光ファイバ伝送路
44:受信器
46:PMD生成装置
48:単位機能ブロック
50:複屈折媒体
52:モードミキサ
54:反射ミラー
60:第1ブロック
62、72:第1複屈折媒体
64、74:第1モードミキサ
66、76:第2複屈折媒体
68:第2モードミキサ
70:第2ブロック
84、88:1/4波長板
86:第1移相子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡を具え、前記第1複屈折媒体、前記第1モードミキサ、前記第2複屈折媒体、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡がこの順に配列されており、
入力光信号が前記第1複屈折媒体から入力されて、前記第1複屈折媒体、前記第1モードミキサ、前記第2複屈折媒体、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡にいたるまでの光路を往復して、1次偏波モード分散が前記入力光信号に付加され、かつ前記1次偏波モード分散の生成に伴い発生する2次偏波モード分散が相殺されて、偏波モード分散付加光信号が生成されて出力される構成とされている
ことを特徴とする偏波モード分散生成装置。
【請求項2】
前記第1複屈折媒体の前段に、前記第1複屈折媒体の結晶軸へ入射される入力信号の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラを更に配置し、
前記偏波面コントローラ、前記第1複屈折媒体、前記第1モードミキサ、前記第2複屈折媒体、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡がこの順に配列されて構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項3】
前記第1モードミキサは、前記第1複屈折媒体の側から前記第2複屈折媒体の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板が配置されて構成されており、
前記第2モードミキサは、第2移相子が配置されて構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項4】
前記第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子であることを特徴とする請求項3に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項5】
偏波面コントローラ(4つの可変移相子)と、2つのモードミキサを透光性光学セラミックスなどの同じ電気光学効果を利用したデバイスを用いることで、一つのパッケージへの実装を容易とした偏波モード分散生成装置。
【請求項6】
偏波モード分散生成装置、偏波解析器、演算器、及びドライバを具え、
入力光信号を入力させて、該入力光信号の偏波モード分散を等化する等化偏波モード分散を発生させ、該等化偏波モード分散を前記光信号に付加して偏波モード分散補償光信号を生成して出力する偏波モード分散補償装置であって、
前記偏波モード分散生成装置は、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されており、前記入力光信号を前記第1複屈折媒体から入力して、前記第1複屈折媒体、前記第1モードミキサ、前記第2複屈折媒体、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡にいたるまでの経路を往復させて前記第1複屈折媒体から出力させることによって、暫定等化偏波モード分散を前記入力光信号に付加して暫定偏波モード分散補償光信号を生成し、
前記偏波解析器は、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散補償パラメータとして数値化して出力し、
前記演算器は、前記偏波モード分散補償パラメータに基づいて、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさが減少する方向に前記等化偏波モード分散を発生させるための偏波モード分散補償指示信号を算出して出力し、
前記ドライバは、前記偏波モード分散補償指示信号に基づいて、前記偏波モード分散補償光信号を生成するように前記偏波モード分散生成装置を制御する
ことを特徴とする偏波モード分散補償装置。
【請求項7】
前記偏波モード分散生成装置において、前記第1複屈折媒体の前段に、前記第1複屈折媒体の結晶軸へ入射される入力信号の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラを更に配置し、
前記偏波面コントローラ、前記第1複屈折媒体、前記第1モードミキサ、前記第2複屈折媒体、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡がこの順に配列されて構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項8】
前記第1モードミキサは、前記第1複屈折媒体の側から前記第2複屈折媒体の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板が配置されて構成されており、
前記第2モードミキサは、第2移相子が配置されて構成されている
ことを特徴とする請求項5または7に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項9】
前記第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子であることを特徴とする請求項8に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項10】
偏波モード分散生成装置、偏波解析器、演算器、ドライバを具え、及び主偏波状態制御部を具え、
偏波モード分散を含まない入力光信号を入力させて、予め設定された大きさの偏波モード分散が付加されたエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成し、該エミュレート偏波モード分散含有光信号の主偏波状態を、予め設定された主偏波状態に調整して出力する偏波モード分散エミュレーターであって、
前記偏波モード分散生成装置は、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されており、前記入力光信号を、前記第1複屈折媒体、前記第1モードミキサ、前記第2複屈折媒体、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡にいたるまでの経路を往復させることによって、暫定等化偏波モード分散を前記入力光信号に付加して暫定偏波モード分散含有光信号を生成し、
前記偏波解析器は、前記暫定偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散パラメータとして数値化して出力し、
前記演算器は、前記偏波モード分散パラメータに基づいて前記暫定偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさが前記予め設定された偏波モード分散の値に近づく方向に偏波モード分散付加指示信号を出力し、
前記ドライバは、前記偏波モード分散付加指示信号に基づいて前記エミュレート偏波モード分散含有光信号を生成するように前記偏波モード分散生成装置及び前記主偏波状態制御部を制御し、
前記主偏波状態制御部は、該暫定偏波モード分散含有光信号の主偏波状態を予め設定された主偏波状態に調整して出力する
ことを特徴とする偏波モード分散エミュレーター。
【請求項11】
前記偏波モード分散生成装置において、前記第1複屈折媒体の前段に、前記第1複屈折媒体の結晶軸へ入射される入力信号の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラを更に配置し、
前記偏波面コントローラ、前記第1複屈折媒体、前記第1モードミキサ、前記第2複屈折媒体、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡がこの順に配列されて構成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項12】
前記第1モードミキサは、前記第1複屈折媒体の側から前記第2複屈折媒体の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板が配置されて構成されており、
前記第2モードミキサは、第2移相子が配置されて構成されている
ことを特徴とする請求項10または11に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項13】
前記第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子であることを特徴とする請求項12に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項14】
第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に入力光信号を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を発生させ該偏波モード分散を前記入力光信号に付加して偏波モード分散付加光信号を生成する偏波モード分散生成方法であって、
前記光路に前記入力光信号が入力されてから出力されるまでの間に、
前記入力信号の直交する偏波成分の間の伝播時間差である微分群遅延を生じさせ1次偏波モード分散を発生させる1次偏波モード分散発生ステップと、
前記1次偏波モード分散の発生に伴って発生する2次偏波モード分散を相殺させる2次偏波モード分散相殺ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散生成方法。
【請求項15】
偏波面コントローラ、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に入力光信号を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を発生させ該偏波モード分散を前記入力光信号に付加して偏波モード分散付加光信号を生成する偏波モード分散生成方法であって、
前記光路に前記入力光信号が入力されてから出力されるまでの間に、
前記入力光信号の偏波モードの方向を示す主偏波状態を指定する座標軸の方向と、前記第1複屈折媒体の結晶軸の方向とが互いに平行となるように調整する偏波面調整ステップと、
前記入力信号の直交する偏波成分の間の伝播時間差である微分群遅延を生じさせ1次偏波モード分散を発生させる1次偏波モード分散発生ステップと、
前記1次偏波モード分散の発生に伴って発生する2次偏波モード分散を相殺させる2次偏波モード分散相殺ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散生成方法。
【請求項16】
第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に入力光信号を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を等化する等化偏波モード分散を発生させ該等化偏波モード分散を前記入力光信号に付加して偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散補償方法であって、
暫定等化偏波モード分散を発生させ前記入力光信号に付加して暫定偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散補償パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散補償パラメータに基づいて、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさが減少する方向に前記等化偏波モード分散を発生させるための偏波モード分散補償指示信号を算出して出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散補償指示信号に基づいて、前記偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の値を制御して、前記偏波モード分散補償光信号を出力する等化偏波モード分散制御ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散補償方法。
【請求項17】
偏波面コントローラ、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に入力光信号を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を等化する等化偏波モード分散を発生させ該等化偏波モード分散を前記入力光信号に付加して偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散補償方法であって、
前記入力光信号の偏波モードの方向を示す主偏波状態を指定する座標軸の方向と、前記第1複屈折媒体の結晶軸の方向とが互いに平行となるように調整する偏波面調整ステップと、
暫定等化偏波モード分散を発生させ前記入力光信号に付加して暫定偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散補償パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散補償パラメータに基づいて、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさが減少する方向に前記等化偏波モード分散を発生させるための偏波モード分散補償指示信号を算出して出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散補償指示信号に基づいて、前記偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の値を制御して、前記偏波モード分散補償光信号を出力する等化偏波モード分散制御ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散補償方法。
【請求項18】
第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に偏波モード分散を含まない入力光信号を入力させて、該光路を往復させることによって、予め設定された大きさの偏波モード分散が付加され、かつ予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散エミュレート方法であって、
暫定等化偏波モード分散を発生させ、該暫定偏波モード分散が付加された暫定偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散パラメータに基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさが前記予め設定された偏波モード分散の値に近づく方向に偏波モード分散付加指示信号を出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散付加指示信号に基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の値を制御してエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成するエミュレート偏波モード分散制御ステップと
前記エミュレート偏波モード分散含有光信号の偏波面を回転させて、予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を出力する主偏波状態制御ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散エミュレート方法。
【請求項19】
偏波面コントローラ、第1複屈折媒体、第1モードミキサ、第2複屈折媒体、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に偏波モード分散を含まない入力光信号を入力させて、該光路を往復させることによって、予め設定された大きさの偏波モード分散が付加され、かつ予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散エミュレート方法であって、
前記入力光信号の偏波モードの方向を示す主偏波状態を指定する座標軸の方向と、前記第1複屈折媒体の結晶軸の方向とが互いに平行となるように調整する偏波面調整ステップと、
暫定等化偏波モード分散を発生させ、該暫定偏波モード分散が付加された暫定偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散パラメータに基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさが前記予め設定された偏波モード分散の値に近づく方向に偏波モード分散付加指示信号を出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散付加指示信号に基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の値を制御してエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成するエミュレート偏波モード分散制御ステップと
前記エミュレート偏波モード分散含有光信号の偏波面を回転させて、予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を出力する主偏波状態制御ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散エミュレート方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−211361(P2011−211361A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75212(P2010−75212)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/λユーティリティ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】