偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置
【課題】樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、偏肉樹脂シートの裁断を高精度に行うことができる偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】ダイ16から押し出される溶融樹脂を、型ローラー20とニップローラー18とで挟圧して偏肉樹脂シートSを成形した後、膜厚測定センサー60により偏肉樹脂シートSの膜厚を測定して、当該膜厚の測定結果から偏肉樹脂シートSの最厚部の位置を算出する。そして、算出された最厚部の位置に基づいて、基準線マーカー62により偏肉樹脂シートSに基準線を形成した後、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートS(偏肉樹脂板B)の裁断を行う。これにより、偏肉樹脂シートSの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、最厚部の位置を考慮して、偏肉樹脂シートSの裁断を高精度に行うことができる。
【解決手段】ダイ16から押し出される溶融樹脂を、型ローラー20とニップローラー18とで挟圧して偏肉樹脂シートSを成形した後、膜厚測定センサー60により偏肉樹脂シートSの膜厚を測定して、当該膜厚の測定結果から偏肉樹脂シートSの最厚部の位置を算出する。そして、算出された最厚部の位置に基づいて、基準線マーカー62により偏肉樹脂シートSに基準線を形成した後、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートS(偏肉樹脂板B)の裁断を行う。これにより、偏肉樹脂シートSの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、最厚部の位置を考慮して、偏肉樹脂シートSの裁断を高精度に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置に係り、例えば、液晶表示装置のバックライトの導光板や、装飾・表示・照明用ディスプレイの導光板などの光学シートとして使用される偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトや装飾・表示・照明用のディスプレイ装置には、光源からの光を導いて面発光する導光板が使用されており、例えば液晶表示装置には、液晶パネルの裏面側から導光板を介して光を照射するバックライトが設けられている。
【0003】
このような導光板のうち大画面液晶テレビなどの大型装置に用いられる導光板は、現行の設備や技術を背景に、押出成形法により製造されることが一般的である。押出成形法では、溶融状態の樹脂シートがダイ(Tダイ等)から押し出されて冷却ローラー(ポリシングローラー)により冷却される。樹脂シートは、その後、引取ローラーによる引っ張り搬送中に空冷され、保護フィルムが貼り付けられた後、幅方向に沿って所望の大きさに切断(個片化)される。個片化された樹脂シートは、幅方向端部が裁断され、端面仕上げが行われて、導光板として用いられる光学シートが得られる。
【0004】
上述の押出成形法により、幅方向に関して膜厚に偏りがある光学シートを製造する場合、最厚部の位置が光学シートの光学特性に影響することから、所望の位置に最厚部を有する光学シートが得られるように、樹脂シートの裁断を高精度に行う必要がある。例えば、最厚部を中心とする対称な偏肉形状の光学シートを製造する場合、光学シートの幅方向中心に最厚部が位置するように、樹脂シートの幅方向端部の裁断幅を調節する必要がある。
【0005】
このため、従来は、押出成形時のバンクすじの位置から見積もった最厚部のおおよその位置を基準に樹脂シートの裁断を行っていた。これにより、樹脂シートの最厚部と最薄部との膜厚差が小さく、目視では最厚部の位置を特定できない場合であっても、最厚部の位置に基づいて、樹脂シートの幅方向端部の裁断幅を調節することができる。
【0006】
しかし、押出し成形時の樹脂流動のばらつきがある場合には、樹脂シートの最厚部の位置をバンクすじの位置から正確に見積もることは難しく、樹脂シートの裁断を高精度に行うことができなかった。
【0007】
一方、押出成形機から押し出される樹脂シートを所定の製品長さに切断する方法として、エンコーダにより計測された搬送長さに基づいて、樹脂シートにマークを付した後、当該マークに基づいて樹脂シートの切断を行うことが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−86536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1には、樹脂(ウェザーストリップ)を所定長さに切断する方法が記載されているが、樹脂シートの幅方向における端部を裁断する方法は記載されていない。
【0010】
また、樹脂シートの最厚部の位置は、押出し成形時の樹脂流動のばらつきや、引っ張り搬送の張力のばらつき等に起因する樹脂シートの蛇行により、シート搬送方向に関して変動する。このため、単に、特許文献1に記載された方法を、樹脂シートの幅方向端部の裁断に適用するだけでは、樹脂シートの裁断を高精度に行うことが難しい。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、偏肉樹脂シートの裁断を高精度に行うことができる偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る偏肉樹脂シートの製造方法は、幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する工程と、成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する工程と、検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する工程と、前記偏肉樹脂シートに形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
この製造方法では、偏肉樹脂シートの最厚部の位置に基づく基準線が形成され、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートの裁断が行われる。これにより、樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、最厚部の位置を考慮して、偏肉樹脂シートの裁断を高精度に行うことができる。
【0014】
ここで、「基準線」とは、公知のセンサーにより読み取り可能なものであれば特に限定されず、例えば、インクや顔料等による描画線からなる基準線を形成してもよいし、溝状に凹んだ基準線を形成してもよいし、屈折率等の物性が改質された改質領域からなる基準線を形成してもよい。
【0015】
また「偏肉樹脂シートに基準線を形成する」とは、偏肉樹脂シートに基準線を直接形成する場合だけでなく、偏肉樹脂シートの表面を覆う保護フィルムに基準線を形成する場合も含む。
【0016】
上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記最厚部を検出する工程では、前記偏肉樹脂シートの膜厚が測定され、該膜厚の測定結果に基づいて、前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置が算出されることが好ましい。
【0017】
これにより、固定式の膜厚測定センサーを含む簡素な装置構成で、偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出することができる。
【0018】
上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの表面を覆う保護フィルムに形成されてもよい。
【0019】
このように、最終的に剥がされる保護フィルムに基準線を形成することで、偏肉樹脂シートの品質に影響を与えずに、偏肉樹脂シートの高精度な裁断を実現することができる。
【0020】
また、上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部に直接形成されてもよい。
【0021】
このように、裁断時に切り落とされる偏肉樹脂シートの端部に基準線を形成することで、偏肉樹脂シートの品質に影響を与えずに、偏肉樹脂シートの高精度な裁断を実現することができる。
【0022】
上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、レーザー加工機を用いて形成されることが好ましい。
【0023】
レーザー加工機を用いることで、基準線を迅速かつ高精度に形成することができる。
【0024】
本発明に係る偏肉樹脂シートの製造装置は、幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する成形手段と、前記成形手段により成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する基準線形成手段と、前記基準線形成手段により形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する裁断手段とを含むことを特徴とする。
【0025】
上記偏肉樹脂シートの製造装置では、偏肉樹脂シートの最厚部の位置に基づく基準線が基準線形成手段により形成され、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートの裁断が裁断手段によって行われる。これにより、樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、最厚部の位置を考慮して、偏肉樹脂シートの裁断を高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、偏肉樹脂シートの最厚部の位置に基づく基準線を形成して、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートの裁断を行うことで、偏肉樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、偏肉樹脂シートの裁断精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面の一例を示す図である。
【図2】偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面の他の例を示す図である。
【図3】偏肉樹脂シート製造装置の一例を示す図である。
【図4】ダイおよび成形冷却ローラー部を側方から見た図である。
【図5】(a)は成形冷却ローラー部の一例を下方から見た図である。(b)は成形冷却ローラー部の他の例を下方から見た図である。
【図6】膜厚測定センサーにより偏肉樹脂シートSの膜厚を測定する様子を示す図である。
【図7】偏肉樹脂シートSに保護フィルムFを貼り付けて、基準線を形成する機構を示す斜視図である。
【図8】(a)は偏肉樹脂シートSに基準線が直接形成された様子を示す斜視断面図である。(b)は保護フィルムFに基準線が形成された様子を示す斜視断面図である。
【図9】吸着ハンドにより偏肉樹脂板Bをコンベアから裁断機に運ぶ機構を示す図である。
【図10】吸着ハンドにより偏肉樹脂板Bの位置および傾きを補正する機構を示す斜視図である。
【図11】偏肉樹脂シートSが蛇行する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0029】
図1および図2は、本実施形態において製造される蒲鉾形状の偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面を例示する図である。本実施形態では、シート幅方向に関して膜厚に偏りのある偏肉樹脂シートを成形対象としており、例えば図1に示すように、最も膜厚の大きな最厚部52がシート幅方向の中央部に設けられ、最も膜厚の薄い最薄部54がシート幅方向の両端部に設けられる偏肉樹脂シートSを製造することができる。また、図2に示すように、図1に示す樹脂シートをシート幅方向に複数(2個)並べたような断面形状を有する偏肉樹脂シートSを製造することも可能である。図2に示す偏肉樹脂シートSは、最厚部52および最薄部54が周期的に配される断面構造を有し、シート幅方向に関して最薄部54および最厚部52が交互に出現する構造となっている。
【0030】
なお、最薄部54のピッチP1および最厚部52のピッチP2は、1000mm以下であってもよく、このようなピッチを有する偏肉樹脂シートSであればディスプレイ等の幅広い用途に使用することが可能である。
【0031】
図3は、偏肉樹脂シートを製造する偏肉樹脂シート製造装置の一例を示す図である。図3に示す偏肉樹脂シート製造装置10では、原料調製装置11、押出機12、ダイ16、成形冷却ローラー部17、熱処理ゾーン24、冷却ゾーン26、面状検査機28、膜厚測定センサー60、ラミネート機30、基準線マーカー62、切断機32、コンベア66、裁断機72およびスタッカー34が、上流側から下流側へ順次設けられている。
【0032】
原料調製装置11は、偏肉樹脂シート製造装置10によって製造される偏肉樹脂シートSの原料の計量および混合を行って原料を調製し、当該原料を原料供給管13を介して押出機12に送る。例えば、この原料調製装置11では、原料タンクおよび添加物タンクから混合器に送られる原料樹脂および添加物が自動計量機によって自動計量され、所定比率の原料樹脂および添加物が混合器で混合される。原料樹脂に添加物として拡散粒子を添加する場合には、原料樹脂に拡散粒子を所定濃度よりも高濃度に添加したマスターペレットを造粒機で製造しておき、拡散粒子が添加されていないベースペレットと混合器で所定比率混合するマスターバッチ方式を好適に採用できる。なお、拡散粒子以外の添加物を添加する場合にも、同様にして混合を行うことができる。
【0033】
上記の原料樹脂としては熱可塑性樹脂を使用可能であり、例えばポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマーなどを原料樹脂として使用することができる。
【0034】
押出機12は、原料調製装置11から送られてくる原料を混練しながら溶融し、溶融樹脂を作る。この押出機12は、単軸式押出機および多軸式押出機の何れでもよく、押出機12の内部を真空にするベント機能を有するものが好ましい。押出機12により作られた溶融樹脂は、スクリューポンプやギアポンプ等の定量ポンプにより溶融樹脂供給管14を介してダイ16に送られる。
【0035】
ダイ16では、押出機12から送られてくる溶融樹脂が成形冷却ローラー部17に向かってシート状に押し出される。本実施形態では、シート幅方向に関して膜厚が均一ではない偏肉樹脂シートが成形されるので、ダイ16から押し出されて吐出される溶融樹脂量は、シート幅方向に関して所定の分布を有する。ダイ16から吐出される溶融樹脂量に分布を持たせる手段として、例えばチョークバーを使用する方法や他の公知の方法を用いることができる。
【0036】
成形冷却ローラー部17は、ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22を含み、ダイ16から供給される溶融樹脂に対して蒲鉾形の偏肉形状を付与するとともに、当該溶融樹脂の冷却を行う。
【0037】
図4は、ダイ16および成形冷却ローラー部17を側方から見た図であり、図5(a)は、成形冷却ローラー部17を下方から見た図である。また、成形冷却ローラー部17の変形例を図5(b)に示す。
【0038】
ニップローラー18および剥離ローラー22は太さが一様な円柱形状を有する一方で、型ローラー20は中央部が細く両端部が太い所謂コンケーブ形状を有する。この型ローラー20のコンケーブ形状は、偏肉樹脂シートSの蒲鉾形の偏肉形状の反転形状に対応しており、型ローラー20およびニップローラー18により高温の偏肉樹脂シートSが挟圧されて蒲鉾状に成形される。
【0039】
なお型ローラー20は、図5(b)に示すように、両端部において先細形状のテーパー凹部20Aを有する形状にすることもできる。この場合、偏肉樹脂シートSをニップローラー18および型ローラー20で挟圧したときに、当該偏肉樹脂シートSのうちテーパー凹部20Aに対応する部分を容易にカットすることができる。これは、偏肉樹脂シートSの両端部(耳部)が所望の膜厚よりも厚くなる傾向があり、その最厚部がその後の工程において偏肉樹脂シートSの反りを助長する可能性を考慮したものである。また、ニップローラー18のうち型ローラー20の最薄形成部20Bと接触する部分18Aは磨耗し易いので、ニップローラー18の当該当接部18Aに対して、タングステンカーバイト等の超硬材料により超硬処理を施したり焼き入れすることが好ましい。また、型ローラー20および剥離ローラー22についても同様に、最薄形成部20B等の当接部に対して超硬処理を施したり焼き入れしたりすることが好ましい。
【0040】
このような構成を有する図5(a)および図5(b)に示す型ローラー20の中央部には、偏肉樹脂シートSの最厚部52に対応する最厚形成部20Cが設けられている。
【0041】
なお、ニップローラー18、型ローラー20および剥離ローラー22の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、および各種の複合材料が採用することができる。
【0042】
また、型ローラー20の表面の逆蒲鉾形状は、公知の加工方法により形成することが可能であり、例えば、研削加工、超音波加工、放電加工、NC旋盤による切削加工、仕上げバフ加工、等を適宜組み合わせて形成することが可能である。型ローラー表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とすることが好ましく、0.2μm以下とすることがより好ましい。
【0043】
また、ニップローラー18、型ローラー20および剥離ローラー22には、偏肉樹脂シートSの蒲鉾形状に対応するような冷却温度分布を偏肉樹脂シートSに付与するための温度調整手段(図示せず)が設けられる。この温度調整手段として、例えば、温度調節された冷却液体を型ローラー20の内部の一端側から他端側に流す構成を採用することができる。
【0044】
ニップローラー18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラー20との間の偏肉樹脂シートSを所定の圧力で挟圧することができるようになっている。この加圧手段は、ニップローラー18と型ローラー20との接触点における法線方向に圧力を付与する構成のものであり、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段を採用することができる。また、ニップローラー18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラー18の背面側(型ローラー20とは反対側)に図示しないバックアップローラーを設ける構成、中高状のクラウン形状を採用する構成、ローラーの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラーの構成、或いはこれらを組み合わせた構成等を採用することができる。
【0045】
なお、偏肉樹脂シートSの断面形状は、当該偏肉樹脂シートSを挟圧成形するニップローラーおよび型ローラーの形状に応じて適宜変更することができ、ニップローラーおよび型ローラーの形状を変えることで、様々な断面形状を有する偏肉樹脂シートを製造することができる。
【0046】
また、ニップローラー18および剥離ローラー22の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面にすることにより、成形後の偏肉樹脂シートSの裏面を良好な状態に仕上げることができる。そして、ニップローラー18および剥離ローラー22の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0047】
また、ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22には、ローラー表面の温度をローラー幅方向に関してモニターできるように、複数の表面温度測定手段(図示せず)を設けることが好ましい。このような表面温度測定手段としては、赤外線温度計、放射式温度計等の公知の各種測定手段が採用できる。
【0048】
ダイ16は、図4に示すように、ニップローラー18および型ローラー20の上方において、やや型ローラー20寄りに配置される。また、ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22は、図示しない駆動装置により所定の周速度で図4に示す矢印方向へ回転駆動される。なお、ニップローラー18および剥離ローラー22に対して駆動手段を設けない構成も可能であるが、偏肉樹脂シートSの面状(特に裏面)を良好に成形する観点からは、駆動手段によってニップローラー18および剥離ローラー22も回転駆動する構成が好ましい。
【0049】
このような構成において、ダイ16のリップ口42から吐出される溶融樹脂は、ニップローラー18と型ローラー20との間でバンク44を形成するとともに、挟圧部46においてニップローラー18および型ローラー20により挟圧される。ニップローラー18および型ローラー20により偏肉形状が付与された溶融偏肉樹脂シートSは、型ローラー20に巻き掛けられた状態で送り出され、剥離ローラー22によって型ローラー20から剥がされる。
【0050】
なお、本実施形態では、挟圧部から送られてくる偏肉樹脂シートSを加熱する加熱装置23が偏肉樹脂シートSの搬送路に沿って複数設けられており、型ローラー20および剥離ローラー22の各々に対向する位置に加熱装置23(23A、23B)が設置されている。
【0051】
図3に示すように、偏肉樹脂シートSは、剥離ローラー22から熱処理ゾーン24に送られる。熱処理ゾーン24は、偏肉構造を有する偏肉樹脂シートSに対して熱処理を施すゾーンであり、複数の加熱装置23が偏肉樹脂シートSの搬送路に沿って設けられている。型ローラー20〜熱処理ゾーン24にわたって設置されるこれらの加熱装置23は非接触式加熱手段であり、加熱効率等の観点から、例えば遠赤外線ヒーターを加熱装置23として好適に用いることができる。加熱装置23の加熱条件は、搬送される偏肉樹脂シートSの表面温度がほぼ均一に保たれるようにコントロールされる。具体的には、偏肉樹脂シートSの表面温度がガラス転移温度Tg以下になった後に、偏肉樹脂シートSのうち加熱される側の表面の温度差が、幅方向に関して40℃以内となるように、好ましくは30℃以内となるように、より好ましくは10℃以内となるように、加熱装置23の加熱条件がコントロールされる。このとき、放射温度計等の温度センサー(図示せず)により偏肉樹脂シートSの温度が測定され、この測定温度に基づいて加熱装置23の加熱条件を適宜変更することで、偏肉樹脂シートSの表面温度が調整される。
【0052】
なお、加熱装置23の加熱温度、加熱時間、およびその他の加熱条件は、偏肉樹脂シートSの搬送速度や加熱装置23の設置位置に基づいて適宜調整される。例えば、型ローラー20の近傍、剥離ローラー22の近傍、および剥離ローラー22〜熱処理ゾーン24にかけて、偏肉樹脂シートSのうち厚みtが「t≦Dmin+(Dmax−Dmin)/2」(ただし、Dminは偏肉樹脂シートSのうち膜厚が最も小さい最薄部54の膜厚を意味し、Dmaxは偏肉樹脂シートSのうち膜厚が最も大きい最厚部52の膜厚を意味する)を満たす部分、より好ましくは「t≦Dmin+(Dmax−Dmin)/3」を満たす部分を加熱することが好ましい。これは、冷却されやすい最薄部分を重点的に加熱することで、偏肉樹脂シートS全体の温度差を抑えるためである。そのため、図1の断面形状を有する偏肉樹脂シートSの場合には両端の最薄部54を加熱し、図2の断面形状を有する偏肉樹脂シートSの場合には両端の最薄部54だけではなく中央の最薄部54も加熱することが好ましい。なお、上記式で表される範囲以外の膜厚tを有する部分については、ライン速度等に応じて、加熱の有無や加熱の程度を調整することが好ましい。特に偏肉樹脂シートSの表面温度を昇温し過ぎると搬送中に反り等の不具合が発生してしまうことがあるので、加熱装置23の加熱温度や加熱時間を含む加熱条件は、ライン速度や加熱装置23の設置位置に基づいて最適化されることが好ましい。
【0053】
熱処理ゾーン24において熱処理を受けた偏肉樹脂シートSは、冷却ゾーン26に送られる。冷却ゾーン26は、熱処理ゾーン24から送られてくる偏肉樹脂シートSに対して徐冷処理を施すゾーンであり、偏肉樹脂シートSの急激な温度変化を防止する。偏肉樹脂シートSは、急激に冷却されると表面近傍と内部の収縮量の違いや温度差等に起因する表面形状の悪化や反りが生じ易い。特に膜厚に分布がある偏肉樹脂シートの場合には、急冷等により比較的大きな内部応力が生じやすいので、反りが生じ易い。そのため、冷却ゾーン26における徐冷方法の一例として、前半部では偏肉樹脂シートSの最厚部と最薄部との間で大きな温度差が生じないように非接触式加熱手段で最薄部を重点的に加熱して偏肉樹脂シートS全体を徐々に自然冷却し、後半部では偏肉樹脂シートSに冷風を当てて常温程度まで強制冷却を行う方法がある。
【0054】
なお、上述の熱処理ゾーン24および冷却ゾーン26では、熱処理や冷却に伴う反り等の変形を防いで所望の偏肉形状が保持されるように、偏肉樹脂シートSが搬送される。
【0055】
面状検査機28は、冷却ゾーン26から送られてくる偏肉樹脂シートSの表面形状や反りを評価する。面状検査機28による評価はセンサー類を用いた任意の手法で行われ、この評価結果は、前段に設けられたダイ16からの溶融偏肉樹脂シートSの吐出制御や、熱処理ゾーン24および冷却ゾーン26における熱処理・冷却制御にフィードバックされる。
【0056】
面状検査機28のシート搬送方向の下流側には、面状検査機28から連続的に搬送される偏肉樹脂シートSの膜厚を測定する膜厚測定センサー60が設けられている。
【0057】
図6は、膜厚測定センサー60により偏肉樹脂シートSの膜厚を測定する様子を示す図である。同図に示すように、複数の膜厚測定センサー60(60A、60B、60C、60D)が、偏肉樹脂シートSの幅方向に沿って、最厚部52の両側にそれぞれ2個ずつ配置されている。また膜厚測定センサー60(60A、60B、60C、60D)は、偏肉樹脂シートSの底面から所定の高さ(H0)に固定されている。
【0058】
膜厚測定センサー60は、レーザー干渉等の公知の方法により、連続的に搬送される偏肉樹脂シートSの表面までの距離(H1、H2、H3およびH4)を測定する。これにより、既知である膜厚測定センサー60の高さH0を用いて、偏肉樹脂シートSの膜厚t1、t2、t3およびt4が得られる。
【0059】
膜厚測定センサー60として、例えば、キーエンス社製のLK−Gシリーズや、オムロン社製のZ300シリーズ、Z4M−T30Vシリーズを使用することができる。
【0060】
この膜厚測定センサー60の膜厚測定結果は、偏肉樹脂シートSの最厚部52の位置を検出するために用いられる。例えば、図示しない記憶手段に予め記憶されている、偏肉樹脂シートSの幅方向位置と膜厚との関係を表す近似曲線に基づいて、膜厚測定センサー60の膜厚測定結果から偏肉樹脂シートSの最厚部52の位置が算出される。
【0061】
また、膜厚測定センサー60のサンプリング回数は、各偏肉樹脂板(製品としての個片化後の偏肉樹脂シート)に対して少なくとも一回、膜厚測定センサー60による測定が行われるように、設定されることが好ましい。これにより、各偏肉樹脂板ごとに裁断量を調節することができる。
【0062】
なお図6には、最厚部52の位置の検出精度を向上させるため、複数(4個)の膜厚測定センサー60(60A、60B、60C、60D)を使用する例を示したが、膜厚測定センサー60の個数は特に限定されず、少なくとも1個配置すればよい。例えば、樹脂シートSが最厚部52を中心とする対称な偏肉形状である場合、最厚部52の両側に1個ずつ膜厚測定センサー60を配置してもよいし、片側に2個の膜厚測定センサー60を配置することもできる。
【0063】
また図6には、最厚部52を中心とする対称な偏肉形状の樹脂シートSの最厚部52を検出する例について説明したが、上述の最厚部検出方法は、最厚部52を複数有する樹脂シートS(例えば、図2に示す樹脂シートS)にも適用することができる。例えば、上述の最厚部検出方法を繰り返し行って、複数の最厚部52の位置を検出することもできる。
【0064】
また、本実施形態では、固定された膜厚測定センサー60を使用する例について説明したが、偏肉樹脂シートSの幅方向に沿って移動(走査)可能な膜厚測定センサー60を使用してもよい。この場合、1個の膜厚測定センサー60を偏肉樹脂シートSの幅方向に移動(走査)させながら連続的に測定を行うことで、最厚部52の位置を高精度に検出することができる。
【0065】
図3に示すラミネート機30は、偏肉樹脂シートSの表裏面にポリエチレン等の保護フィルムを貼り付けるための一対の引取ローラー36を含んで構成される。またラミネート機30の後段には、偏肉樹脂シートSに基準線を形成する基準線マーカー62が設けられている。
【0066】
図7は、ラミネート機30において保護フィルムFを偏肉樹脂シートSに貼り付けて、基準線マーカー62により偏肉樹脂シートSに基準線56を形成する機構を示す斜視図である。
【0067】
保護フィルムFは、繰り出しローラー38から順次繰り出された後に、複数の転送ローラー37を経て、引取ローラー36に送られる。この引取ローラー36は、偏肉樹脂シートSの搬送および保護フィルムFの貼付を同時に行う。すなわち引取ローラー36は、軸回転することによって、前段部(型ローラー20〜ラミネート機30)の偏肉樹脂シートSを引っ張って搬送するとともに、後段部(ラミネート機30〜切断機32)の偏肉樹脂シートSを押し出すようにして搬送する。また同時に、引取ローラー36は、軸回転することによって、転送ローラー37を介して送られてくる保護フィルムFを偏肉樹脂シートSの面に圧着する。引取ローラー36、転送ローラー37および繰り出しローラー38は、偏肉樹脂シートSの表面側および裏面側の両方に設けられており、保護フィルムFは偏肉樹脂シートSの両面に圧着される。ラミネート機30において保護フィルムFが貼り付けられた偏肉樹脂シートSは、シート搬送方向(図7参照)に搬送されて、基準線マーカー62に送られる。
【0068】
基準線マーカー62は、任意の手法により、偏肉樹脂シートSに基準線56を形成する。基準線マーカー62は、単軸ロボット64に取り付けられており、当該単軸ロボット64により、偏肉樹脂シートSの幅方向に移動して、任意の位置に基準線56を形成することができる。
【0069】
ここで、「基準線」とは、公知のセンサーにより読み取り可能なものであれば特に限定されない。例えば、インクや顔料等による描画線からなる基準線56を形成してもよいし、溝状の凹部からなる基準線56を形成してもよいし、屈折率等の物性が改質された改質領域からなる基準線56を形成してもよい。
【0070】
また、「偏肉樹脂シートSに基準線56を形成する」とは、偏肉樹脂シートSに直接基準線56を形成する場合だけでなく、偏肉樹脂シートSの表面を覆う保護フィルムFに基準線を形成する場合も含む。
【0071】
図8(a)は偏肉樹脂シートSに基準線56が直接形成された様子を示す斜視断面図であり、図8(b)は保護フィルムFに基準線56が形成された様子を示す斜視断面図である。
【0072】
図8(a)に示すように、偏肉樹脂シートSに基準線56を直接形成する場合、裁断時に切り落とされる偏肉樹脂シートSの幅方向端部を保護フィルムFで覆わずに露出させておき、この露出した偏肉樹脂シートSの端部に基準線56を形成することが好ましい。これにより、基準線56が、裁断時に切り落とされる偏肉樹脂シートSの端部に形成されるため、偏肉樹脂シートSの品質に悪影響を及ぼすことがない。
【0073】
一方、図8(b)に示すように、最終的に剥がされる保護フィルムFに基準線56を形成する場合は、偏肉樹脂シートSの品質に悪影響を及ぼすことがないため、保護フィルムF上の何れの位置に基準線56を形成してもよい。
【0074】
図8(a)及び(b)には、樹脂シートSの左端に基準線56を1本形成する例について説明したが、樹脂シートSの右端に基準線56を設けてもよいし、基準線56の本数を2本以上にしてもよい。
【0075】
なお、基準線マーカー62により形成される基準線56の位置は、膜厚測定センサー60の測定結果から算出された最厚部52の位置に基づいて決定される。例えば、最厚部52から一定距離の位置に(すなわち、最厚部52の集合である最厚部線53(図8(a)及び(b)参照)から一定距離の位置に)基準線56を形成してもよい。また、膜厚測定センサー60のサンプリング回数Nが多い場合には、最厚部52の位置の平均値に基づいて基準線56の形成位置を決定してもよい。
【0076】
基準線マーカー62は、基準線56を形成可能な構成であれば特に限定されないが、例えば、レーザー加工機(サンクス社製のLP−Gシリーズ、LP−300シリーズ、400シリーズや、キーエンス社製のML−Gシリーズ等)やインクジェット印刷機(キーエンス社製MKシリーズ等)を使用することができる。中でも、レーザー加工機は、基準線56を迅速かつ高精度に形成できる点で好ましい。
【0077】
基準線マーカー62として使用可能なレーザー加工機として、例えば、エキシマレーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどを挙げることができる。レーザー加工機を用いる場合、レーザー加工機の出力を調節することで、偏肉樹脂シートSまたは保護フィルムFに溝状の基準線56を形成したり、偏肉樹脂シートSまたは保護フィルムFを溶融固化又は発泡させて、屈折率が変化した改質領域からなる基準線56を形成することができる。
【0078】
なお、図7には、単軸ロボット64により基準線マーカー62を偏肉樹脂シートSの幅方向に移動させることで基準線56の形成位置を調節する例を示したが、基準線56の形成位置の調節方法はこの例に限定されない。例えば、基準線マーカー62としてレーザー加工機を用いて、当該レーザー加工機から出力されるレーザー光を音響光学素子(AOD)により偏向させることで、基準線56の形成位置を調節してもよい。
【0079】
また本実施形態では、保護フィルムFの貼り付け後に基準線56を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、保護フィルムFの貼り付け前に基準線56を形成してもよい。例えば、ラミネート機30(図7参照)の繰り出しローラー38〜引取ローラー36間の保護フィルムFに基準線56を形成してもよいし、保護フィルムFが貼り付けられる前の偏肉樹脂シートSに基準線56を形成してもよい。
【0080】
基準線マーカー62により基準線56が形成された後、図3に示すように、偏肉樹脂シートSは切断機32に送られて、切断機32において、所定長さに切り揃えられ、個片化される。以降、切断機32による切断前の偏肉樹脂シートSと区別するため、個片化後の偏肉樹脂シートSを偏肉樹脂板Bと呼ぶ。
【0081】
切断機32の態様としては、例えば、偏肉樹脂シートSの幅方向に丸鋸刃を移動させて切断を行う態様や、受け刃および押し当て刃を樹脂シートに押し付けて切断を行う態様が挙げられる。丸鋸刃を用いる態様では、偏肉樹脂シートSの搬送速度と同じ速度で、切断機32(丸鋸刃)をシート搬送方向に沿って移動させながら切断を行う。
【0082】
切断機32により個片化された偏肉樹脂板Bは、切断機32の後段に設けられたコンベア66により吸着ハンド68の待機位置まで送られて、吸着ハンド68によりNCルータ等の裁断機72まで運ばれる。そして、裁断機72により、偏肉樹脂板Bの幅方向端部を含む端部(耳部)が切り落とされる(くり抜き加工)。
【0083】
図9は、吸着ハンド68により偏肉樹脂板Bをコンベア66から裁断機72に運ぶ機構を示す図である。また図10は、吸着ハンド68により偏肉樹脂板Bの位置および傾きを補正する機構を示す斜視図である。
【0084】
図9に示すように、コンベア66上の偏肉樹脂板Bは吸着ハンド68により持ち上げられ、位置および傾きが補正された後、裁断機72の裁断テーブル72Aに載置され、裁断テーブル72A上に吸着保持される。この後、裁断テーブル72A上に吸着保持された偏肉樹脂板Bに対して、裁断機72の裁断刃72Bによるくり抜き加工が行われる。
【0085】
吸着ハンド68は、吸着パッド等により偏肉樹脂板Bを吸着保持可能な構成を有するとともに、不図示の駆動機構を備えることにより、XY方向に移動可能かつθ方向に回転可能である。
【0086】
吸着ハンド68による偏肉樹脂板Bの位置および傾きの補正は、吸着ハンド68に取り付けられた基準線検出センサー70(70A、70B)を用いて以下のように行う。
【0087】
図10に示すように、基準線検出センサー70(70A、70B)は、偏肉樹脂板Bの基準線56上の少なくとも2点(検出位置M1およびM2)において、基準線56の検出を行う。このとき、基準線検出センサー70の検出位置の一つ(図10の例では、検出位置M2)は、偏肉樹脂板Bの長さ方向における端部(エッジ)上に設定されることが好ましい。これにより、基準線検出センサー70による基準線の検出を2箇所(M1およびM2)において行うことにより、コンベア66上における補正前の偏肉樹脂板Bの位置(XY座標)および傾き(回転角θ)を特定することができる。吸着ハンド68は、コンベア66上の偏肉樹脂板Bを持ち上げた後、上述の基準線検出センサー70の検出結果に基づいて、偏肉樹脂板Bの位置(XY座標)および傾き(回転角θ)を補正する。
【0088】
なお本実施形態では、吸着ハンド68により偏肉樹脂板Bの位置および傾きを補正する例について説明したが、偏肉樹脂板Bの位置および傾きの補正は、XYθ方向に移動可能な裁断テーブル72Aを用いて行ってもよい。また、偏肉樹脂板Bの位置および傾きの補正は、基準線検出センサー70の検出結果に基づいて自動的に補正する自動方式に限定されず、目視による基準線56の観察結果に基づいてマニュアルで補正するマニュアル方式であってもよい。
【0089】
裁断機72においてくり抜き加工が施された偏肉樹脂板Bは、図3に示すように、スタッカー34に順次積み上げられる。スタッカー34に保管される偏肉樹脂板Bは、この後、導光板等の光学シートとして出荷される。
【0090】
本実施形態によれば、成形冷却ローラー部17おいて偏肉樹脂シートSが成形され、偏肉樹脂シートSの最厚部52の位置が膜厚測定センサー60を用いて検出された後、最厚部52の位置の検出結果に基づいて、基準線56が基準線マーカー62により偏肉樹脂シートS(または保護フィルムF)に形成される。そして、切断機32により偏肉樹脂シートSが個片化された後、基準線56に基づいて、偏肉樹脂板B(個片化後の偏肉樹脂シートS)の幅方向端部が裁断される。
【0091】
図11は、偏肉樹脂シートSが蛇行する様子を示す平面図である。ダイ16から吐出される樹脂の流動ばらつきや、引取ローラー36の搬送張力のばらつき等により、偏肉樹脂シートSが蛇行してしまう場合がある。このとき、図11に示すように、偏肉樹脂シートSの蛇行により、偏肉樹脂シートSの最厚部52および端部58の位置がシート搬送方向に関して変動する。
【0092】
上述の実施形態によれば、最厚部52の位置を示す基準線56に基づいて偏肉樹脂板Bの裁断が行われるので、図11に示すように偏肉樹脂シートSの蛇行により最厚部52の位置が変動する場合であっても、偏肉樹脂板Bの裁断を高精度に行うことができる。
【0093】
本発明は、上述の実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形が加えられることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0094】
10…偏肉樹脂シート製造装置、11…原料調製装置、12…押出機、13…原料供給管、14…溶融樹脂供給管、16…ダイ、17…成形冷却ローラー部、18…ニップローラー、20…型ローラー、20A…テーパー凹部、20B…最薄形成部、20C…最厚形成部、22…剥離ローラー、23…加熱装置、24…熱処理ゾーン、26…冷却ゾーン、28…面状検査機、30…ラミネート機、32…切断機、34…スタッカー、36…引取ローラー、37…転送ローラー、38…繰り出しローラー、42…リップ口、44…バンク、46…挟圧部、52…最厚部、54…最薄部、56…基準線、58…端部、60…膜厚測定センサー、62…基準線マーカー、64…単軸ロボット、66…コンベア、68…吸着ハンド、70…基準線検出センサー、S…偏肉樹脂シート、F…保護フィルム、B…偏肉樹脂板
【技術分野】
【0001】
本発明は膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置に係り、例えば、液晶表示装置のバックライトの導光板や、装飾・表示・照明用ディスプレイの導光板などの光学シートとして使用される偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトや装飾・表示・照明用のディスプレイ装置には、光源からの光を導いて面発光する導光板が使用されており、例えば液晶表示装置には、液晶パネルの裏面側から導光板を介して光を照射するバックライトが設けられている。
【0003】
このような導光板のうち大画面液晶テレビなどの大型装置に用いられる導光板は、現行の設備や技術を背景に、押出成形法により製造されることが一般的である。押出成形法では、溶融状態の樹脂シートがダイ(Tダイ等)から押し出されて冷却ローラー(ポリシングローラー)により冷却される。樹脂シートは、その後、引取ローラーによる引っ張り搬送中に空冷され、保護フィルムが貼り付けられた後、幅方向に沿って所望の大きさに切断(個片化)される。個片化された樹脂シートは、幅方向端部が裁断され、端面仕上げが行われて、導光板として用いられる光学シートが得られる。
【0004】
上述の押出成形法により、幅方向に関して膜厚に偏りがある光学シートを製造する場合、最厚部の位置が光学シートの光学特性に影響することから、所望の位置に最厚部を有する光学シートが得られるように、樹脂シートの裁断を高精度に行う必要がある。例えば、最厚部を中心とする対称な偏肉形状の光学シートを製造する場合、光学シートの幅方向中心に最厚部が位置するように、樹脂シートの幅方向端部の裁断幅を調節する必要がある。
【0005】
このため、従来は、押出成形時のバンクすじの位置から見積もった最厚部のおおよその位置を基準に樹脂シートの裁断を行っていた。これにより、樹脂シートの最厚部と最薄部との膜厚差が小さく、目視では最厚部の位置を特定できない場合であっても、最厚部の位置に基づいて、樹脂シートの幅方向端部の裁断幅を調節することができる。
【0006】
しかし、押出し成形時の樹脂流動のばらつきがある場合には、樹脂シートの最厚部の位置をバンクすじの位置から正確に見積もることは難しく、樹脂シートの裁断を高精度に行うことができなかった。
【0007】
一方、押出成形機から押し出される樹脂シートを所定の製品長さに切断する方法として、エンコーダにより計測された搬送長さに基づいて、樹脂シートにマークを付した後、当該マークに基づいて樹脂シートの切断を行うことが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−86536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1には、樹脂(ウェザーストリップ)を所定長さに切断する方法が記載されているが、樹脂シートの幅方向における端部を裁断する方法は記載されていない。
【0010】
また、樹脂シートの最厚部の位置は、押出し成形時の樹脂流動のばらつきや、引っ張り搬送の張力のばらつき等に起因する樹脂シートの蛇行により、シート搬送方向に関して変動する。このため、単に、特許文献1に記載された方法を、樹脂シートの幅方向端部の裁断に適用するだけでは、樹脂シートの裁断を高精度に行うことが難しい。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、偏肉樹脂シートの裁断を高精度に行うことができる偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る偏肉樹脂シートの製造方法は、幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する工程と、成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する工程と、検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する工程と、前記偏肉樹脂シートに形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
この製造方法では、偏肉樹脂シートの最厚部の位置に基づく基準線が形成され、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートの裁断が行われる。これにより、樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、最厚部の位置を考慮して、偏肉樹脂シートの裁断を高精度に行うことができる。
【0014】
ここで、「基準線」とは、公知のセンサーにより読み取り可能なものであれば特に限定されず、例えば、インクや顔料等による描画線からなる基準線を形成してもよいし、溝状に凹んだ基準線を形成してもよいし、屈折率等の物性が改質された改質領域からなる基準線を形成してもよい。
【0015】
また「偏肉樹脂シートに基準線を形成する」とは、偏肉樹脂シートに基準線を直接形成する場合だけでなく、偏肉樹脂シートの表面を覆う保護フィルムに基準線を形成する場合も含む。
【0016】
上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記最厚部を検出する工程では、前記偏肉樹脂シートの膜厚が測定され、該膜厚の測定結果に基づいて、前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置が算出されることが好ましい。
【0017】
これにより、固定式の膜厚測定センサーを含む簡素な装置構成で、偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出することができる。
【0018】
上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの表面を覆う保護フィルムに形成されてもよい。
【0019】
このように、最終的に剥がされる保護フィルムに基準線を形成することで、偏肉樹脂シートの品質に影響を与えずに、偏肉樹脂シートの高精度な裁断を実現することができる。
【0020】
また、上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部に直接形成されてもよい。
【0021】
このように、裁断時に切り落とされる偏肉樹脂シートの端部に基準線を形成することで、偏肉樹脂シートの品質に影響を与えずに、偏肉樹脂シートの高精度な裁断を実現することができる。
【0022】
上記偏肉樹脂シートの製造方法において、前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、レーザー加工機を用いて形成されることが好ましい。
【0023】
レーザー加工機を用いることで、基準線を迅速かつ高精度に形成することができる。
【0024】
本発明に係る偏肉樹脂シートの製造装置は、幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する成形手段と、前記成形手段により成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する基準線形成手段と、前記基準線形成手段により形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する裁断手段とを含むことを特徴とする。
【0025】
上記偏肉樹脂シートの製造装置では、偏肉樹脂シートの最厚部の位置に基づく基準線が基準線形成手段により形成され、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートの裁断が裁断手段によって行われる。これにより、樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、最厚部の位置を考慮して、偏肉樹脂シートの裁断を高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、偏肉樹脂シートの最厚部の位置に基づく基準線を形成して、当該基準線に基づいて偏肉樹脂シートの裁断を行うことで、偏肉樹脂シートの蛇行により最厚部の位置が変動する場合であっても、偏肉樹脂シートの裁断精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面の一例を示す図である。
【図2】偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面の他の例を示す図である。
【図3】偏肉樹脂シート製造装置の一例を示す図である。
【図4】ダイおよび成形冷却ローラー部を側方から見た図である。
【図5】(a)は成形冷却ローラー部の一例を下方から見た図である。(b)は成形冷却ローラー部の他の例を下方から見た図である。
【図6】膜厚測定センサーにより偏肉樹脂シートSの膜厚を測定する様子を示す図である。
【図7】偏肉樹脂シートSに保護フィルムFを貼り付けて、基準線を形成する機構を示す斜視図である。
【図8】(a)は偏肉樹脂シートSに基準線が直接形成された様子を示す斜視断面図である。(b)は保護フィルムFに基準線が形成された様子を示す斜視断面図である。
【図9】吸着ハンドにより偏肉樹脂板Bをコンベアから裁断機に運ぶ機構を示す図である。
【図10】吸着ハンドにより偏肉樹脂板Bの位置および傾きを補正する機構を示す斜視図である。
【図11】偏肉樹脂シートSが蛇行する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0029】
図1および図2は、本実施形態において製造される蒲鉾形状の偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面を例示する図である。本実施形態では、シート幅方向に関して膜厚に偏りのある偏肉樹脂シートを成形対象としており、例えば図1に示すように、最も膜厚の大きな最厚部52がシート幅方向の中央部に設けられ、最も膜厚の薄い最薄部54がシート幅方向の両端部に設けられる偏肉樹脂シートSを製造することができる。また、図2に示すように、図1に示す樹脂シートをシート幅方向に複数(2個)並べたような断面形状を有する偏肉樹脂シートSを製造することも可能である。図2に示す偏肉樹脂シートSは、最厚部52および最薄部54が周期的に配される断面構造を有し、シート幅方向に関して最薄部54および最厚部52が交互に出現する構造となっている。
【0030】
なお、最薄部54のピッチP1および最厚部52のピッチP2は、1000mm以下であってもよく、このようなピッチを有する偏肉樹脂シートSであればディスプレイ等の幅広い用途に使用することが可能である。
【0031】
図3は、偏肉樹脂シートを製造する偏肉樹脂シート製造装置の一例を示す図である。図3に示す偏肉樹脂シート製造装置10では、原料調製装置11、押出機12、ダイ16、成形冷却ローラー部17、熱処理ゾーン24、冷却ゾーン26、面状検査機28、膜厚測定センサー60、ラミネート機30、基準線マーカー62、切断機32、コンベア66、裁断機72およびスタッカー34が、上流側から下流側へ順次設けられている。
【0032】
原料調製装置11は、偏肉樹脂シート製造装置10によって製造される偏肉樹脂シートSの原料の計量および混合を行って原料を調製し、当該原料を原料供給管13を介して押出機12に送る。例えば、この原料調製装置11では、原料タンクおよび添加物タンクから混合器に送られる原料樹脂および添加物が自動計量機によって自動計量され、所定比率の原料樹脂および添加物が混合器で混合される。原料樹脂に添加物として拡散粒子を添加する場合には、原料樹脂に拡散粒子を所定濃度よりも高濃度に添加したマスターペレットを造粒機で製造しておき、拡散粒子が添加されていないベースペレットと混合器で所定比率混合するマスターバッチ方式を好適に採用できる。なお、拡散粒子以外の添加物を添加する場合にも、同様にして混合を行うことができる。
【0033】
上記の原料樹脂としては熱可塑性樹脂を使用可能であり、例えばポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマーなどを原料樹脂として使用することができる。
【0034】
押出機12は、原料調製装置11から送られてくる原料を混練しながら溶融し、溶融樹脂を作る。この押出機12は、単軸式押出機および多軸式押出機の何れでもよく、押出機12の内部を真空にするベント機能を有するものが好ましい。押出機12により作られた溶融樹脂は、スクリューポンプやギアポンプ等の定量ポンプにより溶融樹脂供給管14を介してダイ16に送られる。
【0035】
ダイ16では、押出機12から送られてくる溶融樹脂が成形冷却ローラー部17に向かってシート状に押し出される。本実施形態では、シート幅方向に関して膜厚が均一ではない偏肉樹脂シートが成形されるので、ダイ16から押し出されて吐出される溶融樹脂量は、シート幅方向に関して所定の分布を有する。ダイ16から吐出される溶融樹脂量に分布を持たせる手段として、例えばチョークバーを使用する方法や他の公知の方法を用いることができる。
【0036】
成形冷却ローラー部17は、ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22を含み、ダイ16から供給される溶融樹脂に対して蒲鉾形の偏肉形状を付与するとともに、当該溶融樹脂の冷却を行う。
【0037】
図4は、ダイ16および成形冷却ローラー部17を側方から見た図であり、図5(a)は、成形冷却ローラー部17を下方から見た図である。また、成形冷却ローラー部17の変形例を図5(b)に示す。
【0038】
ニップローラー18および剥離ローラー22は太さが一様な円柱形状を有する一方で、型ローラー20は中央部が細く両端部が太い所謂コンケーブ形状を有する。この型ローラー20のコンケーブ形状は、偏肉樹脂シートSの蒲鉾形の偏肉形状の反転形状に対応しており、型ローラー20およびニップローラー18により高温の偏肉樹脂シートSが挟圧されて蒲鉾状に成形される。
【0039】
なお型ローラー20は、図5(b)に示すように、両端部において先細形状のテーパー凹部20Aを有する形状にすることもできる。この場合、偏肉樹脂シートSをニップローラー18および型ローラー20で挟圧したときに、当該偏肉樹脂シートSのうちテーパー凹部20Aに対応する部分を容易にカットすることができる。これは、偏肉樹脂シートSの両端部(耳部)が所望の膜厚よりも厚くなる傾向があり、その最厚部がその後の工程において偏肉樹脂シートSの反りを助長する可能性を考慮したものである。また、ニップローラー18のうち型ローラー20の最薄形成部20Bと接触する部分18Aは磨耗し易いので、ニップローラー18の当該当接部18Aに対して、タングステンカーバイト等の超硬材料により超硬処理を施したり焼き入れすることが好ましい。また、型ローラー20および剥離ローラー22についても同様に、最薄形成部20B等の当接部に対して超硬処理を施したり焼き入れしたりすることが好ましい。
【0040】
このような構成を有する図5(a)および図5(b)に示す型ローラー20の中央部には、偏肉樹脂シートSの最厚部52に対応する最厚形成部20Cが設けられている。
【0041】
なお、ニップローラー18、型ローラー20および剥離ローラー22の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、および各種の複合材料が採用することができる。
【0042】
また、型ローラー20の表面の逆蒲鉾形状は、公知の加工方法により形成することが可能であり、例えば、研削加工、超音波加工、放電加工、NC旋盤による切削加工、仕上げバフ加工、等を適宜組み合わせて形成することが可能である。型ローラー表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とすることが好ましく、0.2μm以下とすることがより好ましい。
【0043】
また、ニップローラー18、型ローラー20および剥離ローラー22には、偏肉樹脂シートSの蒲鉾形状に対応するような冷却温度分布を偏肉樹脂シートSに付与するための温度調整手段(図示せず)が設けられる。この温度調整手段として、例えば、温度調節された冷却液体を型ローラー20の内部の一端側から他端側に流す構成を採用することができる。
【0044】
ニップローラー18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラー20との間の偏肉樹脂シートSを所定の圧力で挟圧することができるようになっている。この加圧手段は、ニップローラー18と型ローラー20との接触点における法線方向に圧力を付与する構成のものであり、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段を採用することができる。また、ニップローラー18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラー18の背面側(型ローラー20とは反対側)に図示しないバックアップローラーを設ける構成、中高状のクラウン形状を採用する構成、ローラーの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラーの構成、或いはこれらを組み合わせた構成等を採用することができる。
【0045】
なお、偏肉樹脂シートSの断面形状は、当該偏肉樹脂シートSを挟圧成形するニップローラーおよび型ローラーの形状に応じて適宜変更することができ、ニップローラーおよび型ローラーの形状を変えることで、様々な断面形状を有する偏肉樹脂シートを製造することができる。
【0046】
また、ニップローラー18および剥離ローラー22の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面にすることにより、成形後の偏肉樹脂シートSの裏面を良好な状態に仕上げることができる。そして、ニップローラー18および剥離ローラー22の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0047】
また、ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22には、ローラー表面の温度をローラー幅方向に関してモニターできるように、複数の表面温度測定手段(図示せず)を設けることが好ましい。このような表面温度測定手段としては、赤外線温度計、放射式温度計等の公知の各種測定手段が採用できる。
【0048】
ダイ16は、図4に示すように、ニップローラー18および型ローラー20の上方において、やや型ローラー20寄りに配置される。また、ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22は、図示しない駆動装置により所定の周速度で図4に示す矢印方向へ回転駆動される。なお、ニップローラー18および剥離ローラー22に対して駆動手段を設けない構成も可能であるが、偏肉樹脂シートSの面状(特に裏面)を良好に成形する観点からは、駆動手段によってニップローラー18および剥離ローラー22も回転駆動する構成が好ましい。
【0049】
このような構成において、ダイ16のリップ口42から吐出される溶融樹脂は、ニップローラー18と型ローラー20との間でバンク44を形成するとともに、挟圧部46においてニップローラー18および型ローラー20により挟圧される。ニップローラー18および型ローラー20により偏肉形状が付与された溶融偏肉樹脂シートSは、型ローラー20に巻き掛けられた状態で送り出され、剥離ローラー22によって型ローラー20から剥がされる。
【0050】
なお、本実施形態では、挟圧部から送られてくる偏肉樹脂シートSを加熱する加熱装置23が偏肉樹脂シートSの搬送路に沿って複数設けられており、型ローラー20および剥離ローラー22の各々に対向する位置に加熱装置23(23A、23B)が設置されている。
【0051】
図3に示すように、偏肉樹脂シートSは、剥離ローラー22から熱処理ゾーン24に送られる。熱処理ゾーン24は、偏肉構造を有する偏肉樹脂シートSに対して熱処理を施すゾーンであり、複数の加熱装置23が偏肉樹脂シートSの搬送路に沿って設けられている。型ローラー20〜熱処理ゾーン24にわたって設置されるこれらの加熱装置23は非接触式加熱手段であり、加熱効率等の観点から、例えば遠赤外線ヒーターを加熱装置23として好適に用いることができる。加熱装置23の加熱条件は、搬送される偏肉樹脂シートSの表面温度がほぼ均一に保たれるようにコントロールされる。具体的には、偏肉樹脂シートSの表面温度がガラス転移温度Tg以下になった後に、偏肉樹脂シートSのうち加熱される側の表面の温度差が、幅方向に関して40℃以内となるように、好ましくは30℃以内となるように、より好ましくは10℃以内となるように、加熱装置23の加熱条件がコントロールされる。このとき、放射温度計等の温度センサー(図示せず)により偏肉樹脂シートSの温度が測定され、この測定温度に基づいて加熱装置23の加熱条件を適宜変更することで、偏肉樹脂シートSの表面温度が調整される。
【0052】
なお、加熱装置23の加熱温度、加熱時間、およびその他の加熱条件は、偏肉樹脂シートSの搬送速度や加熱装置23の設置位置に基づいて適宜調整される。例えば、型ローラー20の近傍、剥離ローラー22の近傍、および剥離ローラー22〜熱処理ゾーン24にかけて、偏肉樹脂シートSのうち厚みtが「t≦Dmin+(Dmax−Dmin)/2」(ただし、Dminは偏肉樹脂シートSのうち膜厚が最も小さい最薄部54の膜厚を意味し、Dmaxは偏肉樹脂シートSのうち膜厚が最も大きい最厚部52の膜厚を意味する)を満たす部分、より好ましくは「t≦Dmin+(Dmax−Dmin)/3」を満たす部分を加熱することが好ましい。これは、冷却されやすい最薄部分を重点的に加熱することで、偏肉樹脂シートS全体の温度差を抑えるためである。そのため、図1の断面形状を有する偏肉樹脂シートSの場合には両端の最薄部54を加熱し、図2の断面形状を有する偏肉樹脂シートSの場合には両端の最薄部54だけではなく中央の最薄部54も加熱することが好ましい。なお、上記式で表される範囲以外の膜厚tを有する部分については、ライン速度等に応じて、加熱の有無や加熱の程度を調整することが好ましい。特に偏肉樹脂シートSの表面温度を昇温し過ぎると搬送中に反り等の不具合が発生してしまうことがあるので、加熱装置23の加熱温度や加熱時間を含む加熱条件は、ライン速度や加熱装置23の設置位置に基づいて最適化されることが好ましい。
【0053】
熱処理ゾーン24において熱処理を受けた偏肉樹脂シートSは、冷却ゾーン26に送られる。冷却ゾーン26は、熱処理ゾーン24から送られてくる偏肉樹脂シートSに対して徐冷処理を施すゾーンであり、偏肉樹脂シートSの急激な温度変化を防止する。偏肉樹脂シートSは、急激に冷却されると表面近傍と内部の収縮量の違いや温度差等に起因する表面形状の悪化や反りが生じ易い。特に膜厚に分布がある偏肉樹脂シートの場合には、急冷等により比較的大きな内部応力が生じやすいので、反りが生じ易い。そのため、冷却ゾーン26における徐冷方法の一例として、前半部では偏肉樹脂シートSの最厚部と最薄部との間で大きな温度差が生じないように非接触式加熱手段で最薄部を重点的に加熱して偏肉樹脂シートS全体を徐々に自然冷却し、後半部では偏肉樹脂シートSに冷風を当てて常温程度まで強制冷却を行う方法がある。
【0054】
なお、上述の熱処理ゾーン24および冷却ゾーン26では、熱処理や冷却に伴う反り等の変形を防いで所望の偏肉形状が保持されるように、偏肉樹脂シートSが搬送される。
【0055】
面状検査機28は、冷却ゾーン26から送られてくる偏肉樹脂シートSの表面形状や反りを評価する。面状検査機28による評価はセンサー類を用いた任意の手法で行われ、この評価結果は、前段に設けられたダイ16からの溶融偏肉樹脂シートSの吐出制御や、熱処理ゾーン24および冷却ゾーン26における熱処理・冷却制御にフィードバックされる。
【0056】
面状検査機28のシート搬送方向の下流側には、面状検査機28から連続的に搬送される偏肉樹脂シートSの膜厚を測定する膜厚測定センサー60が設けられている。
【0057】
図6は、膜厚測定センサー60により偏肉樹脂シートSの膜厚を測定する様子を示す図である。同図に示すように、複数の膜厚測定センサー60(60A、60B、60C、60D)が、偏肉樹脂シートSの幅方向に沿って、最厚部52の両側にそれぞれ2個ずつ配置されている。また膜厚測定センサー60(60A、60B、60C、60D)は、偏肉樹脂シートSの底面から所定の高さ(H0)に固定されている。
【0058】
膜厚測定センサー60は、レーザー干渉等の公知の方法により、連続的に搬送される偏肉樹脂シートSの表面までの距離(H1、H2、H3およびH4)を測定する。これにより、既知である膜厚測定センサー60の高さH0を用いて、偏肉樹脂シートSの膜厚t1、t2、t3およびt4が得られる。
【0059】
膜厚測定センサー60として、例えば、キーエンス社製のLK−Gシリーズや、オムロン社製のZ300シリーズ、Z4M−T30Vシリーズを使用することができる。
【0060】
この膜厚測定センサー60の膜厚測定結果は、偏肉樹脂シートSの最厚部52の位置を検出するために用いられる。例えば、図示しない記憶手段に予め記憶されている、偏肉樹脂シートSの幅方向位置と膜厚との関係を表す近似曲線に基づいて、膜厚測定センサー60の膜厚測定結果から偏肉樹脂シートSの最厚部52の位置が算出される。
【0061】
また、膜厚測定センサー60のサンプリング回数は、各偏肉樹脂板(製品としての個片化後の偏肉樹脂シート)に対して少なくとも一回、膜厚測定センサー60による測定が行われるように、設定されることが好ましい。これにより、各偏肉樹脂板ごとに裁断量を調節することができる。
【0062】
なお図6には、最厚部52の位置の検出精度を向上させるため、複数(4個)の膜厚測定センサー60(60A、60B、60C、60D)を使用する例を示したが、膜厚測定センサー60の個数は特に限定されず、少なくとも1個配置すればよい。例えば、樹脂シートSが最厚部52を中心とする対称な偏肉形状である場合、最厚部52の両側に1個ずつ膜厚測定センサー60を配置してもよいし、片側に2個の膜厚測定センサー60を配置することもできる。
【0063】
また図6には、最厚部52を中心とする対称な偏肉形状の樹脂シートSの最厚部52を検出する例について説明したが、上述の最厚部検出方法は、最厚部52を複数有する樹脂シートS(例えば、図2に示す樹脂シートS)にも適用することができる。例えば、上述の最厚部検出方法を繰り返し行って、複数の最厚部52の位置を検出することもできる。
【0064】
また、本実施形態では、固定された膜厚測定センサー60を使用する例について説明したが、偏肉樹脂シートSの幅方向に沿って移動(走査)可能な膜厚測定センサー60を使用してもよい。この場合、1個の膜厚測定センサー60を偏肉樹脂シートSの幅方向に移動(走査)させながら連続的に測定を行うことで、最厚部52の位置を高精度に検出することができる。
【0065】
図3に示すラミネート機30は、偏肉樹脂シートSの表裏面にポリエチレン等の保護フィルムを貼り付けるための一対の引取ローラー36を含んで構成される。またラミネート機30の後段には、偏肉樹脂シートSに基準線を形成する基準線マーカー62が設けられている。
【0066】
図7は、ラミネート機30において保護フィルムFを偏肉樹脂シートSに貼り付けて、基準線マーカー62により偏肉樹脂シートSに基準線56を形成する機構を示す斜視図である。
【0067】
保護フィルムFは、繰り出しローラー38から順次繰り出された後に、複数の転送ローラー37を経て、引取ローラー36に送られる。この引取ローラー36は、偏肉樹脂シートSの搬送および保護フィルムFの貼付を同時に行う。すなわち引取ローラー36は、軸回転することによって、前段部(型ローラー20〜ラミネート機30)の偏肉樹脂シートSを引っ張って搬送するとともに、後段部(ラミネート機30〜切断機32)の偏肉樹脂シートSを押し出すようにして搬送する。また同時に、引取ローラー36は、軸回転することによって、転送ローラー37を介して送られてくる保護フィルムFを偏肉樹脂シートSの面に圧着する。引取ローラー36、転送ローラー37および繰り出しローラー38は、偏肉樹脂シートSの表面側および裏面側の両方に設けられており、保護フィルムFは偏肉樹脂シートSの両面に圧着される。ラミネート機30において保護フィルムFが貼り付けられた偏肉樹脂シートSは、シート搬送方向(図7参照)に搬送されて、基準線マーカー62に送られる。
【0068】
基準線マーカー62は、任意の手法により、偏肉樹脂シートSに基準線56を形成する。基準線マーカー62は、単軸ロボット64に取り付けられており、当該単軸ロボット64により、偏肉樹脂シートSの幅方向に移動して、任意の位置に基準線56を形成することができる。
【0069】
ここで、「基準線」とは、公知のセンサーにより読み取り可能なものであれば特に限定されない。例えば、インクや顔料等による描画線からなる基準線56を形成してもよいし、溝状の凹部からなる基準線56を形成してもよいし、屈折率等の物性が改質された改質領域からなる基準線56を形成してもよい。
【0070】
また、「偏肉樹脂シートSに基準線56を形成する」とは、偏肉樹脂シートSに直接基準線56を形成する場合だけでなく、偏肉樹脂シートSの表面を覆う保護フィルムFに基準線を形成する場合も含む。
【0071】
図8(a)は偏肉樹脂シートSに基準線56が直接形成された様子を示す斜視断面図であり、図8(b)は保護フィルムFに基準線56が形成された様子を示す斜視断面図である。
【0072】
図8(a)に示すように、偏肉樹脂シートSに基準線56を直接形成する場合、裁断時に切り落とされる偏肉樹脂シートSの幅方向端部を保護フィルムFで覆わずに露出させておき、この露出した偏肉樹脂シートSの端部に基準線56を形成することが好ましい。これにより、基準線56が、裁断時に切り落とされる偏肉樹脂シートSの端部に形成されるため、偏肉樹脂シートSの品質に悪影響を及ぼすことがない。
【0073】
一方、図8(b)に示すように、最終的に剥がされる保護フィルムFに基準線56を形成する場合は、偏肉樹脂シートSの品質に悪影響を及ぼすことがないため、保護フィルムF上の何れの位置に基準線56を形成してもよい。
【0074】
図8(a)及び(b)には、樹脂シートSの左端に基準線56を1本形成する例について説明したが、樹脂シートSの右端に基準線56を設けてもよいし、基準線56の本数を2本以上にしてもよい。
【0075】
なお、基準線マーカー62により形成される基準線56の位置は、膜厚測定センサー60の測定結果から算出された最厚部52の位置に基づいて決定される。例えば、最厚部52から一定距離の位置に(すなわち、最厚部52の集合である最厚部線53(図8(a)及び(b)参照)から一定距離の位置に)基準線56を形成してもよい。また、膜厚測定センサー60のサンプリング回数Nが多い場合には、最厚部52の位置の平均値に基づいて基準線56の形成位置を決定してもよい。
【0076】
基準線マーカー62は、基準線56を形成可能な構成であれば特に限定されないが、例えば、レーザー加工機(サンクス社製のLP−Gシリーズ、LP−300シリーズ、400シリーズや、キーエンス社製のML−Gシリーズ等)やインクジェット印刷機(キーエンス社製MKシリーズ等)を使用することができる。中でも、レーザー加工機は、基準線56を迅速かつ高精度に形成できる点で好ましい。
【0077】
基準線マーカー62として使用可能なレーザー加工機として、例えば、エキシマレーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどを挙げることができる。レーザー加工機を用いる場合、レーザー加工機の出力を調節することで、偏肉樹脂シートSまたは保護フィルムFに溝状の基準線56を形成したり、偏肉樹脂シートSまたは保護フィルムFを溶融固化又は発泡させて、屈折率が変化した改質領域からなる基準線56を形成することができる。
【0078】
なお、図7には、単軸ロボット64により基準線マーカー62を偏肉樹脂シートSの幅方向に移動させることで基準線56の形成位置を調節する例を示したが、基準線56の形成位置の調節方法はこの例に限定されない。例えば、基準線マーカー62としてレーザー加工機を用いて、当該レーザー加工機から出力されるレーザー光を音響光学素子(AOD)により偏向させることで、基準線56の形成位置を調節してもよい。
【0079】
また本実施形態では、保護フィルムFの貼り付け後に基準線56を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、保護フィルムFの貼り付け前に基準線56を形成してもよい。例えば、ラミネート機30(図7参照)の繰り出しローラー38〜引取ローラー36間の保護フィルムFに基準線56を形成してもよいし、保護フィルムFが貼り付けられる前の偏肉樹脂シートSに基準線56を形成してもよい。
【0080】
基準線マーカー62により基準線56が形成された後、図3に示すように、偏肉樹脂シートSは切断機32に送られて、切断機32において、所定長さに切り揃えられ、個片化される。以降、切断機32による切断前の偏肉樹脂シートSと区別するため、個片化後の偏肉樹脂シートSを偏肉樹脂板Bと呼ぶ。
【0081】
切断機32の態様としては、例えば、偏肉樹脂シートSの幅方向に丸鋸刃を移動させて切断を行う態様や、受け刃および押し当て刃を樹脂シートに押し付けて切断を行う態様が挙げられる。丸鋸刃を用いる態様では、偏肉樹脂シートSの搬送速度と同じ速度で、切断機32(丸鋸刃)をシート搬送方向に沿って移動させながら切断を行う。
【0082】
切断機32により個片化された偏肉樹脂板Bは、切断機32の後段に設けられたコンベア66により吸着ハンド68の待機位置まで送られて、吸着ハンド68によりNCルータ等の裁断機72まで運ばれる。そして、裁断機72により、偏肉樹脂板Bの幅方向端部を含む端部(耳部)が切り落とされる(くり抜き加工)。
【0083】
図9は、吸着ハンド68により偏肉樹脂板Bをコンベア66から裁断機72に運ぶ機構を示す図である。また図10は、吸着ハンド68により偏肉樹脂板Bの位置および傾きを補正する機構を示す斜視図である。
【0084】
図9に示すように、コンベア66上の偏肉樹脂板Bは吸着ハンド68により持ち上げられ、位置および傾きが補正された後、裁断機72の裁断テーブル72Aに載置され、裁断テーブル72A上に吸着保持される。この後、裁断テーブル72A上に吸着保持された偏肉樹脂板Bに対して、裁断機72の裁断刃72Bによるくり抜き加工が行われる。
【0085】
吸着ハンド68は、吸着パッド等により偏肉樹脂板Bを吸着保持可能な構成を有するとともに、不図示の駆動機構を備えることにより、XY方向に移動可能かつθ方向に回転可能である。
【0086】
吸着ハンド68による偏肉樹脂板Bの位置および傾きの補正は、吸着ハンド68に取り付けられた基準線検出センサー70(70A、70B)を用いて以下のように行う。
【0087】
図10に示すように、基準線検出センサー70(70A、70B)は、偏肉樹脂板Bの基準線56上の少なくとも2点(検出位置M1およびM2)において、基準線56の検出を行う。このとき、基準線検出センサー70の検出位置の一つ(図10の例では、検出位置M2)は、偏肉樹脂板Bの長さ方向における端部(エッジ)上に設定されることが好ましい。これにより、基準線検出センサー70による基準線の検出を2箇所(M1およびM2)において行うことにより、コンベア66上における補正前の偏肉樹脂板Bの位置(XY座標)および傾き(回転角θ)を特定することができる。吸着ハンド68は、コンベア66上の偏肉樹脂板Bを持ち上げた後、上述の基準線検出センサー70の検出結果に基づいて、偏肉樹脂板Bの位置(XY座標)および傾き(回転角θ)を補正する。
【0088】
なお本実施形態では、吸着ハンド68により偏肉樹脂板Bの位置および傾きを補正する例について説明したが、偏肉樹脂板Bの位置および傾きの補正は、XYθ方向に移動可能な裁断テーブル72Aを用いて行ってもよい。また、偏肉樹脂板Bの位置および傾きの補正は、基準線検出センサー70の検出結果に基づいて自動的に補正する自動方式に限定されず、目視による基準線56の観察結果に基づいてマニュアルで補正するマニュアル方式であってもよい。
【0089】
裁断機72においてくり抜き加工が施された偏肉樹脂板Bは、図3に示すように、スタッカー34に順次積み上げられる。スタッカー34に保管される偏肉樹脂板Bは、この後、導光板等の光学シートとして出荷される。
【0090】
本実施形態によれば、成形冷却ローラー部17おいて偏肉樹脂シートSが成形され、偏肉樹脂シートSの最厚部52の位置が膜厚測定センサー60を用いて検出された後、最厚部52の位置の検出結果に基づいて、基準線56が基準線マーカー62により偏肉樹脂シートS(または保護フィルムF)に形成される。そして、切断機32により偏肉樹脂シートSが個片化された後、基準線56に基づいて、偏肉樹脂板B(個片化後の偏肉樹脂シートS)の幅方向端部が裁断される。
【0091】
図11は、偏肉樹脂シートSが蛇行する様子を示す平面図である。ダイ16から吐出される樹脂の流動ばらつきや、引取ローラー36の搬送張力のばらつき等により、偏肉樹脂シートSが蛇行してしまう場合がある。このとき、図11に示すように、偏肉樹脂シートSの蛇行により、偏肉樹脂シートSの最厚部52および端部58の位置がシート搬送方向に関して変動する。
【0092】
上述の実施形態によれば、最厚部52の位置を示す基準線56に基づいて偏肉樹脂板Bの裁断が行われるので、図11に示すように偏肉樹脂シートSの蛇行により最厚部52の位置が変動する場合であっても、偏肉樹脂板Bの裁断を高精度に行うことができる。
【0093】
本発明は、上述の実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形が加えられることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0094】
10…偏肉樹脂シート製造装置、11…原料調製装置、12…押出機、13…原料供給管、14…溶融樹脂供給管、16…ダイ、17…成形冷却ローラー部、18…ニップローラー、20…型ローラー、20A…テーパー凹部、20B…最薄形成部、20C…最厚形成部、22…剥離ローラー、23…加熱装置、24…熱処理ゾーン、26…冷却ゾーン、28…面状検査機、30…ラミネート機、32…切断機、34…スタッカー、36…引取ローラー、37…転送ローラー、38…繰り出しローラー、42…リップ口、44…バンク、46…挟圧部、52…最厚部、54…最薄部、56…基準線、58…端部、60…膜厚測定センサー、62…基準線マーカー、64…単軸ロボット、66…コンベア、68…吸着ハンド、70…基準線検出センサー、S…偏肉樹脂シート、F…保護フィルム、B…偏肉樹脂板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する工程と、
成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する工程と、
検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する工程と、
前記偏肉樹脂シートに形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する工程とを含むことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記最厚部を検出する工程では、前記偏肉樹脂シートの膜厚が測定され、該膜厚の測定結果に基づいて、前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置が算出されることを特徴とする請求項1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの表面を覆う保護フィルムに形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部に直接形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、レーザー加工機を用いて形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する成形手段と、
前記成形手段により成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する基準線形成手段と、
前記基準線形成手段により形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する裁断手段とを含むことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造装置。
【請求項1】
幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する工程と、
成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する工程と、
検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する工程と、
前記偏肉樹脂シートに形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する工程とを含むことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記最厚部を検出する工程では、前記偏肉樹脂シートの膜厚が測定され、該膜厚の測定結果に基づいて、前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置が算出されることを特徴とする請求項1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの表面を覆う保護フィルムに形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部に直接形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記基準線を形成する工程では、前記基準線は、レーザー加工機を用いて形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
幅方向に関して膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形する成形手段と、
前記成形手段により成形された前記偏肉樹脂シートの最厚部の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記最厚部の位置に基づいて、前記偏肉樹脂シートに基準線を形成する基準線形成手段と、
前記基準線形成手段により形成された前記基準線に基づいて、前記偏肉樹脂シートの前記幅方向における端部を裁断する裁断手段とを含むことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−188571(P2010−188571A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33883(P2009−33883)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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