説明

停止低速車両検出装置及び方法

【課題】 他の車両に遮られ目標車両を連続的な画像として捕捉できない場合であっても、停止状態の車両を比較的短い時間内に高い信頼性で認識することが可能な停止低速車両検出装置及び方法を提供すること。
【解決手段】 車両認識部30は、画像入力部21から入力された道路上の車両を含む被写体の撮影画像から車両候補領域を検出すると共に車両の特徴点を認識する。停止低速事象認識部34は、車両の停止状態又は低速状態を検出した後見失った場合に、停止保持情報格納部33に停止車両候補を表す情報を保存する。また、停止低速事象認識部34は、車両認識部30の検出状態と、停止保持情報格納部33に保持されている情報に基づいて、停止車両又は低速車両を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路上の被写体を撮影して得られた画像に基づいて、例えば故障などによって停止したり低速状態になった異常な車両を検出するために用いる停止低速車両検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば高速道路上や一般道路の近傍に監視カメラを設置して道路を走行中の車両を撮影し、撮影により得られた車両の映像を例えば管制室の映像表示装置で表示するように構成した監視システムが道路交通状態を管理するために広く採用されている。
【0003】
この種の一般的な監視システムにおいては、監視者が表示された映像を目視で確認することにより監視するようになっているが、例えば特許文献1の技術においては、監視カメラからの映像を分析して突発事象を自動的に検出し、突発事象の発生を表示すると共に、入力映像を突発事象発生地点の現場映像に切り替えて表示することを提案している。
【0004】
また、道路上の車両を撮影した画像から車両を検出する技術が種々提案されている。例えば特許文献2に開示された技術では、車両のヘッドライトの領域を画像から抽出して判断することにより、夜間における車種を高い精度で判別することを提案している。
【0005】
道路上の撮影画像から車体部分を抽出するための画像処理技術としては、道路等の背景画像と現在の画像との差分をとって車両の特徴を抽出する背景差分法や、前フレームの画像と現在のフレームとの画像間の差分をとって車両の特徴を抽出するフレーム差分法などが考えられる。
【0006】
【特許文献1】特開平5−250595号公報
【特許文献2】特開平11−353580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、道路上の撮影画像から車両を検出し、撮影画像内の検出車両を追跡することによって、車両の速度を算出したり、故障等で停止している車両を検出したりなど、道路上の対象エリアの交通状況を把握することが可能である。しかしながら、道路の状況は様々に変化するので、常に検出が容易な条件で目標とする車両を撮影できるとは限らない。
【0008】
例えば、特定の車両の速度が異常に低下したか、あるいは停止したことを装置が検出したとしても、実際には様々な検出誤りの可能性が考えられるので、少なくとも所定時間その検出状態が継続したかどうかを確認しないと信頼性の高い検出結果は得られない。ところが、1つの監視カメラで複数車線を同時に撮影しているような場合には、停止した目標車両と監視カメラとの間を他の車両が次々と通過する可能性がある。この場合、目標車両を連続的な画像として捕捉することができないため、目標車両が確かな停止車両か否かを識別できない。
【0009】
本発明は、他の車両に遮られ目標車両を連続的な画像として捕捉できない場合であっても、停止状態又は低速状態の車両を比較的短い時間内に高い信頼性で認識することが可能な停止低速車両検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の停止低速車両検出装置は、道路上の車両を含む被写体を撮影して得られた撮影画像を入力する画像入力手段と、前記撮影画像中の車両に相当する車両候補領域を検出すると共に、前記車両候補領域の情報に基づいて少なくとも車両の特徴点を認識する車両認識手段と、前記車両認識手段が検出した車両候補領域の情報又は前記特徴点の情報に基づいて、車両の停止状態又は低速状態を検出する車両停止検出手段と、前記車両停止検出手段が車両の停止状態又は低速状態を検出した場合に、停止車両候補を表す情報を保存する停止情報格納手段と、前記車両停止検出手段の検出状態及び前記停止情報格納手段に保持されている情報に基づいて、停止車両又は低速車両を認識し停止低速事象として信号を出力する停止低速事象認識手段と、を備える。
【0011】
この構成により、車両停止検出手段によって停止状態又は低速状態の目標車両が候補として検出された後で、他の車両(妨害車両)の通過などの影響で前記目標車両の映像が間欠的にしか撮影されないような場合であっても、この目標車両に関する情報は停止情報格納手段に保存されるので、妨害車両の通過後に再び前記目標車両の映像が現れると、現在捕捉している目標車両の情報と停止情報格納手段に保存されている過去の目標車両の情報とを利用することにより、停止低速事象認識手段は目標車両が停止状態あるいは低速状態であることを高い信頼性で認識することが可能になる。
【0012】
本発明の第2の停止低速車両検出装置は、上記第1の停止低速車両検出装置であって、前記停止情報格納手段は、過去に車両認識手段によって検出された車両に相当する目標車両が車両認識手段で検出されなくなり、かつ前記目標車両が前記車両停止検出手段により停止状態又は低速状態が検出された場合にのみ、停止車両候補として該当する情報を保存する。
【0013】
この構成により、目標車両が連続的に撮影されている場合や、検出された車両が低速状態である可能性が小さい場合のように、保存が不要な車両の情報は登録しないので、停止情報格納手段の記憶領域をより有効に利用できる。
【0014】
本発明の第3の停止低速車両検出装置は、上記第1又は第2の停止低速車両検出装置であって、前記停止情報格納手段は、前記停止車両候補を表す情報として、少なくとも車両識別番号と、検出された車両の特徴点の位置と、停止状態が検出された時間の長さとを表す情報を保存する。
【0015】
この構成により、停止情報格納手段に保存された過去の車両に関する特徴点の位置と、最新の画像における目標車両の位置とを比較することにより、両者が対応関係にあるか否かを識別することが可能になる。また、停止情報格納手段に保存された時間を利用することにより、停止状態又は低速状態が検出された時間に関する累積値を算出することもできる。
【0016】
本発明の第4の停止低速車両検出装置は、上記第3の停止低速車両検出装置であって、前記停止情報格納手段に車両情報が保存されている第1の車両が前記車両認識手段により検出されなくなった後に、前記車両停止検出手段が新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態を検出した場合、前記車両停止検出手段は、前記停止情報格納手段に保持されている前記第1の車両の特徴点の位置と、前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較し、その距離が所定以下の場合には前記第1の車両と前記第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間を、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算した時間とする。
【0017】
この構成により、停止情報格納手段に保存された過去の車両に関する特徴点の位置と、最新の画像における目標車両の位置との距離を調べ、距離が近い場合に両者の車両を互いに対応付けるので、撮影された画像に目標車両が時間的に間欠的に現れるような場合であっても、同じ目標車両の状況を監視することができる。また、互いに対応付けられた車両の停止時間を加算した結果を用いて停止時間を把握するので、目標車両の映像が繰り返しとぎれるような場合であっても、停止状態又は低速状態が検出された時間に関する累積値を知ることができ、信頼性の高い認識が可能になる。
【0018】
本発明の第5の停止低速車両検出装置は、上記第3の停止低速車両検出装置であって、前記停止情報格納手段は、前記停止車両候補を表す情報として、更に前記車両候補領域の画像情報を保存する。
【0019】
この構成により、停止情報格納手段を参照することにより、過去に検出された目標車両の画像情報を得ることができる。
【0020】
本発明の第6の停止低速車両検出装置は、上記第5の停止低速車両検出装置であって、前記停止情報格納手段に車両情報が保存されている第1の車両が前記車両認識手段により検出されなくなった後に、前記車両停止検出手段が新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態を検出した場合、前記車両停止検出手段は、前記停止情報格納手段に保持されている前記第1の車両の特徴点の位置と前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較すると共に、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と前記第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との類似度を算出し、前記距離が所定以下であって、かつ前記類似度が高い場合には前記第1の車両と前記第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間を、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算した時間とする。
【0021】
この構成により、第1の車両と第2の車両とが一致するか否かを、距離の違いだけでなく画像情報の類似性に基づいて判断するので、第1の車両と第2の車両との対応付けの誤りが生じにくい。
【0022】
本発明の第7の停止低速車両検出装置は、上記第6の停止低速車両検出装置であって、前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との各々の画素の明度差の平均値に基づいて前記類似度を算出する。
【0023】
この構成により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報の各々の画素の明度差の平均値により識別するので、比較的簡単な処理で信頼性の高い結果が得られる。
【0024】
本発明の第8の停止低速車両検出装置は、上記第6の停止低速車両検出装置であって、前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との相関係数に基づいて前記類似度を算出する。
【0025】
この構成により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報間の相関係数により識別するので、信頼性の高い結果が得られる。
【0026】
本発明の第9の停止低速車両検出装置は、上記第6の停止低速車両検出装置であって、前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの各々の画素の微分値の差の平均値に基づいて前記類似度を算出する。
【0027】
この構成により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報の微分データの各々の画素の微分値の差の平均値により識別するので、信頼性の高い結果が得られる。
【0028】
本発明の第10の停止低速車両検出装置は、上記第6の停止低速車両検出装置であって、前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの相関係数に基づいて前記類似度を算出する。
【0029】
この構成により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報の微分データとの相関係数により識別するので、信頼性の高い結果が得られる。
【0030】
本発明の第11の停止低速車両検出装置は、上記第1ないし第10のいずれかの停止低速車両検出装置であって、前記停止情報格納手段に保持されている第1の車両の情報と一致又は類似する車両情報を有する第2の車両が所定時間検出されない場合には、前記停止情報格納手段は、前記第1の車両の情報を破棄する。
【0031】
この構成により、検出すべき目標車両が他の車両(妨害車両)の通過などによって撮影されない状況となった際に映像内から立ち去り、再検出できない場合であっても、時間の経過に伴ってその情報は破棄されるので、停止情報格納手段上の記憶領域を有効に利用でき、利用されない情報に対する無駄な処理の発生も抑制できる。
【0032】
本発明の第1の停止低速車両検出方法は、道路上の車両を含む被写体を撮影して得られた撮影画像を入力する画像入力ステップと、前記撮影画像中の車両に相当する車両候補領域を検出すると共に、前記車両候補領域の情報に基づいて少なくとも車両の特徴点を認識する車両認識ステップと、前記車両認識ステップにおいて検出した車両候補領域の情報又は前記特徴点の情報に基づいて、車両の停止状態又は低速状態を検出する車両停止検出ステップと、前記車両停止検出ステップにおいて車両の停止状態又は低速状態を検出した場合に、停止車両候補を表す情報を保存する停止情報格納ステップと、前記車両停止検出ステップにおける検出状態及び保存されている停止車両候補の情報に基づいて、停止車両又は低速車両を認識し停止低速事象として信号を出力する停止低速事象認識ステップと、を有する
【0033】
この方法により、車両停止検出手段によって停止状態又は低速状態の目標車両が候補として検出された後で、他の車両(妨害車両)の通過などの影響で前記目標車両の映像が間欠的にしか撮影されないような場合であっても、この目標車両に関する情報は停止情報格納手段に保存されるので、妨害車両の通過後に再び前記目標車両の映像が現れると、現在捕捉している目標車両の情報と停止情報格納手段に保存されている過去の目標車両の情報とを利用することにより、停止低速事象認識手段は目標車両が停止状態あるいは低速状態であることを高い信頼性で認識することが可能になる。
【0034】
本発明の第2の停止低速車両検出方法は、上記第1の停止低速車両検出方法であって、前記停止情報格納ステップでは、過去に車両認識手順によって検出された車両に相当する目標車両が車両認識手順で検出されなくなり、かつ前記目標車両が前記車両停止検出ステップにおいて停止状態又は低速状態が検出された場合にのみ、停止車両候補として該当する情報を保存する。
【0035】
この方法により、目標車両が連続的に撮影されている場合や、検出された車両が低速状態である可能性が小さい場合のように、保存が不要な車両の情報は登録しないので、停止情報格納手段の記憶領域をより有効に利用できる。
【0036】
本発明の第3の停止低速車両検出方法は、上記第1又は第2の停止低速車両検出方法であって、前記停止情報格納ステップでは、前記停止車両候補を表す情報として、少なくとも車両識別番号と、検出された車両の特徴点の位置と、停止状態が検出された時間の長さとを表す情報を保存する。
【0037】
この方法により、停止情報格納手段に保存された過去の車両に関する特徴点の位置と、最新の画像における目標車両の位置とを比較することにより、両者が対応関係にあるか否かを識別することが可能になる。また、停止情報格納手段に保存された時間を利用することにより、停止状態又は低速状態が検出された時間に関する累積値を算出することもできる。
【0038】
本発明の第4の停止低速車両検出方法は、上記第3の停止低速車両検出方法であって、前記停止情報格納ステップにおいて車両情報が保存された第1の車両が車両検出されなくなった後に、新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態が検出された場合、前記保存されている第1の車両の特徴点の位置と、前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較するステップと、前記比較した距離が所定以下の場合には前記第1の車両と第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間として、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算するステップと、を更に有する。
【0039】
この方法により、停止情報格納手段に保存された過去の車両に関する特徴点の位置と、最新の画像における目標車両の位置との距離を調べ、距離が近い場合に両者の車両を互いに対応付けるので、撮影された画像に目標車両が時間的に間欠的に現れるような場合であっても、同じ目標車両の状況を監視することができる。また、互いに対応付けられた車両の停止時間を加算した結果を用いて停止時間を把握するので、目標車両の映像が繰り返しとぎれるような場合であっても、停止状態又は低速状態が検出された時間に関する累積値を知ることができ、信頼性の高い認識が可能になる。
【0040】
本発明の第5の停止低速車両検出方法は、上記第3の停止低速車両検出方法であって、前記停止情報格納ステップでは、前記停止車両候補を表す情報として、更に前記車両候補領域の画像情報を保存する。
【0041】
この方法により、停止情報格納手段を参照することにより、過去に検出された目標車両の画像情報を得ることができる。
【0042】
本発明の第6の停止低速車両検出方法は、上記第5の停止低速車両検出方法であって、前記停止情報格納ステップにおいて車両情報が保存された第1の車両が車両検出されなくなった後に、新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態が検出された場合、前記保存されている第1の車両の特徴点の位置と、前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較するステップと、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と前記第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との類似度を算出する類似度算出ステップと、前記比較した距離が所定以下であって、かつ前記類似度が高い場合、前記第1の車両と前記第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間として、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算するステップと、を更に有する。
【0043】
この方法により、第1の車両と第2の車両とが一致するか否かを、距離の違いだけでなく画像情報の類似性に基づいて判断するので、第1の車両と第2の車両との対応付けの誤りが生じにくい。
【0044】
本発明の第7の停止低速車両検出方法は、上記第6の停止低速車両検出方法であって、前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との各々の画素の明度差の平均値に基づいて前記類似度を算出する。
【0045】
この方法により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報の各々の画素の明度差の平均値により識別するので、比較的簡単な処理で信頼性の高い結果が得られる。
【0046】
本発明の第8の停止低速車両検出方法は、上記第6の停止低速車両検出方法であって、前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との相関係数に基づいて前記類似度を算出する。
【0047】
この方法により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報間の相関係数により識別するので、信頼性の高い結果が得られる。
【0048】
本発明の第9の停止低速車両検出方法は、上記第6の停止低速車両検出方法であって、前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの各々の画素の微分値の差の平均値に基づいて前記類似度を算出する。
【0049】
この方法により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報の微分データの各々の画素の微分値の差の平均値により識別するので、信頼性の高い結果が得られる。
【0050】
本発明の第10の停止低速車両検出方法は、上記第6の停止低速車両検出方法であって、前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの相関係数に基づいて前記類似度を算出する。
【0051】
この方法により、第1の車両と第2の車両との画像情報の類似性を画像情報の微分データとの相関係数により識別するので、信頼性の高い結果が得られる。
【0052】
本発明の第11の停止低速車両検出方法は、上記第1ないし第10のいずれかの停止低速車両検出方法であって、前記停止情報格納手順において保存された第1の車両の情報と一致又は類似する車両情報を有する第2の車両が所定時間検出されない場合には、保存されている前記第1の車両の情報を破棄するステップを更に有する。
【0053】
この方法により、検出すべき目標車両が他の車両(妨害車両)の通過などによって撮影されない状況となった際に映像内から立ち去り、再検出できない場合であっても、時間の経過に伴ってその情報は破棄されるので、停止情報格納手段上の記憶領域を有効に利用でき、利用されない情報に対する無駄な処理の発生も抑制できる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、他の車両に遮られ目標車両を連続的な画像として捕捉できない場合であっても、停止状態又は低速状態の車両を高い信頼性で認識することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
本発明の実施形態について、図1〜図7を参照しながら以下に説明する。
【0056】
例えば、高速道路のように信号機が存在しない道路においては、通常は全ての車両が所定以上の速度で走行を続けることになる。このような環境では、道路上で停止した車両、あるいは速度が異常に低下した車両は故障車であったり事故の発生を意味する。したがって、このような道路を監視するシステムにおいては、停止した車両や異常に低下した車両をすばやくかつ誤動作無く認識できるのが望ましい。
【0057】
そこで、本実施形態では図1に示すように構成した監視システムに本発明を適用する場合を想定している。図1は、本発明の実施形態の監視システムの主要部の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、道路11上を走行する車両を監視対象の被写体として撮影するために、道路11側方の所定位置に固定した複数の監視カメラ12を設けてある。
【0058】
また、各監視カメラ12は車両13の進行方向に向けて配置してあり、各車両13を後方から撮影するようになっている。また、実際に監視カメラ12を設置する場所としては、例えばトンネル内などが想定される。車両を後方から撮影することで、車両のヘッドライトによるハレーション、スミア等を防止することができる。
【0059】
図1に示す監視システムは、画像処理部14及び事象判定部15を備えている。画像処理部14は、各監視カメラ12の撮影により得られた画像を監視画像として連続的にあるいは定期的に繰り返し入力し、必要な画像処理を行う。具体的には、車両の検出、車両速度の検出、落下物の検出などを行う。すなわち、車両後方から撮影された画像を基に車両を抽出し、車幅、車長、車尾位置を検出する。そして、検出した車両の追跡等を行うと共に、位置の変化に基づいて車速を検出し、低速車両や停止車両の候補を検出する。事象判定部15は、画像処理部14の処理結果に基づき、例えば渋滞、あるいは車両故障や事故のような突発事象の検出に関する対象道路上の事象判定を行う。
【0060】
次に、画像処理部14及び事象判定部15における処理の概略を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る画像処理部及び事象判定部の処理に関する具体例を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS1では、画像処理部14はまず初期データとして、背景画像データ及び背景微分画像データを作成する。ここで、電源投入後またはリセット後に、例えば0.1秒ごとに監視カメラ12から取り込んだ撮影画像データの300回分(30秒分の画像)をフレーム間で平均し、背景画像とする。また、背景画像データの微分処理を行って背景微分画像を作成する。さらに、夜と昼とで道路上の照明の明るさ等が異なるため、背景画像に基づいて夜モードまたは昼モードの判定を行い、現在時点に対応するモードに設定する。
【0062】
次のステップS2では、監視カメラ12から取り込んだ撮影画像データから画像解析に使用する画像データを作成する。具体的には、監視カメラ12から入力されるNTSC信号の映像信号を、垂直方向240ライン、水平方向320画素、輝度を256階調とし、フレームごとにAD変換(アナログ−デジタル変換)して320画素×240画素の画像データを作成する。このとき、偶数フィールドのみをAD変換することで、1/30秒ごとに1枚の画像データを作成する。そして、以降の画像解析においては、現在画像、ΔT前画像、2ΔT前画像(ここではΔT=100msとする)の3つの画像データを使用する。
【0063】
ステップS3では、作成した前述の画像データに対して、特徴抽出演算、二値化処理等の画像前処理を行い、車両の特徴を抽出した特徴画像を作成する。特徴抽出演算においては、背景差分方式、微分背景差分方式、フレーム差分方式、微分フレーム差分方式などの特徴抽出方式を用いてそれぞれ特徴抽出を行って差分画像を作成し、特徴画像を作成する。なおここでは、後処理の処理速度を速めるために、例えば特徴抽出等の処理を行って特徴画像を作成した後、この320画素×240画素の画像データを80画素×60画素に圧縮して特徴抽出圧縮画像を作成するようにする。また、画像解析用に作成した画像データから320画素×240画素のライト抽出用画像を作成する。
【0064】
次のステップS4では、前述の特徴抽出圧縮画像及びライト抽出用画像を用いて画像解析を行い、車両等を抽出する。このとき、特徴抽出圧縮画像を用いて車体解析を行い、車尾、車長、車幅を決定する。また、ライト抽出用画像を用いてライト(尾灯の光像)解析を行い、車両の尾灯を検出して車尾位置を決定する。これらの車体解析による例えば矩形の車体検出(車両候補領域の検出)とライト解析による車尾検出の結果から車両位置を決定する。さらに、特徴抽出圧縮画像を用いて落下物解析を行い、落下物の位置、縦横寸法を決定する。
【0065】
その後、検出した車両の位置データを走行軌跡データに追加または新規作成し、本処理のサイクルごとに検出された車両の位置データを走行軌跡データに追加していくことで、車両追跡を行う(ステップS5)。また、検出した個々の車両の移動速度を算出する。
【0066】
また、前記車両追跡とは異なる方法で撮影画像における車群の速度を算出する(ステップS6)。ここでは、画像全体の輝度値の移動量から車両全体を一つの塊の車群として捉え、この車群の移動速度を算出する。この車群速度は渋滞時の渋滞判定等に用いることができる。
【0067】
次に、事象判定部15は、前述の車両追跡、車群速度算出、落下物検出等の結果から、「停止」「低速」「渋滞」「落下物」などの事象が発生したかどうかを判定する(ステップS7)。
【0068】
そして、画像処理部14は、次の処理のサイクルにおける画像処理のために、背景画像データ及び背景微分画像データを最新の背景画像に更新する(ステップS8)。また、新たな背景画像に基づいて夜モードまたは昼モードの判定を行い、現在時点に対応するモードに更新する。その後、ステップS2に戻り、ステップS2〜S8の処理サイクルを所定間隔(ここでは100ms)ごとに繰り返す。
【0069】
次に、本発明の実施形態の特徴的要素である停止低速車両の検出処理について詳しく説明する。図3は、本発明の実施形態に係る画像処理部及び事象判定部において車両認識及び停止低速車両検出を行う機能構成を示すブロック図である。
【0070】
画像処理部14は、画像入力部21、背景画像作成部22、特徴画像作成部23、特徴コード作成部24、画像格納部25、特徴コード格納部29及び車両認識部30を備えている。また、事象判定部15は、停止保持情報格納部33及び停止低速事象認識部34を備えている。
【0071】
画像入力部21は、監視カメラ12の撮影により得られた画像データを入力する。背景画像作成部22は入力された画像データから背景画像を作成する。特徴画像作成部23は、入力画像及び背景画像を用いて背景差分、微分背景差分、フレーム差分、微分フレーム差分等の処理を行って特徴画像を作成する。特徴コード作成部24は、特徴画像を基に車両候補領域を算出するための各画素の特徴を示す特徴コードを作成する。画像格納部25は画像データを格納し、特徴コード格納部29は特徴コードを格納する。車両認識部30は車両認識の処理を行う。
【0072】
画像格納部25は、現画像を格納する現画像格納部26と、背景画像を格納する背景画像格納部27と特徴画像を格納する特徴画像格納部28とを備えている。また、車両認識部30は車頭車尾検出部31及び車両追跡部32を備えている。車頭車尾検出部31は、現画像及び算出した特徴コードに基づいて車両の特徴点である車頭及び車尾の位置を検出する。車両追跡部32は、車頭車尾検出部31の検出した車頭及び車尾を用いてこの車両を追跡する。すなわち、追跡対象の車両がどのように移動しているかを把握し、位置の変化から速度なども検出する。
【0073】
なお、画像格納部25、特徴コード格納部29及び停止保持情報格納部33についてはメモリ等で構成すればよく、背景画像作成部22、特徴画像作成部23、特徴コード作成部24、車両認識部30及び停止低速事象認識部34については、各処理を行うプロセッサ等で構成すればよい。
【0074】
現画像格納部26は、画像入力部21より入力された現在画像データを格納する。入力される画像データには、256階調の濃淡画像などを用いる。背景画像作成部22は、過去の現在画像データを用いて背景のみの背景画像を作成し、背景画像格納部27に格納する。特徴画像作成部23は、現画像格納部26に格納された現在画像データと背景画像格納部27に格納された背景画像データとを用いて、背景差分、微分背景差分、フレーム差分、微分フレーム差分等の処理を行い、撮影画像中の車両を検出するための特徴画像を作成し、特徴画像格納部28に格納する。
【0075】
特徴コード作成部24は、特徴画像を基に車両候補領域を算出するための各画素の特徴を示す特徴コードを作成し、特徴コード格納部29に格納する。特徴コードは、特徴画像において各画素ごとに0、1、2、・・・、9などのコードを割り当てたものである。例えば、背景と同一で差分処理によってデータ無しとなった部分は0、ノイズ等と思われる捨てデータは1、車両として有効な有効データのうち、車幅より小さい部分は2、車幅より大きい部分は3、車両候補となる部分は6、車体として認識される部分は8、車尾として認識される部分は9などとして、車両の位置を判別可能にしたデータである。
【0076】
車頭車尾検出部31は、現画像格納部26に格納された現在画像データと特徴コード格納部29に格納された特徴コードとを用いて、車両候補となる例えば矩形状の領域を算出し、車頭及び車尾を認識する。通常は車両が走行しているので、各監視カメラ12が撮影した画像の変化に伴って車頭車尾検出部31が認識する車頭及び車尾の位置は時系列で変化することになる。したがって、車両追跡部32は、時系列で変化する各車両の車頭及び車尾の位置及びその変化を把握すると共に、検出車両の位置をトレースして走行軌跡を算出したり、検出車両の移動速度を算出する。なお、車頭車尾検出部31は、道路を撮影する方向に応じて、車頭及び車尾のうち、いずれか少なくとも一方を検出する構成でよい。
【0077】
ところで、停止車両、すなわち速度が異常に低下した車両や完全に停止した車両を特別な事象として認識することは非常に重要である。しかしながら、例えば映像の乱れ、認識の誤り、対象車両の一時的な急減速などを停止車両の発生として誤認識してしまうとシステムの信頼上、大きな問題が生じる。
【0078】
停止車両や低速車両の検出に関する信頼性を高めるには、同じ検出状態が長く継続しているかどうかを識別するのが有効である。例えば、低速状態が5秒間継続して検出されているような場合には、映像の乱れ、認識の誤り、対象車両の一時的な急減速などの可能性は考えられないので、最終的に低速車両あるいは停止車両として認識しても良い。
【0079】
ところが、同じ状態が所定時間継続していることを確認してから最終判断を行うように処理すると、実際の使用環境においては検出すべき停止車両をいつまでたっても認識できない可能性がある。
【0080】
図7は、監視カメラで撮影される被写体の具体例を示す正面図である。図7に示す例では、同じ監視カメラで2つの車線111、112をそれぞれ走行する車両を含む映像を少し時間をずらして撮影した場合を想定しており、図7(a)の状態から数秒後に図7(b)の状態に変化し更に数秒後に図7(c)の状態に変化した場合を表している。
【0081】
この場合、図7(a)の画像中で車線112上で停止した車両が矩形の車両候補領域101に現れているが、少し時間がたつと図7(b)に示すように車線111を大型の車両が走行しているため、車線112上に停止した目標車両の像は車両候補領域101から遮られてしまう。
【0082】
したがって、図7(a)の画像に基づいて停止車両の候補を検出した場合でも、5秒間が経過する前に図7(b)に示す画像に変化するため、候補車両を見失うことになりこの車両が本当に停止しているのかどうかを最終的に判断できない。図7(b)に示す画像中の妨害車両102が通り過ぎれば図7(c)の画像が得られるため再び車両候補領域101で停止車両を捕捉することができるが、この道路を頻繁に車両が走行しているような状態では、短い周期で再び図7(b)に示す状態になるため、5秒間が経過する前に再び候補車両を見失うことになる。したがって、いつまでたっても停止車両を認識できないか、あるいは停止車両を認識するまでに長い時間がかかってしまう。
【0083】
そこで、本実施形態では過去に検出され見失ってしまった停止状態又は低速状態の候補車両に関する情報を停止低速事象認識部34の制御により停止保持情報格納部33に一時的に保存しておく。また、停止低速事象認識部34は停止状態又は低速状態の候補車両が停止車両又は低速車両であるかどうかを最終判断する際に、停止保持情報格納部33に保存されている情報を利用する。
【0084】
以下に、停止保持情報格納部33及び停止低速事象認識部34における停止低速車両検出処理について詳細に説明する。ここでは、第1の実施形態と第2の実施形態の2つの処理例を示す。
【0085】
(第1の実施形態)
図4〜図6は、具体的な停止低速事象認識部34の動作を示す図であり、図4、図5及び図6に示す動作は並列的に処理される。実際には、例えば、図4〜図6の順にそれぞれの処理を定期的に繰り返し実行すればよい。
【0086】
図4は、第1の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される第1の処理を示すフローチャートである。停止低速事象認識部34は、車両追跡部32における追跡が完了したことをステップS11で検出すると次のステップS12に進む。ステップS12では、車両追跡部32の追跡処理時に、例えば図7に示すような状況の変化によって見失った車両が存在するか否かを識別する。
【0087】
見失った候補車両が存在する場合には、ステップS12からS13に進み、該当する車両について停止時間が計測されていたか否かを識別する。この停止時間は、該当する車両に関する車速が所定以下であった場合に計測されるものであり、後述する図5のステップS27で計測される。停止時間が計測されていた場合には、ステップS13からS14に進む。
【0088】
ステップS14では、該当する車両(見失った停止車両候補)の情報を停止保持情報として停止保持情報格納部33に保存する。この停止保持情報には、複数の車両を区別するための車両識別番号と、該当する車両の車尾位置と、該当する車両の停止時間とを表す情報が含まれている。
【0089】
すなわち、車両追跡時に消滅し、かつその車両が所定速度以下であった場合に、その車両の情報を停止保持情報格納部33に格納する。
【0090】
図5は、第1の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される第2の処理を示すフローチャートである。停止低速事象認識部34は、車両追跡部32における追跡が完了したことをステップS21で検出すると次のステップS22に進む。ステップS22では、車両追跡部32の追跡により見つかった候補車両の車速を予め定めた閾値である車両停止判定速度Vthと比較して、候補車両がほぼ停止状態か否かを識別する。(車速<Vth)の条件を満たす場合には停止車両の候補と見なし、ステップS22からS23に進む。ステップS22は検出した全ての車両に対して実施され、車両が検出されなかった場合は、そのまま終了する。
【0091】
ステップS23では、前述の停止保持情報が停止保持情報格納部33上に存在するか否かを調べ、停止保持情報が存在する場合はステップS24に進み、存在しなければステップS27に進む。
【0092】
ステップS24では、過去に停止車両の候補として検出され停止保持情報として停止保持情報格納部33に保持されている車両と、最新の追跡によって検出された停止車両の候補とが同じ車両か否かを識別する。この例では、各車両の車尾位置間の距離を予め定めた閾値と比較することにより、両者が同じ車両か否かを識別している。すなわち、距離が比較的近い場合には両者が同じ車両であると見なしステップS24からS25に進み、距離が離れている場合にはステップS24からS27に進む。
【0093】
ステップS25では、最新の追跡によって検出された停止車両の候補と停止保持情報格納部33上の停止保持情報とを同じ車両のものとして対応付ける。具体的には、現在検出されている車両の車両識別番号として、登録車両識別番号(停止保持情報に含まれている車両識別番号)を割り当て、現在検出されている車両の停止時間として、それまでの停止時間に登録停止時間(停止保持情報に含まれている停止時間)を加算する。
【0094】
ステップS26では、ステップS25で使用した停止保持情報を停止保持情報格納部33から削除し廃棄する。
【0095】
ステップS27では、現在監視中の停止車両の候補に関する停止時間の計測を開始する。なお、ステップS26からS27に進んだ場合には、停止時間の初期値として以前に計測された時間値が最初から存在することになる。
【0096】
ステップS28では、ステップS27で計測された停止時間が停止事象として予め定めた条件を満たすか否かを識別する。この例では、ステップS27で計測した停止時間(途中で計測を中断した場合は累積値)を閾値(例えば5秒)と比較し、停止時間が閾値を超える場合に停止事象の発生とみなす。この場合、次のステップS29で「停止事象の発生」を表す特別な情報を停止低速事象認識部34が外部の装置に出力する。
【0097】
図6は、第1の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される第3の処理を示すフローチャートである。停止低速事象認識部34は、ステップS31で停止保持情報格納部33に停止保持情報が保持されているか否かを識別する。有効な停止保持情報が保持されている場合にはステップS31からS32に進む。ステップS32では、停止保持時間カウンタChの値をカウントアップする。この停止保持時間カウンタChは、停止保持情報格納部33に同じ停止保持情報が保持されている時間の長さを計測するために利用している。
【0098】
次のステップS33では、停止保持時間カウンタChの値を予め定めた閾値、すなわち停止保持時間上限値Tと比較する。(T<Ch)の条件を満たす場合には、ステップS33からS34に進む。ステップS34では、停止保持情報格納部33上の停止保持情報を廃棄する。この場合、停止保持時間カウンタChの値はクリアされる。
【0099】
すなわち、検出すべき停止車両を候補として検出した後で、例えば図7(b)に示すような変化が生じ一時的に候補の車両を見失ったような場合には、長い時間を経過する前に図7(c)に示すような状態に変化し、再び候補の車両が検出される。したがって、前述の図5のステップS25で該当する停止保持情報格納部33上の停止保持情報が参照され、ステップS26で停止保持情報は破棄される。すなわち、有効な停止保持情報は長時間にわたって停止保持情報格納部33に保持されることはないので、図6のステップS34を実行することにより、無効な停止保持情報を排除することができる。
【0100】
このような本発明の第1の実施形態によれば、他の車両(妨害車両)の通過などの影響で目標となる停止低速車両の映像が間欠的にしか撮影されないような場合であっても、高い信頼性で認識することが可能になる。
【0101】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、図8を参照しながら説明する。図8は第2の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される処理を示すフローチャートである。
【0102】
第2の実施形態の動作は、第1の実施形態の変形例である。第1の実施形態と異なる処理について以下に説明する。なお、図8において図5と対応するステップは同一の番号を付す。
【0103】
本実施形態では、停止保持情報格納部33上の停止保持情報に相当する車両と現在追跡中の車両とが対応関係にあるか否かを識別する際に、車両位置間の距離だけでなく、注目領域の画像の類似度も用いられるものである。そのため、本実施形態では、停止低速事象認識部34は、前述のステップS14(図4参照)において、停止車両の候補として注目している画像中の矩形領域(例えば図7(a)の車両候補領域101)の画像データに相当する情報も停止保持情報格納部33に保存する。
【0104】
図8のステップS24において、停止保持情報が停止保持情報格納部33上に存在し、この停止保持情報における車両の位置と、最新の追跡によって検出された停止車両の候補との距離が比較的近い場合には、図8のステップS24からS41に進む。
【0105】
ステップS41では、停止保持情報格納部33に保持されている停止保持情報に含まれる矩形領域の画像情報と、最新の画像において現在注目している車両に相当する矩形領域の画像情報との類似度を算出する。そして、ステップS42では算出された類似度を予め定めた閾値と比較することにより、2つの画像が一致するか否かを識別する。2つの画像が一致する場合にはステップS42からS25に進み、第1の実施形態の場合と同様の処理を実行する。
【0106】
なお、ステップS41における類似度の算出処理については、例えば次に示すような様々な方法が考えられる。
【0107】
(1)矩形領域の全体について各々の画素毎に明度差を算出し、その矩形領域全体における平均値を類似度として算出する。2つの矩形領域の大きさが異なる場合は、小さい領域を大きい領域内で例えば左上から右下に走査し、算出された明度差の平均値の最小値を類似度とする。
(2)2つの画像情報の間の相関係数を算出し、この相関係数を類似度として利用する。2つの矩形領域の大きさが異なる場合は、(1)と同様に走査して、相関係数の最大値を類似度とする。
(3)各画素情報の微分データについて各々の画素毎に微分値の差を算出し、その矩形領域全体における平均値を類似度として算出する。
(4)各画像情報の微分データについて画像間の相関係数を算出し、この相関係数を類似度として利用する。
【0108】
このような本発明の第2の実施形態によれば、停止情報格納部に保存されている車両と最新の画像における目標車両とが同一車両か否かを、距離の違いだけでなく、画像情報の類似性に基づいて判断するので、停止低速車両を高い信頼性で認識することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、他の車両に遮られ目標車両を連続的な画像として捕捉できない場合であっても、停止状態又は低速状態の車両を高い信頼性で認識することが可能な効果を有し、停止低速車両検出装置及び方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態の監視システムの主要部の構成例を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係る画像処理部及び事象判定部の処理に関する具体例を示すフローチャート
【図3】本発明の実施形態に係る画像処理部及び事象判定部において車両認識及び停止低速車両検出を行う機能構成を示すブロック図
【図4】第1の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される第1の処理を示すフローチャート
【図5】第1の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される第2の処理を示すフローチャート
【図6】第1の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される第3の処理を示すフローチャート
【図7】監視カメラで撮影される被写体の具体例を示す正面図
【図8】第2の実施形態に係る停止低速車両検出装置の主要動作のために実行される処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0111】
11 道路
12 監視カメラ
13 車両
14 画像処理部
15 事象判定部
21 画像入力部
22 背景画像作成部
23 特徴画像作成部
24 特徴コード作成部
25 画像格納部
26 現画像格納部
27 背景画像格納部
28 特徴画像格納部
29 特徴コード格納部
30 車両認識部
31 車頭車尾検出部
32 車両追跡部
33 停止保持情報格納部
34 停止低速事象認識部
101 車両候補領域
102 妨害車両
111、112 車線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の車両を含む被写体を撮影して得られた撮影画像を入力する画像入力手段と、
前記撮影画像中の車両に相当する車両候補領域を検出すると共に、前記車両候補領域の情報に基づいて少なくとも車両の特徴点を認識する車両認識手段と、
前記車両認識手段が検出した車両候補領域の情報又は前記特徴点の情報に基づいて、車両の停止状態又は低速状態を検出する車両停止検出手段と、
前記車両停止検出手段が車両の停止状態又は低速状態を検出した場合に、停止車両候補を表す情報を保存する停止情報格納手段と、
前記車両停止検出手段の検出状態及び前記停止情報格納手段に保持されている情報に基づいて、停止車両又は低速車両を認識し停止低速事象として信号を出力する停止低速事象認識手段と、
を備える停止低速車両検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記停止情報格納手段は、過去に車両認識手段によって検出された車両に相当する目標車両が車両認識手段で検出されなくなり、かつ前記目標車両が前記車両停止検出手段により停止状態又は低速状態が検出された場合にのみ、停止車両候補として該当する情報を保存する停止低速車両検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記停止情報格納手段は、前記停止車両候補を表す情報として、少なくとも車両識別番号と、検出された車両の特徴点の位置と、停止状態が検出された時間の長さとを表す情報を保存する停止低速車両検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記停止情報格納手段に車両情報が保存されている第1の車両が前記車両認識手段により検出されなくなった後に、前記車両停止検出手段が新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態を検出した場合、前記車両停止検出手段は、前記停止情報格納手段に保持されている前記第1の車両の特徴点の位置と、前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較し、その距離が所定以下の場合には前記第1の車両と前記第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間を、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算した時間とする停止低速車両検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記停止情報格納手段は、前記停止車両候補を表す情報として、更に前記車両候補領域の画像情報を保存する停止低速車両検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記停止情報格納手段に車両情報が保存されている第1の車両が前記車両認識手段により検出されなくなった後に、前記車両停止検出手段が新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態を検出した場合、前記車両停止検出手段は、前記停止情報格納手段に保持されている前記第1の車両の特徴点の位置と前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較すると共に、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と前記第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との類似度を算出し、前記距離が所定以下であって、かつ前記類似度が高い場合には前記第1の車両と前記第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間を、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算した時間とする停止低速車両検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との各々の画素の明度差の平均値に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出装置。
【請求項8】
請求項6に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との相関係数に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出装置。
【請求項9】
請求項6に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの各々の画素の微分値の差の平均値に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出装置。
【請求項10】
請求項6に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記車両停止検出手段は、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの相関係数に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の停止低速車両検出装置であって、
前記停止情報格納手段に保持されている第1の車両の情報と一致又は類似する車両情報を有する第2の車両が所定時間検出されない場合には、前記停止情報格納手段は、前記第1の車両の情報を破棄する停止低速車両検出装置。
【請求項12】
道路上の車両を含む被写体を撮影して得られた撮影画像を入力する画像入力ステップと、
前記撮影画像中の車両に相当する車両候補領域を検出すると共に、前記車両候補領域の情報に基づいて少なくとも車両の特徴点を認識する車両認識ステップと、
前記車両認識ステップにおいて検出した車両候補領域の情報又は前記特徴点の情報に基づいて、車両の停止状態又は低速状態を検出する車両停止検出ステップと、
前記車両停止検出ステップにおいて車両の停止状態又は低速状態を検出した場合に、停止車両候補を表す情報を保存する停止情報格納ステップと、
前記車両停止検出ステップにおける検出状態及び保存されている停止車両候補の情報に基づいて、停止車両又は低速車両を認識し停止低速事象として信号を出力する停止低速事象認識ステップと、
を有する停止低速車両検出方法。
【請求項13】
請求項12に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記停止情報格納ステップでは、過去に車両認識手順によって検出された車両に相当する目標車両が車両認識手順で検出されなくなり、かつ前記目標車両が前記車両停止検出ステップにおいて停止状態又は低速状態が検出された場合にのみ、停止車両候補として該当する情報を保存する停止低速車両検出方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記停止情報格納ステップでは、前記停止車両候補を表す情報として、少なくとも車両識別番号と、検出された車両の特徴点の位置と、停止状態が検出された時間の長さとを表す情報を保存する停止低速車両検出方法。
【請求項15】
請求項14に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記停止情報格納ステップにおいて車両情報が保存された第1の車両が車両検出されなくなった後に、新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態が検出された場合、前記保存されている第1の車両の特徴点の位置と、前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較するステップと、
前記比較した距離が所定以下の場合には前記第1の車両と第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間として、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算するステップと、
を更に有する停止低速車両検出方法。
【請求項16】
請求項14に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記停止情報格納ステップでは、前記停止車両候補を表す情報として、更に前記車両候補領域の画像情報を保存する停止低速車両検出方法。
【請求項17】
請求項16に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記停止情報格納ステップにおいて車両情報が保存された第1の車両が車両検出されなくなった後に、新たな停止車両候補として第2の車両の停止状態又は低速状態が検出された場合、前記保存されている第1の車両の特徴点の位置と、前記第2の車両の特徴点の位置との距離を比較するステップと、
前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と前記第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との類似度を算出する類似度算出ステップと、
前記比較した距離が所定以下であって、かつ前記類似度が高い場合、前記第1の車両と前記第2の車両とを同一と見なし、その車両の停止時間として、前記第1の車両に関する停止時間と前記第2の車両に関する停止時間とを加算するステップと、
を更に有する停止低速車両検出方法。
【請求項18】
請求項17に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との各々の画素の明度差の平均値に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出方法。
【請求項19】
請求項17に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報と第2の車両に関する車両候補領域の画像情報との相関係数に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出方法。
【請求項20】
請求項17に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの各々の画素の微分値の差の平均値に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出方法。
【請求項21】
請求項17に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記類似度算出ステップでは、前記第1の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データと第2の車両に関する車両候補領域の画像情報の微分データとの相関係数に基づいて前記類似度を算出する停止低速車両検出方法。
【請求項22】
請求項11ないし21のいずれか一項に記載の停止低速車両検出方法であって、
前記停止情報格納手順において保存された第1の車両の情報と一致又は類似する車両情報を有する第2の車両が所定時間検出されない場合には、保存されている前記第1の車両の情報を破棄するステップを更に有する停止低速車両検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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