説明

健康状態をモニタリングするため、および経皮にて薬剤を送達するためのシステムおよび方法

【課題】経皮サンプリングシステムを提供すること。
【解決手段】
本発明は、被験者の皮膚より経皮的に採取した少なくとも1つの分析物を回収し、送達するための、少なくとも1つの試料採取器、前記少なくとも1つの分析物を同定し定量するための、少なくとも1つの検出器システム、および(i)前記少なくとも1つの検出器からの入力データを受領し、保存する、(ii)被験者から得た他のデータと前記入力データを関連づける、(iii)出力情報を表示する、(iv)出力情報を他のシステムに送信する、および(v)前記少なくとも1つの試料採取器および少なくとも1つの検出器の操作を制御するための少なくとも1つの論理モジュールを含む経皮サンプリングのためのシステムおよび方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連特許の相互参照)
本明細書は、2000年6月1日に申請した、仮出願番号第60/208,327号、表題「経皮健康モニタリングと薬物送達システム(TRANSDERMAL HEALTH MONITORING AND DRUG DELIVERY SYSTEM)」の優先権を請求し、そのすべてを参考文献として組み込む。
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、全般的に携帯式の生物医学的モニタリングに関する。さらに詳しくは本発明は、非侵襲的および低侵襲的分子モニタリング、および任意に、遠隔測定法を介した保護フィードバック測定および遠隔モニタリングの実施に関する。
(関連技術の説明)
体液の非侵襲的経皮サンプリングは、長い間医学研究における目標であった。血流内の重要な分析物の濃度を含む価値のある診断情報を、皮膚の損傷なしに得ることができるという見解が、多くの研究領域の進展を促進してきた。そのような技術により、ニードルまたは外来患者介護を用いない、長期の便利な健康状態モニタリングおよびスクリーニングが現実のものとなりつつある。糖尿病は、採血することなく血液グルコースをモニタリングすることができ、細菌、真菌またはウイルス感染のマーカーに関してモニタリング可能であり、毒素への環境的曝露は非侵襲的に検査できる。
【0002】
人の生命に対して有害であり、毒性であると考えられる環境化学物質に対する曝露レベルを検出、測定および評価するために、生体マーカーが効果的に利用されてきた。生体マーカーに感受性があるため、これらのマーカーは環境中の微妙な変化に対する警告指標として使用可能である。これらマーカーの特異性は、化学薬剤の特性を確立するため、曝露レベルを測定するため、および作用の好適な経路を確定するために使用することができる。環境により誘発された疾患はある程度まですべての人に影響を与えるが、個人の感受性により、1つの群に他を上回る程度の毒性反応を引き起こす傾向を生ずる。1996年に86,912件の農薬曝露が、アメリカ毒物センター協会(American Association of Poison Centers)に報告されており、うち26件は致死的なものであることは考慮する価値がある。特に重要な身体機能がそのような曝露に耐え、処理し、扱うことができるレベルにまで成熟していないので、胎児時期から青年期までの発達段階における者が、そのような環境ストレスにとりわけ感受性である。子供の環境上の健康を測定する生体マーカーの使用により、毒素の早期検出および身体状態における障害の予防、ならびに毒性環境に曝露された子供に対する治療方法の決定ができるようになるであろう。
【0003】
小児科学分野でとりわけ重要なのは、低侵襲的な健康評価ツールを使用することである。
【0004】
多くの経皮サンプリング技術が報告されているが、現在までそのすべてが複数の重大な欠点を抱えている。従来の技術は、受動的で、汗に依存しない経皮分析物の採取および検出技術を除いては、著しく侵襲的(および有害の可能性あり)であり、汗または間質液に依存するという欠点がある。
【0005】
経皮サンプリングに対する1つのアプローチでは、汗の採取を用いてきた。たとえば、M.Philips and M.H.McAloon. Alcohol Clin.Exp.Res.4391(1980)は、閉塞性接着カバーで覆った塩浸漬のセルロースパッドである、吸着パッドを開示している。しかしながら、経皮サンプリングのそのような方法は、発汗率に依存し、遠心による汗の抽出が必要であり、外部化学分析を必要とする。S.Balabanova and E.Schneider.Beitr.Gerichtl.Med 48,45(1990)は、ピロカルピン(Pilocarpine)誘導による汗分泌を開示しているが、このシステムはピロカルピンのイオントフォレーシス誘導注入および分析物希釈を必要とする。Schoendorfer et al.に付与された米国特許第5,203,327号は、水蒸気浸透性の閉塞性接着カバーで覆った吸着パッドを開示しているが、本システムは発汗率に依存し、化学的抽出および外部化学分析を必要とする。F.P.Smith and D.A.Kidwell, Forensic Sci. Int.83,179(1996)は綿製の汗ワイプを開示しているが、本システムは発汗量に依存し、抽出および外部化学分析を必要とする。G.L.Henderson and B.K.Wilson.,Res.Commun.Chem.Pathol.Pharmacol.5,1(1973)は、運動後の液体汗の採取を開示しているが、このシステムは活発な運動を必要とし、発汗量依存であり、抽出と外部化学分析を必要とする。
【0006】
C.C.Peck,D.P.Conner,et al.Skin Pharmacol 1,14(1988)は、閉塞性接着カバーで覆った分析物結合レザーバを備えたゲルを開示している。しかしながら、この参考文献は、抽出と外部化学分析を必要としている。
【0007】
Peckに付与された米国特許第4,909,256号は、閉塞性接着カバーで覆った乾燥結合レザーバを開示している。しかしながら、本参考文献は抽出と外部化学分析を必要としている。
【0008】
Peckに付与された米国特許第4,821,733号は、閉塞性接着カバーで覆った採取および検出システムを開示している。しかしながら、本参考文献は、高い感度の検出コンポーネントを必要としている。
【0009】
Jacquesに付与された米国特許第4,775,361号は、皮膚表面に対する分析物の遊走の増強を開示している。しかしながら、本参考文献は体内への光エネルギーの導入を必要としている。
【0010】
Guyに付与された米国特許第5,362,307号は、皮膚からのイオントフォレーシス増強分析物採取を開示している。しかしながら、本参考文献は体内への電気エネルギーの導入を必要としている。
【0011】
Eppsteinに付与された米国特許第5,722,397号は、皮膚からの超音波増強分析物採取を開示している。しかしながら、本参考文献は体内への音響エネルギーおよび化学物質の導入を必要としている。
【0012】
Eppsteinに付与された米国特許第5,885,211号は、加熱水蒸気、物理的ランセット、音響エネルギー、液体の高圧ジェット、または電気を用いた、ミクロ細孔形成を開示している。しかしながら、本参考文献は、熱、音響、または電気エネルギー、力学的または水力学的力を用いて皮膚に穴を開ける必要がある。
【0013】
ウェブサイト、www.spectrx.comは、間質液の採取のための、レーザー誘導皮膚細孔への吸引の適用を開示している。しかしながら、本参考文献は間質液を採取するため体内への音響エネルギーおよび力学的エネルギーの導入を必要とし、炎症反応を引き起こす可能性がある。
【0014】
したがって、経皮サンプリング分野において、重要な生体医学マーカー類および環境毒素曝露を、迅速で安価に、そして大掛かりでなく痛みなくモニタリングするのに適した低侵襲的なサンプリング技術および器具が必要である。本発明のこれらの特性および利点が、以下の開示を読むことによって当業者に明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0015】
(発明の要約)
本発明は、被験者の皮膚から経皮的に採取した少なくとも1つの分析物を採取し、送達するための少なくとも1つの試料採取器、前記少なくとも1つの分析物を同定し、定量するための少なくとも1つの検出器システム、および(i)前記少なくとも1つの検出器からの入力データを受領し、保存する、(ii)被験者から得た他のデータと前記入力データを関連づける、(iii)出力情報を表示する、(iv)出力情報を他のシステムに送信する、(v)前記少なくとも1つの試料採取器および少なくとも1つの検出器の操作を制御するための少なくとも1つの論理モジュールを含む、経皮サンプリングシステムに関する。
【0016】
本発明はまた、被験者の遠隔モニタリングを可能にするための微細加工器具であって、被験者の皮膚より経皮的に採取した少なくとも1つの分析物を回収し、送達するための少なくとも1つの試料採取器ユニット体、被験者から採取した少なくとも1つの分析物を同定し、定量するための前記少なくとも1つの試料採取器ユニット体に連結した、少なくとも1つの検出器システム、および前記検出システムによって検出された、少なくとも1つの分析物に関連したデータを論理モジュールによって処理するために前記モジュールに送達し、論理モジュールによって微細加工器具の制御を可能にするための送信器/受信器を備える器具に関する。
【0017】
本発明はまた、被験者の皮膚から採取した分析物を受領するための検出チャンバー、および前記検出チャンバーと連結した前記微細加工器具に接続して位置する光子源および前記検出チャンバー内で受領された分析物を検出するための前記検出チャンバーと連結した検出器、を備える光子検出システムを含む、被験者の皮膚からの分析物をサンプリングするための微細加工器具に関する。
【0018】
本発明はまた、被験者の皮膚から採取した分析物を受領するための検出チャンバー、前記検出チャンバーと連結した前記微細加工器具に接続して位置する、規定の分析物に接触した場合に変色するパッチ、規定の分析物の存在を示すパッチの変色を検出するための、前記検出チャンバーと連結した検出器を含む、被験者の皮膚から分析物をサンプリングするための微細加工器具に関する。
【0019】
本発明はまた、被験者の皮膚から分析物を回収し、検出器へ送達するための少なくとも1つの管、および被験者の皮膚から前記少なくとも1つの分析物を採取するため、被験者の皮膚の透過性を増強するための手段を備える、被験者の皮膚から採取した分析物をサンプリングし、検出するための微細加工器具に関する。
【0020】
本発明の目的は経皮サンプリングシステムを提供することである。
【0021】
本発明の他の目的はパッチタイプの検出器を用いた統合検出システムを提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は統合光子を用いた統合検出システムを提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は生物学的分子の経皮送達を増強するための、マイクロ流体潅流システムを提供することである。
【0024】
本発明のまた他の目的は表皮角質の切除のための、抵抗加熱法による熱切除メカニズムを提供することである。
【0025】
本発明のまた他の目的は表皮角質の切除のための、レーザー切除メカニズムを提供することである。
【0026】
本発明のまた他の目的はキャピラリーの働きを用いた流体のマイクロ流体送達を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は皮膚上で経皮サンプリングシステムを保持するための接着剤を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は競合結合によって表面から放出され、下流にて検出される蛍光標識抗原を含む、抗体とのチャネル表面の化学的改変を提供することである。
【0029】
本発明およびその付随する利点は、以下に示す図面および詳細な記述を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明のマイクロシステムの全体的構造の概略図である。
【図2】図2は、単一レザーバキャピラリーペアの断面図を例示している。
【図3】図3は、血中アルコールに関する手の甲の比色計検査に対して得られた試験結果を示している。
【図4】図4は、(a)底から、および(b)断面図の視点でのシール構造を示している。
【図5】図5は、非侵襲的サンプリング手順を例示している、本発明の器具の断面図である。
【図6】図6は、バイオ流体統合経皮(Bio−Fluidic Integrable Transdermal:B−FIT)マイクロシステムの連続する操作を例示している断面図である。
【図7】図7は、断面図で示した、システムの3つの主要なコンポーネントに関する、基本的な加工段階を概要例示している。
【図8】図8は、蛍光標識タンパク質または代謝物を用いた検出スキームの概要例示である。
【図9】図9は、他の導波管および試料チャンバーの構造を、横断面より例示している。
【図10】図10は、B−FITマイクロシステムを例示している。
【図11】図11は、検出スキームを例示しているC型の断面図を例示している。
【図12】図12は、ELISAマイクロシステム情報コンポーネントの全体像を例示している。
【図13】図13は、外部チューブリングをシリコンキャピラリーに連結している、マイクロ流体内部連結を示しているCI型の断面図を例示している。
【図14】図14は、ウエハー通過孔として加工したシリコンキャピラリーと外部チューブリングを連結させ、外部チューブリンがシリコンキャピラリーと連結している、シリコンスリーブマイクロ流体内部連結を示している、DRIEキャピラリー孔周辺でシリコンスリーブを用いた代替物の断面図を例示している。
【図15】図15は、キャピラリーの働きによってDRIEキャピラリーウエハー通過孔を通って吸い上げられた、分析物に対する回収チャンバーを組み込んだ第三のベッド構造の断面図を例示している。
【図16】図16は、回収チャンバーおよび流体内部連結を組み込んでいる、CIC型と呼ばれる、第四のベッドの断面図を例示している。
【図17】図17は、(a)シリコンスリーブのフォトレジスト(PR)パターン化、(b)スリーブの酸化物パターン化、(c)PRの再適用、(d)穴孔のDRIEのためのパターン、(e)PRおよびDRIEスリーブの切除、および(f)酸化物の切除を示すCI型アレイの一般的加工工程を例示している。
【図18】図18は、CC型(およびCIC型)器具を加工するために必要な二重側面処理を示す断面図を例示している。
【図19】図19は、シリコンキャピラリー中の連結スピロピランの拡大図を例示している。
【図20】図20は、単一レザーバキャピラリーペアを例示している。
【図21】図21は、単一レザーバキャピラリーペアを例示している。
【図22】図22は、ウエハー#2に関する加工段階を例示している。
【図23】図23は、種々の濃度の[3H]−EBでの、保持容量を例示している。
【図24】図24は、種々のpHおよびイオン強度での、保持容量を示している。
【発明の詳細な説明】
【0031】
(発明の詳細な記述)
本発明は、人の健康状態をモニタリングし、人に経皮的に薬物を送達するための機能強化システムおよび方法を提供する。とりわけ、本発明は総合的で、費用効率がよく迅速で大掛かりでない被験者の医学的状態の評価を提供する。本発明はさらに、被験者の医学的状態の上記評価に応じた、薬剤の経皮送達の手段を提供する。実施様態には、たとえば農薬曝露に関する被験者のモニタリング、兵士のストレス状態のモニタリング、感染または疾患状態を示すための、酵素N−アセチルトランスフェラーゼを用いた遺伝子型決定、有機リン系殺虫剤神経薬剤(タブン、サリン、ソマン)または有機リン系農薬(パラチオンおよびその代謝物)のいずれかの、人への外部曝露および内部汚染のモニタリング、微生物感染に応答した炎症性続発症(インターロイキン−1、インターロイキン−6、腫瘍壊死因子)のモニタリング、微生物毒素(アントラキシ、ボツリヌス毒素、エンドトキシン)のモニタリング、リンパ経路または肝臓経路を介したヒト異化作用から発生する胞子代謝物のモニタリング、カフェイン、アンチヒスタミン類(デキソメトファン、カフェイン)のような刺激物のモニタリング、血中グルコース濃度の変化、またはインスリン/グルコースの代謝物の変化を介したストレスのモニタリングが含まれる。
【0032】
本発明の好ましい実施様態の全体の構造は図1に示されている。対象分析物を検出するために、使い捨てB−FIT100を採用し、B−FITの温度ヒーターへの電気接続を含む、機械サポートおよび電気接続を行うために、レセプタクル101内にマウントする。接続レセプタクル101はまた、切り替え可能光子バックプレーンに関してB−FITと正確に並べる。接続レセプタクルはまた、好ましくは電源102、論理制御103、および電力管理のための電子回路、結果の電子的保存、生化学的分析データを処理するための電子回路、事象のタイミングをみるための電子回路、直接または遠隔測定のいずれかの通信結果のための手段104を備える。光学的コンポーネントは、好ましくはB−FIT100またはMEMS物理チップ106内に局在して提供される。ひとつの実施様態において、蛍光測定は、B−FIT内に含まれる複数の分析チャンバーそれぞれにおいて連続的に実施される。薬物送達チップ105もまた任意に本発明により提供され、経皮にて強力な薬剤を送達するのに使用される。たとえば、神経ガスを解毒するのに使用される薬剤が送達される場合もある。さらに、物理チップ106は任意に血圧および脈拍を含む連続的な基礎的バイタル情報を収集するために提供される。
【0033】
B−FITおよび薬剤送達チップ内に位置する経皮サブシステムが、生理学的に適合性のある溶液または薬剤を含む生理学的に適合性のある溶液と皮膚とを接触させるように機能する。B−FITは、独立した単一のレザーバキャピラリーペアの密なアレイ内に編成される。キャピラリーペアはそれぞれ、生理学的に適合性のある溶液を保持するためのレザーバキャピラリー211、(破裂状態として示した)破壊可能シール215を有するレザーバ、および生理学的に適合性のある溶液を運搬するための隣接運搬キャピラリー212を備え、皮膚を分析物測定部位と接触させる。接着層216が、B−FITの下方表面に備わっている。使用に際し、前記接着層はB−FITの下方表面と皮膚との間に挿入され、B−FITを皮膚に接着させる。
【0034】
好ましい実施様態において、熱穿孔サブシステムが、間質が曝露されるように、皮膚の最上層である表皮角質の微視的部分を切除するために機能する。本熱穿孔サブシステムは、好ましくは皮膚表面に近接したマイクロヒーターおよびマイクロヒーターに対する電流を調節する電気的コンポーネントからなる。
【0035】
キャピラリーアレイサブシステムは、好ましくはB−FITを備えるシリコンウエハー内に微細加工されて提供される。本発明は、好ましくは複数のキャピラリー−アレイサブシステムを提供し、そのそれぞれが皮膚表面へ流体を送達するための流体送達チャンバーまたはレザーバチャンバー201、皮膚表面からの流体を採取するためのキャピラリーチャネル202、およびそこで分析物または分析物類が検出される、少なくとも1つの横断キャピラリーチャネルを備える。B−FIT200は、好ましくはマイクロマシンシリコンウエハー、第一ウエハー204、第二ウエハー206、および検出層203の多重層アセンブリからなる。検出層は好ましくは、可視または蛍光測定のための光子システム、または分析物の存在下で変色を発現させる比色試薬を含む層、あるいは分析物の検出のための他の手段のためのキャピラリーから成る。したがってキャピラリーサブシステムは、好ましくは生理的流体の保存、通過および分析を含む。キャピラリーの直径および表面コーティングは、好ましくは流体の流れを制御するために最適化され、キャピラリー壁上への流体コンポーネントの非特異的吸着を防止する。
【0036】
1つ以上の分析物の存在を定量的または定性的のいずれかで測定するために、光学的統合光子システムが本発明によって提供される。統合光子システムには、電波管、レンズ、鏡、光源、および光検出器が含まれる。好ましくは、統合光子システムは連結レセプタクル101内に内蔵され、これは皮膚から離れて面したB−FIT100の表面に接着する。いくつかの実施様態において、統合光子サブシステムは比色分析物の感受性領域によって置き換えられ、そこで観察者によって直接知覚された変色は分析物の存在を示す。
【0037】
これらの各サブシステム、およびサブシステム間の相互作用を、より詳細に以下で記述する。
【0038】
B−FITは、好ましくは「単一レザーバキャピラリーペア(single reservoir capillary pair)」と命名されるいくらかの独立した分析物検出器具のアレイ200を含む。本明細書で使用するところの語句「生理学的流体(physiological fluid)」は、生存組織に対して生物学的に適合性がある、したがって、たとえば生存表皮細胞または表皮角質の細胞と接触するのに、培地として等張圧的に、さもなければ生理学的に(たとえばpH)好適である流体を意味する。この意味内にある生理学的溶液の例は、生理食塩水である。それぞれの単一レザーバキャピラリーペアは、好ましくは皮膚表面または表皮角質の小さな領域を湿らせ、分析物を採取するために、生理学的流体を保存し、放出するレザーバキャピラリー201を備える。破壊可能シール205が好ましくは、皮膚を湿らすために流体の放出のタイミングを制御するために備わっている。流体は好ましくは、たとえば検出パッチ203のような、分析局所へ流体を運ぶキャピラリーチャネル202内に回収される。経皮サブシステムは好ましくは対象の分析物が、もし存在するならば、前記流体にアクセス可能であることを保証するために、単一の採取キャピラリーペアを使用する。
【0039】
本明細書で使用することころの語句「経皮線量測定(transdermal dosimetry)」は、皮膚の最外層である表皮角質下に存在する間質液からの受動拡散によって、皮膚の表面に到達した微少量の分析物の採取および検出を意味する。本発明の1つの実施様態において、間質液は、対象の分析物の存在に関してサンプリングされることが理解されるであろう。さらに、本発明の他の実施様態において、表皮角質の微視的部分の切除によりレザーバからの生理学的溶液が、基底生存表皮の上部分と接触可能であり、間質液中の分析物が分析のための受動拡散を介して、生理学的溶液内に移動することが可能となる。
【0040】
本明細書で使用するところの語句、「非侵襲的経皮検出(non−invasive transdermal detection)」は、正常皮膚バリアの物理的または化学的改変なしに実施される、皮膚下基質の検出を意味する。水および脂溶性の両方を示している低分子量分析物を、非侵襲的技術によってサンプリングすることができる。
【0041】
たとえば、図3で例示したように汗を皮膚表面からサンプリングし、血中アルコール濃度を示唆する比色試験によって、アルコール含量を分析することができる。非侵襲的検出のこの例において、アルコールは、試験の前に0〜4アルコール飲料を摂取した7人の男性被験者の手の甲から摂取した汗中で検出される。汗中に含まれるアルコールは、反応層内に含まれる薬剤と反応し、結果として、血中のアルコール含量の定量的測定となる。
【0042】
しかしながら、非侵襲的技術は、分析物が高分子量である場合(たとえばタンパク質)、高極性である場合(たとえばグルコース)、または溶解性が乏しい場合には実用的ではない。そのような分子の、皮膚を介した表面上への流出は、表皮角質の切除によって大きく増強される。切除は、30〜60μmの典型的な深さで実施され、基底表皮が曝露され、これによって流体を採取し切除されていない表皮角質ではわずかしか浸透しない分析物を分析することができる。この技術は、表皮角質のみが切除され、基底表皮は裂かれないことから本明細書では「低侵襲的(minimally invasive)」と呼ばれる。本発明の1つの好ましい実施様態において、低侵襲的経皮検出が表皮角質層の微視的加熱切除によって実施される。本発明の他の好ましい実施様態において、低侵襲的経皮検出は、表皮角質層のレーザー切除によって実施される。
【0043】
接着層は好ましくは、本発明の器具と皮膚との間の境界に備わっている。接着層はB−FITアセンブリの一番下の層に添加され、皮膚表面の好適な部分へB−FITアセンブリを接着させるように機能し、これによって、効果的なサンプリングのために、皮膚に関連したB−FITアセンブリの動きが最小化される。生理学的溶液を皮膚に接触させるために、接着層内の隙間が、それぞれのキャピラリーペアに提供される。接着層は、流体の側面に沿った漏洩を防止し、好ましくは、比較的水不透過性であるバンドエイドタイプの接着剤からなる。
【0044】
表皮と接触するB−FITの部分が、好ましくは、皮膚の外表面(表皮角質)または生存表皮の最外層に直接接触したB−FITシステムをしっかりと、閉塞して配置するために機能することが理解されるであろう。閉塞接触は、好ましくは、B−FITの、その皮膚上の初期位置からの側面および垂直に移動するのを防止し、B−FIT物質の外部への放出を制限し、外部物質の進入を除外するようなものである。移動防止特性には、好ましくは、B−FITの最下表面上に局在している、および/またはB−FITすべてを覆っており、皮膚表面に接着している、接着要素を含む。さらに、B−FITの最下表面は、その初期位置からB−FITを移動させうる垂直力を防止するために、表皮に接着させることができる。B−FITを皮膚へ取り付ける閉塞性特性が、B−FIT内での身体または皮膚からの水蒸気を含むすべての基質の移動を制限するために使用される。この捕獲された水蒸気は、表皮角質に潤いを与え、広い範囲の分析物または治療的薬剤に対してより浸透性を与えることで経皮浸潤を促進する。
【0045】
本発明の1つの好ましい実施様態において、表皮角質の低侵襲的切除が、特定の分析物の流出が有意に増加するのを達成するために使用される。好ましい実施様態において、熱切除が、抵抗過熱のメカニズムを介して、皮膚の微視的領域上で表皮角質を切除するのに使用される。マイクロヒーターを含むマイクロ切除ユニットが、それぞれのキャピラリーペアに近接したB−FITの表面上で加工され、表皮角質に対する導電性熱経路を提供する。マイクロヒーターは、好ましくは、抵抗物質の使用によって、または湾曲伝導性経路によってのいずれかで、表皮角質の適切な部分が局所的に切除されるように、効果的な熱量が産出されるように、電流に対して十分な抵抗を提供するために、準備された伝導性経路によって連結した電極の1対を含む。電気的接続がまた、マイクロヒーターユニットを、電極に対する電源の適用を制御するためのコントローラーに連結するために、2つの電極のそれぞれに提供される。好ましい実施様態において、マイクロヒーターがB−FITのシリコン基質表面から突き出て、表皮角質への熱伝導を改善し、マイクロヒーターの電力消費が減少することが利点である。1つの実施様態において、バルクシリコン物質を介するよりも、皮膚バリアに向かって熱の流れを向けるために、放熱物質が、マイクロヒーターの上部に組み込まれる。他の実施様態において、マイクロヒーターはB−FITの主要シリコン基質から突き出たシリコンメサ上に加工される。そのような実施様態は、好ましくは、シリコンメサから接触しているバルクシリコン基質への経路を導くために、電気的接続の非平面的組み立てが必要になる可能性がある。そのような非平面組み立て技術は、本明細書にそのすべてが参考文献として組み込まれたParanjape et al.,Technical Digest,1997 International Conference on Solid−State Sensors and Actuators, Chicago, Illinois, Vol. 1, pp.397(1997)に例示されたように、当業者に公知である。
【0046】
熱切除マイクロヒーターは、局所切除を実施するために、好適な交流または直流にてパルスされる。加熱パルスの間隔および強度の調節が、好ましくは、正確な面積および深さの切除を達成するために、実施される。微小切除は、好ましくは、およそ50μm×50μm×30μmの表皮角質の限定された量で実施される。
【0047】
図4(a)および4(b)は、(a)底からおよび(b)断面から見た密封構造を例示している。
【0048】
1種またはそれ以上の薬剤を含みうるか、または含み得ない、生理学的に適合性のある溶液を、使用の前に、破壊可能シール405によってレザーバキャピラリー401内に保持する。シールは、好ましくは、レザーバキャピラリーを開くこと、および皮膚表面または曝露された表皮角質を生理学的溶液に接触させることのための、電気的にアドレス可能である方法を提供する。シールは、レザーバキャピラリーの底部末端での閉鎖手段を備え、またレザーバキャピラリーを開く方法を備える。好ましい実施様態において、シールは、好ましくは、上昇した温度にて破裂する誘電性二重層および、金属導電性経路である、細膜400を含む。好ましくは、意図された使用の前に裂かれることがないように十分丈夫であり、電気的に帯電してはおらず、上昇した温度で破裂する、薄く毒性ではない任意の膜性材料が、シール密閉としての使用に好適な物質である。好ましい物質は、低ストレスニトリドである。この膜のフィルムストレスの制御が加工中必要である。本明細書にそのすべてが参考文献として組み込まれている、Kinard et al.,IEEE Trans. on Inst. Meas.,46(2), 347(1998)。シールを加工するために、金属帯電パス402は、低ストレスシリコン誘電体400上に表面沈着される。マイクロヒーティング要素に対する好ましい金属はエバノーム(evanohm)が含まれる。シールを破裂させるために使用される熱は、任意にまた、特定の実施様態において皮膚を切除するために使用され、フィルムストレスの注意深いバランス、厚さおよび抵抗が、所望の過熱および破裂特性両方を提供するように、好ましく実施される。フィルム上の金属の沈着がまた、不規則な地形の上での金属の沈着を必要とする。そのような技術は、当業者に公知である。そのすべてが本明細書にて参考文献として組み込まれている、Geist et al.,NIST Journal of Research 95(6)、631(1990)。帯電パスは、好ましくは、帯電経路402を介した静電気の通過を促進するために、2つの電気的接触パッド403、404にて終端となる。操作の好ましいモードにおいて、薄い帯電経路を通過した電流は、帯電性経路402の金属を熱し、下に存在する誘電性層の破裂を引き起こし、したがって、レザーバキャピラリーの開裂を引き起こす。本発明のこの好ましい実施様態、およびこの好ましいシールの利点は、とりわけ、機械的移動部分が存在せず、これによって信頼度が増加することに注意すべきである。
【0049】
特定の好ましい実施様態において、シールは、レザーバキャピラリーおよびキャピラリーチャネル両方のシールをし、これによって両方が同時に開く。
【0050】
図5は、B−FIT器具の断面図を例示しており、非侵襲的/低侵襲的サンプリングにおける詳細を順を追って示している。模範的な未使用キャピラリーペア502が本来のシールを含んでおり、そこで、生理学的溶液がレザーバキャピラリー内で保持され、好適な電流の適用に際してシール501が開裂し、生理学的に適合性のある溶液が、まず皮膚に接触し、ついで輸送キャピラリー内に採取される。最後は、開裂したシール500を伴った使用済みキャピラリーが例示されている。この好ましい実施様態において、それぞれのキャピラリーペアは、シールと生理学的溶液を利用できるように単一使用ユニットとして機能する。
【0051】
同様に、図6は、血中グルコース濃度を測定するための、B−FITシステムの、低侵襲的実施例の操作を、順を追って例示している。マイクロヒーター603は好ましくは、シール601破裂と同時、または直前に、接着層604中の隙間の下に局在する表皮角質の一部分を切除するために動作する。そのような器具は、「要求に応じた(オンデマンド;on−demand)」分析を提供する。生理学的溶液は好ましくは、曝露された生存表皮上に放出され、輸送キャピラリー内に回収される。輸送キャピラリーは、好ましくはグルコースが、青色反応が産出される比色反応にて検出される検出パスへ溶液を導く。本好ましい実施様態において、マイクロヒーターおよびシールに送達される電流パルスが同一であるかまたは異なってよく、したがって、ヒーターおよびシールが直列または並列のいずれかで、電気的に連結されうることに注意すべきである。
【0052】
B−FIT器具のシリコン体内のキャピラリーが、たとえばマイクロマシン化によって、または適切にディープ レジスティブ イオン エッチング(DRIE)技術を用いるエッチングによって好ましく加工されうる。ここで図7を参照すると、B−FITの好ましい実施様態の構造が例示されている。器具は、3つの主要部分、好ましくはシリコン702からなり、それぞれその固有のレザーバチャネル707を持つ、いくつかの湾曲キャピラリーチャネル706を含む本体700、湾曲構造の最下部分を形成しており、またマイクロヒーティング要素703を含む底部キャッピング部分701、および湾曲チャネル706の上部を形成しており、任意に湾曲チャネルの水平区画を通した電気性−浸透圧性ポンピングを用いて生理学的流体の流れを補助するための電極を含む上部キャッピング部分704、からなっている。いくつかの実施様態において、上部キャッピング部分704は本体に結合しており、そのような配置の利点は、それによって達成されるキャピラリー内への光の良好な連結である。本体は、好ましくはシリコンからなる。本体700および底部キャッピング部分701は、好ましくは互いに永久に固定されており、センサー705を含み、特定の実施様態においてはこれが、使用の後に上部キャッピング部分704よりはずれ、新しいアレイと置き換えることが可能である。
【0053】
レザーバおよびキャピラリーチャネルは、好ましくは標準のシリコンウエハー内で組み立てられる。キャピラリーの寸法は、重力下、レザーバの開放端からの、そしてキャピラリーの動きを介したキャピラリーチャネル内への、汗、間質液、または他の生理学的流体の輸送を促進するように選択される。好ましい実施様態において、キャピラリーチャネルは、直径が25μmであり、長さがおよそ500μmであり、レザーバチャネルは、直径が50μmであるが、しかし長さが500μmよりわずかに短くエッチング処理され、後壁を形成する。湾曲キャピラリーチャネル708の側面部分が提供され、分析物の光学的検出のために、器具の本体の上部表面に平行で、接着した、流体の流れの領域を提供する。側面部分の下内部表面は任意に、光学的検出を促進するように、反射金属コーティングのような、反射表面を伴って提供される。湾曲キャピラリーの側面部分は、好ましい実施様態においては、上部キャッピング部分の表面によって形成される。使用に際し、生理学的流体の輸送および分析物の採取は、レザーバチャネル内に先に保持された流体で皮膚をすすぐこと、ついで相当するキャピラリーチャネルに流体を回収することによって増強される。
【0054】
キャピラリーアレイシステムの表面は、好ましくは、表面の特性を改善するために、たとえば、タンパク質の吸着を防止するため、および/または表面へ抗体のような生体分子を接着させるために機能化される。特定の分析物に結合する分子を、続く検出および定量的分析のために、分析物を固定化するために使用する。好適な生体分子には、抗体、抗体フラグメント、人工抗体、レクチン、ハイブリッド可能核酸、核酸結合タンパク質、核酸に結合するタンパク質、他のタンパク質に結合するタンパク質、コファクターに結合するタンパク質、コファクター(たとえば、フラビン類、プテリン類、チアミン、ピリドキサル類、キノン)、および生物学的分析物に特異的に結合する他の薬剤が、限定はしないが含まれる。
【0055】
キャピラリーチューブは、好ましくは、化学的処理または血漿処理のいずれかによって改変される。この工程は、有機汚染物の表面クリーニングを促進し、キャピラリー表面上に表面ヒドロキシル基を導入し、この基は好ましくは、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)のようなシランと反応し、抗体のようなカップリング物に対するアンカーとして遊離アミノ基を提供する。好ましい実施様態において、タンパク質の吸着を防止する表面コーティングを提供するために、ポリエチレングリコール(PEG)シラン誘導体が使用される。
【0056】
1つの実施様態において、対象の分析物を指向する抗体を含む溶液を当業者に公知の穏やかな酸化状態に曝露し、これにより、抗体の表面上にアルデヒド基が提供される。ついでこのアルデヒド官能基はシッフ塩基反応を介してキャピラリーチューブ表面上の遊離アミンにカップリングし、したがって、抗体が、キャピラリーチューブ表面に固定化される。
【0057】
好ましい実施様態において、対象分析物の検出は蛍光を用いた手段によって行われる。分析物(たとえば抗体)802に特異的に結合可能な基質を、先に記述したようにキャピラリーの表面に共有的に結合させる。固定化物質802の結合部位を、本発明の使用前に蛍光標識分析物801で充填する。分析物800が存在する場合、これは特異的結合部位に競合し、標識分析物分子の一部分が溶液内に置換される。標識分析物の置換の程度は、溶液中の分析物の濃度に依存する。したがって、好適に較正されている場合、溶液中に置換された蛍光の量を測定することにより分析物800の濃度が定量的に測定される。
【0058】
結合部位を別々に、異なる放射および励起スペクトルを持つ蛍光団にてタグ化した各分析物で満たし、異なる結合特性の複数の抗体を好ましく固定化することによって、複数の分析物測定が好ましく単一キャピラリーペア内で行い得る。スペクトルフィルターおよび/または他の光源を好ましい実施様態にて使用し、異なる蛍光団からの蛍光を励起および検出し、それによって試料の総蛍光特性に対するそれぞれの蛍光団の貢献度を決定する。
【0059】
本発明に対する好ましい蛍光団には、ローダミン類、蛍光類、テキサスレッド(Texas red)、オレゴングリーン(Oregon green)、バイジピ色素類、およびアミノナフタレン類が含まれる。
【0060】
1つの実施様態において、N−アセチルトランスフェラーゼ、アイソザイム2(NAT−2)活性を、薬剤の副作用、毒性、および疾患に対する素因のマーカーとして測定する。NAT−2表現系は、たとえばNAT−2によって生成したカフェインの2つの代謝物、5−アセチルアミノ−6−ホルミルアミノ−3−メチルウラシル(AFMU)および1−メチルキサンチン(1X)の比を検出することによって検出可能である。AFMU対1Xの比を用いて、NAT−2の活性を測定することができる。ポリクローナル抗体をこれらの2つの代謝物に対して作製し、次いで精製することが可能である。これらの抗体はまた、ELISAによって尿試料中のAFMUおよび1Xを検出するために使用することができる。
【0061】
本発明の好ましい実施様態において、レザーバキャピラリーには、シールに対して反対のキャピラリー末端に位置するマイクロヒーティング要素が備えられている。マイクロヒーターは、泡を産出するように生理学的流体の局所加熱を提供するために活性化され、これによって一旦シールが破裂したならばキャピラリーからの生理学的溶液が強制的に放出される。マイクロヒーターはポンプとして機能すること、ポンプ動作は機械的移動部分なしで実施され、したがって信頼性の向上が保証されることに注意すべきである。
【0062】
マイクロヒーティング要素は、好ましくはシリコンの表面上での従来の沈着方法によって沈着した抵抗導電性経路を備える。破壊可能シールとは異なり、加熱要素は帯電経路の破壊なしに温度の上昇に抵抗するように設計される。導電性経路は、1つの好ましい実施様態において湾曲経路であり、ここで小さな表面積内に高密度で配置された薄い導電性経路からなる湾曲経路の使用により、高抵抗性経路および熱生成の局在化が達成される。
【0063】
本発明の他の好ましい側面は、統合光子分析サブシステムである。光子コンポーネントのB−FITシステム内への統合により、アッセイ密度の増加、サイズの減少、より少ない電力消費、およびコスト削減が可能になる。好ましい実施様態において、光子コンポーネントは本器具の上部キャッピング部分を備える、プラスチックハウジング内に収容される。他の検出方法が本発明において考えられ、以下で考察されることに注意すべきである。
【0064】
そのような統合光子分析サブシステムにおいて、光子源、たとえばLEDまたはレーザーを、検出器、導波管、カプラー、および鏡と連結し、本発明での分析物を検出するための完全に統合された光学システムが提供される。光子コンポーネントは好ましくは、上部キャッピング部分中のB−FITの本体の上部表面上に接続して配置される。
【0065】
供給源および検出器アレイのための、カプラーを伴ったポリマー導波管を、マウントするために、統合「フレックス回路(flex circuits)」として組み立てる。完全に統合した導波管構造は、乾燥抵抗工程による導波管の一体型加工のような、当業者に公知の方法によって構築される。−低η導波管物質(η<η=1.33)が好ましい。
【0066】
図9は、導波管および試料チャンバーの好ましい実施様態を例示している。好ましい実施様態において、キャピラリー蛍光を使用して、キャピラリー内の分析物を検出する。緑色、青色、黄色または赤色光を放射するLED源を、蛍光団を励起するために使用可能である。励起されている波長の選択は、それぞれの蛍光団の励起スペクトルによって第一に規定される。他の実施様態において、レーザーのコスト、サイズおよび電力消費は、一般的にLEDより高いけれど、レーザー源が特定の励起波長を提供するために使用可能である。
【0067】
好ましい実施様態において、湾曲キャピラリーの側面部分の上内部表面は上部キャッピング部分900の表面によって形成される。光学的検出は、好ましくは、側面部分内で実施される。光は好ましくはプラスチックの上部キャッピング部分内に組み立てられた一体型導波管によって、側面部分から、および側面部分へ導かれる。導波管の方向は、シリコン表面に対して平行に走っている。
【0068】
他の実施様態において、導波管によって導かれた光が横方向キャピラリー900に含まれる溶液の一部分を直接介して通過するように、横方向キャピラリーが導波管の経路903を遮る。本実施様態は、シンプルであるという利点があり、レンズおよび鏡は、光線を切り替え、照合するのに必要ではない。蛍光または吸光測定は、好ましくは導波管を遮る横方向導管の部分内で実施される。前述の導管部分902は好ましくは、分析物が存在する場合に蛍光団の溶液内への置換をおこす結合試薬を含む。続く導管901は好ましくは、溶液を光路の外に導く。
【0069】
本発明の他の実施様態において、光の測定は、水よりも低い屈折指数を持つ材料から構築されるキャピラリー内で実施される。本実施様態はまたレンズおよび鏡の必要性をなくし、よりすぐれたシグナル対ノイズ特性を提供する。
【0070】
図10は、B−Fitシステムプラットフォームの好ましい実施様態を例示している。導波管1008からの光の、側面部分内への、および側面部分から導波管への連結を促進するために、マイクロ鏡1005が好ましく提供される。鏡は、上部カップリング部分内のプレス加工成分として統合されるか、または注入モールディングによってプラスチックハウジング内に位置した分離コンポーネントであるか、または任意の他の好ましい方法によって構築される。好ましくは、マイクロ鏡1005は、キャピラリーの側面部分のシリコン表面に関しておよそ45°にて配置し、側面部分上に直接配置される。金属コーティングのような高反射表面コーティングが、好ましくは水平方向導波管からの光を下方のキャピラリーの側面部分内に反射するために鏡の表面上に沈着させる。レンズは好ましくは、蛍光励起および放射光線を照合するために提供される。1つの実施様態において、マイクロレンズ1012は、導波管から側面部分に入る光線の分岐を提供するために凸状であり、側面部分を出て、導波管1008に入る光に関して収束する。蛍光検出を使用する実施様態において、蛍光団を励起することが可能であるスペクトル領域からの光が、導波管を通して導かれ、分岐鏡に当たり、側面道管内に含まれる溶液に入る。側面道管内の蛍光団が好ましくは励起され、より長い波長の光を放射する。放射された光は鏡に当たり、この鏡は光を収束し、再び導波管に入る。
【0071】
帯域通過またはノッチフィルターが、好ましくは光検出器実施様態のバンド幅感度に依存して、検出された蛍光のシグナル対ノイズ比を最適化するために、光の経路中に挿入されてもよい。
【0072】
統合光子分析サブシステムのための光源にはLEDが含まれ、これは青色から緑色までの光放射色で最近入手可能になっており、したがって、ほとんどの一般的に使用される蛍光プローブの励起スペクトルの少なくとも一部分を十分に対象とする。たとえば、生物学的活性に対する蛍光プローブ&発光プローブ:定量的リアルタイム分析のための技術に関する実践的ガイド(Fluorescent and Luminescent Probe for Biological Activity A Practical Guide to Technology for Quantitative Real−Time Analysis),Second Ed.W.T.Mason,ed.Academic Press(1999)を参照のこと。あるいは、ミクロ電子工学レーザーを、特定の波長が要求される場合に好ましく使用することができる。任意の光検出手段を、放射された蛍光を検出するのに使用することができる。フォトダイオード、フォトトランジスタ、ダーリントン対フォトトランジスタ、またはフォトレジスタを本体のシリコン表面上に組み立てることができ、または分離したコンポーネントとして提供することができる。
【0073】
標準の低出力CMOS加工が、マイクロシステムを動かすため、連続する論理的制御を提供するため、およびメモリ中のデータの保存およびその操作を可能にするために好ましく使用される。
【0074】
分析物の蛍光検出に関する前述の開示に関わらず、本発明は蛍光測定に制限されないことに注意すべきである。本発明で都合よく使用される他の検出方法には、二次元技術を含む、Raman、UV−VIS、およびFTIR分光法、および蛍光相関分光法が含まれるが、これに限定されない。さらに、放射線センサーおよび電磁場センサーもまた、特定の実施様態における検出の基礎として有用である。放射線労働者などをモニタリングするために、好ましいセンサー実施様態は、光学ランダムアクセスメモリー(ORAM)物質である。これらの物質は、ポリ(メチルメタクリレート)マトリックス内に埋め込まれたスピロベンゾピランのような光互変性物質分子からなる。測定アプローチは、光学メモリーメディア中の放射誘導トラックの測定に基づく。
【0075】
光学偏向磁場センサーが、磁場モニタリングが望まれる場合に好ましく使用される。マイクロセンサーは4つのアルミニウム保持アームを用いて、マイクロマシンシリコン基質上に浮遊するアルミニウムビームを含む。これらのアームは、ビームをその中心点に保持し、この点はビームが基本共鳴周波数にて振動する場合のゼロ置換点である。正弦波電流が1つの支持アームを介して、ビームの長さを通して、および他の支持アームを通して流れるように強制される。正弦波電流の周波数は、ビームの機械的な共鳴周波数のそれと本質的に同一である。磁場がない場合には、ビームは影響を受けない。しかしながら、ビームに対して垂直に延びる磁場が存在する場合、磁力がキャリアの偏向を引き起こし、言い換えれば、ビームをその共鳴周波数で振動させる。振動の振幅は、磁場の力に直接比例し、レーザーを使用して測定することができる。
【0076】
図10は、分析物検出に関するB−FITシステムの実施様態の操作を例示している。表皮角膜の一部分の切除し、シールを破裂させ、および生理学的溶液をレザーバチャネル1002から放出させるために、マイクロヒーター1006の操作に続いて、生理学的溶液が、曝露された生存表皮と好ましく接触する。生存表皮にたまっている間質液から採取した分析物を含む溶液は、好ましくはキャピラリーチャネル1004に入る。キャピラリーチャネル内で、分析物はキャピラリー壁に結合している分析物結合分子より、蛍光標識分析物を置換する。置換された蛍光標識分析物は、好ましくは導波管1008、マイクロ鏡1005、およびマイクロレンズ1012によって導かれた光によって励起される場所である、側面部分に運ばれる。蛍光団によって放射されるより長い波長の光は、1つの実施様態において、逆光学経路によって導波管1008内に導かれて戻り、検出器に伝搬する。
【0077】
本発明の総合的側面にはまた、被験者のリアルタイムモニタリングにより、得られたデータに応じて、条件(たとえば加熱パルス特徴、サンプリング速度など)、および薬物送達方法を最適化するために、適応制御アルゴリズムが使用可能になるという側面を好ましく含む。本発明のこの好ましい実施様態において、データマシン学習技術が1人の被験者の健康に関する1測定を分析物測定に関連させる関数を求め、または学習するために好ましく使用され、これによって続く分析物測定からの健康測定を予測する能力が獲得される可能性がある。本発明で使用される適応制御アルゴリズムは、学習、適応、フィードバック、および意思決定の段階を統合する。身体は動的システムであるので、これらの段階は本発明の器具の寿命期間中、同時にそして連続的に起こる。
【0078】
図12は、ELISAマイクロシステム情報コンポーネントの概要を例示している。本発明の好ましい側面は、延長された時間にて可能である多数の個体の測定である。延長測定時間にてベースラインドリフトは、有意な偏差が正確に検出されるように説明されるべきである。本発明は、好ましくはベースラインドリフトを説明するための、およびそれによって最新のベースラインからの偏差を検出するためのコンピュータ化された手段を提供する。本手段は、被験者の健康のモニタリングを指向する実施様態に関して例示される。モニタリング技術の改善によって、代謝の日々の変化が健康な個体にて好ましく確立され、感染、疾患進行、および毒素への曝露の初期段階を検出するために限度値が設定される。
【0079】
薬物のような外来化合物の代謝は、連続する酵素によって媒介される。各個体でのこれらの酵素のタイプおよび量は個人の遺伝子型にて反映され、遺伝子情報に基づき個体は高効率代謝者(FAST)および低効率代謝者(SLOW)として分類できる。健康な個体において、遺伝的性質(遺伝子型)とその発現(表現型)との間の関連が保持されており、すなわちFAST遺伝子型はFAST表現型を引き起こし、一方でSLOW遺伝子型はSLOW表現型を引き起こす。しかしながら、個体の疾患状態はこの関係を変更でき、とりわけ食事、喫煙、アルコール、環境化学物質、および生物兵器または化学兵器が変化させうる。個人のNAT−2遺伝子型の決定およびその個体のNAT−2表現型のモニタリングを、健康および臨床的状態の直接的で、感度のよいプローブとして使用することができる。
【0080】
本アプローチにおいて、カフェイン代謝物AFMUおよび1Xに対して、ポリクローナル抗体が好ましく発現し、本発明の実施様態においてNAT−2表現型を決定するために使用される。血中グルコース濃度、サイトカイン濃度、およびデキストロメトロファン代謝物濃度もまたモニタリングすることができる。
【0081】
マシン学習アルゴリズムが、代謝ベースラインを獲得するため、および個体の身体がストレスまたは疾患の状態に入り始めた時点を示すために好ましく使用される。WinnowおよびWeighted−Majority Algorithms(Littlestone & Warmuth,Information and Computations 108,212(1994)を好ましく使用することができる。よく知られている正規の特性を持つこれらのアルゴリズムは、(すなわちベースラインドリフトの存在下で)動的環境中で学習および実施可能である。
【0082】
2つのカフェイン代謝物、AFMUと1Xの読み取り値が計算のための入力として好ましく提供され、本計算は2つの交互および強調モード、学習のモードおよび実施モードにて好ましく実施される。学習モードにおいて、器具は適応アルゴリズムを用いて着用者身体の化学的性質に対して自らを好ましく連続的に較正し、体重の設定を調整し、フィードバックを補助する。代謝物の濃度が正常な身体機能を示唆していない(すなわち使用者が、偽陰性のためのみフィードバックを提供する)ような方法で身体を刺激する場合にのみ、使用者のインターアクションが必要である。実施モードにおいて、現在のコンセプト記述(すなわち体重)を使用して器具がカフェイン代謝物の読み取り値を取り込み、健康な身体状態に関して決定を行い、ついで使用者に伝達する。身体は動的システムであるので、学習、適応、フィードバックおよび意思決定のこの工程は、好ましくは連続して、そして器具の寿命期間を通じておこる。
【0083】
本器具はまた、着用者の健康状態のモデルを好ましく取得し、本モデルを将来の健康の状態を予測するために使用する。形式上、マシン学習方法は、y=f(x)のような、x、y対の1組からのいくつかの関数fnを導き、使用する。一般的にはf()は、未知である実際の関数の近似である。
【0084】
しかしながら、たとえばトロポニンIの濃度が増加しはじめた場合(切迫心臓発作を示している)、1回の測定から次への変化率が増加する可能性があるので、本器具は好ましくは、より頻繁にサンプリングする必要がありうる。本状態において適応制御アルゴリズムが好ましく使用され、これはサンプリング率を好ましく制御するのに十分強力であるが、マイクロハードウェア内で稼動するのに十分シンプルである。
【0085】
したがって、好ましい実施様態においてその着用者から標的物質をサンプリングするように経皮コンポーネントを利用するために、適応制御アルゴリズムを使用することが可能であり、変化しうる着用者の健康状態のモデルを獲得するためにマシン学習アルゴリズムを使用できる。
【0086】
振り返ってみると、図10は、B−FITマイクロシステムの好ましい実施様態を例示している。この総モジュラーシステムは、好ましくは、(1)レザーバチャネル1002およびキャピラリーチャネル1004を含む、流体輸送システム、(2)マイクロヒーター(類)1006、(3)導波管1008、マイクロ鏡1005、およびマイクロレンズ1012を含む光子システム、および(4)選択した分析物の分析のための化学物質を含む。生体マーカーの分子指標を含む間質液を、表皮角質の制御熱マイクロ切除を利用した低侵襲的技術を用いて得る。このために使用するマイクロヒーター(類)1006は、好ましくは、B−FITマイクロシステムの一部分である、シリコンベースのサブシステム内に直接組み込まれる。分析キャピラリーを介した間質液または分析物の光学的輸送に関して、生理学的に適合性のある流体を含む第二のレザーバキャピラリーが、モジュールの上表面にすべての流体を導くために使用される。誘導力は好ましくは、流体をレザーバキャピラリーおよび皮膚の熱切除領域を超えて流出させる泡を産出する、マイクロヒーター(類)1006によって提供される。一旦、タグ化した分子およびタグ化していない分子を含む間質液および生理学的に適切な流体が上部ホールディング洞に達したならば、分析をはじめることができる。この総経皮検出プラットフォームの上部は、好ましくは、ホールディングチャンバー内で好ましく指向させるために、マイクロ鏡(類)1005およびマイクロレンズ1012を備える光学導波管と統合できる。ホールディング洞の分析領域に当たる光を、蛍光的にタグ化した分子を励起するために使用する。この蛍光の強度は、好ましくは同一の光学導波管によってリターンパスを介して獲得される。
【0087】
マイクロシステムの分子特性により、選択した分析物の検出のために新規の化学物質を適用することによって、多くの画期的な適用に簡単に適応可能である、優れたプラットフォームが提供される。たとえば、農薬に曝露された子供に対してとりわけ重要な一つの分析物または生体マーカーは、アセチルコリンである。アセチルコリンは、身体全体を通して局在化しており、それが放出される場合、末梢および中枢神経システムにおける神経伝導を伝搬するため、または筋肉収縮を開始させるための、興奮性神経伝達物質として働く。有機リン系農薬への曝露は、アセチルコリンエステラーゼ活性の阻害を引き起し、結果としてアセチルコリンの蓄積となる。このアセチルコリン濃度増加は生体マーカーとして働き、曝露がなかった子供におけるベースラインをまず確立することで本器具を用いて測定される。MEMSに基づいたパッチは小さくて控えめであり、農薬汚染への曝露に関して連続的にモニタリングし、初期の警告診断を提供する間、子供は彼らの日常の生活を送ることが可能である。
【0088】
したがって、本発明の携帯式生物医学的モニタリング器具の一つの実施様態は、農薬マイクロパッチシステム(PμP)としてである。そのようなPμP器具を提供することに際して、三つの作業が存在する。作業1は、B−FITマイクロシステムに対して類似に機能するシリコンベッド構造の構築である。上記のように、本ベッドは、キャピラリーの内部および回収チャンバーへ流体を送達するために働く。加えて、ベッドは化学物質の統合に関してB−FITマイクロシステムを映す。作業2は、アセチルコリンを検出するための化学反応である。本作業は、シリコンの平面試料を化学的に改変することが含まれ、ベッドへの化学反応の統合のための機能化方法が可能になる。作業3は、検査およびバリデーション相を含み、そこでは化学反応プロトコールがキャピラリーベッドに採用される。アセチルコリンの検出限界が確立され、試料体間質液を検査する。
【0089】
B−FITシステムに関して、キャピラリーベッド構造の加工は、一つの実施様態においてシリコンのバルクマイクロマシンに依存しており、ディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)または湿化学反応エッチングのいずれかを介して達成される。DRIE工程は、さまざまな直径の細いマイクロキャピラリーを形成する、高アスペクト比ウエハー通過孔の加工を好ましく可能にする。500μmの名目上の厚さをもつウエハーを使用するが、しかし好ましい厚さは、
表面改変試験を介して確立することが可能である。
【0090】
図10で示した例示的ベッド構造(C型)に関して、さまざまな直径を持つキャピラリーのアレイは、石版術デザインおよびDRIEを用いて好ましく形成される。湿化学反応はキャピラリー壁表面改変において、およびアセチルコリンを含む試験溶液を使用した蛍光バリデーション中の両方に関わるので、このタイプの構造により溶液のチャネル内での汲み上げを可能にするキャピラリーの働きに必要である最適な直径に関する選択が可能である。一旦キャピラリーが化学的に改変したならば、蛍光の試験をシリコンキャピラリーの上方入り口部に位置するレーザー源、および底側上の出口部に位置する検出器を用いて好ましく実施する。
【0091】
この好ましい検出スキームを例示している図11に戻ると、レーザー光経路1102のスポットサイズは、好ましくはシリコン基質1106内でエッチングされたシリコンキャピラリー孔1104の直径にマッチするように調整することができ、一方でその励起波長は好ましくは430runで保持され、蛍光1108を放射させるように蛍光団を励起するのに必要な周波数にあわせる。検出器には、好ましくは、光電子増倍管1110が含まれ、567nmの蛍光波長に対して検出器を調節するために、モノクロメーター1112が好ましく使用される。さらに光電子増倍管への到達による望まないレーザー光周波数を大きく減衰させるために、ノッチフィルター1114が好ましく使用される。
【0092】
CI型と呼ばれる、第二の例示的なベッド構造は、マイクロ流体内部連結で固定された、入り口部が改変された基礎的キャピラリーアレイと同一である。このデザインは、好ましくはキャピラリー動作がおそらく適切に機能しない状況でC型の代替として使用される。そのような環境において、CI型は表面改変および試験の目的のために、外部チュービングまたはシリンジポートをシリコンキャピラリーに直接連結可能にする、内部連結メカニズムを提供する。
【0093】
図13は、外部チュービングをシリコンキャプラリーと連結する、マイクロ流体内部連結を示している、CI型ベッド構造の断面図を例示している。一般的にはDRIEによって産出された孔は好ましくは、その内径および外径を開放口内に挿入し、接着剤1302にて固定される、内部連結チュービングの直径と適合させるように形成される。したがって、穴1304を介してウエハーとして組み立てられたDRIEマイクロキャピラリーは、シリコン基質1306内に位置する。孔は好ましくは、その内径および外径が、シリコンキャピラリー1308に連結した外部チューブリングの直径と適合するように産出され、そこでチューブリングは接着剤1310によって固定される。しかしながら、チューブリングの保持のために使用する接着剤が、流れを妨げるキャピラリー内に漏れ出さないように注意すべきである。
【0094】
図14は、外部チューブリングをシリコンキャピラリーと連結する、シリコンスリーブマイクロ流体内部連結を示す、DRIEキャピラリー孔周辺のシリコンスリーブを用いている、他の実施様態の断面図を例示している。スリーブは好ましくは、外部流体コンポーネントに関して増強された機械的統一性を提供するが、しかし接着剤1402が漏れだしたりキャプラリー孔を塞ぐのを防いでいる。一旦外部チューブリングがシリコン基質に連結されたならば、好ましくは化学物質および分析物を圧力勾配またはシリンジのいずれかを用いて注入することができる。次いで、狭いキャピラリーチャネル内に流体を導入する目的を満たした外部チューブリングをはずし、C型器具の場合のように蛍光を検出するためのベリフィケーション手順を開始することができる。図14はしたがって接着剤1402、シリコン基質1404、ウエハー通過穴孔1406として組み立てられたDRIEマイクロキャピラリー、およびシリコンキャピラリーに連結した外部チューブリング1408を示している。
【0095】
図15は、分析物に対する回収チャンバーを組み込んだ第三のベッド構造の断面図を例示しており、キャピラリーの働きによってDRIEキャピラリー通過ウエハー孔1502を介して分析物が上昇する。CC型と呼ぶこの微小構造に関して、シリコンキャピラリーが好ましくはシリコン基質1504の表側上に回収チャンバーを作製するために、DRIEおよび異方性湿シリコンエッチを用いて組み立てられる。このベッドによって、本チャンバーの表面のみを化学的に改変することで十分である。分析物は、好ましくはキャピラリーチャネルを上流し、チャンバー内で固定化された化学物質と反応し、蛍光光路1506を産出する。
【0096】
図15はまた、好ましい励起レーザー1508および蛍光光路1510検出装置を例示している。励起および検出方法は、好ましくは以前のようにそれぞれ励起レーザー1508、光電子増倍管1512、およびモノクロメーター1514を用いて行われるが、しかし、ここでこのセットアップは、ベッド構造の表側上のみで好ましい。光電子増倍管1512およびモノクロメーター1514は、蛍光検出器として働くように、好ましくは採取レザーバの直上に設定される。この状況において、衝突レーザー光は、好ましくは、その反射が光電子増倍管1512検出に寄与しないような角度にて、回収チャンバーに向けさせることができる。にもかかわらず、ノッチ−フィルター1516を好ましく、検出ユニットとチャンバーとの間で使用し、励起レーザー1508からの散在光を切除することが可能である。
【0097】
図16は、回収チャンバー1602および流体内部連結を組み込んだ、CIC型と呼ばれる、第四の好ましいベッドの断面図を例示している。CC型のシリコンキャピラリーチャネルおよび回収チャンバーに加えて、このベッドはまた、好ましくはウエハーの背側に流体内部連結メカニズムも含む。以前のように、このデザインは好ましくはキャピラリーの働きが回収チャンバーまで流体を引き上げる十分なキャピラリー力を提供しない場合に、代替メカニズムとして使用されうる。流体内部連結は好ましくは、CI型試験−ベッド構造にて示したように、シリコンスリーブ1604の使用を可能にする。DRIEキャピラリーウエハー通過孔1606およびシリコン基質1606もまた示されている。
【0098】
ベッド構造のそれぞれの変化に関して、ウエハー通過キャピラリーアレイの加工が、単一側研磨、<100>−型4インチシリコンウエハー上で実施される。キャピラリー孔のアレイは、好ましくは、名目上の長さ500μmの4つの直径値(25μm、50μm、75μm、および100μm)からなり、ウエハーの厚さに一致する。C型デザインに関して、孔のパターンは、好ましくはDRIE工程に対する理想的なマスキング層として働く、フォトレジスト層内で形成される。単一(標準)写真平版段階により、好ましくは研磨されたシリコン表面の表側上にパターンが産出される。DRIE工程は、異方性にエッチされた空洞を提供するが、マスクのいくつかの切り取りが実施される。したがって、マスクのパターンはキャピラリーに関する望ましい直径を達成するために、この避けることのできない側面エッチが考慮される。使用されるDRIEシステムの型に依存して、垂直対側面エッチングの比は50対1よりよい。すなわち、エッチ深50μmごとにマスキング層の下におよそ1μmのエッチ下が存在する。したがって、マスキング寸法はこのエッチパラメーターに依存し、前試験を通して測定することができる。DRIEサービスは、たとえば、ナショナルナノファブリケーションファシリティーズ(National Nanofabrication Facilities)の1つ、またはMEMSエクスチェンジ(MEMS Exchange)プログラムによって得ることができる。
【0099】
図17(a)〜(f)は、(a)シリコンスリーブに対するフォトレジスト(PR)パターニング、(b)スリーブの酸化物パターニング、(c)PRの再適用、(d)孔のDRIEに対するパターン、(e)PRおよびDRIEスリーブの除去、および(f)酸化物除去を示している、CI型アレイに関する好ましい、一般的な加工工程を例示している。リソグラフィーの前の初期段階により、シリコン表面全体にわたる熱シリコンニ酸化物の薄膜が作られる。フォトレジストを適用し、酸化物をパターン化し、エッチして、マイクロ流体内部連結を提供する各キャピラリー孔の周辺に局在する、シリコンスリーブの場所を線引きする。この段階に続き、もう一度フォトレジストを適用し、キャピラリーの場所をフォトレジストおよび酸化物の両方の内にパターン化する。ウエハー通過孔を、C型器具によるようにDRIEを用いて再び形成させる。フォトレジストを続いて除去し、シリコン表面の表側上に熱酸化物の先にパターン化した層が残る。マスキング層として働く酸化物層にてより短いDRIE段階を実施し、シリコンスリーブを作製する。
【0100】
CC型およびCIC型両方に関しては、組立工程において、好ましくは、背面から表面の位置あわせが必要なので、ウエハーを両面研磨することが必要である。CC型器具に関して、回収チャンバーは、好ましくは異方性湿化学エッチャントを用いてウエハーの表側内にバルクマイクロマシンされる。続いて、薄い熱酸化物を表面安定化処理層として働くように表面にのみ処理を施し、背面はフォトレジストにてコートする。キャピラリーに対するDRIE手順を、キャピラリーの孔が回収チャンバーの1つの側と合うように背面より実施する。
【0101】
図18は、CC型(およびCIC型)器具を組み立てるために必要な、二重側面化処理の断面図を例示している。ここで、続く背面でのキャピラリーおよびシリコンスリーブ内部連結の処理が、CI型器具に関するのと同じ処理に従うように、ウエハーが反転される。
【0102】
本発明の好ましい表面改変側面に関して、生体マーカーである、アセチルコリンに特異的な表面結合蛍光プローブを提供するための技術的アプローチは、好ましくは、Inouye,M.et al.,「プロトン性培地中でのアセチルコリンの非破壊性検出:人工シグナリングアセチルコリンレセプター(Nondestructive Detection of Acetyl Choline in Protic Media:Artificial Signaling Acetylcholine Receptors)」,J.Am.Chem.Soc.,116,5517(1994)にて記述されている、溶液相検出に関して開発した方法を改変することで実施される。好ましい実施様態において本方法はスピロピラン類を使用し、これは販売業者より安価で簡単に入手可能である。これらはそのスペクトル特性に関して公知であり、とりわけ標準的ELISA検出法に関して使用される分子と比較して、非常に頑健度が高い。スピロピラン類は、シラン化学反応および標準的カップリング化学反応を用いて、回収チャンバー内またはキャピラリー内いずれかで、シリコンベッド上で合成的に表面固定される。
【0103】
図19は、シリコンキャピラリー内の固定されたスピロピラン類の拡大図を例示している。スピロピラン(たとえばC−メチルカリキシ[4]レゾルシナレン)は、好ましくは遊離アミノシラン改変シリコン表面にカップリングさせることが可能である、カルボン酸架橋基を組み込んで改変される。スピロピランへの塩基の化学量論的添加により、ω−ブロモカルボン酸(たとえば5−ブロモペンタノイル酸)の反応が可能になる。この分子の長さは、その水溶性および反応効率に関連する。炭素鎖の長さが長ければ長いほど水溶性であるが、表面へのカップリングが難しく、一方で炭素鎖の長さが長ければ長いほど、水溶性は少なく、表面へのカップリングがより起こりやすい。合成に続いて、反応産物を調査し特性化することが必要な時には、NMR分光法を実施できる。
【0104】
スピロピラン、またはレゾルシノール/アセトアルデヒドテトラマーが好ましくは皿型空洞内で準備し、アルキルアンモニウムカチオンを錯体化可能な、アルカリ培地中でテトラフェノレートを形成する。ピレン改変N−アルキルピリジニウムカチオン(PPC)と錯体形成する場合、蛍光は観察されない。PPCは、選択した方法により、購入するか、または合成してよい。一つの好ましいPPCの取り込み方法は、スピロピランとの溶液錯体化によるものである。スピロピランを固定化した後、PPCを導入して、錯体を形成させる。アセチルコリンの競合結合により、PPCが押し出され、蛍光錯体が産出される。この錯体は、微細加工アプローチにて、上記したレーザー/検出器スキームを用いて検出する。PPCはまた、スピロピランとPPCの混合単層を形成することで組み込むことができる。この方法においては、錯体は、溶液表面界面にて形成される。スピロピランとのPPC錯体の作製の他の好ましい方法は、上述のInouye et al.によって記述されたような、スピロピランへのPPCの合成的結合によるものである。本方法により、先の二つの方法にて記述されたような分子内クエンチとは対照的に、蛍光の分子間クエンチが可能になる。
【0105】
合成の終了に際し、シリコン基質は好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシランのようなシラン類で誘導される。反応は、EDCのような、水溶性カルボジイミドを用いて、改変スピロピランのカルボキシル酸へカップリング可能である、シリコン表面上に、遊離アミノ基を提供する。X線光電子分光法(XPS)および接触角測定を利用して、さまざまな表面接着反応の進展を分析することができる。好ましい実施様態において、最も高い表面範囲が達成された。表面範囲に加えて、蛍光効率が蛍光顕微鏡を用いて試験される。このことは、連結したスピロピラン類の活性を限定するのを助ける。アセチルコリン添加前、およびアセチルコリンの添加後に、定性的蛍光強度をモニタリングするという簡単な実験によりベースラインが得られる。この時点で、本方法は試験のためのベッド器具内に移行される。
【0106】
微細加工作業の間、適切なベッド構造を産出するためにDRIEおよび湿化学エッチ率が、好ましくは試験試料を用いて測定される。さらに、好ましくは、試料を切除し、走査性電子顕微鏡を介して観察して、ウエハー通過キャピラリーの適切な切除形状が達成されているかどうかを測定する。化学反応作業に関して、表面改変および化学物質合成が、好ましくは、シリコンの平坦試料上での固定化プロトコールを確認するために使用される。この決定には、比較的大きな試料上の励起の後の蛍光の検出が必要であり、したがって、蛍光顕微鏡をこの試験手順の間使用する。
【0107】
一旦化学合成および表面改変作業が、厳密な大規模試料試験を介して完了したならば、次いで化学物質を小規模キャピラリーベッド構造上で試験する。このフェーズに関して、光子基礎試験セットアップが蛍光団の励起および放射に基づいて好ましく使用される。励起は、外部供給源からの直接の吸収を介する。整調可能連続波(CW)アルゴンイオン汲み上げ色素レーザー、空冷アルゴンイオンレーザー、光学パラメーター発振器を汲み上げるNd:YAGナノセカンドパルスレーザー、赤色(632.8nm)および緑色(543nm)波長出力のさまざまな小さい目のHeNeレーザーを含む、いくつもの好ましい供給源が、種々の試験戦略に関して入手可能である。Arイオン汲み上げ色素レーザーは、波長488nmおよび514nmでのポンプレーザーからの出力があり、最大電力は9Wである。CW色素レーザーからの最大電力は3Wであり、590nm〜600nm、および610nm〜630nmの範囲で整調可能であり、577nmにて追加出力を持つ。空冷Arイオンレーザーは、514nmでの単一出力であり、およそ70mVの電力である。Nd:YAGレーザーは、1064nmの基礎波長を持ち、内部調波生成器(KDP結晶)にて2倍(532nm)および3倍(3.55nm)出力が達成される。パルス幅は5〜7ナノセカンドであり、ピークパルス力は200mJ以上である。しかしながら、シリコン表面上に固定化された蛍光団は、430nmで励起されることが必要であるので、三重出力Nd:YAGレーザーからの力を、ベータホウ酸バリウム結晶(BBO)を基にした、光学パラメーター発振器(OPO)を汲み上げるのに使用することができる。これは、本質的には非線形BBO結晶を含む光学共鳴空洞である。ポンプビームは、シグナルビームおよびアイドルビームと呼ばれるものに変換され、ここで波長は光子エネルギー変換要件より得られる以下の関係である。
1/λpump=1/λアイドル+1/λシグナル
2つの出力波長間の比は、付随ビームに関して、BBO結晶の角度によって決定される。これを使用し、出力波長を、結晶角を変化させることで整調可能である。シグナルまたはアイドル出力は、OPOの出力部分での高域または低域光学フィルターを用いて取り除くことができる。この出力は、400nm〜2200nmの異なる範囲で整調可能である。波は、共鳴空洞鏡特性および出力フィルターによって設定される。これらの範囲のピークパルスエネルギーは10mJのオーダーである。
【0108】
出力蛍光は、好ましくは、前方方向、または微小構造幾何学に依存した任意の角度のいずれかで検出される。いずれの場合においても、付随レーザー光は好ましくは、ホログラフィーノッチフィルターおよびモノクロメーター両方を用いて遮断される。Raman分光計にて一般的に使用される、ノッチフィルターは、レーザーからの直接のもの、またはRayleighスッカッタリングからのものいずれも、放射光の波長でのすべての光を遮断する。モノクロメーターにより、周囲環境およびレーザーから両方の望まない光がさらに排除される。モノクロメーターによりまた、シグナル対ノイズ比の最適化のために、放射スペクトルの最大値を整調可能である。最終的に、検出は、好ましくは、レーザーエレクトロニクスよりゲートで制御して、光電子増倍管およびボックスカー統合器検出スキームを用いて実施される。あるいは、シグナルは、シリコンの電子なだれ感光性半導体素子にて検出し、より高い検出効率が提供される。
【0109】
C型ベッドにて、第一にキャピラリー孔の内部シリコン表面壁を改変するために、ついで第二に、固定化された側壁化学物質と反応する、分析物を引き出すために、キャピラリーの働きが、好ましく試験される。キャピラリー力が、試験しているキャピラリー寸法に対して有意な量の流体を引き上げるのに十分ではない場合、ここでCI型試験ベッドを好ましく使用する。このことによって、圧力勾配またはマイクロ流体内部連結に結合したシリンジポンプを用いて、キャピラリー内で流体の直接的な力学的挿入が可能になる。いずれの場合においても、キャピラリー内蛍光測定を実施する可能性を試験するのに、光電子検出システムが、好ましく使用される。一方、CC型試験ベッドは、回収チャンバーのシリコン表面内でのみ化学改変が必要である。したがって、この器具はまた、キャピラリーの働き、ならびにウエハーの表側上に位置する光電子検出システムを試験するのに使用することができる。さらに、本器具は、好ましくは、CIC型ベッドを用いて、分析物をキャピラリーアレイ内に挿入することで、力学的に試験することができる。
【0110】
一旦特定のベッドを選択したならば、さらなる試験は、好ましくは、キャピラリーアレイ内で固定化された化学物質に対する、生体マーカーの選択性および感度を決定することに関する。この型の試験は、好ましくは、たとえば、種々の濃度レベルでのアセチルコリンを含む溶液を導入することによって構築される。光電子増倍管からの出力を用いて、アセチルコリン濃度レベルの相当する変化をともなう、蛍光の変化の量を検出することによって、アセチルコリン検出のより低い制限の定量的指標、およびしたがって器具感度が得られる。選択性を決定するために、他の連続する試験が好ましく実施され、分析物溶液内で種々の濃度の他の神経伝達物質が導入され、アセチルコリンに対して得られたものと関連して、その相対蛍光を測定する。アセチルコリン以外で、本試験相にて使用可能であるより一般的な神経伝達物質には、アドレナリン、ドーパミン、セロトニン、トリプタミン、ヒスタミンおよびグリシンが含まれる。選択性の総合的な試験のために、器具は好ましくは、望まない交差選択性蛍光反応を誘導することが可能である、ノルアドレナリン、チラミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、タウリン、およびプロリンのような他の神経伝達物質に対して試験される。最終的に、好ましくはヒトドナーからの従来の抽出間質液を用いての、器具のin vitro試験が実施される。高濃度の農薬に曝露された個体から試料を得、毒性環境に曝露されていない個体より対照セットを得る。
【0111】
本加工の試料結果および試験工程は、好ましくは、有機リン系農薬曝露に対する生体マーカーである、アセチルコリンの検出に関する化学物質固定化プロトコールをともなう、シリコンに基づくキャピラリーアレイベッド(PμP)である。さらに、感度プロフィールが確立される。PμP微小構造デザインにより、B−FIT経皮サンプリングプラットフォームに対するモジュールとして簡単にインターフェイスで連結し、統合することが可能になる。経皮サンプリング工程は、好ましくは低侵襲的マイクロ−熱切除ヒーターを用いて、表皮角質/生内皮表面まで達するように開始され、これによって、間質液の抽出が可能になる。B−FITマイクロシステムは、シリコン加工キャピラリーアレイの使用により、アレイの上端に位置するグルコース感受パッチへの間質液の送達を可能にする。PμP微小器具の基本的なキャピラリーアレイ構造を、B−FIT内に組み込むことができる。生体マーカー、アセチルコリンのPμP内での検出メカニズムは、好ましくは、表面固定化された蛍光スピロピランの合成からなる。同定された化学物質により、ベッドの表面改変が実施され、これによって、廉価な、低侵襲的チップスケール検出の製造が簡単になる。
【0112】
B−FITマイクロシステム器具の他の好ましい実施様態に際し、グルコースパッチのかわりに、光子成分を組み込んだ化学反応が発展している。本システムは、好ましくは、アレイの上端において、導波技術によって適応され、それぞれ励起および蛍光を送達し、検出するのに使用できる。さらに、PμP微小器具は、アセチルコリンの蛍光検出の観点から、B−FITへのモジュールとして理想的に適合する。刺激された体液およびヒト血清の試験は、好ましくは、試験ベッド上で実施され、化学反応の感度および特異性が測定される。
【0113】
本発明は、任意の数の、生体マーカーの加工および化学的固定を可能にし、それによって、モジュールの組をB−FITプラットフォーム内に「つなぐ(plugged into)」。酵素および代謝物を介した健康モニタリングに対する複数の分子生体マーカーから、ホルモンまでの範囲で、数多くの例、可能性および適用が存在する。農薬検出に関して、いくつかの他の重要な生体マーカーはアセチルコリンエステラーゼ、酢酸およびコリンである。PμP微小器具の使用により可能となる、有機リン系以外の、他の分析物を検出することも重要である。これらには、抗コリンエステラーゼ殺虫剤(ホスホロチオネート)、オルガノクロリン殺虫剤(DDT、ディエルドリン、リンダン)、ピエチロイド殺虫剤(パーメスリン、フェンバレラート)、除草剤(TCDD、パラクオート)、および殺鼠薬(ワーファリン、ジファシノン、フルオロ酢酸ナトリウム、ストリキニン)が含まれる。追跡する他の重要な生体マーカーは、アトロピンおよびプラリドキシムのような解毒剤であり得る。
【0114】
PμPの加工における処理段階およびそれぞれの装備には、好ましくは、以下の、(1)リソグラフィー:UVおよび深UVフォトリソグラフィーでの、1μmライン分解可能な表側マスク半導体微細パターン転写装置、二方アライメント可能な固定具、フォトレジストスピナー、プレおよびポスト−ベイクオーブン、および関連する処理化学反応、(2)沈着:金属(Al、W、Ni、Ti、Ptなど)を沈着可能なマグネトロンスパッタリングシステム、および加工において提供されうる酸化物のマグネトロン反応性スパッタリング、金属の低エネルギー沈着に対する、3つの炉を伴うe−ビームエバポレーター、およびストレスおよび接着に適合させるために表面をコートするための、PECVD酸化物および窒化物に対する沈着装置、(3)フィルム処理、急速熱アニーリング能力を用いた、フィルムおよび膜のストレスおよび強度を調整するためのもの、(4)光子マスクデザインおよび加工、(5)エッチング:ディープ リアクティブ イオン エッチャー(DRIE)、RIE装備および湿TMAHエッチング、(6)拡散および熱処理:湿性および乾燥酸素の増加が可能な高温加熱炉、およびめかしたシリコンからなるヒーターに関して必要になりうる加熱炉ソークアニーリング、および(7)測定:フィルムの厚さを測定するための、薄フィルターストレス試験器およびLeitz薄フィルター分析器、またはナノメーター自動化フィルム厚(Nanometrics Automatic Film Thickness)測定装置、が含まれる。高精度のLeitz顕微鏡およびEDS装備Zeiss SEMにて、顕微鏡試験も可能である。
【0115】
経皮送達システム(TTS)は好ましくは、種々の標準処理および加工技術を用いて製造される。TTS微小器具加工または、単純バルクマイクロマシンから、ディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)手順まで、多くのマイクロマシン段階で実施される。
【0116】
TTS微小器具の加工処理段階は、好ましくは、図20で示しているような、2つのウエハーのシリコン処理を含む。ウエハー#1は、好ましくはレザーバチャネル、キャピラリーチャネル、微小切除ユニット、および破壊可能シールからなる。微小切除ユニットは、ヒート−シンクと共にマイクロヒーターを含み、表皮角質に対して、高帯電熱パスが提供される。マイクロヒーター上にヒート−シンクを組み込むことによって、熱送達が、より好ましく表皮角質に向かう。ウエハー#2は好ましくは、レザーバマイクロヒーターを含み、これは好ましくは、レザーバチャネルの上部と適合するように並べられる。
【0117】
図21(a−e)は、ウエハー#1のためのウエハー処理段階の切除加工概略図を提供している。処理が表および裏側両方で実施される可能性があることから、本処理工程では、二方研磨した300μmの厚さのシリコンウエハーが好ましく使用される。1つの実施様態において、最初に、微小切除ヒーターを、パターン化したシリコン誘電性層上で金属層を沈着させ、パターン化することによって形成させ、電流が通過する湾曲加熱要素を形成させる。帯電は好ましくは、加熱要素が存在する正方形領域としてパターン化される。好ましいヒーター物質は、熱シミュレーションを介して選択することができる。加熱要素に加えて、加熱コイルを介した電流によって生成される局所温度をモニタリングするために、温度センサーを、好ましくは、それにそって統合することができる。これは図21aにて示されており、そこでは、処理がウエハーの上部側で実施されているが、最終的に底となるように逆にする。この型のデザインにおいて、すべての結合パッドおよびトレースは、加熱要素の平面に位置する。好ましくは、低ストレスシリコン窒化物層を、ウエハーを通して沈着させることによって、金属トレースおよび加熱要素を絶縁し、保護する。本表面安定処理化目的のためには、ストレスのない窒化物は要求されないけれども、続く段階での適用で利用可能である。
【0118】
図4(a−b)を振り返ってみると、第二段階は、好ましくは、破壊可能シールを加工することである。シールは好ましくは、先の段階にて沈着した、低ストレスシリコン窒化物層によって形成された二重層、および温度が上昇すると弱くなりうる金属からなる。金属が沈着した領域は、レザーバキャピラリーの位置を決定する。キャピラリー寸法は好ましくは、75μmのオーダーであるので、レザーバキャピラリーを開くために、破壊可能シールはこの75μm領域内に配置しなければならない。図4は、破壊可能シールのデザインの、底から見た図を示している。これは、シール金属によって架橋された、2つの低ストレスシリコン窒化物フラップからなる。この金属ストリップを介して十分に大きな電流が通過することによって、金属シールを弱めるのに十分な熱が発生し、それによって窒化物フラップが放出される。窒化物層は、ストレスにおいては低いが、好ましくは、任意の制御可能な伸張および圧縮緊張が存在する。シリコン窒化物の沈着状態を調整することによって、シールが破裂したときに、窒化物フラップが、一方向のバルブとしてそのまま働くように、わずかな圧縮で作製することができる。
【0119】
好ましい第三の主要な処理段階は、微小切除加熱要素の上部で、ヒート−シンクを形成することである。以上で議論したように、ヒート−シンクは、好ましくは、バルクシリコン物質内での代わりに、角質表皮に向かって熱を向ける。その温度帯電性は空気よりも高いので、ヒート−シンクなしでは、大部分の熱はシリコンを介して移動する。ヒーター上にアルミニウムヒート−シンクを沈着させることで、得られる熱の流れは、シリコンおよびアルミニウム間にほぼ均質に分離される。これは、シリコンとアルミニウムの熱帯電性が類似であるからであるが、しかしシリコンおよびアルミニウムのものよりも高い熱帯電性を持つ金属を選択することで、より効率のよい熱送達が実施可能である。好ましい実施様態において、アルミニウムがヒート−シンク物質として使用されるが、しかしながらさらなる物質が適用可能である。角質表皮へ向かう温度の流れの増加に加えて、ヒート−シンクの配置が、好ましくは、熱供給源と皮膚バリアの間の総距離を減少させ、それによって、電力消費を減少させる。アルミニウムは、好ましくはリフト−オフ手順を用いてパターン化する。しかしながら、厚い金属層が必要である可能性があり、好ましくは、厚いフォトレジストを使用するか、またはアルミニウムを総ウエハー上で沈着させるかのいずれかである。このことにより、金属シールの問題が引き起こされる可能性があり、したがって薄い保護単離層がアルミニウムの前に好ましく沈着される。次いでアルミニウムを第四段階の後にリソグラフィーでパターン化し、マイクロ切除ヒーター上にのみ残す。続く処理段階のために表面を平らに維持するために、パターン化は後のステージで実施する。
【0120】
第四の好ましい処理段階には、二方研磨ウエハーを逆にし、未処理の側を表にすることが含まれる。レザーバおよび薄キャピラリー両方が同時に形成される開口部をパターン化するために、フォトレジストマスキング層を好ましくは沈着させる。これらのキャピラリーは両方とも、狭く、高外観比ウエハー通過孔を得るために、ディープリアクティブイオンエッチングを用いて加工する。薄キャピラリーは、好ましくは、直径25μmであるように設計され、一方でレザーバキャピラリーは直径およそ75μmであり、両方とも名目長さは300μmであるように設計される。DRIE処理の間、シリコンを孔がウエハーを通して作製されるまで、異方性にエッチする。しかしながら、レザーバキャピラリーに関しては、エッチング処理は、すでにウエハー後部上に存在するシリコン−窒化物上で終了する。これは、窒化物は、DRIEエッチ工程に対するエッチ終了として働くためである。以上でウエハー#1のすべての処理が完了したので、アルミニウムヒート−シンクを明確にでき、単離層を切除することができる。
【0121】
ウエハー#2に対する好ましい処理段階はまた、図22で示したような、切除加工概略図によって概説されうる。連続する段階は、困難ではないが、いくつかの整合問題が存在する。この好ましい処理における第一段階は、シリコンウエハーの表側上にレザーバ加熱要素を加工することである。以前のように、これは、シリコン誘電表面上にヒーター物質を沈着させることによって実施する。物質は好ましくは加熱コイルの形態でパターン化し、続いて、保護シリコン窒化物表面保護層によって覆う。好ましい次の段階は、表面上にエッチ終了誘電層を沈着させることである。次に、ウエハーを反転させ、DRIEを用いてパターン化し、連結キャピラリー開口部を形成する。一旦完了したならば、第三の段階には好ましくは、レザーバヒーターを含む側上に、シリコン酸化物の層を沈着させることが含まれる。このことにより最終段階で、ウエハー#1のウエハー#2への陽極結合が可能になる。レザーバヒーターがレザーバキャピラリー開口部にあうことを確かにし、ウエハー#1からのキャピラリーを、ウエハー#2で形成されたキャピラリーと好ましく連結することを確実にするように、正確に注意をはらう。
【0122】
それぞれのキャピラリーおよびレザーバペアを好ましく、単一流体分析を実施するために、そのような対の1つのみが、皮膚表面に曝露されるように、個々に配置する。一旦利用したならば、キャピラリーの開口末端を、皮膚に曝露したままにするが、任意のさらなる使用のためには配置しない。
【0123】
好ましい実施様態には、シールを開き、熱を制御するための、シグナルに対するタイミングに関するさらなる考慮が含まれる。表皮角質の切除に影響を与える、ヒーターに与えられるエネルギーの総量、およびそのエネルギーが与えられる時間もまた考慮される。システムを、最小の切除エネルギーに対して設計し、試験する。すなわち、最小期間での最小エネルギーが、操作のための重要なパラメーターであり、結果として、基底生存表皮のダメージが最小になり、したがって、本工程の侵襲的特性が最小化される。
【0124】
キャピラリーシールの開放に関連した、切除処理(ヒーター)のタイミングを含む、他のタイミングの問題もまた、考慮される。当該キャピラリーに対するシールが破裂している時間、表皮角質の連続する層を温度的に切除するために、微小切除ヒーターが、好ましくは適切な交流電流でパルスされる。
【0125】
他のタイミングの考慮は、レザーバエリプティング工程に関連したヒーターパルスである。ヒーターパルス処理のタイミングは、レザーバへの流れを維持し、表皮角質からの流体を吸い上げないようにするための考慮である。流体レザーバの上部のヒーターは、好ましくは流体内容物を強制的に外に出す。このヒーターの制御によって、レザーバ/キャピラリー分析の寿命中、流体の流れの制御が可能になる。
【0126】
種々のサブシステムの好ましい試験を、皮膚毒性学的、および臨床薬理学的利点を確立するために実施する。試験順序は好ましくは連続して行い、種々の物質における単純な試験で開始し、ヒト屍体皮膚または動物皮膚において、in vitro試験へ進み、次いで動物試験およびヒト被験者での最終的な薬理学試験を完了する。キャピラリーおよびレザーバをカバーする一回注入値を、好ましくは首尾よい配置に関して試験し、光学的に試す。流体レザーバを、流体成分を空にすることが可能であることを証明するために、好ましく最初に検査する。初期試験は、好ましくはまた、吸着表面上で実施する。さらなる試験を、キャピラリーからの溶液上昇の流れを証明するために、好ましく非吸着表面上で実施する。
【0127】
レザーバおよびキャピラリーの組合せに対する最適流速の測定は、好ましくは、パッチ検出器でのグルコース濃度に基づいて測定する。
【0128】
グルコース検出器パッチ物質を、好ましくは、標準のin vitro湿化学反応法を用いて感度に関して試験し、そのセルロースプラットホーム−グルコース検出器物質が、μmあたり少なくも10fgグルコースの反射率デンシトメトリー検出可能であるかを確かめる。
【0129】
3M Incおよびアドヘッジブリサーチ社(Adhesive Research,Inc.)から得た、FDA承認の生体適合性接着剤および接着膜の(屍体の皮膚を用いた)in vitroおよびin vivo動物およびヒト生体機械的試験を、好ましくは、B−FIT器具の閉塞性、流体厳重接着要件に関する、最適接着成分および皮膚浸透条件を決定するために実施する。B−FITシステムの初期試験の完了の後、前臨床皮膚毒性試験を開始する。これらの試験は、好ましくは器具の生物物理学の証明からなり、ヒト屍体皮膚または動物皮膚を用いてin vitroで実施し局所の皮膚効果の評価を行い、ついで生存動物にて実施する。
【0130】
皮膚毒性試験を、好ましくはB−FIT器具の生物物理学的特性を示すために実施する。生物物理学的試験は、好ましくは、動物またはヒト屍体皮膚上で実施する。完全な厚さのヒト腹部皮膚標本を、ビトロン社(Vitron,Inc;Phenix,AZ)または他の供給メーカーより入手することができる。動物組織試料を、好ましくはベースラインおよび低減コストを確立するために使用できる。皮膚試料は、好ましくは熱切除メカニズムを調査し、最適化するためのプラットフォームとして使用される。B−FITシステムは、皮膚を切除するいくつかの異なる方法を持つ。熱/切除段階の目標は、損傷なしで表皮角質を生存表皮まで取り去ることである。実験の第一セットで、好ましくはたとえば温度ピーク、パルス期間、パルスの数などの最適切除状態を決定する。
【0131】
最適切除条件を決定する試験は、生存表皮を貫通することなしに、表皮角質の十分な切除を行うように、(a)切除孔の深さおよび容量、および(b)表皮細胞構造の完全性を見て測定するために、好ましくは光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて実施し、また原子力顕微鏡を用いて表面プロファイルメトリーする。
【0132】
安全性の前臨床評価を得るために、たとえば、毛なしラット、モルモット、またはファジーラット種を用いて、B−FITシステムのin vivo動物試験を好ましくは実施する。皮膚炎症、潰瘍形成、および炎症反応の肉眼的な証拠に関する臨床観察が好ましく実施される。光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて試験した皮膚生検により、器具生物物理学的効果により近い試験が行われる。器具の除去に続いて、連続的な臨床的および顕微鏡を用いた観察を行い、熱切除部位に関する回復時間の評価が可能になる。
【0133】
先にバリデート済みの血漿アッセイに比べ、経皮サンプリングを介してグルコース濃度を測定する方法の分析精度および確度を測定するために、臨床薬理学試験を好ましくは実施する。好ましいアッセイ技術は、マイクロマシンキャピラリー内のグルコースオキシダーゼ固定化に基づく。許容可能な検出限界および定量限界、およびバラツキの許容可能な日内および日間係数をもつグルコースのバリデート済み血漿アッセイを使用し、以下で詳細に概略する2つの試験で記述した、臨床設定においてこれらのアッセイと比較した。開示した試験は同一のデザインであり、第一に健常人ボランティアで行い、第二にII型(成人発症)糖尿病患者で行う。
【0134】
グルコースを測定するための経皮サンプリングの分析感度をバリデートするために、インフォームドコンセントに署名し、一晩絶食し、本試験の組入れおよび除外基準を満たすことを確認した10人の健康な男性および妊娠していない女性をグルコース耐性試験の前および間に、血漿または間質液中のグルコース濃度を測定するための臨床試験に登録した。B−FITシステムを、接着テープを用いて右手の甲表面に取り付ける。18ゲージの動脈内カテーテルを、左前腕静脈に挿入した。静脈血試料(およそ5cc、4cc以上)を、血漿グルコース濃度を測定するために、適切な間隔で採取した。血漿グルコース濃度を、臨床現場にて通常使用するバリデート済みアッセイにて測定する。これらの濃度を、B−FITシステムを用いた間質液中の濃度と比較する。血漿濃度を2時間にわたり15分間隔で8回測定し、一方間質液中濃度は75gのグルコースを経口投与する前に、同じく2時間にわたって0.5、1、2、5、10および15分の時間にて測定した。これらのデータを使用して、B−FITシステムに対するサンプリング時間を最適化する。グルコースの投与後、血漿中濃度およびB−FITシステム推定濃度を、さらに2時間、30分間隔で測定する。健康なボランティアにおいて、血漿グルコース濃度は、これらの条件下で80〜140mg/dlの範囲であるべきである(Washington Manual of Medical Therapeutics,28th edition.,1995)。
【0135】
臨床試験のための組入れ基準は以下である。群1:21歳以上75歳以下の男性および女性、群2:21歳以上75歳以下で、委員会認定の内分泌学者によって成人発症糖尿病の診断がなされた男性および女性ボランティア。群1:市販薬または天然製品を摂取していない。群1:完全血液計測、血清化学検査(Na、K、Cl、HCO、BUN、グルコースおよびクレアチニン)に関して臨床的に正常な検査値および臨床的に正常な肝臓酵素プロファイル、SGOT、SGPT、アルカリホスファターゼおよびビリルビンを示している。本プロトコールで記述した署名済みインフォームドコンセントを理解し、実施する能力のある人。
【0136】
以下の被験者を試験より除外した。治験責任医師の意見により、プロトコールの要件に不適合である被験者および妊娠している女性。
【0137】
一旦被験者が本試験に参加することに同意したならば、以下の手順を実施する。スクリーニング手順を試験開始の21日以内に実施し、それには既往歴の聴取および身体検査、組入れおよび除外基準の再確認、および血液および尿試料の採取が含まれる。試験への組入れに続き、被験者に以下の手順を実施する。(1)一晩の絶食の後朝約9時に、臨床試験の実施機関に到着させる。バイタルサイン(心拍数、呼吸率、血圧および体温)を記録する。
【0138】
B−FITシステムを右手の甲表面上に置き、テープでしっかりと接着させる。記録を、モニターの下側の目立たない小さな針での皮膚に50ミクロンカテーテル挿入領域を介して実施する。モニターを記録がされているかを確かめるために確認する。一旦器具をつけたならば、もう一度バイタルサイン(心拍数、呼吸率、血圧および体温)を記録する。被験者を仰向けに寝かせて、上記スケジュールにしたがってグルコースの測定のために動脈血試料(5ccまたは1ティースプーン)を左前腕動脈内に挿入したカテーテルより採取する。さらなる血液試料を最初から4時間後および8時間後に採取する。B−FITシステムモニターテープおよび器具を取り外す。患者を退院させ、家に帰す。
【0139】
血液サンプリングスケジュールに関して、5mL動脈血試料を以上で記述した様式でバキュテイナー中で採取する。スクリーニング試料を含む、本試験中に採血総数は14である(12試験採血およびそれぞれ血液検査、化学検査および肝臓酵素のための2回のスクリーニング採血)。採血総量は100mLを超えないべきである。バイタルサイン(心拍数、呼吸率、血圧および体温)を、器具、カテーテルの取り付け前後および最後の採血の後に測定し、また器具、カテーテルを取り外す。患者には、器具を取り付けた腕における顕著な炎症を報告するように促す。医者は、本試験に参加している被験者の、静脈内カテーテルまたは複数回の採血による皮膚の挫傷または感染に関連した懸念に絶えず応じられるようにする。さらに多尿症および多渇症の症状に注意し、試験の間、糖尿病患者に注意をはらい、インスリンは必要に応じて医者および看護婦によってすぐに注入可能にする。統計分析には、B−FITシステムを用いて採取した値との比較として、臨床血漿アッセイを用いて測定した血漿グルコース濃度を含む。相関係数が、有意性p<0.05で>0.8である場合、測定は有効であると判断する。
【0140】
糖尿病患者での第二の臨床試験を、同一の試験デザインを用いて実施する。患者に試験の前日に経口血糖降下薬の摂取を許可し、ただし試験の朝は許可せず、試験期間中インスリンを注入しないように指示する。一旦試験期間が終わったならば、患者に食事およびその従来の糖尿病レジメを再開することを許可する。上記安全性考慮に加えて、これらの被験者の試験中には、注意深い臨床モニタリングおよびインスリン利用可能性に対して大きな注意を払う。
【0141】
B−FITシステムは、好ましくは、単一バルクマイクロマシンから、より複雑なディープリアクティブイオンエッチング(DRIE)までの範囲の、多くの異なる微細加工技術および戦略を使用する。図5に戻ると、好ましい1つのチャネルシステム微小器具の断面図が示されており、好ましくは、(1)生理学的に適合性のある流体をサンプリングし、分析するための、それぞれ固有のレザーバチャネルを持つ、いくつかの湾曲キャピラリーチャネルを含む本体、(2)湾曲構造の最も下の部分を形成し、実質的な生理学的に適合性のある流体抽出のために、表皮層に熱で穴を開けるためのマイクロ加熱要素を含むための、底部キャッピング部分、および(3)湾曲チャネルの上部を形成し、必要ならば、湾曲チャネルの水平部分を通して、電気−浸透くみ出しを用いた、生理学的に適合性のある流体の流れを補助するための電極を含む、上部キャッピング部分、の3つの主要コンポーネントからなる。第一および第二コンポーネントは一緒に、本システムの使い捨てモジュールを形成する。これらの取り替え可能B−FIT要素を、すべての分析キャピラリーが使用された後に、主要連結容器内に挿入する。
【0142】
狭い、高観点比ウエハー通過孔を得るために、レザーバおよびキャピラリーチャネルを、好ましく、ディープリアクティブイオンエッチングを用いて、標準のシリコンウエハー内で加工する。キャピラリーチャネルは、好ましくは、直径が25μm、名目長さが500μmであるように設計し、一方レザーバチャネルは、直径50μmであるが、500μmよりわずかに短くエッチする。湾曲キャピラリーチャネルの側面部分は、好ましくは、25μmまでのシリコン表面をリセッシングすることで形成させる。この領域はまた、好ましくは、本メカニズムによって、分析物の光学検出を容易にするために、表面上に高反射性金属を含む。シリコンの上部キャッピング部分への結合の後に、湾曲構造が完成する。これらの寸法によって、汗または間質液のような、生理学的に適合性のある流体を、キャピラリーの働きを介して、チャネルの開放末端内に抜くことができる。さらに、レザーバ内の流体を、好ましくは、キャピラリーの働きに関連して使用し、試験している表皮領域を洗浄し、これによって、より小さなチャネルを介した、生理学的に適合性のある流体の送達を助ける。特異的抗体固定を保持するために、内部キャピラリーチャネル表面を活性化することによって、流体を好ましく、抗体−抗原鎖形成によって分析することができる。それぞれその固有のレザーバチャネルを持つ、そのような一連のキャピラリーを、単一器具要素内に含める。それぞれの分析キャピラリーおよびレザーバペアは、好ましく、単一流体分析を実施するために、皮膚表面に対してそのような1つのペアのみを個々に曝露するように配置する。一旦使用したならば、キャピラリーの開放末端を、皮膚に曝露し続ける。
【0143】
湾曲チャネルの下方構造を形成する役割は別として、底部キャッピングユニットはまた、好ましくは、シリコンを用いて作製され他の主要な機能として役立つ。この区画内に組み込まれたマイクロマシン加熱要素は、好ましくは皮膚表面に熱的に穴を開けるために使用され、これによって、チャネル内で間質性および生理学的に適合性のある流体がより入手しやすくなる。表皮角質開穴(poration)手順の間同時に、マイクロシステムを好ましくは、キャピラリー−レザーバペアをそれぞれ個々に配置するために使用する。まず、皮膚に接触しているチャネルのすべての開放末端を、単一分析キャピラリーをあらわにするために、「粉砕(blown)」することができるシールによって覆う。この加熱分解手順は、シリコンマイクロ−抵抗によって提供されるような、シールに最近接した大きな温度勾配を用いて効果的に制御できる。マイクロヒーターを、好ましくはそれぞれのキャピラリー−レザーバチャネルを囲うシリコン領域に統合する。この区画内の連結マイクロ−キャピラリーは、好ましくはDRIEを用いて形成し、それぞれは、本体からの垂直マイクロ−キャピラリーと並んでいる。
【0144】
2つの先のコンポーネントとはちがい、上部キャッピング層は、好ましくは、プラスチックで作られ、いくつかの課題を達成するために使用する。まず、湾曲チャネルの上部構造、または側面部分をなす。この領域は、好ましくは、本発明者らのマイクロシステムの検出領域である。第二に、プラスチックを使うことで、内蔵された導波管が、物質内で好ましく加工でき、その方向性は、シリコン表面に対して併行に走り、統合光電子分析システムの基礎をなす。さらに、導波管からの光を検出領域に連結するために、マイクロ鏡が好ましくプラスチック内に統合される。さらに、より効果的な光カップリングおよびより高い効率のために、マイクロレンズを、好ましく、検出領域の直上に配置させたプラスチック内に統合する。マイクロ鏡を、好ましくは、プラスチックを湾入するために三角形態を用いることによって、この上部分内にプレス成分として統合する。得られた湾入は、表面に対して45°の角度である。高反射物質の沈着を行い、導波管下方向からの水平方向光を反射するマイクロ鏡を与える、斜角が得られる。統合マイクロレンズはまた、プラスチック内に直接押し込むことができ、または注入モールティングを用いることによって、プラスチック内に位置する分離ユニットとして組み込むことができる。どちらの場合でも、レンズは、高精度である必要はないが、しかし、単純に、導波管起源の光を発散させるべきである。導波管からの光によって産出される照射は、蛍光に対するタグ化分析物を生み出す可能性がある。次いで、産出された光が、検出領域の底表面より、集光レンズを通してもとに反射される。
【0145】
図6に戻ると、個々のマイクロキャピラリーシステムの3つの可能性のある(制御可能な)状態が示されている。一番左のマイクロ−キャピラリーシステム(#1)は、分析手順に関してすでに使用した、使い果たしたキャピラリーを示している。この第一のペアは、完全な熱切除、微小な流体の流れ、曝露された間質液からのグルコースの捕獲、グルコース検出パッチとの遭遇、およびチップの上部表面での青みを帯びた色反応事象を示している。中央のマイクロ−キャピラリーシステム(#2)は、オンデマンド分析を実施しているところである。最も右のキャピラリーシステムは、オンデマンド分析を実施する準備段階である。
【0146】
微小器具の目的は、表皮角質の内表面の直下に位置する、生存表皮中の間質液からのグルコースまたは他の浸潤性が低い分析物(群)の分子の、微小器具の上部に位置する検出パッチまでの送達を促進することである。微小器具は、表皮角質の熱微小切除による、マイクロ流体サンプリング流体の、間質液との直接的な接触を可能にする。間質液との直接の界面により、微小器具は、通常近づきにくい極性分子のみではなく、タンパク質のような、不浸透性のより大きな分子のサンプリングをも可能にする。
【0147】
好ましいプログラムされた連続事象の第一は、生理学的に適合性のある流体を含む、密封したレザーバ内に存在する微小水圧を作り出すためのレザーバ加熱要素を通した電流の流れである。第二および第三の段階は、ほとんど一緒に起こり、破壊可能シールおよび微小切除ヒーターを介した、2つの別々の電流からなる。シールは、好ましくは温度が上昇すると破裂する、金属耐電性二重層である。金属シールは、好ましくは、その操作の前に、シールの完全性を折衷する機会を減少させるために、低ストレスシリコン帯電性要素上に表面沈着させる。一旦分析手順の間にシールが壊れたならば、生理学的に適合性のある流体が、好ましくはレザーバからマイクロヒーターによって熱的に切除された領域を通って流れ落ちる。シールが破裂している間、微小切除ヒーターは好ましくは交流でパルスされており、厚さにして一般的に約30〜60μmである表皮角質の連続層を熱的に切除する。微小切除は、好ましくは表皮角質の非常に制限された容量、およそ50μm×50μm×30μmで起こる。レザーバヒーターおよびキャピラリー力の二重活性により、新規空のレザーバからの生理学的に適合性のある流体が間質液と接し、混合液は、検出パッチへと送達される。生理学的サンプリング流体のバルクは、好ましくはレザーバの外に強制的に出され、皮膚表面領域を空にし吸着検出パッチ内に出される。さらに、強力なバンドエイド様接着フィルムが、好ましくは微小器具を皮膚との流体の強力な接触で保持し、分析領域からの間質性および生理学的に適合性の流体の逸脱を防止する。流体は、好ましくは微小器具上のキャピラリーの直上の分析キャピラリーより検出パッチへ強制的に出され、たとえば1つの実施様態において、グルコースの存在を示すために変色を産出する。
【0148】
本発明のマイクロシステムコンポーネントは、好ましくは、間質液からの代謝物の経皮送達の増強、および酵素固定化学反応での結果としての検出を用いる分子スケール操作に基づいている。試料は好ましくは、低侵襲的経皮微小器具を用いて採取し、検出されうる皮膚の最外層(表皮角質)下に存在する間質液からの受動拡散によって、皮膚の表面に達する分析物の量をトレースする。これらの分析物は体の他の部分から来て、血液循環を介して間質液へ送達されるので、これらは環境化学物質または農薬への体曝露、並びに内部代謝を含む種々の生理学的工程を反映している。表皮角質の微小層を、表皮角質の直下に存在する生存表皮からの間質液の汲み上げを可能にするように穏やかに切除する。
【0149】
健康および他の重要な生物学的マーカーの測定のための好ましい検出スキームは、各アッセイに関して同一の表面および生化学物質を使用する。図8に戻ると、検出スキームに関する好ましい手順が示されている。好ましい手順は、タンパク質または被験者の代謝物の抗体を、蛍光タグ化抗原を組み込んでいるキャピラリー壁へ共有接着させることである。タグ化した抗原は、サンプリングされた間質液からの、被験者のタンパク質または代謝物に競合的に結合することによって置換される。蛍光抗原は溶液中に押し出され、光電子コンポーネントによって回収チャンバー内で、下流にて検出される。蛍光団励起および放出特性を光子に適合させ、光子モジュール中で正しく励起し放射を検出するために正しい波長供給源、検出器およびフィルターを統合する。
【0150】
例として、さまざまな分子量の以下の3つのタンパク質、トロポニンI、C−応答性タンパク質およびプレアルブミンを、健康特性をモニタリングするために使用することができる。アミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)のシラン表面処理に続いて、キャピラリー壁に抗トロポニンIを共有結合させる。トロポニンIを、蛍光またはローダミンのいずれかを用いて蛍光タグ化し、キャピラリー中に連結した抗体に結合させる。サンプリングからのトロポニンIの競合結合を用いて、蛍光タグ化トロポニンIを溶液中で置換し、下流で検出する。上記手順はまた、これらのタンパク質間の違いを考慮して改変するけれども、C−反応性タンパク質およびプレアルブミン両方に関して使用することができる。
【0151】
十分な表面コーティングを保証するために、表面化学物質を段階的に特性化する。結合した抗体および競合結合試験の量を、XPS、蛍光プレートリーダー、蛍光顕微鏡、または分離技術のような異なる器具を用いて、試験する。
【0152】
他の実施例において、カフェイン代謝物、5−アセチルアミノ−6−ホルミル−3−メチル(AFMU)および1−メチルキサンチン(1X)に対して作製したポリクローナル抗体を、マイクロマシンキャピラリー上で固定化する。キャピラリー表面上にヒドロキシル部分を導入するために、キャピラリーチューブを、化学処理によって改変する。次いで表面ヒドロキシル基をAPTSと反応させ、3炭素鎖の末端の遊離アミノ部位と、分子連結を産出する。
【0153】
AFMUおよび1Xに対して作製した抗体のFc領域中の糖残基を、過ヨウ素酸塩を用いて酸かし、アルデヒドを産出する。抗体を、抗体上のアルデヒドと、分子連結上のアミン間のシフ塩基形成を介して、マイクロマシンキャピラリーの表面に連結させる。この様式において、抗体結合領域は、マイクロマシンチャネルの表面からはなれて方向付けられる。
【0154】
微小チャネルの表面上での抗体固定化の量を、好ましくは、微小チャネルへの曝露の前後に、結合溶液のタンパク質含量の分析によって決定する。固定化抗体の結合活性は、蛍光標識化AFMUおよび1Xプローブの置換を用いて測定し、観察された活性を、非固定化抗体の当量濃度の活性と比較し、固定化抗体mgあたりの結合親和性指数(BAI)を算出する。
【0155】
カフェイン代謝物に関して、AFMUおよび1X抗体の特異性を評価するために、in vivoおよびin vitro試験を実施する。本発明の器具を用いた、これらの代謝物の比を測定するための能力は、携帯式生体医学的モニタリングシステムを用いて得た比を、従来のHPLC方法を使用して得た比と比較することで評価する。本アッセイにて改変した器具を、in vivoおよびin vitro両方にて、前臨床評価を実施するために試験する。これらのデータは、ベースラインおよびアルゴリズムを試験するための予備データとして使用する。
【0156】
プレアルブミン、CRP、トロポニンIに対する抗体は現在のところ市販されており、そのタンパク質に対するこれらの抗体の特異性を評価するのに使用する。いくつかの市販されている抗体は活性ではないか、または特異的ではないので、このプレスクリーニング試験は、それぞれの被験者タンパク質に対する活性および特異性を決定するために好ましい。特異性を、好ましくは交差反応する可能性がない、構造が同一の他の基質を加えることにより、それぞれの抗体に関して試験する。たとえば、プレアルブミンの評価においてとりわけアルブミンおよびグロブリンのようなタンパク質を加える。カフェイン代謝物の評価においては、キサンチン類およびキサンチン代謝物を加える。抗体、リガンドおよび蛍光標識リガンドを用いたアッセイは、フローインジェクション分析(FIA)のような技術を用いて好ましく開発する。
【0157】
それぞれの完成したアッセイを精度、再現性、線形性に関して評価し、結果を、臨床検査にて現在使用されている既存の手順と比較する。in vivoおよびin vitro試験に関する前臨床評価を実施し、データを開発されたアルゴリズム中で使用する。
【0158】
本発明の携帯式生物医学的モニタリングシステムは、好ましくは、マイクロチャネル内での経皮線量測定固定化抗体、流体移動度に対するキャピラリーの働き、および検出のための統合光電子を用いた、代謝物および他の体分析物の増強経皮送達を用いた、分子スケール操作に基づいている。したがって、本発明のマイクロ流体チップインターフェイス技術は、宿主流体からの制御された試料採取(循環および非循環)、および流体(薬物、化学物質)および標的プローブ(抗体、タンパク質、シグナル分子)の制御送達を提供する。さらに、本発明の試料採取プラットフォームは、気体または溶液狭量環境対象分析物をサンプリングするための「外部向き(outward facing)」器具コンポーネント、および皮膚表面または接近可能体液から発散される標的分析物の検出のための、「内向き(inward facing)」構成物を同時に利用することができる。
【0159】
本明細書で開示している携帯式生物医学的モニタリングの器具および工程は、広範囲の化学物質に適用可能である。たとえば、本携帯式生物医学的モニタリング器具には、健康(チップ「A」)および疾患または感染(チップ「B」)をモニタリングするチップを含みうる。チップAは、グルコースのような分子を測定し、正常および高ストレス状態での被験者の健康状態のベースラインを確立可能である。これらのベースライン値からの変化は、チップBに対する必要性を示す可能性がある。チップBは、疾患の正確な原因を決定するために設計される。たとえば、チップBは、化学兵器を真似るパラチオンおよびその代謝物にカップリングする抗体を含みうる。マイクロシステムの構造は、薬物代謝および/または「プローブ薬物(probe drugs)」に基づく多くの他の型の化学物質に適合可能である。
【0160】
薬物代謝は、酵素触媒反応によって、薬物が尿中および胆汁中に簡単に排泌される産物または代謝物に変換される工程である。薬物代謝物の1つの経路は、第I相反応であり、基質分子中の官能基の作製または改変が含まれる。シトクロームP450依存(CYP)ミクロソーム混合機能オキシダーゼ系が、これらの反応に対してとても重要な酵素系である。第二の主要な経路には、第II相反応が含まれ、そこで、薬物または第I相代謝物は、水溶性内因性基質とカップリングする。第II相反応は、トランスフェラーゼとしてまとめて公知である種々の酵素群を含む。この群には、UDP−グルクロニルトランスフェラーゼ、UDPグルコシルトランスフェラーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、メチルトランスフェラーゼ、およびN−アセチルトランスフェラーゼが含まれる。
【0161】
薬物代謝は、食事および環境因子によって影響を受ける。たとえば、アルコール、特定の食物成分およびタバコの煙内の化合物が、工業汚染物および農薬のように、多くの薬物の生体内変換に影響を与えることが観察されてきた。遺伝的因子もまた、薬物代謝の制御において重要な部分を果たしており、個体間での薬物効果の大きな違いが存在する。いくつかの酵素に関して、別々の遺伝的亜群がヒト集団に存在する。これらの遺伝的多型は、酵素発現または活性の減少、増加、または欠失を引き起こす、これらの酵素をコードしている遺伝子内の変異によって産出される。さまざまなCYP類の遺伝的多型が同定されており、その活性は、2つに明確に定義された、そして質的に異なる集団、代謝の速度および量が少ない個体(弱代謝者、PM)、および代謝が早いかまたはより多量である個体(過代謝者、EM)に分けられる。いくつかの第II相酵素の遺伝的多型もまた存在する。たとえば、N−アセチルトランスフェラーゼ−2(NAT−2)は、この方法にて影響を受け、このアセチル化多型は、種々の薬物および発がん物質の代謝に関与する。多くの対立遺伝子が、本酵素の機能の減少に関わっており、二方性分散が観察されている。個体の50〜60%が遺伝的に遅延アセチル化性質であり、残りは早いアセチル化性質である。
【0162】
健康な個体において、代謝遺伝子型は通常、代謝表現型を予測する。すなわち、特定の酵素に関して、遺伝子型的に過代謝者は、この酵素に対する基質である薬物を効率的に代謝することが観察されており、遺伝子型的に弱代謝者は本処理において、欠失している。しかしながら、薬物相互作用、感染、疾患進行および栄養不良は、代謝酵素の相対濃度および活性の変化を起こす可能性がある。したがって、健康な個体において、遺伝子型とその発現(表現型)との間の関係が保たれており、すなわちFAST遺伝子型はFAST表現型を起こし、一方でSLOW遺伝子型はSLOW表現型を産出する。しかしながら、個体の疾患状態は、食事、喫煙、アルコール、環境化学物質、および生物兵器または化学兵器がそうであるように、この関係を変えることができる。この理由のために、代謝表現型(実際の酵素活性の測定)の決定は、非常に重要であり、健康および臨床的状態の、直接のそして感度のよいプローブとして使用することができる。好ましい実施様態において、無害の試験化合物またはプローブ薬物によって産出される特定の代謝物パターンの同定および定量を、被験者の代謝表現型を決定するのに使用することができる。たとえば、カフェインはNAT−2を伴うものを含むさまざまな経路によって代謝される。したがって、2つの代謝物の尿中比、5−アセチルアミノー6−ホルミルアミノ−3−メチルウラシル(AFMU)対1−メチルキサンチン(IX)はNAT−2活性の指標である。
【0163】
多くの実施様態の例を以下に示す。それぞれの実施様態は、単独、または本発明の他の実施様態と組み合わせて実施することができる。
【0164】
たとえば、以上で記述したように、グルコース、カフェイン、エタノール、およびデキストロメトロファンのような、ヒトの健康の異なる化学的プローブの検出のための化学物質を含むが限定せず、「ストレス(stress)」の性質または代謝マーカーをモニタリングすることができる。「ストレス」は、インスリン−グルコースパターンの変化、または安全な、一般的に使用されている刺激物(カフェイン)または抗ヒスタミン剤(デキストロメトロファン)の異常肝臓異化作用のような、多くの内部代謝経路の検出可能な変化を介してそれ自身明らかになりうる。
【0165】
酵素N−アセチルトランスフェラーゼ(NAT−2)は、カフェインを代謝する。本酵素は、高度に多型性である。NAT−2の活性は、薬物副作用、種々の毒素および疾患に対する傾向に関連することが知られている。高速および遅延N−アセチル化型の2つの主要な代謝表現型が同定されている。NAT−2(表現型)の発現活性は、急性および慢性疾患状態によって影響を受けることが示されている。たとえばHIV+およびAIDS患者において、急性疾患の存在によって、NAT−2の発現活性が減少し、急速NAT−2表現型の患者が、遅延NAT−2表現型に変化する。疾患が解決し、患者が初期臨床状態に戻った時に、患者は再び急速NAT−2表現型を発現する。したがって、個体のNAT−2表現型の決定および本表現型の変化のモニタリングは、個体の健康および臨床状態の直接の、そして感度のよいプローブでありうる。この決定により、薬物治療を開始する前に、患者がFASTか、またはSLOW代謝者であるかどうかの予測が可能である。このアプローチは、処置の開始の時点で好ましい投与量で治療を行い、薬物の過剰投与または過少投与を避けるように薬物治療を開始する前にすべての患者をスクリーニングすることを可能にする。
【0166】
NAT−2表現型は、多くのプローブにより決定できる。好ましい実施様態において、その広範囲分布と比較的安全であることから、カフェインを使用する。プローブとしてカフェインを使用する試験において、酵素の表現型は、2つのカフェイン代謝物の比、AFMU対1Xによって決定する。これらの代謝物の比に基づいて、酵素の活性を決定できる。ポリクローナル抗体を代謝物AFMUおよび1Xに対して生成し、ついで精製する。これらの抗体は、NAT−2表現型を決定するために、首尾よく使用される。
【0167】
好ましい検出スキームは、特定の代謝物または化学抗原の抗体の、キャピラリーの表面への連結からなる。抗体は、ローダミンのような蛍光タグに連結した特異的抗体に結合する。抗原がチャネル内に流れる時に、下流で検出される蛍光タグを放出する。
【0168】
したがって、他の実施様態において、NAT−2を用いた表現型決定を、感染または疾患状態を示すために構築する。酵素NAT−2は高多型性である。NAT−2の活性は、薬物副作用、種々の毒性および疾患の素因に関連する。この表現型の変化のモニタリングは、兵士の健康および感染状態の直接の、そして感度の高いプローブである。
【0169】
さらなる実施様態において、有機リン系化学(神経)物質を、殺虫剤代理モデル化合物パラチオンを用いてモニタリングする。タブン、サリンおよびソマンのような、「神経ガス(nerve gas)」タイプの化学兵器は、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで作用し、有機リン系殺虫剤、パラチオン(またはその代謝物)は、曝露を検出するための優れた「代理(surrogate)」分析物を提供する。したがって、パラチオンモニタは、重要な工業的および社会的適用性を有する。
【0170】
さらなる実施様態において、たとえば、インターロイキン−1(IL I)、インターロイキン−6(IL 6)、および腫瘍壊死因子(TNF)などの、微生物毒素に対する炎症続発症をモニタリングする。循環IL 1、IL 6およびTNFは、本発明にしたがった、浸透増強経皮技術および高等検出システムデザインを用いて採取し、検出可能である候補分析物を与える。
【0171】
たとえば、さらなる実施様態において、アントラキシ、ボツリヌス毒素、エンドトキシンなどの、微生物毒素をモニタリングする。微生物毒素は典型的には大きな分子であるが、微視的力学的バリア改変技術(たとえば熱微小切除)を用いた表面上移動の増加に関連した、これらの非常に高い生物学的力により、毒素応答性成分を組み込んだ検出システムを用いる経皮線量測定が可能になりうる。さらに、抗体タグを、感染剤の同定、および微生物およびウイルス負荷の決定のために使用することができる。さらに、(微生物供給源からの)D−アミノ酸の決定は、抗体治療に対する応答のモニタリングを可能にしうる。
【0172】
さらなる実施様態において、胞子代謝物をモニタリングできる。微生物胞子のリンパ系および肝臓系経路を介した、ヒト異化作用から得られる循環生物化学的代謝物は、本発明の技術および最適化検出システムデザインを用いて採取し、検出する。
【0173】
さらなる実施様態において、以下の表で示したような特定のタンパク質をモニタリングする。
【0174】
【表1】

【0175】
プレアルブミン(MW 54,000)は、栄養状態の重要なマーカーとして知られている。0〜1ヶ月齢に対する参照範囲は70〜390mg/Lである。本実施例の使用には、栄養状態に関する内部都市小児集団のスクリーニング、ならびにとりわけ手術前の、栄養状態に関するすべての患者のスクリーニングが含まれるがこれに限定されない。
【0176】
C−反応型タンパク質(MW 115,000〜140,000)は、急性相反応物質であり、多くの疾患工程で上昇する。成人での参照範囲は、68〜8200μg/Lである。本タンパク質の測定によって、健康対疾患のよい指標が提供される。C−応答型タンパク質はまた、心臓疾患および切迫心筋梗塞の重要な予測物質でもある。したがって、本アッセイは、心血管の健康に対してスクリーンするためにも使用することができる。
【0177】
トロポニンIは、急性心筋梗塞に対する有用で、特異的なマーカーとして認識されている。成人での参照範囲は、<0.1μg/Lである。心筋梗塞患者は、>0.8μg/Lである。本アッセイは、病院の救急室中での、トロポニンIのリアルタイム評価を提供し、患者が集中治療室に対し許容されることが必要であるという、早期認識を提供する。
【0178】
モニタリングに加えて、本発明の生物医学的モニタリングシステムは一日を通して特定のレベルで体内の特定の薬剤の濃度を維持するために、in burstsフィードバック制御を伴う薬物送達を提供し、そのレベルは1日ごとに、および1日の間で変化可能である。そのような物質の例には、ホルモンエストロゲンおよびテストステロンが含まれる。年齢にともなうエストロゲン減少は、女性おける骨粗鬆症および心臓血管疾患のリスクの増加に密接に関連している。さらに、薬理学的エストロゲンによる置換が、心臓血管疾患による死亡率を改善し、骨粗鬆症骨折のリスクを減少させ、アルツハイマー病から女性を保護する重要な役割を果たす可能がある。これらの疾患は、非常に大きな社会的インパクトおよび費用を要するが、しかしエストロゲン置換による処置は乳がんおよび子宮ガンの進行を含む副作用の発現のみではなく、皮膚変化、体重変化、鬱を含む他の効果の発現にも関わる。エストロゲンそれ自身のように効果的であると示されている治療薬は存在しないが、骨、乳または他の組織上で選択的に作用する改変エストロゲンを発展させるために、大きな努力が払われてきた(特異的エストロゲンレセプターモジュレーターまたはSERM類)。生理学的に、制御され、モニタされた様式で、効果的なエストロゲンを投与するアプローチが魅力的であり、もっとも効果的な薬物治療であり、それを用いた画期的な治療方法は、大きな利益を保証する。
【0179】
制御され、モニタリングされた様式でのテストステロンの送達もまた有用でありうる。HIVを含む、多くの病理学的状態でそうであるように、テストステロンの血清濃度もまた年齢によって減少する。HIVおよびがんによる消耗、男性骨粗鬆症および慢性閉塞性肺疾患の処置のためのテストステロン置換方法が浮上しており、首尾よい回復率および可能性を増強するために、主要な手術の後に、短期間の制御された投与のために有用でもある。これらの実施様態の実現可能性は、Rhesus雌サルおよびヒト女性でのエストラジオール(E2)の経皮検出を介して調査する。原型固相E2検出システム(TED)を、TED中のE2に対する抗体を固定化する経皮パッチ内に組み込むことができ、放射免疫アッセイ手順を用いて、ex−situで分析できる。E2検出システムは、0.125ピコグラム以下で検出可能である。TEDを、部分的または完全に去勢したメスのRhesus雌サル(n=3)の胸上に、24時間備え付けることでまず試験し、プラセボまたは20ug/kgエストラジオールベンゾエートで処理する。TED測定は、高循環E2濃度を持つサルと、循環E2を持たないサルを区別する。TEDはまた、広範囲の循環E2濃度(48〜382pg/ml)を示している4人の生殖年齢ヒト女性の前腕に塗布することが可能である。TEDにて採取されたE2は0.06〜0.5pgにわたり、循環E2濃度に大まかに比例する。これらのデータは、in vivo浸透係数4.3+/−0.5×10’5cm/hrと一致する。
【0180】
さらなる実施様態において、本発明の携帯式生物医学的モニタリング器具は、痛みの管理のために使用可能であり、痛みの制御を実施する一方で、細胞毒性を最小化するために、コデインおよびモルヒネなどの送達の最良の方法を決定する。
本発明のさらなる実施様態において、MEMSに基づく物理療法チップを、正常および異常環境状態下でのヒトの機能に関連する基礎的生理学的観点を非侵襲的にモニタリングするために使用できる。体温、パルス率、血圧、および心臓活性(心電図)のような関連する生理学的データの慎重なモニタリングによって、極小変化、または異常な振る舞いが、ヒト系に対するストレスの早期指標を提供可能である。
【0181】
さらなる実施様態において、受動的、または非侵襲的熱線量測定は、正常の皮膚バリアの物理または化学的改変なしに使用される。本実施様態は、溶液および水溶性両方を示している低分子量分析物に関して実用的である。
【0182】
実験および臨床試験の以下の記述は、本発明の種々の実施様態が、どのように実施されるかを示すために提供される。本発明のこれらの実施様態の操作を示すための好適な分析物が以下で提供される。しかしながら、本発明のシステムおよび方法は、本発明の種々の実施様態内でのとても広範囲の分析物の組の分析を考慮することを認識すべきである。
【0183】
固定化ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を基本とするHPLC静止相の開発およびこれらの相の、薬物−受容体相互作用のオンライン測定への適用
nAChR−界面活性剤溶液の調製 ラット総前脳またはトランスフェクト細胞を、50mM Tris−HCl、pH7.4(緩衝液A)中に懸濁し、ブリンクマン ポリトロン(Brinkmann Polytron)にて30秒間均質化し、40,000×gにて10分間、4℃で遠心する。ペレットを、緩衝液A中の6mlの2%デオキシコール酸、または2%コール酸中に再懸濁し、2時間攪拌する。混合液を35,000×gにて30分間遠心し、nAChR−デオキシコール酸溶液を含む上清を採取する。
【0184】
MM粒子またはスーパーデックス(Superdex)200ゲルビーズ上でのnAGhRの固定化 乾燥IAM粒子を4mlの、nAChRサブユニットまたはサブタイプを含む、得られた界面活性剤溶液中に懸濁する。1つのnAChRサブタイプの固定化のために、IAM−界面活性剤−レセプターの混合液を、室温にて1時間攪拌する。この懸濁液を、2×1Lの緩衝液Aに対して、4℃にて24時間透析する。次いで、固定化nAChRを含むIAM LC支持体を緩衝液Aにて洗浄し、遠心し、固体を採取する。
【0185】
60mgのL−α−レシチン(20% ホスファチジルコリン)、10mg L−α−ホスファチジルセリン、および20mg コレステロールの乾燥脂質混合物を、4mlの得られたnAChR−界面活性剤溶液で可溶化する。nAChR−脂質−コール酸塩溶液を、50mgの乾燥スーパーデックス200ビーズと混合する。懸濁液を、緩衝液Aに対して、4℃にて24時間透析する。固定化されなかったリポソームを2,000×gにて緩衝液Aでの遠心洗浄によって除去する。
【0186】
nAChR−IAM粒子およびnAChR−スーパーデックス200ビーズの懸濁液に対する([H]−エピバチジン([H]−EB)結合をアッセイ: 30mg乾燥物質に相当する、cAChR−IAM粒子、IAM粒子、nAChR−スーパーデックス200ゲルビーズおよびスーパーデックス200ゲルビーズをそれぞれ、緩衝液A 1.25mlに懸濁する。それぞれの懸濁液250glの分液を、250glの[H]−EB[1.5nM]と共に、最終容量2.5mlで、24℃、4時間インキュベートする。
【0187】
実験を、100μlの300μM (−)−ニコチンあり、およびなしで実施する。結合または遊離リガンドを、0.5%ポリエチレンイミンで処理したウィットマン(Whitman)GF/Cフィルターを介して吸引濾過し、分離する。フィルターに残った放射活性を、溶液シンチレーション計数管にて測定する。特異的結合を、総結合および非特異的結合間の差として定義する。タンパク質の量を、BCA薬剤(ピアス(Pierce,Rockford,IL,USA))を用いて、570nmにて測定して、決定する。
【0188】
nAChR−LAMカラムまたはnAChR−リポソーム−スーパーデックス200カラムに基づくクロマトグラフィー:nAChR−IAM粒子またはnAChR−スーパーデックスゲルビーズを、HR5/2ガラスカラムに詰め、HPLCポンプに連結する。[H]−EBを、マーカーとして使用し、オンライン流動シンチレーション検出器(525TR)で溶出プロフィールをモニタリングする。すべてのクロマトグラフィー実験は、室温にて0.4ml/分の流速で実施する。
【0189】
ゾーナルクロマトグラフィー実験において、100μlループを使用して試料をアプライする。クロマトグラフィーデータを、0.5分間隔で合計し、マイクロソフト エクセル(Microsoft Excel)プログラムを用いて、5点移動平均にてなめらかにする。
【0190】
フロンタルクロマトグラムにおいて、50mlの試料スーパーループを用いて、nAChRカラムを介して[H]−EB濃度シリーズをアプライし、前部およびプラトー領域を示している溶出プロファイルを得る。クロマトグラムデーターを、1分間隔で合計し、10点移動平均にて、マイクロソフト エクセルプログラムを用いてなめらかにする。
【0191】
結果:nAChRサブユニットまたはサブタイプの固定化 トランスフェクトした細胞の膜から単離した約63mgのタンパク質、および脳組織から調製した14mgのタンパク質を、それぞれ、IAM粒子またはスーパーデックス200ゲルビーズ、1グラムあたりに固定化する。[H]−EBを用いる受容体結合アッセイにより、nAChR結合活性が、以下の表中で示したような固定化手順の後に保持されることを示している。併行実験において、[H]−EBの非特異的結合を、IAM粒子およびスーパーデックス200ゲルビーズ上で検出する。
【0192】
【表2】

【0193】
α3/β4 nAChR−IAM静止相でのフロンタルクロマトグラフィー: [H]−EBの保持容量は、60pMの濃度にて23mlである。この遅延は主に、[H]−EBの濃度が450pMまで上昇するときに(図X、プロファイルB)、8mlまで保持容量が減少したことによって示されるように、受容体の飽和可能部位への特異的結合のためである。[H]−EBのα3/β4 nAChR−IAM静止相の結合は、移動相中で公知のα3/β4 nAChRリガンドを用いた競合置換実験にて減少可能である。たとえば、60pM [H]−EBの保持容量は、60nM濃度のnAChR−リガンド(−)−ニコチンを移動相に加えた時に、23mlから18mlまで減少し、(−)−ニコチン濃度が1000nMまで増加したときに、0.9mlまで減少する。ディスプレーサーの移動相濃度に対する、[H]−EBの保持容量の減少は、受容体に対するディスプレーサーの結合親和性を反映する。本技術を用いて、ニコチン薬物の、α3/β4 nAChRの相対親和性を、規定のレベルまでの[H]−EBの保持容量を減少するのに必要な濃度を測定することにより簡単に分類する。
【0194】
α3/β4 nAChRカラム(0.5×1.25cm)上において60pM [H]−EBの保持容量を9.5mlから6mlに減少させるために、それぞれ0.12nMの(±)−EB、1.7nMのA85380、45nMの(−)−ニコチン、1,200nMのカルバコール、または21,000nMのアトロピンの濃度の移動相を必要とする。本方法によって決定された、これらの薬物のa3/(34 nAChRに対する相対親和性は、したがって、(±)−EB>A85380>(−)−ニコチン>カルバコール>アトロピンであり、このことは膜ホモジネートを用いたリガンド結合アッセイの結果と一致している。相対親和性は、以下の表中の得られたデータより計算された関連定数によって分類可能である。
【0195】
【表3】

【0196】
これらの解離定数(K)値は、膜ホモジネートを用いた結合アッセイにて測定された値と同一のランクオーダーを示している。アトロピンの低親和性(K:17,200aM)もまた文献値と一致する。
【0197】
固定化nAChRサブタイプの異なる特異的結合活性の決定に関するゾーナルクロマトグラフィー:[H]−EBの結合をまた、α3サブユニットのみ、β4サブユニットのみ、2つの細胞型の混合物、またはα3/β4 nAChRを含むカラム上で、ゾーナル形式にて測定する。α3 nAChR−IAM(ピーク1、図23a)、β4 nAChR−IAM(ピーク2、図23A)、およびα3/β4 nAChR−IAM(ピーク3、図23A)上での[H]−EB保持は低く、ディスプレーサー、(−)−ニコチンが移動相に含まれる時には保持容量の有意な変化は認められず、[H]−EBは固定化α3/β4 nAChR−IAMを含むIAMカラム上で保持される(ピーク4、図23A)。保持容量は、[H]−EBの濃度が上昇したとき、または(−)−ニコチンが移動相(ピーク4図23Bの破線)に含まれる時に、減少する。
固定化nAChRサブタイプの特異的結合活性。
【0198】
固定化受容体に対する結合の結果は、[H]−EBおよび(−)−ニコチンが、nAChR α4/β2サブタイプにおいて、α3/β4サブタイプよりも高い結合親和性を持つことを示しており、これらの結果は、以下の表で示したような、膜ホモジネートを用いたリガンド結合アッセイより測定された結果と一致している。α4/β2 nAChR−リポソーム−スーパーデックス200カラムから得たK値は、α4/β2 nAChR−IAMカラムを用いて測定したものと同様である。
【0199】
【表4】

【0200】
H]−EBの結合における移動相のイオン強度およびpHの影響: [H]−EBの結合親和性における移動相イオン強度およびpHの影響を、α3/β4 nAChR−カラムで測定する。移動相のpHをpH4.0からpH7.0に増加させた時、およびpH7.0〜9.5で一定に維持した場合に、保持容量が増加する。[H]−EBの保持容量は、低イオン強度(5mM 酢酸アンモニウム)にてより大きく、移動相のイオン強度が増加する場合に減少する。
【0201】
nAChRカラムの安定性および再現性: 1つのα3/β4 nAChR−IAMカラムを、10日間にわたって連続的に使用し、4℃にて40日間保存する。60pM [H]−EBに対する保持容量は、9.5±0.05ml(1日目より10日目まで)、および9.7±0.08ml(50日目)である。同一の濃度でのEBの保持容量は、カラム間で異なるが、異なる細胞株バッチより調製した3つのα3/β4 nAChR−IAMカラムにおいて得られたEBおよび(−)−ニコチンの相対親和力は、以下の表で示したように、再現可能である。
【0202】
【表5】

【0203】
ラット全脳からの、IAM支持体上での、固定化GABAAおよびニコチン性アセチルコリン受容体の調製: ラット全脳(4脳)を、5mM EDTA、3mMベンザミジン、および0.2mM PMSF(フェニルメチルスルホニルクロライド)を含む、30mlのTRIS−HCl緩衝液[50mM、pH7.4]中で、ブリンクマンポリトロン(BrinkmanPolytron)を用いて、設定6にて、3×20秒間均質化させる。混合液を、各均質化段階間で20秒間氷浴中に置き、組織の過剰な加熱を防ぐ。均質化された脳組織を、21,000rpmにて10分間、4℃で遠心する。上清を、パスツールピペットを用いて取り除き、廃棄する。ペレットは、TRIS−HCl緩衝液[50mM、pH7.4]中の100mM NaCl、2mM MgCl、3mM CaCl、5mM KCl、2% Na−コール酸塩および10μg/ml ロイペプチンを含む可溶化緩衝液10ml中に懸濁させる。得られた混合液を、12時間、4℃にて攪拌し、21,000rpmにて遠心する。
【0204】
上清(受容体−コール酸懸濁液)を、200mgの乾燥IAM−PCパッキング物質と混合し、1時間、25℃にて穏やかに攪拌し、透析チューブ内に移し、TRIS−HCl緩衝液[50mM、pH7.4]中の5mM EDTA、100mM NaCl、0.1mM CaClおよび0.1mM PMSFを含む、3×600mlの透析緩衝液に対して、4℃にて48時間透析する。
【0205】
受容体−IAM−PCを、2,000rpmにて、4℃で、3分間遠心する。上清を捨てる。ペレットをTRIS−HCl緩衝液[50mM、pH7.4]にて洗浄し、上清が透明になるまで遠心する。得られたペレットを使用してカラムに充填する。
【0206】
フロンタルクロマトグラフィーを用いた、固定化GABAA受容体(GR)に対する結合親和力の測定: GR−IAM粒子を、HR5/2ガラスカラムに充填し、HPLCポンプに連結する。GABAA受容体リガンドである、[H]−フルニトラゼパム([H]−FTZ)をマーカーとして使用し、オンラインフローシンチレーション検出器(525TR)にて溶出プロファイルをモニタリングする。すべてのクロマトグラフィー実験は、室温にて、0.4ml/分の流速で実施する。フロンタルクロマトグラフィーにおいて、50mlの試料のスーパーループを使用して、GRカラムを通して、[H]−FTZ濃度シリーズにアプライし、前方およびプラトー領域を示している溶出プロフィールを得る。クロマトグラフィーデータを1分間隔で合計し、マイクロソフトエクセルを用いて、10点移動平均でなめらかにする。
【0207】
GABAA受容体リガンドジアゼパム(DAZ)を移動相に加えた場合、[H]−FTZの保持容量が、移動相中のDAZの濃度に比例して減少する。これらの結果は、GR−IAM上でのFTZの保持が、固定化GABAA受容体との特異的相互作用によるものであることを示している。FTZおよびDAZの解離定数(K)をGR−IAM上で測定する。フロンタルクロマトグラフィーによって得られたFTZおよびDAZの計算されたKは、以下の表で示すように、古典的な結合アッセイによって測定されたものと一致する。
【0208】
【表6】

【0209】
ER−LBDの産出および精製 エストロゲン受容体(ER)は、細胞核受容体スーパーファミリーの一部分である。これらは5つの異なる領域、A、B、C、D、およびEからなる。リガンド結合ドメイン(LBD)として知られているE領域は、アゴニストおよびアンタゴニストが結合する場所である。ER−LBDは、タンパク質AとLBDとの間の融合産物を介して、酵母または微生物にて発現される。組換えエストロゲン受容体タンパク質の産出を記述する。ヒトエストロゲン受容体タンパク質のリガンド結合領域をコードしているDNA配列(アミノ酸302〜595)を、テンプレートとして全長cDNAを用いてPCRによって得る。PCR反応の産物をタンパク質のN−末端上の6ヒスチジンタグとインフレームで、pRSETプラスミド内にサブクローン化する。Hisタグが、微生物タンパク質からのタンパク質の精製のために使用される。プラスミドをBL21コドン+微生物内に形質導入する。微生物を、標準のLB培地内で、X=600での光学密度が〜1.5になるまで増殖させる。
【0210】
微生物を遠心により採取し、さらなる精製まで−80℃にて冷凍する。微生物ペレットを、音波処理によって尿素/HEPES溶解緩衝液で溶解し、遠心および濾過により精製する。溶解物を、尿素/HEPES溶解緩衝液にて先に平衡化した、5mlのNi−NTAニッケル親和カラム上にのせる。Ni−NTAカラムは6−Hisタグにて、タンパク質に選択的に結合する。タグ化していないタンパク質を、尿素/HEPES緩衝液にてカラムより洗浄して切除する。エストロゲンレセプターを、緩衝液をPBS(リン酸緩衝化食塩水)緩衝液に徐々に変更することで、カラム上でリホールドさせる。最後に、エストロゲン受容体タンパク質を、Ni−NTAカラムに結合することに関して、Hisタグと競合する、イミダゾールを含むPBS緩衝液にて溶出する。エストロゲン受容体タンパク質を含む画分を、ゲル電気泳動およびゲルコードブルー(Gelcode Blue)での染色によって、およびヒトエストロゲン受容体に対する抗体を用いたウエスタンブロット解析によって、測定する。精製されたタンパク質の濃度を、ビシンコニニック酸(BAC)タンパク質アッセイを介して測定する。
【0211】
ER−LBDの結合活性 融合タンパク質の活性を測定するために、結合アッセイを実施する。デキストランコートチャコールを用いた、古典的方法をまず使用し、タンパク質の活性を与える。しかしながら、本方法を、融合タンパク質を単離するために、ニッケル−NTAアガロースビーズを用いて改良する。およそ200pモルのタンパク質をチューブ毎に入れる。総結合に関して、種々な濃度の[H]−エストラジオールを加え、非特異的結合に関しては、放射標識エストラジオールの添加の前に、200倍過剰の冷エストラジオールを加える。溶液を室温にて2時間インキュベートする。インキュベートの後、ニッケル−NTAを加える。1回洗浄したのち、タンパク質をイミダゾールで置換する。Kはおよそ3.4nM(数回の実験の平均K)であると測定する。エストラジオールは、天然のER(0.2nM)に対して、わずかに強い親和性を持ち、これで十分である。
【0212】
ER−LBDの固定化 単離した融合タンパク質の初期固定化を、シリカを基にした固定化人工膜、IAM.PCを用いて実施する。本膜は、シリカコアを含み、これは極性頭基で、疎水性スペーサーに連結する。これらの膜上へのタンパク質の固定化に関する手順は、本技術分野で公知である。種々の濃度のIAMを使用し、固定化に関する最適条件を決定する。25mgのIAMが35%取り込みで、最適であることが決定される。
【0213】
しかしながら、活性の試験において、[H]−エストラジオールは、タンパク質に結合するのみではなく、膜の疎水性層にも結合することが明らかになっている。溶液中のエタノール濃度を増加させることでは、膜への結合を有意に減少させることはできない。より親水性である改変IAM静止相、IAM−MGを用いることでのみ、非特異的結合を減少させることができる。
【0214】
ついで、ER−LBDを、シリカ骨格および疎水性スペーサーを含む新規カラムフォーマットにて固定化する(C10)。ER−LBDを固定化し、その結合活性を維持し、一方で[H]−エストラジオールの非特異的結合は、カラムの効果な使用のため未だに高い。C10スペーサーを、親和性スペーサーに置換し、[H]−エストラジオールの非特異的結合を切除し、ER−LBD−SPカラムを合成する。
【0215】
次いで、エストラジオールマーカーリガンドのKを、ER−LBD−SPカラムを用いて、オンラインで測定する。ER−LBD−SPカラムを、オンラインフローシンチレーションモニタリング(kadiometric FLO−ONE Beta500 TR器具、パッカードインストルメント社(Packard Instrument Co.,)、Meridien、CT)に連結し、室温にて97.5分間、0.2mL/分の流速で行う。システムのセットアップは、Zhang,et al.,「薬物−受容体親和性のオンライン溶液クロマトグラフィー測定のための固定化ニコチン性受容体静止相(Immobilized Nicotinic Receptor Stationary Phase For On−Line Liquid Chromatographic Determination of Drug−Receptor Affinities)」、Anal.Biochem.264,22(1998)にて記述されたようなものである。冷エストラジオール(0〜7nM)の濃度範囲を含む、0.5nM [H]−エストラジオール([H]−E2)の18mL試料を、フロンタルクロマトグラフィーにかける。溶出容量データを使用して、リガンドの解離定数を計算する。エストラジオールのK値を、一部位結合式:Y=Bmax[E2]total/(K+[E2]total)を用いて、プリズム(Prism)(グラフパッドソフトウェア(GraphPad Software))での非線形回帰によって計算する。エストラジオールのK値を、先に(0.189±0.06)nMであると記述されたように計算する。放射活性シグナルを、オンラインフローシンチレーション検出器によって6秒間ごとに記録する。
【0216】
ER−LBDの調製: 組換えER−LBDを上述したようにして得て、精製する。
【0217】
ER−LBDの固定化:次いでER−LBDをマイクロマシンキャピラリー内に固定化する。固定化は、ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)を用いた、シリカチップ上のシラノール基の活性化、ついで活性化した表面への、遊離カルボキシル基でのC2スペーサーのカップリングによって行う。ついでER−LBDを、シリカゲルビーズからなる溶液クロマトグラフィー静止相での先行試験において開発した手順を用いて、誘導した表面に結合させる。微小チャネルの表面上に固定化されたタンパク質の量を、微小チャネルへの曝露前および後に結合溶液のタンパク質含量の分析によって測定する。
【0218】
ER−LBDの固定化に対する初期実験アプローチが首尾よくいかない場合、以下の手順を調査する。1)シリカ表面でのシラノール基の活性化の間に問題がある場合、DCCを、ジメチルアミノピリジン(DMAP)に置換する、2)問題がC2スペーサーより発生する場合、C3〜C4スペーサーを試験する、3)問題が、新規表面への固定化にて存在する場合、エポキシド活性化アプローチを、J.B.Wheatley et al.,「エポキシド活性化支持体上へのアフィニティリガンドの塩誘導固定化(Salt−induced immobilization of affinity ligands onto epoxide−activated supports.)」、J.Chromatogr.A,849,1(1999)、D.Zhou,et al.,「バイオポリマーの分析および精製に関する膜アフィニティクロマトグラフィー(Membrane affinity chromatography for analysis and purification of biopolymers)」、Chromatographia,50,27(1999)にて記述されたような方法、またはL.A.Paige,et al.,「エストロゲン受容体(ER)モジュレーターは、それぞれ、ERαおよびERβにおける異なる立体配座変化を誘導する(Estrogen receptor (ER) modulators each induce distinct conformational changes in ERα and ERβ)」、Proc.Nat.Acad.Sci.,96,3999(1999)にて記述されたようなストレプトアビジン−ビオチン化を用いるアプローチによって調査する。
【0219】
固定化ER−LBDの結合活性: 固定化ER−LBDの結合活性を、[H]−エストラジオール(リン酸緩衝液[0.1M、pH7.4]中で0.005nM)(リン酸緩衝液[0.1M、pH7.4]中で0.001〜0.0050nMの範囲を産出する濃度範囲の冷エストラジオールを含む、[H]−E2)を用いて測定する。[H]E2を含む溶液を、固定化ER−LBD、固定化支持体(ER−LBDなし、陽性対照)および露出マイクロチャネル(陰性対照)を含むマイクロチャネルにアプライする。マイクロチャネルを含む溶液を、室温にて30分間インキュベートする。次いでこのチャネルを、リン酸緩衝液[0.1M、pH7.4]にて3回洗浄し、洗浄液を採取し、シンチレーション検出器を用いて[H]−E2含量に関してアッセイする。E2のK値を、一部位結合式:Y=Bmax[E2]total/(K+[E2]total)を用いて、Prism(グラフパッドソフトウェア)にて、非線形回帰によって計算する。観察された結合親和性および結合の含量を、非固定ER−LBDの当量濃度を用いて実施した併行結合試験からのデータと比較する。これらの試験により、固定化受容体を特性化するのに使用する、結合親和性/mg固定化ER−LBD指数(BAI)が産出される可能性がある。
【0220】
固定化の最適化および再現性: ERLBDの固定化を、ER−LBD濃度、反応時間、温度および固定化で使用した化学物質の効果を調査することで最適化する。変数のそれぞれを、段階的最適化アプローチにて独立して調べる。それぞれの反復結果を、BAIを用いて評価する。一旦最適固定化手順が決定されたならば、本手順の日内および日間再現性を測定する。10%以下のバラツキが許容可能であると判断される。もし初めに決定された「最適」条件下でこのバラツキが満たされない場合、他の規定の状態を、変数を選択する時にBIAを用いて調べる。
【0221】
固定化ER−LBDチップの定量および検出の限界の決定: エストラジオールリガンドを、フルオレセイン−5−マレイミドにて誘導化し、臨床パッチにて使用するフルオレセント−リガンド{E2−FM}を産出する。このフルオレセント−タグが十分な感度を産出しない場合、他の薬剤を使用する。固定化ER−LBDチップを懸濁させ、次いでE2を含む溶液との表面接触に使用する。E2溶液の濃度を、初期濃度0.050nMから、E2−FMの置換が観察されなくなるまで段階希釈する。λex=488nmおよびλem=520nmにて測定された光学密度を、試験溶液のE2濃度に対してプロットして、標準曲線を構築する。標準日内および日間バリデーション試験を行い、測定の再現性、定量の下限および検出の下限を確立する。一旦これが確立されたならば、本チップは臨床試験に対して準備ができる。
【0222】
AR−LBDの調製: アンドロゲン受容体リガンド結合ドメイン{AR−LBD}融合タンパク質を、公知の手順にしたがって産出し、精製する。一旦タンパク質が発現し、精製したならばAR−LBDの結合親和性を、ER−LBDに関して記述した手順にしたがって従来の方法によって測定する。
【0223】
固定化AR−LBDチップの調製およびその活性のバリデーション: AR−LBDの固定化、固定化ERLBDの結合活性の測定、定量限界および検出限界の決定および初期の臨床的バリデーションをER−LBDで得られた結果に基づいて行う。
【0224】
タンパク質をER−LBDと同様の方法で固定化し、K値をフロンタルクロマトグラフィーにより測定する。カラムの安定性の測定も行う。
【0225】
これらのレセプターの固定化により、エストロゲンおよび/またはアンドロゲンレセプター上における、生物学的に活性/非活性な化合物の存在を速やかにスクリーニングし、決定することが可能になる。
【0226】
組換えER−LBDを上記のように得て、精製する。
【0227】
ER−LBDの固定化:ER−LBDについて上記した手順にしたがってAR−LBDを固定化する。
【0228】
本明細書に記載の臨床試験により、バリデート済みの血漿アッセイと比較した、経皮的なサンプリングによるエストロゲンおよびテストステロンの測定法の分析精度および確度を測定する。許容可能な検出限界および定量限界、ならびに許容可能なバラツキの日内および日間係数を持つ、エストロゲンおよびテストステロンのバリデート済みの血漿ELISAアッセイを、以下に詳述した4つの試験において述べた臨床状況におけるアッセイと比較するために用いた。
【0229】
臨床試験1:閉経前および閉経後の女性における、血漿中および間質液中エストロゲン濃度相関のパイロット試験
エストロゲン測定のための経皮サンプリングの分析感度をバリデートするために、エストロゲン含有する薬剤を服用していない月経のある健常女性8人および閉経後の健常女性8人について、血漿中または間質液中エストロゲン濃度を2ヶ月間測定する。血漿中エストロゲン濃度を、臨床現場でルーチンに用いられているバリデート済みの臨床ELISAアッセイにより測定する。これらの濃度をHWモニタリング装置を用いてエストロゲンレセプターベースのアッセイにより測定した間質液中濃度と比較する。血漿中および間質液中濃度を、月経のある女性については月経の終わりから10日後までの期間、閉経後女性については任意の10日以上の期間、毎日測定する。
【0230】
2つの群の女性を採用する:閉経前で、月経歴からみて月経周期が正常である女性8人からなる群、および閉経期を過ぎた女性8人からなる群。
【0231】
組入れ基準 群1:21歳以上40歳未満の女性。群2:55歳以上75歳未満の女性。全ての女性が以下の要件を満たすこととする。(1)エストロゲン様作用を引き起こすような処方薬剤または天然製品(例えばチョウセンニンジン、black kohosh)を服用していないこと、(2)完全血球計測、血清化学検査(Na、K、Cl、HCO、BUN、グルコース、およびクレアチニン)に関して臨床的に正常な検査値を持つこと、および臨床的に正常な肝臓酵素プロファイル、SGOT、SGPT、アルカリホスファターゼおよびビリルビンを示すこと、(3)本プロトコールに記載のインフォームドコンセントを理解し、署名する能力があること。
【0232】
除外基準 以下の者は本試験から除外する。(1)喫煙者、(2)血清SGOT、SGPTまたはビリルビンが正常な臨床検査値範囲を超えること、または血清クレアチニンが1.5mg/dLを超えることで示される肝機能障害または腎機能障害をもつ者、(3)尿薬物スクリーニング検査で陽性を示す者、(4)ヒト免疫不全ウイルスまたは肝炎に対し陽性である被験者、(5)試験開始30日以内に治験薬を摂取した被験者、(6)投薬前30日以内に、メディケーションを誘発または阻害するような任意の酵素(例、ラファンピン、フェニトイン)を摂取している被験者、および(7)治験責任医師の意見において、プロトコールの要件に不遵守の被験者。
【0233】
制限としては、被験者に以下のことを禁止する(1)投与前2週間、任意の処方薬剤を服用すること、(2)少なくとも試験第1日目の48時間前から最終の採血後まで、カフェインおよび/またはキサンチン含有製剤およびアルコールを摂取すること、(3)喫煙、(4)測定装置のズレを防ぐために、試験実施中の激しい運動。
【0234】
被験者が一旦試験に参加することに同意すれば、以下の手順を実施する。スクリーニング手順は試験開始から21日以内に実施し、それには病歴の聴取および身体検査、組入基準および除外基準の確認、血液および尿試料採取、血液検査、血清化学検査、肝臓酵素、HIVおよびB型肝炎およびC型肝炎に関する血液分析、および薬物濫用スクリーニングのための尿試料分析が含まれる。
【0235】
本試験への組入れに続いて、被験者に以下の処置を行う。被験者は朝約9時に試験実施機関に集合する。閉経後の女性に関しては正確な日付は重要でないが、月経がある女性に関しては各自の規則的周期の最終日についての報告を求める。この時点ではエストロゲン値は低く、分析の検出限界をおおまかに検査できる。バイタルサイン(心拍数、呼吸数、血圧および体温)を記録する。携帯式の生物医学モニタリング装置を前腕に取り付け、テープでしっかりと接着する。モニタの下側の、目立たない小さな針で皮膚に50ミクロンのカテーテルを挿入し、そこから記録する。記録している間モニタを確認する。バイタルサイン(心拍数、呼吸数、血圧および体温)を記録する。
【0236】
エストロゲン測定のために、被験者が仰臥位にて、静脈血の一試料(5ccまたはティースプーン1杯)を前腕から採血する。最適時間を試験するために、0.25、0.5、1、1.5、2、3、6、および8時間でエストロゲンを測定するように装置を設定する。最初の採取から4時間後、および8時間後に、さらに血液試料を採取する。テープと装置を外す。そこで患者は退院し、次の日の朝9時に再集合するまで家に帰ってよい。この手順を続く9日間繰り返し、被験者それぞれに対し計10日行う。
【0237】
血液サンプリング日程 1日目〜10日目に、上記の方法でEDTAを含むバキュテーナー中に5mLの静脈血を採取する。スクリーニングおよびエグジット試料を含む本試験過程中に採取した血液の総数は、35(30は試験のための採血、5は血液検査、清化学検査、肝臓酵素、HIVおよび肝炎それぞれのスクリーニングのための採血)であり、採血の総量は200mL以下である。
【0238】
バイタルサイン(心拍数、呼吸数、血圧および体温)は、装置の装着前後、および1日目〜10日目の採血の前後に測定する。
【0239】
患者には、装置を装着している腕に顕著な刺激があるときは報告することを奨励する。担当医は、本試験に参加している被験者の、複数回の採血による皮膚の挫傷または感染に関した懸念に絶えず応じられるようにする。
【0240】
血漿ELISAを用いて測定したエストロゲン濃度を、携帯式生物医学的モニタを用いて得られた値と比較する。有意性p<0.05で相関係数が>0.8であれば、測定値を有効とする。
男性の血漿中および間質液中テストステロン濃度相関のパイロット試験
21歳〜70歳の、薬剤を何も摂取していない健常男性10人について、バリデート済みの血漿アッセイと携帯式生物医学的モニタリング装置を用いた経皮的サンプリングの両方の方法で、5日間続けて血漿中および間質液中テストステロン濃度を測定する。
組入基準 21歳以上75歳未満の男性。全ての男性は以下の要件に従っていなければならない。(1)テストステロン様作用を引き起こす任意の処方薬剤または天然製剤(例えば、アンドロステンジオンまたはDHEA)を服用していないこと、(2)完全血球計測、血清化学検査(Na、K、Cl、HCO、BUN、グルコース、およびクレアチニン)に関して臨床的に正常な検査値を持つこと、および臨床的に正常な肝臓酵素プロファイル、SGOT、SGPT、アルカリホスファターゼおよびビリルビンを示すこと、および(3)本プロトコールに記載のインフォームドコンセントを理解し、署名する能力があること。
除外基準 以下の者は本試験から除外する。(1)喫煙者、(2)血清SGOT、SGPTまたはビリルビンが正常な臨床検査値範囲を超えること、または血清クレアチニンが1.5mg/dLを超えることで示される肝機能障害または腎機能障害をもつ者、(3)尿薬物スクリーニング検査で陽性を示す者、(4)ヒト免役不全ウイルスまたは肝炎に対し陽性である被験者。
【0241】
制限として、被験者に以下のことを禁止する。(1)喫煙、および(2)測定装置のズレを防ぐために、試験期間中の激しい運動。
【0242】
被験者が一旦試験に参加することに同意すれば、以下の手順を実施する。スクリーニング手順は試験開始から21日以内に実施し、それには病歴の聴取および身体検査、組入れ基準および除外基準の確認、血液および尿試料採取、血液検査、血清化学検査、肝臓酵素、HIVおよびB型肝炎およびC型肝炎に関する血液分析、および薬物濫用スクリーニングのための尿試料分析が含まれる。
【0243】
本試験への組入れに続いて、被験者に以下の処置を行う。被験者は朝約9時に試験実施機関に集合する。バイタルサイン(心拍数、呼吸数、血圧および体温)を記録する。携帯式生物医学モニタリング装置を前腕に取り付け、テープでしっかりと接着する。モニタの下側の、目立たない小さな針で皮膚に50ミクロンのカテーテルを挿入し、そこから記録する。記録している間モニタを確認する。バイタルサイン(心拍数、呼吸数、血圧および体温)を記録する。
【0244】
テストステロン測定のために、被験者が仰臥位にて、静脈血の一試料(5ccまたはティースプーン1杯)を前腕から採血する。最適時間を試験するために、0.25、0.5、1、1.5、2、3、6、および8時間でエストロゲンを測定するように装置を設定する。最初の採血から4時間後および8時間後に、さらに採血する。テープと装置を外す。そこで患者は退院し、次の日の朝9時に再集合するまで家に帰ってよい。この手順を続く4日間繰り返し、被験者それぞれに対し計5日行う。
【0245】
1日目〜5日目に、上記の方法でEDTAを含むバキュテーナー中に5mLの静脈血を採取する。スクリーニングおよびエグジット試料を含む本試験過程中に採取した血液の総数は、20(15は試験のための採取、5は血液検査、清化学検査、肝臓酵素、HIVおよび肝炎それぞれのスクリーニングのための採血)であり、採血の総量は200mL以下である。
【0246】
バイタルサイン(心拍数、呼吸数、血圧および体温)は、装置の装着前後、および1日目〜5日目の採血前後に測定する。
【0247】
患者には、装置を装着している腕に顕著な刺激があるときは報告することを奨励する。医者は、本試験に参加している被験者の、複数回の採血による皮膚の挫傷または感染に関した懸念に絶えず応じられるようにする。
【0248】
血漿ELISAを用いて測定したテストステロン濃度を、携帯式生物医学的モニターを用いて得られた値と比較する。有意差p<0.05で相関係数が>0.8であれば、測定値を有効とする。
【0249】
第3臨床試験の目的は、健常ボランティアの閉経後女性に対して適切な濃度のエストロゲンを投与し、その結果としての濃度を測定することである。エストロゲンは、以上で定義したようなモニタの最適なマシン設定を用いたベースライン値測定のために3日作動させた後、3日間にわたってマイクログラムパルスで投与する。
【0250】
第4臨床試験の目的は、55歳〜75歳の、健常ボランティアの男性に適切な濃度のテストステロンを投与し、その結果としての濃度を測定することである。テストステロンは、投与前に男性のベースライン時テストステロン濃度を測定するのに3日作動させた後、5日間にわたりマイクログラムパルスで投与する。得られる濃度は以上で定義した分析規格を用いて測定する。
【0251】
上記で引用した患者、公表論文、および参考文献は、本明細書でそのそれぞれの全体が、参考文献にて組み込まれている。
【0252】
本明細書の教義を考慮して他の実施様態をすぐに企図してよいことは、当業者にとって明白であろう。そのような他の実施様態は、特別に記載しなくとも、本発明の範囲および精神内に含まれる。このように、本発明は上記の特別な実施様態に限定されると解釈されるべきではなく、単に以下の請求項により定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮サンプリングシステムであって、
被験者の皮膚からの少なくとも1つの分析物を、経皮的に採取および送達するための少なくとも2つの試料採取器であって、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、マイクロ流体アセンブリを含む単一の微細加工器具に含まれており、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、被験者の皮膚の表皮角質の一部を、被験者の基底生存表皮からの間質液へのアクセスを促進するようにオンデマンドで切除するために設定された、少なくとも1つのマイクロヒーターを含む、前記少なくとも2つの試料採取器と、
前記少なくとも1つの分析物を同定および定量するための少なくとも1つの検出器システムと、
(i)前記少なくとも1つの検出器システムからの入力データを受信し、保存する、(ii)被験者の状態と関連する被験者から得た他のデータと、前記入力データを関連づける、(iii)前記入力データと前記他のデータとの関連づけにより測定された被験者の健康および臨床的状態を示す出力情報を表示する、(iv)出力情報を他のシステムに送信する、および、(v)前記少なくとも1つの試料採取器と、前記少なくとも1つの検出器システムの操作を制御するための少なくとも1つの論理モジュールと
を含む、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検出器システムが、蛍光団を励起するのに有効な少なくとも1つの光源を含む光学検出システム、および、励起された蛍光団からの蛍光を検出するための少なくとも1つの検出器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光源が、少なくとも1つのLEDあるいは少なくとも1つのレーザーを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記被験者の皮膚に接触している前記微細加工器具を保持するための手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記保持するための手段が接着剤である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記接着剤が、前記被験者の皮膚から経皮サンプリングシステムが動くことを、実質的に防止する、請求項5に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項7】
前記接着剤が、生理学的に適合性のある流体の欠失を防止するために使用される、請求項5に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項8】
前記接着剤が不透水性である、請求項5に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項9】
対象分析物に結合可能である、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれの中に位置する少なくとも1つの基質をさらに含み、前記基質が、前記少なくとも1つの検出器システムによって検出可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの論理モジュールによって、前記入力データと関連づけるために、前記他のデータとして規定の生理学的データをモニタリングするための方法をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの論理モジュールによって、前記入力データと関連づけるために、前記他のデータとして環境状態データをモニタリングするための方法をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの検出器システムが、前記少なくとも1つの分析物との接触に応答して変色する、少なくとも1つの分析物に対して感受性のパッチ、および、前記パッチの変色を検出するための少なくとも1つの検出器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの検出器システムが、比色分析物の感受性領域を含む比色検出システムを含み、観察者により知覚される前記比色分析物の感受性領域での変色が、分析物の存在を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記マイクロ流体アセンブリが、少なくとも1つの湾曲キャピラリーチャネルを備える、請求項1に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項15】
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、さらに、
少なくとも1つのレザーバチャネル、
少なくとも1つの底部キャッピング部分、および、
少なくとも1つの上部キャッピング部分、
を備える請求項1に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのレザーバチャネルが、前記少なくとも1つのレザーバチャネル内に生理学的に適合性のある流体を保持するために、少なくとも1つのシールをさらに備える、請求項15に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの底部キャッピング部分が、前記少なくとも1つのマイクロヒーターを含む、請求項16に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの上部キャッピング部分が、2つ以上の電極を備える、請求項15に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項19】
前記2つ以上の電極が、前記少なくとも1つの湾曲キャピラリーチャネルを介して、生理学的に適合性のある流体の流れをサポートする、請求項18に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの分析物を検出するためのセンサーをさらに備える、請求項15に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの分析物を検出するためのセンサーが、前記少なくとも1つの分析物との接触に反応して変色する、前記少なくとも1つの分析物に感受性のパッチ、および、前記パッチの変色を検出するための少なくとも1つの検出器を備える、請求項20に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項22】
前記マイクロ流体アセンブリが、前記被験者の皮膚より経皮的に採取した少なくとも1つの分析物を送達する、生理学的に適合性のある流体を含む、請求項1に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項23】
前記マイクロ流体アセンブリの少なくとも1つの表面が、サンプリング機能を強化するように改変された、請求項1に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項24】
前記マイクロ流体アセンブリの前記少なくとも1つの表面の前記改変が、前記マイクロ流体アセンブリの前記少なくとも1つの表面へのタンパク質の吸着を防止する、請求項23に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項25】
前記マイクロ流体アセンブリの前記少なくとも1つの表面の前記改変が、前記少なくとも1つの分析物に特異的に結合する少なくとも1つの特異的結合分子を、前記マイクロ流体アセンブリの前記少なくとも1つの表面に接着させる、請求項23に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項26】
対象分析物と反応可能である、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれの中に位置する少なくとも1つの基質をさらに含み、前記基質が前記少なくとも1つの検出器システムによって検出可能である、請求項1に記載の経皮サンプリングシステム。
【請求項27】
被験者の遠隔モニタリングを可能にするための微細加工器具であって、
被験者の間質液から少なくとも1つの分析物を経皮的に採取するための、少なくとも1つの試料採取器ユニット体であって、
前記試料採取器ユニット体が、
少なくとも2つの試料採取器、
被験者の皮膚の表皮角質の一部を、被験者の基底生存表皮からの間質液へのアクセスを促進するようにオンデマンドで切除するために設定され、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれに関連した、少なくとも1つのマイクロヒーター、を含む微細加工器具である、少なくとも1つの試料採取器ユニット体と、
被験者から得られた少なくとも1つの分析物を、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれにつき別々に、同定および定量するための、前記少なくとも1つの試料採取器ユニット体に接続された、少なくとも1つの検出器システムと、
前記検出システムによって検出された少なくとも1つの分析物に関連したデータを、論理モジュールによって処理するために、および、論理モジュールによって前記微細加工器具の制御を可能にするために、論理モジュールに送達するための送信器/受信器とを含む、器具。
【請求項28】
前記少なくとも1つの検出器システムが、複数の検出器システムを含み、前記複数の検出器システムのそれぞれが、対応する前記少なくとも2つの試料採取器の一つに接続される、請求項27に記載の器具。
【請求項29】
前記試料採取器ユニット体が、被験者の皮膚に実質的に接着するように設定された、請求項27に記載の器具。
【請求項30】
対象分析物に結合可能である、前記試料採取器ユニット体中に位置する少なくとも1つの基質をさらに含み、前記基質が前記少なくとも1つの検出器システムによって検出可能である、請求項27に記載の器具。
【請求項31】
前記少なくとも1つの検出器システムが、前記少なくとも1つの分析物との接触に応答して変色する、少なくとも1つの分析物に対して感受性の、前記少なくとも1つの分析物との接触のために位置されたパッチ、および、前記パッチの変色を検出するために位置された少なくとも1つの検出器を備える、請求項27に記載の器具。
【請求項32】
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、被験者の皮膚からの分析物をキャピラリーチャネルを介してサンプリングするための、そこより伸びた前記キャピラリーチャネル、および、前記少なくとも1つの検出システムと関連し、検出器チャンバー内で受領した分析物を検出するための、前記キャピラリーチャネルに連結した、前記少なくとも1つの検出器チャンバーを含む、請求項27に記載の器具。
【請求項33】
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、前記キャピラリーチャネルに連結した少なくとも1つのレザーバを含み、前記少なくとも1つのレザーバに保持された流体が、前記レザーバから被験者の皮膚、そして前記キャピラリーチャネルに送達される、請求項32に記載の器具。
【請求項34】
前記試料採取器ユニット体がさらに、前記流体が被験者の皮膚との接触部分に送り込まれたところに近接した場所にて、被験者の皮膚表面に近接して配置されるマイクロヒーターを備え、前記マイクロヒーターが被験者の皮膚の表皮角質の一部を切除する、請求項33に記載の器具。
【請求項35】
前記試料採取器ユニット体が、シリコン製である、請求項32に記載の器具。
【請求項36】
前記少なくとも1つの検出器システムが、蛍光団を励起するのに有効な光源を含む光学検出システム、および、励起された蛍光団からの蛍光を検出するための少なくとも1つの検出器を含む、請求項27に記載の器具。
【請求項37】
前記光源が、少なくとも1つのLEDあるいは少なくとも1つのレーザーを含む、請求項36に記載の器具。
【請求項38】
対象分析物と反応可能である、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれの中に位置する少なくとも1つの基質をさらに含み、前記基質が前記少なくとも1つの検出器システムによって検出可能である、請求項27に記載の器具。
【請求項39】
被験者の皮膚から分析物をサンプリングするための微細加工器具であって、
被験者の皮膚からの少なくとも1つの分析物を、経皮的に採取および送達するための少なくとも2つの試料採取器であって、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、単一の微細加工器具に含まれており、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、被験者の皮膚の表皮角質の一部を、被験者の基底生存表皮からの間質液へのアクセスを促進するようにオンデマンドで切除するために設定された、少なくとも1つのマイクロヒーターを含む、少なくとも2つの試料採取器と、
被験者の皮膚から採取した分析物を受領するための検出チャンバーと、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれにつき別々に分析物を検出するための、前記検出チャンバーと連結した前記微細加工器具に密着して配置された光子源を含む光子検出システムとを含む、器具。
【請求項40】
前記光子源が、少なくとも1つのLEDあるいは少なくとも1つのレーザーである、請求項39に記載の器具。
【請求項41】
選択された分析物に結合し、前記光子源が放射線をアプライする場合に、蛍光を発する基質を前記器具中にさらに含む、請求項39に記載の器具。
【請求項42】
被験者の皮膚から分析物をサンプリングするための微細加工器具であって、
被験者の皮膚からの少なくとも1つの分析物を、経皮的に採取および送達するための少なくとも2つの試料採取器であって、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、単一の微細加工器具に含まれており、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、被験者の皮膚の表皮角質の一部を、被験者の基底生存表皮からの間質液へのアクセスを促進するようにオンデマンドで切除するために設定された、少なくとも1つのマイクロヒーターを含む、少なくとも2つの試料採取器と、
被験者の皮膚から採取した分析物を受領するための検出チャンバーと、
前記検出チャンバーと連結した前記微細加工器具に密着して配置され、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれにつき別々に分析物を検出するための、規定の分析物と接触した場合に変色するパッチとを含む、器具。
【請求項43】
被験者の皮膚から採取した分析物をサンプリングおよび検出するための器具であって、
少なくとも1つの分析物を、被験者の皮膚から検出器に採取および送達するための、少なくとも2つのマイクロ流体チャネルを含み、
前記検出器が、前記少なくとも1つの分析物を、前記少なくとも2つのマイクロ流体チャネルのそれぞれにつき別々に同定および定量し、
前記少なくとも2つのマイクロ流体チャネルのそれぞれが、被験者の皮膚の表皮角質の一部を、前記少なくとも1つの分析物を含む可能性のある被験者の基底生存表皮からの間質液へのアクセスを促進するようにオンデマンドで切除するために設定された、マイクロヒーターを含む、器具。
【請求項44】
被験者の状態を生物医学的にモニタリングする方法であって、
被験者の皮膚にて、間質液を潅流させるために、第1のマイクロヒーターを介して被験者の皮膚をオンデマンドで切除すること、
第1のマイクロヒーターに関連した第1の試料採取器において、被験者の切除した皮膚から間質液を採取すること、
被験者の皮膚にて、間質液を潅流させるために、第2のマイクロヒーターを介して被験者の皮膚をオンデマンドで切除すること、
第2のマイクロヒーターに関連した第2の試料採取器において、被験者の切除した皮膚から間質液を採取すること、
前記第1のマイクロヒーター、前記第1の試料採取器、前記第2のマイクロヒーター、および前記第2の試料採取器は、マイクロ流体アセンブリを含む単一の微細加工器具の一部であって、
採取した間質液中に含まれる選択した分子の少なくとも1種を、第1および第2試料採取器のそれぞれにつき別々に同定し、定量することを含む、方法。
【請求項45】
前記分子の少なくとも1種が、ストレスの代謝マーカーである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記分子の少なくとも1種が、グルコース、ビリルビン、D−アミノ酸、殺虫剤、アトロピン、プラリドキシム、サイトカイン、デキストロメトロファン、カフェイン、アンチヒスタミン、有機リン殺虫剤、細菌毒素、細菌毒素に対する炎症性続発症、胞子代謝物、プレアルブミン、C反応型タンパク質、トロポニンI、エストロゲン、およびテストステロンのうち少なくともいずれか1つである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
被験者のバイタル生理学的統計値の少なくとも1つをモニタリングすることをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの被験者のバイタル生理学的統計値が、体温、脈拍、血圧および心臓活性の少なくとも1つを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
被験者が生活する環境状態をモニタリングし検出することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記同定および定量が、前記少なくとも1種の分子を、前記少なくとも1種の分子と接触した時に変色するパッチに送達すること、および、パッチの変色を検出することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記同定および定量が、
照射した時に蛍光を発する第二の種類の分子と、前記少なくとも1種の分子を結合させること、
前記第二の種類の分子に結合した前記第一の種類の分子に照射すること、および、
得られた蛍光を検出することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記照射をするための前記照射源が、レーザーあるいはLEDである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
被験者の遠隔モニタリングを可能にするための微細加工器具であって、
少なくとも1つの試料採取器ユニット体であって、前記試料採取器ユニット体が、マイクロ流体アセンブリを含み、前記マイクロ流体アセンブリが、
流体を含む少なくとも1つのレザーバ、および、
直接的にあるいは間接的に、前記少なくとも1つのレザーバに流体的に接続された、アレンジされた少なくとも1つのチャネルであって、前記少なくとも1つのチャネルが、前記流体が皮膚から前記少なくとも1つの分析物を採取し、前記少なくとも1つのチャネルを介して前記少なくとも1つの分析物を送達した後に、前記少なくとも1つのレザーバから流体を受領するチャネルを含む、少なくとも1つの試料採取器ユニット体と、
前記少なくとも1つのチャネルから送達された前記少なくとも1つの分析物を検出する、前記少なくとも1つのチャネルと関連した、少なくとも1つの検出器とを含む、器具。
【請求項54】
前記レザーバが、前記レザーバ内の前記流体を破壊可能シールで保持し、前記破壊可能シールの破壊によって前記流体を放出する、請求項53に記載の器具。
【請求項55】
ポンプが、流体を被験者の皮膚との接触部分に送り込む、請求項53に記載の器具。
【請求項56】
前記流体が被験者の皮膚との接触部分に送り込まれたところに近接した場所にて、被験者の皮膚表面に近接して配置されるマイクロヒーターをさらに備え、前記マイクロヒーターが被験者の皮膚の表皮角質の一部を切除する、請求項55に記載の器具。
【請求項57】
前記少なくとも1つのチャネルが、キャピラリーである、請求項53に記載の器具。
【請求項58】
経皮サンプリングシステムであって、
被験者の皮膚からの少なくとも1つの分析物を、経皮的に採取するための少なくとも2つの試料採取器であって、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、単一の微細加工器具に含まれており、
前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれが、被験者の皮膚の表皮角質の一部を、被験者の基底生存表皮からの間質液へのアクセスを促進するようにオンデマンドで切除するために設定された、少なくとも1つのマイクロヒーターを含む、少なくとも2つの試料採取器と、
前記少なくとも1つの分析物を、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれにつき別々に、同定および定量するための、少なくとも1つの検出器システムと、
(i)前記少なくとも1つの検出器システムからの入力データを受信し、保存する、(ii)前記他のデータと、前記入力データを関連づける、(iii)前記入力データと前記他のデータとの関連づけより測定された出力情報を表示する、(iv)出力情報を他のシステムに送信する、および、(v)前記少なくとも1つの試料採取器、および少なくとも1つの検出器システムの操作を制御するための、少なくとも1つの論理モジュールとを含む、システム。
【請求項59】
前記少なくとも1つの検出器システムが、蛍光団を励起するのに有効な少なくとも1つの光源を含む光学検出システム、および、励起された蛍光団からの蛍光を検出するための少なくとも1つの検出器を含む、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記光源が、少なくとも1つのLEDあるいは少なくとも1つのレーザーを含む、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記被験者の皮膚に接触している前記微細加工器具を保持するための手段をさらに備える、請求項58に記載のシステム。
【請求項62】
対象分析物に結合可能である、前記少なくとも2つの試料採取器のそれぞれの中に位置する少なくとも1つの基質をさらに含み、前記基質が前記少なくとも1つの検出器システムによって検出可能である、請求項58に記載のシステム。
【請求項63】
前記少なくとも1つの論理モジュールによって、前記入力データと関連づけるために、前記他のデータとして規定の生理学的データをモニタリングするための方法をさらに含む、請求項58に記載のシステム。
【請求項64】
前記少なくとも1つの論理モジュールによって、前記入力データと関連づけるために、前記他のデータとして環境状態データをモニタリングするための方法をさらに含む、請求項58に記載のシステム。
【請求項65】
前記少なくとも1つの検出器システムが、前記少なくとも1つの分析物との接触に応答して変色する、少なくとも1つの分析物に対して感受性のパッチ、および、前記パッチの変色を検出するための少なくとも1つの検出器を備える、請求項58に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−200702(P2011−200702A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150236(P2011−150236)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【分割の表示】特願2001−587645(P2001−587645)の分割
【原出願日】平成13年5月30日(2001.5.30)
【出願人】(500089996)サイエンス アプリケーションズ インターナショナル コーポレイション (4)
【出願人】(594140915)ジョージタウン・ユニバーシティ (11)
【氏名又は名称原語表記】GEORGETOWN UNIVERSITY
【Fターム(参考)】