説明

健康状態判定装置及び健康状態判定方法ならびに判定結果の表示方法

【課題】被験者の健康状態を簡便に判定できる健康状態判定装置、判定方法、表示方法を提供する。
【解決手段】被験者の身体データ及び血液成分データと、データ変換式と、データ判定基準と、を取得する取得手段と、前記身体データ及び血液成分データを、データ変換式を用いて相対値化し、且つ前記データ判定基準を用いて、被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する処理手段と、を備えることを特徴とする健康状態判定装置。好ましくは、前記取得手段は、健康状態評価式と、健康状態判定基準と、をさらに取得し、前記処理手段は、前記身体データ、前記血液成分データ、前記相対値のうち、2以上を組み合わせて、前記健康状態評価式を用いて健康状態判定相対値を算出し、当該健康状態判定相対値を前記健康状態判定基準と照合して被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する。取得手段は、記憶手段や通信手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体データや血液成分データを用いて、被験者の健康状態を判定し、健康改善方法を提案する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病や高血圧等の生活習慣病に起因する心血管疾患に罹患する人々が増加している。生活習慣病は、遺伝的要因により発症することもあるが、多くは食事や運動等の日常生活の改善によって予防可能である。このような中、肥満によるメタボリックシンドロームにおいては、生活習慣病への進行リスクや発病の危険性を未然に防ぐため、メタボリンクシンドロームの早期発見、早期改善を図る特定健診制度がすでに導入されている。
【0003】
このため、生活習慣病への進行リスクを簡便に判定し、被験者が早期に生活改善を行うことができるシステムが望まれている。
【0004】
生活習慣病の判定には、血液などの生体サンプルに含まれる生体関連物質(糖・タンパク質・脂質等)の量を測定する必要がある。また生活習慣病への進行のリスクを把握するため、健康状態の判定において、唾液、血液、尿等の生体サンプルを用いることがある。しかし、生体サンプルに含まれる生体関連物質の量には個人差が大きいため、測定結果のみから健康状態や病状を判定することは難しいという問題点がある。
【0005】
ここで、特許文献1〜4は、生体関連物質を用いて、被験者の健康状態を判定する方法を提案している。また、特許文献5は、生体関連物質の測定に使用可能なマイクロ分析チップを提案している。
【0006】
また、血液成分(タンパク質)と生活習慣病リスクとの関係性については、非特許文献1〜6に報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−23199号公報
【特許文献2】特開2007−33410号公報
【特許文献3】特開2007−275287号公報
【特許文献4】特開2002−14095号公報
【特許文献5】特開2008−203158号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アディポネクチンとその受容体 フジメディカル出版
【非特許文献2】Satoh N et al, Leptin-to-adiponectin ratio as a potential atherogenicindex in a obese type 2 diabetic patients, DIABETES CARE,vol27、2488-2490, 2004
【非特許文献3】Arita Y et al, Paradoxical decrease of an adipose-specific protein adiponectin, in obesity, Biochem Biophys Res Commun 257, 79-83, 1999
【非特許文献4】Hotta K et al, plasma concentration of a novel adipose-specific protein, adiponectin, in type 2 diabetic patients, Arterioscler Thromb Basc Biol 20; 1595-1599, 2000
【非特許文献5】On Y-K et al, Serum resistin as a biological marker for coronary artery disease and restenosis in type 2 diabetic patients, Circ. J. 71, 868-873, 2007
【非特許文献6】S. Gwozdziewiczova et al, TNF-α in the development of insulin resistance and other disorders in metabolic syndrome, Biomed. Papers 149(1), 109-117, 2005
【0009】
特許文献1は、メタボリックシンドローム判定のため、メタボリックシンドローム判定基準になる項目(ウエスト周囲長、血圧、血糖値、HDLコレステロール値、中性脂肪値)を入力し、男性・女性に分け、メタボリックシンドロームに該当するか否かを簡便に診断できる装置を提案している。
【0010】
しかし、この技術は、日本肥満学会(JASSO)基準に従い、メタボリックシンドロームに該当するか否かを判定するものであり、メタボリックシンドローム以外の、肥満による生活習慣病への進行の度合いを正確に判定することができない。
【0011】
特許文献2は、生活習慣病に共通するメタボリックシンドロームの検査法として、血清中のコリン型プラスマローゲン含有量とエタノールアミン型プラスマローゲン含有量を測定する検査法を提案している。
【0012】
しかし、この技術は、測定する血清中のプラスマローゲン含有量が、生活習慣病(糖尿病、動脈硬化症、高血圧症、高脂血症など)との関連性が低いため、メタボリックシンドロームと生活習慣病のリスクの正確な判定が困難である。
【0013】
特許文献3は、唾液に含まれる成分と、唾液成分以外の指標と、を併用して、ストレス度を判定する方法を提案している。
【0014】
しかし、この技術は、ストレスの診断が注意と正常のみであり、且つそれぞれの領域が広いため、ユーザが症状の改善度合いを理解しにくいという問題がある。
【0015】
特許文献4は、血液成分の複数項目のデータを採取し、その測定値のパターンを用いて診断を行う方法を提案している。
【0016】
この技術では、血液成分の複数の項目を指標とし、診断を行っているが、測定値(絶対値)の一覧を表示し、その値が正常値であるか否かを判定するのみであるため、ユーザが危険度を正確に理解することはできない。また、血液成分の複数の項目を指標としているものの、項目全体の関連を分りやすく表示していない。
【0017】
非特許文献1〜6に記載された、血液成分と生活習慣病との関連は、次のようなものである。
【0018】
(アディポネクチン)
アディポネクチンは、肥満やインスリン抵抗性においてはその血中濃度が低下し、逆に体重の減少(肥満度の改善)によってその血中濃度が増加することが知られている。また、アディポネクチンの抗糖尿病、抗動脈硬化作用が、これまでの研究により明らかにされている(非特許文献1、3,4参照)。
【0019】
(レプチン)
レプチンは、脂肪細胞で作られ、食欲と代謝の調整のために体脂肪量を脳へ伝え、食欲制御の機能を持っている(非特許文献2参照)。
【0020】
(レジスチン)
レジスチンは、インスリン抵抗性を引き起こすアディポカインのひとつであり、脂肪細胞や筋肉細胞、肝細胞などにおいてインスリン抵抗性を引き起こし、高血糖と原因となるとされている。また、高血圧の原因とされているインドセリンンの産生量を増加させることから動脈硬化の促進要因になると考えられ、メタボリックシンドロームをはじめとする生活習慣病に深く関連している(非特許文献5参照)。
【0021】
(TNF−α)
脂肪細胞が肥大化すると、TNF−αの分泌量は増加してくる。TNF−αは、脂肪細胞や筋肉細胞でのインスリン受容体活性化を抑制する働きがあるため、インスリン抵抗性を引き起こすことになり、高血糖状態をもたらして、2型糖尿病の原因になる(非特許文献6参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
健康状態やストレスある病気などの指標成分になる物質を測定し、基準値と比較するだけでは、正確な健康状態の把握が困難である。このため、被験者の正確な健康状態や生活習慣病への進行リスクを簡便に判定可能な判定装置が求められている。
【0023】
また、国際糖尿連合(IDF)や日本肥満学会(JASSO)等が開示している基準をそのまま用いた従来のメタボリックシンドローム判定装置では、メタボリックシンドロームの判定を簡便に行うことはできるが、メタボリックシンドロームの判定だけでは、被験者の健康状態の度合いにより生活習慣病に進行する可能性または危険性を予測することは困難である。
【0024】
本発明は、従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被験者の健康状態や生活習慣病への進行リスクを正確に判定でき、且つ被験者に分かり易く健康改善方法を提案できる健康状態判定装置及び健康状態判定方法を提供することを目的とする。また、判定結果を、被験者の健康状態が視覚的に理解しやすく表示して、早期の健康改善を図ることのできる装置及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するための健康状態判定装置にかかる本発明は、被験者の身体データ及び血液成分データと、データ変換式と、データ判定基準と、を取得する取得手段と、前記身体データ及び血液成分データを、前記データ変換式を用いて相対値化し、且つ前記データ判定基準を用いて、被験者の健康状態を判定する処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0026】
この装置を用いることにより、被験者の健康状態を正確に判定し、生活習慣病への進行リスクを簡便に判定することができる。また被験者の健康状態の判定結果に応じて、生活改善方法被験者に提案することで、生活習慣病への進行を未然に防ぐことが出来る。
【0027】
ここで、身体データとは、身長・体重・BMI(ボディマスインデックス)・血圧・体温・心拍数・呼吸数・体脂肪率等の、身体の外部から測定できる身体に関するデータを意味する。また、血液成分データとは、血糖・コレステロール・中性脂肪・白血球数・赤血球数・ヘマトクリット値・各種タンパク質濃度等の、血液サンプルを用いて分析されたデータを意味する。
【0028】
上記構成において、前記取得手段は、健康状態評価式と、健康状態判定基準と、をさらに取得し、前記処理手段は、前記身体データ、前記血液成分データ、前記相対値のうち、2以上を組み合わせて、前記健康状態評価式を用いて健康状態判定相対値を算出し、当該健康状態判定相対値を前記健康状態判定基準と照合して被験者の健康状態による生活習慣病への進行リスクを判定する構成とすることができる。
【0029】
メタボリックシンドロームや高脂血症、高血圧等の各種の生活習慣病への進行リスクの判定には、身体データや血液成分データを複数組み合わせて用いることが好ましいが、測定されたデータ自体は、単位系の違いや数値自体の大幅な違い等により、単純に組み合わせることができない。しかし、測定されたデータの相対値は、複数組み合わせることが容易であるので、簡便に健康状態や生活習慣病への進行リスクを判定できる。
【0030】
上記構成において、前記取得手段は、健康評価式と、健康判定基準と、をさらに取得し、前記処理手段は、前記相対値、前記健康状態判定相対値のうち、2以上を組み合わせて、前記健康状態評価式を用いて健康判定相対値を算出し、当該健康判定相対値を前記健康判定基準と照合して被験者の総合健康状態を判定する構成とすることができる。
【0031】
健康状態を総合的に判定するためには、個々のデータや個々のデータを複数組み合わせて健康状態を把握し、生活習慣病への進行リスクを判定したものを、さらに複数組み合わせることが好ましく、この場合にも相対値化による組み合わせが有用である。
【0032】
データ変換式として、測定値と相対値との関係を示したパターンテーブルを用いることができる。
【0033】
上記構成において、前記パターンテーブルは複数種類取得され、前記処理手段は、被験者の性別・年齢・人種のうち、少なくとも一つを判定して、使用する前記パターンテーブルを決定する構成とすることができる。
【0034】
被験者の性別・年齢・人種等によって、その測定値が大きく異なる身体データや血液成分データがある。よって、これらを判定し、被験者に適したパターンテーブルを決定して用いることにより、より正確に健康状態を判定できる。また、その他の要素(妊娠の有無、スポーツ選手であるか否か等)をさらに判定して、パターンテーブルを決定してもよい。
【0035】
上記構成において、前記健康状態判定装置は、入力手段をさらに備える構成とすることができる。
【0036】
上記構成において、前記健康状態判定装置は、判定結果を表示する表示手段をさらに備える構成とすることができる。
【0037】
上記構成において、前記取得手段は、健康改善方法データをさらに取得し、前記処理手段は、判定結果を健康改善方法データと照合して、判定結果とともに、判定結果に対応する健康改善方法を前記表示手段に表示させる構成とすることができる。
【0038】
表示装置に、判定結果とともに判定結果に対応する健康改善方法を表示させることにより、被験者に健康改善を促すようにすることができる。
【0039】
上記構成において、前記取得手段は、判定結果の経過情報をさらに取得し、前記表示手段は、前記経過情報をさらに表示する構成とすることができる。
【0040】
経過情報を表示することにより、健康改善に向かっているか否かを被験者が把握することが容易となる。
【0041】
上記構成において、前記健康状態判定装置は、血液成分分析を行う検出器具をさらに備え、前記処理手段は、前記検出器具で検出された信号から、前記血液成分データを算出する構成とすることができる。
【0042】
検出器具を備えることにより、分析から判定までの時間を短縮できる。
【0043】
取得手段としては、ハードディスクやFlash SSD(Flash Solid State Drive)等のような、各種情報を記憶する記憶手段を備えるものであってもよく、インターネット等の電気通信回線やその他の有線・無線通信回線により各種情報を取得する通信手段を備えるものであってもよい。
【0044】
上記課題を解決するための健康状態判定方法にかかる第1の本発明は、被験者の身体データ及び/又は血液成分データを、データ変換式を用いて相対値化する相対値算出ステップと、前記相対値がデータ判定基準を満たしているか否かを判定するデータ判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0045】
上記方法を用いることにより、各データが危険範囲にあるか否かを簡便に判定できる。
【0046】
上記構成において、健康状態評価式を用いて、2以上の前記相対値を組み合わせ、健康状態の判定に用いる相対値を算出する健康状態判定相対値算出ステップと、前記健康状態判定相対値を健康状態判定基準と照合することにより、被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する健康状態判定ステップと、をさらに備える構成とすることができる。
【0047】
この構成によると、相対値化したものを用いることにより、複数のデータを組み合わせることが容易となり、簡便に健康状態や生活習慣病への進行リスクを判定できる。
【0048】
なお、健康状態判定相対値算出と生活習慣病への進行リスクの判定を同時に行う構成であってもよい。この場合、健康状態評価式と、健康状態判定基準とが一体化されたものを用いてもよい。
【0049】
上記課題を解決するための健康状態判定方法にかかる第2の本発明は、被験者の身体データ及び/又は血液成分データがデータ判定基準を満たしているか否かを判定するデータ判定ステップと、前記身体データ及び前記血液成分データを、前記データ判定結果に即した相対値に変換する相対値変換ステップと、健康状態評価式を用いて、2以上の前記相対値を組み合わせ、健康状態の判定に用いる相対値を算出する健康状態判定相対値算出ステップと、前記健康状態判定相対値を健康状態判定基準と照合することにより、被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する健康状態判定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0050】
この構成は、各データを相対値化する前に判定し、判定に即した相対値に変換すること以外は、上記と同様である。このような形態であっても、上記と同様に、複数のデータを組み合わせることが容易となり、簡便に健康状態を判定できる。
【0051】
なお、データ判定と同時に相対値に変換する構成であってもよい。
【0052】
上記構成において、健康評価式を用いて、前記相対値及び/又は前記健康状態判定相対値を2以上組み合わせ、被験者の総合健康状態の判定に用いる相対値を算出する健康判定相対値算出ステップと、前記健康判定相対値を健康判定基準と照合することにより、被験者の総合健康状態を判定する総合健康状態判定ステップと、をさらに備える構成とすることができる。
【0053】
健康状態を総合的に判定するためには、個々のデータや、個々のデータを複数組み合わせて健康状態を判定したものを、さらに複数組み合わせることが好ましく、この場合にも相対値の組み合わせが有用である。
【0054】
なお、健康判定相対値算出と総合健康状態の判定とを同時に行う構成であってもよい。この場合、健康評価式と、健康判定基準とが一体化されたものを用いてもよい。
【0055】
上記構成において、前記健康状態判定相対値及び/又は前記相対値は、ボディマスインデックス相対値、メタボリックシンドローム判定相対値、血中特定タンパク質成分判定相対値からなる群から選択される少なくとも1種を含む構成とすることができる。
【0056】
生活習慣病への進行リスクを判定するためには、ボディマスインデックス相対値、メタボリックシンドローム判定相対値、血中特定タンパク質成分判定相対値を判定することが好ましい。好ましくはこれらを2以上、さらに好ましくは3つすべてを組み合わせて判定することにより、より詳細にメタボリックシンドロームの判定や生活習慣病への進行リスクを判定できる。
【0057】
ここで、メタボリックシンドローム判定は、国際糖尿連合(IDF)や日本肥満学会(JASSO)等が開示している基準を用いて判定することができ、またこれらとは異なる基準を用いてもよい。
【0058】
血中特定タンパク質成分判定には、少なくともアディポネクチン、レプチン、レジスチンン及びTNFαの少なくとも一つの血中濃度データを用いて判定することが好ましく、これら以外を含めてもよい。
【0059】
データ変換式としては、測定値と相対値との関係を示したパターンテーブルを用いることができる。
【0060】
健康状態評価式としては、相対値を同比率で足し合わせるものや、データごとに比重を変えて足し合わせるもの等を用いることができる。また、1つの相対値が基準値を超えている場合には、他の相対値にかかわらずもっとも危険であると判定される健康状態評価相対値とするようなものであってもよい。
【0061】
健康評価式としては、相対値や健康状態評価相対値を同比率で足し合わせるものや、データごとに比重を変えて足し合わせるもの等を用いることができる。また、1つの相対値や健康状態評価相対値が基準値を超えている場合には、他の相対値にかかわらずもっとも危険であると判定される健康評価相対値とするようなものであってもよい。
【0062】
上記構成において、被験者の性別・年齢・人種のうち、少なくとも一つを判定して、前記パターンテーブルを決定するパターンテーブル決定ステップをさらに備える構成とすることができる。
【0063】
本発明にかかる判定結果の表示方法は、前記アディポネクチン、前記レプチン、前記レジスチンン及び前記TNFαの分析データの相対値を示すグラフとともに表示することを特徴とする。
【0064】
アディポネクチン、レプチン、レジスチンン及びTNFαを、相対値で表示することにより、危険度を理解しやすくなる。
【0065】
ここで、表示形態は、相対値のみを表示してもよく、絶対値とそれに対応する相対値とをともに表示する態様であってもよい。
【0066】
上記構成において、グラフは、拮抗関係及び/又は相関関係の度合いが強い指標を互いに隣あうように配置することが好ましい。
【0067】
上記構成において、グラフとともに、前記4成分の測定値の経過情報を表示する構成とすることができる。
【0068】
経過情報を表示することにより、被験者の健康状態が改善に向かっているかどうかの理解が容易となる。
【0069】
経過情報は、常時表示する形態であってもよく、入力が行われた場合にのみ表示する形態であってもよい。
【0070】
上記構成において、前記4成分の判定結果のいずれかが基準値を超えている場合には、警告メッセージを表示する構成とすることができる。
【0071】
警告メッセージにより、被験者の生活習慣病への進行リスクをより容易に理解することができる。
【0072】
上記構成において、前記判定結果とともに、被験者に対する健康改善方法を表示する構成とすることができる。
【0073】
上記構成において、前記アディポネクチンの濃度をX1、前記レプチンの濃度をX2、前記レジスチンの濃度をX3、前記TNFαの濃度をX4とし、ボディマスインデックス相対値により判定された肥満度による係数をY1及びY2とするとき、X1Y1、X2Y2、X3Y2及びX4Y1を表示する構成とすることができる。
【0074】
上記構成において、前記X1Y1をウエスト部の右端、前記X2Y2を胸部の右端、前記X3Y2を胸部の左端、前記X4Y1をウエスト部の左端とした人型モデルで表示する構成とすることができる。その表示のため、各濃度や数値に係数をかけて、適切な部位に表示させることもできる。
【0075】
上記構成において、前記X1Y1をウエスト部の背側、前記X2Y2を腹部の背側、前記X3Y2を腹部の正面側、前記X4Y1をウエスト部の正面側とした人型モデルで表示する構成とすることができる。
【0076】
このような表示形態を用いると、健康状態を視覚的に把握することが容易となる。
【発明の効果】
【0077】
本発明においては、被験者の健康状態を判定するため、身体データや血液データを相対値化する。複数のデータの相対値を組み合わせることにより、健康状態を正確に判定できる。
【0078】
また、判定結果とともに、被験者の健康状態に応じた、被験者の健康改善の方法などを表示することにより、生活習慣病の改善・予防が可能となり、被験者の健康管理が容易となる。
【0079】
また、被験者の健康状態を、視覚的にわかりやすく表示することにより、生活習慣病の改善・予防効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明にかかる健康状態判定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明にかかる健康状態判定装置に用いる処理手段の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかる健康状態判定結果の表示方法を示す図である。
【図4】実施の形態1にかかる健康状態判定方法のフローチャートを示す図である。
【図5】実施の形態2にかかる健康状態判定方法のフローチャートを示す図である。
【図6】実施の形態2にかかるメタボリックシンドローム判定の判定方法のフローチャートを示す図である。
【図7】実施の形態2にかかるBMI判定の判定方法のフローチャートを示す図である。
【図8】実施の形態2にかかる健康状態判定の判定方法のフローチャートを示す図である。
【図9】実施の形態4にかかる判定結果の表示形態を示す図である。
【図10】実施の形態4にかかる判定結果の表示形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる健康状態判定装置を、図1に示す。
【0082】
本実施の形態にかかる健康状態判定装置は、血液成分分析に用いる検出器具1と、検出器具での信号を分析し、且つ各種相対値化を行う分析装置2と、キーボードやマウス等の入力手段3と、液晶ディスプレイ等の表示手段4と、を備えている。検出器具1には外部接続端子5が設けられ、分析装置2の接続口6に外部接続端子5が挿入され、検出器具1で検出された信号が分析装置2に取り込まれる。
【0083】
検出器具1としては、特許文献5に提案されるようなマイクロ流路を備えたマイクロ分析チップを用いることができる。例えば、血中特定タンパク質成分濃度を用いて生活習慣病への進行リスクを判定する健康状態判定装置においては、血液サンプルに含まれるアディポネクチン、レプチン、TNFα及びレジスチンの少なくとも一つ、好ましくは全てを検出対象に含むことが好ましい。また、中性脂肪、HDLc、血糖値等の他の血液成分を検出するものであってもよい。これらの測定に用いるマイクロ分析チップは、1成分ごとにそれぞれ1つ用意する構成であってもよく、複数の成分を1つのマイクロ分析チップで検出する構成であってもよい。
【0084】
また、マイクロ分析チップは、尿成分、唾液成分等の他の生体成分を検出するものであってもよい。
【0085】
なお、検出器具1は、本発明にかかるシステムに必須の構成ではなく、例えば、測定された血液成分データを入力手段により入力する構成や、有線又は無線の通信回線等により取得する構成を採用してもよい。
【0086】
分析装置2は、図2に示すように、中央処理装置(CPU)等の処理手段と、ハードディスクやFlash SSD(Flash Solid State Drive)等の記憶手段を有する取得手段と、入力手段等の入力を受け付ける入力部と、表示手段等に出力する出力部と、検出器具読み取り部と、を備えている。
【0087】
記憶手段には、身体データ・血液成分データ・識別文字等の各種データ、相対値を算出するために用いる変換式(パターンテーブル等)、判定基準、判定結果と対応付けられた健康改善方法等が記憶されている。これらは、同一の記憶手段に記憶されていてもよく、異なる記憶手段に記憶されていてもよい。
【0088】
また、上記取得手段は、記憶手段に代えて、又は記憶手段とともに、上記各種データ等を通信回線より取得するための通信手段を備える構成としてもよい。通信回線としては、有線回線、無線回線のいずれでもよい。
【0089】
被験者の識別文字は、例えば入力手段3から入力され、記憶手段に記憶される。識別文字は、例えば、各人の氏名、識別番号若しくは識別記号、年齢、性別、人種等を含むものであり、これらのうち、任意の1又は2以上のものを組み合わせて入力することができる。通常、識別文字には、氏名を含めておくことが便利である。また、識別文字に、日常生活において変化がほとんどない身体データ(たとえば、成人における身長)を含めてもよい。また、通信手段により識別文字を取得する構成であってもよい。
【0090】
また、身体データや血液成分データは、入力手段から入力してもよく、分析装置2と接続された検出器具1からの信号を分析装置2で演算したものを用いてもよい。これらのデータは、識別文字とともに分析装置2内の記憶手段に記憶される。また、通信手段により取得する構成であってもよい。
【0091】
表示手段4には、判定結果と、判定結果に基づいた健康改善方法とが表示される。
【0092】
(健康状態判定方法)
以下に、血中特定タンパク質成分を判定する例を用いて、図面を参照して本実施の形態にかかる健康状態判定方法を具体的に説明する。図4は、本実施の形態にかかる健康状態判定方法(血中特定タンパク質成分判定方法)のフローチャートを示す図である。
【0093】
本実施の形態では、血液成分分析データとして、アディポネクチン、レプチン、レジスチン及びTNFαの血中濃度を用いる。そして、これらを組み合わせて、被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する。
【0094】
(パターンテーブル決定ステップ)
性別、年齢、人種などによって、上記4成分の正常範囲、危険範囲等が異なるため、まず被験者に適した区分のパターンテーブル(データ変換式)を決定する。
【0095】
分析装置2の処理手段が、記憶手段に記憶された被験者の識別文字を判別し、ユーザの人種(東洋人・西洋人)・性別(男性・女性)に対応したパターンテーブルが決定される。
【0096】
(検出ステップ)
被験者の血液中に含まれている上記4成分の濃度を、検出器具1を用いて検出する。検出には、公知の方法を用いることができ、たとえば検出器具1としてマイクロ分析チップを用い、電気化学的に検出することができる。また検出手段として電気化学的な検出以外に、光学的な検出、電気的な検出手段を用いることもできる。
【0097】
検出器具1より送られた電気信号または光学的な信号は、分析装置2で演算されて、上記4成分の濃度がそれぞれ算出される。
【0098】
(相対値算出ステップ)
分析装置2の処理手段は、上記4成分の濃度を、上記パターンテーブル決定ステップで決定されたパターンテーブル(データ変換式)を用いて、相対値を算出する。
【0099】
人種・性別で区分されたパターンテーブルとしては、下記表1に示すものを用いることができる。
【0100】
【表1】

【0101】
(データ判定ステップ)
分析装置2は、上記により得られた相対値を、記憶手段に記憶されたデータ判定基準(詳細は以下に示す)と照合して、各データを判定する。
【0102】
0点:正常(Stage4)
5点:注意(Stage3)
8点:警告(Stage2)
10点:危険(Stage1)
【0103】
(健康状態判定相対値算出ステップ)
分析装置2の処理手段は、上記4成分の相対値を足し合わせ、合計値を記憶手段に記憶された健康状態評価式を用いて、健康状態評価相対値を算出する。健康状態評価式としては、下記表2に示すものを使用できる。
【0104】
【表2】

【0105】
(健康状態判定ステップ)
分析装置2の処理手段は、上記健康状態判定相対値を、以下に示す健康状態判定基準と照合して、被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する。
【0106】
(健康状態判定基準)
0点:健康
3点:注意
7点:警告
10点:危険
【0107】
なお、データ判定ステップと相対値算出ステップを同時に行ってもよい。また、健康状態判定ステップと健康状態判定相対値算出ステップを同時に行ってもよい。
【0108】
(判定結果の表示方法)
次に、上記判定結果を表示する方法について説明する。図3は、本発明の表示方法の一例を示したものである。本実施の形態では、アディポネクチン、レプチン、レジスチン、TNFαの4種類の濃度数値(測定値)を分類とともに示すレーダーグラフ、診断判定表、診断結果、健康改善方法を、表示手段に表示するものを例として説明する。
【0109】
処理手段は、記憶手段に記憶された、判定結果と対応付けられた健康改善方法(治療法)と照合して、健康改善方法を表示する。
【0110】
本表示例では、東洋人・男性のパターンテーブル(基準C1)を使用し、判定結果が、アディポネクチン:Stage1(危険)、レプチン:Stage2(警告)、レジスチン:Stage1(危険)、TNFα:Stage1(危険)の例を示している(判定表、レーダーグラフ)。
【0111】
判定表には、東洋人・男性のパターンテーブルを表示するとともに、上記4成分がそれぞれどのStageに判定されたかが表示される。
【0112】
濃度とStage(相対値)との対応が色分けされたレーダーグラフに上記アディポネクチン、レプチン、レジスチン、TNFαの濃度がプロットされ、それぞれの点が実線で結ばれた形態で表示される。
【0113】
レーダーグラフの各軸は、中央から外側に向かって危険度が高くなるように数値軸を取る。よって、アディポネクチンは濃度が低いものが外側に配置され、他の3つの成分は、濃度が高いものが外側に配置される。このとき、同時に表示される分類は、健康(0点:Stage4)が内側で、危険(10点:Stage1)が外側となる。
【0114】
また、健康(0点)を緑色、注意(5点)を黄色、警告(8点)を橙色、危険(10点)を赤色などのように、異なる色で表示することが好ましい。このようにすることにより、それぞれの濃度値を結ぶことによりできる四辺形が、健康、注意、警告、危険のいずれであるかが明瞭となり、視覚的に健康状態を把握することが可能となる。
【0115】
また、このレーダーグラフは、拮抗関係及び/又は相関関係の度合いが強い指標を互いに隣あうように配置すると、健康レベルを理解しやすくなるので好ましい。
【0116】
例えば、上記4成分の関係としては、以下に示すものがある。
メタボリックシンドロームは、肥満細胞からTNFαが産出され、アディポネクチンの濃度を低下させることにより惹起されることが知られている。このため、TNFαとアディポネクチンはお互い拮抗関係にあり、TNFαが上昇するとアディポネクチンが減少し、TNFαが減少するとアディポネクチンが増加する(非特許文献1参照)。このため、アディポネクチンとTNFαとは互いに隣り合う軸に配置するとその関係性が分かりやすくなる。
【0117】
また、アディポネクチンとレプチンの比はアディポネクチンとレプチン各々よりもメタボリックシンドロームと疾患との関連について報告がある(非特許文献4参照)。このため、アディポネクチンとレプチンは互いに隣り合う軸に配置する。こうすることにより、アディポネクチンの値とレプチンの値を結ぶ実線の傾きの絶対値はアディポネクチンとレプチンの比に対応するため、メタボリックシンドロームの判定に役立つ。
【0118】
これらのことから、アディポネクチンとTNFα、アディポネクチンとレプチンとがそれぞれ隣り合うように、アディポネクチンを図中上方向、レプチンを図中右方向、レジスチンを図中下方向、TNFαを図中左方向に配置している。
【0119】
血中特定タンパク質成分判定の判定結果(診断)と、この判定結果に対応した健康改善方法(治療法)が表示される。
【0120】
また、経過情報として、最新のデータに加えて、1以上の過去のデータを同一のレーダーグラフに併記することによって、経時変化がわかり、治療や予防などの効果を一目で確認することも可能である。この時、レーダーグラフの四辺形はそれぞれ、当日を実線、過去のデータを点線などのように、異なる線形を用いる等、目視で区別できる形態で表示することが好ましい。
【0121】
このような表示では、四辺形が過去のデータに比べて、小さくなっている場合は、良好な経過をたどっていると判断でき、四辺形が過去のデータに比べて、大きくなっている場合は、思わしくない経過をたどっていると、視覚的に判断できる。
【0122】
また、上記4成分は、メタボリックシンドロームに関連する生活習慣病と関係が深いことが知られている。例えば、レプチンが高値であり、アディポネクチンが低値になると脳梗塞の危険が高くなるとの報告がある(非特許文献1参照)。このため、ある成分の濃度が基準値を超えている場合(例えば、上記判定での相対値が10点:Stage1の場合)には、ユーザに生活習慣病への進行リスクが高いことを知らせるための提示(警告メッセージの表示)を行う。このようにすることにより、ユーザに一目で症状を自覚してもらう助けとすることができる。
【0123】
さらに、各成分濃度のプロットされた点を例えばマウスポインター(入力手段)で指すと、各項目の濃度の経時変化がわかる経時変化グラフが表示される構成とすることができる。この場合、横軸に時間、縦軸に濃度をとり、測定日ごとの各成分の濃度を表示する。経時変化を示すグラフも上記レーダーグラフと同様に、正常、注意、警告、危険を異なる色で表示することが好ましい。
【0124】
このようなグラフを表示することにより、個人差に関係なく、変化の傾向をつかむことができ、運動や食事療法および投薬の効果があったのか否かを判断することが容易となる。
【0125】
(実施の形態2)
本実施の形態では、以下の三つの健康状態の判定を行い、これらの判定結果を組み合わせて、被験者の総合的な健康状態判定を行う例について説明する。健康状態判定装置の構成は、上記実施の形態1と同様のものを用いることができるので、その説明は省略する。
【0126】
(a)メタボリックシンドローム判定
(b)BMI(ボディマスインデックス)判定
(c)血中特定タンパク質成分判定
【0127】
メタボリックシンドローム判定には、国際糖尿連合(IDF)や日本肥満学会(JASSO)等が開示している基準を用いることができ、これら以外の基準を用いてもよい。
【0128】
本実施の形態では、メタボリックシンドローム判定に、国際糖尿連合の基準を用いる。このため、メタボリックシンドローム判定に用いる身体データ、血液成分データは、以下に示すものとなる。
【0129】
身体データ:腹囲、血圧
血液成分データ:中性脂肪、HDLc、血糖値
【0130】
また、血中特定タンパク質成分判定は、上記実施の形態1と同様に行う。
【0131】
したがって、本実施の形態で用いる身体データ、血液成分データは、以下に示すものとなる。これらのデータは、例えば入力手段により入力し、記憶手段に記憶されるものとする。
【0132】
身体データ:腹囲、血圧、ボディマスインデックス(体重(kg)÷身長2(m))
血液成分データ:中性脂肪、HDLc、血糖値、アディポネクチン、レプチン、レジスチン、TNFα
【0133】
身体データ、血液分析データを相対値化するデータ変換式、当該相対値から健康状態判定相対値を算出する健康状態評価式、当該健康状態判定相対値から健康状態判定相対値を算出する健康評価式、データ判定基準、健康状態判定基準、健康判定基準、識別文字は、それぞれ記憶手段に記憶されている。
【0134】
(メタボリックシンドローム判定)
本実施の形態にかかるメタボリックシンドローム判定のアルゴリズムを、図6に示す。
【0135】
(パターンテーブル決定ステップ)
まず、被験者の人種の判定を行い、東洋人と西洋人とに分ける(S1)。
次に、被験者の年齢の判定を行い、16歳以上の場合と16歳未満の場合とに分ける(S2)。
16歳以上の場合は、性別の判定を行う(S3)。16歳未満の場合は、性別の判定を行わない。
【0136】
S1〜S3により、被験者は以下の6つに分類され、それぞれに従った基準(パターンテーブル)を用いて、メタボリックシンドロームの判定を行う(S4)。
東洋人 男性 16歳以上:基準A1
東洋人 女性 16歳以上:基準A2
東洋人 男女 16歳未満:基準A3
西洋人 男性 16歳以上:基準A4
西洋人 女性 16歳以上:基準A5
西洋人 男女 16歳未満:基準A6
【0137】
メタボリックシンドロームの判定に用いるパターンテープルを、下記表3に示す。
【0138】
【表3】

【0139】
(相対値算出・データ判定ステップ)
表3に示すパターンテーブルにより、個別の身体データ及び血液成分データを、腹囲に関しては、適合する(10点)、適合しない(0点)と相対値化し、腹囲以外については、適合する(1点)、適合しない(0点)として相対値化する。
【0140】
(健康状態判定相対値算出ステップ)
上記個別の身体データ及び血液成分データの相対値を足し合わせ、合計点数を以下のメタボリックシンドローム判定評価式を用いてメタボリックシンドローム判定の相対値を算出する。
【0141】
(メタボリックシンドローム判定評価式)
合計点数が12点以上 :10点
合計点数が2〜4点又は11点: 5点
合計点数が10点又は1点以下: 0点
【0142】
(健康状態判定ステップ)
上記相対値に対し、以下のメタボリックシンドローム判定基準(健康状態判定基準)に従い、評価する。
【0143】
(メタボリックシンドローム判定基準)
10点:×
5点 :△
0点 :○
【0144】
(BMI判定)
BMI(ボディマスインデックス)は以下の式のよって算出される身体データである。
BMI=体重(kg)/身長(m)2
【0145】
(相対値算出・データ判定ステップ)
BMIのデータは、高度肥満、肥満、標準、痩せの4つに判定されるとともに、各判定結果には、以下に従い、相対値が算出される。BMIのデータ判定基準・データ変換式は、下記表4に示す。
【0146】
【表4】

【0147】
(血中特定タンパク質成分判定)
血中特定タンパク質成分判定は、上記実施の形態1と同様にして行う。
【0148】
(健康判定相対値算出ステップ)
上記3つの判定による結果の相対値を組み合わせて、健康判定相対値を算出する。健康判定相対値算出に用いる健康評価式としては、以下のように各判定に比重をかけて(異なる係数を用いて)足し合わせる。以下の式を用いることができる。
【0149】
(健康評価式)
健康判定相対値=(0.4×メタボリックシンドローム判定相対値)+(0.2×BMI判定相対値)+(0.4×血中特定タンパク質成分判定相対値)
【0150】
(総合健康状態判定ステップ)
上記により得られた健康判定相対値を、以下に示す健康判定基準と照合し、被験者の総合健康状態を判定する。
【0151】
(健康判定基準)
0〜4.0 :健康
4.0〜6.8 :要注意
6.8〜10.0:危険
【0152】
たとえば、メタボリックシンドローム判定が×、BMI判定が肥満、血中特定タンパク質成分判定が警告の場合、次のように健康判定相対値が算出される。
【0153】
健康判定相対値=0.4×10+0.2×8+0.4×8=8.8
【0154】
よって、総合健康状態は、危険と判定される。
【0155】
なお、体重は身体の体積(身長の3乗)に影響を受けるが、BMIは、体重を身長の2乗で除したものであるため、高身長の人ほど肥満と判定されやすくなる。このため、高身長(たとえば、身長が185cm以上)向けに、異なるBMI判定基準を設けてもよい。
【0156】
(実施の形態3)
本実施の形態は、上記実施の形態2において、3つの健康状態判定のいずれか1つでも危険評価であるときに、総合評価を危険と評価させるものである。健康状態判定相対値を算出するまでの各ステップは、上記実施の形態2と同様であるので、その説明を省略する。
【0157】
(メタボリックシンドローム判定)
メタボリックシンドローム判定基準を、次のように変更する。
【0158】
(メタボリックシンドローム判定基準)
合計点数が12点以上 :100点
合計点数が2〜4点又は11点: 5点
合計点数が10点又は1点以下: 0点
【0159】
(BMI判定)
データ判定基準・データ変換式を、次のように変更する。
【0160】
(BMIデータ判定基準)
30以上 :100点
25以上30未満 : 8点
18.5以上25未満: 0点
18.5未満 : 3点
【0161】
(血中特定タンパク質成分判定)
健康状態判定基準を次のように変更する。
【0162】
(メタボリックシンドローム関連タンパク質判定基準)
0〜8点 : 0点
9〜16点 : 3点
17〜29点: 7点
30〜40点:100点
【0163】
健康評価式は、上記実施の形態2と同様とする。健康判定基準は、次のようにする。
【0164】
(健康判定基準)
0〜4.0 :健康
4.0〜6.8:要注意
6.8以上 :危険
【0165】
本実施の形態による総合健康評価では、メタボリックシンドローム判定が×評価、BMI判定が高度肥満評価、血中特定タンパク質成分判定が危険評価、のいずれか1つでも満たす場合には、他の評価にかかわらず、健康判定相対値が20点以上となる。このため、総合判定は危険と判定される。このような形態を採用すると、早期の健康改善を図ることができる。
【0166】
また、次のように判定基準を変更することもできる。
【0167】
(メタボリックシンドローム判定基準)
合計点数が12点以上 :250点
合計点数が2〜4点又は11点: 5点
合計点数が10点又は1点以下: 0点
【0168】
(BMIデータ判定基準)
30以上 :5000点
25以上30未満 : 8点
18.5以上25未満: 0点
18.5未満 : 3点
【0169】
(血中特定タンパク質成分判定基準)
0〜8点 : 0点
9〜16点 : 3点
17〜29点: 7点
30〜40点:25000点
【0170】
この場合、上記健康評価式を用いると、総合点数の百の位がメタボリックシンドローム判定の×評価の有無、千の位がBMI判定の高度肥満評価の有無、万の位が血中特定タンパク質成分判定の危険評価の有無、をそれぞれ示すこととなる。このようにすることにより、各健康状態の危険性についても判定し易くなる。
【0171】
(実施の形態4)
本実施の形態では、判定結果を表示する方法について説明する。判定方法は、上記実施の形態2,3に即して行うことができる。
【0172】
図9に、本実施の形態にかかる表示方法を示す。図9において、X1はアディポネクチンの濃度、X2はレプチンの濃度、X3はレジスチンの濃度、X4はTNFαの濃度、Y1及びY2はボディマスインデックス相対値により判定された肥満度による係数である。
また、ダッシュ(’)が付されているものはBMI判定で肥満判定のものを示し、ダッシュ(’)が付されていないものはBMI判定で正常判定のものを示す。
【0173】
図9では、X1Y1をウエスト部の右端、X2Y2を胸部の右端、X3Y2を胸部の左端、X4Y1をウエスト部の左端とした人型モデルで表示している。
【0174】
このような表示形態を用いると、生活習慣病への進行リスクが低いか(図9(a))、生活習慣病への進行リスクが高いか(図9(b))が視覚的に理解することが容易となる。
【0175】
また、図10に示すように、X1Y1をウエスト部の背側、X2Y2を腹部の背側、X3Y2を腹部の正面側、X4Y1をウエスト部の正面側とした人型モデルで表示してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上説明したように、本発明によると、被験者の健康状態や生活習慣病への進行リスクを簡便に判定することができる。このため、被験者に早期の健康改善を促すことができ、生活習慣病の予防に顕著な効果を奏する。よって、本発明の意義は大きい。
【符号の説明】
【0177】
1 検出器具
2 分析装置
3 入力手段
4 表示手段
5 外部接続端子
6 接続口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体データ及び血液成分データと、データ変換式と、データ判定基準と、を取得する取得手段と、
前記身体データ及び血液成分データを、データ変換式を用いて相対値化し、且つ前記データ判定基準を用いて、被験者の健康状態を判定する処理手段と、
を備えることを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の健康状態判定装置において、
前記取得手段は、健康状態評価式と、健康状態判定基準と、をさらに取得し、
前記処理手段は、前記身体データ、前記血液成分データ、前記相対値のうち、2以上を組み合わせて、前記健康状態評価式を用いて健康状態判定相対値を算出し、当該健康状態判定相対値を前記健康状態判定基準と照合して被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の健康状態判定装置において、
前記取得手段は、健康評価式と、健康判定基準と、をさらに取得し、
前記処理手段は、前記相対値、前記健康状態判定相対値のうち、2以上を組み合わせて、前記健康評価式を用いて健康判定相対値を算出し、当該健康判定相対値を前記健康判定基準と照合して被験者の総合健康状態を判定する、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の健康状態判定装置において、
前記取得手段は、性別・年齢・人種情報を含む被験者の識別文字をさらに取得する、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の健康状態判定装置において、
前記データ変換式は、測定値と相対値との関係を示したパターンテーブルである、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の健康状態判定装置において、
前記パターンテーブルは、性別・年齢・人種に応じ複数種類を取得され、
前記処理手段は、被験者の性別・年齢・人種のうち、少なくとも一つを判定して、使用する前記パターンテーブルを決定する、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項に記載の健康状態判定装置において、
前記健康状態判定装置は、入力手段をさらに備える、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載の健康状態判定装置において、
前記健康状態判定装置は、判定結果を表示する表示手段をさらに備える、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項9】
請求項8記載の健康状態判定装置において、
前記取得手段は、健康改善方法データをさらに取得し、
前記処理手段は、判定結果を健康改善方法データと照合して、判定結果とともに、判定結果に対応する健康改善方法を前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項10】
請求項9記載の健康状態判定装置において、
前記取得手段は、判定結果の経過情報をさらに取得し、
前記表示手段は、前記経過情報をさらに表示する、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項11】
請求項1ないし10いずれか1項に記載の健康状態判定装置において、
前記健康状態判定装置は、血液成分分析を行う検出器具をさらに備え、
前記処理手段は、前記検出器具で検出された信号から、前記血液成分データを算出する、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項12】
請求項1ないし11いずれか1項に記載の健康状態判定装置において、
前記取得手段は、通信回線を通じて各種情報を取得する通信手段を備える、
ことを特徴とする健康状態判定装置。
【請求項13】
被験者の身体データ及び/又は血液成分データを、データ変換式を用いて相対値化する相対値算出ステップと、
前記相対値がデータ判定基準を満たしているか否かを判定するデータ判定ステップと、
を備えることを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項14】
請求項13記載の健康状態判定方法において、
健康状態評価式を用いて、2以上の前記相対値を組み合わせ、健康状態の判定に用いる相対値を算出する健康状態判定相対値算出ステップと、
前記健康状態判定相対値を健康状態判定基準と照合することにより、被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する健康状態判定ステップと、
をさらに備えることを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項15】
被験者の身体データ及び/又は血液成分データがデータ判定基準を満たしているか否かを判定するデータ判定ステップと、
前記身体データ及び前記血液成分データを、前記データ判定結果に即した相対値に変換する相対値変換ステップと、
健康状態評価式を用いて、2以上の前記相対値を組み合わせ、健康状態の判定に用いる相対値を算出する健康状態判定相対値算出ステップと、
前記健康状態判定相対値を健康状態判定基準と照合することにより、被験者の生活習慣病への進行リスクを判定する健康状態判定ステップと、
を備えることを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の健康状態判定方法において、
健康評価式を用いて、前記相対値及び/又は前記健康状態判定相対値を2以上組み合わせ、被験者の総合健康状態の判定に用いる相対値を算出する健康判定相対値算出ステップと、
前記健康判定相対値を健康判定基準と照合することにより、被験者の総合健康状態を判定する総合健康状態判定ステップと、
をさらに備えることを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項17】
請求項14ないし16いずれか1項に記載の健康状態判定方法において、
前記健康状態判定相対値及び/又は前記相対値は、ボディマスインデックス相対値、メタボリックシンドローム判定相対値、血中特定タンパク質成分判定相対値からなる群から選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項18】
請求項17記載の健康状態判定方法において、
前記血中特定タンパク質成分判定に用いる血液成分データは、アディポネクチン、レプチン、レジスチンン及びTNFαの少なくとも一つの分析データを含む、
ことを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項19】
請求項13記載の健康状態判定方法において、
前記データ変換式として、測定値と相対値との関係を示したパターンテーブルを用いる、
ことを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項20】
請求項19記載の健康状態判定方法において、
被験者の性別・年齢・人種のうち、少なくとも一つを判定して、前記パターンテーブルを決定するパターンテーブル決定ステップをさらに備える、
ことを特徴とする健康状態判定方法。
【請求項21】
請求項18記載の健康状態判定方法の判定結果を、前記アディポネクチン、前記レプチン、前記レジスチンン及び前記TNFαの分析データの相対値を示すグラフとともに表示する、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。
【請求項22】
請求項21記載の健康判定結果の表示方法において、
前記グラフは、拮抗関係及び/又は相関関係の度合いが強い指標を互いに隣あうように配置されている、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の健康判定結果の表示方法において、
前記グラフとともに、前記4成分の測定値の経過情報を表示する、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。
【請求項24】
請求項21ないし22いずれか1項に記載の健康判定結果の表示方法において、
前記4成分の判定結果のいずれかが基準値を超えている場合には、警告メッセージを表示する、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。
【請求項25】
請求項21ないし24いずれか1項に健康判定結果の表示方法において、
前記判定結果とともに、その結果に応じる、被験者に対する健康改善方法を表示する、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。
【請求項26】
請求項21に健康判定結果の表示方法において、
前記アディポネクチンの濃度をX1、前記レプチンの濃度をX2、前記レジスチンの濃度をX3、前記TNFαの濃度をX4とし、ボディマスインデックス相対値により判定された肥満度による係数をY1及びY2とするとき、
X1Y1、X2Y2、X3Y2及びX4Y1を表示する、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。
【請求項27】
請求項26に健康判定結果の表示方法において、
前記X1Y1をウエスト部の右端、前記X2Y2を胸部の右端、前記X3Y2を胸部の左端、前記X4Y1をウエスト部の左端とした人型モデルで表示する、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。
【請求項28】
請求項26に健康判定結果の表示方法において、
前記X1Y1をウエスト部の背側、前記X2Y2を腹部の背側、前記X3Y2を腹部の正面側、前記X4Y1をウエスト部の正面側とした人型モデルで表示する、
ことを特徴とする健康判定結果の表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−213791(P2010−213791A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61777(P2009−61777)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】