側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器
【課題】 製造効率が向上し、且つ、製造された紙容器の縁巻のスプリングバックが軽減する側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器を提供する。
【解決手段】 図の(1)及び(2)を参照して、側板原紙1と底板原紙とを組み合わせて形成される紙容器の上縁の縁巻形成において、固定した側板原紙1の側板原紙上縁3に成形押し型37によるプレスを行う。すると、側板原紙1に形成された罫線5を境に外側部分6が側板原紙1の外方側に折り曲げられながら、形成しろ4の残りの部分7が円弧状成形面38及び縁巻成形面39に沿って外方側にカーリングし、図の(3)に示す、外側部分6が折り曲げられた状態でカーリングされた縁巻16が形成される。このようにすると、縁巻16のスプリングバックが軽減され、縁巻16の品質が向上する。又、折り曲げとカーリングとが一つの工程で可能となるので、製造効率が向上する。
【解決手段】 図の(1)及び(2)を参照して、側板原紙1と底板原紙とを組み合わせて形成される紙容器の上縁の縁巻形成において、固定した側板原紙1の側板原紙上縁3に成形押し型37によるプレスを行う。すると、側板原紙1に形成された罫線5を境に外側部分6が側板原紙1の外方側に折り曲げられながら、形成しろ4の残りの部分7が円弧状成形面38及び縁巻成形面39に沿って外方側にカーリングし、図の(3)に示す、外側部分6が折り曲げられた状態でカーリングされた縁巻16が形成される。このようにすると、縁巻16のスプリングバックが軽減され、縁巻16の品質が向上する。又、折り曲げとカーリングとが一つの工程で可能となるので、製造効率が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器に関し、特に側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器を製造するための側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1に示された底板原紙と側板原紙とからなる一般的な紙容器の成形工程の前段を示す図であり、図9は、図8で示した底板原紙と側板原紙とからなる紙容器の成形工程の後段を示す図である。
【0003】
まず、図8を参照して、表面に樹脂フィルムをラミネートした原紙を、丸めることにより円錐筒状にすることができるように、ほぼ扇形状に裁断した側板原紙81を準備する。次に、紙ロール83から繰り出されるロール紙84を円形に打抜き、周縁を絞り加工して底板原紙85を形成する。更に、この底板原紙85の下方に加熱済みの側板原紙81を押し出し、底板原紙85の外縁に沿わせるように側板原紙81を丸めて円錐台形状を形成し、側板原紙81の両端の重なり部分に外側から押圧部材を押し当てて接着シールをする。
【0004】
次に、図9を参照して、側板原紙81の下縁82を内側に折り返し、底板原紙85ののりしろ部86を包むと共に、側板原紙81の下縁82を底板原紙85ののりしろ部86に接着させて中間成形体87を作成する。最後に、中間成形体87の開口縁88にプレス加工を施して開口縁88を外側にカーリングして、側壁の上縁に縁巻90を形成して紙容器80の成形工程を終了する。
【0005】
図10は、図9で示した開口縁に加わる力を示した模式図である。
【0006】
尚、この図では説明の便宜上、側板原紙は円筒形状に丸められているものとする。
【0007】
まず、図10の(1)の左の図は、縁巻形成前の側板原紙81を平面視した図であり、右の図は、左の図の矢印で示したラインの端面図である。これらの図を参照して、開口縁88は、側板原紙81の真上に位置している。
【0008】
次に、図10の(2)の左の図は、縁巻形成中の側板原紙81を平面視した図であり、右の図は、図10の(1)の右の図に対応する図であって縁巻形成中の側板原紙81の端面図である。これらの図を参照して、側板原紙81の外側にカーリングする縁巻を形成するために、開口縁88が図10の(1)で示す位置よりも側板原紙81の外方側に移動させられている。尚、開口縁88をこの位置に移動させるために、開口縁88には左の図の矢印に示すような外側に広がる方向の力が加えられている。又、この移動により、側板原紙81が形成する円形状の中心から開口縁88までの距離が離れるため、この位置に移動した開口縁88の全周の長さは、図10の(1)に示した開口縁88の全周の長さよりも長くなる。よって、開口縁88付近の側板原紙81は伸張状態となる。
最後に、図10の(3)の左の図は、縁巻90の形成後の側板原紙81を平面視した図であり、右の図は、図10の(1)の右の図に対応する図であって縁巻90の形成後の側板原紙81の端面図である。これらの図を参照して、縁巻90の形成後においては、開口縁88の位置が図10の(2)で示した位置よりも側板原紙81の内方側の位置に移動している。すると、この移動により、側板原紙81が形成する円形状の中心から開口縁88までの距離が近くなるため、開口縁88の全周の長さは、図10の(2)で示した開口縁88の全周の長さよりも短くなり、開口縁88付近の側板原紙81は伸張状態から収縮状態へと変化する。又、図10の(2)の段階で加えられていた外方側に広がる方向の力も解除されるため、開口縁88には左の図の矢印に示す側板原紙81の内方側に収縮する力が加わる。この収縮する力により、縁巻90の形成後には開口縁88が外側に緩むことが無いため、縁巻90の形状が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−96408号公報
【特許文献2】特開2003−160121号公報
【特許文献3】特開2010−42869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の紙容器80のように、紙容器80の上縁が平面視円形を有するものにおいては開口縁88付近の側板原紙81全体に収縮する力が働き、縁巻90の形状が保たれる。しかし、上縁の平面視形状が、コーナー部のみがカーブ形状の略矩形形状や楕円形状等、曲率の異なる部分を有する形状の紙容器については、曲率が小さな部分における開口縁の長さが縁巻形成前と縁巻形成中とで殆ど変わらず、縁巻形成後に開口縁付近の側板原紙に収縮する力が働きにくい。その結果、カーリングを施した部分が元の状態に戻ろうとするいわゆるスプリングバックという現象が起き、開口縁が外側に緩んで縁巻の形状が保てないという問題があった。
【0011】
そこで、スプリングバックによる縁巻の問題を解決するために、以下のような紙容器が提案されている。
【0012】
図11は、特許文献2に示した従来の紙容器の平面図であり、図12は、図11に示した“Y”部分の拡大図である。
【0013】
これらの図を参照して、角型紙容器70は、コーナー部が丸みを帯びた底面部71と、底面部71の直線部から立ち上がる周壁直線部72と、コーナー部から立ち上がる周壁コーナー部73と、周壁直線部72及び周壁コーナー部73の各々に接続する直線フランジ部74及び曲線フランジ部75と、これらの外周端に形成される直線縁巻部76及び曲線縁巻部77とから構成されている。
【0014】
この角型紙容器70では、直線部に対応する直線縁巻部76の巻込み径がコーナー部に対応する曲線縁巻部77の巻込み径より小さく成形されている。
【0015】
このように構成すると、直線縁巻部76の巻込み径が相対的に小さくなるため、直線縁巻部76は直線部に対応するにも関わらず、スプリングバックが軽減される。しかし、紙容器の縁巻の径を形成場所に応じて変更することは手間が掛かる。又、このような縁巻を形成した紙容器は上縁の高さが一定になりにくいため紙容器の品質上にも問題がある。
【0016】
更に、縁巻のスプリングバックを軽減するものとしては、以下のような紙容器も提案されている。
【0017】
図13は、特許文献3に示した従来の紙容器の平面図であり、図14は、図13に示したXIV−XIVラインの断面模式図であり、図15は、図14に示した開口縁周辺の形状変化を示す模式図であり、図16は、図14に示した折曲縁部の成形工程を示した模式図であり、図17は、図14に示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【0018】
まず、図13及び図14を参照して、角型絞り容器50は、4個の円弧状のコーナー部51と直線部52とを有するテーパー状の胴部壁53と、底部壁54とからなる。胴部壁53の上縁全周には縁巻55が形成されている。縁巻55は、開口縁56を胴部壁53に対して外側に折り曲げて形成した折曲縁部57を有し、縁巻55は折曲縁部57をその内部に位置するように巻込んで形成されている。尚、縁巻55の形状及び径は、コーナー部51に対応する部分も直線部52に対応する部分も同様となっている。
【0019】
縁巻55の成形工程については、まず、図15の(a)及び(b)を参照して、開口縁56から所定幅aを有するように外側に開口縁56を拡げて伸びフランジ58を形成する。尚、開口縁56から所定幅bの胴部壁53の範囲は、縁巻形成しろである。
【0020】
次に、図15の(c)及び図16を参照して、折曲縁部成形装置のロワダイ61とインナーパンチ62とで胴部壁53を、ロワダイ61とアッパーダイ63とで伸びフランジ58を、それぞれ挟んで固定する。この状態からアウターパンチ64を用いて開口縁56から所定幅a離れた位置を折り曲げ、折曲縁部57を形成する。尚、この折り曲げ位置を折曲縁部基端59とする。
【0021】
最後に、図15の(d)及び図17を参照して、縁巻成形装置のカーリングダイ65とインナーパンチ66とで胴部壁53を挟んで固定する。この状態で、折曲縁部基端59に向かって成形押し型67を下降させることにより、折曲縁部基端59が成形押し型67の円弧状成形面68の径大円弧面から次第に径小円弧面に当接しながら移動することによって円弧状に巻き込まれ、更に、カーリングダイ65の縁巻成形面69に当接しながら移動することによって、折曲縁部57が完全に縁巻55の内側に移動するように渦巻き状に巻き込まれて、高さc及び幅dを有する縁巻55の成形工程が終了する。
【0022】
このようにすると、強制的に折り曲げられた状態の折曲縁部57が縁巻55内に位置するので、スプリングバックが少なく縁巻55の形状が良好に保たれる。しかし、上記のように縁巻55の成形に2段階の工程を経る必要があり、縁巻55の成形が煩雑という問題があった。
【0023】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、製造効率が向上し、且つ、製造された紙容器の縁巻のスプリングバックが軽減する側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、底板原紙と組み合わせてプレス加工することにより、側壁の上縁全周に縁巻が形成された紙容器を製造するための側板原紙において、縁巻の形成しろにおいて、上縁に対応する辺に沿って且つ上縁から離れた位置に、折り曲げを補助する罫線が形成されたことを特徴とするものである。
【0025】
このように構成すると、罫線の外方の部分がプレス時に折れ曲がる。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、紙容器の平面視において、上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有するものである。
【0027】
このように構成すると、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分も折れ曲がりが容易となる。
【0028】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、罫線は、断面が凹み状に押し型成形された線条を含むものである。
【0029】
このように構成すると、凹みの程度により折り曲がり易さが変化する。
【0030】
請求項4記載の発明は、底部と側壁部とからなり、側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器の製造方法であって、側壁部に対応する側板原紙を準備する工程と、底部に対応する底板原紙と側板原紙とを組み合わせる工程と、側板原紙の上縁に対応する辺に対してプレスし、縁巻の形成しろであって外側部分を外方側に折り曲げながら形成しろの残りの部分を第1の径で外方側にカーリングして縁巻を形成する工程とを備えたものである。
【0031】
このように構成すると、折り曲げとカーリングとが1つの工程で可能となる。
【0032】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、形成された縁巻に対して、第1の径より大きな第2の径で再度カーリングする工程を更に備えたものである。
【0033】
このように構成すると、カーリング癖が付きやすくなる。
【0034】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の構成において、側板原紙には、外側部分と残りの部分との境界に罫線が形成されるものである。
【0035】
このように構成すると、外側部分が罫線を介して容易に折れ曲がる。
【0036】
請求項7記載の発明は、請求項4から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、紙容器の平面視において、上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有するものである。
【0037】
このように構成すると、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分にも折れ曲がり部分が形成される。
【0038】
請求項8記載の発明は、底部と側壁部とからなり、側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器において、縁巻の先端側は、その軸方向に沿った罫線を介して折り曲げられた状態でカーリングされていることを特徴とするものである。
【0039】
このように構成すると、縁巻のカーリング状態が安定する。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、罫線から上縁側の部分がプレス時に折れ曲がるので、製造された紙容器の縁巻のスプリングバックが軽減する。
【0041】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分も折れ曲がりが容易となるので、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の維持状態が向上する。
【0042】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、凹みの程度により折り曲がり易さが変化するので、使用勝手が向上する。
【0043】
請求項4記載の発明は、折り曲げとカーリングとが1つの工程で可能となるので、製造効率が向上する。
【0044】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、カーリング癖が付きやすくなるので、縁巻の維持状態がより安定する。
【0045】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の効果に加えて、外側部分が罫線を介して容易に折れ曲がるので、所望の位置での折れ曲がりの設定が容易となる。
【0046】
請求項7記載の発明は、請求項4から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分にも折れ曲がり部分が形成されるので、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の品質が向上する。
【0047】
請求項8記載の発明は、縁巻のカーリング状態が安定するので、紙容器の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の第1の実施の形態による紙容器を製造するための紙材料の平面図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大端面図である。
【図3】図1で示した側板原紙及び底板原紙より形成した紙容器の平面図である。
【図4】図3で示したIV−IVラインの端面図である。
【図5】図3で示した縁巻の成形工程の準備段階を示した模式図である。
【図6】図5で示した“X”部分の拡大図であって図3で示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【図7】この発明の第2の実施の形態による紙容器の縁巻の成形工程を示した模式図である。
【図8】特許文献1に示された底板原紙と側板原紙とからなる一般的な紙容器の成形工程の前段を示す図である。
【図9】図8で示した底板原紙と側板原紙とからなる紙容器の成形工程の後段を示す図である。
【図10】図9で示した開口縁に加わる力を示した模式図である。
【図11】特許文献2に示した従来の紙容器の平面図である。
【図12】図11に示した“Y”部分の拡大図である。
【図13】特許文献3に示した従来の紙容器の平面図である。
【図14】図13に示したXIV−XIVラインの断面模式図である。
【図15】図14に示した開口縁周辺の形状変化を示す模式図である。
【図16】図14に示した折曲縁部の成形工程を示した模式図である。
【図17】図14に示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、この発明の第1の実施の形態による紙容器を製造するための紙材料の平面図であり、図2は、図1で示したII−IIラインの拡大端面図である。
【0050】
これらの図を参照して、後述する紙容器の側壁部に対応する紙材料の側板原紙1は、目付が170〜500g/m2の厚紙の表面に合成樹脂フィルムをラミネートした厚さT1(0.3mm)のシート体を扇形に打抜いたものからなる。後述する紙容器の底部に対応する底板原紙9は、側板原紙1と同様の構成のシート体を角丸長方形形状に打抜いたものからなる。
【0051】
後述する紙容器の成形の際には、側板原紙1を筒状に丸め、側縁2a及び2bを一体化させて紙容器の側壁部を形成する。側板原紙1において、紙容器の側壁部の上縁に対応する辺である側板原紙上縁3から図の一点鎖線までの範囲は、後述する縁巻の形成しろ4である。形成しろ4においては、側板原紙上縁3に沿って且つ側板原紙上縁3から離れた位置に、側板原紙上縁3側の形成しろ4の折り曲げを補助する罫線5が形成されている。尚、形成しろ4の部分について、罫線5を境界として、側板原紙上縁3側を外側部分6とし、外側部分6を除いた部分を残りの部分7とする。
【0052】
罫線5は、断面が後述する紙容器の側壁部において外方側から内方側に突出るように凹み状に押し型成形された線条として形成されている。このように構成すると、凹みの程度により折れ曲がり易さが変化するので、使用勝手が向上する。尚、ここでの罫線5は、幅D1(11.3mm)の形成しろ4において側板原紙上縁3から距離D2(2.0mm)離れた位置に形成されている。罫線5の凹みの外方側の幅W1は0.75mmに、内方側の幅W2は1.5mmに、罫線5の厚さT2は0.6mmに、それぞれ設定されている。このように構成すると、外側部分6が後述する縁巻成形工程のプレス時に罫線5を介して折れ曲がるので、製造された紙容器の縁巻のスプリングバックが軽減する。又、後述する紙容器の上縁の直線部に対応する縁巻の部分も折れ曲がりが容易であるため、直線部に対応する縁巻の維持状態が向上する。更に、外側部分6が罫線5を介して容易に折れ曲がるので、所望の位置での折れ曲がりの設定が容易となる。
【0053】
図3は、図1で示した側板原紙及び底板原紙より形成した紙容器の平面図であり、図4は、図3で示したIV−IVラインの端面図である。
【0054】
これらの図を参照して、紙容器10は、図1にて示した側板原紙1と底板原紙9とを準備し、側板原紙1と底板原紙9とを図8及び図9で示した工程により組み合わせたものであって、側壁部11と底部19とからなる。平面視においては、側壁部11の上縁12の形状が角丸長方形形状であって、曲線部13a及び13bと、曲率がゼロすなわち直線部14a及び14bとからなる形状を有する。
【0055】
上縁12の全周には、図1に示す罫線5を介して外側部分6が折り曲げられた状態でカーリングされた縁巻16が形成されている。このように構成すると、縁巻16のカーリング状態が安定するので、紙容器10の品質が向上する。又、外側部分6が縁巻16の内部に納められることにより、側板原紙の裁断面である側板原紙上縁が縁巻16の内側にしっかり巻き込まれるので、紙容器10の美観が向上する。更に、外側部分6が存在するため、縁巻16の剛性が高まる。その結果、側板原紙の厚さを低減させても紙容器10の品質が維持できるのでコスト的に有利となる。又、上縁12において、図示しないプラスチック製の嵌合蓋との嵌合力が向上する。尚、縁巻16は直径3.0mmとなるように形成されている。
【0056】
図5は、図3で示した縁巻の成形工程の準備段階を示した模式図であり、図6は、図5で示した“X”部分の拡大図であって図3で示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【0057】
まず、図5を参照して、カーリングダイ35に側板原紙1と底板原紙9とを組み合わせたものよりなる中間成形体27を供給した状態でインナーパンチ36を下降させ、カーリングダイ35とインナーパンチ36とで側板原紙1を挟んで中間成形体27を固定する。
【0058】
次に、図6の(1)及び(2)を参照して、第1の径(直径)R1(2.5mm)に設定された円弧状成形面38を有する成形押し型37を側板原紙1の側板原紙上縁3に向かって下降させていくと、円弧状成形面38が側板原紙上縁3に当接し、側板原紙上縁3をプレスする。すると、このプレスに伴って罫線5を境に外側部分6が外方側に折り曲げられ、折れ曲がり部分15が形成される。その状態から更に成形押し型37を下降させていくと、外側部分6が折り曲げられつつ、外側部分6及び折れ曲がり部分15を内方に巻き込みながら、形成しろ4の残りの部分7が円弧状成形面38及びカーリングダイ35の縁巻成形面39に沿って外方側にカーリングしていく。
【0059】
最後に、図6の(3)を参照して、成形押し型37がカーリングダイ35に当接するまで成形押し型37を下降させた後、成形押し型37を上昇させる。こうして、外側部分6が折り曲げられた状態でカーリングされた縁巻16の成形工程を終了する。尚、円弧状成形面38の径が上述のように2.5mmに設定されているから、成形押し型37が上昇する直前の縁巻16の径は2.5mmであるが、成形押し型37が上昇した後に軽くスプリングバックが起こるため、縁巻16の最終的な径はほぼ3.0mmとなる。このようにすると、折り曲げとカーリングとが一つの工程で可能となるので、製造効率が向上する。又、図3に示す紙容器10の上縁12の直線部14a及び14bに対応する部分においても罫線5を介する折れ曲がり部分15が形成されるので、直線部14a及び14bに対応する部分の縁巻16の品質が向上する。
【0060】
しかし、上記の方法では、側板原紙1の厚紙の紙質が硬いものやコシのあるものであると、スプリングバックを軽減しきれず、縁巻16の維持状態を安定させられない場合があるという問題がある。そこで、以下の実施の形態による成形によりこの問題を解決する。
【0061】
図7は、この発明の第2の実施の形態による紙容器の縁巻の成形工程を示した模式図である。
【0062】
最初に、第2の実施の形態においても、まず図6で示した第1の実施の形態における工程と同様の工程を行う。すると、図7の(1)に示すように、スプリングバックが軽減しきれなかった側板原紙1に、最終的な縁巻16の半分程度カーリングした中間縁巻28が形成される。この状態で、図6に示すインナーパンチ36を上昇させ、側板原紙1の固定状態を一端解除し、中間成形体27をカーリングダイ35ごと移動させ、カーリングダイ35とインナーパンチ46とで側板原紙1を再度固定する。そして、図6の(1)で示した第1の径R1(2.5mm)よりも大きく、且つ縁巻16の最終的な径である第2の径R2(3.0mm)に設定された円弧状成形面48を有する成形押し型47を中間縁巻28に向かって下降させていく。
【0063】
次に、図7の(2)を参照して、中間縁巻28に円弧状成形面48を当接させて成形押し型47を下降させていき、中間縁巻28を円弧状成形面48及びカーリングダイ35の縁巻成形面39に沿って外方側に再度カーリングさせていく。
【0064】
最後に、図7の(3)を参照して、カーリングダイ35に当接するまで下降させた成形押し型47を上昇させる。こうして、縁巻16の成形工程を終了する。
【0065】
このようにすると、カーリング癖が付きやすくなるので、縁巻16の維持状態がより安定する。
【0066】
尚、上記の各実施の形態では、罫線は断面が凹み状に押し型成形された線条よりなるものであったが、外側部分の折り曲げを補助するものであれば、ハーフカットにより成形された線条や、ミシン目等他の形状よりなるものであってもよい。
【0067】
又、上記の各実施の形態では、紙容器の上縁の平面視形状は曲線部と直線部とを有する角丸長方形形状であったが、例えば楕円形状等の、第1の曲率を有する第1の曲線部と第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部とからなる形状であってもよいし、全周にわたって同一曲率の円形状であってもよい。
【0068】
更に、上記の各実施の形態では、外側部分と残り部分との境界に罫線を形成することでカーリングと同時に外側部分を折り曲げる工程を備えていたが、カーリングと同時に外側部分を折り曲げるのであれば罫線以外の他の折り曲げ方法による工程であってもよい。
【0069】
更に、上記の各実施の形態では、側板原紙、形成しろ、罫線の幅、縁巻の径及び各円弧状成形面の径の各々の寸法が特定寸法に設定されていたが、他の寸法に設定されていてもよい。
【0070】
更に、上記の各実施の形態では、罫線の厚みが特定寸法に設定されていたが、罫線の厚みから側板原紙の厚みを引いた罫線深さが、側板原紙の厚み程度に設定されていれば他の寸法に設定されていれば好ましいが、他の寸法でもよい。
【0071】
更に、上記の各実施の形態では、罫線と側板原紙上縁との距離が特定寸法に設定されていたが、外側部分が縁巻の0.2周分程度の長さに設定されていれば他の寸法に設定されていてもよい。
【0072】
更に、上記の第2の実施の形態では、径の異なる円弧状成形面を有する成形押し型により2度カーリングが行われていたが、同じ成形押し型により複数回カーリングを行ってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…側板原紙
4…形成しろ
5…罫線
6…外側部分
7…残りの部分
9…底板原紙
10…紙容器
11…側壁部
12…上縁
13a、13b…曲線部
14a、14b…直線部
16…縁巻
19…底部
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【技術分野】
【0001】
この発明は側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器に関し、特に側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器を製造するための側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1に示された底板原紙と側板原紙とからなる一般的な紙容器の成形工程の前段を示す図であり、図9は、図8で示した底板原紙と側板原紙とからなる紙容器の成形工程の後段を示す図である。
【0003】
まず、図8を参照して、表面に樹脂フィルムをラミネートした原紙を、丸めることにより円錐筒状にすることができるように、ほぼ扇形状に裁断した側板原紙81を準備する。次に、紙ロール83から繰り出されるロール紙84を円形に打抜き、周縁を絞り加工して底板原紙85を形成する。更に、この底板原紙85の下方に加熱済みの側板原紙81を押し出し、底板原紙85の外縁に沿わせるように側板原紙81を丸めて円錐台形状を形成し、側板原紙81の両端の重なり部分に外側から押圧部材を押し当てて接着シールをする。
【0004】
次に、図9を参照して、側板原紙81の下縁82を内側に折り返し、底板原紙85ののりしろ部86を包むと共に、側板原紙81の下縁82を底板原紙85ののりしろ部86に接着させて中間成形体87を作成する。最後に、中間成形体87の開口縁88にプレス加工を施して開口縁88を外側にカーリングして、側壁の上縁に縁巻90を形成して紙容器80の成形工程を終了する。
【0005】
図10は、図9で示した開口縁に加わる力を示した模式図である。
【0006】
尚、この図では説明の便宜上、側板原紙は円筒形状に丸められているものとする。
【0007】
まず、図10の(1)の左の図は、縁巻形成前の側板原紙81を平面視した図であり、右の図は、左の図の矢印で示したラインの端面図である。これらの図を参照して、開口縁88は、側板原紙81の真上に位置している。
【0008】
次に、図10の(2)の左の図は、縁巻形成中の側板原紙81を平面視した図であり、右の図は、図10の(1)の右の図に対応する図であって縁巻形成中の側板原紙81の端面図である。これらの図を参照して、側板原紙81の外側にカーリングする縁巻を形成するために、開口縁88が図10の(1)で示す位置よりも側板原紙81の外方側に移動させられている。尚、開口縁88をこの位置に移動させるために、開口縁88には左の図の矢印に示すような外側に広がる方向の力が加えられている。又、この移動により、側板原紙81が形成する円形状の中心から開口縁88までの距離が離れるため、この位置に移動した開口縁88の全周の長さは、図10の(1)に示した開口縁88の全周の長さよりも長くなる。よって、開口縁88付近の側板原紙81は伸張状態となる。
最後に、図10の(3)の左の図は、縁巻90の形成後の側板原紙81を平面視した図であり、右の図は、図10の(1)の右の図に対応する図であって縁巻90の形成後の側板原紙81の端面図である。これらの図を参照して、縁巻90の形成後においては、開口縁88の位置が図10の(2)で示した位置よりも側板原紙81の内方側の位置に移動している。すると、この移動により、側板原紙81が形成する円形状の中心から開口縁88までの距離が近くなるため、開口縁88の全周の長さは、図10の(2)で示した開口縁88の全周の長さよりも短くなり、開口縁88付近の側板原紙81は伸張状態から収縮状態へと変化する。又、図10の(2)の段階で加えられていた外方側に広がる方向の力も解除されるため、開口縁88には左の図の矢印に示す側板原紙81の内方側に収縮する力が加わる。この収縮する力により、縁巻90の形成後には開口縁88が外側に緩むことが無いため、縁巻90の形状が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−96408号公報
【特許文献2】特開2003−160121号公報
【特許文献3】特開2010−42869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の紙容器80のように、紙容器80の上縁が平面視円形を有するものにおいては開口縁88付近の側板原紙81全体に収縮する力が働き、縁巻90の形状が保たれる。しかし、上縁の平面視形状が、コーナー部のみがカーブ形状の略矩形形状や楕円形状等、曲率の異なる部分を有する形状の紙容器については、曲率が小さな部分における開口縁の長さが縁巻形成前と縁巻形成中とで殆ど変わらず、縁巻形成後に開口縁付近の側板原紙に収縮する力が働きにくい。その結果、カーリングを施した部分が元の状態に戻ろうとするいわゆるスプリングバックという現象が起き、開口縁が外側に緩んで縁巻の形状が保てないという問題があった。
【0011】
そこで、スプリングバックによる縁巻の問題を解決するために、以下のような紙容器が提案されている。
【0012】
図11は、特許文献2に示した従来の紙容器の平面図であり、図12は、図11に示した“Y”部分の拡大図である。
【0013】
これらの図を参照して、角型紙容器70は、コーナー部が丸みを帯びた底面部71と、底面部71の直線部から立ち上がる周壁直線部72と、コーナー部から立ち上がる周壁コーナー部73と、周壁直線部72及び周壁コーナー部73の各々に接続する直線フランジ部74及び曲線フランジ部75と、これらの外周端に形成される直線縁巻部76及び曲線縁巻部77とから構成されている。
【0014】
この角型紙容器70では、直線部に対応する直線縁巻部76の巻込み径がコーナー部に対応する曲線縁巻部77の巻込み径より小さく成形されている。
【0015】
このように構成すると、直線縁巻部76の巻込み径が相対的に小さくなるため、直線縁巻部76は直線部に対応するにも関わらず、スプリングバックが軽減される。しかし、紙容器の縁巻の径を形成場所に応じて変更することは手間が掛かる。又、このような縁巻を形成した紙容器は上縁の高さが一定になりにくいため紙容器の品質上にも問題がある。
【0016】
更に、縁巻のスプリングバックを軽減するものとしては、以下のような紙容器も提案されている。
【0017】
図13は、特許文献3に示した従来の紙容器の平面図であり、図14は、図13に示したXIV−XIVラインの断面模式図であり、図15は、図14に示した開口縁周辺の形状変化を示す模式図であり、図16は、図14に示した折曲縁部の成形工程を示した模式図であり、図17は、図14に示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【0018】
まず、図13及び図14を参照して、角型絞り容器50は、4個の円弧状のコーナー部51と直線部52とを有するテーパー状の胴部壁53と、底部壁54とからなる。胴部壁53の上縁全周には縁巻55が形成されている。縁巻55は、開口縁56を胴部壁53に対して外側に折り曲げて形成した折曲縁部57を有し、縁巻55は折曲縁部57をその内部に位置するように巻込んで形成されている。尚、縁巻55の形状及び径は、コーナー部51に対応する部分も直線部52に対応する部分も同様となっている。
【0019】
縁巻55の成形工程については、まず、図15の(a)及び(b)を参照して、開口縁56から所定幅aを有するように外側に開口縁56を拡げて伸びフランジ58を形成する。尚、開口縁56から所定幅bの胴部壁53の範囲は、縁巻形成しろである。
【0020】
次に、図15の(c)及び図16を参照して、折曲縁部成形装置のロワダイ61とインナーパンチ62とで胴部壁53を、ロワダイ61とアッパーダイ63とで伸びフランジ58を、それぞれ挟んで固定する。この状態からアウターパンチ64を用いて開口縁56から所定幅a離れた位置を折り曲げ、折曲縁部57を形成する。尚、この折り曲げ位置を折曲縁部基端59とする。
【0021】
最後に、図15の(d)及び図17を参照して、縁巻成形装置のカーリングダイ65とインナーパンチ66とで胴部壁53を挟んで固定する。この状態で、折曲縁部基端59に向かって成形押し型67を下降させることにより、折曲縁部基端59が成形押し型67の円弧状成形面68の径大円弧面から次第に径小円弧面に当接しながら移動することによって円弧状に巻き込まれ、更に、カーリングダイ65の縁巻成形面69に当接しながら移動することによって、折曲縁部57が完全に縁巻55の内側に移動するように渦巻き状に巻き込まれて、高さc及び幅dを有する縁巻55の成形工程が終了する。
【0022】
このようにすると、強制的に折り曲げられた状態の折曲縁部57が縁巻55内に位置するので、スプリングバックが少なく縁巻55の形状が良好に保たれる。しかし、上記のように縁巻55の成形に2段階の工程を経る必要があり、縁巻55の成形が煩雑という問題があった。
【0023】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、製造効率が向上し、且つ、製造された紙容器の縁巻のスプリングバックが軽減する側板原紙、紙容器の製造方法及び紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、底板原紙と組み合わせてプレス加工することにより、側壁の上縁全周に縁巻が形成された紙容器を製造するための側板原紙において、縁巻の形成しろにおいて、上縁に対応する辺に沿って且つ上縁から離れた位置に、折り曲げを補助する罫線が形成されたことを特徴とするものである。
【0025】
このように構成すると、罫線の外方の部分がプレス時に折れ曲がる。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、紙容器の平面視において、上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有するものである。
【0027】
このように構成すると、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分も折れ曲がりが容易となる。
【0028】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、罫線は、断面が凹み状に押し型成形された線条を含むものである。
【0029】
このように構成すると、凹みの程度により折り曲がり易さが変化する。
【0030】
請求項4記載の発明は、底部と側壁部とからなり、側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器の製造方法であって、側壁部に対応する側板原紙を準備する工程と、底部に対応する底板原紙と側板原紙とを組み合わせる工程と、側板原紙の上縁に対応する辺に対してプレスし、縁巻の形成しろであって外側部分を外方側に折り曲げながら形成しろの残りの部分を第1の径で外方側にカーリングして縁巻を形成する工程とを備えたものである。
【0031】
このように構成すると、折り曲げとカーリングとが1つの工程で可能となる。
【0032】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、形成された縁巻に対して、第1の径より大きな第2の径で再度カーリングする工程を更に備えたものである。
【0033】
このように構成すると、カーリング癖が付きやすくなる。
【0034】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の構成において、側板原紙には、外側部分と残りの部分との境界に罫線が形成されるものである。
【0035】
このように構成すると、外側部分が罫線を介して容易に折れ曲がる。
【0036】
請求項7記載の発明は、請求項4から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、紙容器の平面視において、上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有するものである。
【0037】
このように構成すると、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分にも折れ曲がり部分が形成される。
【0038】
請求項8記載の発明は、底部と側壁部とからなり、側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器において、縁巻の先端側は、その軸方向に沿った罫線を介して折り曲げられた状態でカーリングされていることを特徴とするものである。
【0039】
このように構成すると、縁巻のカーリング状態が安定する。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、罫線から上縁側の部分がプレス時に折れ曲がるので、製造された紙容器の縁巻のスプリングバックが軽減する。
【0041】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分も折れ曲がりが容易となるので、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の維持状態が向上する。
【0042】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、凹みの程度により折り曲がり易さが変化するので、使用勝手が向上する。
【0043】
請求項4記載の発明は、折り曲げとカーリングとが1つの工程で可能となるので、製造効率が向上する。
【0044】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、カーリング癖が付きやすくなるので、縁巻の維持状態がより安定する。
【0045】
請求項6記載の発明は、請求項4又は請求項5記載の発明の効果に加えて、外側部分が罫線を介して容易に折れ曲がるので、所望の位置での折れ曲がりの設定が容易となる。
【0046】
請求項7記載の発明は、請求項4から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の部分にも折れ曲がり部分が形成されるので、第2の曲線部又は直線部に対応する縁巻の品質が向上する。
【0047】
請求項8記載の発明は、縁巻のカーリング状態が安定するので、紙容器の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の第1の実施の形態による紙容器を製造するための紙材料の平面図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大端面図である。
【図3】図1で示した側板原紙及び底板原紙より形成した紙容器の平面図である。
【図4】図3で示したIV−IVラインの端面図である。
【図5】図3で示した縁巻の成形工程の準備段階を示した模式図である。
【図6】図5で示した“X”部分の拡大図であって図3で示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【図7】この発明の第2の実施の形態による紙容器の縁巻の成形工程を示した模式図である。
【図8】特許文献1に示された底板原紙と側板原紙とからなる一般的な紙容器の成形工程の前段を示す図である。
【図9】図8で示した底板原紙と側板原紙とからなる紙容器の成形工程の後段を示す図である。
【図10】図9で示した開口縁に加わる力を示した模式図である。
【図11】特許文献2に示した従来の紙容器の平面図である。
【図12】図11に示した“Y”部分の拡大図である。
【図13】特許文献3に示した従来の紙容器の平面図である。
【図14】図13に示したXIV−XIVラインの断面模式図である。
【図15】図14に示した開口縁周辺の形状変化を示す模式図である。
【図16】図14に示した折曲縁部の成形工程を示した模式図である。
【図17】図14に示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、この発明の第1の実施の形態による紙容器を製造するための紙材料の平面図であり、図2は、図1で示したII−IIラインの拡大端面図である。
【0050】
これらの図を参照して、後述する紙容器の側壁部に対応する紙材料の側板原紙1は、目付が170〜500g/m2の厚紙の表面に合成樹脂フィルムをラミネートした厚さT1(0.3mm)のシート体を扇形に打抜いたものからなる。後述する紙容器の底部に対応する底板原紙9は、側板原紙1と同様の構成のシート体を角丸長方形形状に打抜いたものからなる。
【0051】
後述する紙容器の成形の際には、側板原紙1を筒状に丸め、側縁2a及び2bを一体化させて紙容器の側壁部を形成する。側板原紙1において、紙容器の側壁部の上縁に対応する辺である側板原紙上縁3から図の一点鎖線までの範囲は、後述する縁巻の形成しろ4である。形成しろ4においては、側板原紙上縁3に沿って且つ側板原紙上縁3から離れた位置に、側板原紙上縁3側の形成しろ4の折り曲げを補助する罫線5が形成されている。尚、形成しろ4の部分について、罫線5を境界として、側板原紙上縁3側を外側部分6とし、外側部分6を除いた部分を残りの部分7とする。
【0052】
罫線5は、断面が後述する紙容器の側壁部において外方側から内方側に突出るように凹み状に押し型成形された線条として形成されている。このように構成すると、凹みの程度により折れ曲がり易さが変化するので、使用勝手が向上する。尚、ここでの罫線5は、幅D1(11.3mm)の形成しろ4において側板原紙上縁3から距離D2(2.0mm)離れた位置に形成されている。罫線5の凹みの外方側の幅W1は0.75mmに、内方側の幅W2は1.5mmに、罫線5の厚さT2は0.6mmに、それぞれ設定されている。このように構成すると、外側部分6が後述する縁巻成形工程のプレス時に罫線5を介して折れ曲がるので、製造された紙容器の縁巻のスプリングバックが軽減する。又、後述する紙容器の上縁の直線部に対応する縁巻の部分も折れ曲がりが容易であるため、直線部に対応する縁巻の維持状態が向上する。更に、外側部分6が罫線5を介して容易に折れ曲がるので、所望の位置での折れ曲がりの設定が容易となる。
【0053】
図3は、図1で示した側板原紙及び底板原紙より形成した紙容器の平面図であり、図4は、図3で示したIV−IVラインの端面図である。
【0054】
これらの図を参照して、紙容器10は、図1にて示した側板原紙1と底板原紙9とを準備し、側板原紙1と底板原紙9とを図8及び図9で示した工程により組み合わせたものであって、側壁部11と底部19とからなる。平面視においては、側壁部11の上縁12の形状が角丸長方形形状であって、曲線部13a及び13bと、曲率がゼロすなわち直線部14a及び14bとからなる形状を有する。
【0055】
上縁12の全周には、図1に示す罫線5を介して外側部分6が折り曲げられた状態でカーリングされた縁巻16が形成されている。このように構成すると、縁巻16のカーリング状態が安定するので、紙容器10の品質が向上する。又、外側部分6が縁巻16の内部に納められることにより、側板原紙の裁断面である側板原紙上縁が縁巻16の内側にしっかり巻き込まれるので、紙容器10の美観が向上する。更に、外側部分6が存在するため、縁巻16の剛性が高まる。その結果、側板原紙の厚さを低減させても紙容器10の品質が維持できるのでコスト的に有利となる。又、上縁12において、図示しないプラスチック製の嵌合蓋との嵌合力が向上する。尚、縁巻16は直径3.0mmとなるように形成されている。
【0056】
図5は、図3で示した縁巻の成形工程の準備段階を示した模式図であり、図6は、図5で示した“X”部分の拡大図であって図3で示した縁巻の成形工程を示した模式図である。
【0057】
まず、図5を参照して、カーリングダイ35に側板原紙1と底板原紙9とを組み合わせたものよりなる中間成形体27を供給した状態でインナーパンチ36を下降させ、カーリングダイ35とインナーパンチ36とで側板原紙1を挟んで中間成形体27を固定する。
【0058】
次に、図6の(1)及び(2)を参照して、第1の径(直径)R1(2.5mm)に設定された円弧状成形面38を有する成形押し型37を側板原紙1の側板原紙上縁3に向かって下降させていくと、円弧状成形面38が側板原紙上縁3に当接し、側板原紙上縁3をプレスする。すると、このプレスに伴って罫線5を境に外側部分6が外方側に折り曲げられ、折れ曲がり部分15が形成される。その状態から更に成形押し型37を下降させていくと、外側部分6が折り曲げられつつ、外側部分6及び折れ曲がり部分15を内方に巻き込みながら、形成しろ4の残りの部分7が円弧状成形面38及びカーリングダイ35の縁巻成形面39に沿って外方側にカーリングしていく。
【0059】
最後に、図6の(3)を参照して、成形押し型37がカーリングダイ35に当接するまで成形押し型37を下降させた後、成形押し型37を上昇させる。こうして、外側部分6が折り曲げられた状態でカーリングされた縁巻16の成形工程を終了する。尚、円弧状成形面38の径が上述のように2.5mmに設定されているから、成形押し型37が上昇する直前の縁巻16の径は2.5mmであるが、成形押し型37が上昇した後に軽くスプリングバックが起こるため、縁巻16の最終的な径はほぼ3.0mmとなる。このようにすると、折り曲げとカーリングとが一つの工程で可能となるので、製造効率が向上する。又、図3に示す紙容器10の上縁12の直線部14a及び14bに対応する部分においても罫線5を介する折れ曲がり部分15が形成されるので、直線部14a及び14bに対応する部分の縁巻16の品質が向上する。
【0060】
しかし、上記の方法では、側板原紙1の厚紙の紙質が硬いものやコシのあるものであると、スプリングバックを軽減しきれず、縁巻16の維持状態を安定させられない場合があるという問題がある。そこで、以下の実施の形態による成形によりこの問題を解決する。
【0061】
図7は、この発明の第2の実施の形態による紙容器の縁巻の成形工程を示した模式図である。
【0062】
最初に、第2の実施の形態においても、まず図6で示した第1の実施の形態における工程と同様の工程を行う。すると、図7の(1)に示すように、スプリングバックが軽減しきれなかった側板原紙1に、最終的な縁巻16の半分程度カーリングした中間縁巻28が形成される。この状態で、図6に示すインナーパンチ36を上昇させ、側板原紙1の固定状態を一端解除し、中間成形体27をカーリングダイ35ごと移動させ、カーリングダイ35とインナーパンチ46とで側板原紙1を再度固定する。そして、図6の(1)で示した第1の径R1(2.5mm)よりも大きく、且つ縁巻16の最終的な径である第2の径R2(3.0mm)に設定された円弧状成形面48を有する成形押し型47を中間縁巻28に向かって下降させていく。
【0063】
次に、図7の(2)を参照して、中間縁巻28に円弧状成形面48を当接させて成形押し型47を下降させていき、中間縁巻28を円弧状成形面48及びカーリングダイ35の縁巻成形面39に沿って外方側に再度カーリングさせていく。
【0064】
最後に、図7の(3)を参照して、カーリングダイ35に当接するまで下降させた成形押し型47を上昇させる。こうして、縁巻16の成形工程を終了する。
【0065】
このようにすると、カーリング癖が付きやすくなるので、縁巻16の維持状態がより安定する。
【0066】
尚、上記の各実施の形態では、罫線は断面が凹み状に押し型成形された線条よりなるものであったが、外側部分の折り曲げを補助するものであれば、ハーフカットにより成形された線条や、ミシン目等他の形状よりなるものであってもよい。
【0067】
又、上記の各実施の形態では、紙容器の上縁の平面視形状は曲線部と直線部とを有する角丸長方形形状であったが、例えば楕円形状等の、第1の曲率を有する第1の曲線部と第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部とからなる形状であってもよいし、全周にわたって同一曲率の円形状であってもよい。
【0068】
更に、上記の各実施の形態では、外側部分と残り部分との境界に罫線を形成することでカーリングと同時に外側部分を折り曲げる工程を備えていたが、カーリングと同時に外側部分を折り曲げるのであれば罫線以外の他の折り曲げ方法による工程であってもよい。
【0069】
更に、上記の各実施の形態では、側板原紙、形成しろ、罫線の幅、縁巻の径及び各円弧状成形面の径の各々の寸法が特定寸法に設定されていたが、他の寸法に設定されていてもよい。
【0070】
更に、上記の各実施の形態では、罫線の厚みが特定寸法に設定されていたが、罫線の厚みから側板原紙の厚みを引いた罫線深さが、側板原紙の厚み程度に設定されていれば他の寸法に設定されていれば好ましいが、他の寸法でもよい。
【0071】
更に、上記の各実施の形態では、罫線と側板原紙上縁との距離が特定寸法に設定されていたが、外側部分が縁巻の0.2周分程度の長さに設定されていれば他の寸法に設定されていてもよい。
【0072】
更に、上記の第2の実施の形態では、径の異なる円弧状成形面を有する成形押し型により2度カーリングが行われていたが、同じ成形押し型により複数回カーリングを行ってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…側板原紙
4…形成しろ
5…罫線
6…外側部分
7…残りの部分
9…底板原紙
10…紙容器
11…側壁部
12…上縁
13a、13b…曲線部
14a、14b…直線部
16…縁巻
19…底部
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板原紙と組み合わせてプレス加工することにより、側壁の上縁全周に縁巻が形成された紙容器を製造するための側板原紙において、
前記縁巻の形成しろにおいて、前記上縁に対応する辺に沿って且つ前記上縁から離れた位置に、折り曲げを補助する罫線が形成されたことを特徴とする、側板原紙。
【請求項2】
前記紙容器の平面視において、前記上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と前記第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有する、請求項1記載の側板原紙。
【請求項3】
前記罫線は、断面が凹み状に押し型成形された線条を含む、請求項1または請求項2記載の側板原紙。
【請求項4】
底部と側壁部とからなり、前記側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器の製造方法であって、
前記側壁部に対応する側板原紙を準備する工程と、
前記底部に対応する底板原紙と前記側板原紙とを組み合わせる工程と、
前記側板原紙の前記上縁に対応する辺に対してプレスし、前記縁巻の形成しろであって外側部分を外方側に折り曲げながら前記形成しろの残りの部分を第1の径で外方側にカーリングして前記縁巻を形成する工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項5】
形成された前記縁巻に対して、前記第1の径より大きな第2の径で再度カーリングする工程を更に備えた、請求項4記載の紙容器の製造方法。
【請求項6】
前記側板原紙には、前記外側部分と前記残りの部分との境界に罫線が形成される、請求項4又は請求項5記載の紙容器の製造方法。
【請求項7】
前記紙容器の平面視において、前記上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と前記第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有する、請求項4から請求項6のいずれかに記載の紙容器の製造方法。
【請求項8】
底部と側壁部とからなり、前記側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器において、
前記縁巻の先端側は、その軸方向に沿った罫線を介して折り曲げられた状態でカーリングされていることを特徴とする、紙容器。
【請求項1】
底板原紙と組み合わせてプレス加工することにより、側壁の上縁全周に縁巻が形成された紙容器を製造するための側板原紙において、
前記縁巻の形成しろにおいて、前記上縁に対応する辺に沿って且つ前記上縁から離れた位置に、折り曲げを補助する罫線が形成されたことを特徴とする、側板原紙。
【請求項2】
前記紙容器の平面視において、前記上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と前記第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有する、請求項1記載の側板原紙。
【請求項3】
前記罫線は、断面が凹み状に押し型成形された線条を含む、請求項1または請求項2記載の側板原紙。
【請求項4】
底部と側壁部とからなり、前記側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器の製造方法であって、
前記側壁部に対応する側板原紙を準備する工程と、
前記底部に対応する底板原紙と前記側板原紙とを組み合わせる工程と、
前記側板原紙の前記上縁に対応する辺に対してプレスし、前記縁巻の形成しろであって外側部分を外方側に折り曲げながら前記形成しろの残りの部分を第1の径で外方側にカーリングして前記縁巻を形成する工程とを備えた、紙容器の製造方法。
【請求項5】
形成された前記縁巻に対して、前記第1の径より大きな第2の径で再度カーリングする工程を更に備えた、請求項4記載の紙容器の製造方法。
【請求項6】
前記側板原紙には、前記外側部分と前記残りの部分との境界に罫線が形成される、請求項4又は請求項5記載の紙容器の製造方法。
【請求項7】
前記紙容器の平面視において、前記上縁は第1の曲率を有する第1の曲線部と前記第1の曲率より小さな第2の曲率を有する第2の曲線部又は直線部とからなる形状を有する、請求項4から請求項6のいずれかに記載の紙容器の製造方法。
【請求項8】
底部と側壁部とからなり、前記側壁部の上縁全周に縁巻が形成された紙容器において、
前記縁巻の先端側は、その軸方向に沿った罫線を介して折り曲げられた状態でカーリングされていることを特徴とする、紙容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−35168(P2013−35168A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171462(P2011−171462)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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