説明

側面随伴空気層が外周研削面に回り込むのを防止した砥石

【課題】 高速回転する砥石の側面に連れ回りする側面随伴空気層が砥石外周研削面に回り込むことを防止して研削点にクーラントを確実に供給する。
【解決手段】 研削点にクーラントを供給しながら工作物を砥石により研削加工するとき、砥石コア15側面に連れ回りする側面随伴空気層33は、砥石コア15の外周面に砥石チップ16の幅方向両外側で全周に亙って突設された遮断壁27により外周研削面に回り込むのを遮断される。これにより、側面随伴空気層33の一部が外周研削面に回り込んで外周随伴空気層33の流速を速くすることがなくなり、クーラントを研削点に確実に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石により工作物を研削する研削盤において、研削点にクーラントを良好に供給できるようにした砥石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速で回転する砥石により工作物を研削加工する研削盤において、砥石に連れ回りする空気層を遮断して研削点にクーラントを確実に供給するために、特許文献1に記載されているように、クーランの圧力を高圧にし、ノズルからクーランントを砥石が工作物を研削加工する研削点に高速で供給する高圧クーラント方式、ノズルの噴出口を砥石の外周面に直角に対向させ、クーラントを砥石外周面に直角に噴き付ける直角ノズル方式が行われている。
【特許文献1】特開2004−66411号公報(第1頁、図7,8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高速で回転する砥石により工作物を研削加工する円筒研削盤、カム研削盤などにおいては、使用する砥石の幅は工作物の幅に応じて決められている。例えば、カム研削盤の場合、研削加工されるカムの幅より両側に2mm程度広くなるように砥石幅を決めている。
【0004】
回転する砥石の外周研削面に連れ回りする空気層の流れは、砥石の側面に連れ回りされて中心部から外周に向けて砥石の側面に沿って流れる側面随伴空気層の一部が外周研削面に伝わって流速が速くなり、クーラントの研削点への到達を阻害していることを発明者は見出した。特に、研削能率を上げるために砥石周速を120m/sec以上の高速にした場合、外周研削面の砥石幅方向両端部では、砥石側面からの空気層の流れが大きく伝わり、クーラントが研削点に到達することが困難となり、研削量が多くなる例えばカム接線部の両端部に研削焼けが発生することがあった。
【0005】
砥石の外周研削面に連れ回りする空気層をクーラントで遮断し、クーラントを外周研削面に巻き付けて研削点に導く直角ノズル方式では、砥石幅が薄くなる程、砥石側面からの空気層の流れの影響が大きくなり、クーラントが外周研削面に巻き付き難くなって研削点に到達することが困難となる。また、高圧クーラント方式では、高い圧力で研削点にクーラントを供給するため、クーラント供給量が多くなり、高圧ポンプやクーラントタンクが大型化して設備コストが高くなり、クーラント消費量、使用電力等が多くなり維持管理コストがアップする不具合があった。
【0006】
本発明は、かかる従来の不具合を解消するためになされたもので、高速回転する砥石の側面に連れ回りする砥石側面随伴空気層が外周研削面に回り込むことを防止して研削点にクーラントを確実に供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、砥石台に回転可能に支承された砥石と工作物支持装置に支持された工作物とを相対移動させて前記工作物を前記砥石により研削点にクーラントを供給しながら研削加工する研削盤に装着される砥石において、円盤状の砥石コアの外周面に複数の砥石チップを接着して外周研削面を形成し、前記砥石コアの外周面の幅を前記砥石チップの幅より広く形成し、前記砥石コアの側面に連れ回りする側面随伴空気層が前記外周研削面に回り込むのを遮断する遮断壁を前記砥石コアの外周面に前記砥石チップの幅方向両外側で全周に亙って突設したことである。
【0008】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、砥石台に回転可能に支承された砥石と工作物支持装置に支持された工作物とを相対移動させて前記工作物を前記砥石により研削点にクーラントを供給しながら研削加工する研削盤に装着される砥石において、円盤状の砥石コアの外周面に複数の砥石チップを接着して外周研削面を形成し、前記砥石コアの外周面の幅を前記砥石チップの幅より広く形成し、前記砥石コアの側面に連れ回りする側面随伴空気層が前記外周研削面に回り込むのを防止するために、ドレッサにより前記砥石チップとともに削除される隔離層を前記砥石コアの外周面に前記砥石チップの幅方向両側で全周に亙って設けたことである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、砥石台に回転可能に支承された砥石と工作物支持装置に支持された工作物とを相対移動させて前記工作物を前記砥石により研削点にクーラントを供給しながら研削加工する研削盤に装着される砥石において、円盤状の砥石コアの外周面に複数の砥石チップを接着して外周研削面を形成し、前記砥石コアの側面に連れ回りする側面随伴空気層が前記外周研削面に回り込むのを防止するために、前記砥石コアの側面外周縁部に外周縁に向かって幅が広くなるテーパ部を形成したことである。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、研削点にクーラントを供給しながら工作物を砥石により研削加工するとき、砥石コア側面に連れ回りする側面随伴空気層は、砥石コアの外周面に砥石チップの幅方向両外側で全周に亙って突設された遮断壁により外周研削面に回り込むのを遮断される。これにより、側面随伴空気層の一部が外周研削面に回り込んで外周随伴空気層の流速を速くすることがなくなり、クーラントを研削点に確実に供給することができる。
【0011】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、ドレッサにより砥石チップとともに削除される隔離層が砥石コア外周面に砥石チップの両側で全周に亙って設けられ、該隔離層により側面随伴空気層の一部が外周研削面まで回り込むのを防止する。これにより、側面随伴空気層の一部が外周随伴空気層の流速を速くすることがなくなり、クーラントを研削点に確実に供給することができる。また、開離層は砥石チップとともにドレッサにより削除できるので、開離層がドレッサのドレッシング動作の邪魔になることはない。
【0012】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、側面随伴空気層は、砥石コア側面の外周縁部に形成され外周縁に向かって幅が広くなるテーパ部により外周研削面から離れる方向にガイドされる。これにより、側面随伴空気層の一部が外周研削面に回り込んで外周随伴空気層の流速を速くすることが防止され、クーラントを研削点に確実に供給することができる。また、砥石コア側面の外周縁部に外周縁に向かって幅が広くなるテーパ部を形成する簡単で安価な構成により、クーラントの使用量、消費電力等を低減して維持管理費用を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の第1の実施形態に係る側面随伴空気層が外周研削面に回り込むのを防止した砥石Gについて図1,2に基づいて説明する。砥石Gが装架された研削盤10のベッド11上には、砥石台12が摺動可能に載置され、サーボモータ13によりボールネジ機構を介してX軸方向に進退移動される。砥石台12には、先端に砥石Gが取り付けられた砥石軸14が回転可能に軸承されモータにより回転駆動される。砥石Gは鉄又はアルミニウム等の金属で成形された円盤状の砥石コア15の外周面26に複数の砥石チップ16が接着されて構成されている。複数の砥石チップ16の外周面が、工作物Wを研削加工する砥石Gの外周研削面Gaを形成する。砥石台12には砥石Gを覆う砥石カバー17が固定されている。砥石カバー17には、クーラント供給装置18のクーラントノズル19が取り付けられ、クーラントノズル19から砥石Gが工作物Wを研削加工する研削点P又は工作物Wに向けてクーラントが供給される。ベッド11上にはテーブル20が摺動可能に装架され、サーボモータ21によりボールネジ機構22を介してX軸と直角なY軸方向に移動される。テーブル20上には、工作物支持装置23を構成する主軸台及び心押台24が取り付けられ、工作物Wは主軸台と心押台24との両センタ間に挟持され回転駆動される。心押台24の砥石台12側の側面にはドレッサ28が取付けられ、サーボモータ13、21による砥石台12とテーブル20との相対移動によりドレッサ28は砥石Gの外周研削面Gaをドレッシングするようになっている。
【0014】
砥石チップ16が外周面26に接着された円盤状の砥石コア15の両側面15a,15bの外周縁部には、薄幅部25から外周縁に向かって幅が広くなるテーパ部が設けられ、該テーパ部により外周面26の幅が砥石チップ16の幅より広く形成されている。砥石コア15の幅は外周縁部のみ広くして軽量化が図られている。砥石コア15の外周面26には、遮断壁27が砥石チップ16の幅方向両外側で全周に亙って突設されている。なお、図2に示す遮断壁27の外径は砥石チップ16の外径より僅かに大きいが、同径或いは僅かに小さくてもよい。
【0015】
上記のように構成した第1の実施形態の作動を説明する。工作物Wが主軸台と心押台24との両センタ間に挟持されて回転される。砥石台12がサーボモータ13により前進され、高速回転される砥石Gにより、例えば、砥石周速が160m/secで工作物Wが研削加工される。図3に示すような両側面31a,31bが平面である円盤状の砥石コア31の外周面に砥石コア31と同じ幅の砥石チップ32を接着した砥石Gsが、砥石周速160m/secで回転する場合、外周研削面Gaに連れ回りする空気層37の流れに、砥石コア31の両側面31a,31bに連れ回りされ砥石中心部から外周に向けて砥石コアの両側面31a,31bに沿って流れる側面随伴空気層33の一部が外周研削面Gaに伝わって流速が速くなり、外周研削面Gaに連れ回りする外周随伴空気層34の速度は、ピトー管で測定した結果、図4に示すように砥石研削面Gaの両端部分の方が中央部分よりかなり高くなる。
【0016】
本実施形態では、砥石コア15は、外周面26の幅が砥石チップ16の幅より広く形成され、外周面26に遮断壁27が砥石チップ16の幅方向両外側で全周に亙って突設されているので、該遮断壁27が側面随伴空気層33の一部が外周研削面Gaに回り込むのを遮断する。これにより、側面随伴空気層33の一部が外周研削面Gaに回り込んで外周随伴空気層34の流速を高速にすることがなくなり、クーラントノズル19から供給されるクーラントは研削点Pに確実に供給される。
【0017】
次に、側面随伴空気層が外周研削面に回り込むのを防止した砥石の第2の実施形態を図5に基づいて説明する。第2の実施形態は、ドレッサにより砥石チップ16とともに削除される隔離層35が、砥石コア15の外周面26に砥石チップ16の幅方向両側に全周に亙って設けられた点のみが第1の実施形態と異なる。砥石コア15の外周面26に隔離層35が砥石チップ16の幅方向両側で全周に亙って設けられ、側面随伴空気層33が外周研削面Gaまで回り込んで外周随伴空気層34の流速を高くすることを開離層35により防止することができる。ドレッサ28により外周研削面Gaをドレッシングするときに、開離層35も砥石チップ16とともにドレッサにより削除されるので、開離層35がドレッサのドレッシング動作の邪魔になることはない。
【0018】
次に、側面随伴空気層33が外周研削面Gaに回り込むのを防止した砥石の第3の実施形態を図6に基づいて説明する。第3の実施形態は、砥石コア15の両側面15a,15bの外周縁部に薄幅部25から外周面26に向かって幅が広くなるテーパ部29が形成され、外周面26に遮断壁27、開離層35を設けず、砥石チップ16の幅方向両側にスペース36を設けた点のみが第1、第2の実施形態と異なる。砥石コア15の両側面15a,15bに連れ回りする側面随伴空気層33は、テーパ部29により砥石チップ16の外周研削面Gaから離れる方向にガイドされる。そして、側面随伴空気層33の一部が外周研削面Ga側に拡散しても砥石チップ16の幅方向両側に設けられたスペース36により外周研削面Gaまで到達することがなく、クーラントノズル19から供給されるクーラントは研削点Pに確実に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係る側面随伴空気層が外周研削面に回り込むのを防止した砥石を装着した研削盤の一部を断面にした側面図。
【図2】第1の実施形態に係る砥石の要部拡大断面図。
【図3】両側面が平面である砥石の要部拡大断面図。
【図4】図3に示す砥石の外周随伴空気層の流速を示す図。
【図5】第2の実施形態を示す要部拡大断面図。
【図6】第3の実施形態を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0020】
10…研削盤、11…ベッド、12…砥石台、13,14…砥石軸、15…砥石コア、16…砥石チップ、17…砥石カバー、18…クーラント供給装置、19…クーラントノズル、20…テーブル、23…工作物支持装置、26…外周面、27…遮断壁、28…ドレッサ、29…テーパ部、33…側面随伴空気層、34…外周随伴空気層、35…隔離層、36…スペース、G…砥石、Ga…外周研削面、W…工作物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥石台に回転可能に支承された砥石と工作物支持装置に支持された工作物とを相対移動させて前記工作物を前記砥石により研削点にクーラントを供給しながら研削加工する研削盤に装着される砥石において、円盤状の砥石コアの外周面に複数の砥石チップを接着して外周研削面を形成し、前記砥石コアの外周面の幅を前記砥石チップの幅より広く形成し、前記砥石コアの側面に連れ回りする側面随伴空気層が前記外周研削面に回り込むのを遮断する遮断壁を前記砥石コアの外周面に前記砥石チップの幅方向両外側で全周に亙って突設したことを特徴とする砥石。
【請求項2】
砥石台に回転可能に支承された砥石と工作物支持装置に支持された工作物とを相対移動させて前記工作物を前記砥石により研削点にクーラントを供給しながら研削加工する研削盤に装着される砥石において、円盤状の砥石コアの外周面に複数の砥石チップを接着して外周研削面を形成し、前記砥石コアの外周面の幅を前記砥石チップの幅より広く形成し、前記砥石コアの側面に連れ回りする側面随伴空気層が前記外周研削面に回り込むのを防止するために、ドレッサにより前記砥石チップとともに削除される隔離層を前記砥石コアの外周面に前記砥石チップの幅方向両側で全周に亙って設けたことを特徴とする砥石。
【請求項3】
砥石台に回転可能に支承された砥石と工作物支持装置に支持された工作物とを相対移動させて前記工作物を前記砥石により研削点にクーラントを供給しながら研削加工する研削盤に装着される砥石において、円盤状の砥石コアの外周面に複数の砥石チップを接着して外周研削面を形成し、前記砥石コアの側面に連れ回りする側面随伴空気層が前記外周研削面に回り込むのを防止するために、前記砥石コアの側面外周縁部に外周縁に向かって幅が広くなるテーパ部を形成したことを特徴とする砥石。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−123094(P2006−123094A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315218(P2004−315218)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】