説明

偽造防止印刷物

【課題】光輝層に含まれる光輝性顔料の光輝性を向上させた偽造防止印刷物を提供する。
【解決手段】基材(1)上に、色が変化する変色層(2)と、変色層(2)の凹凸面を平滑化する平滑化層(4)と、光輝性を有する光輝性顔料を含む光輝層(3)と、が少なくとも設けられてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機等による複写偽造を極めて困難にし、尚かつ、偽造防止印刷物か否かの判断を目視により可能とする偽造防止印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造防止印刷物は、偽造防止を目的として定期券、乗車券、株券、商品券等の有価印刷物に適用されていた。しかしながら、カラー複写機を使用したり、デジタルカメラと家庭用PCとを併用したりすることで、偽造防止印刷物の偽造が容易に行われていたのが現状である。また、カラー複写機等を使用せず、偽造防止印刷物自体の偽造も行われていたのが現状である。
【0003】
このようなことから、カラー複写機等による複写偽造を防止できると共に、偽造防止印刷物自体の偽造をも防止できるようにした偽造防止印刷物が開発されており、例えば、図1に示すような偽造防止印刷物がある。以下、図1を参照しながら、カラー複写機等による複写偽造を防止できると共に、偽造防止印刷物自体の偽造をも防止できるようにした偽造防止印刷物の構成について説明する。なお、図1(b)は、偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図であり、図1(a)は、図1(b)に示す偽造防止印刷物を表面側(光輝層側)から見た場合の構成を示す図である。
【0004】
図1に示す偽造防止印刷物は、図1(b)に示すように、基材(1)上に、フォトクロミックインキからなる変色層(2)を設け、変色層(2)上に、光輝性を有する光輝性顔料(例えば、パール顔料)を含む光輝層(3)を設けて構成されている。
【0005】
これにより、太陽光や紫外線ランプ等を偽造防止印刷物に照射することで変色層(2)のフォトクロミックインキが色変化を呈することになり、偽造防止印刷物か否かの判断を目視により行うことが可能となる。また、光輝層(3)を構成する光輝性顔料特有の光輝性により、カラー複写機等による複写偽造を防止することが可能となると共に、偽造防止印刷物自体の偽造をも防止することが可能となる。
【0006】
しかしながら、図1に示す偽造防止印刷物は、図1(b)に示すように、変色層(2)の凹凸面により、光輝層(3)を構成する光輝性顔料が水平に配置されにくくなり、光輝性顔料が斜めに配置された箇所『光輝性弱の領域』は、光輝性顔料が水平に配置された箇所よりも見る角度によっては光輝性が弱くなってしまうことになる。また、図1(b)に示すように、光輝性顔料が配置されない箇所『光輝性無の領域』は、光輝性顔料特有の光輝性が得られなくなってしまい、図1(a)に示すように、変色層(2)の発する色が表面に直接見えてしまうことになる。
【0007】
なお、本発明より先に出願された技術文献として、少なくとも基材の片面上にサーモクロミック層および着色層と、それらを覆う光学干渉層が設けられており、サーモクロミック層は加温または冷却によって変色するサーモクロミックインキで構成されていて、さらに非加温時または非冷却時においてはサーモクロミック層と着色層のそれぞれが判別不可能な状態になっており、光学干渉層は、パール顔料を含有するインキからなることを特徴とする偽造防止印刷物が開示された文献がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−145965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
なお、上記特許文献1は、サーモクロミック層および着色層を覆うように、パール顔料を含有するインキからなる光学干渉層が設けられた偽造防止印刷物が開示されているが、光学干渉層を設けるサーモクロミック層および着色層を平滑化することについては何ら考慮されたものではない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光輝層に含まれる光輝性顔料特有の光輝性を向上させた偽造防止印刷物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有することとする。
【0011】
本発明にかかる偽造防止印刷物は、基材上に、色が変化する変色層と、変色層の凹凸面を平滑化する平滑化層と、光輝性を有する光輝性顔料を含む光輝層と、が少なくとも設けられてなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物は、変色層と、平滑化層と、光輝層と、がこの順で基材上に設けられてなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物において、光輝性顔料は、鱗片状顔料であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物において、変色層は、温度変化に応じて色変化するインキと、紫外線を照射することで色変化するインキと、赤外線を照射することで色変化するインキと、可視光を照射することで色変化するインキと、の少なくとも1つのインキを含んで構成されてなることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物において、平滑化層は、透過性を有する材質からなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物において、変色層と、平滑化層と、光輝層と、は、水系または溶剤系の同じ材質のメジウムを含んで構成されてなることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物において、メジウムは、溶剤に溶融するワックス成分を含んで構成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物において、平滑化層は、変色層の最大凸面部と、変色層の最大凹面部と、の間の距離である最大表面粗さ以上の層厚であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明にかかる偽造防止印刷物は、光輝層の表面を保護する保護層が設けられてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる偽造防止印刷物は、基材上に、色が変化する変色層と、変色層の凹凸面を平滑化する平滑化層と、光輝性を有する光輝性顔料を含む光輝層と、が少なくとも設けられてなることを特徴とするものである。これにより、光輝層に含まれる光輝性顔料を平滑化層上に水平に配置し、光輝性顔料特有の光輝性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、図2を参照しながら、本実施形態における偽造防止印刷物の特徴について説明する。なお、図2(b)は、本実施形態における偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図であり、図2(a)は、図2(b)に示す偽造防止印刷物を表面側(光輝層側)から見た場合の構成を示す図である。
【0022】
本実施形態における偽造防止印刷物は、図2(b)に示すように、基材(1)上に、色が変化する変色層(2)と、変色層(2)の凹凸面を平滑化する平滑化層(4)と、光輝性を有する光輝性顔料を含む光輝層(3)と、が少なくとも設けられてなることを特徴とするものである。
【0023】
これにより、変色層(2)の凹凸面を平滑化層(4)により平滑化し、光輝層(3)に含有する光輝性顔料を平滑化層(4)上に水平に配置することが可能となる。このため、図2(a)に示すように、光輝層(3)の全面において光輝性顔料特有の光輝性を均一に得ることが可能となり、図1に示すように、光輝性顔料特有の光輝性が得られない箇所『光輝性弱の領域、光輝性無の領域』の発生を防止し、光輝層(3)の光輝性を高めることが可能となる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態における偽造防止印刷物について説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
まず、図2を参照しながら、本実施形態における偽造防止印刷物の構成について説明する。
【0025】
本実施形態における偽造防止印刷物は、図2(b)に示すように、基材(1)と、変色層(2)と、平滑化層(4)と、光輝層(3)と、を有して構成される。
【0026】
<基材1>
基材(1)は、偽造防止印刷物の基板となるものである。基材(1)を構成する材質としては、紙、合成紙、プラスチック、木材、ガラス、樹脂などが適用可能であり、偽造防止印刷物の用途に応じて任意の材質を基材(1)として適用することは可能である。なお、フィルムは、偽造防止印刷物の引っ張り強度、耐熱性、耐摩擦性を向上させることが可能となるため、基材(1)としてフィルムを適用することが好ましい。
【0027】
<変色層2>
変色層(2)は、色が任意に変色する層である。なお、変色層(2)は、基材(1)上の全面に配置してもよく、また、基材(1)上の一部分に配置してもよく、色を変色させたい部分に対し、変色層(2)を設けるように構成することが可能である。
【0028】
また、変色層(2)を構成する材質としては、色が任意に変色する材質であれば、あらゆる材質を適用することは可能であり、例えば、温度変化に応じて色変化するインキ、紫外線を照射することで色変化するインキ、赤外線を照射することで色変化するインキ、可視光を照射することで色変化するインキなどが適用可能であり、各種インキを任意に組み合わせて任意の変色層(2)を構成することは可能である。
【0029】
なお、温度変化に応じて色変化するインキとしては、サーモクロミックインキが挙げられ、サーモクロミックインキを含有して変色層(2)を構成することで、任意の熱源や体温により変色層(2)が色変化を呈し、目視での視認が可能となる。
【0030】
また、紫外線を照射することで色変化するインキとしては、フォトクロミックインキが挙げられ、フォトクロミックインキを含有して変色層(2)を構成することで、太陽光や紫外線ランプ等により変色層(2)が色変化を呈し、目視での視認が可能となる。なお、フォトクロミックインキを含有した変色層(2)は、遮光後、一定時間経過した後に、元の状態に戻る可逆的変化を示すことになる。
【0031】
また、可視光を照射することで色変化するインキとしては、蓄光インキが挙げられ、蓄光インキを含有して変色層(2)を構成することで、太陽光や電灯などの光エネルギーを蓄光インキが吸収蓄積し、該蓄積したエネルギーを暫時放出して発光することで、変色層(2)が色変化を呈し、目視での視認が可能となる。
【0032】
<光輝層3>
光輝層(3)は、目視角度により色や光輝性などが異なって見える層である。なお、光輝層(3)に適用可能な材質は、パール顔料等の鱗片状顔料や、金や銀などの金属性顔料等の光輝性を持つ光輝性顔料が適用可能である。
【0033】
なお、光輝層(3)は、光輝性、および、チェンジング性を向上させるために、光輝層(3)を厚くすることが好ましい。これにより、光輝層(3)を構成する光輝性顔料が多くなるため、光輝性、および、チェンジング性を向上させることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態における光輝層(3)を構成する光輝性インキの光輝性顔料の比率を以下に示す。
<光輝性顔料比率>
光輝性顔料:光輝性顔料用メジウム=1部:2.5部〜5部
【0035】
なお、光輝性顔料用メジウムの配合内容を以下に示す。
<光輝性顔料用メジウムの配合内容>
消化綿:10〜20%
ポリエステル:5〜10%
添加剤:1〜5%
溶剤:65〜84%
本実施形態における光輝性顔料用メジウムは、消化綿と、ポリエステルと、添加剤と、溶剤と、を上記の条件下の基で、配合合計が100%となるように適宜配合して構成することになる。なお、添加剤としては、消泡剤、顔料分散剤、ワックス等を適用することになる。
【0036】
次に、本実施形態における光輝層(3)を構成する光輝性顔料に適用可能なパール顔料について説明する。
【0037】
パール顔料は、光の干渉作用に基づいて光輝性を有する顔料であり、例えば、魚の鱗から採取される天然真珠光輝性顔料や、天然もしくは合成の雲母を主成分とし、これらの表面を、二酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ等の金属酸化物で被覆したものや、雲母粉の表面をチタン化合物で被覆したもの等が挙げられる。
【0038】
なお、パール顔料は、アスペクト比(顔料の厚みと幅の比)が高いものを用いることで、リーフィング効果(パール顔料が重なったように積層された状態)を得ることになり、二色性変色(光輝層(3)が目視角度により異なった色相に見える状態)を向上させることが可能となる。
【0039】
また、パール顔料は、パール顔料の被覆層の層厚により可視光の波長が干渉され、以下の式(1)に示す関係式で様々な干渉色(虹鮮色)を呈することになる。
【0040】
式(1)・・・可視光の波長∝パール顔料の被覆層の層厚×被覆層の材料屈折率
【0041】
このため、パール顔料の被覆層の層厚を任意に変更することで、様々な干渉色を呈するパール顔料を構築することが可能となる。なお、以下に、雲母チタンを例に取り、被覆層の層厚と色相との関係について説明する。
【0042】
例えば、被覆層の光学的層厚が約210nmの場合には黄色、約250nmの場合には赤、約310nmの場合には青、約360nmの場合には緑色の干渉色を呈することになる。
【0043】
このため、パール顔料は、パール顔料を構成する雲母を被覆している二酸化チタン等の金属酸化物と、各層の厚さと、を任意に変えることで、様々な色と光輝性のあるパール色を構築し、特定の色相を強調させることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態の光輝層(3)に適用可能なパール顔料としては、例えば、「SA−100」、「SB−100」、「sd−100」、「SE−100」、「SF−100」、「SH−100」、「YD−100」、「RD−100」、「RBD−100」、「VD−100」、「BD−100」、「GD−100」、「RYD−100」、「MM−100R」、「MF−100」、「MF−100R」、「ME−100」、「ME−100R」、「MS−100R」、「ML−100R」、「MB−100R」、「MG−100R」、「MR−100R」、「MV−100R」、「MRB−100R」、「MY−100R」、「MDY−100」、「MRY−100」、「MC−303R」、「MC−500」、「MC−502」、「MC−504」(以上、商品名:トピー工業(株)製)、「Iriodin 201 Rutile Fine Red」、「Iriodin 221 RutileFine Blue」、「Iriodin 223 Rutile Fine Lilac」、「Iriodin 231 Fine Green」、「Iriodin 205 Rutile Platinum Gold」、「Iriodin 215 Rutile Red Perl」、「Iriodin 217 Rutile CopperPearl」、「Iriodin 219 Rutile Lilac Pearl」、「Iriodin 225 Rutile Blue Pearl」、「Iriodin 235 Rutile Green Pearl」、「Iriodin 249 Flash Interference Gold」、「Iriodin 259 Flash Interference Red」、「Iriodin 289 Flash Interference Blue」、「Iriodin 299 FlashInterference Green」、(以上、商品名:メルク・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0045】
なお、本実施形態においては、蛍光顔料の色相の再現に影響を与えない範囲で、これらのパール顔料を、単独もしくは2種類以上を組み合わせて、光輝層(3)を構成することが可能である。また、上記のパール顔料は、一例であり、上記のパール顔料に限定するものではなく、公知のパール顔料を適用することは可能である。
【0046】
また、本実施形態において使用するパール顔料としては、シリカの表面を二酸化チタン等の屈折率の高い金属酸化物で被覆したものを適用することも可能である。
【0047】
<平滑化層4>
平滑化層(4)は、変色層(2)の凹凸面を平滑化するための層である。なお、平滑化層(4)の層厚は、図3に示すように、変色層(2)の最大凹面部(21)と、最大凸面部(22)と、の間の距離である最大表面粗さ(23)以上の層厚であることが好ましい。これにより、変色層(2)の凹凸面を完全に平滑化することが可能となるため、光輝層(3)に含有する光輝性顔料を平滑化層(4)の上に水平に配置することが可能となる。なお、図3は、偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図である。
【0048】
また、変色層(2)を、基材(1)上の一部分に対して配置する場合には、光輝層(3)に含有する光輝性顔料を平滑化層(4)上で水平に配置するように、図4に示すように、基材(1)と、変色層(2)と、を覆うように平滑化層(4)を設けることが好ましい。これにより、変色層(2)の凹凸面を完全に平滑化することが可能となるため、光輝層(3)に含有する光輝性顔料を平滑化層(4)の上に水平に配置することが可能となる。なお、図4は、偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図である。
【0049】
また、平滑化層(4)を構成する材質としては、透過率が高い材質を適用することが好ましい。これにより、変色層(2)上に平滑化層(4)を設けても、変色層(2)が発する色を平滑化層(4)において隠蔽することなく、光輝層(3)上から目視で鮮明に視認することが可能となる。
【0050】
また、平滑化層(4)を構成する材質としては、明度(L値)が高い材質を適用することが好ましい。これにより、光輝層(3)による光輝性を更に向上させることが可能となる。
【0051】
<平滑化層4の材質>
次に、平滑化層(4)を構成する材質について詳細に説明する。
【0052】
平滑化層(4)に適用可能な材質としては、上述した光輝層(3)に適用する光輝性顔料用メジウムを適用することが可能である。この光輝性顔料用メジウムを適用することで、平滑化層(4)の透過率が高くなるため、光輝層(3)による光輝性を更に向上させることが可能となる。なお、変色層(2)と、光輝層(3)と、平滑化層(4)と、に適用するメジウムは、水系または溶剤系で統一させた方が好ましい。これは、水系と溶剤系とを積層した場合には、着肉性が悪くなるため、変色層(2)と、光輝層(3)と、平滑化層(4)と、に適用するメジウムを、水系または溶剤系で統一させて偽造防止印刷物を形成した方が、各層の着肉性が良くなり、光輝層(3)の光輝性を更に向上させることが可能となるためである。
【0053】
なお、光輝性顔料用メジウムに含まれるワックス成分としては、ポリエチレンワックス,PTFEワックス等の溶剤に対して溶融しないワックス(粉体)、または、シリコン液体ワックス,アマイドワックス等の溶剤に対して溶融するワックス(液体)が適用可能である。
【0054】
なお、溶剤に対して溶融しないワックス(粉体)を含有した光輝性顔料用メジウム(第1のメジウム)と、溶剤に対して溶融するワックス(液体)を含有した光輝性顔料用メジウム(第2のメジウム)と、の可視光領域での透過率を比較すると、第1のメジウムは、5〜10%に対し、第2のメジウムは、約100%であることが実験結果から判明した。このため、第2のメジウムの方が第1のメジウムよりも透過率が高く、光輝層(3)の光輝性を向上させることが可能となる。
【0055】
また、第1のメジウムと、第2のメジウムと、の明度(L値)を比較すると、第1のメジウムは、約30に対し、第2のメジウムは、約90〜100であることが実験結果から判明した。このため、第2のメジウムの方が第1のメジウムよりも明度(L値)が高く、光輝層(3)の光輝性を向上させることが可能となる。
【0056】
このため、本実施形態の偽造防止印刷物は、溶剤に対して溶融するワックス(液体)を含有した光輝性顔料用メジウムを適用することが好ましい。これにより、光輝層(3)の光輝性を更に向上させることが可能となる。
【0057】
このように、本実施形態における偽造防止印刷物は、図2(b)に示すように、基材(1)上に、色が変化する変色層(2)と、変色層(2)の凹凸面を平滑化する平滑化層(4)と、光輝性を有する光輝性顔料を含む光輝層(3)と、を順に積層することで、変色層(2)の凹凸面を平滑化層(4)により平滑化し、光輝層(3)に含有する光輝性顔料を平滑化層(4)上に水平に配置することが可能となる。このため、図2(a)に示すように、光輝層(3)の全面において光輝性顔料特有の光輝性を均一に得ることが可能となり、図1に示すように、光輝性顔料特有の光輝性が得られない箇所『光輝性弱の領域、光輝性無の領域』の発生を防止し、光輝層(3)の光輝性を向上させることが可能となる。
【0058】
<偽造防止印刷物の製造方法>
次に、本実施形態の偽造防止印刷物を製造する製造方法について説明する。
【0059】
まず、基材(1)上に、フォトクロミックインキを1〜2回積層し、変色層(2)を形成する。
【0060】
次に、上記の工程においてフォトクロミックインキを積層した回数分だけ、平滑化層(4)を形成する。
【0061】
次に、平滑化層(4)上に、光輝性インキを1〜2回積層し、光輝層(3)を形成する。
【0062】
以上の工程により、本実施形態における偽造防止印刷物を形成することになる。
【0063】
なお、上述した偽造防止印刷物を製造する際の変色層(2)と、光輝層(3)と、の形成は、ベタ塗りにて形成してもよく、文字などの像を形成するためにパターン印刷にて形成してもよく、特に限定しないものとする。
【0064】
また、上述した偽造防止印刷物を製造する際の印刷方式については、特に限定するものではなく、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式、シルクスクリーン印刷方式など、あらゆる印刷方式を適用して本実施形態における偽造防止印刷物を製造することは可能である。
【0065】
なお、フレキソ印刷方式は、グラビア印刷方式に比べて、乾燥時間が短いので、印刷物の伸縮が少なく、見当性を向上することが可能となる。また、フレキソ印刷方式は、シルクスクリーン印刷方式に比べて、印刷版の線数が細いので、再現性のよい印刷物を形成することが可能となる。このため、本実施形態における偽造防止印刷物を製造する際には、フレキソ印刷方式を適用することが好ましい。
【0066】
なお、アニロックス線数140Lで、フォトクロミックインキを2回積層し、変色層(2)を形成し、平滑化層用のメジウム(上述した第2のメジウム)を2回積層し、平滑化層(4)を形成し、パールインキ(メルク・ジャパン製:iriodin等)を2回積層し、光輝層(3)を形成した場合には、平滑化層(4)の層厚が、2〜3μmとなり、変色層(2)の凹凸面が平滑化され、光輝層(3)による光輝性を更に向上させることが判明した。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0068】
第2の実施形態における偽造防止印刷物は、図5に示すように、第1の実施形態における偽造防止印刷物を構成する光輝層(3)上に、光輝層(3)を保護するための保護層(5)を設けたことを特徴とするものである。
【0069】
このように、第2の実施形態における偽造防止印刷物は、光輝層(3)上に保護層(5)を設けることで、光輝層(3)の表面を保護することが可能となるため、光輝層(3)の光輝性を維持させることが可能となる。また、保護層(5)を設けることで、光輝層(3)上を平滑にすることが可能となるため、偽造防止印刷物の表面を平滑にすることが可能となる。
【0070】
なお、保護層(5)を構成する材質としては、光輝層(3)の表面を保護することが可能な材質であれば、特に限定するものではなく、あらゆる材質を適用することは可能である。
【0071】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0072】
例えば、上述した図2〜図5に示す偽造防止印刷物は、基材(1)上に対して変色層(2)を積層した構成を示したが、基材(1)と、変色層(2)と、の間の層構成については特に限定するものではなく、本発明の技術思想である、変色層(2)上に、変色層(2)の凹凸面を平滑化する平滑化層(4)を設けた構成であれば、あらゆる層構成を基材(1)と変色層(2)との間に設けることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明にかかる偽造防止印刷物は、定期券、乗車券、株券、商品券等の有価印刷物など、複写機等による複写偽造を極めて困難にし、尚かつ、偽造防止印刷物か否かの判断を目視により可能とする印刷物に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】凹凸面のある変色層(2)を積層した偽造防止印刷物の構成を示す図であり、(b)は、偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図であり、(a)は、(b)に示す偽造防止印刷物を表面側(光輝層側)から見た場合の構成を示す図である。
【図2】本実施形態における偽造防止印刷物の構成を示す図であり、(b)は、偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図であり、(a)は、(b)に示す偽造防止印刷物を表面側(光輝層側)から見た場合の構成を示す図である。
【図3】本実施形態の偽造防止印刷物を構成する平滑化層(4)の好ましい層厚を説明するための図である。
【図4】本実施形態における偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図であり、基材(1)と、変色層(2)と、を覆うように平滑化層(4)を設けた場合の断面の構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態における偽造防止印刷物を基材(1)に対して垂直に切断した際の断面の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 基材
2 変色層
21 最大凹面部
22 最大凸面部
23 最大表面粗さ
3 光輝層
4 平滑化層
5 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、
色が変化する変色層と、
前記変色層の凹凸面を平滑化する平滑化層と、
光輝性を有する光輝性顔料を含む光輝層と、が少なくとも設けられてなることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記変色層と、前記平滑化層と、前記光輝層と、がこの順で前記基材上に設けられてなることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
前記光輝性顔料は、鱗片状顔料であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項4】
前記変色層は、温度変化に応じて色変化するインキと、紫外線を照射することで色変化するインキと、赤外線を照射することで色変化するインキと、可視光を照射することで色変化するインキと、の少なくとも1つのインキを含んで構成されてなることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記平滑化層は、透過性を有する材質からなることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項6】
前記変色層と、前記平滑化層と、前記光輝層と、は、水系または溶剤系の同じ材質のメジウムを含んで構成されてなることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項7】
前記メジウムは、溶剤に溶融するワックス成分を含んで構成されてなることを特徴とする請求項6記載の偽造防止印刷物。
【請求項8】
前記平滑化層は、前記変色層の最大凸面部と、前記変色層の最大凹面部と、の間の距離である最大表面粗さ以上の層厚であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項9】
前記光輝層の表面を保護する保護層が設けられてなることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の偽造防止印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−62356(P2007−62356A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95013(P2006−95013)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】