説明

傾斜のある上面を有する患者移送装置

【課題】気管内挿管を容易にするための身体支持装置を提供する。
【解決手段】患者移送装置は患者の胴体が患者の足に対して持ち上げられるように、頭側端部で傾けられる上部のシート12を含む。患者移送マットレス54は増大した強度及び安定性のために中間部分に比較的幅の狭い小室を含む。患者移送マットレスはまた、足側端部に足分離器を含み、足分離器は先細にされ、1つまたは複数の膨張可能な小室を含み、マットレスに直接取り付けられたポンプを含む。患者移送装置は独立に膨張可能な胴体小室56及び頭部小室58、及び各小室に接続された入口管及び排気管を有する胴体及び頭部支持付属物を含む。患者移送装置の空気分配マニホールドは小室の膨張及び収縮の制御のために入口管及び排気管の各々に接続された弁を含む。患者移送装置は分配マニホールドに接続され、ユーザーの親指による作動のために挿管用管に取り付け可能な制御ユニットを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2004年9月24日に出願された米国特許出願No.60/612,805「Patient Transfer Mattress Having Inclined Surface」、及び2004年3月1日に出願された米国特許出願No.60/548,901「Active Head/Neck Positioning Device for Intubation」の優先権を主張し、これらの出願はその全文が本願に参照として組み込まれる。
【0002】
本発明は患者移送装置に関する。詳細に述べると、本発明は、肥満した患者の呼吸の負担を軽減するために、または患者の体重に関わりなく患者への挿管を容易にするために患者を直立した姿勢で支持するために便利な傾斜のある表面を備えた患者移送マットレスに関する。
【背景技術】
【0003】
患者移送マットレスは膨張可能なプレナム(または、空気が充満した空間)を有し、マットレスの下側にエアクッションを生成するために底部のシートの多数の穴を介して空気を排出する。エアクッションはマットレスを持ち上げ、ベッドや他の支持面に対するマットレスの移動を容易にする。患者移送マットレスの従来技術の例は米国特許No.5,067,189(Weedling他)及び米国特許No.5,561,873(Weedling)に開示されている。
【0004】
患者、特に、病的に肥満した患者は肥満に関連する状態を有することが多く、患者が長時間、うつ伏せで(または、仰向けで)横たわることを非健康的なものにする場合が多い。肥満は、患者の肺が重たい胸部の壁によって圧迫され、呼吸のために持ち上がり、伸張することを困難にするので、患者が呼吸することを困難にすることがある。このような呼吸の困難性は慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び鬱血性心不全(CHF)等の状態を悪化させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,067,189号明細書
【特許文献2】米国特許第5,561,873号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの理由により、肥満した患者、特に、COPDまたはCHFを患っている患者は診断中や移送中に平らな状態で横たわっていることが精神的に苦痛な状態となる場合がある。うつ伏せまたは仰向けの状態にされた肥満した患者の動脈血のガスレベルは酸素の適当な循環を害する程度に上昇する可能性がある。CHFを患っている患者の場合、患者の心臓は血液を適度な状態で身体を通して循環させることができなくなり、血液が肺に堆積し、息切れ、疲労感、及び手足の浮腫を生ずる可能性がある。肺が流体で鬱血してしまうと、それによる息切れはCHFの患者が頻繁に睡眠障害を起こすことを生じさせる。
【0007】
患者の処置は気管内挿管を必要とする場合がある。剛性の喉頭鏡を使用した喉頭の直接的な視覚化は気管内挿管を達成するための主要な処置であり、この処置は喉頭鏡検査法と呼ばれている。喉頭鏡検査法の成功は口頭、咽頭、及び喉頭の軸の整列に依存する。「嗅ぐ姿勢」と呼ばれるこの姿勢において、患者の頭部は僅かに伸長しており、後頭が持ち上げられた状態となる。手作業によって患者を適切な挿管姿勢にすることは容易ではなく、特に、患者が肥満している場合、より困難なものとなる。
【0008】
したがって、気管内挿管を容易にするための身体支持装置が開発されている。米国特許No.4,259,757(Watson)は気管内挿管を容易にするために患者の頭及び首を位置付けるために使用することができるクッションを開示している。しかしながら、このクッションは頭及び首だけを支持し、患者の胴体を支持しないので、「嗅ぐ姿勢」を達成するための完全な支持システムではない。米国特許No.5,528,783は膨張可能な内袋を含む、くさび形の頭部及び胴体支持を開示している。そして、内袋は部分的な膨張及び完全な膨張を与えるために調節可能である。しかしながら、この支持は単一の内袋しか含まず、頭部を胴体とは独立に持ち上げることができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの特徴に従うと、患者移送装置は上部のシート及び底部のシートを有する膨張可能な移送マットレスを含む。底部のシートはマットレスの下側にエアクッションを生成するために複数の穴を含む。上部のシートは、支持された患者の頭部及び胴体の上部が足及び胴体の下部より持ち上げられるように、マットレスの縦方向の中間の部分から頭部の端部に向かって上方に傾けられる。
【0010】
1つの実施例において、膨張可能な移送マットレスはマットレス上の患者を傾斜のある状態で支持するために、マットレスの中間の部分に増大した強度及び安定性を与えるための、中間部分に配置された複数の比較的狭い小室(または、チャンバー)を含む。好まれるものとして、比較的狭い小室はマットレスに対して横方向に拡張する。
【0011】
もう1つの実施例において、移送マットレスはマットレスの胴体の足部分に配置された足分離器を含む。足分離器は好まれるものとして、マットレスの端部に向かって広がるような状態で先細の形状を有する。好まれるものとして、足分離器は膨張のための少なくとも1つ入口ポートを有する少なくとも1つの膨張可能な小室(または、チャンバー)を含む。足分離器はバッフル壁によって互いに分離された複数の小室を含んでもよい。
【0012】
もう1つの実施例において、移送マットレスはマットレスに取り付けられ、マットレスの少なくとも1つの入口ポートに接続されたポンプを含む。ポンプはホースによってマットレスの1つまたは複数の入口ポートに接続されてもよい。あるいは、ポンプは入口ポートに直接取り付けられてもよい。
【0013】
本発明のもう1つの特徴に従うと、患者移送装置は胴体及び頭部の支持を含む。胴体の支持は膨張可能な小室を有し、頭部の支持は胴体の支持の上面に配置され、同様に膨張可能な小室を有する。胴体支持の上面は胴体支持の小室が膨張させられたときに、患者の胴体の上部が患者の足に対して持ち上げられるように、下側に横たわる支持面に対して上方に傾けられる。頭部支持の小室は頭部支持の小室及び胴体支持の小室が独立に膨張することを可能にするために、胴体支持の小室の内部から分離された内部を画定する。
【0014】
1つの実施例において、患者移送装置は各支持小室に加圧された空気を供給して、関連する小室を膨張させるための、各支持小室に接続された入口管を含む。患者移送装置はまた、加圧された空気源、及び各々が加圧された空気を関連する小室の制御された供給のために入口管の対応する1つに接続された第1及び第2の弁に機能可能に接続された分配マニホールドを含む。好まれるものとして、弁は電気的に制御される弁である。患者移送装置はさらに、分配マニホールドに接続され、胴体支持小室及び頭部支持小室の独立的な膨張のために弁の動作を制御するように構成されたコントローラーを含む。
【0015】
もう1つの実施例において、患者移送装置はまた、胴体支持小室及び頭部支持小室の各々から空気を排気するために、関連する小室に接続された排気管を含む。分配マニホールドは関連する小室の制御された収縮のために排気管に接続された第3及び第4の弁を含む。
【0016】
もう1つの実施例において、患者移送装置は弁の動作の制御のために分配マニホールドに接続された制御ユニットを含む制御システムを含む。好まれる実施例に従うと、制御ユニットは(「嗅ぐ姿勢」のために3つの軸を整列させるための)ユーザーの親指の動きによる弁の作動を可能にするために、喉頭鏡に取り付けられるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従った患者移送装置の斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施例に従った患者移送装置の斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施例に従った患者移送装置の斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施例に従った患者移送装置の斜視図である。
【図5】頭部支持枕が収縮した状態で示されている、本発明の第5の実施例に従った患者移送装置の斜視図である。
【図6】頭部支持枕が膨張した状態で示されている、図5の患者移送装置の部分的な側面図である。
【図7】本発明の第6の実施例に従った患者移送装置の斜視図である。
【図8】頭部内袋及び胴体内袋の独立な膨張を与えるための膨張制御システムを含む図7の患者移送装置の膨張可能な頭部/胴体支持付属物の部分的な斜視図である。
【図9】気管内挿管を容易にするために口頭、咽頭、及び喉頭の軸が整列するように支持された頭部及び胴体を有する患者の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面において、同様な構成要素には同様な番号が付けられている。図1には、膨張可能なマットレス10を有するタイプの患者移送装置が示されている。後で詳細に説明されるように、患者移送装置は患者の頭部及び胴体を患者の胴体の下部及び足に対して持ち上げられた状態で支持するための、傾いた面を与える。この様式の支持は肥満した患者、特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び鬱血性心不全(CHF)等の共存する病気を患っている肥満した患者に対して望ましい。
【0019】
膨張可能な移送マットレス10は上部のシート12、底部のシート14、及び側部パネル16を含む。底部シート14はマットレスの下側にエアクッションを生成して、下側の支持面に沿ったマットレス10のスライドまたは移動を容易にするために、マットレス10から空気を排出するための複数の開口を含む。移送マットレス10はマットレスの移動を誘導するための牽引力の適用を容易にするための、マットレス10の側部に取り付けられたループ状の取っ手18を含んでもよい。
【0020】
移送マットレス10はまた、各ループ状の取っ手18に取り付けられたループ状の牽引用ストラップ19を含んでもよい。ループ状の牽引用ストラップ19は介護者がマットレス10の遠隔から引っ張ることを可能にするために細長の形状を有する。この構成は、例えば、患者を第1の支持面から、介護者と第1の支持面との間に配置された第2の支持面に移送するときに便利である。細長のループ状の牽引用ストラップ19は、介護者が実質的に直立した状態でマットレスに牽引力を適用することを可能にし、介護者の腰や背中の損傷の可能性を減少させる。移送マットレス10はまた、患者をマットレスに固定するための患者束縛ストラップ20を含んでもよい。
【0021】
患者移送マットレス10は好まれるものとして、縦方向に拡張した側部の空気小室(または、空気チャンバー)22、及び側部の空気小室22の間に拡張する横方向の小室(または、チャンバー)24を含む。マットレス10の側部空気小室22及び横方向小室24のための適当な構成は米国特許No.No.5,067,189(Weedling)及び米国特許No.5,561,873に開示されている。
【0022】
患者移送マットレス10は一方の端部の頭部分26、反対側の端部の足部分28、及び頭部分26と足部分28の間に配置された中間部分30を含む。移送マットレス10の頭部分26は上部シート12と底部シート14の間に配置され、側部パネル16に接続した拡張パネル32を含む。図1に示されているように、拡張パネル32を備えることにより、移送マットレス10が膨張させられたときに、マットレス10の頭部分26の上部シー
ト12は上部シート12の残りの部分よりも高い位置に持ち上げられる。示されているよ
うに、拡張パネル32は、上部シート12が頭部分26の大部分にわたって実質的に均一な比率で傾けられるような寸法にされる。好まれるものとして、マットレス10が完全に膨張させられ、患者による負荷がかかっていないときの、頭部分26の上部シート12の上部シート12の残りの部分に対する傾きの角度Yは約30度〜約40度の間である。しかしながら、本発明は特定の傾きの角度によって制限されるものではない。
【0023】
この傾きは支持された患者の頭部及び胴体の上部を患者の胴体の下部及び足よりも高い位置に持ち上げる。肥満した患者を直立した姿勢(または、直立状態に近い姿勢)で支持することにより、安静時及び横方向の移送時の(血液の)循環及び呼吸が促進される。
【0024】
移送マットレス10はマットレスの内部に空気を供給してマットレスを膨張させるための空気入口ホース31を含む。移送マットレス10の傾いた頭部分26は移送マットレス10の残りの部分の内部と伝達(または、接続)する内部小室を有してもよい。この様式で構成された場合、傾いた頭部分26を含む移送マットレス10全体は空気入口ホース31を介して同一の空気源から共通に膨張されるだろう。あるいは、患者移送マットレス10の頭部分26の傾いた表面は移送マットレスの残りの部分から分離された胴体支持小室を画定してもよい。この様式で構成された場合、胴体支持小室は、必要に応じて、胴体支持小室の選択的な膨張のために入口弁を介して静的な(または、固定的な)空気の供給を受容してもよい。そのような構成は患者を実質的にうつ伏せ(または、仰向け)の状態で支持するか、またはより直立状態に近い状態で支持するかに対する選択を与えることができる。
【0025】
図2は本発明に従った、患者移送マットレス33の形式の、患者移送装置の第2の実施例を示している。図1の患者移送マットレス10と同様に、患者移送マットレス33は上部シート12、底部シート14、側部パネル16、ループ状の取っ手18、及び患者束縛ストラップ20を含む。移送マットレス10と同様に、マットレス33はマットレス33
の頭部分26に拡張パネル32を含み、移送マットレス33が膨張させられたときに、頭部分26を上部シート12の残りの部分よりも高い位置に持ち上げる。
【0026】
上部シート12の傾き及び患者の胴体の上部の上昇は、患者がうつ伏せまたは仰向けになっているときよりも大きな割合で患者の体重を移送マットレス33の中間部分30に分布させるだろう。中間部分30のこの増大した重量を補正するために、移送マットレス33の中間部分30はマットレス33の他の部分に含まれる横方向小室24よりも狭い幅の横方向小室34を含む。この結果、横方向小室34の密度(すなわち、単位面積当たりの小室の数)は中間部分30で増大するので、各横方向小室34が支えなければならない重量は比較的広い横方向小室24が使用される場合よりも減少する。好まれるものとして、マットレス33の中間部分30の横方向小室34は移送マットレス33の縦方向の側部空気小室22に直接的に開いている。中間部分30の狭くされた小室は好まれるものとして、横方向に拡張しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0027】
図3を参照すると、本発明に従った、移送マットレス36の形式の、患者移送装置の第3の実施例が図示されている。移送マットレス36は移送マットレス10及び33と同様に、上部シート12、底部シート14、側部パネル16、及び拡張パネル32を含み、上部シート12は移送マットレス36の頭部分26の部分で傾きを有する。また、患者移送マットレス33と同様に、移送マットレス36は中間部分30の増大した支持及び安定性のために、マットレス36の中間部分30の部分に比較的狭い横方向小室34を含む。
【0028】
移送マットレス36はまた、上部シート12のマットレス36の足部分28に取り付けられた一塊になった膨張可能な小室38を含む。一塊になった膨張可能な小室38は、膨
張させられたときに、マットレス36の端部40に向かって幅が増大する先細の形状を生成する。この先細の形状はくさびとして作用し、マットレス36上に支持された患者の足の間の分離を維持する。肥満した患者に対し、足の分離は(血液の)循環を促進し、皮膚の保全性を保持する。好まれるものとして、小室38は小室の強度を増大させるためにバッフル壁42によって互いに分離されている。したがって、一塊になった膨張可能な小室38の各々は膨張のために少なくとも1つの入口ポート44を含む。ここで、膨張可能な足分離器が必ずしも一塊になった複数の膨張可能な小室を含まなくてもよいことは理解されなければならない。足分離器は示されているようなくさび形の構成を形成する単一の小室を含んでもよい。また、足分離器は必ずしも膨張可能である必要はない。代替的に、足分離器はマットレス36の上部シート12に固定された発泡樹脂等の材質で構成されてもよい。
【0029】
移送マットレス36は好まれるものとして、マットレス36の頭部分26の部分で傾きを有する上部シート12、及び中間部分30の部分の狭くされた横方向小室34を含む。
しかしながら、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。上述された足分離器はマットレス全体にわたって実質的に均一な横方向小室24を有する多様な移送マットレス、または頭部分の部分で傾きを有さない上部シートを有する移送マットレスに備えられてもよい。
【0030】
図4は空気移送マットレス46の形式の、本発明の第4の実施例に従った患者移送装置を示している。移送マットレス10及び33と同様に、移送マットレス46は好まれるものとして、頭部分26の部分で傾きを有する上部シート12を含む。また、移送マットレス46は好まれるものとして、移送マットレス33及び36と同様な比較的幅の狭い横方向小室34を有する中間部分30、及び移送マットレス36と同様な一塊になった膨張可能な小室38によって形成される足分離器を含む。
【0031】
図1〜3に示されているように、移送マットレス10、33、及び36の各々は空気源から空気を供給して移送マットレスを膨張させるための空気入口ホース31を含む。移送マットレス46はマットレスを膨張させるために移送マットレスに直接取り付けられた膨張器48を含む。膨張器48は好まれるものとして、移送マットレス46のマットレス端部に隣接した状態で足部分28に取り付けられる。膨張器48はマットレス46の裏側に、端部40に隣接した状態で配置された入口ポートに接続された1組のホース50を含む。膨張器48は電気ソケットに結合するように構成された電力コード52を含む。あるいは、膨張器48は電力供給のために、それ自体のバッテリー源を含んでもよい。膨張器48は必ずしも1組のホース50を備えている必要はなく、代わりに、単一のホースを有してもよい。あるいは、移送マットレス46は膨張器が直接接続することが可能な単一の入口ポートを含んでもよく、それによって、膨張器と入口ポートを相互接続するためのホースの必要性を排除してもよい。図において、膨張器48はマットレス46の足部分28に取り付けられた状態で示されているが、膨張器がマットレス46の他の場所に取り付けられてもよいことは理解されなければならない。
【0032】
移送マットレス46は好まれるものとして、頭部分26で傾きを有する上部シート12、中間部分30の部分の狭くされた横方向小室34、膨張器48、及び足部分28の部分の足分離器を含む。しかしながら、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。例えば、上述された膨張器48は足分離器を含まない移送マットレス、実質的に均一な横方向小室24を有するマットレス、または頭部分で傾きを有さない上部シートを有するマットレス等を含む、多様な移送マットレスとともに使用されてもよい。
【0033】
図5及び6は移送マットレス54の形式の、本発明の第5の実施例に従った患者移送装置を示している。図1の移送マットレス10と同様に、移送マットレス54は上部シート12、底部シート14、側部パネル16、ループ状の取っ手18、及び患者束縛ストラップ20を含む。また、移送マットレス10と同様に、マットレス54はマットレスの頭部分26に拡張パネル32を含み、上部シート12を頭部分26で傾けるための膨張可能な胴体支持小室56を備える。マットレス10と同様に、膨張可能な胴体支持小室56はそれ自体の空気の供給によって別個の膨張を与えるために、マットレス54の残りの部分によって画定される主要なプレナム(または、空気が充満した空間)から分離されていてもよい。あるいは、膨張可能な胴体支持小室56は共通の空気の供給のために主要なプレナムと伝達状態(または、接続状態)であってもよい。
【0034】
移送マットレス54はさらに、上部シート12の頭部分26に接続された頭部支持小室58を含む。マットレス54の頭部支持小室58は好まれるものとして、胴体支持小室56からの空気によって頭部支持小室58を膨張させるために、胴体支持小室56と伝達状態である。図5において、頭部支持小室58は収縮した状態で示されている。頭部支持小室58の両側に取り付けられたストラップ60は収縮した状態の頭部支持小室58を保持するために、上部シート12に取り付けられたタブ62に取り外し可能な状態で取り付けられる。ストラップ60及びタブ62は好まれるものとして、所望の取り外し可能な取り付けを与えるためにマジックテープ材料を備えている。しかしながら、マジックテープの代わりに、例えば、スナップ等の他の適当な留め具手段が使用されてもよい。
【0035】
図6を参照すると、胴体支持小室56からの空気によって頭部支持小室58が膨張することを可能にするためにストラップ60はタブ62から取り外されている。頭部支持小室58の膨張は患者の顎が僅かに胸に向かって回転した状態で持ち上げられた状態の患者の頭部の支持を与える。図6に示されているように、胴体支持小室56及び頭部支持小室58は好まれるものとして、それぞれの小室の膨張圧力を制御するための弁64、66を含む。分離された胴体支持小室56及び頭部支持小室58を備えること、及びそれぞれの小室の独立に制御することにより、後で詳細に説明するように、患者の気管内挿管を容易にするための、患者の胴体及び頭部の上昇の独立な調節を与えることができる。
【0036】
図7及び8は膨張可能な移送マットレス68及び移送マットレス68に取り付けることが可能な付属物70として与えられた膨張可能な胴体及び頭部の支持の形式の、本発明の第6の実施例に従った患者移送装置を示している。従来技術の膨張可能な移送マットレスは実質的にうつ伏せ(または、仰向け)の状態で患者を支持する上部のシート71を含む。図7に示されているように、膨張可能な移送マットレス68及び胴体及び頭部の支持付属物70は胴体及び頭部の支持付属物70を移送マットレス68に取り外し可能に取り付けるための留め具72を含む。胴体及び頭部の支持付属物70の取り外し可能な取り付けは、マットレスが胴体及び頭部の上昇を備えているかいないかにかかわらず、胴体及び頭部の支持付属物70を下側に横たわるマットレス68とともに使用することを可能にする。
【0037】
胴体及び頭部の支持付属物70は膨張可能な胴体小室74及び胴体小室74の上面上に配置された膨張可能な頭部枕76を含む。胴体及び頭部の支持付属物70はまた、胴体小室74に接続された足側端部78を含む。図7に示されているように、胴体小室74及び足側端部78は好まれるものとして、胴体及び頭部の支持付属物70が下側に横たわる膨張可能なマットレス68の実質的に上面全体を覆うような寸法にされる。
【0038】
図7に示されているように、胴体小室74は膨らまされたときに患者の胴体の上部を患者の胴体の下部に対して持ち上げるような傾きを有するようにくさび形の形状になる。胴体及び頭部の支持70の足側端部78は膨張可能でなくてもよい。下側に横たわる移送マットレス68は患者を移送するために必要な支持を与えるので、足側端部78は膨張する必要がない。
【0039】
図8を参照すると、胴体及び頭部の支持付属物70の胴体小室74及び頭部枕76が詳細に示されている。頭部枕76は胴体小室74と頭部枕76の別個の膨張を与えるために胴体小室74の内部から分離された内部を画定する膨張可能な小室80を含む。頭部枕76はまた、膨張可能な小室80の上に配置された、好まれるものとして、発泡材料から作製されたクッション82を含む。クッション82は凹状の曲面を有する上面を含む。頭部枕76はまた、小室80及びクッション82を覆うカバー84を含む。カバー84はクッション82の上面に一致する凹状の曲面を有する上面を含む。カバー84はまた、覆われた小室80が膨張しているか、または収縮しているかに依存してカバー84の拡張及び収縮を可能にするために下側の端部にアコーディオン状の形状を有する。
【0040】
図8に示されているように、胴体及び頭部の支持付属物70は頭部枕76の小室80に接続された第1の管の組86、88、及び胴体小室74に接続された第2の管の組90、92を含む。この構成は、好まれるものとしてコンプレッサー94である加圧された空気源によって供給される空気による胴体小室74及び頭部枕76の独立な膨張を可能にする。管の組の各々において、管の一方は関連する小室への空気の吸入のために備えられ、もう一方の管は小室からの空気の排出のために備えられる。胴体及び頭部の支持付属物70はまた、胴体小室74及び頭部枕76への空気の吸入、またはそれらからの空気の排出を制御するための分空気配マニホールド98を含む膨張制御システム96を有する。後で詳細に説明されるように、膨張制御システム96は胴体小室74及び頭部枕の小室80の一方または両方の膨張の量を非常に精密に調節する能力を有する。
【0041】
空気分配マニホールド98は、各々が管86、88、90、92の1つに接続された4つの弁100を含む。弁100は対応する小室74、80への空気の吸入、またはそれらからの空気の排出を制御するためのものであり、好まれるものとして、電気的に制御される弁である。空気の流れを制御するための電気的に制御される弁はこの分野で周知であり、ここで詳細に説明する必要はないであろう。空気分配マニホールド98はコンプレッサー94からの加圧された空気を空気分配マニホールド98に供給するためのライン(または、管)102によってコンプレッサー94に接続されている。好まれるものとして、ライン102は分配マニホールド98の電気的に動作する弁100に電力を供給するために、分配マニホールド98に電力供給を与える機能を有して構成されていてもよい。
【0042】
膨張制御システム96はまた、弁100の動作を制御するためにコード106によって空気分配マニホールド98に接続されている制御ユニット104を含む。制御ユニット104はユーザーの手によって握られるように構成された挿管用取っ手108の端部に取り付けられた状態で示されている。この様式で構成することにより、制御ユニット104は挿管を行っているユーザーの親指によって差動することができ、挿管を行っているユーザーが患者から目を逸らすことなく、胴体/頭部小室74、80の膨張に対する微調整することを可能にする。示されているように、制御ユニット104は4つの弁100の別個の差動のために円周上の配列で配置された4つの親指スイッチ110を含む。上述の取っ手への取り付けの配置は挿管処置を容易にするために都合のより配置であるが、本発明は特定の配置によって制限されるものではなく、示された実施例とは異なる構成が利用されてもよい。
【0043】
ここで、小室74、80は膨張制御システム96によって独立に制御され、それによって頭部の支持位置及び胴体の支持位置の多様な組合せを達成することができることは理解されなければならない。挿管のために胴体及び頭部の支持70を制御するための好まれる方法に従うと、患者は移送マットレス68に取り付けられた胴体及び頭部の支持付属物70を備えた患者移送装置上に配置される。次に、胴体及び頭部74、80の各々は患者の胴体の上部を持ち上げ、患者の頭部を胴体に対して僅かに前方に回転させるために制御ユニット104を使用して完全に膨張させられる。次に、頭部小室80は、患者を上述の「嗅ぐ姿勢」に位置付けるために上述の3つの軸が一直線になるまで部分的に収縮させられる。図9に示されているように、患者をこの位置に配置することによって、口頭、咽頭、及び喉頭の軸(それぞれ、OA、PA、LA)が実質的に整列して配置される。多くの事例において、完全に膨張させられた胴体小室74が適切な状態となるであろう。しかしながら、任意の患者を挿管のために適切に位置付けるために両方の小室74、80の部分的な膨張状態への収縮が必要とされてもよい。さらに、特定に患者に対し、両方の小室74、80の完全な膨張が挿管を成功させるための3つの軸OA、PA、LAの間の十分な整列の結果となってもよいことは理解されなければならない。
【0044】
ここまで好まれる実施例とともに本発明が説明されてきたが、ここで示されていない本発明の本質的でない変更も本発明の等価物とみなされるだろう。
【符号の説明】
【0045】
10 患者移送マットレス
12 上部シート
14 底部シート
16 側部パネル
18 ループ状の取っ手
19 ループ状の牽引用ストラップ
20 患者束縛ストラップ
22 側部空気小室
24 横方向空気小室
26 頭部分
28 足部分
30 中間部分
31 空気入口ホース
32 拡張パネル
33 患者移送マットレス
34 横方向小室
36 患者移送マットレス
38 膨張可能な小室
40 端部
42 バッフル壁
46 空気移送マットレス
48 膨張器
50 ホース
52 電力コード
54 患者移送マットレス
56 胴体支持小室
58 頭部支持小室
60 ストラップ
62 タブ
64,66 弁
68 患者移送マットレス
70 胴体及び頭部の支持付属物
71 上部シート
72 留め具
74 胴体小室
76 頭部枕
78 足側端部
80 頭部小室
82 クッション
84 カバー
86−92 管
94 コンプレッサー
96 膨張制御システム
98 空気分配マニホールド
100 弁
102 ライン
104 制御ユニット
106 コード
108 挿管用取っ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管内挿管処置を受けている患者を位置付けるために、患者の胴体の上部を患者の胴体の下部及び足に対して持ち上げるための胴体及び頭部支持装置であって、
患者が実質的に仰向け状態のときに患者の本質的に全身体の下側に配置されるような寸法にされた身体支持体(70,78)にして、足側端部及び頭側端部を有する身体支持体と、
前記身体支持の中間領域から前記身体支持の前記頭側端部まで伸延する、膨張可能な胴体支持空気小室にして、前記小室が膨張及び拡張されたときに、患者の胴体の上部及び頭部を患者の胴体の下部及び足に対して持ち上げるような寸法にされた胴体支持空気小室と、
前記胴体支持小室の上面に配置され、患者の頭部の下側に配置されるように位置付けられた拡張可能な頭部枕(76)にして、前記頭部枕が膨張可能な空気小室(80)を含み、前記頭部枕空気小室が、前記頭部枕空気小室が膨張及び拡張したときに患者の頭部を持ち上げるように機能し、前記頭部枕空気小室が前記胴体支持小室とは独立的な膨張のために前記胴体支持小室から分離された内部を有する頭部枕と、
前記胴体支持小室前記頭部枕小室の各々に接続された入口管(90,88)にして、各々が関連する小室の膨張のために加圧された空気源としての空気分配マニホールド(98)に接続されている入口管と、
前記空気入口管に機能可能に接続された膨張制御システム(96)にして、前記胴体支持小室及び前記頭部枕小室に加圧された空気を選択的に誘導することによって患者の喉頭の、挿管のために最適な解剖学的整列を達成するために、患者の胴体/頭部の位置が変化させられるように前記胴体支持小室及び前記頭部枕小室の膨張を独立に制御するように構成された膨張制御システムと、
を備える膨張可能な胴体及び頭部支持装置。
【請求項2】
前記胴体支持空気小室が前記身体支持体の前記足側端部に対して約40度以下の角度で傾くことができる請求項1に記載の膨張可能な胴体及び頭部支持装置。
【請求項3】
膨張可能な空気室を画定する上部及び下部のシート(12,14)を有するタイプの患者移送マットレスへの取り付けのための手段(72)を有する身体支持体をさらに備え、前記底部シートが、前記空気室が膨張させられたときに、前記底部シートの下側にエアクッションを生成するように構成された空気排出穴を有する請求項1または2に記載の膨張可能な胴体及び頭部支持装置。
【請求項4】
請求項1に記載の膨張可能な胴体及び頭部支持装置と膨張可能な空気室を画定する上部及び下部のシート(12,14)を有するタイプの患者移送マットレスとの結合物であって、前記底部シートが、前記空気室が膨張させられたときに、前記底部シートの下側にエアクッションを生成するように構成された空気排出穴を有し、前記胴体及び頭部支持装置が前記移送マットレスの上側に横たわる結合物。
【請求項5】
前記移送マットレスの前記上部のシート(12)が前記身体支持体の前記上面を形成するように、前記移送マットレス及び前記胴体及び頭部支持装置が一体化されている請求項4に記載の結合物。
【請求項6】
気管内挿管処置中に患者を支持するための膨張可能な装置であって、
患者を受容するように構成された表面を画定する患者支持体にして、患者が実質的にうつ伏せまたは仰向け姿勢のときに患者の身体全体を収容するような寸法にされた患者支持体と、
膨張させられたときに患者の頭部及び胴体の上部が患者の足に対して持ち上げられるように、前記患者支持面の頭側端部を上昇させるように構成された膨張可能な胴体小室と、
患者の頭部を支持するために配置された拡張可能な枕にして、膨張させられたときに患者の頭部を患者の胴体の上部に対して持ち上げるように構成された膨張可能な小室を含み、前記枕小室が前記胴体小室とは独立的な膨張のために前記胴体小室の内部から分離された内部を有する拡張可能な枕と、
前記胴体小室及び前記枕小室に空気を供給するための空気吸入システムと、
前記空気吸入システムを介して前記胴体小室及び前記枕小室への空気の供給を制御するための膨張制御システムにして、挿管を容易にするための患者の喉頭の最適な解剖学的整列を達成するために、患者の足に対する患者の胴体の上部の位置及び患者の胴体の上部に対する患者の頭部の位置の両方を調節することができるように、前記胴体小室及び前記枕小室の膨張を独立に制御するために構成されている膨張制御システムと、
を備える膨張可能な装置。
【請求項7】
前記膨張可能な装置が膨張可能な移送マットレスの上面に配置されるように、前記移送マットレスに取り付けられるように構成した請求項6に記載の膨張可能な装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−78807(P2011−78807A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265404(P2010−265404)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2007−501832(P2007−501832)の分割
【原出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(506297496)ペイシェント トランスファー システムズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】