説明

傾斜テーブル割出装置の破損防止装置

【課題】停電等の非常の電源遮断時に傾斜テーブルが許容回転範囲を超えて回転することを防止する。
【解決手段】直接駆動型モータによってテーブル等の回転部材を予め規定された通常の回転角度の範囲内で回転させて前記テーブルを傾斜させ、傾斜させたテーブルを前記保持機構の作動により保持する傾斜テーブル割出装置1において、前記回転部材および傾斜テーブル割出装置1のフレーム6のうちいずれか一方に受圧面12を有する弾性変位部材11を、他方に受圧面12に当接可能な係合部13を設け、非常時の回転部材のフリー回転にともなって前記回転軸5が前記通常の回転角度の範囲外に至ったときに、弾性変位部材11より回転部材の運動エネルギーを吸収して前記回転部材を危険角度範囲よりも手前で停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接駆動型モータ、いわゆるDDモータで駆動される傾斜テーブル割出装置において、停電等の非常の電源遮断時に傾斜テーブルが許容回転範囲を超えて回転するのを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、テーブルや軸をDDモータ(ビルトインモータ)により回転させる回転割出装置(回転テーブル装置)において、テーブルや軸等の回転を停止させるクランプ機構について開示している。
【0003】
特許文献1のクランプ機構は、クランプリングとテーブルが締まり嵌めされて回転テーブルのクランプ状態(停止状態)を保持し、テーブルを回転させるときにのみ油圧の供給により締まり嵌めを解除してテーブルをフリー状態とするものであり、停電等により圧油が供給されなくなってもクランプリングの締まり嵌めによってテーブルが回転しないようにしている。
【0004】
また、特許文献2のクランプ機構は、作動流体によってピストンをブレーキ板に当接させてクランプするのに加え、ばねによりピストンをブレーキ板に常時付勢することで、停電等によりテーブルが不意に回転するのを防止している。
【0005】
しかし、上記技術では、テーブルの回転中に停電等により突然電源が遮断されたときに、遮断された時点から作動流体が切り換わって実際にクランプ力が発生するまでにタイムラグが存在する。このため、例えばテーブルが許容回転範囲の限界付近の角度へ回転しているときに停電等が発生すると、クランプ力が発生してテーブルが停止する前に、テーブルが回転の慣性や偏心荷重によって許容回転範囲を超えて回転してしまうことがある。この結果、ワーク、テーブル等が切削工具や主軸スピンドルに衝突し破損するという問題がある。
【特許文献1】特開平11−99423号公報
【特許文献2】特開2006−95668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、直接駆動型モータ、いわゆるDDモータで駆動される傾斜テーブル割出装置において、停電等の非常の電源遮断時に傾斜テーブルが許容回転範囲を超えて回転することを防止し、工具やワークなどの破損事故を確実に阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題のもとに、請求項1の発明は、テーブル(4)と前記テーブル(4)の延在方向に沿って延びかつ前記テーブル(4)と一体の回転軸(5)を有する回転部材(3)と、前記回転軸(5)を両側で支持する一対の支持装置(7、7’)と前記一対の支持装置(7、7’)が載置される架台(8)とを有するフレーム(6)とを含み、前記支持装置(7、7’)には、前記回転軸(5)を角度的に割出駆動する直接駆動型モータ(9)と、前記回転軸(5)を角度的に保持する保持機構(10)とが、前記一対の支持装置(7、7’)のうち少なくとも1つの支持装置(7、7’)に組み込まれており、前記テーブル(4)の割出動作時には、前記直接駆動型モータ(9)を介して前記回転軸(5)を予め規定される通常の回転角度の範囲内の所望角度まで回転させて前記テーブル(4)を傾斜させ、傾斜させたテーブル(4)の傾斜角度を前記保持機構(10)の作動により保持する傾斜テーブル割出装置(1)において、前記回転部材(3)および傾斜テーブル割出装置(1)のフレーム(6)のうちいずれか一方に受圧面(12)を有する弾性変位部材(11)を、他方に受圧面(12)に当接可能な係合部(13)を設け、かつ少なくとも前記回転軸(5)が前記通常の回転角度の範囲外に至ったときに受圧面(12)と係合部(13)とが当接可能なように前記両者の位置関係を定め、非常時の回転部材(3)のフリー回転にともなって前記回転軸(5)が前記通常の回転角度の範囲外に至ったときに、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が弾性的に変位することにより回転部材(3)の運動エネルギーを吸収して前記回転部材(3)を危険角度範囲よりも手前で停止させる。
【0008】
請求項2の発明は、前記回転軸(5)が通常の回転角度の範囲内にあるときには、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が前記他方に設けられた係合部(13)に当接しないように前記弾性変位部材(11)を配置している。
【0009】
請求項3の発明は、前記回転部材(3)に回転軸(5)の半径方向外側に向かって延びる係合部(13)を有する係合レバー(14)を回転部材(3)と一体に設け、かつ前記弾性変位部材(11)を前記係合レバー(14)の回転経路上の位置に、前記回転軸(5)が通常の回転角度の範囲外に至ったときに前記受圧面(12)が前記係合部(13)に当接可能となるようにフレーム(6)に取付けている。
【0010】
請求項4の発明は、前記弾性変位部材(11)は、受圧面(12)を進退方向に変位可能に支持し、かつ前記受圧面(12)の後退方向への移動に際し前記受圧面(12)に対して抗力を作用させる緩衝手段として構成している。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、直接駆動型モータ(9)によってテーブル(4)を傾斜させ、傾斜させたテーブル(4)を前記保持機構(10)の作動により保持する傾斜テーブル割出装置(1)において、前記回転部材(3)および傾斜テーブル割出装置(1)のフレーム(6)のうちいずれか一方に受圧面(12)を有する弾性変位部材(11)を、他方に受圧面(12)に当接可能な係合部(13)を設け、かつ少なくとも前記回転軸(5)が前記通常の回転角度の範囲外に至ったときに受圧面(12)と係合部(13)とが当接可能なように前記両者の位置関係を定めている。そして、非常時の回転部材(3)のフリー回転にともなって前記回転軸(5)が前記通常の回転角度の範囲外に至ったときに、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が弾性的に変位することにより回転部材(3)の運動エネルギーを吸収して前記回転部材(3)を危険角度範囲よりも手前で停止させる。よって、停電発生や緊急時などの非常時に、テーブル(4)を含む回転部材(3)に対して保持機構(10)の制動力が作用せずに回転部材(3)がフリー状態で回転して通常の回転角度の範囲外に回転したとしても、弾性変位部材(11)の受圧面(12)が弾性的に変位して回転部材(3)の有する運動エネルギーを吸収し、破損事故が発生しうる危険角度よりも手前の所定の角度で回転部材(3)を停止させることができ、破損事故を確実に防止できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、前記回転軸(5)が通常の回転角度の範囲内にあるときには、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が前記他方に設けられた係合部(13)に当接しないように前記弾性変位部材(11)を配置したから、通常の回転角度の範囲内での駆動時には、テーブル(4)に弾性変位部材(11)の制動力がかからず、直接駆動型モータ(9)にかかる負荷を削減させることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記回転部材(3)に回転軸(5)の半径方向外側に向かって延びる係合部(13)を有する係合レバー(14)を回転部材(3)と一体に設け、かつ前記弾性変位部材(11)を前記係合レバー(14)の回転経路上の位置に、前記回転軸(5)が通常の回転角度の範囲外に至ったときに前記受圧面(12)が前記係合部(13)に当接可能となるようにフレーム(6)に取付けたから、停電などの非常時において傾斜テーブル(4)を含む回転部材(3)に対して保持機構(10)の制動力が作用しない状態で、通常の回転角度の範囲外に至ったとしても、傾斜テーブル(4)の回転をフレーム(6)に取付けた前記弾性変位部材(11)によって制動することができ、破損事故を防止できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、前記弾性変位部材(11)は、受圧面(12)を進退方向に変位可能に支持し、かつ前記受圧面(12)の後退方向への移動に際し前記受圧面(12)に対して抗力を作用させる緩衝手段として構成されているから、停電などの非常時においてフリー状態となった傾斜テーブル(4)を含む回転部材(3)の有する運動エネルギーを効率的に吸収し、破損事故が発生しうる危険角度よりも手前の所定の角度で回転部材(3)を停止させることができ、破損事故を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の前提である傾斜テーブル割出装置を示しており、より詳しくは本発明の特徴部分である破損防止装置2が装着された状態も示している。
【0016】
図1において、傾斜テーブル割出装置1は、回転する回転部材3として、テーブル4と、前記テーブル4の延在方向に沿って延びかつ前記テーブル4とアーム15、15’を介して一体の回転軸5、5’とを有している。ここで、テーブル4は、図示しないワークを載置するものをいい、本実施例では左右一対のアーム15、15’によって回転軸5、5’の中心線とワークが載置されるテーブル4の載置面16とを離間させたいわゆるクレードル方式のものが採用されている。なお、テーブル4には図示したクレードル方式のもののほか、クレードル状のテーブル4上に円テーブル(ターンテーブル)を載置するもの、円テーブル装置を構成するフレームの両側が回転軸5に直結されるもの等も含まれるものであり、上記中者および後者の場合における本発明のテーブルは、円テーブル( ターンテーブル) がそれに対応する。つまり、本発明でいう回転部材3は、テーブル4、回転軸5、5’、アーム15、15’の他、テーブル4に載置される図示しないワーク、円テーブル等を含む概念である。
【0017】
テーブル4は、回転軸5、5’を両側で支持する左右一対の支持装置7、7’によって回転可能に支持されており、支持装置7、7’は架台8に載置されており、支持装置7、7’と架台8は、傾斜テーブル割出装置1のフレーム6を構成している。
【0018】
また、前記一対の支持装置7、7’のうち少なくとも1つの支持装置7、7’には、回転軸5を角度的に割出駆動する直接駆動型モータ9と、前記回転軸5を角度的に保持する保持機構10とが組み込まれる。本実施例では、一方の支持装置7に直接駆動型モータ9と流体圧を利用した保持機構10とが組み込まれ駆動側の支持装置7を構成し、他方の支持装置7’にはそれらが組み込まれていない従動側の支持装置7’を構成する。なお、駆動側支持装置7は、テーブルを水平方向の回転軸に対して割り出し駆動する、いわゆる縦置き型の割出装置と呼ばれ、また従動側支持装置7’は、テーブルを水平方向の回転軸5’を中心に回転可能に支持する、いわゆるサポートスピンドルと呼ばれる。
【0019】
図2は、直接駆動型モータ9と保持機構10が組み込まれているいわゆる駆動側の支持装置7の断面図である。図2において、駆動側の支持装置7は、大まかに言えば、水平方向に貫通孔7bが設けられ下方に設けられる取付座7cを介して架台8に取付けられる枠体7aと、前記貫通孔7bに挿入され、枠体7aに回転可能に支持される回転軸5と、前記回転軸5の回転駆動源である直接駆動型モータ9と、回転軸5と貫通孔7bとの間の空間に配置される保持装置10とを含む。回転軸5は、枠体7aの貫通孔7bに対して同軸に配置され、その一端が枠体7a側に取付けられるローラーベアリング17により枠体7aに回転可能に支持されている。回転軸5のテーブル側の端部には、回転軸5に対して直交する方向に円周方向に延びるテーブル面が設けられており、アーム15がねじ部材を介してテーブル面に取付けられている。直接駆動型モータ9は、回転軸5の外周側に固定され回転軸5と一体に回転するロータ18と、ロータ18に対向してその外側に挿入され枠体7aの貫通孔7b側に固定されたステータ19とから構成されており、回転軸5は、枠体7aに組み込まれた直接駆動型モータ9により駆動される。また、回転軸5の反テーブル側の先端部には、回転軸5(テーブル4)の回転角度を検出する回転位置検出装置22が取り付けられる。回転位置検出装置22は、回転軸5側に取付けられ回転軸5と一体に回転する回転円盤20と、回転円盤20に近接して枠体7a側に取付けられ、回転円盤20の位相を検出し、回転軸5の角度検出信号として出力する回転検出器21とから構成されている。
【0020】
さらに、枠体7aには、回転軸5の大径部に対して段付の空間を半径方向に形成するとともに、枠体7aと前記大径部の間の空間には、保持機構10として、L字型の断面を有するリング状のクランプスリーブ23が配置されている。クランプスリーブ23は、いずれも図示しないフランジ部と軸方向に延びる円筒部とを形成するとともに、それらの内側に前記回転軸5に対してわずかの隙間を有する貫通孔が設けられており、クランプスリーブ23は、フランジ部に挿入される複数のねじ部材により枠体7aの図示しない座部に固定される。また、クランプスリーブ23の円筒部の外側には、外周側より内側に向けて陥没される環状溝が設けられており、枠体7aの内周端とクランプスリーブ23の環状溝との間の空間に、圧力室24が設けられている。圧力室24は、枠体7aに設けられる図示しない流路や電磁弁25を通じて圧力源28に接続されており、クランプ動作時には、電磁弁25を通じて圧力源28から圧油が供給される。この圧力室24に圧油が供給されると、クランプスリーブ23の上記環状溝が設けられた領域の薄肉部が回転軸5側に撓んで膨出し、回転軸5を外側から締め付けて回転軸5をクランプするようになっている。逆に電磁弁25が圧力室24に通ずる流路を放出側に切り換わることにより、クランプスリーブ23は元の形状に復帰し、回転軸5をアンクランプ状態にすることができる。
【0021】
直接駆動型モータ9、保持機構10、回転位置検出装置22等の支持装置7の内部構造は、略円筒状に設けられ、枠体7aの反テーブル側の端部に取り付けられたカバープレート26により密閉されている。また、カバープレート26は、オイルシールが嵌め込まれた貫通孔を有しており、その貫通孔から回転軸5が突出し軸方向に延びていて、後述される破損防止装置2が装着可能にされている。
【0022】
そして、本発明の特徴的な部分である破損防止装置2が、支持装置7の反テーブル側端部に設けられる。破損防止装置7は、大まかに言えば、上記突出された回転軸5に取付けられる係合レバー14と、前記カバープレート26側に取付けられ、前記係合レバー14の移動範囲( 言い換えれば回転軸5の傾斜角度範囲) を考慮して各受圧面12の位置が設定される一対の弾性変位部材11、11’とを含む。係合レバー14は、回転軸5に対して嵌り合う基部と、前記基部より半径方向外側に向かって延びる係合部13とを有しており、係合レバー14の基部は、図示しないキーならびに押しねじにより回転部材3の一部である回転軸5の反テーブル側の端部にて一体に取付られている。なお、本実施例では弾性変位部材11、11’として、ばねとオイルダンパとを組合せてなる緩衝装置を用いており、より詳しく説明すると、弾性変位部材11、11’は、大まかに言えば、前記受圧面12、12’と、前記受圧面12、12’を進退方向に変位可能に支持するシリンダ部とを含むとともに、前記係合部13の当接時における前記受圧面12、12’の後退方向への移動に際し、前記受圧面12、12’に対して抗力を作用させる圧縮ばねと前記受圧面12、12’の進退方向の移動に対して抗力を作用させるオイルダンパとをシリンダ部の内部に構成し、受圧面12、12’を圧縮ばねの反力により前進方向に付勢する緩衝手段を有している。なお、本実施例では、弾性変位部材11および係合レバー14を、直接駆動型モータ9が組み込まれている支持装置7に設けているが、直接駆動型モータ9が組み込まれていない従動側の支持装置7’側に設けてもよいし、両側の支持装置にそれぞれ設けることもできる。また、枠体7aのテーブル4の反対側端部には、中央に貫通孔を有する略円筒状のカバー27が取付けられて、回転軸5の軸端を露出した状態で破損防止装置7を覆っている。
【0023】
図3は、図2に表されたカバー27を外した状態の傾斜テーブル割出装置1の側面図である。本図において実線にて図示される弾性変位部材11、11’の受圧面12、12’は、外力の作用していない自然長の状態であり、また図示されないテーブル4の載置面16は水平な状態にある。このとき係合レバー14は下に垂直な位置にあり、この位置を便宜上回転角0°とし、反時計回りをプラス方向と定める。テーブル4(回転部材3)は、予め規定される通常の回転角度の範囲内で動作するが、この「通常の回転角度の範囲」は、傾斜テーブル割出装置1の通常動作でテーブル4が回転する範囲のことをいい、傾斜テーブル割出装置1の仕様によって規定されるものであり、本実施例では−20°〜+120°の範囲である。この範囲内では回転部材3すなわちテーブル4やテーブル4に載置されたワーク等は、フレーム6、図示しない周辺の工具等に干渉することはない。また、通常の回転角度の範囲外の領域の角度であって、設計上テーブル4等がフレーム6等に干渉する角度を危険角度と称し、例えば本実施例では、−35°および+135°がそれに相当する。
【0024】
一対の弾性変位部材11、11’は、係合レバー14の回転経路上の位置にあり、通常の回転角度の範囲の両端近傍に達したことにより、係合レバー14の係合部13が各受圧面12、12’に当接するように、カバープレート26に対して図示しない複数のねじ部材等により取り付けられており、少なくともテーブル4(回転部材3)が通常の回転角度の範囲外に至ったときに、対応される受圧面12、12’と係合部13とが当接可能となるように、弾性変位部材11、11’の各取付位置が定められている。すなわち、テーブル4の回転角度が−20°以下または+120°以上に至るまでには、係合部13は、自然長の状態にある対応される弾性変位部材11、11’の受圧面12、12’に当接するということである。弾性変位部材11、11’の受圧面12、12’の移動可能量、すなわち弾性変位部材11、11’のストロークは、テーブル4が−20°または+120°から危険角度まで回転したときに係合部13が移動する直線距離以上に設定される。また、弾性変位部材11、11’の抗力は、テーブル4が危険角度(より具体的には、−35°あるいは135°)まで回転する前に、回転部材3の有する運動エネルギーの全てを吸収できるように適切に定められる。
【0025】
なお、テーブル4が通常の回転角度の範囲内にあるときから受圧面12、12’が係合部13に当接するように弾性変位部材11、11’を設けてもよい。本実施例では、テーブル4(回転軸5)が通常の回転角度の範囲内にあるときには弾性変位部材11、11’の受圧面12、 12’が係合部13に当接しないように弾性変位部材11、11’をそれぞれ配置し、通常の回転角度の範囲内での駆動のときには、テーブル4に弾性変位部材11の抗力がかからないようにすることで、直接駆動型モータ9にかかる負荷を削減させることができる。弾性変位部材11、11’の取付位置を、例えば取付用のねじ穴を複数設けたり、長穴を設けたりすることにより調節可能としておけば、傾斜テーブル割出装置の仕様や回転部材3の重量等に応じて弾性変位部材11、11’の取付位置を、テーブル4が危険角度まで回転する前に、回転部材3の有する運動エネルギーの全てを吸収できるように変更でき有利である。また、異なる抗力を発生可能な複数の弾性変位部材11、11’を用意しておき、回転部材3の重量等に応じて選択的に取付けることも可能である。
【0026】
つぎに、破損防止装置2を備えた傾斜テーブル装置1の動作について説明する。テーブル4の割出動作時(通常動作時)には、図示しないコントローラは、回転位置検出装置22に基づく直接駆動型モータ9の駆動により、回転軸5を予め規定される通常の回転角度の範囲内に予めプログラムされた所望の傾斜角度まで回転させてテーブル4を傾斜させ、その所望の傾斜角度に達した時点で、電磁弁25による圧油の供給により保持機構10を作動させてテーブル4を所望の傾斜角度で保持する。このとき、テーブル4の傾斜角度は、通常の回転角度の範囲内であるため、弾性変位部材11と係合部13は、当接しない。
【0027】
また、停電等の非常時、すなわち保持機構10が動作しないときや動作途上にあるとき、回転部材3に対して直接駆動型モータ9からトルクが発生されず、回転部材3(テーブル4、回転軸5、ワーク等)は、自ら有する回転慣性や偏心荷重によりフリー回転する。しかし、このフリー回転にともなって、前記回転軸5(テーブル4)が前記通常の回転角度の範囲外に至ったとき、フレーム2側に取付けられる前記弾性変位部材11の受圧面12あるいは弾性変位部材11’の受圧面12’のうちいずれかが、前記他方である回転部材3側に一体に取付けられた係合部13に当接し、係合部13を受け止める。このとき、弾性変位部材11、11’のうち当接される方の受圧面12あるいは受圧面12’が圧縮ばねの弾性力、オイルダンパの抗力によって弾性的に変位し、言い換えれば、受圧面12、12’の位置を後退させながら反力を作用させて回転部材3の有する運動エネルギーを吸収し、前記弾性変位部材11の受圧面12が弾性的に変位する過程でフリー回転中の前記回転部材3を、上記した保持機構10が動作しない状況下であったとしても、確実に危険角度範囲よりも手前で停止させる。
【0028】
なお、本実施例では、係合部13(係合レバー14)を回転部材3とは別部材として構成しているが、回転部材3を構成する部材そのもの、例えばアーム15を係合部13とし、弾性変位部材11をアーム15に当接させてもよい。本実施例ではカバープレート26に弾性変位部材11を設けているが、フレーム6、またはフレーム6に固定されている部材に弾性変位部材11を設けてもよい。また、弾性変位部材11を、本実施例で例示した圧縮ばねとオイルダンパとを組み合わせてなる緩衝手段の他、流体圧ダンパ、圧縮ばね、板ばね、空気ばね、低反発材料(低反発弾性フォーム、皮革など)等のうち1以上を用いたりこれら2以上を組み合わせることにより構成してもよい。弾性部材11に低反発材料を採用した場合、弾性変位部材11の係合部13と当接して、係合部13に対して反力を作用させながら後退方向に受圧変形する部分が受圧面14となる。
【0029】
図4の(a)、(b)は、本発明の他の例を示している。この例では、回転軸5の軸方向に位置をずらして、受圧面12、12’を有する弾性変位部材11、11’(油圧ダンパ)を図示しない脚部を介して架台8に対して複数取付るとともに、回転軸5をさらに軸端方向に延在させるとともに、回転軸5上に、回転軸5の半径方向に延びる係合面13、13’を有する係合レバー14、14’を、受圧面12、12’に対応させ、しかも通常の回転角度範囲等を考慮して複数設けている。なお、この例では、テーブル4上に円テーブル装置29を載置しており、また受圧面12、12’と対応される係合面13、13とが当接される角度は、上記した実施例と同様、適切に設定される。
【0030】
図5は、弾性変形部材11を回転軸5側に設け、係合面13、13’をフレーム2側に設けた例である。この例では、回転軸5に対して一体に取付けられ、回転軸5の半径方向外側に延びるアーム30に弾性変形部材11を外側から覆うように設け、回転部材3が通常の回転角度範囲外に回転されたときには、アーム30の弾性変形部材11が係合面13、13’に当接して、弾性変形部材11の外周面が係合面13、13’に対して反力を作用させつつ後退方向に変位するように(つまり弾性変形部材11が当接した領域で内側に弾性変形するように)設けられている。また弾性変形部材11として、低反発弾性フォームを採用している。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、直接駆動型モータにより駆動される傾斜テーブルの割出装置に広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】傾斜テーブル割出装置の全体図である。
【図2】傾斜テーブル割出装置の支持装置の断面図である。
【図3】傾斜テーブル割出装置の破損防止装置の側面図である。
【図4】傾斜テーブル割出装置の破損防止装置の側面図および正面図である。
【図5】傾斜テーブル割出装置の破損防止装置の側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 傾斜テーブル割出装置
2 破損防止装置
3 回転部材
4 テーブル
5、5’ 回転軸
6 フレーム
7、7’ 支持装置
7a 枠体
7b 貫通孔
7c 取付座
8 架台
9 直接駆動型モータ
10 保持機構
11、11’ 弾性変位部材
12、12’ 受圧面
13、13’ 係合部
14、14’ 係合レバー
15、15’ アーム
16 載置面
17 ローラーベアリング
18 ロータ
19 ステータ
20 回転円盤
21 回転検出器
22 回転位置検出装置
23 クランプスリーブ
24 圧力室
25 電磁弁
26 カバープレート
27 カバー
28 圧力源
29 円テーブル装置
30 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル(4)と前記テーブル(4)の延在方向に沿って延びかつ前記テーブル(4)と一体の回転軸(5)を有する回転部材(3)と、
前記回転軸(5)を両側で支持する一対の支持装置(7、7’)と前記一対の支持装置(7、7’)が載置される架台(8)とを有するフレーム(6)とを含み、
前記支持装置(7、7’)には、前記回転軸(5)を角度的に割出駆動する直接駆動型モータ(9)と、前記回転軸(5)を角度的に保持する保持機構(10)とが、前記一対の支持装置(7、7’)のうち少なくとも1つの支持装置に組み込まれており、
前記テーブル(4)の割出動作時には、前記直接駆動型モータ(9)を介して前記回転軸(5)を予め規定される通常の回転角度の範囲内の所望角度まで回転させて前記テーブル(4)を傾斜させ、傾斜させたテーブル(4)の傾斜角度を前記保持機構(10)の作動により保持する傾斜テーブル割出装置(1)において、
前記回転部材(3)および前記フレーム(6)のうちいずれか一方には、受圧面(12)を有する弾性変位部材(11)が設けられ、他方には、係合部(13)が設けられて、少なくとも前記回転軸(5)が前記通常の回転角度の範囲外に至ったときに、受圧面(12)と係合部(13)とが当接可能に前記両者が設けられており、
非常時の回転部材(3)のフリー回転にともなって、前記回転軸(5)が前記通常の回転角度の範囲外に至ったときに、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が、前記他方に設けられた係合部(13)に当接し、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が弾性的に変位することにより回転部材(3)の運動エネルギーを吸収し、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が弾性的に変位する過程でフリー回転中の前記回転部材(3)を危険角度範囲よりも手前で停止させることを特徴とする傾斜テーブル割出装置の破損防止装置(2)。
【請求項2】
前記回転軸(5)が通常の回転角度の範囲内にあるときには、前記弾性変位部材(11)の受圧面(12)が前記他方に設けられた係合部(13)に当接しないように前記弾性変位部材(11)を配置することを特徴とする請求項1記載の傾斜テーブル割出装置の破損防止装置(2)。
【請求項3】
前記回転部材(3)には、回転軸(5)の半径方向外側に向かって延びる係合部(13)を有する係合レバー(14)が前記回転される回転部材(3)と一体に設けられるとともに、
前記弾性変位部材(11)は、前記係合レバー(14)の回転経路上の位置にあって、前記回転軸(5)が通常の回転角度の範囲外に至ったときに前記受圧面(12)が前記係合部(13)に当接可能な位置でフレーム(6)に取付けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載の傾斜テーブル割出装置の破損防止装置(2)。
【請求項4】
前記弾性変位部材(11)は、前記受圧面(12)を進退方向に変位可能に支持するとともに、前記係合部(13)の当接時における前記受圧面(12)の後退方向への移動に際し、前記受圧面(12)に対して抗力を作用させる緩衝手段を含むことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の傾斜テーブル割出装置の破損防止装置(2)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−18401(P2009−18401A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184725(P2007−184725)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】