説明

傾斜搬送式乾燥装置

【課題】大型ガラス基板を傾斜させ、且つ基板中央部の搬送ローラを無くして乾燥する傾斜搬送式乾燥装置を提供する。
【解決手段】大型ガラス基板10の両端部に接触して回転駆動により大型ガラス基板10を搬送する搬送手段20−1、20−2と、大型ガラス基板10の下面に位置して、噴き出すエアにより大型ガラス基板10の中央部の撓みを防止するエアフロート板30と、
大型ガラス基板の両面に位置して、大型ガラス基板10を乾燥させる乾燥手段40−1、40−2とを有し、全体が水平軸に対しα=0〜90度間で傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉処理された大型基板の乾燥に係り、詳しくは、大型基板を傾斜させて乾燥する傾斜搬送式乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来の乾燥装置の構成を示す装置構成図である。図2において、乾燥装置は、大型ガラス基板10を搬送する搬送ローラ50、下面に位置する赤外線ランプ40−1及び上面に位置する赤外線ランプ40−2とから構成される。図2において、枚葉処理された大型ガラス基板10が、左側から搬送ローラ50により搬送され、大型ガラス基板10の両面を挟んで設置された上下面の赤外線ランプ40−1、40−2を通過する。この間、大型ガラス基板10は各赤外線ランプ40−1、40−2により加熱され、枚葉処理において表面に残留した水成分が乾燥除去される。乾燥が終了すると、大型ガラス基板10は、右側の搬送ローラへ搬出される。
【0003】
ところが大型ガラス基板10の一辺が1mを超える大きさになると、乾燥装置の前段でのエアナイフ等による水成分の除去が不十分となり、最終の乾燥装置での処理時間が所定の時間より増加する、表面に乾燥ムラによるシミが発生する、さらに搬送ローラ50による汚染が発生するなどの問題が生じた。
【0004】
特許文献1には、各分割槽の周壁に沿い螺旋状に形成され槽の底面に下端が連続すると共に被洗浄部材が投入される空間を残して周壁に固着された搬送路と、各分割槽の底部に投入された被洗浄部材がそれぞれ搬送路の上で上昇方向に搬送されるように加振器とを具備し、被洗浄部材の搬送方向において最後に通る分割槽に対応する搬送路のうちオーバーフロー路よりも上方に位置する所定部位の上方に水蒸気吐出口を対向させ、かつ搬送路のうち水蒸気吐出口に対応する部位よりも取出部に近い部位の上方に空気吐出口を対向させる、旨の記載がある。
【特許文献1】特許第2777050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、大型ガラス基板を傾斜させ、且つ基板中央部の搬送ローラを無くして乾燥することが可能な傾斜搬送式乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の傾斜搬送式乾燥装置は、枚葉処理された大型基板を乾燥する傾斜搬送式乾燥装置であって、大型基板の両端部に接触して回転駆動により大型基板を搬送する搬送手段と、大型基板の下面に位置して、噴き出すエアにより大型基板の中央部の撓みを防止するエアフロート板と、大型基板の両面または片面に位置して、前記大型基板を乾燥させる乾燥手段とを有し、全体が水平軸に対し0〜90度間の角度で傾斜していることを特徴とする。
【0007】
本発明の傾斜搬送式乾燥装置の乾燥手段は、赤外線ランプ、赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ、ハロゲンランプ又は所定の温度に加熱された熱風のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであることを特徴とする。
【0008】
本発明の傾斜搬送式乾燥装置は、乾燥手段とは別に、大型基板の両面または片面を乾燥エアが流動する気流発生手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大型ガラス基板を傾斜させ、且つ基板中央部の搬送ローラを無くすことができるため、水成分除去が十分に行われ、表面にシミの発生、及び中央部の搬送ローラによる汚染の発生が無くなり、処理時間の増加も無くなる。このため、収率良く大型ガラス基板の乾燥が行なわれる傾斜搬送式乾燥装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による傾斜搬送式乾燥装置の構成を示す装置構成図である。図1において、傾斜搬送式乾燥装置100は、大型ガラス基板10の両端部に接触して回転駆動により大型ガラス基板を搬送する搬送手段20−1、20−2と、大型ガラス基板10の下面に位置して、噴き出すエアにより大型ガラス基板の中央部の撓みを防止するエアフロート板30と、大型ガラス基板の両面に位置して、大型ガラス基板を乾燥させる乾燥手段40−1、40−2とを有している。そして、傾斜搬送式乾燥装置100全体が、水平軸に対しα=0〜90度間で傾斜している。
【0011】
搬送手段20−1は、大型ガラス基板10の一端部に位置し、大型ガラス基板10の下面と接触する搬送ローラ22−1と上面と接触する搬送ローラ24−1と端面と接触する搬送ローラ26−1とを有している。搬送手段20−2は、大型ガラス基板10の他端部に位置し、大型ガラス基板10の下面と接触する搬送ローラ22−2と上面と接触する搬送ローラ24−2と端面と接触する搬送ローラ26−2とを有している。それぞれの搬送ローラは、例えば、大型ガラス基板10を図面の前面に搬送するように回転して、基板搬送を行なう。
【0012】
乾燥手段40−1は、大型ガラス基板10の下面に位置し、赤外線ランプ42−1と反射板44−1とを有している。乾燥手段40−2は、大型ガラス基板10の上面に位置し、赤外線ランプ42−2と反射板44−2とを有している。乾燥手段40−1、40−2は、赤外線ランプ以外に、赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ、ハロゲンランプ又は所定の温度に加熱された熱風のいずれか、又は赤外線ランプを含むそれらの任意の組み合わせであっても良い。また、乾燥手段とは別に、大型基板の両面または片面を乾燥エアが流動する気流発生手段を付加しても良い。また、乾燥手段40−1、40−2は、いずれか一方のみでも良い。
【0013】
再び図1において、大型ガラス基板10が図面の後面から搬入されると、搬送手段20−1、20−2の搬送ローラ22−1と搬送ローラ24−1と、及び搬送ローラ22−2と搬送ローラ24−2とは、大型ガラス基板10の上下面を互いに挟み込むように接触して回転し、搬送する。また、搬送ローラ26−1と搬送ローラ26−2とは、大型ガラス基板10の両端部を互いに挟み込むように接触して回転し、搬送する。
【0014】
また、エアフロート板30は、大型ガラス基板10の下面に位置して、エアを噴き出すことにより、大型ガラス基板の中央部の撓みを防止する。これらにより、大型ガラス基板10の幅や厚さのわずかな寸法変化により発生する搬送時の大型ガラス基板10の振動を防止し、大型ガラス基板10の搬送障害又は破損を無くすことができる。また、基板中央部の搬送ローラを無くすことができるため、中央部の搬送ローラによる汚染の発生を無くすことができる。
【0015】
大型ガラス基板10の両面に位置する赤外線ランプ42−1、42−2は、搬送ローラ22−1、24−1、26−1と、搬送ローラ22−2、24−2、26−2と、エアフロート板30とにより搬送されてくる大型ガラス基板10の両面を、通過時間内に赤外線により乾燥させる。また、傾斜搬送式乾燥装置100全体が、水平軸に対し所定の角度αで傾斜しているため、乾燥装置の前段でのエアナイフ等による水成分の除去が不十分であっても水切りが促進され、所定の処理時間で乾燥を終了させることができ、乾燥時間が増加することによる乾燥ムラのシミの発生を防止できる。
【0016】
以上説明したように本発明によれば、大型ガラス基板を傾斜させ、且つ基板中央部を浮上させて搬送ローラを無くすことができるため、水成分除去が十分に行われ、表面にシミの発生、及び中央部の搬送ローラによる汚染の発生が無くなり、処理時間の増加も無くなる。このため、収率良く大型ガラス基板の乾燥が行なわれる傾斜搬送式乾燥装置を提供することが可能となる。ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による傾斜搬送式乾燥装置の構成を示す装置構成図。
【図2】従来の乾燥装置の構成を示す装置構成図。
【符号の説明】
【0018】
10 大型ガラス基板
20−1、20−2 搬送手段
22−1、22−2 下面と接触する搬送ローラ
24−1、24−2 上面と接触する搬送ローラ
26−1、26−2 端面と接触する搬送ローラ
30 エアフロート板
40−1、40−2 乾燥手段
42−1、42−2 赤外線ランプ
44−1、44−2 反射板
50 搬送ローラ
100 傾斜搬送式乾燥装置
α 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉処理された大型基板を乾燥する傾斜搬送式乾燥装置であって、
前記大型基板の両端部に接触して回転駆動により前記大型基板を搬送する搬送手段と、
前記大型基板の下面に位置して、噴き出すエアにより前記大型基板の中央部の撓みを防止するエアフロート板と、
前記大型基板の両面または片面に位置して、前記大型基板を乾燥させる乾燥手段とを有し、
全体が水平軸に対し0〜90度間の角度で傾斜していることを特徴とする傾斜搬送式乾燥装置。
【請求項2】
前記乾燥手段は、赤外線ランプ、赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ、ハロゲンランプ又は所定の温度に加熱された熱風のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の傾斜搬送式乾燥装置。
【請求項3】
前記乾燥手段とは別に、前記大型基板の両面または片面を乾燥エアが流動する気流発生手段を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の傾斜搬送式乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−60219(P2010−60219A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227213(P2008−227213)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】