僧帽弁逆流の直接的弁輪縫縮術処置において螺旋形リテーナを使用するシステム
それぞれが保持クリップによって固定された環状組織の1つ以上のひだを使用して僧帽弁輪を再形成することにより、僧帽弁逆流の処置において螺旋形リテーナを使用するためのシステムが記載される。システムは、このような経皮直接的弁輪縫縮術を達成するために4つの装置を含む。第1は、好ましくは脱出可能な横断カテーテル200である。第2に、偏向ガイドカテーテル300は、ひだ形成装置を僧帽弁輪の弁下部領域の適切な位置に誘導するための手段を提供するのに使用される。第3に、ひだ形成装置400はその後、僧帽弁輪の弁下部領域内において又は弁下部領域近傍でひだを形成するのに使用される。第4に、螺旋形リテーナクリップ500が、ひだ形成された組織をひだ形成された形状に保持するためにひだ形成装置によって配置される。あるいは、第4の装置は、ひだ形成装置の外側上に螺旋形リテーナの送達を可能にするリテーナ送達カテーテル600である。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、患者の脈管構造及び内臓器官を治療するための装置及び方法に関する。特に、本発明は、ひだ形成された組織の中に螺旋状の締結具を挿入するひだ形成装置を使用して、患者の心臓の僧帽弁逆流を処置するためのシステム及び方法を目的とする。
【0002】
〔発明の背景〕
多種多様な内科的疾患を低侵襲的方法で治療するために、カテーテルベースの装置が使用される。プラークにより狭窄した静脈及び動脈を拡張するために使用される血管形成術用バルーンを設置しかつ拡張するために、カテーテルが使用される。そのような血管の再狭窄を防止するために、ステントと呼ばれる小さなスキャフォールドが、カテーテルベースのシステムを使用して脈管構造の中に導入されてきた。低侵襲的方法で処置するために使用され得るカテーテルベースの装置及びシステムの問題の1つは僧帽弁逆流であるが、このような方法において僧帽弁逆流を処置するための商業的に成功した装置は現在のところ存在しない。
【0003】
僧帽弁逆流は、僧帽弁の弁尖の不適切な整列により弁の閉鎖が不完全になることに起因する、左心室から左心房の中への血液の逆流である。不適切な閉鎖により僧帽弁の前尖と後尖との間に間隙が形成され、血液が左心室から左心房へと逆行したやり方で僧帽弁を貫流する導管がもたらされる。この間隙は先天性欠損症である場合があり、又は疾病、即ち、虚血性又は特発性心筋症及び/若しくは僧帽弁器官の構成要素の内因性変性疾患によって引き起こされる場合がある。疾患の一種であるうっ血性心不全(CHF)は、心臓を拡張させる。拡張した心臓では、左心室の壁は膨張又は拡張され、これにより乳頭筋が下方及び/又は外側に移動し、その結果腱索が拘束(tethering)され、続いて弁尖が拘束される/引っ張られる。また、CHFでは、僧帽弁輪が拡張される。拡張した輪及び弁尖の拘束の組み合わせが原因で、弁尖が適切に閉鎖せず、それにより僧帽弁に問題となる間隙が生じる。結果として起こる僧帽弁を通過する逆流は心臓の効率を低下させ、その結果心臓は、同量の血流を生み出すために、より速く及び/又はより強く鼓動することが必要となる。僧帽弁逆流は一部の患者においては無症状であり得るが、他の患者においては、血流の減少及びそれに伴う心臓への負担は、不整脈、心臓発作、及び場合によっては死をもたらす可能性がある。
【0004】
僧帽弁逆流の現在の好ましい治療法は、外科医にとって難しく、かつ患者にとって危険な場合がある心臓切開手術及び/又は内視鏡技術を用いる必要がある。1つの治療方法において、損傷を受けた又は欠陥のある僧帽弁を交換するのに、ブタ心臓弁又は機械弁を使用する。このような治療では、移植を達成するために心臓切開手術を行う必要がある。このような異種弁を人間に使用することができるが、多くの場合早期に摩耗してしまい、摩耗した弁を新たな異種弁又は機械弁と交換するために新たな心臓切開手術を必要とする。欠陥のある僧帽弁の代替品として使用することもできる機械弁が開発されてきたが、機械弁の移植は通常、弁の周囲に危険な塞栓症の原因となり得る凝血塊が発現するのを防止するために、長期にわたる抗凝固療法を必要とする。長期にわたる抗凝血薬療法は、望ましくない内出血及び外出血、並びに場合によっては脳卒中などの他の問題を引き起こす。
【0005】
機能性僧帽弁逆流を治療するための別の心臓切開外科手術は、輪状形成術である。輪状形成術では、一般に「D」字形の輪状形成リングを僧帽弁輪に埋め込んで、伸張した僧帽弁輪の寸法、何よりも中隔側面寸法を縮小し、かつ弁の閉鎖(又はコアプテーション)を改善して、血液の逆流を低減する。外科医は、僧帽弁の心房側で僧帽弁に輪状形成リングを外科的に取り付ける、即ち、縫合する。輪状形成リングは、僧帽弁の上部(即ち、心房側)の輪に縫合される。埋め込まれた時点で、組織は、通常、輪状形成リングの上に成長し、輪状形成リングと僧帽弁との間の接触線は、僧帽弁を出現させ、かつ僧帽弁の弁尖のコアプテーションを回復して正常な僧帽弁として機能させるのを本質的に可能とするが、効果の持続性は様々であり、手術後6カ月以内に衰える場合がある。輪状形成リングを受ける患者は抗凝固療法を受ける場合があるが、患者は、例えば、組織が輪状形成リングの上に成長するまでのおよそ数週間療法を受けるだけなので、この療法は広範囲ではない。
【0006】
変性僧帽弁逆流の処置に用いられる第2の心臓切開外科手術は、僧帽弁のエッジ間縫合(edge-to-edge suture)を用いるアルフィエーリ縫合術(Alfieri stitch procedure)である。エッジ間縫合を使用して、僧帽弁の前尖と後尖との間に画定された間隙のおよそ中央の領域を縫合する。縫合が適所に行われると、縫い目を引き寄せて、前尖を後尖に対して保持する縫合線を形成する。前尖と後尖との間の間隙の寸法を小さくすることにより、僧帽弁を通過する漏れの量を実質的に低減させることができる。輪状形成リングを追加せずに行われるアルフィエーリ縫合術に関しては、耐久性が懸念事項であった。加えて、エッジ間縫合術の使用は、主な異常、つまり弁尖間の間隙が中央に位置している特定の変性病変にのみ必要とされる。
【0007】
僧帽弁逆流の別の処置方法は、心室補助装置の埋め込みである。このような装置は高価であり、埋め込むのが難しく、かつ患者が抗凝固療法を無期限に受ける必要がある。抗凝固療法を長期にわたって用いることにより、不必要な出血及び脳卒中を引き起こす場合がある。したがって、そのような心室補助装置は、恐らくは当該装置を使用しないと生きられない患者のみにおける使用に必要とされ、心臓移植手術の対象者である患者を生存させ続けるために使用される。左心室補助装置は、最終的な治療というよりむしろ「架橋」治療である。
【0008】
特定の状況下ではこのような侵襲的な外科治療が僧帽弁の処置において効果的であることが示されてきた一方で、侵襲的な外科治療は、多くの場合有意な不利な点を有する。患者が心臓切開手術を受けるときはいつでも、感染の危険性がある。胸骨を開いて心肺バイパス装置を使用することは、短期及び長期の両方にわたる神経学的欠損を有意に発生させる原因となることも示されてきた。
【0009】
僧帽弁逆流を処置するためのいくつかの低侵襲的処置が開発されているが、現在までのところ、商業的に成功した標準的方法になったものはない。米国特許第6,619,291号(フブラカ(Hvlaka)ら)は、輪状形成を実施する低侵襲的方法を開示しており、当該方法はインプラントを左心室に挿入すること、及び左心室の中のインプラントを僧帽弁の実質的に下方に配向させることを含む。インプラントと僧帽弁の周りの組織とを連結させ、僧帽弁に関連したアーク長を実質的に減ずるために、インプラントに張力を加える。
【0010】
米国特許第6,718,985号及び同第7,037,334号(フブラカ(Hvalaka)ら)では、互いに螺着されて僧帽弁を再形成するTバーによって、僧帽弁の近くの一連のひだが形成される。米国特許第7,166,127号では、僧帽弁逆流を処置するためのカテーテルベースのシステムは、リテーナに結合された可撓性引張部材によって僧帽弁の輪に固定されるように構成されたリテーナを使用する。カテーテルを介して配置可能なクリンプ装置は、可撓性引張部材が互いに向かって引き寄せられて輪の円周長さを減少させた後に、可撓性引張部材の上にクリンプを押し付ける。このシステムでは、初期効果を達成するために必要な永久インプラントの数、及び効果の成功を判定することができるようになる以前のこれらインプラントに対する関与が、深刻な不利益である。
【0011】
米国特許出願第2007/0093857号(ロジャーズ(Rogers)ら)は、低侵襲的処置を用いて僧帽弁逆流を処置するための装置及び方法を記載しており、その中では、患者の僧帽弁に隣接してひだが形成され、ひだを保持するためにリテーナが設置される。
【0012】
米国特許出願第2007/0032797号は、胃壁の中に設置するための螺旋状の形をしたアンカーを有する、胃の寸法を減少させるための装置を開示している。
【0013】
米国特許出願第2007/0025737号(メサリー(Messerly)ら)は、概ね螺旋形状を有する外科手術用リテーナ、及び螺旋形のリテーナがその中に取り付けられ得る組織を把持するためのジョーを有する装置を開示している。
【0014】
米国特許出願第2007/0055335号は、心臓用途で使用するための螺旋状の形をした遠位先端を有する電極プローブを開示している。
【0015】
低侵襲的処置において能率的かつ効果的に使用することができ、かつ処置が所望の効果がもたらしたことを、装置を患者から除去する前に医師が知ることができ、それにより処置を繰り返し行う必要性及び費用を低減する、僧帽弁逆流を処置するための装置及び方法への必要性が残されている。このような処置は、不可逆的行為を取る前に、僧帽弁への効果を処置の間に変更する能力を医師に提供するべきである。
【0016】
〔発明の概要〕
本発明は、僧帽弁逆流を処置するためのシステム及び方法を提供する。当該方法は、好ましくは、大動脈弁を横断する大腿動脈からの逆行アプローチを用いる。好ましくは「J」又はピグテール形状を備える円形横断カテーテル(CC)を利用した標準的な大腿動脈からの逆行アプローチを用いて、左心室へのアクセスが大動脈弁を通して達成される。次に、偏向ガイドカテーテルを、横断カテーテルを越えて左心室の中へ送る。偏向可能なカテーテルの遠位端が左心室の中にあるときに、横断カテーテルを除去する。偏向可能なガイドは、遠位部分が左心室の後壁に沿って位置した状態で乳頭筋の間に位置付けられ、その先端が後部僧帽弁輪の下面を指すように位置付けられるのが好ましいが、そうである必要はない。次に、ひだ形成装置を、偏向可能なカテーテルを通して導入し、偏向可能なカテーテルの遠位端の外に前進させ、そして僧帽弁の下面に向け、より好ましくは弁下部の溝の中に向け、輪において又は輪の近傍で僧帽弁の組織を把持かつひだ形成できるように位置付ける。
【0017】
僧帽弁輪の試験的なひだを形成し、ひだの適切性を、TEE、ICE、TTE、又は蛍光透視法などの撮像手段を用いて(造影剤注入を用いて又は用いずに)調べる。ひだが適切であると判定されると、続いて、組織をひだ形成された状態に保持するためにリテーナがひだに適用される。ひだが満足のいくものでない場合、リテーナは適用せず、ひだ形成装置のジョーを解放し、ひだ形成装置を再位置付けして僧帽弁の輪において又は輪の近傍で異なる組織標的をひだ形成する。リテーナを配置する前に、このような「試験的な」ひだ形成を何度か繰り返してもよい。
【0018】
単一ひだ及びリテーナが、血液の逆流を是正するように十分に僧帽弁を再形成しない場合は、最初の偏向可能なガイドを再位置付けし、リテーナを有する第2のひだ形成装置を送達ガイドの中に導入及び位置付けし、同じやり方で使用する。あるいは、処置の間に必要に応じて、ひだ形成装置の除去及び再導入を必要とせずに、複数リテーナひだ形成装置を使用して第2又は第3のリテーナを提供することができる。僧帽弁の環状形状の満足のいく変化、及び付随する僧帽弁逆流の減少が達成された時点で、ひだ形成装置及び偏向可能なガイドを完全に引き抜き、従来の閉鎖技術を用いて大腿動脈アクセス部位を閉鎖する。
【0019】
4つの構成部品が、経皮直接的弁輪縫縮術のためのシステムを構成する。第1は、好ましくは「J」又はピグテール形状を備える、脱出可能な又は先端が曲がった横断カテーテルである。これはガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで使用されてもよい。いずれの場合も、横断カテーテルは、中に横断カテーテルが初めにはめ込まれている又は積み重ねられている第2の構成部品である偏向ガイドカテーテルと共に、積み重ね又ははめ込み(telescoped)構成で挿入される。偏向ガイドカテーテルは、ひだ形成装置を、輪において又は輪の近傍で僧帽弁の下面、好ましくは僧帽弁の弁下部領域の適切な位置に誘導するための手段を提供するのに使用される。システムの第3の構成部品は、少なくとも一方が、開くように操作されることができる対向部材を有するエンドエフェクタを有するひだ形成装置である。ひだ形成装置は組織を把持するために使用され、また、必要に応じて、組織をひだ形成された形状に保持するための少なくとも1つのリテーナを含む。バネ状の螺旋形、即ち、コルクスクリューの形状をしたインプラントは、組織に使用されて、ひだ形成装置のエンドエフェクタによって組織内に形成されたひだの保持部材として機能することを目的としている。代替実施形態において、螺旋形リテーナは、ひだ形成装置の上に設置されかつ一方向解放機構を有する送達カテーテルの末端部に取り付けられて、心臓の組織に経皮的に送達される。外部送達機構を使用することにより、ひだ形成装置のジョーを通して内部送達されるリテーナよりもより多くの組織を保持する、より大きな螺旋形リテーナが可能となる。
【0020】
現行の組織リテーナは、それらがひだ形成する又は保持する組織の平面の外部に輪郭を有するクリップである。螺旋形リテーナは、組織の中に完全に入り込み、リテーナが露出したままとなる部位はない。心臓の中では、これは、リテーナの周囲に血塊が発生する可能性を軽減させる。僧帽弁において又は僧帽弁の近傍では、これは、弁尖運動との干渉を軽減する、又は経時的に弁尖を徐々に破壊する可能性を軽減するという利点も提供する。
【0021】
本発明は、患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムを目的とし、本システムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、を含み、ひだ形成装置は、組織内のひだを保持するための少なくとも1つのリテーナを含む。任意に、本システムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを含む。横断カテーテルは、J字形状又はピグテール形状であってよい。本システムは、横断カテーテルを患者の脈管構造を通して左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含んでもよい。リテーナは、好ましくは「C」字形状であり、末端部が中間部材で連結された2つの突起を含む。
【0022】
本発明は、患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムであり、本システムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、対向するジョーによって形成された組織内のひだを保持するための少なくとも1つの螺旋形リテーナを有する、患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、を含む。本システムはまた、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを含んでもよい。横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルを、患者の脈管構造を通して左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含んでもよい。
【0023】
一実施形態において、ひだ形成装置は、螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたリテーナ押し部を更に含む。発射制御ワイヤに連結された発射ノブは、発射ノブが第1の方向に回転したときに回転して、リテーナ押し部及び螺旋形リテーナをひだ形成された組織の中に回転させる。発射ノブが第2の方向に回転すると、アダプタは螺旋形リテーナから解放される。螺旋形リテーナは、この螺旋形リテーナの上に配置されてひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえし、又はワイヤの周囲に沿ったワイヤから形成される複数の隆起部を含んでもよい。
【0024】
別の実施形態では、患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、近位端と遠位端とを有し、かつ遠位端に配置されてひだ形成装置の対向する一組のジョーによって形成された組織内のひだを保持する螺旋形リテーナを有する、リテーナ送達カテーテルと、を含む。リテーナ送達カテーテルは、金属で構成される細長い管状本体であって、細長い管状本体の少なくとも一部分に沿って金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有するのが好ましく、また螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたアダプタを含んでもよい。アダプタは、リテーナ送達カテーテルが第1の方向に回転すると螺旋形リテーナと噛み合い、第2の方向に回転すると螺旋形リテーナを解放する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法を説明するフローチャート。
【図1B】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法を説明するフローチャート。
【図2A】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2B】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2C】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2D】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2E】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2F】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2G】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2H】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図3】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法におけるひだ領域。
【図4】本発明に従って僧帽弁逆流を処置するのに使用する横断カテーテルの斜視図。
【図5】図4の横断カテーテルの本体の一部分の切り欠き図。
【図6】本発明に従って僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの立面図。
【図7A】図6の偏向ガイドカテーテルのハンドルの構成部品の分解図。
【図7B】図6の偏向ガイドカテーテルのハンドルの構成部品の斜視図。
【図8】図6の偏向ガイドカテーテルの本体部分の立面図。
【図9A】図8の偏向ガイドカテーテルの本体部分の線Aで切り取った断面図。
【図9B】図8の偏向ガイドカテーテルの本体部分の線Bで切り取った断面図。
【図10A】僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの他の実施形態の本体部分の斜視図。
【図10B】僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの他の実施形態の本体部分の斜視図。
【図10C】僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの他の実施形態の本体部分の斜視図。
【図11】本発明による偏向ガイドカテーテルで使用されるハンドル及び内部構成部品の別の実施形態の分解斜視図。
【図12】本発明に従って僧帽弁逆流を処置するのに使用するひだ形成装置の立面図。
【図13】内部構成部品を露出するために一部分が取り除かれた、図12のひだ形成装置の立面図。
【図14A】図12及び図13のひだ形成装置の、シャトルアセンブリから遠位端までの立面図。
【図14B】図14Aのひだ形成装置の一部分の、線A−Aで切り取った横断面図。
【図14C】図14Bのひだ形成装置の一部分の断面図の近位端区域Dの拡大図。
【図14D】図14Bのひだ形成装置の一部分の断面図の遠位区域Cの拡大図。
【図14E】図14Bのひだ形成装置の一部分の断面図の遠位先端区域Bの拡大図。
【図14F】図14Aのひだ形成装置の遠位先端の拡大平面図。
【図14G】エンドエフェクタ制御ワイヤと遠位牽引ワイヤとの結合を描いた詳細な斜視図。
【図14H】受動的関節を有するひだ形成装置の実施形態における、エンドエフェクタ制御ワイヤと遠位牽引ワイヤとの結合を描いた詳細な斜視図。
【図14I】螺旋形リテーナが配置された状態で開位置にある、図14Aのひだ形成装置の遠位先端の斜視図。
【図14J】螺旋形リテーナが配置された状態で閉位置にある、図14Aのひだ形成装置の遠位先端の斜視図。
【図15A】本発明による僧帽弁逆流の処置に使用するひだ形成装置で使用される螺旋形リテーナの斜視図。
【図15B】本発明によるひだ形成装置で使用する螺旋形リテーナで使用されるワイヤの断面図。
【図16A】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図16B】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図16C】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図16D】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図17】本発明の方法及びシステムで使用されるリテーナ送達カテーテルの立面図。
【図18】図17のリテーナ送達カテーテルの遠位端の立面図。
【図19A】リテーナ送達カテーテルに解放可能に連結するためのアダプタを有する螺旋形リテーナの立面図。
【図19B】リテーナ送達カテーテルに解放可能なように取り付けられた図19Aの螺旋形リテーナの立面図。
【0026】
〔発明の詳細な説明〕
図1は、本発明に従って、図2Aに示されるような心臓の僧帽弁に直接的弁輪縫縮術を施す方法を示すフローチャートである。工程100では、大腿動脈にアクセスするための、標準的な方法を用いた穿刺で処置が開始する。工程102では、医師又はその他の施術者は、標準的な方法を用いて、カテーテルシース導入器(CSI)を大腿動脈アクセスポイントの中に設置する。任意の既知のCSIをこの処置で用いることができるが、好ましい寸法は約4.46mm(約14フレンチ)である。工程104では、好ましくは脱出可能な又は曲がった先端を有する横断カテーテル、及び偏向ガイドカテーテルを、「積み重ね」形態でCSIを通して共に挿入する。横断カテーテルの使用が好ましい方法であるが、別の方法としては、偏向ガイドカテーテルを横断カテーテルなしにCSIを通して挿入する。横断カテーテルは、本明細書では、以下の図4及び図5に関してより詳細に説明がなされ、偏向ガイドカテーテルは、本明細書では、図6〜図11に関してより詳細に説明がなされる。積み重ねられた横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルは、工程106で、患者の動脈系を通して患者の大動脈を横断して逆行式に前進する。工程108では、大動脈弁(AV)は横断カテーテルと交差し、横断カテーテルは、図2Bに示されるように、左心室(LV)の中に前進する。図2Cに示されるように、工程110では、偏向ガイドカテーテルが、横断カテーテルを越えて大動脈弁を通って左心室の中に前進する。図2Dに示されるように、工程112では、偏向ガイドカテーテルは、僧帽弁にほぼ向かって前進するといくぶん反転式に偏向され、工程114で、横断カテーテルは引き抜かれる。
【0027】
CSIの中に挿入される三つの構成要素の積層物の状態で、横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルと共にガイドワイヤを使用することもできる。ガイドワイヤを使用する場合は、最初にガイドワイヤは動脈系を通って大動脈弓を越えて前進し、その後横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルの組み合わせ積層物が続く。ガイドワイヤが最初に大動脈弁を通して導入され、その後、好ましくは乳頭筋の間の位置に配向された(このことは必ずしも必要ではない)横断カテーテルが続く。次に、処置は上記の工程110及び112と同様に進み、工程114で、ガイドワイヤは横断カテーテルと同時に取り除かれる。
【0028】
ガイドワイヤが使用されたか否かにかかわらず、処置は工程116に進み、そこで図2Eのように、左心室の頂部にある僧帽弁に向けて偏向ガイドカテーテルの領域が設置される。工程118では、偏向ガイドカテーテルの先端が、僧帽弁の下の位置まで左心室の後壁を上に前進し、好ましくは図3に示されるようにP2領域の弁下部の溝の中に最初は位置付けられる。用語「輪」は、輪における又は輪の近傍の領域を含むように意図されている。工程120では、偏向ガイドカテーテルの先端の位置を蛍光透視法などの画像検査法を用いて確認する。蛍光透視法を用いる場合、1つのビューでも十分であり得るが、たいていの場合は、2つのビューを使用して、僧帽弁輪のP2領域内の偏向ガイドカテーテルの適切な設置を確認するのが好ましい。P2は第1のリテーナの予想される標的領域であるが、僧帽弁の形状に応じて、第1のリテーナを領域P1又は領域P3内に設置してもよい。同じ又は他の領域に追加のリテーナを設置する必要がある場合がある。
【0029】
工程122では、1つ以上のリテーナを搭載しているひだ形成装置400が偏向ガイドカテーテルの中に挿入され、偏向ガイドカテーテルの先端まで前進する。この方法に使用するひだ形成装置は、本明細書において、図12〜図14Hに関してより詳細に記載される。工程124では、ひだ形成装置のジョーの回転配向が画像検査法を用いて決定され、ジョーが正しい配向で設置される。ひだ形成装置のジョーの好ましい回転配向は、開いたときのジョーの両方の先端が、輪と接触するように押されたときに、僧帽弁輪によって画定される弓形の「弦」を表すようなものである。次に、工程126で、ひだ形成装置は、図2Eに示されるように、偏向ガイドカテーテルの末端部から出て僧帽弁の輪の下の位置へと前進する。ひだ形成装置の配向及び位置は、工程128で、画像検査法を用いて再確認される。先と同様に、画像検査法として蛍光透視法を用いる場合は、少なくとも1つのビュー、好ましくは2つのビューを使用して、ひだ形成装置のジョーの配向及び配置を確認する。蛍光透視法で観察する際の輪の線を画定するのを助けるために、別個の造影カテーテルを使用するか、又は偏向ガイドカテーテルを介して、既知の造影剤を注入してもよい。工程130では、ひだ形成装置のジョーが適切に位置付けられたか否かが医師によって決定される。ひだ形成装置が正しく位置付けられていない場合は、次に工程134で、ひだ形成装置のジョーを再位置付けする試みがなされる。工程136では、上述のように及び以下により詳細に記載されるように、ひだ形成装置の位置を、画像検査法を用いて再度評価する。ひだ形成装置が正しく位置付けられると、以下に記載のように工程132以降が行われる。工程134での少なくとも1回の再位置付けの試みの後に、ひだ形成装置が正しく位置付けられないと、工程138の判定は、ひだ形成装置が所望の位置を達成できないとなり、工程150で、ひだ形成装置及び偏向可能なガイドカテーテルは患者から引き抜かれる。
【0030】
ジョーが適切に位置付けられると、工程132で、診断用のクランプ又はひだ形成が行われる。診断用のクランプ(又はひだ形成)の一環として、ひだ形成装置のジョーは図2Fに示されるように開き、ひだ形成装置は僧帽弁の輪の組織上へと前進し、ジョーは図2Gに示されるように閉じる。診断用のひだ形成は、工程140、142、及び144で評価される。診断用のひだ形成が僧帽弁輪の許容可能な変化及び/又は僧帽弁逆流の許容可能な減少をもたらした場合は、工程140でひだ形成装置を使用してリテーナを適用し、図2Hに示されるようにひだ形成装置は解放される。組織に適用することができるリテーナの実施形態は、本明細書において、図15に関してより詳細に記載される。工程142では、診断用のひだ形成が許容可能ではない変化を僧帽弁にもたらした場合、処置は中止され、工程150で、ひだ形成装置及び偏向可能なガイドカテーテルは共に患者から引き抜かれる。工程144では、診断用のひだ形成が、僧帽弁逆流(MR)の不十分若しくは不適切な減少及び/又は僧帽弁の不十分若しくは不適切な変化に終わると、診断用のひだ形成は解放され、工程134で、ひだ形成装置のジョーの再位置付けの試みが行われる。
【0031】
僧帽弁への変化が許容可能であり、かつリテーナが適用されると、工程145で、弁を通過する血流を撮像する、ドプラー心エコー法などの方法を用いて、ひだが僧帽弁の血液の逆流に与える影響に関する判定が行われる。工程146、147、及び148では、処置及び処置の継続に関する様々な決定が行われる。工程146では、僧帽弁逆流の許容可能な総減少及び/又は僧帽弁の許容可能な変化がなされたと判定されると、処置は工程150へ分岐し、ひだ形成装置及び偏向ガイドカテーテルは回収される。僧帽弁逆流の総変化が不適切若しくは不十分である及び/又は僧帽弁への変化が不適切若しくは不十分である場合(工程147)、現在使用中のひだ形成装置が単一リテーナ装置の場合には引き抜かれ、追加のひだ形成装置が挿入され、処置は工程122から継続する。ひだ形成装置が複数のリテーナの装置の場合は、ひだ形成装置を引き抜かずに、処置は工程124から継続する。工程148で、ひだが僧帽弁逆流に与える影響に関する判定が不都合な結果を認定すると、処置は中止される可能性が高く、工程150で、ひだ形成装置及び偏向ガイドカテーテルが患者から除去される。ひだ形成装置及び偏向ガイドカテーテルを除去した後、カテーテルシース導入器を除去し、工程152で、既知の方法を用いてアクセス部位を閉鎖する。
【0032】
代替実施形態では、図17〜18に示されるように、リテーナは、リテーナ送達カテーテル600に解放可能なように取り付けられる。工程122では、リテーナ送達カテーテルがひだ形成装置と共に挿入され得る。リテーナ送達カテーテルを使用することによる主な違いは、ひだが僧帽弁に許容可能な変化をもたらしたと判定された場合に、工程140で、リテーナ送達カテーテルが前進することである。工程140では、リテーナ送達カテーテル600のツオヒー弁(Tuohy valve)が開かれ、リテーナ送達カテーテルは、ひだ形成装置の遠位端のジョーを越えて前進し、組織と接触する。リテーナ送達カテーテル600は、ひだ形成された組織の中に螺旋形リテーナを取り付けるために、蛍光透視法などの画像手段で見たときに螺旋状の締結具の近位縁がひだ形成装置のジョーの遠位先端を離れるまで、遠位方向の圧力を印加すると、時計と反対方向に回転する。これにより、螺旋状の締結具が完全に実装されたことが医師に示された。リテーナ送達カテーテル600の除去は、螺旋形リテーナからの遠位端の離脱が蛍光透視法で又はその他の画像で観察されるまでシャフトを時計回りに回転させることにより達成される。その後、ひだ形成装置及びリテーナ送達カテーテルの両方を患者から除去することができる。リテーナ送達カテーテルを使用するシステムでは、偏向ガイドカテーテルは、ひだ形成装置及びリテーナ送達カテーテルの両方を収容するように寸法設定される必要がある。
【0033】
上記方法では、ひだ形成装置が僧帽弁輪の下に適切に配置されたかを判定するために、様々な画像手段を用いることができる。蛍光透視法は1つの有用なリアルタイムの画像手段であり、好ましくは、少なくとも2つの平面で画像を得る。ひだ形成装置の遠位端に設置される放射線不透過性マーカー及び/又は偏向ガイドは、適切な配置を決定するのを助ける。少なくとも2つの平面投影でリアルタイムに捕捉されたX線像を使用して、ひだ形成装置の三次元形状を生成することができる。あるいは、回転血管造影画像を使用してもよい。更に、予め取得したCT又はMRI画像データを蛍光透視像と位置合わせする(registering)ことは、医師に追加の解剖学的データを提供して、ひだ形成装置及びリテーナの、又はリテーナの適切な配置を助ける。同様に、リアルタイムに捕捉されたリアルタイムの三次元超音波映像を、蛍光透視像と位置合わせしてもよい。
【0034】
この目的に有用な別の画像手段は、ICE画像を生成するのに使用される心臓内超音波検査法(ICE)である。ICE画像は、心臓の室のうちの1つ、例えば、右心室、左心室、左心房、又は右心房の内部に設置されたICEカテーテルによって生成することができる。あるいは、ICEカテーテルは、患者の心臓の大血管の内部に設置され得る。ICEカテーテルは、剣状突起下アプローチなどの低侵襲的アプローチを介して、心臓の心外膜嚢又は心膜嚢の表面上に設置されてもよい。用いられる様式を問わず、僧帽弁の画像は心周期と同期させて撮られるべきである。
【0035】
リテーナをひだに適用する前に、ひだが僧帽弁の機能に所望の影響を与えることに成功したかどうかをリアルタイムに又はほぼリアルタイムに判定する際にも、様々な画像手段は有用である。リアルタイムは、潜伏期が処置を実施するのに許容可能であり、好ましくは500ミリ秒以下であることを意味する。超音波造影剤を患者に投与するしないにかかわらず、カラードップラー超音波撮像をこのような目的に用いてもよい。あるいは、ひだが僧帽弁逆流に与える影響を判定する際に、心臓の室のうちの1つ、好ましくは左心室の中へのX線造影剤ボーラス注射を使用して、X線蛍光透視法を用いることができる。二面血管造影撮像、又は心室内光学的撮像を用いてもよい。心室内光学的撮像を用いる場合、偏向ガイドカテーテルは光学的画像システム、特に、赤外波長で作動する光学的画像システムを更に含むことが好ましい。
【0036】
第1の組織ひだの位置の判定は、上記の画像検査法のうちの1つ以上で生成された画像データに基づく三次元機能数値シミュレーションを使用して生成された最適化計画に基づき得る。例えば、弁を貫流する主要な逆流の位置に対する環状組織の分布を分析することにより、初期ひだ形成治療の主な標的を決定し得る。患者の心臓の病状に起因して輪が最も変形している位置にひだを設置するのが望ましくあり得る。最適化計画の生成は、横断カテーテルを挿入する工程の前に行われてもよい。最適化計画の生成は、次のひだ又はひだ群の好ましい位置を判定するために、リテーナを第1の組織ひだに適用する工程の後に行われてもよい。
【0037】
あるいは、経中隔アプローチを用いる場合は、心房表面上にひだを形成することができる。これは、SVC又はIVC静脈アプローチを用いて右心房にアクセスすることで達成することができる。その場合、左心房へのアクセスは、ブロッケンブロー(Brockenbrough)経中隔針キットなどの標準的な経中隔穿刺/アクセスキットを使用して達成される。次に、偏向ガイドカテーテルが穿刺部を介して導入されて、先端が僧帽弁の輪の方を指すように偏向される。弁輪縫縮術処置の後続の工程及び装置は、アプローチが下面からではなく僧帽弁の心房側からであることを除いては、上記と実質的に同じである。
【0038】
上記方法は、横断カテーテル200と、偏向ガイドカテーテル300と、少なくとも1つのひだリテーナ500を含むひだ形成装置400と、を含む複数構成部品のシステムを使用して実施される。図4は、本出願に記載の処置で使用される横断カテーテル200の斜視図である。横断カテーテル200は、近位端210aと遠位端210bとを有する本体部分210から構成される。近位端210aに連結されるのは、雌ルアーロック216及びツオヒー・ボースト(Tuohy-Borst)止血弁214である。遠位端210bには、好ましくはピグテール218、又は「J」字形状(図示せず)の部分が取り付けられる。ピグテール218の直径は、約2.0センチメートル以下である。図4では、ピグテール218は、装置の遠位端から約4センチメートルの継ぎ目位置で、本体部分210に取り付けられる。本体部分210及びピグテール218は同じ又は類似の材料で作製されるので、ピグテール218は熱接合により本体部分210に取り付けられる。ピグテール218は、ポリマー、好ましくはペバックス(Pebax)(登録商標)ポリエーテルブロックアミドで構成され、一層で構成される場合は、ジュロ硬度は約55D、又は二層で構成される場合は、外層のジュロ硬度は約40D、及び内層のジュロ硬度は約55Dである。本体部分210は、ジュロ硬度が55D〜72Dの一層で構成されてもよく、又は二層を有していてもよい。二層を使用する場合には、好ましいジュロ硬度は、外側が70Dで内側が63Dである。本体部分とピグテールとを合わせた全長は約149センチメートルであり、全長は、偏向ガイドカテーテルに完全に挿入されたときに偏向ガイドカテーテルを越えて延びなければならず、したがって、横断カテーテルの長さは、使用される偏向ガイドカテーテルの長さに応じて異なり得る。ピグテールが本体部分に取り付けられる位置も、横断カテーテル200の遠位先端から、3センチメートルから約44.5センチメートルの間で異なり得る。横断カテーテルはまた、本体部分からピグテールまで1つの材料で構成されてもよい。そのような場合、ジュロ硬度55Dの外側材料、及びジュロ硬度40Dの内側材料を使用するのが好ましい。更なる硬さ及びトルク能力を提供するために、約0.0025×0.0076cm(約0.001”×0.003”)のワイヤの平らなワイヤ編組212を、本体部分210の近位部を含むポリマーの中に埋め込んでもよい。PTFEの内層211は、滑らかな内部コーティング、及びポリマーと内部ルーメンとの間の分離を提供する。横断カテーテルのピグテール部分の硬さは、標準ガイドワイヤ、例えばコーディスエメラルド(CordisEmerald)0.089cm(0.035”)ガイドワイヤがピグテールを広げるが、後退するとピグテール形状に戻るように選択される。このようなガイドワイヤは、横断カテーテルの内層211によって画定されるガイドワイヤルーメンの中に設置され、かつ横断カテーテルの全長を通って延在しなければならない。
【0039】
横断カテーテル200は、上述のようにガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで使用されてもよく、図6〜図10A〜Cに示される偏向ガイドカテーテルと共に使用されるのが好ましい。偏向ガイドカテーテル300は、ハンドル310と本体部分350とから構成される。図7Aは、ハンドルの内部構成部品を示す、ハンドル310の実施形態の分解図であり、図7Bは、ハンドル310の内部構成部品が組み立てられたときの斜視図である。ハンドル310は、上部ハンドルシェル312と下部ハンドルシェル314とで構成され、当該ハンドルシェルは、ポリカーボネートなどの耐久性のある鋳造可能な高分子材料、又は同様の材料で製造され、かつスナップ嵌め構成で互いに嵌合するように設計される。ハンドル310の近位端には、近位ハンドル先端318上に嵌合するように構成された止血弁316がある。止血弁316は、ツオヒー・ボースト型弁のような、このような弁に既知の任意の設計のものであってよい。近位アクチュエータアセンブリ324は、スロット313を通して上部ハンドルシェル312に挿入されるように構成された親指アクチュエータ324aを含む。任意に、スロット313が狭い場合は、組立を容易にするために、親指キャップ325を備える二部分から成る構成体を使用してもよい。親指アクチュエータ324a及び任意の親指キャップ325を使用して、牽引ワイヤ327aの近位方向への前進運動を生じさせる。このような運動は、枢着部軸ピン324cの周りでバネ324dによって付勢された突起(1つ又は複数)324eが、近位ラック322の中の歯群322aと噛み合うと、維持される。近位アクチュエータアセンブリ324と、それに伴う牽引ワイヤ327aのこのような近位運動は、偏向ガイドカテーテル300の遠位端の偏向を引き起こす。ユーザーが近位アクチュエータアセンブリ324の遠位運動を望む場合は、ユーザーは解放トリガ324bを押し、解放トリガ324bはバネ324dの付勢を受けて、突起(1つ又は複数)324eを近位ラック322の歯群322aとの噛み合いから解放する。近位ハイポチューブ331aは、牽引ワイヤ327aのための通路を提供し、ワイヤがねじれるのを防ぐ。遠位ハイポチューブ331bは、ハイポチューブ331aの内側にはまり込むように設計される。牽引ワイヤ327aの末端部には、クリンプチューブ334a、及びクリンプチューブがアクチュエータアセンブリの近位端の中に埋め込まれるのを防止する浮動式クリンプチューブストップ334bが固定して取り付けられる。次に、ユーザーはアクチュエータアセンブリを遠位側に動かして、偏向ガイドカテーテルの遠位端の偏向を変化させる。アクチュエータアセンブリの動きは、医師が自分の親指以外の何かを使用して作り出されてもよく、用語「親指アクチュエータ」及び「親指キャップ」はいかなる制限も意味しない。
【0040】
ハンドル310は、同様の親指アクチュエータ328aと、解放トリガ324bと、軸ピン324cと、バネ328dと、突起328eとを有する遠位アクチュエータアセンブリ328を更に含む。任意の親指キャップ329は、親指アクチュエータ328aの上に固定される。遠位アクチュエータアセンブリ328は、ユーザーが偏向ガイドカテーテルの遠位端を偏向できるようにする、第2の牽引ワイヤ327b(図11に図示)に連結される。好ましい実施形態において、第1及び第2の牽引ワイヤは、(溶接、ろう付け、又は接着剤などの既知の方法及び手段によって)偏向ガイドの本体部分350の遠位領域360に埋め込まれるアンカーバンド385a及び385bに取り付けられる。牽引ワイヤとそれらの対応するアンカーバンドとの接続点はまた、接続点が(軸方向に)互いに隣り合っていないが、それぞれが遠位端の運動を別の平面に、又は同一平面内の他の方向に提供するように配置されてもよい。更に、1種類の動きのみを偏向ガイドカテーテルに提供すればよい場合は、第2の牽引ワイヤ及びアクチュエータは必要ない。それに対応して、2種類を超える偏向が必要な場合は、牽引ワイヤ及びアンカーバンドに結合される追加の親指アクチュエータアセンブリを、同様のやり方でカテーテルに追加してもよい。第2の遠位アクチュエータアセンブリは、近位アクチュエータアセンブリと同様のやり方で機能する同じ構成部品を有する。主な違いは、遠位アクチュエータアセンブリ328は、遠位アセンブリを通して第1の牽引ワイヤ327aを通過させる通路を必要とすることであり、当該通路はハイポチューブ331bによって援助される。第2の牽引ワイヤ327bは、同様のクリンプチューブ335aとクリンプチューブストップ335bとを備える遠位端で終端する。ノーズコーン330は、ハンドルシェル312/314と、本体部分350の近位領域390との間の移行を提供する。アクチュエータアセンブリ324及び328、並びにラック322及び326は、ポリカーボネートなどの高分子材料で構成される。このようなアセンブリは、機械加工された金属又は成形金属、例えばアルミニウムで作製することができるが、高価格かつ高重量の装置になる。歯群322a及び326aを備えるラック322及び326は、別個の構成部品であってもよく、又は好ましくは、図11の代替実施形態において示されるように、下部ハンドルシェル314の中に成形されてもよい。ハンドル差し込み338を2つのラック322と326との間の仕切りとして使用し、ハンドル差し込み338は近位ハイポチューブ331aの支持体を提供する。牽引ワイヤ327a及び327bは、好ましくは、高引張り強度304のステンレス鋼(例えば、引張り剛性が456N/cm2(300ksi)を超える)であるが、MP35Nなどのその他の高強度材料、その他のステンレス鋼、又はケブラー若しくはベクトランなどの織り繊維で製造されてもよい。
【0041】
牽引ワイヤ327a及び327bは、好ましくは、直径約0.020cm(約0.008”)の、単一で中実コアの高引張り剛性304ステンレス鋼ワイヤ(例えば、引張り剛性が456N/cm2(300ksi)を超える)であるが、MP35Nなどのその他の高強度材料、その他のステンレス鋼、又はケブラー若しくはベクトランなどの織り繊維で製造されてもよい。各牽引ワイヤの遠位端には、アンカーポイントでカテーテル本体の壁部に埋め込まれるアンカーバンド385a又は385bがある。アンカーバンドの位置をカテーテル本体の軸方向長さに沿って変化させると、偏向可能なガイドカテーテルの偏向形状が変化する。
【0042】
偏向ガイドカテーテル300の本体部分350が、図8、図9A、及び図9Bに描かれている。本体部分は、4つの領域、即ち、遠位領域360、中間遠位領域370、主部中間領域380、及び近位領域390に分けられている。遠位端での遠位領域360の長さは約3.5センチメートルであり、ジュロ硬度が25D〜40D、好ましくは35Dであるペバックス(Pebax)などの高分子材料で製造される。次炭酸ビスマスなどの放射線不透過性材料を遠位領域360の材料に添加して、蛍光透視法及びその他の撮像法において、偏向ガイドカテーテル300の遠位領域360を見えるようにする。遠位領域360の壁部厚さは、約0.0305〜0.0356cm(約0.012〜0.014インチ)である。第1の牽引ワイヤのアンカーバンド385aは遠位領域360の遠位端近傍に埋め込まれ、第2の牽引ワイヤのアンカーバンド385bは遠位領域360の近位端近傍、又は領域370の遠位端に埋め込まれる。アンカーバンドは、滑らかなライナー365と編組385との間に設置されるのが好ましいが、代替実施形態では、編組の上方に設置されてもよい。各アンカーバンドは304ステンレス鋼で製造され、各牽引ワイヤは、溶接、又は金属を接合するための当該技術分野において既知のその他の手段を用いて、その対応するアンカーバンドに取り付けられる。遠位領域360、並びに本体部分全体の内径は、内径約0.323cm(約0.127インチ)及び厚さ約0.005cm(約0.002インチ)の滑らかなライナー365、好ましくはPTFEによって画定される。遠位領域360の外径は、アンカーバンドの間で約0.437cm(約0.172インチ)、遠位バンドの位置で約0.447cm(約0.176インチ)である。1本につき上1本(1 over 1)、1本につき上2本下2本(1 over 2 under 2)、又は2本につき上2本(2 over 2)のパターンの、直径0.0064〜0.0076cm(0.0025〜0.003インチ)のワイヤの編組375を、近位領域390から遠位領域360までのカテーテルのポリマーの壁部に埋め込む。偏向ガイド300の遠位領域360の遠位端には、33.5%の25Dペバックス(Pebax)、6.4%の55Dペバックス(Pebax)、及び60%の次炭酸ビスマスで構成され、かつその遠位端に向かってわずかなテーパ形状を有する、押出形成された非外傷性先端362がある。非外傷性先端は任意であるが、患者の血管に挿入する間の組織の損傷を防止するために好ましい。
【0043】
中間遠位領域370は同種の高分子材料で構成されるが、より硬い領域を提供するために、35D〜55Dと高いジュロ硬度を有する。中間遠位領域370の長さは約2.8〜4.0センチメートルであり、遠位領域と同様に滑らかなライナー365とワイヤ編組375とを含む。中間遠位領域の壁部厚さは、同様に0.0305〜0.0356cm(0.012〜0.014インチ)であり、外径は約0.437cm(約0.172インチ)である。主部中間領域380は、0.422cm(0.166インチ)とわずかに小さな直径を有するが、他の領域と同様に、同じ滑らかなライナーと編組とを有する。この領域の主な違いは、更なる硬さを提供するために、使用する高分子材料が55D〜63Dと高ジュロ硬度であることである。主部中間領域の長さは約20〜28センチメートル、好ましくは20センチメートルである。近位領域390は、外径が直前の領域と同じであるという点で類似の組成を有する。この領域のジュロ硬度は、約72Dまで増加して更により高い硬さを提供し、この領域の長さは約73〜88センチメートル、好ましくは88センチメートルである。滑らかな層365及び編組375は同じである。
【0044】
近位領域390から本体部分350を通って第1及び第2のアンカーバンド385a/385bの位置まで、内径約0.0224cm(約0.0088インチ)の2つのワイヤ又は編組強化チューブ395a/395bが通っており、これらは、第1及び第2の牽引ワイヤをそれぞれ収容する。別の特性が所望である場合は、偏向ガイドカテーテルに様々な修正を加えることができる。2つの代わりに、1つの牽引ワイヤ、アンカーバンド、及び強化チューブを使用することができる。編組は、異なる寸法のワイヤ及び編組タイプに変更されてもよい。外側本体の高分子材料は、図10A〜図10Cに示されるように多様であり得る。図10Aでは、2つの異なるジュロ硬度を有する材料を交互に使用している。材料Aを互いに対向する2つの周辺部分で使用し、材料Bを2つの他の対向する周辺部分で使用する。所望の偏向特性に応じて、材料Aのジュロ硬度は材料Bのジュロ硬度より高くてもよく、逆もまた同様である。このような方法で2つの異なるジュロ硬度の材料を使用して、横剛性の要件を有して特定の方向に偏向するカテーテルの能力又は容易さを均衡させるという利点を提供する。図10Bでは、材料A及び材料Bの2つの周辺部分を使用して、特定の所望の偏向特性を提供する。図10Cでは、本体部分の周囲に沿った異なる位置に牽引ワイヤ327a及び327bを配置することと共に、2つの異なるジュロ硬度の材料を使用している。図10Cの構成では、偏向ガイドカテーテルの遠位端は、互いにほぼ垂直な2つの異なる平面に偏向する。異なる偏向平面を得るために、2つの異なる材料又はジュロ硬度タイプを外側本体の周囲に使用する必要はないことに留意すべきである。偏向平面は、牽引ワイヤルーメンの相対的配置によって主に決定される。
【0045】
偏向ガイドカテーテルは、偏向ガイドカテーテルの遠位端の位置及び配向(6自由度)を検知するための、並びに他の事前に捕捉された又はリアルタイムの画像と位置合わせされ得る、ないしは別の方法で偏向ガイドカテーテルの遠位端の位置を心臓のリアルタイムの表示マップ上に描くのに使用されてもよい位置情報を提供するための、バイオセンス・ウェブスター(Biosense Webster)によって製造されるもののような磁気ベースの位置センサを更に含んでもよい。バイオセンス・ウェブスター(Biosense Webster)により製造されるカルト(Carto)(登録商標)システムなどのシステムは、この目的に有用である。
【0046】
図12は、本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法に使用するひだ形成装置400の立面図である。ひだ形成装置400は、ハンドルアセンブリ410と、エンドエフェクタ520を備えるひだ形成アセンブリがその遠位端に取り付けられる細長いシャフト452を有する遠位アセンブリ450とで構成される。図13は、ハンドルアセンブリ410の内部構成部品の立面図である。ハンドルアセンブリ410は、ハンドルアセンブリの内部構成部品を収容するように構成された右ハンドルシェル412と左ハンドルシェル414の、2つのポリカーボネートシェル部分で構成される。ハンドルアセンブリ410は、細長いシャフト452の遠位部分の中に格納されたリテーナを前進させるクランクアセンブリ420をその内部に備える。発射アセンブリ420は、カウンターギヤ421と、駆動ギヤアセンブリ422と、アイドルギヤ423と、クラウンギヤ424とで構成される。発射アセンブリ420は、図12に示される発射ノブ430に結合され、発射ノブ430は左ハンドルシェル414に回転自在に結合される。図示されていないが、ハンドルアセンブリ410の反対側に第2の発射ノブを配置して、ユーザーがどちらか一方のノブを選択的に回転できるようにすることができる。どちらの発射ノブも、ノブが反対方向に回転するのを防止する反転防止板バネ(図示せず)と、トリガが完全に閉じる又は噛み合うまでノブが回転するのを防止するトリガロックアウトバネ(図示せず)とを更に含む。引き続き図13を参照すると、発射アセンブリ420のギヤ421、422、423、及び424は、発射ノブ430の回転に対応して回転するように構成される。ギヤは互いに連結して、ピニオンアセンブリ437及び駆動軸436の対応した回転をもたらす。駆動軸436は、発射制御ワイヤ490の近位端に嵌合される。エンドキャップ460は、周囲に分散した複数の隆起部を有して、ユーザーが把持するのを助ける。
【0047】
図13において、トリガ416は、枢動ピン417によってハンドルアセンブリ410内に枢動可能に実装され、かつその中に形成される親指グリップを有する遠位部分と、近位エクステンションアーム418とを含む。トリガ416はまた、ハンドルアセンブリの中のラッチ受部419bに受け入れられて、トリガを閉鎖位置に係止するように構成されたラッチ419aを含む。エクステンションアーム418は、ハウジングアセンブリ410内の近位位置と遠位位置との間を移動するシャトルアセンブリ440に結合される。シャトルアセンブリ440は様々な構成を有することができ、また種々の特徴、例えばオーバーロード機構を含むことができる。シャトルアセンブリ440の詳細な構成は、米国特許公開公報第2005/0277954号により詳細に記載されており、当該特許は参照により本明細書に組み込まれる。バネピン446、力制限バネ442、バネキャップ444a及び444bなどの、シャトルアセンブリ440の内部部品のいくつかが、図14A及び図14Bに示されている。図13に示されるように、シャトルアセンブリ440は、エンドエフェクタ制御ワイヤ510の近位部分に結合され、ワイヤは細長いシャフト452を通って延びる。図14Dに示されるように、エンドエフェクタ制御ワイヤ510の遠位端は、ワイヤコネクタ542に(好ましくは溶接によって)嵌合される。ワイヤコネクタ542は、エンドエフェクタ520の近位、即ち、U字形金具522並びにジョー524a及び524bに、図14Gに示されるように位置付けられる。ワイヤコネクタ542はまた、ワイヤコネクタ542からナット550を通過してジョー524a及び524bの近位端の穴部でそれぞれ終端する、2つの平行な引張りワイヤ544a及び544bに溶接される。こうして、ワイヤコネクタ542は、ジョーの開閉を制御するために、エンドエフェクタ制御ワイヤ510の力を2つの力に分割する。例えば、2つの移動可能なジョーではなく、1つの固定されたジョーと1つの移動可能なジョーを有するのが望ましいような場合は、他の構造が可能である。また、図14Hに示されるように、引張りワイヤ544a及び544bをワイヤコネクタ542に通過させ、かつ各引張りワイヤ544a及び544bに複数のフェルール549をそれぞれ設置して、遠位ジョー524a及び524bのいくつかの受動的関節を有することも可能である。複数のフェルール549のそれぞれは各々、ワイヤコネクタを通って移動するように、各ワイヤの近位端のワイヤコネクタ542の近位側及び遠位側に配置されて、蛇行した解剖学的通路を通した改善された操作性のために、装置の遠位先端に柔軟性を提供する。遠位ジョー524a及び524bは、それぞれ枢着部リボット523a及び523bを中心にして回転する。
【0048】
発射制御ワイヤ490は、細長いシャフト452を通って、及びワイヤコネクタ542の中に形成された穴を通って延び、かつナット550の中のネジ穴にネジ式に嵌合される。発射制御ワイヤ490の遠位端は、リテーナ押しスリーブ556の中に据え付けられたリテーナ押し部554の中に延在し、これらは共に図14Eに示されている。広くは、発射ノブ430の回転は、発射制御ワイヤ490を回転させるのに有効である。発射制御ワイヤ490は、細長いシャフト452の近位部分と遠位部分との間に固定されたナット550にネジ式に嵌合され、ナット550のネジ穴は、発射制御ワイヤ490を細長いシャフト452を通して遠位側に移動させて、発射制御ワイヤの遠位端に固定して取り付けられたリテーナ押し部554を回転させる。リテーナ押し部554は、細長いシャフト452の遠位部分の中のガレージ532内に格納された螺旋形リテーナ500の内部に位置付けられる。リテーナ押し部554は、螺旋形リテーナの内部に嵌合するように構成され、かつリテーナがリテーナ押し部554と同じ方向に回転するように、螺旋形リテーナの近位端と接触する部分を有する。リテーナ押し部554の回転運動は、螺旋形リテーナ550を、シャフト452を通して回転させて、最も遠位のリテーナを、エンドエフェクタ520のジョー524a及び524bの中に位置付ける。発射制御ワイヤ490上のネジは、螺旋形リテーナと同じピッチであるのが好ましい。細長いシャフトを通して複数のリテーナを前進させ、リテーナをジョー内に位置付けるために、様々なその他の技術を用いることができることは、当業者には理解されよう。別の可能な実施形態は、発射制御ワイヤ及びナット550からネジを除去する。螺着されていない発射制御ワイヤを回転させると、リテーナ押し部が回転し、螺旋形リテーナは発射制御ワイヤにかかる付勢力によって回転してひだ形成装置のジョーの中の組織の中に入っていく。
【0049】
細長いシャフト452の近位端には、金属、好ましくは真鍮で作製されたコイルコネクタ512があり、細長いシャフト452の近位部452aをハンドルアセンブリに連結するための手段として使用される。二重ルーメン内部シース560は、エンドエフェクタ制御ワイヤ510及び発射制御ワイヤ490用のルーメンを有する。コイルコネクタ512を細長いシャフト452に連結するためにフィラーチューブコネクタ562が使用され、フィラーチューブコネクタ562は、シアノアクリレートなどの接着糊を使用してコイルコネクタ512及び細長いシャフト452に接着される。細長いシャフト452は、近位シャフト部分452aと遠位シャフト部分452bとに分かれる。近位シャフト部分452aは好ましくはニチノールであり、かつダブテールレーザーパターンを有する。遠位シャフト部分452bは好ましくはステンレス鋼であり、かつシャフト壁部を貫通して切断された同様のダブテールパターンを有する。図16Aに示されるような螺旋カットなどのその他のパターンを用いることもできる。図16Bは、ひだ形成装置の別のバリエーションであり、近位シャフト部分は上記のものと同様であるが、ナットは有意により遠位側に設置されており、ダブテールパターンを備えるステンレス鋼遠位シャフト部分は、リボンコイルを形成する螺旋カットで置き換えられている。図16Cは、ナットの配置、並びに上記の図14A〜図14Fに関して記載された近位及び遠位シャフト部分のダブテールパターンを描いている。図16Dは、上述した代替実施形態の、受動的関節動作型のジョーを描いている。
【0050】
図14I及び図14Jは、内部螺旋形リテーナを有するひだ形成装置の遠位部分の斜視図である。図4Iは、螺旋形リテーナ500が患者の組織の中に前進した後の、ジョー524a及び524bが開位置にあるひだ形成装置を示している。図14Jは、螺旋形リテーナが前進位置にある状態の、ジョー524a及び524bが閉位置にあるひだ形成装置を示している。
【0051】
図15Aは、本発明による螺旋形リテーナ500の斜視図である。螺旋形リテーナ500は、ステンレス鋼、又はMP35N、プラチナ、ニチノール、及びコバルトクロムなどの他の生体適合性の材料、又はこれらの合金で構成される。螺旋形のリテーナは、ポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)で製造されたもののような高分子材料で製造されてもよい。
【0052】
螺旋形リテーナは、様々なピッチ又は角度の螺旋のうちの1つを有してよい。リテーナを組織の中に埋め込むのに必要な回転数及び力を増加させる又は減少させるために、この角度を変更することができる。螺旋形リテーナは、ジョーンズ・スプリング社(Jones Spring Co.)の在庫番号157−Aのような、マンドレルの周囲に巻き付けられた、又は選択された材料で製造された管状物から切断されたワイヤで製造することができる。螺旋形リテーナを製造するのに使用するワイヤの厚さ及びゲージは様々であってよいが、僧帽弁に使用する場合は、好ましくは0.0127cm〜0.102cm(0.005インチ〜0.040インチ)である。
【0053】
螺旋形リテーナの半径は、保持することを望む組織の量、及び内部送達モード又は外部送達モードのいずれで使用されるかに応じて異なってよい。僧帽弁用途では、螺旋形リテーナの直径は、約0.127cm(約0.050インチ)〜0.457cm(0.180インチ)でなければならない。螺旋形リテーナの遠位先端504は、保持される組織の貫通を容易にするために、研削などの様々な方法でとがらせてもよい。螺旋形リテーナはまた、処置の間に螺旋形リテーナを蛍光透視的に位置付ける及び/又は見るのを容易にするために、タンタルマイクロコイルなどの1つ以上の放射線不透過マーカーを含んでもよく、又は1つ以上の放射線不透過マーカーで覆われてもよい。
【0054】
好ましくは、螺旋形リテーナは、本出願に記載のひだ形成装置の遠位端で送達される。螺旋形リテーナは、ひだ形成装置のジョーが僧帽弁輪に組織のひだを形成した後に、ひだ形成装置の軸に沿って平行移動される。
【0055】
螺旋形リテーナは、血栓症の可能性を軽減する目的で、ヘパリンなどの1つ以上の薬理活性剤でコーティングされることができる。
【0056】
螺旋形リテーナが埋め込まれた組織から螺旋形リテーナが「後退して出る」のを防止するために、螺旋形リテーナは、その近位端又は遠位端に、又は図15Aにかえし502として示されるように、1つ以上のかえしを有してもよい。かえしはまた、図15Bに示されるように螺旋形リテーナの上に配置されてもよく、図15bでは、かえしは螺旋形リテーナ「ワイヤ」自体の一部を形成している。図15Bは、螺旋形リテーナを形成するのに使用されるワイヤの、平坦な形式の断面図を示す。これらのかえしは、螺旋形リテーナを形成する前に、ワイヤを弱化(wither)してスエージ加工することにより、又はワイヤの中に形状を形成することにより形成することができ、あるいは、スエージ加工又は接着剤によって螺旋形リテーナに取り付けられる別個の要素であることができる。
【0057】
図17は、リテーナ送達カテーテル600を、ひだ形成装置400及び螺旋形リテーナ500と共に示している。リテーナ送達カテーテルを使用する場合、ひだ形成装置400は、内部リテーナを格納する(sotring)及び送達するのに使用される内部構成要素が取り除かれるように変更されてもよい。これにより、ひだ形成装置400の製造がより単純かつ低価格になる。リテーナ送達カテーテル600は、リテーナ送達カテーテルを細長いシャフト452に解放可能なように固定するのに使用されるツオヒー・ボースト(Tuohy-Borst)型の弁を含む。使用中、弁610は開いて、リテーナ送達カテーテルのひだ形成装置に対する長手方向平行移動、並びに螺旋形リテーナを組織内に送達させるためのリテーナ送達カテーテルの回転を可能にする。リテーナ送達カテーテルはシャフト620を更に含み、シャフト620は、ニチノール、ステンレス鋼、又はその他の生体適合性金属で製造され、かつシャフト620の壁部に切り込まれて、柔軟性及びトルク能力を提供する台形パターンを有する。リテーナ送達カテーテル620の最終要素は、螺旋形リテーナ500の近位端と解放可能なように噛み合うように設計されたアダプタ625である。アダプタ625の1つの可能な構成が図18に示されている。溶接、ろう付け、接着剤、又はその他の手段によって、複数の弓状の小管626が、シャフト620の遠位端に固定される。1つの弓状の小管626の一方の末端部626aは、螺旋形リテーナ500の近位先端がそこを通過しないようにする閉じた末端部を有する。したがって、シャフト625の反時計回り方向の回転は、螺旋形リテーナを回転させる。シャフト625の時計回り方向の回転は、螺旋形リテーナを弓状の小管626から抜け出させて、リテーナを解放する。
【0058】
あるいは、図19Aに示されるようなアダプタ508を使用して、かえし付き管状リテーナ500を、リテーナ送達カテーテル600の遠位端に一時的に取り付けることができる。アダプタ508は、リテーナ送達カテーテル600の遠位端に取り外し可能に固定されるように構成された螺旋形リテーナ500の近位端に取り付けられる。アダプタは、リテーナにレーザー溶接されてもよく、ないしは別の方法でリテーナの中に形成されてもよい。2つのアダプタが解放可能なように取り付けられることができるように、図19Bに示されるように別の嵌合アダプタ625がリテーナ送達カテーテルに固定される。アダプタの幾何学的なカットを使用して、螺旋形リテーナは、リテーナ送達カテーテルに解放可能なように取り付けられることができるが、それでもなお回転トルク及び/又は軸方向力を伝達する能力を提供することができる。あるいは、螺旋形の管状リテーナは、リテーナが目的組織の中に埋め込まれた後に壊されることが意図される場所に、壊れやすい一時的な仮付け溶接を有してもよい。
【0059】
本明細書に記載されている装置は、1回の使用の後に廃棄されるように設計することができ、又はこれらは複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、装置は少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整されることができる。再調整には、装置を分解すること、続いて特定のピースを洗浄する又は取り替えること、及びそれに続いて再び組み立てることの任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解されることができ、装置の任意の数の特定ピース又は部品が、任意の組み合わせにより選択的に取り替えられたり取り除かれたりすることができる。特定の部品が洗浄及び/又は交換されると、続く使用のために装置を修繕施設において、又は外科手術の直前に外科チームによって組み立て直すことができる。当業者には、装置の再調整に、解体、洗浄及び/又は交換、並びに再組立のための様々な技術を使用できることが理解されるであろう。そのような技術の利用、及びその結果として得られる再調整された装置はすべて、本願の範囲に含まれる。
【0060】
前述の説明は、本発明の現在好ましい実施形態を参照して提示されてきた。本発明が属する分野および技術に精通した者は、記載した構造の代替及び変更が、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく実施できることを理解するであろう。
【0061】
したがって、上述の記載は、記述され以下の添付図に説明された厳密な構造のみに関係付けられるものとして読解されるべきではなく、むしろ、最も完全で公正な範囲を有するとされる以下の特許請求の範囲と一致し、かつそれらを補助するものとして読解されるべきである。
【0062】
〔実施の態様〕
(1) 患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
を含み、
前記ひだ形成装置が、前記対向するジョーによって形成された組織内のひだを保持するための少なくとも1つの螺旋形リテーナを含む、システム。
(2) 前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記横断カテーテル及び前記偏向ガイドカテーテルを、前記患者の脈管構造を通して前記左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含む、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記ひだ形成装置が、金属で構成される細長い管状本体であって、前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記パターンがダブテールパターンである、実施態様4に記載のシステム。
(6) 前記パターンが螺旋形のパターンである、実施態様4に記載のシステム。
(7) 前記ひだ形成装置の前記細長い管状本体の近位区域がニチノールで構成され、前記細長い管状本体の遠位区域がステンレス鋼で構成される、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記ひだ形成装置が、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたリテーナ押し部を更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記ひだ形成装置が、発射制御ワイヤに連結された発射ノブを更に含み、前記発射制御ワイヤは、前記発射ノブが第1の方向に回転したときに回転して、前記リテーナ押し部及び前記螺旋形リテーナを前記ひだ形成された組織の中に回転させる、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記発射ノブの第2の方向への回転により、前記アダプタを前記螺旋形リテーナから解放させる、実施態様9に記載のシステム。
【0063】
(11) 前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記螺旋形リテーナが、周囲に沿って複数の隆起部を有するワイヤで構成される、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、実施態様1に記載のシステム。
(14) 前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、実施態様1に記載のシステム。
(16) 前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、実施態様1に記載のシステム。
(17) 前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、実施態様1に記載のシステム。
(18) 患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
近位端と遠位端とを有し、かつ前記遠位端に配置されて前記ひだ形成装置の前記対向する一組のジョーによって形成された組織内のひだを保持する螺旋形リテーナを有する、リテーナ送達カテーテルと、
を含む、システム。
(19) 前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記リテーナ送達カテーテルが、金属で構成される細長い管状本体であって、前記細長い管状本体の少なくとも一部分に沿って前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、実施態様18に記載のシステム。
【0064】
(21) 前記パターンが台形パターンである、実施態様20に記載のシステム。
(22) 前記リテーナ送達カテーテルの前記細長い管状本体が、ニチノール又はステンレス鋼で構成される、実施態様20に記載のシステム。
(23) 前記リテーナ送達カテーテルが、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたアダプタを更に含む、実施態様18に記載のシステム。
(24) 前記アダプタは、前記リテーナ送達カテーテルが第1の方向に回転すると前記螺旋形リテーナと噛み合い、第2の方向に回転すると前記螺旋形リテーナを解放する、実施態様23に記載のシステム。
(25) 前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、実施態様18に記載のシステム。
(26) 前記螺旋形リテーナが、周囲に沿った複数の隆起部を有するワイヤで構成される、実施態様18に記載のシステム。
(27) 前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、実施態様18に記載のシステム。
(28) 前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、実施態様27に記載のシステム。
(29) 前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、実施態様18に記載のシステム。
(30) 前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、実施態様18に記載のシステム。
【0065】
(31) 前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、実施態様18に記載のシステム。
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、患者の脈管構造及び内臓器官を治療するための装置及び方法に関する。特に、本発明は、ひだ形成された組織の中に螺旋状の締結具を挿入するひだ形成装置を使用して、患者の心臓の僧帽弁逆流を処置するためのシステム及び方法を目的とする。
【0002】
〔発明の背景〕
多種多様な内科的疾患を低侵襲的方法で治療するために、カテーテルベースの装置が使用される。プラークにより狭窄した静脈及び動脈を拡張するために使用される血管形成術用バルーンを設置しかつ拡張するために、カテーテルが使用される。そのような血管の再狭窄を防止するために、ステントと呼ばれる小さなスキャフォールドが、カテーテルベースのシステムを使用して脈管構造の中に導入されてきた。低侵襲的方法で処置するために使用され得るカテーテルベースの装置及びシステムの問題の1つは僧帽弁逆流であるが、このような方法において僧帽弁逆流を処置するための商業的に成功した装置は現在のところ存在しない。
【0003】
僧帽弁逆流は、僧帽弁の弁尖の不適切な整列により弁の閉鎖が不完全になることに起因する、左心室から左心房の中への血液の逆流である。不適切な閉鎖により僧帽弁の前尖と後尖との間に間隙が形成され、血液が左心室から左心房へと逆行したやり方で僧帽弁を貫流する導管がもたらされる。この間隙は先天性欠損症である場合があり、又は疾病、即ち、虚血性又は特発性心筋症及び/若しくは僧帽弁器官の構成要素の内因性変性疾患によって引き起こされる場合がある。疾患の一種であるうっ血性心不全(CHF)は、心臓を拡張させる。拡張した心臓では、左心室の壁は膨張又は拡張され、これにより乳頭筋が下方及び/又は外側に移動し、その結果腱索が拘束(tethering)され、続いて弁尖が拘束される/引っ張られる。また、CHFでは、僧帽弁輪が拡張される。拡張した輪及び弁尖の拘束の組み合わせが原因で、弁尖が適切に閉鎖せず、それにより僧帽弁に問題となる間隙が生じる。結果として起こる僧帽弁を通過する逆流は心臓の効率を低下させ、その結果心臓は、同量の血流を生み出すために、より速く及び/又はより強く鼓動することが必要となる。僧帽弁逆流は一部の患者においては無症状であり得るが、他の患者においては、血流の減少及びそれに伴う心臓への負担は、不整脈、心臓発作、及び場合によっては死をもたらす可能性がある。
【0004】
僧帽弁逆流の現在の好ましい治療法は、外科医にとって難しく、かつ患者にとって危険な場合がある心臓切開手術及び/又は内視鏡技術を用いる必要がある。1つの治療方法において、損傷を受けた又は欠陥のある僧帽弁を交換するのに、ブタ心臓弁又は機械弁を使用する。このような治療では、移植を達成するために心臓切開手術を行う必要がある。このような異種弁を人間に使用することができるが、多くの場合早期に摩耗してしまい、摩耗した弁を新たな異種弁又は機械弁と交換するために新たな心臓切開手術を必要とする。欠陥のある僧帽弁の代替品として使用することもできる機械弁が開発されてきたが、機械弁の移植は通常、弁の周囲に危険な塞栓症の原因となり得る凝血塊が発現するのを防止するために、長期にわたる抗凝固療法を必要とする。長期にわたる抗凝血薬療法は、望ましくない内出血及び外出血、並びに場合によっては脳卒中などの他の問題を引き起こす。
【0005】
機能性僧帽弁逆流を治療するための別の心臓切開外科手術は、輪状形成術である。輪状形成術では、一般に「D」字形の輪状形成リングを僧帽弁輪に埋め込んで、伸張した僧帽弁輪の寸法、何よりも中隔側面寸法を縮小し、かつ弁の閉鎖(又はコアプテーション)を改善して、血液の逆流を低減する。外科医は、僧帽弁の心房側で僧帽弁に輪状形成リングを外科的に取り付ける、即ち、縫合する。輪状形成リングは、僧帽弁の上部(即ち、心房側)の輪に縫合される。埋め込まれた時点で、組織は、通常、輪状形成リングの上に成長し、輪状形成リングと僧帽弁との間の接触線は、僧帽弁を出現させ、かつ僧帽弁の弁尖のコアプテーションを回復して正常な僧帽弁として機能させるのを本質的に可能とするが、効果の持続性は様々であり、手術後6カ月以内に衰える場合がある。輪状形成リングを受ける患者は抗凝固療法を受ける場合があるが、患者は、例えば、組織が輪状形成リングの上に成長するまでのおよそ数週間療法を受けるだけなので、この療法は広範囲ではない。
【0006】
変性僧帽弁逆流の処置に用いられる第2の心臓切開外科手術は、僧帽弁のエッジ間縫合(edge-to-edge suture)を用いるアルフィエーリ縫合術(Alfieri stitch procedure)である。エッジ間縫合を使用して、僧帽弁の前尖と後尖との間に画定された間隙のおよそ中央の領域を縫合する。縫合が適所に行われると、縫い目を引き寄せて、前尖を後尖に対して保持する縫合線を形成する。前尖と後尖との間の間隙の寸法を小さくすることにより、僧帽弁を通過する漏れの量を実質的に低減させることができる。輪状形成リングを追加せずに行われるアルフィエーリ縫合術に関しては、耐久性が懸念事項であった。加えて、エッジ間縫合術の使用は、主な異常、つまり弁尖間の間隙が中央に位置している特定の変性病変にのみ必要とされる。
【0007】
僧帽弁逆流の別の処置方法は、心室補助装置の埋め込みである。このような装置は高価であり、埋め込むのが難しく、かつ患者が抗凝固療法を無期限に受ける必要がある。抗凝固療法を長期にわたって用いることにより、不必要な出血及び脳卒中を引き起こす場合がある。したがって、そのような心室補助装置は、恐らくは当該装置を使用しないと生きられない患者のみにおける使用に必要とされ、心臓移植手術の対象者である患者を生存させ続けるために使用される。左心室補助装置は、最終的な治療というよりむしろ「架橋」治療である。
【0008】
特定の状況下ではこのような侵襲的な外科治療が僧帽弁の処置において効果的であることが示されてきた一方で、侵襲的な外科治療は、多くの場合有意な不利な点を有する。患者が心臓切開手術を受けるときはいつでも、感染の危険性がある。胸骨を開いて心肺バイパス装置を使用することは、短期及び長期の両方にわたる神経学的欠損を有意に発生させる原因となることも示されてきた。
【0009】
僧帽弁逆流を処置するためのいくつかの低侵襲的処置が開発されているが、現在までのところ、商業的に成功した標準的方法になったものはない。米国特許第6,619,291号(フブラカ(Hvlaka)ら)は、輪状形成を実施する低侵襲的方法を開示しており、当該方法はインプラントを左心室に挿入すること、及び左心室の中のインプラントを僧帽弁の実質的に下方に配向させることを含む。インプラントと僧帽弁の周りの組織とを連結させ、僧帽弁に関連したアーク長を実質的に減ずるために、インプラントに張力を加える。
【0010】
米国特許第6,718,985号及び同第7,037,334号(フブラカ(Hvalaka)ら)では、互いに螺着されて僧帽弁を再形成するTバーによって、僧帽弁の近くの一連のひだが形成される。米国特許第7,166,127号では、僧帽弁逆流を処置するためのカテーテルベースのシステムは、リテーナに結合された可撓性引張部材によって僧帽弁の輪に固定されるように構成されたリテーナを使用する。カテーテルを介して配置可能なクリンプ装置は、可撓性引張部材が互いに向かって引き寄せられて輪の円周長さを減少させた後に、可撓性引張部材の上にクリンプを押し付ける。このシステムでは、初期効果を達成するために必要な永久インプラントの数、及び効果の成功を判定することができるようになる以前のこれらインプラントに対する関与が、深刻な不利益である。
【0011】
米国特許出願第2007/0093857号(ロジャーズ(Rogers)ら)は、低侵襲的処置を用いて僧帽弁逆流を処置するための装置及び方法を記載しており、その中では、患者の僧帽弁に隣接してひだが形成され、ひだを保持するためにリテーナが設置される。
【0012】
米国特許出願第2007/0032797号は、胃壁の中に設置するための螺旋状の形をしたアンカーを有する、胃の寸法を減少させるための装置を開示している。
【0013】
米国特許出願第2007/0025737号(メサリー(Messerly)ら)は、概ね螺旋形状を有する外科手術用リテーナ、及び螺旋形のリテーナがその中に取り付けられ得る組織を把持するためのジョーを有する装置を開示している。
【0014】
米国特許出願第2007/0055335号は、心臓用途で使用するための螺旋状の形をした遠位先端を有する電極プローブを開示している。
【0015】
低侵襲的処置において能率的かつ効果的に使用することができ、かつ処置が所望の効果がもたらしたことを、装置を患者から除去する前に医師が知ることができ、それにより処置を繰り返し行う必要性及び費用を低減する、僧帽弁逆流を処置するための装置及び方法への必要性が残されている。このような処置は、不可逆的行為を取る前に、僧帽弁への効果を処置の間に変更する能力を医師に提供するべきである。
【0016】
〔発明の概要〕
本発明は、僧帽弁逆流を処置するためのシステム及び方法を提供する。当該方法は、好ましくは、大動脈弁を横断する大腿動脈からの逆行アプローチを用いる。好ましくは「J」又はピグテール形状を備える円形横断カテーテル(CC)を利用した標準的な大腿動脈からの逆行アプローチを用いて、左心室へのアクセスが大動脈弁を通して達成される。次に、偏向ガイドカテーテルを、横断カテーテルを越えて左心室の中へ送る。偏向可能なカテーテルの遠位端が左心室の中にあるときに、横断カテーテルを除去する。偏向可能なガイドは、遠位部分が左心室の後壁に沿って位置した状態で乳頭筋の間に位置付けられ、その先端が後部僧帽弁輪の下面を指すように位置付けられるのが好ましいが、そうである必要はない。次に、ひだ形成装置を、偏向可能なカテーテルを通して導入し、偏向可能なカテーテルの遠位端の外に前進させ、そして僧帽弁の下面に向け、より好ましくは弁下部の溝の中に向け、輪において又は輪の近傍で僧帽弁の組織を把持かつひだ形成できるように位置付ける。
【0017】
僧帽弁輪の試験的なひだを形成し、ひだの適切性を、TEE、ICE、TTE、又は蛍光透視法などの撮像手段を用いて(造影剤注入を用いて又は用いずに)調べる。ひだが適切であると判定されると、続いて、組織をひだ形成された状態に保持するためにリテーナがひだに適用される。ひだが満足のいくものでない場合、リテーナは適用せず、ひだ形成装置のジョーを解放し、ひだ形成装置を再位置付けして僧帽弁の輪において又は輪の近傍で異なる組織標的をひだ形成する。リテーナを配置する前に、このような「試験的な」ひだ形成を何度か繰り返してもよい。
【0018】
単一ひだ及びリテーナが、血液の逆流を是正するように十分に僧帽弁を再形成しない場合は、最初の偏向可能なガイドを再位置付けし、リテーナを有する第2のひだ形成装置を送達ガイドの中に導入及び位置付けし、同じやり方で使用する。あるいは、処置の間に必要に応じて、ひだ形成装置の除去及び再導入を必要とせずに、複数リテーナひだ形成装置を使用して第2又は第3のリテーナを提供することができる。僧帽弁の環状形状の満足のいく変化、及び付随する僧帽弁逆流の減少が達成された時点で、ひだ形成装置及び偏向可能なガイドを完全に引き抜き、従来の閉鎖技術を用いて大腿動脈アクセス部位を閉鎖する。
【0019】
4つの構成部品が、経皮直接的弁輪縫縮術のためのシステムを構成する。第1は、好ましくは「J」又はピグテール形状を備える、脱出可能な又は先端が曲がった横断カテーテルである。これはガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで使用されてもよい。いずれの場合も、横断カテーテルは、中に横断カテーテルが初めにはめ込まれている又は積み重ねられている第2の構成部品である偏向ガイドカテーテルと共に、積み重ね又ははめ込み(telescoped)構成で挿入される。偏向ガイドカテーテルは、ひだ形成装置を、輪において又は輪の近傍で僧帽弁の下面、好ましくは僧帽弁の弁下部領域の適切な位置に誘導するための手段を提供するのに使用される。システムの第3の構成部品は、少なくとも一方が、開くように操作されることができる対向部材を有するエンドエフェクタを有するひだ形成装置である。ひだ形成装置は組織を把持するために使用され、また、必要に応じて、組織をひだ形成された形状に保持するための少なくとも1つのリテーナを含む。バネ状の螺旋形、即ち、コルクスクリューの形状をしたインプラントは、組織に使用されて、ひだ形成装置のエンドエフェクタによって組織内に形成されたひだの保持部材として機能することを目的としている。代替実施形態において、螺旋形リテーナは、ひだ形成装置の上に設置されかつ一方向解放機構を有する送達カテーテルの末端部に取り付けられて、心臓の組織に経皮的に送達される。外部送達機構を使用することにより、ひだ形成装置のジョーを通して内部送達されるリテーナよりもより多くの組織を保持する、より大きな螺旋形リテーナが可能となる。
【0020】
現行の組織リテーナは、それらがひだ形成する又は保持する組織の平面の外部に輪郭を有するクリップである。螺旋形リテーナは、組織の中に完全に入り込み、リテーナが露出したままとなる部位はない。心臓の中では、これは、リテーナの周囲に血塊が発生する可能性を軽減させる。僧帽弁において又は僧帽弁の近傍では、これは、弁尖運動との干渉を軽減する、又は経時的に弁尖を徐々に破壊する可能性を軽減するという利点も提供する。
【0021】
本発明は、患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムを目的とし、本システムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、を含み、ひだ形成装置は、組織内のひだを保持するための少なくとも1つのリテーナを含む。任意に、本システムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを含む。横断カテーテルは、J字形状又はピグテール形状であってよい。本システムは、横断カテーテルを患者の脈管構造を通して左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含んでもよい。リテーナは、好ましくは「C」字形状であり、末端部が中間部材で連結された2つの突起を含む。
【0022】
本発明は、患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムであり、本システムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、対向するジョーによって形成された組織内のひだを保持するための少なくとも1つの螺旋形リテーナを有する、患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、を含む。本システムはまた、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを含んでもよい。横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルを、患者の脈管構造を通して左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含んでもよい。
【0023】
一実施形態において、ひだ形成装置は、螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたリテーナ押し部を更に含む。発射制御ワイヤに連結された発射ノブは、発射ノブが第1の方向に回転したときに回転して、リテーナ押し部及び螺旋形リテーナをひだ形成された組織の中に回転させる。発射ノブが第2の方向に回転すると、アダプタは螺旋形リテーナから解放される。螺旋形リテーナは、この螺旋形リテーナの上に配置されてひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえし、又はワイヤの周囲に沿ったワイヤから形成される複数の隆起部を含んでもよい。
【0024】
別の実施形態では、患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムは、大動脈弁を通して患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、近位端と遠位端とを有し、かつ遠位端に配置されてひだ形成装置の対向する一組のジョーによって形成された組織内のひだを保持する螺旋形リテーナを有する、リテーナ送達カテーテルと、を含む。リテーナ送達カテーテルは、金属で構成される細長い管状本体であって、細長い管状本体の少なくとも一部分に沿って金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有するのが好ましく、また螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたアダプタを含んでもよい。アダプタは、リテーナ送達カテーテルが第1の方向に回転すると螺旋形リテーナと噛み合い、第2の方向に回転すると螺旋形リテーナを解放する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法を説明するフローチャート。
【図1B】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法を説明するフローチャート。
【図2A】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2B】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2C】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2D】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2E】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2F】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2G】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図2H】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法の様々な工程の段階。
【図3】本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法におけるひだ領域。
【図4】本発明に従って僧帽弁逆流を処置するのに使用する横断カテーテルの斜視図。
【図5】図4の横断カテーテルの本体の一部分の切り欠き図。
【図6】本発明に従って僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの立面図。
【図7A】図6の偏向ガイドカテーテルのハンドルの構成部品の分解図。
【図7B】図6の偏向ガイドカテーテルのハンドルの構成部品の斜視図。
【図8】図6の偏向ガイドカテーテルの本体部分の立面図。
【図9A】図8の偏向ガイドカテーテルの本体部分の線Aで切り取った断面図。
【図9B】図8の偏向ガイドカテーテルの本体部分の線Bで切り取った断面図。
【図10A】僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの他の実施形態の本体部分の斜視図。
【図10B】僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの他の実施形態の本体部分の斜視図。
【図10C】僧帽弁逆流を処置するのに使用する偏向ガイドカテーテルの他の実施形態の本体部分の斜視図。
【図11】本発明による偏向ガイドカテーテルで使用されるハンドル及び内部構成部品の別の実施形態の分解斜視図。
【図12】本発明に従って僧帽弁逆流を処置するのに使用するひだ形成装置の立面図。
【図13】内部構成部品を露出するために一部分が取り除かれた、図12のひだ形成装置の立面図。
【図14A】図12及び図13のひだ形成装置の、シャトルアセンブリから遠位端までの立面図。
【図14B】図14Aのひだ形成装置の一部分の、線A−Aで切り取った横断面図。
【図14C】図14Bのひだ形成装置の一部分の断面図の近位端区域Dの拡大図。
【図14D】図14Bのひだ形成装置の一部分の断面図の遠位区域Cの拡大図。
【図14E】図14Bのひだ形成装置の一部分の断面図の遠位先端区域Bの拡大図。
【図14F】図14Aのひだ形成装置の遠位先端の拡大平面図。
【図14G】エンドエフェクタ制御ワイヤと遠位牽引ワイヤとの結合を描いた詳細な斜視図。
【図14H】受動的関節を有するひだ形成装置の実施形態における、エンドエフェクタ制御ワイヤと遠位牽引ワイヤとの結合を描いた詳細な斜視図。
【図14I】螺旋形リテーナが配置された状態で開位置にある、図14Aのひだ形成装置の遠位先端の斜視図。
【図14J】螺旋形リテーナが配置された状態で閉位置にある、図14Aのひだ形成装置の遠位先端の斜視図。
【図15A】本発明による僧帽弁逆流の処置に使用するひだ形成装置で使用される螺旋形リテーナの斜視図。
【図15B】本発明によるひだ形成装置で使用する螺旋形リテーナで使用されるワイヤの断面図。
【図16A】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図16B】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図16C】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図16D】本発明によるひだ形成装置の様々な実施形態の遠位端の立面図。
【図17】本発明の方法及びシステムで使用されるリテーナ送達カテーテルの立面図。
【図18】図17のリテーナ送達カテーテルの遠位端の立面図。
【図19A】リテーナ送達カテーテルに解放可能に連結するためのアダプタを有する螺旋形リテーナの立面図。
【図19B】リテーナ送達カテーテルに解放可能なように取り付けられた図19Aの螺旋形リテーナの立面図。
【0026】
〔発明の詳細な説明〕
図1は、本発明に従って、図2Aに示されるような心臓の僧帽弁に直接的弁輪縫縮術を施す方法を示すフローチャートである。工程100では、大腿動脈にアクセスするための、標準的な方法を用いた穿刺で処置が開始する。工程102では、医師又はその他の施術者は、標準的な方法を用いて、カテーテルシース導入器(CSI)を大腿動脈アクセスポイントの中に設置する。任意の既知のCSIをこの処置で用いることができるが、好ましい寸法は約4.46mm(約14フレンチ)である。工程104では、好ましくは脱出可能な又は曲がった先端を有する横断カテーテル、及び偏向ガイドカテーテルを、「積み重ね」形態でCSIを通して共に挿入する。横断カテーテルの使用が好ましい方法であるが、別の方法としては、偏向ガイドカテーテルを横断カテーテルなしにCSIを通して挿入する。横断カテーテルは、本明細書では、以下の図4及び図5に関してより詳細に説明がなされ、偏向ガイドカテーテルは、本明細書では、図6〜図11に関してより詳細に説明がなされる。積み重ねられた横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルは、工程106で、患者の動脈系を通して患者の大動脈を横断して逆行式に前進する。工程108では、大動脈弁(AV)は横断カテーテルと交差し、横断カテーテルは、図2Bに示されるように、左心室(LV)の中に前進する。図2Cに示されるように、工程110では、偏向ガイドカテーテルが、横断カテーテルを越えて大動脈弁を通って左心室の中に前進する。図2Dに示されるように、工程112では、偏向ガイドカテーテルは、僧帽弁にほぼ向かって前進するといくぶん反転式に偏向され、工程114で、横断カテーテルは引き抜かれる。
【0027】
CSIの中に挿入される三つの構成要素の積層物の状態で、横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルと共にガイドワイヤを使用することもできる。ガイドワイヤを使用する場合は、最初にガイドワイヤは動脈系を通って大動脈弓を越えて前進し、その後横断カテーテル及び偏向ガイドカテーテルの組み合わせ積層物が続く。ガイドワイヤが最初に大動脈弁を通して導入され、その後、好ましくは乳頭筋の間の位置に配向された(このことは必ずしも必要ではない)横断カテーテルが続く。次に、処置は上記の工程110及び112と同様に進み、工程114で、ガイドワイヤは横断カテーテルと同時に取り除かれる。
【0028】
ガイドワイヤが使用されたか否かにかかわらず、処置は工程116に進み、そこで図2Eのように、左心室の頂部にある僧帽弁に向けて偏向ガイドカテーテルの領域が設置される。工程118では、偏向ガイドカテーテルの先端が、僧帽弁の下の位置まで左心室の後壁を上に前進し、好ましくは図3に示されるようにP2領域の弁下部の溝の中に最初は位置付けられる。用語「輪」は、輪における又は輪の近傍の領域を含むように意図されている。工程120では、偏向ガイドカテーテルの先端の位置を蛍光透視法などの画像検査法を用いて確認する。蛍光透視法を用いる場合、1つのビューでも十分であり得るが、たいていの場合は、2つのビューを使用して、僧帽弁輪のP2領域内の偏向ガイドカテーテルの適切な設置を確認するのが好ましい。P2は第1のリテーナの予想される標的領域であるが、僧帽弁の形状に応じて、第1のリテーナを領域P1又は領域P3内に設置してもよい。同じ又は他の領域に追加のリテーナを設置する必要がある場合がある。
【0029】
工程122では、1つ以上のリテーナを搭載しているひだ形成装置400が偏向ガイドカテーテルの中に挿入され、偏向ガイドカテーテルの先端まで前進する。この方法に使用するひだ形成装置は、本明細書において、図12〜図14Hに関してより詳細に記載される。工程124では、ひだ形成装置のジョーの回転配向が画像検査法を用いて決定され、ジョーが正しい配向で設置される。ひだ形成装置のジョーの好ましい回転配向は、開いたときのジョーの両方の先端が、輪と接触するように押されたときに、僧帽弁輪によって画定される弓形の「弦」を表すようなものである。次に、工程126で、ひだ形成装置は、図2Eに示されるように、偏向ガイドカテーテルの末端部から出て僧帽弁の輪の下の位置へと前進する。ひだ形成装置の配向及び位置は、工程128で、画像検査法を用いて再確認される。先と同様に、画像検査法として蛍光透視法を用いる場合は、少なくとも1つのビュー、好ましくは2つのビューを使用して、ひだ形成装置のジョーの配向及び配置を確認する。蛍光透視法で観察する際の輪の線を画定するのを助けるために、別個の造影カテーテルを使用するか、又は偏向ガイドカテーテルを介して、既知の造影剤を注入してもよい。工程130では、ひだ形成装置のジョーが適切に位置付けられたか否かが医師によって決定される。ひだ形成装置が正しく位置付けられていない場合は、次に工程134で、ひだ形成装置のジョーを再位置付けする試みがなされる。工程136では、上述のように及び以下により詳細に記載されるように、ひだ形成装置の位置を、画像検査法を用いて再度評価する。ひだ形成装置が正しく位置付けられると、以下に記載のように工程132以降が行われる。工程134での少なくとも1回の再位置付けの試みの後に、ひだ形成装置が正しく位置付けられないと、工程138の判定は、ひだ形成装置が所望の位置を達成できないとなり、工程150で、ひだ形成装置及び偏向可能なガイドカテーテルは患者から引き抜かれる。
【0030】
ジョーが適切に位置付けられると、工程132で、診断用のクランプ又はひだ形成が行われる。診断用のクランプ(又はひだ形成)の一環として、ひだ形成装置のジョーは図2Fに示されるように開き、ひだ形成装置は僧帽弁の輪の組織上へと前進し、ジョーは図2Gに示されるように閉じる。診断用のひだ形成は、工程140、142、及び144で評価される。診断用のひだ形成が僧帽弁輪の許容可能な変化及び/又は僧帽弁逆流の許容可能な減少をもたらした場合は、工程140でひだ形成装置を使用してリテーナを適用し、図2Hに示されるようにひだ形成装置は解放される。組織に適用することができるリテーナの実施形態は、本明細書において、図15に関してより詳細に記載される。工程142では、診断用のひだ形成が許容可能ではない変化を僧帽弁にもたらした場合、処置は中止され、工程150で、ひだ形成装置及び偏向可能なガイドカテーテルは共に患者から引き抜かれる。工程144では、診断用のひだ形成が、僧帽弁逆流(MR)の不十分若しくは不適切な減少及び/又は僧帽弁の不十分若しくは不適切な変化に終わると、診断用のひだ形成は解放され、工程134で、ひだ形成装置のジョーの再位置付けの試みが行われる。
【0031】
僧帽弁への変化が許容可能であり、かつリテーナが適用されると、工程145で、弁を通過する血流を撮像する、ドプラー心エコー法などの方法を用いて、ひだが僧帽弁の血液の逆流に与える影響に関する判定が行われる。工程146、147、及び148では、処置及び処置の継続に関する様々な決定が行われる。工程146では、僧帽弁逆流の許容可能な総減少及び/又は僧帽弁の許容可能な変化がなされたと判定されると、処置は工程150へ分岐し、ひだ形成装置及び偏向ガイドカテーテルは回収される。僧帽弁逆流の総変化が不適切若しくは不十分である及び/又は僧帽弁への変化が不適切若しくは不十分である場合(工程147)、現在使用中のひだ形成装置が単一リテーナ装置の場合には引き抜かれ、追加のひだ形成装置が挿入され、処置は工程122から継続する。ひだ形成装置が複数のリテーナの装置の場合は、ひだ形成装置を引き抜かずに、処置は工程124から継続する。工程148で、ひだが僧帽弁逆流に与える影響に関する判定が不都合な結果を認定すると、処置は中止される可能性が高く、工程150で、ひだ形成装置及び偏向ガイドカテーテルが患者から除去される。ひだ形成装置及び偏向ガイドカテーテルを除去した後、カテーテルシース導入器を除去し、工程152で、既知の方法を用いてアクセス部位を閉鎖する。
【0032】
代替実施形態では、図17〜18に示されるように、リテーナは、リテーナ送達カテーテル600に解放可能なように取り付けられる。工程122では、リテーナ送達カテーテルがひだ形成装置と共に挿入され得る。リテーナ送達カテーテルを使用することによる主な違いは、ひだが僧帽弁に許容可能な変化をもたらしたと判定された場合に、工程140で、リテーナ送達カテーテルが前進することである。工程140では、リテーナ送達カテーテル600のツオヒー弁(Tuohy valve)が開かれ、リテーナ送達カテーテルは、ひだ形成装置の遠位端のジョーを越えて前進し、組織と接触する。リテーナ送達カテーテル600は、ひだ形成された組織の中に螺旋形リテーナを取り付けるために、蛍光透視法などの画像手段で見たときに螺旋状の締結具の近位縁がひだ形成装置のジョーの遠位先端を離れるまで、遠位方向の圧力を印加すると、時計と反対方向に回転する。これにより、螺旋状の締結具が完全に実装されたことが医師に示された。リテーナ送達カテーテル600の除去は、螺旋形リテーナからの遠位端の離脱が蛍光透視法で又はその他の画像で観察されるまでシャフトを時計回りに回転させることにより達成される。その後、ひだ形成装置及びリテーナ送達カテーテルの両方を患者から除去することができる。リテーナ送達カテーテルを使用するシステムでは、偏向ガイドカテーテルは、ひだ形成装置及びリテーナ送達カテーテルの両方を収容するように寸法設定される必要がある。
【0033】
上記方法では、ひだ形成装置が僧帽弁輪の下に適切に配置されたかを判定するために、様々な画像手段を用いることができる。蛍光透視法は1つの有用なリアルタイムの画像手段であり、好ましくは、少なくとも2つの平面で画像を得る。ひだ形成装置の遠位端に設置される放射線不透過性マーカー及び/又は偏向ガイドは、適切な配置を決定するのを助ける。少なくとも2つの平面投影でリアルタイムに捕捉されたX線像を使用して、ひだ形成装置の三次元形状を生成することができる。あるいは、回転血管造影画像を使用してもよい。更に、予め取得したCT又はMRI画像データを蛍光透視像と位置合わせする(registering)ことは、医師に追加の解剖学的データを提供して、ひだ形成装置及びリテーナの、又はリテーナの適切な配置を助ける。同様に、リアルタイムに捕捉されたリアルタイムの三次元超音波映像を、蛍光透視像と位置合わせしてもよい。
【0034】
この目的に有用な別の画像手段は、ICE画像を生成するのに使用される心臓内超音波検査法(ICE)である。ICE画像は、心臓の室のうちの1つ、例えば、右心室、左心室、左心房、又は右心房の内部に設置されたICEカテーテルによって生成することができる。あるいは、ICEカテーテルは、患者の心臓の大血管の内部に設置され得る。ICEカテーテルは、剣状突起下アプローチなどの低侵襲的アプローチを介して、心臓の心外膜嚢又は心膜嚢の表面上に設置されてもよい。用いられる様式を問わず、僧帽弁の画像は心周期と同期させて撮られるべきである。
【0035】
リテーナをひだに適用する前に、ひだが僧帽弁の機能に所望の影響を与えることに成功したかどうかをリアルタイムに又はほぼリアルタイムに判定する際にも、様々な画像手段は有用である。リアルタイムは、潜伏期が処置を実施するのに許容可能であり、好ましくは500ミリ秒以下であることを意味する。超音波造影剤を患者に投与するしないにかかわらず、カラードップラー超音波撮像をこのような目的に用いてもよい。あるいは、ひだが僧帽弁逆流に与える影響を判定する際に、心臓の室のうちの1つ、好ましくは左心室の中へのX線造影剤ボーラス注射を使用して、X線蛍光透視法を用いることができる。二面血管造影撮像、又は心室内光学的撮像を用いてもよい。心室内光学的撮像を用いる場合、偏向ガイドカテーテルは光学的画像システム、特に、赤外波長で作動する光学的画像システムを更に含むことが好ましい。
【0036】
第1の組織ひだの位置の判定は、上記の画像検査法のうちの1つ以上で生成された画像データに基づく三次元機能数値シミュレーションを使用して生成された最適化計画に基づき得る。例えば、弁を貫流する主要な逆流の位置に対する環状組織の分布を分析することにより、初期ひだ形成治療の主な標的を決定し得る。患者の心臓の病状に起因して輪が最も変形している位置にひだを設置するのが望ましくあり得る。最適化計画の生成は、横断カテーテルを挿入する工程の前に行われてもよい。最適化計画の生成は、次のひだ又はひだ群の好ましい位置を判定するために、リテーナを第1の組織ひだに適用する工程の後に行われてもよい。
【0037】
あるいは、経中隔アプローチを用いる場合は、心房表面上にひだを形成することができる。これは、SVC又はIVC静脈アプローチを用いて右心房にアクセスすることで達成することができる。その場合、左心房へのアクセスは、ブロッケンブロー(Brockenbrough)経中隔針キットなどの標準的な経中隔穿刺/アクセスキットを使用して達成される。次に、偏向ガイドカテーテルが穿刺部を介して導入されて、先端が僧帽弁の輪の方を指すように偏向される。弁輪縫縮術処置の後続の工程及び装置は、アプローチが下面からではなく僧帽弁の心房側からであることを除いては、上記と実質的に同じである。
【0038】
上記方法は、横断カテーテル200と、偏向ガイドカテーテル300と、少なくとも1つのひだリテーナ500を含むひだ形成装置400と、を含む複数構成部品のシステムを使用して実施される。図4は、本出願に記載の処置で使用される横断カテーテル200の斜視図である。横断カテーテル200は、近位端210aと遠位端210bとを有する本体部分210から構成される。近位端210aに連結されるのは、雌ルアーロック216及びツオヒー・ボースト(Tuohy-Borst)止血弁214である。遠位端210bには、好ましくはピグテール218、又は「J」字形状(図示せず)の部分が取り付けられる。ピグテール218の直径は、約2.0センチメートル以下である。図4では、ピグテール218は、装置の遠位端から約4センチメートルの継ぎ目位置で、本体部分210に取り付けられる。本体部分210及びピグテール218は同じ又は類似の材料で作製されるので、ピグテール218は熱接合により本体部分210に取り付けられる。ピグテール218は、ポリマー、好ましくはペバックス(Pebax)(登録商標)ポリエーテルブロックアミドで構成され、一層で構成される場合は、ジュロ硬度は約55D、又は二層で構成される場合は、外層のジュロ硬度は約40D、及び内層のジュロ硬度は約55Dである。本体部分210は、ジュロ硬度が55D〜72Dの一層で構成されてもよく、又は二層を有していてもよい。二層を使用する場合には、好ましいジュロ硬度は、外側が70Dで内側が63Dである。本体部分とピグテールとを合わせた全長は約149センチメートルであり、全長は、偏向ガイドカテーテルに完全に挿入されたときに偏向ガイドカテーテルを越えて延びなければならず、したがって、横断カテーテルの長さは、使用される偏向ガイドカテーテルの長さに応じて異なり得る。ピグテールが本体部分に取り付けられる位置も、横断カテーテル200の遠位先端から、3センチメートルから約44.5センチメートルの間で異なり得る。横断カテーテルはまた、本体部分からピグテールまで1つの材料で構成されてもよい。そのような場合、ジュロ硬度55Dの外側材料、及びジュロ硬度40Dの内側材料を使用するのが好ましい。更なる硬さ及びトルク能力を提供するために、約0.0025×0.0076cm(約0.001”×0.003”)のワイヤの平らなワイヤ編組212を、本体部分210の近位部を含むポリマーの中に埋め込んでもよい。PTFEの内層211は、滑らかな内部コーティング、及びポリマーと内部ルーメンとの間の分離を提供する。横断カテーテルのピグテール部分の硬さは、標準ガイドワイヤ、例えばコーディスエメラルド(CordisEmerald)0.089cm(0.035”)ガイドワイヤがピグテールを広げるが、後退するとピグテール形状に戻るように選択される。このようなガイドワイヤは、横断カテーテルの内層211によって画定されるガイドワイヤルーメンの中に設置され、かつ横断カテーテルの全長を通って延在しなければならない。
【0039】
横断カテーテル200は、上述のようにガイドワイヤと共に、又はガイドワイヤなしで使用されてもよく、図6〜図10A〜Cに示される偏向ガイドカテーテルと共に使用されるのが好ましい。偏向ガイドカテーテル300は、ハンドル310と本体部分350とから構成される。図7Aは、ハンドルの内部構成部品を示す、ハンドル310の実施形態の分解図であり、図7Bは、ハンドル310の内部構成部品が組み立てられたときの斜視図である。ハンドル310は、上部ハンドルシェル312と下部ハンドルシェル314とで構成され、当該ハンドルシェルは、ポリカーボネートなどの耐久性のある鋳造可能な高分子材料、又は同様の材料で製造され、かつスナップ嵌め構成で互いに嵌合するように設計される。ハンドル310の近位端には、近位ハンドル先端318上に嵌合するように構成された止血弁316がある。止血弁316は、ツオヒー・ボースト型弁のような、このような弁に既知の任意の設計のものであってよい。近位アクチュエータアセンブリ324は、スロット313を通して上部ハンドルシェル312に挿入されるように構成された親指アクチュエータ324aを含む。任意に、スロット313が狭い場合は、組立を容易にするために、親指キャップ325を備える二部分から成る構成体を使用してもよい。親指アクチュエータ324a及び任意の親指キャップ325を使用して、牽引ワイヤ327aの近位方向への前進運動を生じさせる。このような運動は、枢着部軸ピン324cの周りでバネ324dによって付勢された突起(1つ又は複数)324eが、近位ラック322の中の歯群322aと噛み合うと、維持される。近位アクチュエータアセンブリ324と、それに伴う牽引ワイヤ327aのこのような近位運動は、偏向ガイドカテーテル300の遠位端の偏向を引き起こす。ユーザーが近位アクチュエータアセンブリ324の遠位運動を望む場合は、ユーザーは解放トリガ324bを押し、解放トリガ324bはバネ324dの付勢を受けて、突起(1つ又は複数)324eを近位ラック322の歯群322aとの噛み合いから解放する。近位ハイポチューブ331aは、牽引ワイヤ327aのための通路を提供し、ワイヤがねじれるのを防ぐ。遠位ハイポチューブ331bは、ハイポチューブ331aの内側にはまり込むように設計される。牽引ワイヤ327aの末端部には、クリンプチューブ334a、及びクリンプチューブがアクチュエータアセンブリの近位端の中に埋め込まれるのを防止する浮動式クリンプチューブストップ334bが固定して取り付けられる。次に、ユーザーはアクチュエータアセンブリを遠位側に動かして、偏向ガイドカテーテルの遠位端の偏向を変化させる。アクチュエータアセンブリの動きは、医師が自分の親指以外の何かを使用して作り出されてもよく、用語「親指アクチュエータ」及び「親指キャップ」はいかなる制限も意味しない。
【0040】
ハンドル310は、同様の親指アクチュエータ328aと、解放トリガ324bと、軸ピン324cと、バネ328dと、突起328eとを有する遠位アクチュエータアセンブリ328を更に含む。任意の親指キャップ329は、親指アクチュエータ328aの上に固定される。遠位アクチュエータアセンブリ328は、ユーザーが偏向ガイドカテーテルの遠位端を偏向できるようにする、第2の牽引ワイヤ327b(図11に図示)に連結される。好ましい実施形態において、第1及び第2の牽引ワイヤは、(溶接、ろう付け、又は接着剤などの既知の方法及び手段によって)偏向ガイドの本体部分350の遠位領域360に埋め込まれるアンカーバンド385a及び385bに取り付けられる。牽引ワイヤとそれらの対応するアンカーバンドとの接続点はまた、接続点が(軸方向に)互いに隣り合っていないが、それぞれが遠位端の運動を別の平面に、又は同一平面内の他の方向に提供するように配置されてもよい。更に、1種類の動きのみを偏向ガイドカテーテルに提供すればよい場合は、第2の牽引ワイヤ及びアクチュエータは必要ない。それに対応して、2種類を超える偏向が必要な場合は、牽引ワイヤ及びアンカーバンドに結合される追加の親指アクチュエータアセンブリを、同様のやり方でカテーテルに追加してもよい。第2の遠位アクチュエータアセンブリは、近位アクチュエータアセンブリと同様のやり方で機能する同じ構成部品を有する。主な違いは、遠位アクチュエータアセンブリ328は、遠位アセンブリを通して第1の牽引ワイヤ327aを通過させる通路を必要とすることであり、当該通路はハイポチューブ331bによって援助される。第2の牽引ワイヤ327bは、同様のクリンプチューブ335aとクリンプチューブストップ335bとを備える遠位端で終端する。ノーズコーン330は、ハンドルシェル312/314と、本体部分350の近位領域390との間の移行を提供する。アクチュエータアセンブリ324及び328、並びにラック322及び326は、ポリカーボネートなどの高分子材料で構成される。このようなアセンブリは、機械加工された金属又は成形金属、例えばアルミニウムで作製することができるが、高価格かつ高重量の装置になる。歯群322a及び326aを備えるラック322及び326は、別個の構成部品であってもよく、又は好ましくは、図11の代替実施形態において示されるように、下部ハンドルシェル314の中に成形されてもよい。ハンドル差し込み338を2つのラック322と326との間の仕切りとして使用し、ハンドル差し込み338は近位ハイポチューブ331aの支持体を提供する。牽引ワイヤ327a及び327bは、好ましくは、高引張り強度304のステンレス鋼(例えば、引張り剛性が456N/cm2(300ksi)を超える)であるが、MP35Nなどのその他の高強度材料、その他のステンレス鋼、又はケブラー若しくはベクトランなどの織り繊維で製造されてもよい。
【0041】
牽引ワイヤ327a及び327bは、好ましくは、直径約0.020cm(約0.008”)の、単一で中実コアの高引張り剛性304ステンレス鋼ワイヤ(例えば、引張り剛性が456N/cm2(300ksi)を超える)であるが、MP35Nなどのその他の高強度材料、その他のステンレス鋼、又はケブラー若しくはベクトランなどの織り繊維で製造されてもよい。各牽引ワイヤの遠位端には、アンカーポイントでカテーテル本体の壁部に埋め込まれるアンカーバンド385a又は385bがある。アンカーバンドの位置をカテーテル本体の軸方向長さに沿って変化させると、偏向可能なガイドカテーテルの偏向形状が変化する。
【0042】
偏向ガイドカテーテル300の本体部分350が、図8、図9A、及び図9Bに描かれている。本体部分は、4つの領域、即ち、遠位領域360、中間遠位領域370、主部中間領域380、及び近位領域390に分けられている。遠位端での遠位領域360の長さは約3.5センチメートルであり、ジュロ硬度が25D〜40D、好ましくは35Dであるペバックス(Pebax)などの高分子材料で製造される。次炭酸ビスマスなどの放射線不透過性材料を遠位領域360の材料に添加して、蛍光透視法及びその他の撮像法において、偏向ガイドカテーテル300の遠位領域360を見えるようにする。遠位領域360の壁部厚さは、約0.0305〜0.0356cm(約0.012〜0.014インチ)である。第1の牽引ワイヤのアンカーバンド385aは遠位領域360の遠位端近傍に埋め込まれ、第2の牽引ワイヤのアンカーバンド385bは遠位領域360の近位端近傍、又は領域370の遠位端に埋め込まれる。アンカーバンドは、滑らかなライナー365と編組385との間に設置されるのが好ましいが、代替実施形態では、編組の上方に設置されてもよい。各アンカーバンドは304ステンレス鋼で製造され、各牽引ワイヤは、溶接、又は金属を接合するための当該技術分野において既知のその他の手段を用いて、その対応するアンカーバンドに取り付けられる。遠位領域360、並びに本体部分全体の内径は、内径約0.323cm(約0.127インチ)及び厚さ約0.005cm(約0.002インチ)の滑らかなライナー365、好ましくはPTFEによって画定される。遠位領域360の外径は、アンカーバンドの間で約0.437cm(約0.172インチ)、遠位バンドの位置で約0.447cm(約0.176インチ)である。1本につき上1本(1 over 1)、1本につき上2本下2本(1 over 2 under 2)、又は2本につき上2本(2 over 2)のパターンの、直径0.0064〜0.0076cm(0.0025〜0.003インチ)のワイヤの編組375を、近位領域390から遠位領域360までのカテーテルのポリマーの壁部に埋め込む。偏向ガイド300の遠位領域360の遠位端には、33.5%の25Dペバックス(Pebax)、6.4%の55Dペバックス(Pebax)、及び60%の次炭酸ビスマスで構成され、かつその遠位端に向かってわずかなテーパ形状を有する、押出形成された非外傷性先端362がある。非外傷性先端は任意であるが、患者の血管に挿入する間の組織の損傷を防止するために好ましい。
【0043】
中間遠位領域370は同種の高分子材料で構成されるが、より硬い領域を提供するために、35D〜55Dと高いジュロ硬度を有する。中間遠位領域370の長さは約2.8〜4.0センチメートルであり、遠位領域と同様に滑らかなライナー365とワイヤ編組375とを含む。中間遠位領域の壁部厚さは、同様に0.0305〜0.0356cm(0.012〜0.014インチ)であり、外径は約0.437cm(約0.172インチ)である。主部中間領域380は、0.422cm(0.166インチ)とわずかに小さな直径を有するが、他の領域と同様に、同じ滑らかなライナーと編組とを有する。この領域の主な違いは、更なる硬さを提供するために、使用する高分子材料が55D〜63Dと高ジュロ硬度であることである。主部中間領域の長さは約20〜28センチメートル、好ましくは20センチメートルである。近位領域390は、外径が直前の領域と同じであるという点で類似の組成を有する。この領域のジュロ硬度は、約72Dまで増加して更により高い硬さを提供し、この領域の長さは約73〜88センチメートル、好ましくは88センチメートルである。滑らかな層365及び編組375は同じである。
【0044】
近位領域390から本体部分350を通って第1及び第2のアンカーバンド385a/385bの位置まで、内径約0.0224cm(約0.0088インチ)の2つのワイヤ又は編組強化チューブ395a/395bが通っており、これらは、第1及び第2の牽引ワイヤをそれぞれ収容する。別の特性が所望である場合は、偏向ガイドカテーテルに様々な修正を加えることができる。2つの代わりに、1つの牽引ワイヤ、アンカーバンド、及び強化チューブを使用することができる。編組は、異なる寸法のワイヤ及び編組タイプに変更されてもよい。外側本体の高分子材料は、図10A〜図10Cに示されるように多様であり得る。図10Aでは、2つの異なるジュロ硬度を有する材料を交互に使用している。材料Aを互いに対向する2つの周辺部分で使用し、材料Bを2つの他の対向する周辺部分で使用する。所望の偏向特性に応じて、材料Aのジュロ硬度は材料Bのジュロ硬度より高くてもよく、逆もまた同様である。このような方法で2つの異なるジュロ硬度の材料を使用して、横剛性の要件を有して特定の方向に偏向するカテーテルの能力又は容易さを均衡させるという利点を提供する。図10Bでは、材料A及び材料Bの2つの周辺部分を使用して、特定の所望の偏向特性を提供する。図10Cでは、本体部分の周囲に沿った異なる位置に牽引ワイヤ327a及び327bを配置することと共に、2つの異なるジュロ硬度の材料を使用している。図10Cの構成では、偏向ガイドカテーテルの遠位端は、互いにほぼ垂直な2つの異なる平面に偏向する。異なる偏向平面を得るために、2つの異なる材料又はジュロ硬度タイプを外側本体の周囲に使用する必要はないことに留意すべきである。偏向平面は、牽引ワイヤルーメンの相対的配置によって主に決定される。
【0045】
偏向ガイドカテーテルは、偏向ガイドカテーテルの遠位端の位置及び配向(6自由度)を検知するための、並びに他の事前に捕捉された又はリアルタイムの画像と位置合わせされ得る、ないしは別の方法で偏向ガイドカテーテルの遠位端の位置を心臓のリアルタイムの表示マップ上に描くのに使用されてもよい位置情報を提供するための、バイオセンス・ウェブスター(Biosense Webster)によって製造されるもののような磁気ベースの位置センサを更に含んでもよい。バイオセンス・ウェブスター(Biosense Webster)により製造されるカルト(Carto)(登録商標)システムなどのシステムは、この目的に有用である。
【0046】
図12は、本発明に従って僧帽弁逆流を処置する方法に使用するひだ形成装置400の立面図である。ひだ形成装置400は、ハンドルアセンブリ410と、エンドエフェクタ520を備えるひだ形成アセンブリがその遠位端に取り付けられる細長いシャフト452を有する遠位アセンブリ450とで構成される。図13は、ハンドルアセンブリ410の内部構成部品の立面図である。ハンドルアセンブリ410は、ハンドルアセンブリの内部構成部品を収容するように構成された右ハンドルシェル412と左ハンドルシェル414の、2つのポリカーボネートシェル部分で構成される。ハンドルアセンブリ410は、細長いシャフト452の遠位部分の中に格納されたリテーナを前進させるクランクアセンブリ420をその内部に備える。発射アセンブリ420は、カウンターギヤ421と、駆動ギヤアセンブリ422と、アイドルギヤ423と、クラウンギヤ424とで構成される。発射アセンブリ420は、図12に示される発射ノブ430に結合され、発射ノブ430は左ハンドルシェル414に回転自在に結合される。図示されていないが、ハンドルアセンブリ410の反対側に第2の発射ノブを配置して、ユーザーがどちらか一方のノブを選択的に回転できるようにすることができる。どちらの発射ノブも、ノブが反対方向に回転するのを防止する反転防止板バネ(図示せず)と、トリガが完全に閉じる又は噛み合うまでノブが回転するのを防止するトリガロックアウトバネ(図示せず)とを更に含む。引き続き図13を参照すると、発射アセンブリ420のギヤ421、422、423、及び424は、発射ノブ430の回転に対応して回転するように構成される。ギヤは互いに連結して、ピニオンアセンブリ437及び駆動軸436の対応した回転をもたらす。駆動軸436は、発射制御ワイヤ490の近位端に嵌合される。エンドキャップ460は、周囲に分散した複数の隆起部を有して、ユーザーが把持するのを助ける。
【0047】
図13において、トリガ416は、枢動ピン417によってハンドルアセンブリ410内に枢動可能に実装され、かつその中に形成される親指グリップを有する遠位部分と、近位エクステンションアーム418とを含む。トリガ416はまた、ハンドルアセンブリの中のラッチ受部419bに受け入れられて、トリガを閉鎖位置に係止するように構成されたラッチ419aを含む。エクステンションアーム418は、ハウジングアセンブリ410内の近位位置と遠位位置との間を移動するシャトルアセンブリ440に結合される。シャトルアセンブリ440は様々な構成を有することができ、また種々の特徴、例えばオーバーロード機構を含むことができる。シャトルアセンブリ440の詳細な構成は、米国特許公開公報第2005/0277954号により詳細に記載されており、当該特許は参照により本明細書に組み込まれる。バネピン446、力制限バネ442、バネキャップ444a及び444bなどの、シャトルアセンブリ440の内部部品のいくつかが、図14A及び図14Bに示されている。図13に示されるように、シャトルアセンブリ440は、エンドエフェクタ制御ワイヤ510の近位部分に結合され、ワイヤは細長いシャフト452を通って延びる。図14Dに示されるように、エンドエフェクタ制御ワイヤ510の遠位端は、ワイヤコネクタ542に(好ましくは溶接によって)嵌合される。ワイヤコネクタ542は、エンドエフェクタ520の近位、即ち、U字形金具522並びにジョー524a及び524bに、図14Gに示されるように位置付けられる。ワイヤコネクタ542はまた、ワイヤコネクタ542からナット550を通過してジョー524a及び524bの近位端の穴部でそれぞれ終端する、2つの平行な引張りワイヤ544a及び544bに溶接される。こうして、ワイヤコネクタ542は、ジョーの開閉を制御するために、エンドエフェクタ制御ワイヤ510の力を2つの力に分割する。例えば、2つの移動可能なジョーではなく、1つの固定されたジョーと1つの移動可能なジョーを有するのが望ましいような場合は、他の構造が可能である。また、図14Hに示されるように、引張りワイヤ544a及び544bをワイヤコネクタ542に通過させ、かつ各引張りワイヤ544a及び544bに複数のフェルール549をそれぞれ設置して、遠位ジョー524a及び524bのいくつかの受動的関節を有することも可能である。複数のフェルール549のそれぞれは各々、ワイヤコネクタを通って移動するように、各ワイヤの近位端のワイヤコネクタ542の近位側及び遠位側に配置されて、蛇行した解剖学的通路を通した改善された操作性のために、装置の遠位先端に柔軟性を提供する。遠位ジョー524a及び524bは、それぞれ枢着部リボット523a及び523bを中心にして回転する。
【0048】
発射制御ワイヤ490は、細長いシャフト452を通って、及びワイヤコネクタ542の中に形成された穴を通って延び、かつナット550の中のネジ穴にネジ式に嵌合される。発射制御ワイヤ490の遠位端は、リテーナ押しスリーブ556の中に据え付けられたリテーナ押し部554の中に延在し、これらは共に図14Eに示されている。広くは、発射ノブ430の回転は、発射制御ワイヤ490を回転させるのに有効である。発射制御ワイヤ490は、細長いシャフト452の近位部分と遠位部分との間に固定されたナット550にネジ式に嵌合され、ナット550のネジ穴は、発射制御ワイヤ490を細長いシャフト452を通して遠位側に移動させて、発射制御ワイヤの遠位端に固定して取り付けられたリテーナ押し部554を回転させる。リテーナ押し部554は、細長いシャフト452の遠位部分の中のガレージ532内に格納された螺旋形リテーナ500の内部に位置付けられる。リテーナ押し部554は、螺旋形リテーナの内部に嵌合するように構成され、かつリテーナがリテーナ押し部554と同じ方向に回転するように、螺旋形リテーナの近位端と接触する部分を有する。リテーナ押し部554の回転運動は、螺旋形リテーナ550を、シャフト452を通して回転させて、最も遠位のリテーナを、エンドエフェクタ520のジョー524a及び524bの中に位置付ける。発射制御ワイヤ490上のネジは、螺旋形リテーナと同じピッチであるのが好ましい。細長いシャフトを通して複数のリテーナを前進させ、リテーナをジョー内に位置付けるために、様々なその他の技術を用いることができることは、当業者には理解されよう。別の可能な実施形態は、発射制御ワイヤ及びナット550からネジを除去する。螺着されていない発射制御ワイヤを回転させると、リテーナ押し部が回転し、螺旋形リテーナは発射制御ワイヤにかかる付勢力によって回転してひだ形成装置のジョーの中の組織の中に入っていく。
【0049】
細長いシャフト452の近位端には、金属、好ましくは真鍮で作製されたコイルコネクタ512があり、細長いシャフト452の近位部452aをハンドルアセンブリに連結するための手段として使用される。二重ルーメン内部シース560は、エンドエフェクタ制御ワイヤ510及び発射制御ワイヤ490用のルーメンを有する。コイルコネクタ512を細長いシャフト452に連結するためにフィラーチューブコネクタ562が使用され、フィラーチューブコネクタ562は、シアノアクリレートなどの接着糊を使用してコイルコネクタ512及び細長いシャフト452に接着される。細長いシャフト452は、近位シャフト部分452aと遠位シャフト部分452bとに分かれる。近位シャフト部分452aは好ましくはニチノールであり、かつダブテールレーザーパターンを有する。遠位シャフト部分452bは好ましくはステンレス鋼であり、かつシャフト壁部を貫通して切断された同様のダブテールパターンを有する。図16Aに示されるような螺旋カットなどのその他のパターンを用いることもできる。図16Bは、ひだ形成装置の別のバリエーションであり、近位シャフト部分は上記のものと同様であるが、ナットは有意により遠位側に設置されており、ダブテールパターンを備えるステンレス鋼遠位シャフト部分は、リボンコイルを形成する螺旋カットで置き換えられている。図16Cは、ナットの配置、並びに上記の図14A〜図14Fに関して記載された近位及び遠位シャフト部分のダブテールパターンを描いている。図16Dは、上述した代替実施形態の、受動的関節動作型のジョーを描いている。
【0050】
図14I及び図14Jは、内部螺旋形リテーナを有するひだ形成装置の遠位部分の斜視図である。図4Iは、螺旋形リテーナ500が患者の組織の中に前進した後の、ジョー524a及び524bが開位置にあるひだ形成装置を示している。図14Jは、螺旋形リテーナが前進位置にある状態の、ジョー524a及び524bが閉位置にあるひだ形成装置を示している。
【0051】
図15Aは、本発明による螺旋形リテーナ500の斜視図である。螺旋形リテーナ500は、ステンレス鋼、又はMP35N、プラチナ、ニチノール、及びコバルトクロムなどの他の生体適合性の材料、又はこれらの合金で構成される。螺旋形のリテーナは、ポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)で製造されたもののような高分子材料で製造されてもよい。
【0052】
螺旋形リテーナは、様々なピッチ又は角度の螺旋のうちの1つを有してよい。リテーナを組織の中に埋め込むのに必要な回転数及び力を増加させる又は減少させるために、この角度を変更することができる。螺旋形リテーナは、ジョーンズ・スプリング社(Jones Spring Co.)の在庫番号157−Aのような、マンドレルの周囲に巻き付けられた、又は選択された材料で製造された管状物から切断されたワイヤで製造することができる。螺旋形リテーナを製造するのに使用するワイヤの厚さ及びゲージは様々であってよいが、僧帽弁に使用する場合は、好ましくは0.0127cm〜0.102cm(0.005インチ〜0.040インチ)である。
【0053】
螺旋形リテーナの半径は、保持することを望む組織の量、及び内部送達モード又は外部送達モードのいずれで使用されるかに応じて異なってよい。僧帽弁用途では、螺旋形リテーナの直径は、約0.127cm(約0.050インチ)〜0.457cm(0.180インチ)でなければならない。螺旋形リテーナの遠位先端504は、保持される組織の貫通を容易にするために、研削などの様々な方法でとがらせてもよい。螺旋形リテーナはまた、処置の間に螺旋形リテーナを蛍光透視的に位置付ける及び/又は見るのを容易にするために、タンタルマイクロコイルなどの1つ以上の放射線不透過マーカーを含んでもよく、又は1つ以上の放射線不透過マーカーで覆われてもよい。
【0054】
好ましくは、螺旋形リテーナは、本出願に記載のひだ形成装置の遠位端で送達される。螺旋形リテーナは、ひだ形成装置のジョーが僧帽弁輪に組織のひだを形成した後に、ひだ形成装置の軸に沿って平行移動される。
【0055】
螺旋形リテーナは、血栓症の可能性を軽減する目的で、ヘパリンなどの1つ以上の薬理活性剤でコーティングされることができる。
【0056】
螺旋形リテーナが埋め込まれた組織から螺旋形リテーナが「後退して出る」のを防止するために、螺旋形リテーナは、その近位端又は遠位端に、又は図15Aにかえし502として示されるように、1つ以上のかえしを有してもよい。かえしはまた、図15Bに示されるように螺旋形リテーナの上に配置されてもよく、図15bでは、かえしは螺旋形リテーナ「ワイヤ」自体の一部を形成している。図15Bは、螺旋形リテーナを形成するのに使用されるワイヤの、平坦な形式の断面図を示す。これらのかえしは、螺旋形リテーナを形成する前に、ワイヤを弱化(wither)してスエージ加工することにより、又はワイヤの中に形状を形成することにより形成することができ、あるいは、スエージ加工又は接着剤によって螺旋形リテーナに取り付けられる別個の要素であることができる。
【0057】
図17は、リテーナ送達カテーテル600を、ひだ形成装置400及び螺旋形リテーナ500と共に示している。リテーナ送達カテーテルを使用する場合、ひだ形成装置400は、内部リテーナを格納する(sotring)及び送達するのに使用される内部構成要素が取り除かれるように変更されてもよい。これにより、ひだ形成装置400の製造がより単純かつ低価格になる。リテーナ送達カテーテル600は、リテーナ送達カテーテルを細長いシャフト452に解放可能なように固定するのに使用されるツオヒー・ボースト(Tuohy-Borst)型の弁を含む。使用中、弁610は開いて、リテーナ送達カテーテルのひだ形成装置に対する長手方向平行移動、並びに螺旋形リテーナを組織内に送達させるためのリテーナ送達カテーテルの回転を可能にする。リテーナ送達カテーテルはシャフト620を更に含み、シャフト620は、ニチノール、ステンレス鋼、又はその他の生体適合性金属で製造され、かつシャフト620の壁部に切り込まれて、柔軟性及びトルク能力を提供する台形パターンを有する。リテーナ送達カテーテル620の最終要素は、螺旋形リテーナ500の近位端と解放可能なように噛み合うように設計されたアダプタ625である。アダプタ625の1つの可能な構成が図18に示されている。溶接、ろう付け、接着剤、又はその他の手段によって、複数の弓状の小管626が、シャフト620の遠位端に固定される。1つの弓状の小管626の一方の末端部626aは、螺旋形リテーナ500の近位先端がそこを通過しないようにする閉じた末端部を有する。したがって、シャフト625の反時計回り方向の回転は、螺旋形リテーナを回転させる。シャフト625の時計回り方向の回転は、螺旋形リテーナを弓状の小管626から抜け出させて、リテーナを解放する。
【0058】
あるいは、図19Aに示されるようなアダプタ508を使用して、かえし付き管状リテーナ500を、リテーナ送達カテーテル600の遠位端に一時的に取り付けることができる。アダプタ508は、リテーナ送達カテーテル600の遠位端に取り外し可能に固定されるように構成された螺旋形リテーナ500の近位端に取り付けられる。アダプタは、リテーナにレーザー溶接されてもよく、ないしは別の方法でリテーナの中に形成されてもよい。2つのアダプタが解放可能なように取り付けられることができるように、図19Bに示されるように別の嵌合アダプタ625がリテーナ送達カテーテルに固定される。アダプタの幾何学的なカットを使用して、螺旋形リテーナは、リテーナ送達カテーテルに解放可能なように取り付けられることができるが、それでもなお回転トルク及び/又は軸方向力を伝達する能力を提供することができる。あるいは、螺旋形の管状リテーナは、リテーナが目的組織の中に埋め込まれた後に壊されることが意図される場所に、壊れやすい一時的な仮付け溶接を有してもよい。
【0059】
本明細書に記載されている装置は、1回の使用の後に廃棄されるように設計することができ、又はこれらは複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、装置は少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整されることができる。再調整には、装置を分解すること、続いて特定のピースを洗浄する又は取り替えること、及びそれに続いて再び組み立てることの任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解されることができ、装置の任意の数の特定ピース又は部品が、任意の組み合わせにより選択的に取り替えられたり取り除かれたりすることができる。特定の部品が洗浄及び/又は交換されると、続く使用のために装置を修繕施設において、又は外科手術の直前に外科チームによって組み立て直すことができる。当業者には、装置の再調整に、解体、洗浄及び/又は交換、並びに再組立のための様々な技術を使用できることが理解されるであろう。そのような技術の利用、及びその結果として得られる再調整された装置はすべて、本願の範囲に含まれる。
【0060】
前述の説明は、本発明の現在好ましい実施形態を参照して提示されてきた。本発明が属する分野および技術に精通した者は、記載した構造の代替及び変更が、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく実施できることを理解するであろう。
【0061】
したがって、上述の記載は、記述され以下の添付図に説明された厳密な構造のみに関係付けられるものとして読解されるべきではなく、むしろ、最も完全で公正な範囲を有するとされる以下の特許請求の範囲と一致し、かつそれらを補助するものとして読解されるべきである。
【0062】
〔実施の態様〕
(1) 患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
を含み、
前記ひだ形成装置が、前記対向するジョーによって形成された組織内のひだを保持するための少なくとも1つの螺旋形リテーナを含む、システム。
(2) 前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記横断カテーテル及び前記偏向ガイドカテーテルを、前記患者の脈管構造を通して前記左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含む、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記ひだ形成装置が、金属で構成される細長い管状本体であって、前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記パターンがダブテールパターンである、実施態様4に記載のシステム。
(6) 前記パターンが螺旋形のパターンである、実施態様4に記載のシステム。
(7) 前記ひだ形成装置の前記細長い管状本体の近位区域がニチノールで構成され、前記細長い管状本体の遠位区域がステンレス鋼で構成される、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記ひだ形成装置が、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたリテーナ押し部を更に含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記ひだ形成装置が、発射制御ワイヤに連結された発射ノブを更に含み、前記発射制御ワイヤは、前記発射ノブが第1の方向に回転したときに回転して、前記リテーナ押し部及び前記螺旋形リテーナを前記ひだ形成された組織の中に回転させる、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記発射ノブの第2の方向への回転により、前記アダプタを前記螺旋形リテーナから解放させる、実施態様9に記載のシステム。
【0063】
(11) 前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記螺旋形リテーナが、周囲に沿って複数の隆起部を有するワイヤで構成される、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、実施態様1に記載のシステム。
(14) 前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、実施態様1に記載のシステム。
(16) 前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、実施態様1に記載のシステム。
(17) 前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、実施態様1に記載のシステム。
(18) 患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
近位端と遠位端とを有し、かつ前記遠位端に配置されて前記ひだ形成装置の前記対向する一組のジョーによって形成された組織内のひだを保持する螺旋形リテーナを有する、リテーナ送達カテーテルと、
を含む、システム。
(19) 前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記リテーナ送達カテーテルが、金属で構成される細長い管状本体であって、前記細長い管状本体の少なくとも一部分に沿って前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、実施態様18に記載のシステム。
【0064】
(21) 前記パターンが台形パターンである、実施態様20に記載のシステム。
(22) 前記リテーナ送達カテーテルの前記細長い管状本体が、ニチノール又はステンレス鋼で構成される、実施態様20に記載のシステム。
(23) 前記リテーナ送達カテーテルが、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたアダプタを更に含む、実施態様18に記載のシステム。
(24) 前記アダプタは、前記リテーナ送達カテーテルが第1の方向に回転すると前記螺旋形リテーナと噛み合い、第2の方向に回転すると前記螺旋形リテーナを解放する、実施態様23に記載のシステム。
(25) 前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、実施態様18に記載のシステム。
(26) 前記螺旋形リテーナが、周囲に沿った複数の隆起部を有するワイヤで構成される、実施態様18に記載のシステム。
(27) 前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、実施態様18に記載のシステム。
(28) 前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、実施態様27に記載のシステム。
(29) 前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、実施態様18に記載のシステム。
(30) 前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、実施態様18に記載のシステム。
【0065】
(31) 前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、実施態様18に記載のシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
を含み、
前記ひだ形成装置が、前記対向するジョーによって形成された組織内のひだを保持するための少なくとも1つの螺旋形リテーナを含む、システム。
【請求項2】
前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記横断カテーテル及び前記偏向ガイドカテーテルを、前記患者の脈管構造を通して前記左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ひだ形成装置が、金属で構成される細長い管状本体であって、前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記パターンがダブテールパターンである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記パターンが螺旋形のパターンである、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記ひだ形成装置の前記細長い管状本体の近位区域がニチノールで構成され、前記細長い管状本体の遠位区域がステンレス鋼で構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ひだ形成装置が、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたリテーナ押し部を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ひだ形成装置が、発射制御ワイヤに連結された発射ノブを更に含み、前記発射制御ワイヤは、前記発射ノブが第1の方向に回転したときに回転して、前記リテーナ押し部及び前記螺旋形リテーナを前記ひだ形成された組織の中に回転させる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記発射ノブの第2の方向への回転により、前記アダプタを前記螺旋形リテーナから解放させる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記螺旋形リテーナが、周囲に沿って複数の隆起部を有するワイヤで構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
近位端と遠位端とを有し、かつ前記遠位端に配置されて前記ひだ形成装置の前記対向する一組のジョーによって形成された組織内のひだを保持する螺旋形リテーナを有する、リテーナ送達カテーテルと、
を含む、システム。
【請求項19】
前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記リテーナ送達カテーテルが、金属で構成される細長い管状本体であって、前記細長い管状本体の少なくとも一部分に沿って前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記パターンが台形パターンである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記リテーナ送達カテーテルの前記細長い管状本体が、ニチノール又はステンレス鋼で構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記リテーナ送達カテーテルが、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたアダプタを更に含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記アダプタは、前記リテーナ送達カテーテルが第1の方向に回転すると前記螺旋形リテーナと噛み合い、第2の方向に回転すると前記螺旋形リテーナを解放する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記螺旋形リテーナが、周囲に沿った複数の隆起部を有するワイヤで構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項30】
前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項31】
前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、請求項18に記載のシステム。
【請求項1】
患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
を含み、
前記ひだ形成装置が、前記対向するジョーによって形成された組織内のひだを保持するための少なくとも1つの螺旋形リテーナを含む、システム。
【請求項2】
前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記横断カテーテル及び前記偏向ガイドカテーテルを、前記患者の脈管構造を通して前記左心室の中に誘導するのに使用するガイドワイヤを更に含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ひだ形成装置が、金属で構成される細長い管状本体であって、前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記パターンがダブテールパターンである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記パターンが螺旋形のパターンである、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記ひだ形成装置の前記細長い管状本体の近位区域がニチノールで構成され、前記細長い管状本体の遠位区域がステンレス鋼で構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ひだ形成装置が、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたリテーナ押し部を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ひだ形成装置が、発射制御ワイヤに連結された発射ノブを更に含み、前記発射制御ワイヤは、前記発射ノブが第1の方向に回転したときに回転して、前記リテーナ押し部及び前記螺旋形リテーナを前記ひだ形成された組織の中に回転させる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記発射ノブの第2の方向への回転により、前記アダプタを前記螺旋形リテーナから解放させる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記螺旋形リテーナが、周囲に沿って複数の隆起部を有するワイヤで構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
患者の直接的弁輪縫縮術によって僧帽弁逆流を処置するためのシステムにおいて、
大動脈弁を通して前記患者の左心室の中に挿入するための、内部を通って遠位開口部で終わるルーメンを備える細長い本体を有する、偏向ガイドカテーテルと、
前記患者の僧帽弁の中の組織をひだ形成するために動作可能な対向する一組のジョーを有するひだ形成装置と、
近位端と遠位端とを有し、かつ前記遠位端に配置されて前記ひだ形成装置の前記対向する一組のジョーによって形成された組織内のひだを保持する螺旋形リテーナを有する、リテーナ送達カテーテルと、
を含む、システム。
【請求項19】
前記大動脈弁を通して前記患者の前記左心室の中に挿入するための遠位端を有する横断カテーテルを更に含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記リテーナ送達カテーテルが、金属で構成される細長い管状本体であって、前記細長い管状本体の少なくとも一部分に沿って前記金属を貫通して切断されたパターンを備える、細長い管状本体を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記パターンが台形パターンである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記リテーナ送達カテーテルの前記細長い管状本体が、ニチノール又はステンレス鋼で構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記リテーナ送達カテーテルが、前記螺旋形リテーナの近位端と解放可能なように噛み合うように構成されたアダプタを更に含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記アダプタは、前記リテーナ送達カテーテルが第1の方向に回転すると前記螺旋形リテーナと噛み合い、第2の方向に回転すると前記螺旋形リテーナを解放する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記螺旋形リテーナが、前記螺旋形リテーナ上に配置されて前記ひだ形成された組織と噛み合う少なくとも1つのかえしを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記螺旋形リテーナが、周囲に沿った複数の隆起部を有するワイヤで構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
前記螺旋形リテーナが、その上に配置される少なくとも1つの放射線不透過マーカーを有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
前記螺旋形リテーナの上に配置される前記放射線不透過マーカーがタンタルマイクロコイルである、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記螺旋形リテーナが、ステンレス鋼、MP35N、プラチナ、ニチノール、コバルトクロム、又はこれらの合金で構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項30】
前記螺旋形リテーナが高分子材料で構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項31】
前記高分子材料がポリ乳酸(PLA)及び/又はポリグリコール酸(PGA)である、請求項18に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図14H】
【図14I】
【図14J】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図14H】
【図14I】
【図14J】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【公表番号】特表2011−500219(P2011−500219A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530149(P2010−530149)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080345
【国際公開番号】WO2009/052405
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080345
【国際公開番号】WO2009/052405
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】
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