説明

優れた光拡散性を有する熱可塑性樹脂組成物。

【構成】透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、平均粒径が1〜10μmである光拡散剤(B)0.1〜6重量部および平均粒径が1〜20μmである蓄光剤(C)0.03〜1重量部からなることを特徴とする優れた光拡散性を有する熱可塑性樹脂組成物、およびそれからなる光拡散板。
【効果】本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる光拡散板は、より一層優れた光学的性能を有していることから、光源を覆う部材、すなわち液晶テレビの直下型バックライトユニットおよびエッジライト型ユニットの拡散板、照明器具のグローブボックス、各種デバイスのスイッチ類および光拡散性を必要とする用途全般に好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散剤および蓄光剤を透明な熱可塑性樹脂に添加することにより、光拡散性、輝度を向上させた熱可塑性樹脂組成物、ならびにそれからなる光拡散板に関する。詳しくは、光源を覆う部材、例えば液晶テレビの直下型バックライトユニットおよびエッジライト型ユニットの光拡散板、照明器具のグローブボックス、各種デバイスのスイッチ類および光拡散性を必要とする用途に好適に用いられる優れた光拡散性を有する熱可塑性樹脂組成物、およびそれを成形してなる光拡散板を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
透明な熱可塑性樹脂は、光透過性を有することから電気・電子・OA、自動車などの分野において、広範に使用されており、各分野ではそれぞれ求められる要求性能を満足する樹脂が選択され、使い分けがなされている。
特に、液晶テレビの直下型およびエッジライト型ユニット、照明器具カバーおよび各種デバイスのスイッチ類などの用途では、透明な熱可塑性樹脂を使用すると光を透過するため光源が透けて見えてしまうことから、樹脂成形品の背後にある光源(ランプ)の形状を認識させることなく、また光源の輝度をできるだけ損なわないような光拡散性を付与した材料が望まれている。
【0003】
透明な熱可塑性樹脂に光拡散性を付与する目的で、従来技術では連続相を形成する熱可塑性樹脂に、それとは屈折率が異なる高分子系や無機系の粒子を分散相として配合する方法が採用されている。また、当該分散相と連続相の屈折率の差の範囲や分散相の該粒子の大きさを調整して所望の光拡散性を発現する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−184559号公報
【特許文献2】特開平3−143950号公報
【0005】
一方、蓄光剤としては、紫外線などの光学的励起を行った後、照射を終えると、長時間に渡り発光することから、避難誘導標識や表示灯など夜間表示用途に用いられている。
【0006】
【特許文献3】特開平7−240187号公報
【特許文献4】特開2000−156107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、より一層高度な光拡散性および輝度を付与することが求められており、光拡散剤の組成、屈折率、粒子形状、粒子径などの面から種々の改良検討がなされているものの、発現する光学的性能は配合する光拡散剤によって決まってしまうことや、もはや光拡散剤の改質では要求される水準の光学的性能の達成は困難な状況にあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる問題点に鑑み鋭意検討を行った結果、透明な熱可塑性樹脂に光拡散剤と蓄光剤とを併用することにより、より一層高度な光学的性能を有する拡散板を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、平均粒径が1〜10μmである光拡散剤(B)0.1〜6重量部および平均粒径が1〜20μmである蓄光剤(C)0.01〜1重量部からなることを特徴とする優れた光拡散性を有する熱可塑性樹脂組成物、ならびにそれを成形してなる光拡散板を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる光拡散板は、光源を覆う部材、すなわち液晶テレビの直下型バックライトユニットおよびエッジライト型ユニットの拡散板、照明器具のグローブボックス、各種デバイスのスイッチ類および光拡散性を必要とする用途全般に好適に用いられ、より一層高度な光拡散性、輝度という光学的性能を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にて使用される透明な熱可塑性樹脂(A)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、メタクリレート・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などのスチレン系共重合体、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネートとポリエステルなどをブレンドしたポリマーアロイなどが挙げられる。とりわけ、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリアリレート、スチレン系共重合樹脂またはシクロオレフィンポリマーが好適に用いられる。なお、熱可塑性樹脂(A)の透明性の程度は、光を透過し、かつ当該樹脂の成形体を観察者と光源等の対象物の間に介在させた場合に観察者が対象物を認識できる程度の性能をいう。
【0012】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0013】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0014】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0015】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000、さらに好ましくは17000〜28000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0016】
本発明にて使用される光拡散剤(B)とは、高分子系および無機系など化学組成上特に制限はないが、本発明の樹脂成分(A)に光拡散剤(B)を添加し、押出機による溶融混合など公知の方法にて分散させた際にマトリックス相と相溶しないか、あるいは相溶しにくく粒子として存在することが必要である。
【0017】
光拡散剤(B)の具体例としては、炭酸カルシウム、シリカ、シリコーン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、リン酸チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸マグネシウム、マイカ、ガラスフィラー、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリコーンゴム状弾性体、ポリメチルシルセスオキサンなどの無機系光拡散剤、アクリル系、スチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ナイロン系、メタクリレート−スチレン系、フッ素系、ノルボルネン系などの有機系光拡散剤などが挙げられる。
【0018】
さらに、光拡散剤(B)は、1〜10μmの平均粒子径を有することを要件とする。平均粒子径が1μm未満であると光を透過するのみで、もはや光拡散効果が得られにくくなり好ましくない。一方、10μmを超えると、十分な光拡散効果が得られず視認性に劣るため好ましくない。また、粒径分布としては特に制限はないが、0.1〜100μm程度であり、好ましくは0.1〜25μmである。さらに、平均粒子径、粒径分布および種類の異なる2種類以上の光拡散剤を併用してもよく、粒径分布が一様ではなく、2つ以上の粒径分布を有するものなどを単独または併用して使用することもできる。
【0019】
光拡散剤(B)の配合量としては、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜6重量部の範囲である。0.1重量部未満であると十分な光拡散効果が得られにくくなるため好ましくない。一方、6重量部を越えると光の透過性が損なわれ、十分な光拡散効果が得られにくくなるので好ましくない。より好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、光拡散剤(B)と蓄光剤(C)を併用して使用することにより、従来の光拡散剤(B)単独での使用と比較して、一層優れた面発光性(輝度)を達成することができる。
【0021】
本発明にて使用される蓄光剤(C)とは、紫外線などの光を蓄え、光による照射を停止した後でも、放光という形で長時間に渡り発光し続けるものをいい、光励起終了後は、数分〜数十時間程度の残光持続性を持ち、光照射を停止した後、速やかに発光が減衰する一般の蛍光増白剤などとは区別される。
【0022】
蓄光剤(C)としては、CaS:Bi、CaSrS:Bi、ZnCdS:Cuなどの硫化物系蓄光剤、ZnS:Cuなどの硫化亜鉛系蓄光剤、MAで表される化合物で、Mはカルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素からなり、該化合物に賦活剤としてユウロピウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテニウム、マンガン、スズ、ビスマスから選ばれる少なくとも1つ以上の元素からなり、上記Mで表される金属元素に対して通常、10モル%以下で含有するアルミン酸系化合物などが挙げられる。好ましくは、加水分解性、残光特性の観点から、アルミン酸系化合物であり、さらに好ましくは、金属元素としてストロンチウム、賦活剤としてユウロピウム、ジスプロシウムを用いたアルミン酸ストロンチウム系化合物である。
【0023】
さらに、蓄光剤(C)は1〜20μmの平均粒子径を有することを要件とする。さらに好ましくは、2〜17μmの範囲である。1μm未満のものは製造上困難であるため、実用的でなく入手が困難なため好ましくない。一方、20μmよりも大きくなると、光拡散剤(B)との併用効果が得られにくくなるので好ましくない。また、粒径分布としては特に制限はないが、0.1〜100μm程度であり、好ましくは0.5〜80μmである。さらに、平均粒子径、粒径分布および種類の異なる2種類以上の蓄光剤を併用してもよく、粒径分布が一様ではなく、2つ以上の粒径分布を有するものなどを単独または併用して使用することもできる。
【0024】
蓄光剤(C)の配合量としては、透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.03〜1重量部である。配合量が0.03重量部未満であると、光拡散剤(B)との併用効果が得られにくくなるため好ましくない。一方、1重量部を越えると、熱安定性に劣ることから好ましくない。より好ましくは、0.05〜0.5重量部であり、かかる範囲において光拡散剤(C)と併用するとより一層優れた面発光性(輝度)を得ることができる。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、実用上、光拡散性以外に要求される性能により、公知の各種添加剤、ポリマーなどを必要に応じて添加することができる。例えば、長期間、光に暴露された際の樹脂成形品の変色を抑制するために、ヒンダードアミン系の耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系およびマロネート系の紫外線吸収剤およびこれらを併用して添加してもよい。
【0026】
また、難燃性が必要とされる場合、公知の各種難燃剤、例えば、テトラブロモビスフェノールAオリゴマーなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノリン酸エステル類、ビスフェノールAジホスフェート、レゾルシンジホスフェート、テトラキシレニルレゾルシンジホスフェートなどオリゴマータイプの縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウムおよび赤燐などのリン系難燃剤、各種シリコーン系難燃剤、あるいは難燃性をより高めるために、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩があげられ、好適には、4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3′−ジスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩等などの有機金属塩なども添加することができる。これらの難燃剤の中でも、リン系難燃剤は、難燃性を向上させるばかりでなく、流動性をも向上させることができることから好適に用いることができる。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記以外の公知の添加剤、例えばフェノール系またはリン系熱安定剤[2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、4,4′−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(4−エチル−6−t−メチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4′−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)等]、滑剤[パラフィンワックス、n−ブチルステアレート、合成蜜蝋、天然蜜蝋、グリセリンモノエステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、ペンタエリスリトールテトラステアレート等]、着色剤[例えば酸化チタン、カーボンブラック、染料]、充填剤[炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、ガラスフレーク、カーボン繊維、タルク、マイカ、各種ウィスカー類等]、流動性改良剤、展着剤[エポキシ化大豆油、流動パラフィン等]、さらには他の熱可塑性樹脂や各種耐衝撃改良剤(ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、エチレン・プロピレン系ゴム等のゴムに、メタアクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル等の化合物をグラフト重合してなるゴム強化樹脂等が例示される。)を必要に応じて添加することができる。
【0028】
本発明における各構成成分の実施の形態および順序には何ら制限はない。例えば、透明な熱可塑性樹脂(A)、光拡散剤(B)、蓄光剤(C)および各種添加剤を任意の配合量で計量し、タンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等により一括混合した後、混合物を通常の一軸またはニ軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット化させる方法、あるいは、各々の成分を一部または全てを別々に計量し、複数の供給装置から押出機内へ投入し、溶融混合する方法、さらには、(B)および/または(C)および/または各種添加剤等を高濃度に配合し、一旦溶融混合してペレット化し、マスターバッチとした後、当該マスターバッチと透明な熱可塑性樹脂(A)を、所望の比率により混合することもできる。そして、これらの成分を溶融混合する際の、押出機の投入する位置、押出温度、スクリュー回転数、供給量など、状況に応じて任意の条件が選択され、ペレット化することができる。
さらに、該マスターバッチと透明な熱可塑性樹脂(A)とを、所望の比率により配合した後、射出成形装置やシート押出機装置に直接投入し、成形品とすることも可能である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれら実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、実施例中の「%」、「部」はそれぞれ重量基準に基づく。
【0030】
尚、使用された各種配合成分は以下のものである。
ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ社製カリバー200−3
(粘度平均分子量:28000、以下PCと略記)
光拡散剤:
日興リカ社製MSP−S020:平均粒径 2μm
(ポリメチルシルセスオキサン系拡散剤、以下LD−1と略記)
ロームアンドハース社製EXL−5136:平均粒径 5μm
(アクリル系拡散剤、以下LD−2と略記)
積水化成品工業製MBX−20:平均粒径 20μm
(アクリル系拡散剤、以下LD−3と略記)
蓄光剤:
根本特殊化学社製G−300FF
(平均粒径4.3μm、アルミン酸ストロンチウム系蓄光剤、以下PP−1と略記)
根本特殊化学社製G−300F
(平均粒径15μm、アルミン酸ストロンチウム系蓄光剤、以下PP−2と略記)
根本特殊化学社製G−300M
(平均粒径26μm、アルミン酸ストロンチウム系蓄光剤、以下PP−3と略記)
【0031】
本発明における各種評価項目の測定方法について説明する。
(輝度の評価)
図1に示すとおり、21インチ直下型バックライトユニットを用いて、冷陰極管上面のポリカーボネート樹脂製光拡散板の発光面において、発光面上のランプ間の輝度をトプコン社製輝度計BM−7により、測定距離35cm、視野角1°の条件でそれぞれ測定し、2200cd/m以上であるものを合格(○)、そうでないものを不合格(×)とした。
【0032】
(輝度上昇率)
前記方法によりランプ間輝度を測定し、表1では蓄光剤を添加しない参考例Aの輝度を基準とし、さらに表2においては蓄光剤を添加しない参考例Bの輝度を基準とし、下記式により輝度上昇率を求めた。輝度上昇率が3%以上あるものを合格(○)そうでないものを不合格(×)とした。
1.表1における輝度上昇率
輝度上昇率(%)=(参考例A以外の輝度−参考例Aの輝度)×100/参考例Aの輝度
2.表2における輝度上昇率
輝度上昇率(%)=(参考例B以外の輝度−参考例Bの輝度)×100/参考例Bの輝度
【0033】
(熱安定性の評価)
表1および2に示す配合比率により、カワタ製スーパーフローターにより乾式混合した。次いで、神戸製鋼所社製二軸押出機KTX−37(軸直径=37mmφ、L/D=30)により、250〜290℃の温度条件にて溶融混練した。得られたペレットを日本製鋼所社製射出成形機J100E2Pにより、シリンダー設定温度300℃、金型温度80℃の条件下、樹脂ペレットを15分間滞留し、縦90mm、横50mm、厚み2mmの平板試験片を採取した。得られた試験片の外観を目視により確認し、変色が少ないものを合格(○)、変色が著しいものを不合格(×)とした。
【0034】
(総合判定)
輝度の評価で2200cd/m以上、輝度上昇率が3%以上であり、かつ熱安定性の評価において変色が少ないものを合格(○)、ひとつでも満足していないものを不合格(×)とした。
【0035】
(実施例1)
表1に示す配合比率により、PC、LD−1およびPP−1をカワタ製スーパーフローターにより乾式混合した。次いで、神戸製鋼所社製二軸押出機KTX−37(軸直径=37mmφ、L/D=30)により、250〜290℃の温度条件にて溶融混練した。得られたペレットをシート押出機により、250〜290℃の温度条件下にて押出し、厚さ2mmのポリカーボネート樹脂製光拡散板を成形し、バックライトユニットのサイズに切出し、輝度の評価を行った。このときの輝度は、2610cd/mであり合格(○)であった。また、基準となる参考例Aに対して輝度上昇率は4.4%であり、合格(○)であった。さらに、前記押出機により得られたペレットを、日本製鋼所製J100E2P射出成形機を用い、シリンダー設定温度300℃、金型温度80℃の条件下、樹脂ペレットを15分間滞留し、縦90mm、横50mm、厚み2mmの平板試験片を採取した。得られた試験片の外観を目視により確認したところ、変色が少なく合格(○)であった。輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価全てを満足していたため、総合判定は合格(○)であった。
【0036】
(実施例2)
蓄光剤の種類をPP−2とした以外は、実施例1と同様の方法により、輝度の評価および熱安定性の評価を行った。結果は、輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価全てを満足していたため、総合判定は合格(○)であった。
【0037】
(参考例A)
蓄光剤を添加せず、LD−1の配合量を0.6部とした以外は、実施例1と同様の方法により、輝度を測定した。結果は2500cd/mであった。
【0038】
(比較例1)
LD−1の配合量を0.59部、さらにPP−1の配合量を0.01部とした以外は、実施例1と同様の方法により、輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価を行った。このときの輝度の評価において2200cd/m以上であり合格(○)であったが、輝度上昇率は0.8%であり、十分ではなく不合格(×)であった。また、射出成形により得られた試験片の外観を目視により確認したところ、変色が少なく合格(○)であった。輝度上昇率が十分ではなかったため、総合判定は不合格(×)であった。
【0039】
(比較例2)
本発明における平均粒子径の規定範囲を超えた蓄光剤PP−3を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価を行った。このときの輝度の評価において2200cd/m以上であり合格(○)であったが、輝度上昇率は1.6%であり十分ではなく不合格(×)であった。また、射出成形により得られた試験片の外観を目視により確認したところ、変色が少なく合格(○)であった。輝度上昇率が十分ではなかったため、総合判定は不合格(×)であった。
【0040】
(実施例3)
光拡散剤の種類と配合量をそれぞれLD−2および3.5部、蓄光剤PP−1の配合量を0.7部とした以外は、実施例1と同様の方法により、輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価を行った。結果は、輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価全てを満足していた。
【0041】
(参考例B)
蓄光剤を添加せず、LD−1の代わりにLD−2を4.2部とした以外は、実施例1と同様の方法により、輝度の評価および熱安定性の評価を行った。このときの輝度は、2300cd/mであった。また、射出成形により得られた試験片の外観を目視により確認したところ、変色が少なく合格(○)であった。
【0042】
(比較例3)
LD−2の配合量を2.7部、PP−1の配合量を1.5部とした以外は、実施例3と同様の方法により、輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価を行った。このときの輝度の評価および輝度上昇率は満足していたが、射出成形により得られた試験片の外観を目視により確認したところ、変色が著しく不合格(×)であった。熱安定性の評価を満足していなかったため、総合判定は不合格(×)であった。
【0043】
(比較例4)
LD−2の種類をLD−3とした以外は、実施例3と同様の方法により、輝度の評価、輝度上昇率および熱安定性の評価を行った。このときの輝度の評価および輝度上昇率は十分ではなく不合格(×)であった。また、射出成形により得られた試験片の外観を目視により確認したところ、変色は少なく合格(○)であった。輝度の評価および輝度上昇率が不十分であったため、総合判定は不合格(×)であった。
【0044】
以上のように、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、光拡散剤と蓄光剤を併用することにより、光拡散剤単独の使用よりも一層優れた面発光性の得られることが見出された。
【0045】
表1 配合比率と評価結果
【0046】
【表1】


【0047】
表2 配合比率と評価結果
【0048】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のランプ間輝度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
A:輝度計
B:冷陰極管
C:輝度測定部位
D:ポリカーボネート樹脂製光拡散板
E:光反射板














【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、平均粒径が1〜10μmである光拡散剤(B)0.1〜6重量部および平均粒径が1〜20μmである蓄光剤(C)0.03〜1重量部からなることを特徴とする優れた光拡散性を有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
透明な熱可塑性樹脂(A)が、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、ポリアリレート、スチレン系共重合樹脂またはシクロオレフィンポリマーから選択される1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
光拡散剤(B)の配合量が、0.2〜5重量部であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
蓄光剤(C)の配合量が、0.05〜0.5重量部であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
蓄光剤(C)が、アルミン酸ストロンチウム系化合物であることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる光拡散板。





【図1】
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【公開番号】特開2006−335973(P2006−335973A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165178(P2005−165178)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(396001175)住友ダウ株式会社 (215)
【Fターム(参考)】