説明

充填ポリアミド成形化合物

本発明は、複数のポリアミドの選択されたポリマー混合物及び難燃剤に加えて、非円形の断面を有するガラス繊維を含む充填ポリアミド成形材料に関する。本発明は更に、成形物品を製造するためのかかる成形材料の使用、並びにかかる成形物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のポリアミドを含む選択されたポリマー混合物及び難燃剤に加えて、非円形の断面を有するガラス長繊維を含む充填ポリアミド成形化合物に関する。更に、本発明は、成形物品を製造するためのかかる成形化合物の使用、及び成形物品それ自体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、今日では屋内及び屋外用の構造部材として広く用いられており、これは本質的に優れた機械特性のためであると考えることができる。
【0003】
強度及び剛性のような機械特性の改良は、特に繊維状強化材料、例えばガラス繊維を加えることによって達成することができる。
【0004】
而して、EP−0246620−B1においてはガラス繊維強化熱可塑性プラスチック材料が記載されており、ここでは、長方形、楕円形、又は封筒形状の断面を有する切断形態のガラス繊維が用いられている。
【0005】
EP−0376616−B1においては、非円形の断面を有し、湾曲しているか又は半円形の輪郭を有する繊維状の強化剤が含まれている熱可塑性ポリマー組成物が開示されている。
【0006】
最後に、DE−10346326−A1においては、難燃性のポリアミド成形化合物及びその使用が開示されており、ここでは、無限ストランド(粗糸)の形態又は切断形態(ガラス繊維)の円形の断面を有するガラス繊維が強化材料として含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP−0246620−B1
【特許文献2】EP−0376616−B1
【特許文献3】DE−10346326−A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、最新技術において今日まで知られているガラス繊維強化プラスチック材料は、ガラス繊維を含むポリアミド成形化合物でさえも、全ての点で満足な結果は与えないことが示された。したがって、低い歪み、高い横方向の剛性及び強度、並びに優れた表面の品質及び同時に強化繊維の高い充填度を達成する、ガラス繊維で強化した利用できるポリアミド成形化合物及びそれから製造することのできる成形部品を製造することが望ましい。PA成形化合物は、同時に容易に処理できなければならず、則ち、良好な流動性及び良好な難燃性も有していなければならない。特に、熱安定性に関して最新技術と比較して優れた特性を有するガラス繊維を有するポリアミド成形化合物で成形物品を製造する大きな必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の目的は、処理して、歪み、ノッチ付き衝撃強さ、横方向の剛性及び強度、並びに表面品質及び熱安定性(HDT−C)に関して同時に可能な限り優れた特性を有するように意図される成形物品を形成することができるポリアミド成形化合物を示すことである。成形物品は更に良好な防火性を有していなければならない。
【0010】
この目的は、成形化合物に関しては請求項1の特徴によって、成形物品に関しては請求項17の特徴によって達成される。従属項は有利な展開を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によって提案される充填ポリアミド成形化合物は、独立項の請求項1によれば、ポリアミドマトリクスを形成し、特定の成分から形成されるポリマー混合物を有するという特徴を有する。
【0012】
これによると、ポリマー混合物(A)は、PA6、PA46、PA66、PA610、PA612、PA6/12、PA1010、PA11、PA12、PA1012、PA1212、及び/又はこれらの混合物及び/又はコポリアミドの群から選択される少なくとも1種類の脂肪族ポリアミド(A1)50〜90重量%、特に60〜85重量%を含む。PA6及びPA66が好ましい。
【0013】
更に、ポリマー混合物は、MACM10−18、MACMI、MACMT、MXDI、MXD6、MXD6/MXDI、PACM10−18、6I、6T、6T/66、6I/6T、並びにこれらの混合物及び/又はコポリアミドから選択される少なくとも1種類のポリアミド(A2)10〜45重量%を第2の成分として含んでいてよい。好ましくは、ポリアミド(A2)は10〜45重量%、特に好ましくは15〜40重量%でポリマー混合物中に含まれる。
【0014】
ここで、25〜72重量%の上記記載のポリマー混合物を含むポリアミドマトリクス中に、20〜65重量%の、非円形の断面、及び2〜8の副断面軸に対する主断面軸の寸法比を有するガラス繊維を含むことが、提案する充填ポリアミド成形化合物において重要である。
【0015】
本発明にしたがって用いるガラス繊維(B)は、平坦な形状及び非円形の断面を有し、好ましくは無限ストランド(粗糸)の形態で用いられるガラス繊維であると理解される。副断面軸に対する主断面軸の寸法比は、好ましくは3.5〜6.0の間、特に好ましくは3.5〜5.0の間である。断面は、好ましくは縦方向の長円形、楕円形、又はほぼ長方形である。ガラス繊維それ自体は、E−ガラス繊維、A−ガラス繊維、C−ガラス繊維、D−ガラス繊維、M−ガラス繊維、S−ガラス繊維、及び/又はR−ガラス繊維を含む群から選択することができ、E−ガラス繊維が好ましい。また、ガラス繊維それ自体にアミノ又はエポキシシラン被覆を与えることもできる。
【0016】
本発明による非円形の断面を有するガラス繊維(B)は、ガラス短繊維(0.2〜20mm、好ましくは2〜12mmの長さを有する切断ガラス)又はガラス長繊維(無限繊維又は粗糸)のいずれかとして用いる。
【0017】
用いるガラス繊維の更なる特徴は、主断面軸の長さが、好ましくは6〜40μmの範囲、特に17〜30μmの範囲であり、副断面軸の長さが、3〜20μmの範囲、特に4〜10μmの範囲であるという点にある。
【0018】
ポリアミドマトリクスを形成するポリマー混合物の組成に関する材料の観点から言うと、本発明は、基本的には、場合によっては更に(A2)で言及したポリアミドと組み合わせて、特徴(A1)で言及した脂肪族ポリアミドの全ての組み合わせを含む。脂肪族ポリアミド(A1)は、好ましくは、1.3〜2.3の範囲、好ましくは1.35〜2.0の範囲、特に1.40〜1.90の範囲のm−クレゾール中(0.5重量%;20℃)で測定される溶液粘度:ηrelを有する。これらの脂肪族ポリアミドの製造は、最新技術から公知なように、対応するラクタム及び/又はアミノカルボン酸及び/又はジアミン及び二酸の重縮合又は重合によって行う。
【0019】
ポリアミド(A2)の場合においては、コポリアミド6I/6T及びMACM12並びにMXD6/MXDIが好ましい。コポリアミド6I/6Tに関しては、2つの異なる組成範囲が特に好ましい。一方では、50モル%未満の6T単位の割合を有するアモルファスコポリアミドがあり、20:80〜45:55の6T:6Iの組成範囲が好ましく、他方では、50モル%より大きな6Tの割合を有する高融点コポリアミドがあり、55:45〜80:20、特に70:30の6T:6Iの組成範囲が好ましい。コポリアミドMXD6/MXDIに関しては、MXD6に富み、特に80モル%より多いMXD6の含量を有する組成が好ましい。
【0020】
ポリマー混合物(A)に関しては、以下の組成が好ましい:
(A1):PA66;
(A2):PA6I/6T:モル比は65:35〜75:25の範囲、又は特に67:33である。
【0021】
(A1):PA610及び/又はPA1010:混合物の場合にはこれらの成分は1:1〜4:1の比で用いる;
(A2):PA6I/6T:モル比は65:35〜75:25の範囲、又は特に67:33である。
【0022】
(A1):1:2〜1:4、特に1:4の比のPA6とPA66との混合物;
(A2):PA6I/6T:モル比は65:35〜75:25の範囲、又は特に67:33である。
【0023】
(A1):PA66;
(A2):PA6I/6T:モル比は40:60〜25:75の範囲、又は特に30:70である。
【0024】
(A1):PA66;
(A2):PA6T/66:モル比は50:50〜70:30の範囲、又は特に55:45である。
【0025】
(A1):PA66
(A2):PA MXD6/MXDI:モル比は70:30〜90:10の範囲、又は特に88:12である。
【0026】
(A1):PA12;
(A2):PA MACM12。
【0027】
(A1):PA12;
(A2):PA MACMI/12:ラウリンラクタムの含量は15〜45モル%の範囲、好ましくは40モル%未満、特に35モル%未満である。
【0028】
それぞれ、成分(A1)は、好ましくは60〜80重量%、特に65〜75重量%の範囲、成分(A2)は、好ましくは20〜40重量%の範囲、特に25〜35重量%の範囲で用いる。
【0029】
特定の態様においては、ポリマー混合物(ポリアミドマトリクス)に関して以下の組成が好ましい:
(A1):70〜100重量%のPA1010又はPA1012又はPA11又はPA12;
(A2):0〜30重量%のPA MACM12又はPA MACMI/12又はPA PACM12/MACM12。
【0030】
(A1):70〜100重量%の、1:2〜1:4、特に1:4の比のPA6とPA66との混合物;
(A2):0〜30重量%のPA 6I/6T:モル比は65:35〜75:25の範囲、又は特に67:33である。
【0031】
特にポリマーマトリクスを成分(A1)のみによって形成すると好ましい。
【0032】
更なる好ましい態様においては、成分(A2)は(A1)よりも高い融点を有し、(A2)の融点は270℃より高く、特に290℃より高い。
【0033】
更なる態様においては、この成分はアモルファスであり、90℃より高く、好ましくは110℃より高く、特に好ましくは140℃より高いガラス転移温度を有する。
【0034】
ポリアミド(A2)は、好ましくは1.3〜2.0の範囲、好ましくは1.35〜1.9の範囲、特に1.40〜1.85の範囲のm−クレゾール中(0.5重量%;20℃)で測定される溶液粘度:ηrelを有する。
【0035】
ポリアミド(A2)の製造は、最新技術から同じく公知なように、実質的にモル量の対応するジアミン及びジカルボン酸の転化、及び場合によってはラクタム及び/又はアミノカルボン酸の付加によって行う。
【0036】
本発明による成形化合物は、更に8〜25重量%、好ましくは10〜22重量%、特に12〜20重量%の難燃剤(C)も含む。難燃剤(成分(C))は、60〜100重量%、好ましくは70〜98重量%、特に80〜96重量%のホスフィン酸塩及び/又はジホスフィン酸塩(成分(C1))、並びに0〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、特に4〜20重量%のメラミンポリホスフェート(成分(C2))を含む。
【0037】
このタイプの難燃剤は最新技術から公知である。この点に関してはDE−103463261を参照。
【0038】
成分(C1)としては、一般式(I)及び/又は式(II)のホスフィン酸塩及び/又はそのポリマーが好ましい:
【0039】
【化1】

【0040】
(式中、
、Rは、同一か又は異なり、線状又は分岐のC〜Cアルキル、及び/又はアリールを意味し;
は、線状又は分岐のC〜C10アルキレン、C〜C10のアリーレン、アルキルアリーレン、又はアリールアルキレンを意味し;
Mは、周期律表の第2又は第3主族又は副族からの金属イオンを意味し;
mは2又は3であり;
nは1又は3であり;
xは1又は2である)
金属イオンとしては、Al、Ca、及びZnが好ましく用いられる。
【0041】
ポリアミドマトリクスを形成するポリマー混合物には、更に、最新技術から既に公知なように、粒子状及び/又は層状の充填剤も含ませることができる。これらの粒子状及び/又は層状の充填剤(D)は、20重量%以下の割合でポリマー混合物中に存在させることができる。充填剤の好ましい量は0.1〜15重量%である。
【0042】
粒子状及び/又は層状で存在させることのできるこのタイプの充填剤の例としては、ウイスカー、タルカム、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、粉砕又は沈殿炭酸カルシウム、石灰、長石、硫酸バリウム、永久磁性又は磁化性の金属又は合金、ガラスボール、中空ガラスボール、中空ボールシリケート充填剤、天然層状シリケート、合成層状シリケート、及びこれらの混合物を言及することができる。
【0043】
好ましい更なる強化材料としては、例えば、炭素繊維(炭素繊維、グラファイト繊維)、ホウ素繊維、アラミド(p−又はm−アラミド繊維(例えば、Kevlar(登録商標)又はNomex(登録商標)、DuPont)又はこれらの混合物)、及び玄武岩繊維を言及することができ、言及した強化繊維は、異なる繊維の混合物の形態でも短繊維又は長繊維として用いることができる。本発明による更に他の態様においては、本発明にしたがって用いるガラス繊維は、炭素繊維(炭素繊維、グラファイト繊維)との混合物で存在させることができる。ガラス繊維の一部を炭素繊維に代えることによって、その剛性が純粋なガラス繊維と比較して増加している複合繊維強化化合物が製造される。ガラス繊維と炭素繊維との混合物は、70/30〜97/3、特に80/20〜95/5のガラス繊維/炭素繊維の重量比を有していてよい。
【0044】
好ましくは、本発明による成形化合物は、強化繊維として実質的に成分(B)のみを含み、特に強化繊維として専ら成分(B)のみを含む。更なる好ましい態様によると、成分(B)は、ポリアミド成形化合物の30〜60重量%、特に35〜55重量%、好ましくは少なくとも40重量%の範囲で存在し、この割合は好ましくは殆どの部分に関して又は専ら非円形の断面を有するガラス繊維によって形成される。
【0045】
ポリアミドマトリクスを形成するポリマー混合物においては、更に添加剤Dも5重量%以下の量、好ましくは0.1〜5重量%の量で含ませることができる。通常の添加剤は、例えば、熱保護剤、酸化防止剤、光保護剤、潤滑剤、離型剤、成核剤、顔料、着色剤、及び垂れ防止剤、並びにこれらの混合物である。
【0046】
特に以下の成分を含むポリアミド成形化合物が優れた特性を有することが試験で示された。
A:25〜72重量%のポリアミドマトリクス;
B:20〜65重量%のガラス繊維;
C:8〜20重量%の難燃剤;
D:0.1〜15重量%の充填剤;及び
D:0.1〜5重量%の添加剤。
【0047】
これらの成分の合計は100重量%である。
【0048】
驚くべきことに、本発明による充填ポリアミド成形化合物を処理して成形物品を形成すると、特にノッチ付き衝撃強さ、特に主繊維方向に対して横方向の強度及び剛性、並びに熱安定性(HDT−C)に関して平均より上の特性を有する成形物品が得られることが見出された。
【0049】
更に、本発明による成形化合物及びそれから製造される成形物品の場合においては、ASTM−D648にしたがう負荷下での熱安定性温度(HDT−C)は、充填剤として円形の断面を有するガラス繊維を用いる同等のポリアミド成形化合物のものよりも少なくとも10℃高いことを強調すべきである。更に、同等のポリアミド成形化合物による熱安定性温度は20℃以下大きいことが示された。
【0050】
更に、PA成形化合物の場合、或いはそれから製造される成形物品の場合においては、上記に記載の傑出した特性と組み合わせて顕著な難燃性も達成されることを強調すべきである。本成形化合物は、UL等級によれば、厚さ0.8mmの試験体においてV0である。
【0051】
特に本発明による成形化合物及びそれから製造される成形物品の場合においては、23℃におけるノッチ付き衝撃強さは、強化剤として円形のガラス繊維(則ち円形の断面を有するガラス繊維)を用いる同等のポリアミド成形化合物のものよりも平均で80〜100%高いことを強調すべきである。
【0052】
驚くべきことに、本発明による成形化合物及びそれから製造される成形物品の場合においては、横方向の剛性及び横方向の強度を、円形のガラス繊維を用いる同等のポリアミド成形化合物と比較して大きく向上させることができることを示すことができた。本発明による成形化合物及びそれから製造される成形物品の場合においては、横方向の剛性(噴射方向に対して横方向に測定)は、測定される縦方向の剛性の少なくとも55%、好ましくは少なくとも58%である。円形のガラス繊維を用いる同等のポリアミド成形化合物の場合においては、横方向の剛性は最良で縦方向の剛性に対して52%である。
【0053】
更に、本発明による成形化合物は、非常に良好な処理性及び流動性を有することを特徴とする。一面では好適に選択されたマトリクス成分(A1)及び(A2)、並びにガラス繊維(B)の特別な形状がこれに等しく寄与する。
【実施例】
【0054】
以下の実施例を参照して本発明を以下により詳細に説明する。
【0055】
下記に示す材料を実施例及び比較例において用いた。
【0056】
PAタイプA:ポリアミド−66;ηrel=1.82;RADICI, イタリア;
PAタイプB:ポリアミド−6;ηrel=1.86;EMS-CHEMIE AG, スイス;
PAタイプC:ポリアミド6I/6T(67:33);ηrel=1.57;EMS-CHEMIE AG, スイス;
PAタイプD:ポリアミド6I/6T(30:70);ηrel=1.52;EMS-CHEMIE AG, スイス;
PAタイプE:ポリアミドMACM12;ηrel=1.75;EMS-CHEMIE AG, スイス;
PAタイプF:ポリアミドMXD6/MXDI(88:12);ηrel=1.62;EMS-CHEMIE AG, スイス;
ガラス繊維タイプA:NITTOBO CSG3PA-820;長さ3mm;幅28μm;厚さ7μm;断面軸のアスペクト比=4;アミノシランサイズ;日東紡績, 日本(平坦ガラス繊維;本発明);
ガラス繊維タイプB:CS7928;長さ4.5mm;直径10μm;BAYER AG, ドイツ(円形の断面を有するガラス繊維、最新技術);
Melapur(登録商標)200/70:メラミンポリホスフェート(Ciba Spez. GmbH);難燃剤;CAS No.: 218768-84-4;
Exolit(登録商標)GP1230:有機リン酸塩(Clariant Produkte GmbH)、難燃剤。
【0057】
Werner and Pfleiderer社による二軸押出機:タイプZSK-30上で、表1の組成の成形化合物を製造した。ポリアミドタイプA〜Eの粒状物及び難燃剤を供給区域中に計量投入した。ノズルの正面のハウジングユニット内の側部フィーダー3を通してガラス繊維をポリマー溶融体中に計量投入した。
【0058】
ハウジングの温度を290℃への上昇プロファイルとして調節した。150〜200rpmにおいて、10kgの処理量が達成された。水中粒状化法か、或いはポリマー溶融体を有孔ノズルを通して加圧し、ノズルから排出した直後に水流中において回転ブレードによって粒状化する水中加熱切断法を用いて粒状化を行った。粒状化し、110℃において24時間乾燥した後、粒状物の特性を測定し、試験体を製造した。
【0059】
260°〜300°のシリンダー温度及び15m/分のスクリュー周速度を設定したArburg射出成形ユニットで試験体を製造した。成形型温度は100〜140℃に選択した。
【0060】
以下の標準規格にしたがい、以下の試験体について測定を行った。
【0061】
引張弾性率:
ISO−527;1mm/分の引張速度を用いた;
ISO引張棒状試料、標準規格:ISO/CD−3167;タイプA1;170×20/10×4mm;温度23℃;
BIAX試験体(Noss'Ovraスタッフマガジン、2006年12月、No.12、29年号、EMS-CHEMIE AGにおいて公開されているBIAX)(これによって剛性及び強度の方向依存性測定が可能である)について横方向の剛性を測定した。
【0062】
引裂強度及び破断点伸び:
ISO−527;5mm/分の引張速度;
ISO引張棒状試料、標準規格:ISO/CD−3167;タイプA1;170×20/10×4mm;温度23℃;
BIAX試験体(Noss'Ovraスタッフマガジン、2006年12月、No.12、29年号、EMS-CHEMIE AGにおいて公開されているBIAX)(これによって剛性及び強度の方向依存性測定が可能である)について横方向の強度を測定した。
【0063】
シャルピーによる衝撃強さ:
ISO−179/eU
ISO試験棒状試料、標準規格:ISO/CD−3167;タイプB1;80×10×4mm;温度23℃;
1=機器非装備;2=機器装備。
【0064】
シャルピーによるノッチ付き衝撃強さ:
ISO−179/eA
ISO試験棒状試料、標準規格:ISO/CD−3167;タイプB1;80×10×4mm;温度23℃;
1=機器非装備;2=機器装備。
【0065】
ガラス転移温度(Tg)、溶融エンタルピー(ΔH):
ISO標準規格11357−1/−2
粒状物;
20℃/分の加熱速度を用いて示差走査熱量測定(DSC)を行った。
【0066】
相対粘度:
DIN−EN−ISO−307;0.5重量%m−クレゾール溶液中、温度20℃。
【0067】
MVR(メルトボリュームレート):
ISO−1133にしたがい、275℃及び21.6kgの負荷において測定。
【0068】
流動長:
Arburg射出成形機(タイプ:ARBURG-ALLROUNDER 320-210-750)を用いて流動長を測定した。290°の配合温度及び100℃の型温度において1.5mm×10mmの寸法の渦巻体を形成した。
【0069】
表中において他に示さない限りにおいて、試験体は乾燥状態で用いた。この目的のために、試験体を、射出成形後に室温において乾燥雰囲気中に少なくとも48時間保存した。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜3の成形化合物から製造した試験体は、対応する比較例よりも一貫して高い剛性及び強度を有する。これは、特に主繊維方向に対して横方向に測定した弾性率及び引裂強さに関しても当てはまる。
【0072】
熱安定性に関しても、本発明による成形化合物は傑出した特性を示す。比較例のHDT−Cは実施例1〜3よりも30℃以上低い。
【0073】
比較例VB1〜VB3の成形化合物は処理において問題がある。則ち、射出成形処理が困難であり、殆ど再現できず、高い充填圧力〜非常に高い充填圧力が必要であり、製造される成形物品は、部分的な崩壊部位及び/又は欠陥部位を有し、成形型から取り出すのが困難である。これに対して、本発明による成形化合物は小さな壁厚の場合においても非常に容易に処理することができる。実施例1〜3の場合には、成形型からの取り出し中の問題は起こらなかった。本発明による実施例の場合において必要な充填圧力は、比較例の場合よりも40%以下低かった。更に、本発明による成形化合物から製造される成形物品は著しく平滑な表面を有していた。
【0074】
成形化合物の実質的により良好な流動挙動は、平坦なガラス繊維(非円形の断面)によるものであり、これは従来のガラス繊維強化成形化合物(円形のガラス繊維)と比較して平均で30〜40%大きい流動長を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)PA6、PA46、PA66、PA610、PA612、PA6/12、PA1010、PA11、PA12、PA1012、PA1212、及び/又はこれらの混合物及び/又はコポリアミドの群から選択される脂肪族ポリアミド55〜90重量%;及び
(A2)MACM10−18、MACMI、MACMT、MXDI、MXD6、MXDX/MXDI、PACM10−18、6I、6T、6I/6T、6T/66、及び/又はこれらの混合物及び/又はコポリアミドから選択される少なくとも1種類のポリアミド10〜45重量%;
を含むポリアミドマトリクスを形成するポリマー混合物25〜72重量%;
(B)非円形の断面、及び2〜8の副断面軸に対する主断面軸の寸法比を有するガラス繊維20〜65重量%;及び
(C)(C1)ホスフィン酸塩及び/又はジホスフィン酸塩60〜100重量%;
(C2)メラミンポリホスフェート0〜40重量%;
を含む難燃剤8〜25重量%;
から形成される充填ポリアミド(PA)成形化合物。
【請求項2】
副断面軸に対する主断面軸の寸法比が3.5〜6.0の間である、請求項1に記載のPA成形化合物。
【請求項3】
ガラス繊維が、E−ガラス繊維、A−ガラス繊維、C−ガラス繊維、D−ガラス繊維、M−ガラス繊維、S−ガラス繊維、及び/又はR−ガラス繊維を含む群から選択される、請求項1又は2に記載のPA成形化合物。
【請求項4】
ガラス繊維の場合において、主断面軸の長さが6〜40μmであり、副断面軸の長さが3〜20μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項5】
ガラス繊維(B)が、0.2〜20mmの繊維長、特に2〜12mmの繊維長を有する切断ガラスの形態で存在する、請求項1〜4のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項6】
ガラス繊維(B)が無限ガラス繊維(粗糸)の形態で存在する、請求項1〜5のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項7】
ASTM−D648にしたがう負荷下での熱撓み温度(HDT−C)が、同等の量比の円形区域を有するガラス繊維が充填されているPAマトリクスに関する同等の充填成形化合物のHDT−Cよりも少なくとも10℃高い、請求項1〜6のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項8】
HDT−Cが20℃高い、請求項7に記載のPA成形化合物。
【請求項9】
ポリマー混合物A中に、55〜85重量%のポリアミドA1及び/又はコポリアミド、並びに10〜45重量%のポリアミドA2を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項10】
ポリアミドA2が、6T/6I、MXD6/MXDI、MACM12、PACM12/MACM12、6I、6T/66、6I/6Tから選択される、請求項1〜9のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項11】
20重量%以下の粒子状及び/又は層状の充填剤Dを含む、請求項1〜10のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項12】
0.1〜15重量%の粒子状及び/又は層状の充填剤Dを含む、請求項11に記載のPA成形化合物。
【請求項13】
5重量%以下の添加剤Eを含む、請求項1〜12のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項14】
0.1〜5重量%の添加剤Eを含む、請求項13に記載のPA成形化合物。
【請求項15】
以下の成分:
A:25〜72重量%のポリアミドマトリクス;
B:20〜65重量%のガラス繊維;
C:8〜20重量%の難燃剤;
D:0.1〜15重量%の充填剤;及び
E:0.1〜5重量%の添加剤;
を含み、但し、A+B+C+D+Eは100重量%である、請求項1〜14のいずれかに記載のPA成形化合物。
【請求項16】
成形物品を製造するための請求項1〜15のいずれかに記載の成形化合物の使用。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれかに記載のポリアミド成形化合物から得られる成形物品。
【請求項18】
射出成形、押出、引き抜き成形、ブロー成形、又は他の成型技術を用いて製造される、請求項17に記載の成形物品。

【公表番号】特表2011−503306(P2011−503306A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533488(P2010−533488)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009550
【国際公開番号】WO2009/062691
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508375468)エムス−パテント・アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】