説明

充填材およびその充填確認方法

【課題】 構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面への充填状態が正確に確認できる充填材、およびその充填確認方法を提供することである。
【解決手段】 充填材は合成系接着剤、天然系接着剤、樹脂モルタルのいずれかに造影剤を1重量%以上混合してなることを特徴とし、また合成系接着剤はエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ビニルエステル樹脂系接着剤のいずれかを使用し、また天然系接着剤は澱粉系接着剤、蛋白系接着剤、天然ゴム系接着剤、アスファルトのいずれかを使用するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面などに充填する充填材、およびその充填材の充填確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すように、木材10またはコンクリート部材11に空けた孔12に鉄筋13を挿入するとともに、この孔12に接着剤14を充填してこれらを接合する場合、この接着剤14が十分に充填されたか否かの確認は、接着剤14の設計量と使用量の管理により行っていた。そのほかにも充填した接着剤14が孔12から溢れ出ることを目視することによって確認していた。またその他の充填材の充填確認方法としては、特開2007−211543号公報の発明がある。
【特許文献1】特開2007−211543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような確認方法では充填材の充填状態を正確に確認することができなかった。そのため接着剤の充填が十分でなく、空隙などができて、必要な接着力が得られていない箇所がチェックできないという問題があった。
【0004】
本願発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面への充填状態が正確に確認できる充填材、およびその充填確認方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための充填材は、合成系接着剤、天然系接着剤、樹脂モルタルのいずれかに造影剤を1重量%以上混合してなることを特徴とする。また合成系接着剤はエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ビニルエステル樹脂系接着剤のいずれかであることを含む。また天然系接着剤は澱粉系接着剤、蛋白系接着剤、天然ゴム系接着剤、アスファルトのいずれかであることを含む。また樹脂モルタルは合成樹脂系接着剤に天然系骨材または合成系骨材を混合したものであることを含む。また造影剤は陽性造影剤であることを含むものである。
また充填材の充填確認方法は、合成系接着剤、天然系接着剤、樹脂モルタルのいずれかに造影剤を1重量%以上混合してなる充填材を構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面のいずれかに充填した後、該充填した充填材の後側に放射線フィルムを設置し、前記構造材の適宜離れた位置から充填材に電磁放射線を照射して放射線フィルムに充填材の影像を撮影することを特徴とする。また合成系接着剤はエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ビニルエステル樹脂系接着剤のいずれかであることを含む。また天然系接着剤は澱粉系接着剤、蛋白系接着剤、天然ゴム系接着剤、アスファルトのいずれかであることを含む。また造影剤は陽性造影剤であることを含む。また構造材は木材、コンクリート、鋼材、石材、ゴム、ガラス、プラスチックス、紙、セラミック、繊維シートのいずれかであることを含む。また電磁放射線はX線またはγ線であることを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
接着剤または樹脂モルタルに造影剤が混合されたことにより、これらを構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面などに充填した場合でも、そこに電磁放射線を照射して放射線フィルムに充填材の影像を撮影すると、その充填状態を正確に確認することができる。例えば、エポキシ樹脂系接着剤や樹脂モルタルなどは比較的電磁放射線を透過しやすいが、これらに混合された陽性造影剤は電磁放射線を遮蔽させるため、放射線フィルムにエポキシ樹脂系接着剤などの充填材の影像が撮影できるので、その充填状態を正確に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明の充填材およびその充填確認方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。はじめに充填材について説明し、その後にこの充填材の充填確認方法について説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0008】
第1の実施の形態の充填材は、主剤の変性エポキシ樹脂と硬化剤の変性ポリアミンとからなる接着剤に陽性造影剤である硫酸バリウムが1〜65重量%で混合されたエポキシ樹脂接着剤である。図1の(1)はエポキシ樹脂接着剤の主剤と硬化剤の混合比を示したものであり、同図の(2)は接着剤に対する硫酸バリウムの混合比を示したものである。この硫酸バリウムの混合が1重量%未満の場合は、電磁放射線の照射による放射フィルムへの充填影像の撮影でコントラストをつけることが困難となる。また硫酸バリウムの混合が40重量%を超える場合は曲げ強度や引張強度などの強度が弱くなり、施工性も悪くなる。したがって、5〜20重量%が撮影および強度の面でも適量である。
【0009】
また図1の(3)は硫酸バリウムを混合したエポキシ樹脂接着剤の接着強度、圧縮強度、曲げ強度、引張強度を示したものであり、硫酸バリウムを混合しない、いわゆる無添加のエポキシ樹脂接着剤と同等の接着強度および圧縮強度を備え、曲げ強度と引張強度は5重量%から低下するが、構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面などに充填した場合、接着剤としての機能を十分に発揮することができるとともに、電磁放射線の照射による放射線フィルムへの充填影像の撮影が可能となる。
【0010】
第2の実施の形態の充填材は、主剤の変性エポキシ樹脂および硬化剤の変性ポリアミンと、骨材とからなる樹脂モルタルに陽性造影剤である硫酸バリウムが1〜50重量%で混合されたものである。また図2の(1)は樹脂モルタルの主剤と硬化剤の混合比を示したものであり、同図の(2)は樹脂モルタルに対する硫酸バリウムの混合比を示したものである。この硫酸バリウムの混合が1重量%未満の場合は、電磁放射線の照射による放射フィルムへの充填影像の撮影でコントラストを付けることが困難となる。また硫酸バリウムの混合が20重量%を超える場合は引張強度などの強度が弱くなり、施工性も悪くなる。したがって、5〜20重量%が撮影および強度の面でも適量である。なお樹脂モルタルは上記の他に合成系接着剤にシリカ、石英、石灰石、氷晶石、フリント、アルミニウム酸化物、ガーネット、石、スラグ、溶解アルミナ、シリコンカーバイド、セラミック、大理石のいずれかの天然系骨材を混合したものを使用することができる。
【0011】
また図2の(3)は硫酸バリウムを混合した樹脂モルタルの接着強度、圧縮強度、曲げ強度、引張強度を示したものであり、硫酸バリウムを混合しない、いわゆる無添加の樹脂モルタルと同等の接着強度、圧縮強度、曲げ強度、引張強度を備えている。したがって、構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面に充填した場合、充填材としての機能を十分に発揮することができるとともに、電磁放射線の照射による放射線フィルムへの充填影像の撮影が可能となる。
【0012】
なお合成系接着剤は上記のエポキシ樹脂系接着剤の他、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ビニルエステル樹脂系接着剤のいずれかに硫酸バリウムを1〜65重量%で混合した場合も上記と同じ効果を得ることができる。また硫酸バリウムの混合が1重量%未満の場合は、電磁放射線の照射による放射フィルムへの充填影像の撮影でコントラストを付けることが困難となる。また硫酸バリウムの混合が40重量%を超える場合は曲げ強度や引張強度が弱くなり、施工性も悪くなる。したがって、5〜20重量%が撮影および強度の面でも適量である。
【0013】
さらに陽性造影剤は硫酸バリウムの他にヨード造影剤や電磁放射線吸収の大きい物質、例えば鉄粉、銅粉、鉛粉などを適用することができ、上記の陽性造影剤と同じように混合することにより、電磁放射線の照射による放射フィルムへの充填影像の撮影が可能になる。しかし、安価かつ安全で接着剤に混入しても分散性がよく沈殿することもない硫酸バリウムが最も妥当である。
【0014】
また天然系接着剤は澱粉系接着剤、蛋白系接着剤、天然ゴム系接着剤、アスファルトのいずれかであり、例えば膠や、古くから木材に使用されてきた続飯、麦漆などに混入させた場合も上記と同じ効果を得ることができる。
【0015】
次に、上記のエポキシ樹脂接着剤を使用した充填材の充填確認方法(以下、充填確認方法という)の実施の形態について説明する。図4は第1の実施の形態の充填確認方法である。これは構造材である150mm角の木材1の上面中央に縦孔2を設け、この縦孔2に異形鉄筋3を挿入するとともに、8重量%の硫酸バリウムを混合したエポキシ樹脂接着剤4を充填する。そして、このエポキシ樹脂接着剤4が硬化した後に、木材1の裏側に放射線フィルム5を取り付け、この木材1の正面にX線7を電磁放射線照射装置6から照射して、放射線フィルム5に縦孔2内に充填した接着剤の影像を撮影した。この照射出力は60KVA、木材までの距離は370cm、照射時間は2秒間であった。この結果、図5に示すように、木材1と鉄筋3と接着剤4とがコントラストの高い状態で放射線フィルム5に撮影されて、接着剤4が縦孔2に十分に充填されていることが確認できた。これはエポキシ樹脂接着剤4の代わりに、8重量%の硫酸バリウムを混合した樹脂モルタルを充填した場合でも同様の効果を確認することができた。
【0016】
また図6は第2の実施の形態の充填確認方法である。これは構造材である150mm角のコンクリート部材7の上面中央に縦孔2を設け、この縦孔2に異形鉄筋3を挿入するとともに、8重量%の硫酸バリウムを混合したエポキシ樹脂接着剤4を充填する。そして、このエポキシ樹脂接着剤4が硬化した後に、コンクリート部材7の裏側に放射線フィルム5を取り付け、このコンクリート7の正面にX線7を電磁放射線照射装置6から照射して、放射線フィルム5に縦孔2の接着剤4の影像を撮影した。この照射出力は100KVA、コンクリートまでの距離は150cm、照射時間は15秒間であった。この結果、図7に示すように、上記と同様にコンクリート部材8と鉄筋3と接着剤4とがコントラストの高い状態で放射線フィルム5に撮影されて、接着剤4が縦孔2に十分に充填されていることが確認できた。これはエポキシ樹脂接着剤4の代わりに、8重量%の硫酸バリウムを混合した樹脂モルタルを充填した場合でも同様の効果を確認することができた。
【0017】
また上記の照射出力、照射体までの距離および照射時間は、撮影対象物によってそれぞれ変えるものとする。
【0018】
なお構造材は上記の木材およびコンクリート部材8の他、鋼材、石材、ゴム、ガラス、プラスチックス、紙、セラミックス、繊維シートのいずれも用いることができ、いずれかでも上記と同じ効果を得ることができる。また上記のように構造材1の孔2に接着剤4を充填するだけでなく、構造材の溝、ひび割れ、接合面に充填することもできる。
【0019】
さらに電磁放射線はX線の他、γ線を適用することもでき、X線と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(1)はエポキシ樹脂接着剤の混合比を示した図、(2)はエポキシ樹脂接着剤と硫酸バリウムとの配合比を示した図、(3)は硫酸バリウムを混合したエポキシ樹脂接着剤の強度を示した図である。
【図2】(1)は樹脂モルタルの混合比を示した図、(2)は樹脂モルタルと硫酸バリウムとの配合比を示した図、(3)は硫酸バリウムを混合した樹脂モルタルの強度を示した図である。
【図3】第1の実施の形態の充填確認方法の断面図である。
【図4】照射フィルムの正面図である。
【図5】第2の実施の形態の充填確認方法の断面図である。
【図6】照射フィルムの正面図である。
【図7】木材に鉄筋を挿入した断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1、10 木材
2、12 縦孔
3、13 異形鉄筋
4、14 エポキシ樹脂接着剤
5 放射線フィルム
6 電磁放射線照射装置
7 X線
8、11 コンクリート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成系接着剤、天然系接着剤、樹脂モルタルのいずれかに造影剤を1重量%以上混合してなることを特徴とする充填材。
【請求項2】
合成系接着剤はエポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ビニルエステル樹脂系接着剤のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
天然系接着剤は澱粉系接着剤、蛋白系接着剤、天然ゴム系接着剤、アスファルトのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の充填材。
【請求項4】
樹脂モルタルは合成樹脂系接着剤に天然系骨材または合成系骨材を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の充填材。
【請求項5】
造影剤は陽性造影剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の充填材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの充填材を構造材の孔、溝、ひび割れ、接合面のいずれかに充填した後、該充填した充填材の後側に放射線フィルムを設置し、前記構造材の適宜離れた位置から充填材に電磁放射線を照射して放射線フィルムに充填材の影像を撮影することを特徴とする充填材の充填確認方法。
【請求項7】
構造材は木材、コンクリート、鋼材、石材、ゴム、ガラス、プラスチックス、紙、セラミックス、繊維シートのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の充填材の充填確認方法。
【請求項8】
電磁放射線はX線またはγ線であることを特徴とする請求項6または7に記載の充填材の充填確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−133189(P2010−133189A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312136(P2008−312136)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(391048016)アルファ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】