説明

充填設備

【課題】固形物混じりの液体を精度良く容器に充填する。
【解決手段】弾性チューブ21と、上流側で弾性チューブ21を挟圧して開閉するストップバルブ30と、下流側で弾性チューブ21を挟圧して充填流量を調整可能なスローダウンバルブ40とを有するピンチバルブ14を具備したロータリ式充填設備において、弾性チューブ21を挟圧して充填量を調整可能な電動式のスローダウンバルブ駆動装置43を設け、容器保持部に充填液の重量を計測するロードセル26を設け、スローダウンバルブ40により充填流量を絞った低速充填中に、ロードセル26により検出された計測充填重量と、規準充填重量との差に基づいて、スローダウンバルブ駆動装置43を操作して充填流量を制御可能な充填コントローラ51を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填流路にピンチバルブを具備し、充填ノズルから容器に一定重量の充填液、たとえば飲料液や調味液、特にドレッシングや焼肉たれのような固形物を含有したものを充填するのに適した充填設備に関する。
【背景技術】
【0002】
充填ノズルから容器に液体を充填する充填流路にピンチバルブを具備し、ピンチバルブにより、大流量による高速充填と、小流量による低速充填と、充填停止と、充填ノズルから充填液を吸引して液垂れを防止するサックバックとを行うものが、特許文献1に開示されている。このピンチバルブは、充填液タンクから充填ノズルに至る充填流路に弾性チューブを介在させ、上流側で弁体を出退して弾性チューブを挟圧し充填流路を全閉または全開するストップバルブと、ストップバルブの下流側で弁体を出退し弾性チューブを挟圧して充填流路を一部閉鎖または全開するスローダウンバルブとを具備し、このスローダウンバルブは、ストップバルブの閉鎖状態で、弁体を一部閉鎖状態から後退して充填ノズルから充填液を吸引(サックバック)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−52902号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ストップバルブおよびスローダウンバルブには、それぞれ弁体を出退駆動するエアシリンダが設置されてオン−オフ制御されていた。
ところで、弾性チューブには、シリコン製チューブの成形品が使用されるため、成形精度に0.1mm程度の寸法のばらつきが見られ、これにより充填速度に誤差が生じる。このため、ストップバルブおよびスローダウンバルブでは、押圧弁体とで弾性チューブを挟圧する弁受体に、金属製スペーサを着脱して挟圧位置を調整し、このスペーサの厚みを変更することで流量調整を行っており、この充填液の種類替え(以下、型替えという。)に長い作業時間が必要となっていた。またこれら金属製スペーサの厚みにも、±0.05mm程度のばらつきがあることから、ばらつきによる誤差で充填速度が左右されることもあった。さらに弾性チューブの使用が長時間にわたると、弾性疲労により内径が拡大して充填速度が増加し、この経年変化により充填速度が変動することがあった。
【0005】
さらにまた、固形物含有の充填液を充填する場合、低速充填時に弾性チューブの内径を絞って流量を減少させると、その挟径部分で固形物が詰まりやすくなり、詰まると充填速度が変化して充填精度が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決して、弾性チューブの内径にばらつきがあったり、固形物混じりの液体であっても、精度良く容器に充填することができる充填設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
充填流路に介在された弾性チューブと、当該弾性チューブの上流側で上流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し充填流量を全開、全閉可能なストップバルブと、前記弾性チューブの下流側で下流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し充填流量を調整可能なスローダウンバルブとを有するピンチバルブを具備し、液体のみ、または固形物含有の液体からなる充填液を、前記弾性チューブから充填ノズルを介して容器に充填する充填設備であって、
前記下流弁体を出退駆動するとともに当該下流弁体の位置を検出して出退位置を調整可能な電動式のスローダウンバルブ駆動装置を設け、
容器保持部に、容器に充填された充填液の重量を計測する充填重量計測器を設け、
スローダウンバルブにより充填流量を絞った低速充填中に、前記充填重量計測器により計測位置で検出された計測充填重量と、充填終了位置で目標最終充填重量となる前記計測位置における基準充填重量との差に基づいて、スローダウンバルブ駆動装置を操作し前記下流弁体を出退して充填流量を制御可能な充填制御装置を設けたものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
上流弁体を出退駆動するとともに当該上流弁体の出退位置を検出して調整可能な電動式のストップバルブ駆動装置を設け、
ストップバルブで、前記上流弁体の後退した全開位置を、上流弁体を位置調整して流量調整可能な、充填流路の一部を絞る全開調整位置とし、
充填制御装置を、ストップバルブを前記全開調整位置とし、スローダウンバルブを全開位置とした高速充填中に、高速充填終了位置で計測位置で充填重量計測器により検出された計測充填重量と、高速充填終了位置で目標中間充填重量となる前記計測位置における基準充填重量の差に基づいて、ストップバルブ駆動装置を操作し前記上流弁体を出退して充填流量を制御可能に構成したものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、
充填制御装置に、充填液の種類と性状に対応して、スローダウンバルブ駆動装置とストップバルブ駆動装置のそれぞれの操作速度および操作量と、計測位置における基準充填重量とを記憶させたデータテーブルを設け、
充填液の種類と性状のデータを前記充填制御装置に入力する操作器を設け、
充填制御装置は、計測充填重量と基準充填重量の差に基づいて、データテーブルのデータからスローダウンバルブ駆動装置およびストップバルブ駆動装置の操作量を求めるように構成されたものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、
旋回テーブルの外周部に、容器保持部と充填ノズルとピンチバルブとを有する充填部を一定ピッチで設け、
前記旋回テーブルにおける充填部の周回経路で、容器を前記容器保持部に受け入れる容器入口と、高速充填を行う高速充填区間と、低速充填を行う低速充填区間と、前記充填ノズルから液体を吸引するサックバック位置と、前記容器保持部から容器を排出する容器出口とを回転方向に沿って設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の構成によれば、下流弁体の位置を検出して調整可能な電動式のスローダウンバルブ駆動装置を設けたので、低速充填時に下流弁体により絞られた弾性チューブ内で、固形物が詰まって充填速度が変化すると、これが充填重量検出器に検出されて、充填制御装置によりスローダウンバルブ駆動装置を操作して下流弁体を出退し充填速度を調整することができ、容器への充填量を精度良く制御することができる。
【0012】
請求項2記載の構成によれば、上流弁体の位置を検出して調整可能な電動式のストップバルブ駆動装置を設けたので、高速充填時に上流弁体を出退して充填速度を精度良く制御することができる。したがって、弾性チューブの成形品固有の特性や経年変化に確実に対応することができ、あらゆる種類や異なる性状の充填液であっても、精度良く充填することができる。
【0013】
請求項3記載の構成によれば、型替え時に、操作器から充填液の種類と性状のデータを充填制御装置に入力することにより、スローダウンバルブ駆動装置とストップバルブ駆動装置の操作速度および操作量と、基準充填重量のデータとをデータテーブルから取得できるので、作業員によるピンチバルブの設定変更が不要となり、型替えに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
請求項4記載の構成によれば、旋回テーブルの外周部に一定ピッチで配置された充填部のピンチバルブを、それぞれ個別に制御することができ、各充填部ごとの充填精度を均一にすることができて、連続充填時の充填精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るロータリ式充填設備の実施例を示す概略平面図である。
【図2】ロータリ式充填設備の概略側面図である。
【図3】ピンチバルブを示す拡大側面図である。
【図4】ロータリ式充填設備における充填手順を説明する平面図である。
【図5】(a)〜(f)はピンチバルブの充填動作を説明する側面図で、(a)は充填待機時、(b)はスタートスロー充填時、(c)は高速充填時、(d)は低速充填時、(e)は充填停止時、(f)はサックバック時を示す。
【図6】ロータリ式充填設備の制御機構の構成を示すブロック図である。
【図7】バルブのタイムチャートと、このタイムチャートに対応する充填重量の変化を示すグラフである。
【図8】高速充填区間の制御手順を示すフローチャートである。
【図9】低速充填区間の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】データテーブルに収納される充填液のデータを説明する説明図である。
【図11】図7に示す高速充填時の制御を説明するグラフの部分拡大図である。
【図12】他の充填設備を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
この充填設備は、図1〜図4に示すように、旋回テーブル11の外周部に、容器保持部12と充填ノズル13とピンチバルブ14とを有する充填部10を一定ピッチで設置したロータリ式充填設備であって、入口コンベヤ1からタイミングスクリュー2を介して搬入された容器Bを、入口スターホイール3を介して容器入口7で充填部10の容器保持部12に順次搬入し、旋回経路上で、スタートスロー充填区間、高速充填区間および低速充填区間を通過させて一定重量の充填液を容器Bにそれぞれ充填し、容器出口8から出口スターホイール4を介して排出コンベヤ5に排出するものである。
【0017】
(全体構造)
基台6上には、旋回駆動モータ(図6)に減速機構を介して鉛直軸心O周りに所定速度で回転駆動される旋回テーブル11が設けられ、この旋回テーブル11の外周部に一定ピッチで複数(図では30個)の第1〜第30充填部10が配設されている。
【0018】
旋回テーブル11上に設置された旋回フレーム17には、鉛直回転軸56の上端側に充填液供給用のロータリージョイント15が配置され、旋回テーブル11の外方に配置された充填液タンク16とロータリージョイント15とが液供給管18を介して接続されている。そして、このロータリージョイント15の下部に配置された分岐部19の分岐口から各充填ノズル13に、充填流路を形成する分配配管20がそれぞれ接続され、充填ノズル13の上流側の各分配配管20にピンチバルブ14がそれぞれ設けられている。前記充填液タンク16は、充填液を加圧供給するために、エアポンプ16aから高圧エアが供給されており、充填液の粘度が高い場合には、充填液タンク16に高圧のエアが供給される。
【0019】
(ピンチバルブ)
このピンチバルブ14は、図3に示すように、分配配管20の出口から順に、シリコン製の一体成形品である弾性チューブ21と、中間固定管22と、調整管23と、充填ノズル13とが、それぞれフランジ部と連結具とを介して接続されている。そして分配配管20の出口と中間固定管22とが、ピンチバルブ14の設置用のバルブ取付フレーム24により支持されており、このバルブ取付フレーム24に上流側のストップバルブ30と、下流側のスローダウンバルブ40とがそれぞれ取り付けられている。
【0020】
ストップバルブ30は、バルブ取付フレーム24の一側支持部24aに上流弁受体31が取り付けられている。またバルブ取付フレーム24の他側支持部24bに、直線駆動装置であるストップバルブ駆動装置(電動式シリンダ)33が設置されており、ストップバルブ駆動装置33の出退ロッドの先端部に上流弁受体31に対向して上流弁体32が取り付けられている。したがって、ストップバルブ駆動装置33により上流弁体32を出退して上流弁体32と上流弁受体31との間で弾性チューブ21を挟圧し、充填流路を開閉することができる。またストップバルブ駆動装置33は、図示しないが、出力ロッドに連結されたボールねじ軸、このボールねじ軸に螺合されるナット部材、このナット部材を連動部材(タイミングベルト・タイミングプーリ)を介して回転駆動する電動モータ34、およびこの電動モータ34の回転方向および回転角から出力ロッド(上流弁体32)の出退位置を検出可能なストップバルブ用(ロータリ)エンコーダ35とを具備した電動式シリンダにより構成されている。ここで、このストップバルブ30は、ストップバルブ用エンコーダ35により位置検出される上流弁体32が後退した全開位置を、弾性チューブ21から完全に離間された位置とせずに、弾性チューブ21を少し挟圧して開口面積を調整可能な全開調整位置とし、高速充填区間で、ストップバルブ駆動装置33により上流弁体32を出退操作して充填速度を制御できるように設定される。
【0021】
スローダウンバルブ40は、バルブ取付フレーム24の一側支持部24aに下流弁受体41が取り付けられている。またバルブ取付フレーム24の他側支持部24bに直線駆動装置であるスローダウンバルブ駆動装置(電動式シリンダ)43が設置されており、このスローダウンバルブ駆動装置43の出退ロッドの先端部に、下流弁受体41に対向して下流弁体42が取り付けられている。スローダウンバルブ駆動装置43は、図示しないが、出力ロッドに連結されたボールねじ軸、このボールねじ軸に螺合されるナット部材、このナット部材を連動部材(タイミングベルト・タイミングプーリ)を介して回転駆動する電動モータ44、およびこの電動モータ44の回転方向および回転角から出力ロッド(下流弁体42)の出退位置を検出可能なスローダウンバルブ用(ロータリ)エンコーダ45とを具備した電動式シリンダにより構成されている。したがって、スローダウンバルブ駆動装置43により、高速充填区間で下流弁体42を後退して弾性チューブ21を開放するとともに、低速充填区間で下流弁体42を絞り調整位置まで前進して弾性チューブ21を挟圧し、弾性チューブ21の一部を閉鎖して低速充填することができる。そしてこの低速充填区間で、スローダウンバルブ駆動装置43により下流弁体42を出退操作して充填速度を制御することができる。さらに、サックバック位置では、ストップバルブ30により弾性チューブ21が閉鎖された充填停止状態で、下流弁体42を後退させて充填ノズル13から充填液を吸引することができる。この時、下流弁体42の後退ストロークを調整することにより、充填ノズル13からの充填液の吸引量を制御することができる。
【0022】
なお、前記ストップバルブ駆動装置33およびスローダウンバルブ駆動装置43には、電動モータ34,44の回転方向および回転角から弁体32,42の出退位置を検出可能なエンコーダ35,45を設けて、弁体32,42の出退位置を検出して調整可能に構成したが、弁体32,42の出退位置を検出可能なものであれば、電圧アクチュエータやリニアモータ、ラック・ピニオン式移動装置などであってもよい。
【0023】
各充填部10には、充填ノズル13を昇降して、ノズル口を容器Bの口部に接近または挿入させるためのノズル昇降装置54(図6)が設けられている。なお、ノズル昇降装置に替えて、容器Bを昇降してノズル口を容器Bの口部に接近または挿入させる容器昇降装置であってもよい。
【0024】
また容器保持部12には、容器保持具(図示せず)により支持台25上に保持された容器Bを介して充填重量を計測するロードセル(充填重量計測器)26がそれぞれ設けられている。
【0025】
(充填制御機構)
充填設備の制御機構を図4、図6を参照して説明する。
旋回テーブル11に外周部には、たとえば図4に示すように、30個の充填部10が配置されており、これら第1〜第30充填部10には、ノズル昇降シリンダ54、ロードセル26と、ピンチバルブ14とがそれぞれ設置されている。
【0026】
旋回駆動モータ52により旋回テーブル11と共に回転駆動される鉛直回転軸56には、その上端部に第1〜第30充填部10の旋回位置をそれぞれ検出する旋回用(ロータリ)エンコーダ55が設けられており、旋回用エンコーダ55により、容器入口7、充填開始位置0と、高速充填区間および低速充填区間における第1〜第4計測位置θ1〜θ4、最終充填量確認位置W5および容器出口8が検出される。この旋回用エンコーダ55と、前述したロードセル26、ストップバルブ用エンコーダ35、スローダウンバルブ用エンコーダ45の各検出信号がそれぞれ充填コントローラ51に入力されている。またロードセル26の検出値により、高速充填開始位置W1、低速充填開始位置W2、充填終了位置W3が検出される。
【0027】
操作器53は、充填状態を表示する表示部と、充填液の種類(液体のみか、固形物含有液体)と性状(粘度と泡立ち度、固形物の有無とその大きさなど)のデータを入力する入力部を具備し、目的の充填液のデータをそれぞれ充填コントローラ51に入力するように構成されており、充填コントローラ51では、入力された充填液のデータに基づいてデータテーブル27から必要なデータを選択取得する。
【0028】
ここで、タイマー28により、充填終了時からサックバックまでの時間がカウントされているが、充填開始位置からの経過時間をカウントして、高速充填区間および低速充填区間における第1〜第4計測位置θ1〜θ4を検出するようにしてもよい。またタイマー28により、充填終了位置から、容器B内の充填液が安定する時間をカウントして、最終充填量確認位置を検出するようにしてもよい。
【0029】
そしてこれら前記充填コントローラ51とタイマー28とデータテーブル27とにより、充填制御装置50が構成されている。
(充填液のデータ)
ここで、容器Bに充填する充填液の種類や性状(性質)が異なると、充填精度が低下するおそれがあるため、充填液の種類や性状と充填動作の関係を図10を参照して簡単に説明する。
【0030】
ここで充填液の種類は、含有固形物の有無をいい、性状は、粘度、泡立ち度および充填液に含有される固形物の大きさなどをいう。
a.充填液の粘度が高いものは比較的泡立ち度が少なく、バルブ30,40の開閉速度を比較的高速で行うことができる。また固形物を含有しない充填液は、低速充填区間で、弾性チューブ21の開口面積を絞って流量を小さくしても詰まることがないため、低速充填区間の流量を小さくすることにより、充填精度を向上させることができる。ここで低速充填区間の流量が小さいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も少なく、サックバック時の吸引量を少なくする必要がある。これは、吸引量が多いと、空気を吸い込んで液垂れが発生することがあるためである。また粘度が高い充填液は、充填ノズル13の出口の外周部に付着しやすい傾向があり、外周部に付着した充填液は、少し待機時間を設けることにより充填液を充填ノズル13の出口に集めることができ、その後にサックバックすることで、液垂れを効果的に防止できる。
【0031】
b.粘度が高い充填液に固形物が含まれる場合、バルブ30,40の開閉速度を比較的高速で行うことができるが、低速充填区間で、弾性チューブ21の開口面積を絞って流量を小さくすると、固形物が詰まって流量が変化し、充填精度が低下しやすい。このため、固形物が大きい場合は、弾性チューブ21の開口面積を大きくし、固形物が小さい場合は、弾性チューブ21の開口面積を幾分大きくして、固形物の詰まりを防止する。また低速充填区間の流量が大きいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も多いため、サックバック時の吸引量を大きくする必要がある。ここで吸引量が少ないと、残液が液垂れするおそれがある。
【0032】
c.粘度が低い充填液は、比較的泡立ちが多くなりやすいため、バルブ30,40の開閉速度を中速〜低速で行うことにより、泡立ちを抑制することができる。また、固形物を含有しない充填液は、スローダウンバルブによる低速充填時に、流量を比較的小さくしても詰まることがないため、低速充填時の流量を小さくして、充填精度を向上させることができる。また低速充填時の流量が小さいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も少なく、サックバック時の吸引量を小さくして、空気の吸い込みを防止する。
【0033】
d.粘度が低い充填液に固形物が含まれた場合、比較的泡立ちが多くなりやすいために、バルブ30,40の開閉速度を比較的低速で行う。また低速充填時に、弾性チューブ21の開口面積を絞って流量を小さくすると、固形物が詰まりやすい。このため、固形物が大きい場合は、弾性チューブ21の開口面積を大きくし、固形物が小さい場合は、弾性チューブ21の開口面積を幾分大きくして、固形物の詰まりを防止する。さらに低速充填時の流量が大きいと、充填停止時に充填ノズル13の出口に溜まる液量も比較的多いため、サックバック時の吸引量を大きくする。
【0034】
この実施例では、多様な液の種類および性状と、充填設備の能力を考慮して、実験により多くの種類の充填液を実験し、ストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の開閉速度(弁体32,42の出退速度)や、高速充填時および低速充填時の開度(出退位置)、サックバック量などの各データを取得し、これら充填液の種類および性状ごとのデータをデータテーブル27に記憶させる。また試運転時に、各充填部10におけるストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の開閉状態に対する充填速度の特性データを取得し、各充填部10ごとの補正量もデータテーブル27に記憶させる。
【0035】
(基本充填動作)
まず、各充填部10におけるピンチバルブ14による基本的な充填動作を図4、図5および図7を参照して説明する。
【0036】
1)容器入口7から充填開始位置0までの充填待機区間は、容器Bを安定させるもので、図5(a)に示すように、ストップバルブ30が全閉位置で、スローダウンバルブ40が絞り調整位置(一部開放)にある。
【0037】
2)旋回用エンコーダ55により充填開始位置0が検出されてスタートスロー充填になると、図5(b)に示すように、上流弁体32が全開調整位置に後退されてストップバルブ30が全開され、絞り調整位置の下流弁体42により、充填液が低速で充填される。このスタートスロー充填は、充填開始時に多く充填液が一度に容器Bの口部に供給されると、充填液の流れと、容器Bの口部から流出される空気の流れとが衝突して充填液が噴きこぼれるのを防止するためである。
【0038】
3)ロードセル26により計測充填重量が目標初期充填重量VsSが検出されて、高速充填開始位置(スタートスロー充填終了)W1になると、高速充填が開始され、図5(c)に示すように、上流弁体32が全開調整位置にある状態で、下流弁体42が全開位置まで後退されることにより、充填液が高速で充填される。
【0039】
4)ロードセル26により計測充填重量が目標中間充填重量VsMが検出されて、低速充填開始位置(高速充填終了位置)W2になると、図5(d)に示すように、下流弁体42が絞り調整位置まで前進されることにより、充填液が絞られて低速で充填される。この低速充填により充填精度が向上される。
【0040】
5)ロードセル26により計測充填重量が目標最終充填重量VsFが検出されて、充填停止位置(低速充填終了位置)W3になると、図5(e)に示すように、上流弁体32が全開調整位置から全閉位置に前進され、弾性チューブ21が全閉されて充填が停止される。
【0041】
6)旋回用エンコーダ55の検出信号によりサックバック位置W4が検出されると、図5(f)に示すように、下流弁体42が絞り調整位置から全開位置まで後退されて、充填ノズル13内の充填液を吸引する。この時、下流弁体42の後退ストロークが調整されてサックバックの吸引量が調整される。
【0042】
7)旋回用エンコーダ55の検出信号により最終充填量確認位置W5が検出されると、充填液が安定した状態で充填重量が検出されて、規格範囲の良品と規格範囲外の不良品とが判断され、下流側に配置された不良品排出装置(図示せず)で不良品容器Bが排出される。
【0043】
(充填制御)
図7、図8を参照して、高速充填時の充填制御について説明する。
第1〜第30充填部10では、ロードセル26により容器Bの充填重量がリアルタイムで計測され、旋回用エンコーダ55により第1〜第30充填部10の位置がそれぞれ検出されている。そして、充填開始からスタートスロー充填された容器Bの充填重量が目標初期充填重量VsSになると、スローダウンバルブ40が全開されて高速充填が開始される(STEP.1)。
【0044】
高速充填区間では、充填部10が第1計測位置θ1になる(STEP.2)と、ロードセル26により計測された充填液の計測充填重量Vc1が、データテーブル27から取得された基準充填重量Vs1の閾値の範囲にあるかどうかが判断される(STEP.3)。
【0045】
計測充填重量Vc1が基準充填重量Vs1の閾値を逸脱した場合、データテーブル27から、閾値を逸脱した量に応じたストップバルブ30の補正量を取得し(STEP.4)、この補正量に基づいて、低速充填開始位置(高速充填終了位置)W2において目標中間充填重量VsMとなるようにストップバルブ駆動装置33を操作し、ストップバルブ30の開度を制御する(STEP.5)。
【0046】
第2計測位置θ2に達する(STEP.6)と、第2計測位置θ2でも第1計測位置θ1と同様に、充填液の計測充填重量Vc2が、基準充填重量Vs2の閾値の範囲にあるかどうかを判断し(STEP.7)、計測充填重量Vc2が基準充填重量Vs2の閾値を逸脱した場合、データテーブル27から補正量を取得し(STEP.8)、この補正量に基づいて、充填開始位置(高速充填終了位置)W2において目標中間充填重量VsMとなるようにストップバルブ駆動装置33を操作し、低速ストップバルブ30の開度を制御する(STEP.9)。
【0047】
そして充填液の計測充填重量が目標中間充填重量VsMとなると、低速充填開始位置(高速充填終了位置)W2となる。
次に低速充填時の充填制御を、図7、図9を参照して説明する。
【0048】
目標中間充填重量VsMになると、スローダウンバルブ40の下流弁体42が絞り調整位置まで前進されて低速充填が開始される(STEP.11)。
低速充填区間では、充填部10が第3計測位置θ3(旋回テーブル11の旋回角)に達する(STEP.12)と、ロードセル26の計測充填重量Vc3が、データテーブル27から取得された基準充填重量Vs3の閾値の範囲にあるかどうかを判断する(STEP.13)。
【0049】
計測充填重量Vc3が基準充填重量Vs3の閾値を越えた場合、データテーブル27からスローダウンバルブ40の補正量を取得し(STEP.14)、この補正量に基づいて、充填終了位置W3において目標最終充填重量VsFとなるようにスローダウンバルブ駆動装置43を操作し、スローダウンバルブ40の開度を制御する(STEP.15)。
【0050】
次に第4計測位置θ4に達する(STEP.16)と、第3計測位置θ3と同様に、ロードセル26により計測された充填液の計測充填重量Vc4が、データテーブル27の基準充填重量Vs4の閾値の範囲にあるかどうかを判断し(STEP.17)、計測充填重量Vc4が基準充填重量Vs4の閾値を逸脱した場合、データテーブル27から、この逸脱量に応じたスローダウンバルブ40の補正量を取得する(STEP.18)。そして、この補正量に基づいて、充填終了位置W3において目標最終充填重量VsFとなるようにスローダウンバルブ駆動装置43を操作し、スローダウンバルブ40の開度を制御する(STEP.19)。
【0051】
充填部10の計測重量が目標最終充填重量VsFとなると、充填終了位置W3となってストップバルブ30を閉鎖し低速充填を終了する。
なお、計測位置を高速充填区間および低速充填区間で2回ずつ設けたが、1回ずつまたは3回以上であってもよい。
【0052】
また、上記データテーブル27におけるストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の補正量は、閾値を逸脱した量に対応して、充填終了位置W2,W3における目標中間、最終充填重量VsM,VsFと、計測重量Vs1〜4とが一致するデータが記録されているが、充填コントローラ51において、第1〜第4計測位置θ1〜θ4ごとに、下記の(式1)で演算することもできる。
【0053】
すなわち、図11に示すように、第1計測位置θ1では、高速充填開始位置W1から第1計測位置θ1までの旋回移動時間:t1、高速充填開始位置W1から低速充填開始位置W2までの旋回移動時間:T、高速充填区間の基準充填重量:(VsM−Vss)、第1計測位置θ1の計測充填重量:Vc1、第1計測位置θ1の基準充填重量:Vs1とすると、高速充填区間の残余時間はT−t1、第1計測位置θ1から低速充填開始位置W2までに必要な充填重量:VsM−Vs1である。
【0054】
したがって、第1計測位置θ1から低速充填開始位置W2までの時間当たりの充填重量=(VsM−Vc1)/(T1−t1)…(式1)となり、この充填重量となるように、ストップバルブ駆動装置33を操作して上流弁体32の位置を制御すればよい。また他の計測位置θ2〜θ4についても同様に演算してストップバルブ駆動装置33またはスローダウンバルブ駆動装置43を操作することができる。
【0055】
(実施例の効果)
上記実施例によれば、スローダウンバルブ40に、下流弁体42の出退位置を調整可能な電動式のスローダウンバルブ駆動装置43を設けて、低速充填区間における充填重量をロードセル26により検出し、この計測充填重量によりデータテーブル27から取得した補正量に基づいてスローダウンバルブ駆動装置43を操作し下流弁体42を出退して充填流量を制御することにより、容器Bへの充填量を精度良く制御することができる。したがって、下流弁体42により開口面積が絞られた弾性チューブ21に、固形物が詰まって充填重量が変化することがあっても、データテーブル27から取得した補正量に基づいて充填コントローラ51によりスローダウンバルブ駆動装置43を操作し充填流量を制御し、容器Bに高精度で充填することができる。
【0056】
またストップバルブ30に、上流弁体32の出退位置を調整可能な電動式のストップバルブ駆動装置33を設けたので、高速充填区間に充填速度が変化して充填重量の変化がロードセル26の計測により検出されると、充填コントローラ51によりデータテーブル27から取得した補正量に基づいてストップバルブ駆動装置33を操作し、高速充填区間の充填速度を制御することができる。したがって、ロータリ充填設備の第1〜第30充填部10における各弾性チューブ21の成形品固有の特性や経年変化による充填流量の変化に確実に対応することができ、またあらゆる種類の充填液であっても、精度良く充填することができる。
【0057】
さらに、充填液の種類(含有固形物の有無)と性状(粘度や泡立ち度、固形物の大きさなど)に対応するストップバルブ30およびスローダウンバルブ40の操作速度や操作量や、旋回テーブル11の旋回角に対応した基準充填重量のデータを具備したデータテーブル27を設けたので、充填液が変更される品種替え時に、操作器53の入力手段から充填液の種類と性状のデータとを充填制御コントローラ51に入力することにより、データテーブル27からストップバルブ駆動装置33とスローダウンバルブ駆動装置43の操作量および操作速度と基準充填重量のデータを取得して自動的に設定することができ、作業員によるピンチバルブ14の設定変更が不要となり、品種替えに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0058】
さらにまた、旋回テーブル11の外周部に一定ピッチで配置された充填部10のピンチバルブ14をそれぞれ個別に制御することができ、各充填部10ごとの充填精度を均一にすることができて、連続充填する容器Bへの充填精度を向上させることができる。
【0059】
なお、上記実施例では、高速充填を行うストップバルブ30のストップバルブ駆動装置33と、低速充填を行うスローダウンバルブ40のスローダウンバルブ駆動装置43に位置制御可能な電動式シリンダを使用したが、スローダウンバルブ駆動装置43にのみ位置制御可能な電動式シリンダを使用して、低速充填時にのみ流量制御することもできる。
【0060】
また、上記実施例では、旋回テーブル11を具備したロータリ式充填設備を説明したが、図12に示すように、直線状の搬送コンベヤ61に沿って、搬送コンベヤ61の移動方向に沿って間欠的に往復移動する複数の充填部60を一定ピッチで配設した移動式充填設備であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
B 容器
10 充填部
11 旋回テーブル
12 容器保持部
13 充填ノズル
14 ピンチバルブ
15 ロータリージョイント
16 充填液タンク
17 旋回フレーム
18 液供給管
19 分岐部
20 分配配管(充填流路)
21 弾性チューブ
25 支持台
26 ロードセル(充填重量計測器)
27 データテーブル
28 タイマー
30 ストップバルブ
31 上流弁受体
32 上流弁体
33 ストップバルブ駆動装置
33a ストップバルブ用エンコーダ
34 電動モータ
35 ストップバルブ用エンコーダ
40 スローダウンバルブ
41 下流弁受体
42 下流弁体
43 スローダウンバルブ駆動装置
43a スローダウンバルブ用エンコーダ
44 電動モータ
45 スローダウンバルブ用エンコーダ
50 充填制御装置
51 充填コントローラ
52 旋回駆動モータ
53 操作器
55 旋回用エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填流路に介在された弾性チューブと、当該弾性チューブの上流側で上流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し充填流量を全開、全閉可能なストップバルブと、前記弾性チューブの下流側で下流弁体により弾性チューブを挟圧して開閉し充填流量を調整可能なスローダウンバルブとを有するピンチバルブを具備し、液体のみ、または固形物含有の液体からなる充填液を、前記弾性チューブから充填ノズルを介して容器に充填する充填設備であって、
前記下流弁体を出退駆動するとともに当該下流弁体の位置を検出して出退位置を調整可能な電動式のスローダウンバルブ駆動装置を設け、
容器保持部に、容器に充填された充填液の重量を計測する充填重量計測器を設け、
スローダウンバルブにより充填流量を絞った低速充填中に、前記充填重量計測器により計測位置で検出された計測充填重量と、充填終了位置で目標最終充填重量となる前記計測位置における基準充填重量との差に基づいて、スローダウンバルブ駆動装置を操作し前記下流弁体を出退して充填流量を制御可能な充填制御装置を設けた
ことを特徴とする充填設備。
【請求項2】
上流弁体を出退駆動するとともに当該上流弁体の出退位置を検出して調整可能な電動式のストップバルブ駆動装置を設け、
ストップバルブで、前記上流弁体の後退した全開位置を、上流弁体を位置調整して流量調整可能な、充填流路の一部を絞る全開調整位置とし、
充填制御装置を、ストップバルブを前記全開調整位置とし、スローダウンバルブを全開位置とした高速充填中に、高速充填終了位置で計測位置で充填重量計測器により検出された計測充填重量と、高速充填終了位置で目標中間充填重量となる前記計測位置における基準充填重量の差に基づいて、ストップバルブ駆動装置を操作し前記上流弁体を出退して充填流量を制御可能に構成した
ことを特徴とする請求項1記載の充填設備。
【請求項3】
充填制御装置に、充填液の種類と性状に対応して、スローダウンバルブ駆動装置とストップバルブ駆動装置のそれぞれの操作速度および操作量と、計測位置における基準充填重量とを記憶させたデータテーブルを設け、
充填液の種類と性状のデータを前記充填制御装置に入力する操作器を設け、
充填制御装置は、計測充填重量と基準充填重量の差に基づいて、データテーブルのデータからスローダウンバルブ駆動装置およびストップバルブ駆動装置の操作量を求めるように構成された
ことを特徴とする請求項1または2記載の充填設備。
【請求項4】
旋回テーブルの外周部に、容器保持部と充填ノズルとピンチバルブとを有する充填部を一定ピッチで設け、
前記旋回テーブルにおける充填部の周回経路で、容器を前記容器保持部に受け入れる容器入口と、高速充填を行う高速充填区間と、低速充填を行う低速充填区間と、前記充填ノズルから液体を吸引するサックバック位置と、前記容器保持部から容器を排出する容器出口とを回転方向に沿って設けた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の充填設備。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−84323(P2011−84323A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239941(P2009−239941)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】