説明

充電システム

【課題】電気自動車の路線バスに使用可能な充電システムを提供する。
【解決手段】電動機によって駆動力を得るバス2に駆動用電源として搭載された車載バッテリ20と、バス停留所3sに設けられ、電力を貯蔵する電力貯蔵用バッテリ30と、バス停留所3sに到着したバスが所定の位置に停車した状態で、電力貯蔵用バッテリ30と車載バッテリ20との間で充放電回路を構成することにより電力を伝送する電力伝送装置40と、同一の路線を走行する複数のバスのそれぞれにおける車載バッテリの残量の情報を収集する中央制御装置1とを備えた充電システムである。中央制御装置1は、車載バッテリ20の残量の情報に基づいて、充電が必要な車載バッテリを搭載するバスを検出し、当該バスに対して充電の指示に関する情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)であるバスに搭載されたバッテリを充電するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電動機と内燃機関のエンジンとを併用するハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)の普及が急速に進んでおり、さらに、電動機のみで走行する電気自動車(EV)が普及すると考えられる。バスのような大型車についても、既に電気自動車が実用化されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】msn産経ニュース、2011年4月20日22時40分、(http://sankei.jp.msn.com/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車は1回の充電で走行可能な距離が、エンジン車に比べて短いのが現時点での難点である。また、渋滞によるエネルギー消費率の上昇や、エアコン等の消費電力の多い電装品を使用することにより、車載バッテリの放電量が増大する。特に、重量が大きいバスは駆動用電動機の消費電力が大きく、電装品の消費電力も大きいため、一般車両に比べると格段に消費電力が多い。そこで、例えば路線バスのEV化を実現するには、頻繁に車載バッテリを充電して常に残量を十分に確保することが重要となる。しかしながら、電気自動車の路線バスに使用可能で、かつ、実現容易な充電システムは、未だ提案されていない。
【0005】
かかる課題に鑑み、本発明は、電気自動車の路線バスに使用可能で実現容易な充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の充電システムは、電動機によって駆動力を得るバスに駆動用電源として搭載された車載バッテリと、複数のバス停留所にそれぞれ設けられ、電力を貯蔵する電力貯蔵用バッテリと、前記バス停留所に到着したバスが所定の位置に停車した状態で、前記電力貯蔵用バッテリと前記車載バッテリとの間で充放電回路を構成することにより電力を伝送する電力伝送装置と、同一の路線を走行する複数のバスのそれぞれにおける前記車載バッテリの残量の情報を収集する中央制御装置とを備え、前記中央制御装置は、前記車載バッテリの残量の情報に基づいて、充電が必要な車載バッテリを搭載するバスを検出し、当該バスに対して充電の指示に関する情報を送信する。
【0007】
上記のように構成された充電システムでは、中央制御装置の管理下で、残量が不足してきた車載バッテリを搭載するバスに対して充電の指示に関する情報を送信することができる。電気自動車であるバスは、バス停留所に到着して所定の位置に停車した状態で、電力伝送装置により、電力貯蔵用バッテリから車載バッテリへ充電を行うことができる。このように、車載バッテリの補充的な充電を、停車時間を利用して行うことにより、頻繁に車載バッテリを充電して、その残量が不足する事態の発生を防止することができる。なお、場合によっては逆に、車載バッテリから電力貯蔵用バッテリに充電することも可能であり、これにより、電力貯蔵用バッテリを介した車載バッテリ間での電力の融通も可能となる。
【0008】
(2)また、上記(1)の充電システムにおいて、中央制御装置は、路線上にあるバス停留所のそれぞれについて、電力貯蔵用バッテリの有無及び残量を含む充電能力の情報を収集し、当該情報に基づいて、充電が必要な車載バッテリを搭載するバスが充電を行うべきバス停留所を検索するようにしてもよい。
この場合、中央制御装置は、残量が不足してきた車載バッテリを、十分な充電能力を備えたバス停留所の電力貯蔵用バッテリによって、充電することができる。
【0009】
(3)また、上記(2)の充電システムにおいて、中央制御装置は、充電が必要な車載バッテリを搭載するバスの現在位置、進行方向、並びに、バス停留所の位置及び充電能力の情報に基づいて、充電を行うべきバス停留所を検索するようにしてもよい。
この場合、より迅速に適切なバス停留所で充電を行うことができる。
【0010】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかの充電システムにおいて、バス停留所に停車したバスの車体に設けられたコイルと、当該バス停留所に設けられたコイルとを互いに対向させ、電磁誘導により電力を伝送するようにしてもよい。
この場合、2つのコイルは互いに非接触で電力を伝送することができる。従って、移動体であるバスにケーブル等を接続する手間を必要とせずに、電力の伝送を行うことができる。
【0011】
(5)また、上記(4)の充電システムにおいて、互いに非接触で対向する2つのコイルの一方はバスの上面に設けられ、他方は停車したバスの上にあるバス停留所の屋根に設けられていてもよい。
この場合、他方のコイルはバス停留所の屋根に設けられるので新規に設置し易く、道路にコイルを埋設する場合に比べて施工が容易である。
【0012】
(6)また、上記(1)〜(5)のいずれかの充電システムにおいて、バス停留所は太陽光発電パネルを備え、当該太陽光発電パネルの出力によって電力貯蔵用バッテリを充電するようにしてもよい。
この場合、日中は太陽光発電パネルの出力によって電力貯蔵用バッテリを充電することができるので、商用電力を供給せずとも、電力貯蔵用バッテリに電力を蓄えておくことができる。
【0013】
(7)また、上記(2)の充電システムにおいて、中央制御装置は、車載バッテリの充電が必要な第1のバスがある場合は、第1のバスに先行して前方を走行している第2のバスを選択して、第1のバスに充電を行う予定のバス停留所の電力貯蔵用バッテリを、第2のバスの車載バッテリにより充電させる指示を行うようにしてもよい。
この場合、第2のバスの車載バッテリから電力貯蔵用バッテリに充電し、さらに、電力貯蔵用バッテリから第1の車載バッテリに充電することができる。すなわち、電力貯蔵用バッテリを介した車載バッテリ間での電力の融通が可能となり、他のバスにおける車載バッテリの残量を、有効活用することができる。
【0014】
(8)また、上記(7)の充電システムにおいて、第2のバスは、その車載バッテリの残量が所定値以上であることを条件として選択されることが好ましい。
この場合、残量が比較的多い車載バッテリから電力貯蔵用バッテリに充電することができるので、確実な充電を行うことができる。
【0015】
(9)また、上記(7)又は(8)の充電システムにおいて、第2のバスは、第1のバスと同一の路線を走行しているバスであることを条件として選択されることが好ましい。
この場合、同一路線を走行する他のバスにおける車載バッテリの残量を、有効活用することができる。また、路線毎に、車載バッテリの残量の総量を、管理することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気自動車の路線バスに使用可能で実現容易な充電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る充電システムを適用する路線バスの基本システムを示す図である。
【図2】特定のバス停留所の構成例を示す図であり、(a)はバスの正面からバス停留所を見た図、(b)はバスの側面からバス停留所を見た図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る充電システムの全体構成を示すブロック図である。
【図4】図3の充電システムに関する中央制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る充電システムの全体構成を示すブロック図である。
【図6】図5の充電システムに関する中央制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《基本システム》
図1は、本発明の実施形態に係る充電システムを適用する路線バスの基本システムを示す図である。当該基本システムは、例えばバスロケーションシステムとして知られている(例えば、特開2010−140394号公報参照)。図において、当該システムは、中央制御装置1と、路線バス(以下、単にバスという。)2と、路線の道路Rに設置されたバス停留所3(場所ではなく停留所の機器・設備を意味する。)と、を備えている。なお、中央制御装置1は複数系統を管理することができるが、ここでは説明の簡略化のため1系統の路線の道路Rのみを示している。
【0019】
バス停留所3は、通信装置31及び表示装置32を有している。各バス停留所3の通信装置31は、中央制御装置1と無線通信可能である。バス2は、電動機によって駆動力を得る電気自動車であり、駆動用電源としての車載バッテリ20を搭載している。また、バス2は、通信機能やGPS機能を備えた車載装置21を搭載しており、この車載装置21が、中央制御装置1と無線通信可能である。通常、1路線上には多数のバス停留所3があり、複数のバス2が始発の停留所から終点の停留所まで順番に定時走行し、往復している。路線がループ状であれば、始発の停留所と、終点の停留所が同じである。
【0020】
なお、バスロケーションシステムに関する既知の機能部分については、ここでは詳細に説明しないが、バス2の現在位置、車内の空席状況、車椅子固定スペースの利用可否等の利用者向けの情報を車載装置21から受信した中央制御装置1が、進行方向の前方にあるバス停留所3の表示装置32に表示することができるようになっている。
【0021】
《充電システムにおける路側の構成》
ここで、上記バス停留所3のうち、特定のバス停留所に、本発明の一実施形態に係る充電システムのうちの路側の構成部分を設ける。特定のバス停留所とは、バス2が必ず、一定時間以上停車することが、運用上わかっている所であり、例えば、時間調整をする始発及び終点の停留所の他、乗降客が多く、非常に高い確率で一定時間以上停車する停留所である。このような特定のバス停留所が1路線でなるべく分散して多く存在すること、が当該充電システムとしては好ましい。
【0022】
なお、特定のバス停留所には後述の電力貯蔵用バッテリが設けられていて、バスの車載バッテリ20を必要により充電する能力を備えている。中央制御装置1は、同一の路線上にあるバス停留所3の全て(特定のバス停留所及びそれ以外のバス停留所)について、通信装置31を介して、そのバス停留所3の充電能力の情報を収集し、常に最新の状態で情報を保有している。この充電能力の情報には、電力貯蔵用バッテリの有無の情報、及び、電力貯蔵用バッテリが有る場合にはその残量の情報が含まれる。なお、電力貯蔵用バッテリが無い場合には残量の情報を固定的に0とすることによって、有無の情報を、残量が「0か否か」で表すことも可能である。
【0023】
図2は、全てのバス停留所3のうちの、特定のバス停留所3sの構成例を示す図であり、(a)はバス2の正面からバス停留所3sを見た図、(b)はバス2の側面からバス停留所3sを見た図である。図において、バス停留所3sには屋根3rが設けられており、その上面には、太陽電池パネル35が設置されている。屋根3rの下面には、例えば電磁誘導で電力を伝送するためのコイル34が設けられている。一方、バス2の上面には同様のコイル24が設けられている。バス2が所定の位置に停車すると、2つのコイル24,34が互いに非接触で対向するようになっている。
【0024】
このようなコイルの設置の仕方によれば、バス停留所3sのコイル34は停留所の屋根に設けられるので新規に設置し易く、道路にコイルを埋設する場合に比べて施工が容易である。また、非接触で電力を伝送することができるので、移動体であるバス2にケーブル等を接続する手間を必要とせずに、電力の伝送を行うことができる。
【0025】
《充電システムの全体構成:第1実施形態》
図3は、本発明の第1実施形態に係る充電システムの全体構成を示すブロック図である。バス停留所3sは、前述の通信装置31、表示装置32、コイル34、及び、太陽電池パネル35の他、リチウムイオン電池等の充電可能な電力貯蔵用バッテリ30及び、充放電制御装置33を備えている。日中(日の出〜日没)は、太陽電池パネル35の出力に基づいて、充放電制御装置33により調整した一定電圧で、電力貯蔵用バッテリ30を充電している。すなわち、日中は太陽光発電パネル35の出力によって電力貯蔵用バッテリ30を充電することができるので、商用電力を供給せずとも、電力貯蔵用バッテリ30に電力を蓄えておくことができる。
【0026】
また、充放電制御装置33は、電力貯蔵用バッテリ30の出力(直流)をスイッチングして高周波の交流に変換し、コイル34から電磁誘導によってバス2側のコイル24に電力を伝送することができる。
さらに、充放電制御装置33は、電力貯蔵用バッテリ30の無負荷時の端子電圧から残量を推定し、この残量の情報を通信装置31及び表示装置32に提供する。通信装置31は、残量の情報を中央制御装置1に送信する。また、表示装置32は、例えば満充電に対する残量のパーセンテージのデジタル表示やグラフィック表示を行うことができる。このようにして、バス利用者にも当該バス停留所3sの蓄電状況に関心をもってもらえるよう配慮することが好ましい。
【0027】
一方、バス2は、リチウムイオン電池等、充電可能な前述の車載バッテリ20、車載装置21及びコイル24の他、運転手に対する中央制御装置1からの指示を表示するための表示部22、充放電制御装置23、駆動装置26、及び、操作スイッチ27を備えている。駆動装置26は、昇圧コンバータ、インバータ等の駆動回路及び、駆動用の電動機を含むものである。操作スイッチ27は、車載バッテリ20の充電を開始する際に運転手が操作するスイッチである。
【0028】
バス走行時は、車載バッテリ20の出力が駆動装置26に与えられている。車載バッテリ20を充電するときは、操作スイッチ27をオンにすることにより充放電制御装置23が整流器及び電圧調整器として機能する。これにより、バス停留所3sのコイル34からバス2のコイル24に伝送される交流電圧が所定の直流電圧に変換され、車載バッテリ20を充電することができる態勢が整う。一方、操作スイッチ27をオンにした信号は充放電制御装置23から車載装置21に送られ、さらに、車載装置21からバス停留所3sの通信装置31に信号が送られる。信号を受信した通信装置31は、充放電制御装置33にスイッチングを行わせ、電力貯蔵用バッテリ30の出力に基づいて高周波の交流をコイル34に出力する。
【0029】
このようにして、バス停留所3sの充放電制御装置33及びコイル34、並びに、バス2のコイル24及び充放電制御装置23は、電力貯蔵用バッテリ30と車載バッテリ20との間で充放電回路を構成し、電力を伝送する電力伝送装置40を構成している。
また、バス2の充放電制御装置23は、車載バッテリ20の無負荷時の端子電圧から残量を推定し、この残量の情報を車載装置21に提供する。車載装置21は、残量の情報を逐次、中央制御装置1に送信する。車載装置21は、その他、バス2のID情報や、現在位置情報を含むバスロケーションシステムに関する情報を、中央制御装置1に逐次送信する。
【0030】
《充電システムの運用》
次に、中央制御装置1を含めた充電システム(第1実施形態)全体の運用について説明する。図4は、充電システムに関する中央制御装置1の処理動作を示すフローチャートである。図において、フローチャートの処理は、定期的に繰り返し実行される。まず、中央制御装置1は、バス停留所3s及びバス2から、情報を収集する(ステップS1)。情報とは例えば、電力貯蔵用バッテリ30の残量の情報、バス2の現在位置の情報、車載バッテリ20の残量の情報である。なお、バス停留所3(3sを含む。)の位置や、路線上での順番は、予め中央制御装置1に記憶させてある。また、充電能力のないバス停留所については、その情報を、中央制御装置1が取得している。
【0031】
中央制御装置1は、収集した各バッテリの残量の総合情報に基づいて、残量不足の車載バッテリ20があるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、残量不足の車載バッテリが無ければ、処理は終了となる。一方、残量不足の車載バッテリ20があれば、そのバス2の現在位置に基づいて、充電可能な(すなわち充電設備のある)、進行方向に最寄りのバス停留所3sを検索する(ステップS3)。次に、中央制御装置1は、検索して特定したバス停留所3sの電力貯蔵用バッテリ30の残量が十分(閾値以上)であるか否かを判定する(ステップS4)。ここで、十分でなければ次の候補となる(すなわちもう少し先にある)バス停留所3sを検索する(ステップS3)。
【0032】
こうして、電力貯蔵用バッテリ30の残量が十分なバス停留所3sが見つかれば、中央制御装置1は、当該バス2に対して、車載バッテリ20が残量不足であること、及び、当該バス停留所3sを指定して、そこで充電を行うべきであるという指示の情報を送信する(ステップS5)。この指示は、車載装置21(図3)を介して表示部22(図3)に表示される。この場合、運転手は、指定されたバス停留所3sに到着すると、操作スイッチ27(図3)をオンにして、車載バッテリ20の充電を開始する。充電は、乗客が乗り降りしている時間に行われ、乗り降りが完了して発車時刻になれば、運転手は操作スイッチ27をオフにして充電を終了させ、その後、バス2は発車する。
【0033】
このような1回の充電によって残量が閾値以上に回復するとは限らないが、依然として閾値未満であれば、再度、中央制御装置1からの指示に基づいて、同様な処理が行われ、別のバス停留所3sで充電する、という処理が、残量が閾値以上に回復するまで繰り返される。すなわち、小量の充電であっても、これを繰り返すことにより、残量を閾値以上に回復させることができる。
【0034】
上記のような第1実施形態の充電システムでは、車載バッテリ20の補充的な充電を、バス停留所3sでの停車時間を利用して行うことにより、頻繁に車載バッテリ20を充電して、その残量が不足する事態の発生を防止することができる。また、中央制御装置1の管理下で、残量が不足してきた車載バッテリ20を、適時に、かつ、残量が十分な電力貯蔵用バッテリ30によって、充電することができる。しかも、バスの現在位置及び進行方向から最寄りのバス停留所を優先することによって、より迅速に充電を行うことができる。
【0035】
《充電システムの全体構成:第2実施形態》
図5は、本発明の第2実施形態に係る充電システムの全体構成を示すブロック図である。本実施形態においてバス停留所3sの構成が第1実施形態(図3)と異なるのは、コイル34から充放電制御装置33への受電が可能な点であり、その場合の充放電制御装置33は、コイル34が受電する交流を整流及び平滑して、電力貯蔵用バッテリ30を充電する一定の直流電圧を付与する。
【0036】
また、本実施形態のバス2の構成が第1実施形態(図3)と異なる点は、電力の授受に関して、コイル24と充放電制御装置23との間に双方向性、及び、充放電制御装置23と車載バッテリ20との間にも双方向性がある点と、操作スイッチ27は、「受電」又は「送電」及びそれらのオフ、という操作が可能となっている点である。また、バス2の充放電制御装置23は、車載バッテリ20の直流電圧をスイッチングにより高周波の交流に変換することができる。交流の出力は、コイル24から送電される。
なお、それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0037】
《充電システムの運用》
図6は、充電システム(第2実施形態)に関する中央制御装置1の処理動作を示すフローチャートである。図において、フローチャートの処理は、定期的に繰り返し実行される。まず、中央制御装置1は、バス停留所3s及びバス2から、情報を収集する(ステップS1)。情報とは例えば、電力貯蔵用バッテリ30の残量の情報、バス2の現在位置の情報、車載バッテリ20の残量の情報である。なお、バス停留所3(3sを含む。)の位置や、路線上での順番は、予め中央制御装置1に記憶させてある。また、充電能力のないバス停留所については、その情報を、中央制御装置1が取得している。
【0038】
中央制御装置1は、収集した各バッテリの残量の総合情報に基づいて、残量不足の車載バッテリ20があるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、残量不足の車載バッテリが無ければ、処理は終了となる。一方、残量不足の車載バッテリ20があれば、そのバス2の現在位置に基づいて、充電可能な(すなわち充電設備のある)、進行方向に最寄りのバス停留所3sを検索する(ステップS3)。次に、中央制御装置1は、検索して特定したバス停留所3sの電力貯蔵用バッテリ30の残量が十分(閾値以上)であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0039】
ステップS4において電力貯蔵用バッテリ30の残量が十分でない場合、そのバス停留所では充電できない、ということになるが、ここで、中央制御装置1は、他の可能性を模索する。他の可能性とは、同一路線を先行して走行している他のバスから電力貯蔵用バッテリ30を介して電力の融通を受けることができないか、ということである。
【0040】
そこで、具体的には、中央制御装置1は、充電可能な最寄りのバス停留所より手前に、所定の条件を満たす他のバスがいるか否かを判定する(ステップS6)。ここで言う所定の条件とは、同一路線を走行するバスであること、充電したいバスより前方を走行しているバスであること、及び、車載バッテリの残量が十分(閾値以上)であること、である。そのような所定の条件を満たす他のバスがいない場合には、中央制御装置1は、次の候補となる(すなわちもう少し先にある)バス停留所3sを検索する(ステップS3)。
【0041】
一方、ステップS6における所定の条件を満たす他のバス(先行バスと言う。)がいる場合には、中央制御装置1は、まず、先行バスに対して、ステップS3で検索されたバス停留所3sを指定して、そこで放電を行うべきであるという指示の情報を送信する(ステップS7)。この指示は、車載装置21(図5)を介して表示部22(図5)に表示される。この場合、先行バスの運転手は、指定されたバス停留所3sに到着すると、操作スイッチ27(図5)を「送電」に操作する。
【0042】
この「送電」の操作信号は車載装置21からバス停留所3sの通信装置31にも届く。これにより、バス停留所3sはコイル34からの受電の態勢となり、充放電制御装置33は整流・平滑を実行する。一方、先行バス側では、送電の操作信号を受けた充放電制御装置23が、車載バッテリ20の直流電圧をスイッチングにより高周波の交流に変換し、コイル24からバス停留所3sのコイル34への送電が行われる。この送電は、乗客が乗り降りしている時間に行われ、乗り降りが完了して発車時刻になれば、運転手は操作スイッチ27を送電オフにして送電を終了させ、その後、バス2は発車する。
【0043】
また、中央制御装置1は、充電が必要なバス(後続バスと言う。)に対して、ステップS3で検索されたバス停留所3sを指定して、車載バッテリ20の残量が不足しているので、そこで充電を行うべきであるという指示の情報を送信する(ステップS8)。この指示は、後続バスの車載装置21(図5)を介して表示部22(図5)に表示される。この場合、後続バスの運転手は、指定されたバス停留所3sに到着すると、操作スイッチ27(図5)を「受電」に操作する。
【0044】
この「受電」の操作信号は車載装置21からバス停留所3sの通信装置31にも届く。これにより、バス停留所3sは送電の態勢となり、充放電制御装置33は電力貯蔵用バッテリの直流電圧をスイッチングして高周波の交流に変換し、コイル34から後続バス2のコイル24への送電が行われる。一方、後続バス2側では、コイル24で受電した交流電圧が充放電制御装置23によって整流・平滑され、車載バッテリ20は一定の直流電圧で充電される。充電は、乗客が乗り降りしている時間に行われ、乗り降りが完了して発車時刻になれば、運転手は操作スイッチ27を受電オフにして受電を終了させ、その後、バス2は発車する。
【0045】
このようにして、先行バス(第2のバス)の車載バッテリ20から電力貯蔵用バッテリ30に充電し、さらに、電力貯蔵用バッテリ30から後続バス(第1のバス)の車載バッテリ20に充電することができる。すなわち、電力貯蔵用バッテリ30を介した車載バッテリ間での電力の融通が可能となり、同一路線を走行する他のバスにおける車載バッテリの残量を、有効活用することができる。また、路線毎に、車載バッテリの残量の総量を、管理することができる。
なお、先行バスは、その車載バッテリの残量が所定値以上(満充電以下)であることを条件として選択されるため、残量が比較的多い車載バッテリから電力貯蔵用バッテリ30に充電することができ、確実な充電を行うことができる。
【0046】
一方、図6のステップS6において所定の条件を満たす先行バスがいない場合には、第1実施形態と同様に、次の候補となる(すなわちもう少し先にある)バス停留所3sを検索する(ステップS3)。
【0047】
そして、電力貯蔵用バッテリ30の残量が十分なバス停留所3sが見つかれば、中央制御装置1は、当該バス2に対して、車載バッテリ20が残量不足であること、及び、当該バス停留所3sを指定して、そこで充電を行うべきであるという指示の情報を送信する(ステップS5)。この指示は、車載装置21(図5)を介して表示部22(図5)に表示される。この場合、運転手は、指定されたバス停留所3sに到着すると、操作スイッチ27(図5)を「受電」にして、車載バッテリ20の充電を開始する。充電は、乗客が乗り降りしている時間に行われ、乗り降りが完了して発車時刻になれば、運転手は操作スイッチ27をオフにして充電を終了させ、その後、バス2は発車する。
【0048】
このような、バス停留所における1回の充電(ステップS5又はS8)によって残量が閾値以上に回復するとは限らないが、依然として閾値未満であれば、再度、中央制御装置1からの指示に基づいて、同様な処理が行われ、別のバス停留所3sで充電する、という処理が、残量が閾値以上に回復するまで繰り返される。すなわち、小量の充電であっても、これを繰り返すことにより、残量を閾値以上に回復させることができる。
【0049】
上記のような第2実施形態の充電システムでは、車載バッテリ20の補充的な充電を、バス停留所3sでの停車時間を利用して行うことにより、頻繁に車載バッテリ20を充電して、その残量が不足する事態の発生を防止することができる。また、中央制御装置1の管理下で、残量が不足してきた車載バッテリ20を、適時に、かつ、残量が十分な電力貯蔵用バッテリ30によって、充電することができる。しかも、バスの現在位置及び進行方向から最寄りのバス停留所を優先することによって、より迅速に充電を行うことができる。さらに、同じ路線を走行する他のバスから電力の融通を受けることが可能となるので、1系統の設備・バスの全体でエネルギーを無駄なく活用することができる。
【0050】
なお、図6のステップS7において放電の指示を受けた先行バスの車載バッテリ20から電力貯蔵用バッテリ30への放電を実際に行うか否かの最終的な判断は運転手が行うことができるが、残量の少ない後続バスが、残量の十分な先行バスのすぐ後方を走行している場合は、迅速確実な電力融通の観点から、先行バスに対して放電を義務づける運用をすることが好ましい。
【0051】
《その他》
なお、上記実施形態の充電システムでは、バスロケーションシステムを利用しているとして説明したが、バスロケーションシステムとは関係なく単独で、又はその他のシステムと併用で、上記のような充電システムを設けることも可能である。
【0052】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1:中央制御装置
2:バス
3r:屋根
3,3s:バス停留所
24,34:コイル
35:太陽光発電パネル
40:電力伝送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機によって駆動力を得るバスに駆動用電源として搭載された車載バッテリと、
複数のバス停留所にそれぞれ設けられ、電力を貯蔵する電力貯蔵用バッテリと、
前記バス停留所に到着したバスが所定の位置に停車した状態で、前記電力貯蔵用バッテリと前記車載バッテリとの間で充放電回路を構成することにより電力を伝送する電力伝送装置と、
同一の路線を走行する複数のバスのそれぞれにおける前記車載バッテリの残量の情報を収集する中央制御装置とを備え、
前記中央制御装置は、前記車載バッテリの残量の情報に基づいて、充電が必要な車載バッテリを搭載するバスを検出し、当該バスに対して充電の指示に関する情報を送信することを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記中央制御装置は、前記路線上にあるバス停留所のそれぞれについて、前記電力貯蔵用バッテリの有無及び残量を含む充電能力の情報を収集し、当該情報に基づいて、充電が必要な車載バッテリを搭載するバスが充電を行うべきバス停留所を検索する請求項1記載の充電システム。
【請求項3】
前記中央制御装置は、充電が必要な車載バッテリを搭載するバスの現在位置、進行方向、並びに、バス停留所の位置及び前記充電能力の情報に基づいて、充電を行うべきバス停留所を検索する請求項2記載の充電システム。
【請求項4】
前記バス停留所に停車したバスの車体に設けられたコイルと、当該バス停留所に設けられたコイルとを互いに対向させ、電磁誘導により電力を伝送する請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項5】
互いに非接触で対向する前記2つのコイルの一方はバスの上面に設けられ、他方は停車したバスの上にあるバス停留所の屋根に設けられる請求項4記載の充電システム。
【請求項6】
前記バス停留所は太陽光発電パネルを備え、当該太陽光発電パネルの出力によって前記電力貯蔵用バッテリを充電する請求項1〜5のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項7】
前記中央制御装置は、前記車載バッテリの充電が必要な第1のバスがある場合は、当該第1のバスに先行して前方を走行している第2のバスを選択して、当該第1のバスに充電を行う予定のバス停留所の電力貯蔵用バッテリを、当該第2のバスの車載バッテリにより充電させる指示を行う請求項2記載の充電システム。
【請求項8】
前記第2のバスは、その車載バッテリの残量が所定値以上であることを条件として選択される請求項7記載の充電システム。
【請求項9】
前記第2のバスは、前記第1のバスと同一の路線を走行しているバスであることを条件として選択される請求項7又は8に記載の充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27159(P2013−27159A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159939(P2011−159939)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】