説明

充電制御機能を備えた電池システム、および充電システム

【課題】 リチウムイオン電池に、満充電、過放電を起こさないようにして、劣化の進行を抑え、長期の利用を可能とする充電制御を行なう。
【解決手段】 電池システムに電池モジュールと充/放電制御処理部とを備え、充/放電制御処理部の演算部は、電池モジュールの充電、放電、および停止の稼動実績を記憶部へ記録する稼動実績蓄積部と、記憶部に記憶された電池モジュールの製造状態別、劣化状態別の容量−電圧プロファイルデータと、電池モジュールの製造検査実績データ、および稼動実績データとを照合して、電池モジュールの劣化度を推定する劣化度推定部と、稼動実績データより、充電可能時間と、最大の放電容量を抽出し、劣化度に応じた容量−電圧プロファイルデータに基づいて、充電シーケンスの終了電圧、充電電流を算出する充電シーケンス計算部とを備え、制御処理部により、終了電圧、充電電流に従って、電池モジュールの充電制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の稼動実績情報に基づいて、電池が満充電には達しない必要容量だけを充電制御する機能を備えた電池システム、および充電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池に比較して圧倒的に高いエネルギー密度を有する利点を持ち、メモリー効果が小さいなどより、携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器、ハイブリッド車両や燃料電池車両に代表される電動車両などに広く用いられている。
【0003】
しかし、リチウムイオン電池を過度に充電すると正極側では電解液の酸化・結晶構造の破壊が起こり、負極側では金属リチウムが析出して、電池を急激に劣化させる特性がある。そのため、従来の他の蓄電池で行われるような、非常時に電気を充分に取り出せるようにするために、満充電を保つようにする仕掛けとしてのトリクル充電には、リチウムイオン電池は適していない。
【0004】
リチウムイオン電池には、満充電、過放電を起こさないようにする取り扱いと、劣化の進行を抑え、長期の利用を可能とする制御が必要となる。
【0005】
本技術分野の背景技術として、特開2010−119223号公報(特許文献1)がある。この公報には、「車両に搭載した電池の診断情報に応じて、電池の寿命を改善するための車両の制御プランを提示し、ユーザ選択した制御プランに応じて車両の制御情報を変更することができる車両用電池診断システムを提供する。」と記載されている(要約参照)。また、特開2011−64571号公報(特許文献2)がある。この公報には、「自動車に搭載された電池モジュールの余寿命診断を、予め登録した寿命電池の充放電特性と、診断対象となる電池の充放電特性の差分から計算する。」と記載されている(要約参照)。また、特開2011−69693号公報(特許文献3)がある。この公報には、「寿命に到達したと判定した電池の使用環境(自動車の車種、使用地域、使用用途、走行履歴など)と、寿命状態情報(充電特性、放電特性、搭載車の通算走行距離、通算使用時間など)とを関連付けて管理する情報管理システムを構成して、搭載電池の余寿命診断の精度を向上する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−119223号公報
【特許文献2】特開2011−64571号公報
【特許文献3】特開2011−69693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1には、電池診断情報(電流値や電圧値に基づいて電池の充電状態を算出して診断するとのみ記載されている)に基づき電池の寿命を改善するための車両の制御プランを提示し、ユーザ選択した制御プランに応じて車両の制御情報を変更するが、電池の充電方法に関してはユーザが選択した充電パターンに従った充電処理を実施しており、電池の劣化状態に応じた充電パターンの算出方法に関しては開示は無い。
【0008】
前記特許文献2,3に開示される発明は、自動車に搭載された、または自動車への搭載用のバッテリの余寿命を精度よく診断する技術を開示しているが、電池の劣化度に応じた充電特性に基づいて充電パターンを計算して、充電処理を制御する技術に関しては開示していない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、充電対象の電池モジュールの稼動実績情報を記録して、その稼動履歴情報から、充電に費やすことが可能と予測される時間(充電可能時間)と、過去の最大放電容量+余裕度を充電しておけば通常の用は足りると考えて充電必要量を決定する。そして、充電対象の電池モジュールの劣化度を評価する手段により得られた、劣化度に応じた現状の充電特性に基づいて充電シーケンスを算出して、満充電とはならない終了電圧を目標とする充電制御を行う制御部を電池モジュールと接続して構成した電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明では、電池モジュールと、その充/放電を制御する充/放電制御処理部とを備えた電池システムを、前記充/放電制御処理部は、演算部と、記憶部と、および制御処理部とを備え、前記演算部は、前記電池モジュールの充電、放電、および停止の稼動実績を前記記憶部へ記録する稼動実績蓄積部と、前記記憶部に記憶された電池モジュールの製造状態別、劣化状態別の容量−電圧プロファイルデータと、充電対象の前記電池モジュールの製造検査実績データ、および前記稼動実績データとを照合して、前記電池モジュールの劣化度を推定する劣化度推定部と、前記稼動実績データより、充電可能時間と、最大の放電容量を抽出し、前記劣化度に応じた容量−電圧プロファイルデータに基づいて、充電シーケンスの終了電圧、充電電流を算出する充電シーケンス計算部とを備え、前記制御処理部は、前記終了電圧、前記充電電流に従って、前記電池モジュールの充電制御を行なうように構成した。
【0011】
また、上記課題を解決するために本発明では、前記記憶部は、前記電池モジュールと同機種の電池モジュールを、製造状態別、劣化状態別のサンプルにおいて充電特性データを測定して、各容量−電圧プロファイルデータを予め記憶した性能劣化データベースと、前記電池モジュールの製造検査時に測定した充電特性または放電特性の容量−電圧プロファイルデータを記憶した製造検査実績データベースと、前記稼動実績蓄積部が、電池モジュール毎に、所定の時間間隔毎に、またはステイタスの切り替わり時に記録した充/放電特性の容量−電圧プロファイルデータを記録した稼動実績データベースとを有するように構成した。
【0012】
また、上記課題を解決するために本発明では、電源と、接続された電池システムへの充電を制御する充電制御処理部とを備えた充電システムを、前記充電制御処理部は、演算部と、記憶部と、制御処理部と、および通信部とを備え、前記演算部は、接続された電池システムに格納されている電池モジュールの識別番号を入手して、通信部、ネットワークを介して前記電池モジュールのメーカのデータベースに問い合わせて、該当する電池モジュールの製造検査実績データ、性能劣化データをダウンロードにより入手して、前記記憶部へ格納し、および前記電池システムの稼動実績データベースより稼動実績データを読み出すデータ検索部と、前記記憶部に記憶された電池モジュールの製造状態別、劣化状態別の容量−電圧プロファイルデータと、充電対象の前記電池モジュールの製造検査実績データ、および前記稼動実績データとを照合して、前記電池モジュールの劣化度を推定する劣化度推定部と、前記稼動実績データより、充電可能時間と、最大の放電容量を抽出し、前記劣化度に応じた容量−電圧プロファイルデータに基づいて、充電シーケンスの終了電圧、充電電流を算出する充電シーケンス計算部とを備え、前記制御処理部は、前記終了電圧、前記充電電流に従って、前記電池システムの電池モジュールの充電制御を行なうように構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池モジュールの劣化状態、および稼動実績に応じて充電シーケンスを変更して、充電処理の制御を行なうことで、電池システム全体の寿命を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】、本発明の実施の形態にかかる電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】リチウムイオン電池が製造されるまでの具体的な工程を模式的に示す図である。
【図3】リチウムイオン電池のモジュール電池の構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】製造検査実績情報に記録される充電特性データと放電特性データの容量−電圧プロファイルデータの例を示す図である。
【図5】製造検査実績データベースに格納される充電・放電特性データのデータ形式の例を示す図である。
【図6】稼動実績情報、および放電特性データ情報の例を示す図である。
【図7】稼動実績データベースに記録された稼動実績情報の例を示す図である。
【図8】電池劣化に伴う放電特性変化の例を示す図である。
【図9】製造条件が電池の劣化に影響を与える例、および稼動実績が電池劣化に影響を与える例を示す図である。
【図10】性能劣化データベースに登録されている電池モジュール検査データの例を示す図である。
【図11】本発明の電池システムの電池モジュールの充電処理のフローチャートである。
【図12】電池モジュールの劣化度を推定する処理を説明する図である。
【図13】充電シーケンスの計算処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図14】稼動実績情報を用いて稼動パターンを計算する処理のフローチャートである。
【図15】電池モジュールの劣化度に応じた充電特性データにおいて、必要容量の充電に必要な終了電圧と必要充電容量を計算するフローチャートである。
【図16】充放電プロファイルデータのパターンマッチング処理のフローチャートである。
【図17】複数の電池モジュールを組み合わせた電池システムの構成を示すブロック図である。
【図18】電池の製造・稼動実績を活用した充電システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる充電制御機能を備えた電池システム、および充電システムの実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施の形態にかかる充電制御機能を備えた電池システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、電池システム100は、電池モジュール110と、充/放電制御処理部120とを含んで構成されている。充/放電制御処理部120は、演算部130と、制御処理部140と、記憶部150とを含んで構成されている。
【0017】
演算部130は、稼動実績蓄積部131と、劣化度推定部132と、充電シーケンス計算部133と、充/放電指示部134とを有している。
【0018】
記憶部150は、性能劣化データベース151と、製造検査実績データベース152と、稼動実績データベース153とを有している。
【0019】
本実施例では、電池システム100が接続されている機器200は、例えば通常のノートパソコンを考えており、本電池システム100は携帯用のバッテリーに当たり、ノートパソコンの筐体に接続されるものである。電源300は通常の家庭用電源が想定される。
【0020】
または、本電池システム100に接続されている機器200がデスクトップ型パソコン、またはサーバを想定して、本電池システム100がUPS (Uninterruptible Power Supply) と呼ばれる無停電電源装置を構成するシステムに該当する。電源300は通常の商用電源が想定される。
【0021】
本電池システム100の電池モジュール110は、リチウムイオン電池セルを複数接続してモジュールを構成するものであるが、単一のリチウムイオン電池セルにより構成されるものも含む。
【0022】
図2は、リチウムイオン電池が製造されるまでの具体的な工程を模式的に示す図である。図2に示すように、リチウムイオン電池の製造工程は、正極材料製造工程と負極材料製造工程とセルの組立工程とモジュール電池の組立工程とを含んでいる。
【0023】
正極材料製造工程では、まず、正極材料の原料となる各種材料を混練および調合して、スラリー材料を作成する。そして、フィルム状の金属箔にこのスラリー材料を塗工した後、スラリーが塗工された金属箔に圧縮や切断といった加工を行い、フィルム状の正極材料を製造する。
【0024】
一方、負極材料製造工程では、正極材料製造工程とは使用される原料となる各種材料は異なるが、負極材料が製造されるまでの手順は同じである。まず、負極材料の原料となる各種材料を混練および調合してスラリー材料を作成し(混練・調合)、フィルム状の金属箔にこのスラリー材料を塗工した後(塗工)、スラリーが塗工された金属箔の圧縮や切断といった加工を行い(加工)、フィルム状の負極材料を製造する。
【0025】
その後、セル組立工程では、捲回と呼ばれる工程で、上記のフィルム状の正極材料および負極材料から、セルに必要な大きさの正極および負極を切り出すとともに、これら正極材料と負極材料を分離するためのフィルム状のセパレータ材料からセルに必要な大きさのセパレータを切り出し、正極および負極に、切り出したセパレータを挟んで重ねて捲き合わせる(捲回)。そして、捲き合わせた正極、負極およびセパレータの電極対の群を組み立てて溶接する。その後、溶接したこれら電極対の群を、電解液が注入(注液)された電池缶内に配置した後、電池缶を完全に密閉し(封口)、セルを作成する。
【0026】
セル検査工程は、セル組立工程にて作成されたリチウムイオン電池のセルを繰り返し充放電し、このセルの性能及び信頼性に関する検査(例えば、セルの容量や電圧、充電または放電時の電流や電圧等の検査)を行なう(セル検査)。これにより、セルが完成し、セル組立工程が終了する。
【0027】
次に、モジュール組立工程では、セルを複数個直列に組み合わせて電池モジュール110を構成し、さらに、上述した充/放電制御処理部120(後述)を接続して電池システムを製造する(モジュール組立)。その後、モジュール検査工程において、モジュール組立工程において組み立てられた電池モジュールの性能及び信頼性に関する検査(例えば、電池モジュールの容量や電圧、充電または放電時の電流や電圧等の検査)を行なう(モジュール検査)。
【0028】
図3は、このように製造されたリチウムイオン電池の電池モジュールの構成を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、電池モジュールの内部は、セルを識別するためのセル管理番号を示すバーコードが付された複数のセルから構成され、これらのセルが直列に配置されている。また、電池モジュールには各セルや電池モジュールの充放電、容量、電圧等、電池モジュールの稼動実績情報(稼動履歴データ)を作成して、管理する充/放電制御処理部120が接続されている。
【0029】
充/放電制御処理部120は、電池モジュールが充放電した際の日時を計測するタイマを有している。また、充/放電制御処理部120は、充放電時点、および停止状態における電池モジュールの稼動実績データを取得し、記憶部150の稼動実績データベース153に記憶する。この稼動実績データに基づいて電池モジュールの充電制御を行う。
この稼動実績データの具体的な構成については後述する。
【0030】
図4は、モジュール検査工程において、各電池モジュールに施された充電・放電検査の結果得られた充電・放電特性データを示している。
(a)充電検査は、所定の電流値により電池モジュールを充電しながら電圧をモニタして、充電終了電圧に達した時点で充電を終了させた場合の、電圧と電池モジュールに充電された容量との関係の変化のプロファイルを充電特性データとして求めている。ここで、容量は測定されるデータではなくて、充電に掛けられた電流値と掛かった時間との積によって算出される。単位はAhで表わされる。図4(a)充電特性データの例では、2個の電池モジュール1,2に充電された充電容量には差異があることが分かる。
【0031】
(b) 放電検査は、所定の電流値により電池モジュールを放電しながら電圧をモニタして、放電終了電圧まで電圧が下がった時点で放電を終了させた場合の、電圧と電池モジュールから放電された容量との関係の変化のプロファイルを放電特性データとして求めている。ここで、容量は同様に、放電される電流値と掛かった時間との積によって算出される。図4(b)放電特性データの例では、2個の電池モジュール1,2のそれぞれの放電特性データは、上記した充電特性データと、ほぼ左右対称の形状をしていることが分かる。
【0032】
モジュール検査工程において、各電池モジュールの充電・放電特性データが求められて、電池システム100の出荷時には、充/放電制御処理部120の記憶部150の製造検査実績データベース152に格納される。
【0033】
図5には、製造検査実績データベース152に格納される充電・放電特性データのデータ形式の例を示す。データ形式は、電池モジュールを特定する電池モジュール番号、充/放電シーケンスを識別するデータ、測定日時、容量、電圧の項目よりなっている。図5に示す例では、電池モジュール番号「M01」の「充電」シーケンスにおいて、電圧が「3.0V」の場合には電池モジュールの容量が「0Ah」であり、電圧が「3.1V」の場合には電池モジュールの容量が「10Ah」であり、電圧が「3.2V」の場合には電池モジュールの容量が「20Ah」である等といった充電時の容量と電圧の関係を示す容量−電圧プロファイルデータが格納されている。
【0034】
図6(a)稼動実績情報は、充/放電制御処理部120の稼動実績蓄積部131が、電池モジュール110の稼動履歴を、例えば充電、放電、停止状態を識別して記録したものである。稼動実績情報は、充/放電制御処理部120の記憶部150の稼動実績データベース153に記録される。
【0035】
図7に、稼動実績データベース153に記録された稼動実績情報の例を示す。例えば、稼動実績蓄積部131は、電池モジュール110の入出力の電流値、電圧値を調べて、電池モジュールが、充電、放電、または停止状態のいずれの状態であるかを判定して、例えば10分ごとに稼動実績情報の1データレコードを作成して、実績取得日時とステイタス値として充電、放電、または停止状態の識別コードを各データレコードに記録する。
【0036】
また、稼動実績蓄積部131は、電池モジュールのステイタスが変わったことを検知して、その時刻の稼動実績情報のデータレコードを作成して、ステイタス変化時の実績取得日時を記録する。
【0037】
また、本発明では、停止状態を2通りに区別して、電池システム100が電源300に接続されていて充電が可能な状態と、電池システム100が電源300と接続されていなくて充電は不可の状態とに分ける。そして、稼動実績情報では、ステイタスにおいて、停止(充電可)と停止とに区別して記憶する。
【0038】
稼動実績情報の容量は、電池システム100の製品出荷時に充電された容量を初期値として、その後放電された場合には放電容量=放電電流×経過時間を前容量から減算して、各実績取得日時のデータレコードの容量を算出して記録する。また、充電された場合には放電容量=放電電流×経過時間を前容量に加算して、各実績取得日時のデータレコードの容量を算出して記録する。また、リチウムイオン電池のような二次電池は、停止状態でも自然放電が大きいので、ステイタスが停止状態の場合には、現在の容量に応じて過去の実績に基づき、停止時間を乗じた自然放電容量を前容量から減算して、各実績取得日時のデータレコードの容量を算出して記録する。
【0039】
稼動実績情報の電圧は、実績取得日時に記載された時刻の現在の測定値を格納する。
ステイタスが停止状態のデータレコードを10分ごとに記録することは記憶容量が無駄であるので、例えばステイタスが停止状態に切り替わった時刻のデータレコードと、他のステータスに切り替わる直前の、所定測定時刻のデータレコードのみを記録して、その間のデータレコードの記録は省略することが考えられる。さらに、本発明では、充電シーケンスを予測することから、稼動実績情報として充電状態の履歴を残しておくことが必要であるので、放電状態の履歴は、停止状態と同様に省略することも考えられる。
【0040】
または、図4で示した通り、充電特性データと放電特性データはほぼ左右対称となることより、放電状態の稼動実績情報も履歴を残しておき、必要に応じて、最新の放電状態の稼動実績情報から充電特性データの容量−電圧プロファイルデータを推定することも考えられる。図6(b)に放電特性データ情報の例を示している。稼動実績情報では必ずしも全放電するわけではないため、放電開始時の電圧を起点としたDOD(Depth Of Discharge)にて放電特性を管理する。
【0041】
図8に、電池劣化に伴う放電特性変化の例を示す。ある電池モジュールを、出荷時の初期状態と、所定期間使用後の時点Aと、さらに所定期間使用後の時点Bとにおいて、同一の電圧値より放電を開始して、同一の放電終了電圧に到達して放電を終了させた場合において、3通りの放電容量には差異があることを示している。電池の劣化によって、電池に保持できる電気の量が減ることを示している。
【0042】
図9(a)は、例えば製造時の温度など製造条件がA,B,Cと異なる3つの電池モジュールを、それぞれ同一の放置時間後の放電容量を図8の測定のように調べた、電池性能の経時劣化の様子を比較した図である。製造条件が電池の劣化に影響を与えることが判る。
【0043】
また、図9(b)は、3つの電池モジュールをそれぞれ異なる使い方をして、稼動実績が異なる場合に、累積稼動時間は同じ条件であっても放電容量に差異が生じることを示している。稼動実績が電池劣化に影響を与えることを示している。図8、図9の測定結果に基づき、充電特性にも同じ傾向があることが予測される。
【0044】
図12(b)に、本発明で使用する性能劣化データベース151の模式図を示す。横軸は、図9(a)に示す製造条件を識別して、代表的な製造条件を製造状態として区分して並べた指標を表わす。また、縦軸は、電池の劣化状態を表わす指標である。劣化状態は、例えば製造後、所定の時間放置した時間数などにより定義する。そして、性能劣化データベース151には、製造状態および劣化状態ごとに充放電特性データとして容量−電圧プロファイルデータを予め格納しておく。これらのデータは、予め各製造状態において製造された各電池モジュールを、劣化状態が0である出荷時、および各代表的な劣化状態として所定時間放置した時点において、充放電特性データを測定して登録したものである。
【0045】
図10に、性能劣化データベース151に登録されている電池モジュール検査データの例を示す。性能劣化データベース151は、電池モジュールの製品種ごとに作成されて、少なくとも、充/放電シーケンス、製造状態、劣化状態、容量、電圧のデータ項目より成る。製造状態は、電池モジュールの製造条件(例えば、製造時の温度)によって識別される。劣化状態は、該当する製造状態で製造された電池モジュールの放置時間により表わす。図10に示す例では、ある製品種の電池モジュールを製造状態「A」で製造し、放置時間が「0」(すなわち製造直後)の場合には、電圧が「3.0V」の場合には電池モジュールの容量が「0Ah」であり、電圧が「3.1V」の場合には電池モジュールの容量が「10Ah」であり、電圧が「3.2V」の場合には電池モジュールの容量が「20Ah」である等といった充電時の容量と電圧の関係を示す容量−電圧プロファイルデータが、所定の放置時間(例えば、100時間ごとの間隔)が経過した場合毎に容量と電圧との関係が対応付けて記憶されている。この容量−電圧プロファイルデータの具体的な内容については後述する。
【0046】
本発明の電池システム100の電池モジュール110の充電処理のフローチャートを図11に示す。
ステップ101において、劣化度推定部132は、製造検査実績データベース152より、今回充電対象の電池モジュール番号の充電シーケンスに対応する各行より、容量−電圧プロファイルデータを読み出す。
【0047】
ステップ102において、劣化度推定部132は、稼動実績データベース153より、今回充電対象の電池モジュール番号の最新の充電処理に関わるデータレコードから、容量−電圧プロファイルデータを読み出す。なお、最新の充電処理の容量−電圧プロファイルデータが、全容量のごく一部しか充電しない処理であった場合には、例えば、それよりも古い履歴を探して、容量が大きい充電処理の容量−電圧プロファイルデータを読み出すか、または、最新の放電処理が容量が大きい放電処理である場合には、放電処理の容量−電圧プロファイルデータを読み出して、左右対称となる充電処理の容量−電圧プロファイルデータに変換して代用することが考えられる。
【0048】
ステップ103において、劣化度推定部132は、ステップ101で取得した製造検査実績情報の容量−電圧プロファイルデータと、ステップ102で取得した稼動実績情報の容量−電圧プロファイルデータとを、性能劣化データベース151に格納している容量−電圧プロファイルデータと照合処理して、今回充電対象の電池モジュールの劣化状態(劣化度)を推定する。
【0049】
ステップ104において、劣化度推定部132は、今回充電対象の電池モジュールの稼動実績情報を調べて、過去の稼動実績の中より充電可能時間を抽出し、および過去の放電容量の実績の中で最大となる放電容量を必要容量として、その必要容量を充電するために、前記推定した劣化度に応じた充電特性に従って終了電圧と必要充電容量を計算する。そして、前記必要充電容量と、前記充電可能時間とより充電電流を計算する。
【0050】
ステップ105において、充/放電指示部134が前記充電電流と前記終了電圧を制御処理部140へ伝えて充電処理を指示する。制御処理部140は、電池モジュール110の充電処理を制御する。
【0051】
図12(a)のフローチャートにおいて、ステップ103の処理を詳細に説明する。劣化度推定部132は、ステップ101で取得した製造検査実績情報の容量−電圧プロファイルデータを、性能劣化データベース151に格納している各製造状態における出荷時の容量−電圧プロファイルデータとパターンマッチング処理を行う。図12(b)に模式化して示すように、両方の容量−電圧プロファイルデータを、図16にフローチャートで示すパターンマッチング方法により、差が最小となる容量−電圧プロファイルデータを持つ製造状態を選択する(S201)。例えば、図12(b)のS201の処理結果が指し示すプロファイルが選択される。
【0052】
図16は、充放電プロファイルデータのパターンマッチング方法のフローチャートである。該当電池モジュールから測定した容量−電圧プロファイルデータを入力して、数1で表わす。(S601)
【0053】
【数1】

【0054】
性能劣化データベースより、マッチング対象となる容量−電圧プロファイルデータを入力して、数2で表わす。(S602)
【0055】
【数2】

【0056】
数1で表わされたプロファイルデータと、数2で表わされたプロファイルデータとのパターンマッチングによる差は、数3により表わされる。
【0057】
【数3】

【0058】
性能劣化データベースより、全てのマッチング対象となる容量−電圧プロファイルデータを読み出して差Δを計算して、差Δが最小となるパターンを選択する。(S603)
選択したプロファイルデータの属性(製造状態、劣化状態)を取得する。(S604)
図12(a)に戻り、ステップ202において、性能劣化データベース151より、前記ステップ201で推定した製造状態における各劣化状態の容量−電圧プロファイルデータ(図12(b)における縦方向の全てのプロファイルデータ)を取得する。
【0059】
ステップ203において、ステップ102で読み出した今回充電対象の電池モジュールの稼動実績情報を表わす容量−電圧プロファイルデータと、ステップ202で取得した各劣化状態の容量−電圧プロファイルデータとを、図16に示すパターンマッチング処理によって比較して、差が最小となる劣化状態のパターンを選択する。選択された劣化状態によって、今回充電対象の電池モジュールの劣化度を推定する。ここで、パターンマッチング処理の対象となった稼動実績情報を表わす容量−電圧プロファイルデータの電圧の範囲は、通常は性能劣化データベースに格納されている容量−電圧プロファイルデータの電圧の範囲とは同じではない。パターンマッチング処理は、両方の容量−電圧プロファイルデータの共通する電圧範囲において差分を計算する。このことから、稼動実績情報を表わす容量−電圧プロファイルデータを選択する場合に、なるべく性能劣化データベースに格納されている容量−電圧プロファイルデータの電圧の範囲と近い電圧範囲を持つ稼動実績情報を選ぶほうが、パターンマッチング処理の精度は高まる。
【0060】
図13のフローチャートにおいて、ステップ104の充電シーケンスの計算処理の詳細を説明する。
充電シーケンス計算部133は、ステップ301において、ステップ203で推定した劣化度に応じた充電特性データ(容量−電圧プロファイルデータ)を性能劣化データベース151から取得する。
【0061】
ステップ302は、図14に示すフローチャートにより説明する。
ステップ401において、稼動実績データベース153から、今回充電対象の電池モジュールに関わる全ての稼動実績情報のデータレコードを対象として、ステイタスが充電と、停止(充電可)の場合には、電源300が接続されていて電池モジュールを充電することが可能な時間帯と判定して、充電可能時間帯として抽出する。
【0062】
ステップ402において、各充電可能時間帯を所定のしきい値と比較して、極端に短い充電可能時間帯は充電可能時間としては不適切と見なして除外して、所定のしきい値より大きい充電可能時間帯の中で、最小となる充電可能時間帯を充電可能時間とする。これは、本電池システムが接続されている機器200の過去の使用履歴、および本電池システムの過去の充電履歴を踏まえて、今回の充電に割ける時間を「充電可能時間」として予測したものである。
【0063】
ステップ403において、稼動実績データベース153から、今回充電対象の電池モジュールに関わる全ての稼動実績情報のデータレコードよりステイタスが放電のデータレコードを対象として、全ての放電プロセスの放電容量を算出する。そして、それらの中で放電容量が最大となる稼動実績が、本電池システムが接続されている機器200で1度に使用される放電容量の最大と予測して、その最大の放電容量を少なくとも電池モジュールに充電すれば良いと判定する。そして、その最大の放電容量を必要容量とする。
【0064】
図13のステップ303に戻り、その詳細の処理を図15(a)のフローチャートにて説明する。
ステップ501において、電池モジュール110の現在の電圧値を取得する。
ステップ502において、ステップ301において取得した充電特性データ(容量−電圧プロファイルデータ)を入力する。
【0065】
ステップ503において、ステップ502において入力した今回充電対象の電池モジュールの劣化度に応じた充電特性データ(容量−電圧プロファイルデータ)上に、前記必要容量+数%の余裕度を、図15(b)のように割り付ける。ここで、リチウムイオン二次電池をなるべく劣化を抑えて使用するためには、満充電となる最大容量、および完全放電状態の容量0のいずれの領域においても使用を避けた方が良い。そのため、「必要容量+余裕度」の割り付けは、最大容量からの距離と、容量=0からの距離が同等となるように、「必要容量+余裕度」の両端が位置付けられるのが適当である。
【0066】
上記のように、「必要容量+余裕度」の両端が位置付けられた際の容量の上限値における前記充電特性データ(容量−電圧プロファイルデータ)上の点の電圧値を、「終了電圧」として求める。
【0067】
ステップ504において、前記充電特性データ(容量−電圧プロファイルデータ)上に現在の電圧値の点を求め、現在の電圧値から前記終了電圧まで充電するのに必要となる「必要充電容量」を前記充電特性データから計算する。
【0068】
次に、図13のステップ304に戻り、「必要充電容量」および「充電可能時間」から、所定の範囲内の充電となる「充電電流」=必要充電容量/充電可能時間 を算出する。 最後に、図11のステップ105に戻り、充/放電指示部134は、前記算出された「終了電圧」、および「充電電流」を制御処理部140に通知して、充電処理を指示する。制御処理部140は指示に従い、電池モジュールの劣化度に応じた最適の充電処理を実行する。
【0069】
本実施例は、電池システム100が接続されている機器200は、例えば通常のノートパソコンを想定していると述べた。図7に示す稼動実績情報の例では、2011/9/22の8:00過ぎまで充電していたパソコンを、8/07に電源との接続を切って、パソコンを携帯して席を離れ、14:26より会議室での会議にパソコンを使用して、17:22にパソコンを停止している。その後、自席に戻ってパソコンを電源に接続したため、17:28に充電が開始されて、20:45に充電が終了している。そのまま、パソコンは席に置かれていたが、2011/9/26の8:34に電源との接続を切って、パソコンを携帯して出張している。そして、その日の12:58より出張先でパソコンを使用して、16:50までパソコンを使用中のデータが格納されていることを示している。実際には、記憶部150の記憶容量が許す範囲まで過去の履歴情報を格納する。
【0070】
本発明を適用すれば、過去の充電可能時間の実績値の範囲内で、過去の放電容量の最大値を満たす範囲内で、電池モジュールの劣化度に応じた充電特性に適合した充電電流で電池モジュールを充電制御するので、電池モジュールの劣化の進行を抑える効果がある。
【実施例2】
【0071】
図17に示す電池システム101は、実施例1において開示した電池モジュール110と充/放電制御処理部120との組合せを複数備えた例である。ここでの充/放電制御処理部1、2(121,122)は、それぞれ個別に電池モジュール1,2(111,112)を充/放電制御する。ここでは、モジュール制御処理部160が、個別の電池モジュールの充/放電制御処理部からの指示に応じた電圧、電流を提供する構成となっていることが実施例1とは異なる。
【0072】
また、充/放電制御処理部1、2(121,122)の中の演算部130、記憶部150、および制御処理部140は、実施例1の場合と同様の構成であるが、性能劣化データベース151に格納されているデータが、複数の電池モジュールに対応するデータである場合には、劣化度推定部132は対応する電池モジュールに関わるデータを読み出すことになる。
【0073】
実施例2では、電池システム101が接続されている機器200は、例えば遠隔地にある風力発電機に接続された機器であり、本電池システム101は無風時の非常用のバッテリーに当たり、電源300は風力発電機を想定することができる。風力発電機が発電中は機器に電力が供給されると共に、余剰電力によって電池モジュールが充電されるように制御される。無風の場合に風力発電による電力が供給されない時に、本電池システム101が機器に対して電力を供給する。このような運用時に、電池モジュールの劣化度に応じた充電特性に適合した充電電流で緩やかに充電を制御することによって、電池モジュールの劣化の進行を抑えて、長期の使用を継続させることができる。
【実施例3】
【0074】
図18に示す電池システム102は、充/放電制御処理部123には、実施例1のように充電制御を行う機能は備えておらず、代わりに充電システム310側に充電制御を行う機能を備えるようにした構成例である。
【0075】
充/放電制御処理部123の稼動実績蓄積部131は、電池モジュール110の稼動実績を、実施例1の場合と同様に記録して、稼動実績データベース153に格納する。
【0076】
実施例3では、電池システム102は例えばハイブリッド車両等の電動車両に搭載されたものであり、充電システム310は、電動車両に搭載された電池モジュールに電力を供給して充電する充電ステーションに備えられたシステムを想定している。
【0077】
充電システム310の充電制御処理部320は、演算部330、記憶部350、制御処理部340、および通信部360を備える。演算部のデータ検索部331は、充電システムと電池システムとの接続によって、電池モジュール110の固有識別番号を読み出して、その固有識別番号によって、電池モジュールのメーカのデータベースに問い合わせて、ネットワーク400、通信部360を介して、該当する電池モジュールの製造検査実績データ、性能劣化データをダウンロードにより入手して、記憶部350の性能劣化データベース351、製造検査実績記憶部352へ格納する。
【0078】
劣化度推定部332、充電シーケンス計算部333は、性能劣化データベース351、製造検査実績記憶部352、および稼動実績データベース153より適宜データを読み出して、実施例1に記載した処理と同様の処理を実行して、「終了電圧」、「充電電流」を算出する。充電指示部334は、算出された「終了電圧」、および「充電電流」を制御処理部340に通知して、充電処理を指示する。制御処理部340は指示に従い、電池モジュール110の劣化度に応じた最適の充電処理を実行する。
【符号の説明】
【0079】
100,101,102…電池システム、 110,111,112…電池モジュール、 120,121,122,123…充/放電制御処理部、 130…演算部、 131…稼動実績蓄積部、 132…劣化度推定部、 133…充電シーケンス計算部、 134…充/放電指示部、 140…制御処理部、 150…記憶部、 151…性能劣化データベース、 152…製造検査実績データベース、 153…稼動実績データベース、 160…モジュール制御処理部
200…機器、 300…電源、 310…充電システム、 320…充電制御処理部、 330…演算部、 331…データ検索部、 332…劣化度推定部、 333…充電シーケンス計算部、 334…充電指示部、 340…制御処理部、 350…記憶部、 351…性能劣化データベース、 352…製造検査実績記憶部、 360…通信部、 400…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池モジュールと、その充/放電を制御する充/放電制御処理部とを備えた電池システムであって、
前記充/放電制御処理部は、演算部と、記憶部と、および制御処理部とを備え、
前記演算部は、
前記電池モジュールの充電、放電、および停止の稼動実績を前記記憶部へ記録する稼動実績蓄積部と、
前記記憶部に記憶された電池モジュールの製造状態別、劣化状態別の容量−電圧プロファイルデータと、充電対象の前記電池モジュールの製造検査実績データ、および前記稼動実績データとを照合して、前記電池モジュールの劣化度を推定する劣化度推定部と、
前記稼動実績データより、充電可能時間と、最大の放電容量を抽出し、前記劣化度に応じた容量−電圧プロファイルデータに基づいて、充電シーケンスの終了電圧、充電電流を算出する充電シーケンス計算部とを備え、
前記制御処理部は、前記終了電圧、前記充電電流に従って、前記電池モジュールの充電制御を行なうことを特徴とする電池システム。
【請求項2】
複数の電池モジュールと、個別の電池モジュールに対応して接続されてその充/放電を制御する複数の充/放電制御処理部と、個別の電池モジュールの各充/放電制御処理部からの指示に応じた電圧、電流を提供するモジュール制御処理部とを備えた電池システムであって、
前記各充/放電制御処理部は、演算部と、記憶部と、および制御処理部とを備え、
前記演算部は、
接続された前記電池モジュールの充電、放電、および停止の稼動実績を前記記憶部へ記録する稼動実績蓄積部と、
前記記憶部に記憶された電池モジュールの製造状態別、劣化状態別の容量−電圧プロファイルデータと、充電対象の前記電池モジュールの製造検査実績データ、および前記稼動実績データとを照合して、前記電池モジュールの劣化度を推定する劣化度推定部と、
前記稼動実績データより、充電可能時間と、最大の放電容量を抽出し、前記劣化度に応じた容量−電圧プロファイルデータに基づいて、充電シーケンスの終了電圧、充電電流を算出する充電シーケンス計算部とを備え、
前記制御処理部は、前記終了電圧、前記充電電流に従って、接続された前記電池モジュールの充電制御を行ない、
前記モジュール制御処理部は、外部電源に接続されて、前記各充/放電制御処理部の制御処理部からの指示に応じた電圧、電流を提供することを特徴とする電池システム。
【請求項3】
前記記憶部は、
前記電池モジュールと同機種の電池モジュールを、製造状態別、劣化状態別のサンプルにおいて充電特性データを測定して、各容量−電圧プロファイルデータを予め記憶した性能劣化データベースと、
前記電池モジュールの製造検査時に測定した充電特性または放電特性の容量−電圧プロファイルデータを記憶した製造検査実績データベースと、
前記稼動実績蓄積部が、電池モジュール毎に、所定の時間間隔毎に、またはステイタスの切り替わり時に記録した充/放電特性の容量−電圧プロファイルデータを記録した稼動実績データベースとを有することを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記稼動実績蓄積部は、電池モジュール毎に、所定の時間間隔毎に、または充電、放電、停止のステイタスの切り替わり時に、実績取得日時を有するデータレコードを記録し、および製品出荷時の容量を起点とする累積の容量を算出して、充/放電特性の容量−電圧プロファイルデータを記録することを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の電池システム。
【請求項5】
前記劣化度推定部は、前記性能劣化データベースに記録された出荷時の各容量−電圧プロファイルデータと、前記製造検査実績データベースに記憶された充電特性または放電特性の容量−電圧プロファイルデータとをパターンマッチングにより照合して、製造状態を特定し、特定された製造状態に関わる各容量−電圧プロファイルデータと、稼動実績データベースより読み出された充/放電特性の容量−電圧プロファイルデータとをパターンマッチング処理により照合して、前記電池モジュールの劣化度を推定することを特徴とする請求項3に記載の電池システム。
【請求項6】
前記充電シーケンス計算部は、前記稼動実績データベースの全てのデータレコードを検索して、充電可能時間帯を抽出して、所定のしきい値以上の充電可能時間帯の中で最小の充電可能時間帯より充電可能時間を決定し、および過去の放電履歴の中で最大の放電容量を充電の必要容量とし、続いて前記劣化度に応じた容量−電圧プロファイルデータを前記性能劣化データベースから読み出して、前記容量−電圧プロファイルデータに前記必要容量を割り付け、前記必要容量の充電に必要な終了電圧を計算し、現在の電圧から終了電圧までの充電を行なう際の必要充電容量を計算し、さらに必要充電容量と充電可能時間より充電電流を計算することを特徴とする請求項3に記載の電池システム。
【請求項7】
電源と、接続された電池システムへの充電を制御する充電制御処理部とを備えた充電システムであって、
前記充電制御処理部は、演算部と、記憶部と、制御処理部と、および通信部とを備え、
前記演算部は、
接続された電池システムに格納されている電池モジュールの識別番号を入手して、通信部、ネットワークを介して前記電池モジュールのメーカのデータベースに問い合わせて、該当する電池モジュールの製造検査実績データ、性能劣化データをダウンロードにより入手して、前記記憶部へ格納し、および前記電池システムの稼動実績データベースより稼動実績データを読み出すデータ検索部と、
前記記憶部に記憶された電池モジュールの製造状態別、劣化状態別の容量−電圧プロファイルデータと、充電対象の前記電池モジュールの製造検査実績データ、および前記稼動実績データとを照合して、前記電池モジュールの劣化度を推定する劣化度推定部と、
前記稼動実績データより、充電可能時間と、最大の放電容量を抽出し、前記劣化度に応じた容量−電圧プロファイルデータに基づいて、充電シーケンスの終了電圧、充電電流を算出する充電シーケンス計算部とを備え、
前記制御処理部は、前記終了電圧、前記充電電流に従って、前記電池システムの電池モジュールの充電制御を行なうことを特徴とする充電システム。
【請求項8】
前記記憶部は、
前記電池モジュールと同機種の電池モジュールを、製造状態別、劣化状態別のサンプルにおいて充電特性データを測定して作成された各容量−電圧プロファイルデータを、前記電池システムが接続時にダウンロードにより入手して記憶した性能劣化データベースと、
前記電池モジュールの製造検査時に測定した充電特性または放電特性の容量−電圧プロファイルデータを、前記電池システムが接続時にダウンロードにより入手して記憶した製造検査実績データベースと、
を有することを特徴とする請求項7に記載の充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−81332(P2013−81332A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220966(P2011−220966)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】