説明

充電用コネクタ

【課題】隙間をなくして泥水を効率良くキャビティの外部に排出し、もって端子表面を保護する。
【解決手段】本発明の充電用コネクタ10は、車両側端子60と嵌合可能な雌側本体部21を有し、この本体部21の後端に電線Wの端末が接続された端子金具20と、端子金具20を収容するキャビティ17が内部に形成された端子収容部15と、キャビティ17の内壁と本体部21との対向面間に挟持されてその対向面間を全周方向に亘ってシールするシールリング30と、端子収容部15の後方に設けられ、端子金具20を前方に押し込み可能な反力を生じさせた状態で電線Wを収容する電線収容部11,12とを備え、端子金具20は、常にはシールリング30との摩擦力に抗して電線Wの反力によって前方に付勢されることにより、本体部21の前端とこれに対向するキャビティ17の前壁17Aとが当接する最前部に配置されている構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた車両側コネクタに嵌合可能な充電用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充電用コネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、詳細には図7に示すように、車両側コネクタに設けられた車両側端子に接続可能な端子金具1を有しており、この端子金具1を収容するキャビティ2が内部に形成された端子収容部3などを備えている。端子金具1は、車両側端子と嵌合可能な筒状本体部4を有し、この筒状本体部4の外周から張り出す形態でフランジ部5が周設されている。一方、キャビティ2は後方に開口する形態をなし、この後端開口から端子金具1が前方に挿入される。端子金具1がキャビティ2に収容されると、フランジ部5がキャビティ2の後端開口縁部6に当接することにより、端子金具1が前止まりされるようになっている。
【0003】
このような充電用コネクタは、屋外で使用されることを前提としているため、充電用コネクタを泥水に漬けた後に乾燥させ、車両側コネクタに対して繰り返し嵌合および離脱を行う泥水試験が行われている。このため、充電用コネクタには泥水試験に耐えうる耐久性能が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−67210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、端子金具1がフランジ部5によって前止まりされた状態では、本体部4の前端7とキャビティ2の前壁8との間に隙間9が形成され、この隙間9に泥水などが入り込みやすくなってしまう。ここで、泥水を外部に排出させるべく、隙間9の下側(キャビティ2の前端下側)に排水用の水抜き孔を設けたとしても、泥水に表面張力が作用するため、泥水を効率良くキャビティ2の外部に排出させることはできない。そして、泥水を乾燥させると、端子金具1と車両側端子との接点部に泥が付着した状態となり、このまま繰り返し嵌合および離脱を行うことにより接点部のめっきが剥がれたり、端子表面に傷が付いたりするなどのおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、隙間をなくして泥水を効率良くキャビティの外部に排出し、もって端子表面を保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に設けられた車両側コネクタに嵌合可能な充電用コネクタであって、車両側コネクタに設けられた車両側端子と嵌合可能な本体部を有し、この本体部の後端に電線の端末が接続された端子金具と、端子金具を収容するキャビティが内部に形成された端子収容部と、キャビティの内壁と本体部との対向面間に挟持されてその対向面間を全周方向に亘ってシールするシール部材と、端子収容部の後方に設けられ、端子金具を前方に押し込み可能な反力を生じさせた状態で電線を収容する電線収容部とを備え、端子金具は、常にはシール部材との摩擦力に抗して電線の反力によって前方に付勢されることにより、本体部の前端とこれに対向するキャビティの前壁とが当接する最前部に配置されている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によると、本体部の前端とキャビティの前壁とが当接しているため、本体部の前端とキャビティの前壁との間に隙間が形成されることはない。このため、泥水試験を行った場合に、隙間に泥水が入り込んでしまい、この泥水をキャビティの外部に排出しにくくなる事態を回避できる。したがって、隙間をなくして泥水を効率良くキャビティの外部に排出し、もって端子表面を保護することができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
端子収容部の後方に設けられ、本体部の外周に張り出す形態で周設されたフランジ部に対して後方から係止することにより、キャビティに収容された端子金具を抜け止めする抜け止め部を備え、端子金具は、車両側端子が本体部に嵌合した状態では、フランジ部と抜け止め部とが係止する最後部に配置されている構成としてもよい。
【0010】
このような構成によると、フランジ部を抜け止め部に係止させることにより、端子金具の後方への抜け止めを行うことができる。
【0011】
本体部は、車両側端子と弾性的に接触する接触片を有しており、車両側端子と本体部の嵌合および離脱に伴って車両側端子と前記接触片が摺動する構成としてもよい。
【0012】
このような構成によると、車両側端子と接触片が摺動することにより、ワイピング効果を発揮することができる。すなわち、端子表面に小さなゴミなどが付着した場合でもワイピング効果によってそのゴミを払い落とすことができる。
【0013】
端子金具は、車両側端子との嵌合および離脱に伴って最前部と最後部との間を往復移動可能とされている構成としてもよい。
【0014】
例えば抜け止め部先端を揺動変位可能に形成した場合、端子金具をキャビティに収容すると、抜け止め部がフランジ部に押し込まれ、抜け止め部先端が揺動軌跡を描きながら変位する。そして、フランジ部が抜け止め部を乗り越えると、抜け止め部先端が揺動軌跡を描きながら復帰する。復帰の際、抜け止め部先端は、揺動軌跡を描きつつフランジ部から遠ざかるため、フランジ部と抜け止め部先端との間には、わずかな隙間が形成されてしまう。すなわち、抜け止め部を復帰させるため、最低限、前記隙間の分だけ端子金具を往復移動可能に構成する必要がある。その点、上記の構成によると、端子金具が最前部と最後部との間を往復移動可能とされているため、前記隙間を確保することができ、抜け止め部を確実に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、隙間をなくして泥水を効率良くキャビティの外部に排出し、もって端子表面を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態における充電用コネクタを示した側面図
【図2】充電用コネクタを示した正面図
【図3】車両側コネクタと充電用コネクタの嵌合前状態を示した断面図
【図4】車両側コネクタと充電用コネクタの嵌合状態を示した断面図
【図5】車両側端子と端子金具の嵌合前状態を簡易的に示した拡大断面図
【図6】車両側端子と端子金具の嵌合状態を簡易的に示した拡大断面図
【図7】従来の充電用コネクタを示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図6の図面を参照しながら説明する。本実施形態における充電用コネクタ10は全体としてピストル形状をなしており、図1に示すように、略前半部分を構成するコネクタ本体11と、このコネクタ本体11の後部から斜め下方に延びるグリップ12とが形成されている。コネクタ本体11とグリップ12は、いずれも合成樹脂製とされており、一体に成形されている。コネクタ本体11の前面には、円筒状をなして前方に突出するフード部13が装着されている。また、コネクタ本体11の内部における上側には、レバー14が収容されており、レバー14の前端部がコネクタ本体11の上面前縁から外部に露出している。また、コネクタ本体11は、図2に示すように、フード部13の外周面に沿った外周形状を有し、レバー14に対応する部分が上方に膨出されている。
【0018】
フード部13は、図3に示すように、コネクタ本体11とは別部材として形成されており、図示しない係止手段によってコネクタ本体11に固定されている。フード部13の内部には、円筒状をなす複数の端子収容部15が設けられている。これらの端子収容部15は、フード部13の奥壁16から前方に突出して設けられている。端子収容部15の内部には、端子金具20を収容するキャビティ17が形成されている。
【0019】
キャビティ17は、フード部13の奥壁16において後方に開口する形態をなしている。キャビティ17は、端子金具20を収容する空間であり、この空間は、端子収容部15の内壁によって構成されている。一方、キャビティ17の前壁17Aは、キャビティ17の後端開口から前方に挿入された端子金具20の前端に当接可能とされており、この当接によって端子金具20が前止まりされるようになっている。キャビティ17の前壁17Aには、後述する車両側端子60を挿通可能な挿通孔が貫通して形成されている。また、キャビティ17の内壁における前端下面には、水抜き孔25が貫通して形成されている。キャビティ17内に浸入した水は、水抜き孔25を通して外部に排出される。
【0020】
フード部13の内部には、円筒状をなすゴムリング18がフード部13の内周面に沿って嵌着されており、ゴムリング18の前方には、ゴムリング18の抜け止めを行うホルダ19が装着されている。ホルダ19は、ゴムリング18と同じ円筒状をなし、フード部13の内面側に係止可能な係止部19Aを有している。この係止部19Aによりホルダ19がフード部13の内周面に沿って嵌着されている。
【0021】
フード部13の内周面におけるホルダ19の装着部は、ホルダ19の奥側よりも大径とされており、ホルダ19が装着されることで、ホルダ19の内周面とゴムリング18の奥側におけるフード部13の内周面とがほぼ面一をなして揃うようになっている。ゴムリング18のリップ部は、ホルダ19の内周面よりも径方向内側に突出している。一方、車両側コネクタ50は、充電用コネクタ10と嵌合可能な車両側ハウジング51を有している。車両側ハウジング51は合成樹脂製であって、フード部13の内部に嵌合可能なハウジング本体51Aを有している。これにより、ハウジング本体51Aがフード部13の内部に嵌合したときに、ハウジング本体51Aの外周面がゴムリング18のリップ部に密着することで、両コネクタ10,50間が防水される。
【0022】
ハウジング本体51Aの内部には、車両側端子60を収容する車両側キャビティ52が形成されている。車両側ハウジング51は、車体側に設けられた取付開口部53に装着されている。車両側ハウジング51の外周には、取付プレート54が張り出し形成されており、この取付プレート54を取付開口部53の開口縁部に宛ってボルト止めすることにより、車両側ハウジング51が取付開口部53に取り付け固定されている。
【0023】
ハウジング本体51Aの外周には、嵌合筒部55が周設されている。この嵌合筒部55は、取付プレート54から前方に突出しており、ハウジング本体51Aと嵌合筒部55との間にフード部13が嵌合可能とされている。嵌合筒部55の上面には、ロック突部56が設けられている。このロック突部56は、レバー14の先端下面に突出して設けられたレバー側突起14Aに対して嵌合方向に係止可能とされている。したがって、両コネクタ10,50を嵌合させると、レバー側突起14Aがロック突部56に係止することにより、両コネクタ10,50が嵌合状態に保持される。なお、取付開口部53の後部には蛇腹状をなして後方に延びるグロメット57が取り付けられている。
【0024】
車両側端子60は、ピン状をなす雄側本体部61を有し、この雄側本体部61の外周面から張り出す形態で雄側フランジ部62が周設されている。雄側フランジ部62は、車両側キャビティ52の後壁に対して後方から当接しており、この後壁を貫通して雄側本体部61が車両側キャビティ52に収容されている。雄側本体部61の後端部には、円筒状をなす雄側バレル部63が形成されており、この雄側バレル部63の内部に電線Wの芯線がかしめ圧着されている。また、雄側バレル部63の圧着部分を覆う形態で熱収縮チューブ58が装着されている。この熱収縮チューブ58により雄側バレル部63の圧着部分が防水されている。なお、車両側ハウジング51の後部には、車両側端子60の雄側フランジ部62に対して後方から係止することにより、車両側端子60の後方への抜け止めを行う車両側リテーナ59が装着されている。
【0025】
次に、充電用コネクタ10の端子金具20の周辺構造について説明する。端子金具20は、複数の接触片23を備えた雌側本体部21を有している。複数の接触片23は、前方に開口する形態をなす雌側本体部21の前端開口縁から後方に向けて切り欠くことで形成されるスリットを周方向に間欠的に複数本設けることによって形成されている。この種の端子は、すり割り端子などの名称で呼ばれる場合がある。また、雌側本体部21の外周における後方には、雌側フランジ部22が周設されている。この雌側フランジ部22は、キャビティ17の後端開口縁部に対して所定の間隔を空けて対向状態で配置されている。
【0026】
フード部13の後方には、リテーナ27が装着されている。このリテーナ27は、端子金具20を挿通させる挿通孔を有し、この挿通孔の内壁には、雌側フランジ部22に対して後方から係止する上下一対の抜け止め片28が前方に突出する形態で設けられている。端子金具20をキャビティ17に向けて後方から挿入すると、両抜け止め片28が雌側フランジ部22に押し込まれ、両抜け止め片28の先端が揺動軌跡を描きながら外側に変位する。そして、雌側フランジ部22が両抜け止め片28を乗り越えると、両抜け止め片28の先端が揺動軌跡を描きながら内側に変位し、両抜け止め片28が弾性的に復帰する。復帰の際、両抜け止め片28の先端は、揺動軌跡を描きつつ雌側フランジ部22から遠ざかることになるため、雌側フランジ部22と両抜け止め片28の先端との間には、わずかに隙間が形成される。この後、端子金具20が後方に押し込まれると、両抜け止め片28の先端が雌側フランジ部22に当接して後方から係止することにより、端子金具20の後方への移動が規制される。
【0027】
キャビティ17の内壁においてフード部13の奥壁16と対応する壁面と、この壁面に対向する雌側本体部21の外周面との間には、シールリング30が挟持されている。シールリング30は、雌側本体部21の外周面に周設されたシール溝に嵌着されている。シールリング30はゴム製のリング状とされており、油を含有して構成されている。この油によって、シールリング30は、雌側本体部21の外周面に対して滑りやすくなっており、シールリング30をシール溝に嵌着することで、シールリング30が雌側本体部21の外周面に対して相対的に移動することを規制している。したがって、シール溝の内面とキャビティ17の内壁との間でシールリング30が全周方向に亘って挟持されることにより、キャビティ17の内壁と雌側本体部21との間が防水されている。
【0028】
雌側本体部21の後方には、電線Wの端末に露出した芯線を固着するバレル部24が形成されている。バレル部24は、円筒状をなして後方に開口しており、電線Wの芯線を内部に収容した状態でかしめることにより電線Wと導通可能に接続されている。電線Wは、バレル部24から後方に延出されており、コネクタ本体11とグリップ12の内部を通って外部に引き出されている。なお、本発明でいう「電線収容部」は、コネクタ本体11の内部空間とグリップ12の内部空間とによって構成されている。
【0029】
本実施形態では、複数の端子金具20に対応して複数の電線Wが後方に延出されており、これらの電線Wは、グリップ12の内部で外部被覆に覆われて一本の電線W1に集約されている。電線W1は、グリップ12の内部で電線把持リング(図示せず)などによって固定されており、さらにグリップ12の後端部でブッシュ40によって固定されている。ブッシュ40は、グリップ12の後端開口部の内周面と電線W1の外周面とに密着しているため、グリップ12の後端からグリップ12の内部に水が浸入することを規制している。なお、コネクタ本体11およびグリップ12の下面側には、複数の水抜き孔25Aが形成されているため、コネクタ本体11およびグリップ12の内部に水が浸入した場合でも、これらの水抜き孔25Aから外部に水を逃がすことができるようになっている。
【0030】
さて、電線W1がグリップ12の内部で固定された状態では、各電線Wがコネクタ本体11の内部で屈曲した状態とされており、各電線Wの反力によって各端子金具20が常時前方に付勢されている。電線Wの反力によって端子金具20を前方に付勢する力は、シールリング30の摩擦力よりも大きくなるように設定されている。ここで、シールリング30の摩擦力は、含油量によって調整することが可能であり、シールリング30の含油量を多くすると、キャビティ17の内壁に対するシールリング30の摩擦力が低下する。したがって、シールリング30の含油量を多くすることで、シールリング30の摩擦力が電線Wの反力よりも小さくなるように設定することができる。このため、図3に示す両コネクタ10,50の嵌合前状態では、端子金具20がシールリング30の摩擦力に抗して電線Wの反力によって前方に付勢され、端子金具20の雌側本体部21の前端がキャビティ17の前壁17Aに当接した状態となっている。一方、雌側フランジ部22は、キャビティ17の後端開口縁部に対して非接触状態とされている。このため、雌側本体部21の前端とキャビティ17の前壁17Aとの間に隙間が形成されることはなく、この隙間に泥水が入り込むことはない。
【0031】
図5および図6は、図3および図4における端子金具20周辺を拡大して簡易的に示した図である。端子金具20の各接触片23は、図5に示すように、車両側端子60と嵌合する前の状態では、基端部から先端部に向けて軸心側に緩やかに近づいた後に、先端部にて軸心から遠ざかる形態とされている。換言すると、接触片23は、雌側本体部21の軸心側を頂点とする略山形に形成されており、頂点の位置が雌側本体部21の先端部に配置された構成とされている。すなわち、複数の接触片23の頂点によって端子金具20の接点部26が構成されており、この接点部26における内径は、車両側端子60の雄側本体部61の外径よりも小さめとされている。このため、車両側端子60を端子金具20に嵌合させると、車両側端子60の雄側本体部61と各接触片23とが接点部26にて摺動し、各接触片23を径方向外側に撓み変形させた状態で車両側端子60と端子金具20とが導通可能に接続される。
【0032】
ここで、雄側本体部61と接点部26との摩擦力は、電線Wから受ける反力よりも大きいため、雄側本体部61と各接触片23が接点部26にて摺動し、端子金具20が後方に押し込まれることになる。各接触片23が雄側本体部61に摺動すると、端子表面に小さなゴミなどが付着していた場合であってもワイピング効果によってそのゴミを払い落とすことができる。
【0033】
端子金具20は、車両側端子50との嵌合および離脱に伴って最前部と最後部との間を往復移動可能とされている。最前部とは、図5(図3)の状態(雌側本体部21の前端とキャビティ17の前壁17Aとが当接した状態)における端子金具20の位置をいい、最後部とは、図6(図4)の状態(雌側フランジ部22と両抜け止め片28とが当接した状態)における端子金具20の位置をいう。つまり、両コネクタ10,50の嵌合に伴って車両側端子60が端子金具20に嵌合すると、接点部26で生じる摩擦力によって端子金具20が最前部から最後部に移動する。これとは逆に、両コネクタ10,50の離脱に伴って車両側端子60が端子金具20から離脱すると、接点部26で生じる摩擦力によって端子金具20が最後部から最前部に移動する。
【0034】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、端子金具20が最前部にあるときには、図5に示すように、シールリング30の摩擦力に抗して電線Wの反力により端子金具20が前方に付勢されているため、雌側本体部21の前端とキャビティ17の前壁17Aとが当接した状態となっている。このため、雌側本体部21の前端とキャビティ17の前壁17Aとの間に隙間が形成されることはなく、この隙間に泥水が浸入することはない。したがって、泥水試験に耐えうる接続信頼性を得ることができる。
【0035】
次に、両コネクタ10,50を嵌合させると、雄側本体部61が両接触片23の間に割って入り込み、各接触片23が外側に撓み変形した状態となって、接点部26にて雄側本体部61と各接触片23とが導通可能に接続される。この間、雄側本体部61と各接触片23が接触することによって摩擦力が発生し、この摩擦力によって端子金具20が最前部から最後部に移動する。そして、端子金具20が最後部に至ると、雌側フランジ部22が両抜け止め片28の先端に当接し、端子金具20の後方へに移動が規制される。ここからさらに車両側端子60を端子金具20に嵌合させていくと、雄側本体部61と各接触片23が接点部26にて摺動し、ワイピング効果によって端子表面に付着した小さなゴミなどが取り除かれる。
【0036】
続いて、両コネクタ10,50を離脱させると、接点部26における摩擦力によって端子金具20が最後部から最前部に移動する。そして、端子金具20が最前部に至ると、雌側フランジ部22がキャビティ17の後端開口縁部に当接するよりも前に雌側本体部21の前端がキャビティ17の前壁17Aに当接し、端子金具20の前方への移動が規制される。ここからさらに車両側端子60を端子金具20から離脱させていくと、雄側本体部61と各接触片23が接点部26にて摺動し、雄側本体部61が接点部26を通過すると、各接触片23が弾性的に復帰する。
【0037】
以上のように本実施形態によると、両コネクタ10,50の嵌合前に端子金具20が電線Wの反力を受けて前方に付勢されるようにしたから、端子金具20が最前部に配置されて雌側本体部21の前端とキャビティ17の前壁17Aが当接することになる。したがって、雄側本体部21の前端とキャビティ17の前壁17Aとの間に隙間が形成されることはなく、この隙間に泥水が浸入することを規制できる。このため、泥水試験に耐えうる耐久性能を得ることができる。
【0038】
また、両コネクタ10,50を嵌合させると、雄側本体部61と各接触片23との摩擦力によって端子金具20が最後部に押し込まれ、雌側フランジ部22が両抜け止め片28に当接することで端子金具20が後方に抜け止めされる。そして、雄側本体部61と各接触片23とを摺動させることによって端子表面に付着した小さなゴミなどを取り除くことができる。さらに、端子金具20が最前部と最後部との間を往復移動するようにしたから、抜け止め片28の先端を揺動変位させながら抜け止め片28を撓み変形させるとともに復帰させることができる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では端子金具20が最前部と最後部との間を往復移動するようにしているものの、本発明によると、端子金具20が前後方向に移動しない構成としてもよい。換言すると、最前部と最後部が同じ位置となるようにしてもよい。
【0040】
(2)上記実施形態では抜け止め部として抜け止め片を例示しているものの、本発明によると、抜け止め部としてサイドリテーナなどを用いてもよい。
【0041】
(3)上記実施形態では端子金具として、いわゆるすり割り端子を例示しているものの、本発明によると、角筒部の内部に弾性接触片が形成された端子金具としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…充電用コネクタ
11…コネクタ本体(電線収容部)
12…グリップ(電線収容部)
15…端子収容部
17…キャビティ
17A…前壁
20…端子金具
21…雌側本体部
22…雌側フランジ部
23…接触片
28…抜け止め片(抜け止め部)
30…シールリング(シール部材)
50…車両側コネクタ
60…車両側端子
W…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車両側コネクタに嵌合可能な充電用コネクタであって、
前記車両側コネクタに設けられた車両側端子と嵌合可能な本体部を有し、この本体部の後端に電線の端末が接続された端子金具と、
前記端子金具を収容するキャビティが内部に形成された端子収容部と、
前記キャビティの内壁と前記本体部との対向面間に挟持されてその対向面間を全周方向に亘ってシールするシール部材と、
前記端子収容部の後方に設けられ、前記端子金具を前方に押し込み可能な反力を生じさせた状態で前記電線を収容する電線収容部とを備え、
前記端子金具は、常には前記シール部材との摩擦力に抗して前記電線の反力によって前方に付勢されることにより、前記本体部の前端とこれに対向する前記キャビティの前壁とが当接する最前部に配置されていることを特徴とする充電用コネクタ。
【請求項2】
前記端子収容部の後方に設けられ、前記本体部の外周に張り出す形態で周設されたフランジ部に対して後方から係止することにより、前記キャビティに収容された前記端子金具を抜け止めする抜け止め部を備え、
前記端子金具は、前記車両側端子が前記本体部に嵌合した状態では、前記フランジ部と前記抜け止め部とが係止する最後部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の充電用コネクタ。
【請求項3】
前記本体部は、前記車両側端子と弾性的に接触する接触片を有しており、前記車両側端子と前記本体部の嵌合および離脱に伴って前記車両側端子と前記接触片が摺動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充電用コネクタ。
【請求項4】
前記端子金具は、前記車両側端子との嵌合および離脱に伴って前記最前部と前記最後部との間を往復移動可能とされていることを特徴とする請求項3に記載の充電用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−171166(P2011−171166A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34832(P2010−34832)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】