説明

先混合バーナ

【課題】サブ火炎の保炎性を高めてメイン火炎の燃焼安定性を向上させることのできる先混合バーナを提供する。
【解決手段】燃料ガス導通管1の先端に燃料ガス導通管1と同心であって燃料ガス導通管1よりも径の大きな円筒状ヘッダ部2、燃料ガス導通管1の周囲を空気供給流路12とし、前記円筒状ヘッダ部2よりも空気流上流部分の燃料ガス導通管周囲に燃料ガス導通管1と同心のバッフル板4を設け、バッフル板4には、燃料ガス導通管1の中心軸からの距離が円筒状ヘッダ部2の中心軸から周壁までの距離よりも短い部分に一次空気噴出孔7と、燃料ガス導通管1の中心軸からの距離が円筒状ヘッダ部2の中心軸から周壁までの距離よりも長い部分に二次空気噴出孔8を、それぞれ複数個設けておき、円筒状ヘッダ部2の周壁には、放射状にメイン燃料ガスを噴射するメインガス燃料噴出孔5を、バッフル板4の一次空気噴出孔設置位置とは重ならない位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は先混合方式の低NOxガスバーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平11−337022号公報には、バーナ先端部から噴射した燃料ガスと空気を混合する先混合バーナの記載がある。このバーナは、燃料ガスを供給するガスノズルの先端面を閉塞し、ガスノズル先端部近くの周部分に放射状に燃料ガスを噴射するメインガス燃料噴出孔、メインガス燃料噴出孔よりも根元側のガスノズル周部分にサブガス燃料噴出孔を設けている。このバーナでは、燃焼用空気の多い過空気部と燃料ガスの多い過燃料部が交互に形成されるため、火炎に濃淡が発生し、濃淡燃焼によってNOx発生量が低減される。また、サブガス燃料噴出孔から噴射されるサブ燃料ガスによってサブ火炎を発生しておくことで火炎の安定性を高めることも行われている。
【0003】
しかし、前記特開平11−337022号公報に記載のバーナでは、安定した燃焼を行うためには、燃焼空気の流入速度及び燃料ガスの噴出速度をある程度高く維持できることが前提となる。この条件は、比較的大容量のバーナには適用できるが、送風機の能力が小さく、燃料ガス供給圧力が低い(低圧供給)比較的小容量のバーナでは、十分なエアー流速とガス噴出流速が得られないために保炎が不安定となり、振動燃焼などが発生しやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−337022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、燃料ガスの供給圧力が低い場合であっても、サブ火炎の保炎性を高く維持することで、メイン火炎の燃焼安定性を向上させることのできる先混合バーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、燃料ガスを供給する燃料ガス導通管の先端に燃料ガス導通管と同心であって燃料ガス導通管よりも径の大きな円筒状ヘッダ部、燃料ガス導通管の周囲を空気供給流路とし、前記円筒状ヘッダ部よりも空気流上流部分の燃料ガス導通管周囲に燃料ガス導通管と同心のバッフル板を設け、バッフル板には、燃料ガス導通管の中心軸からの距離が円筒状ヘッダ部の中心軸から周壁までの距離よりも短い部分に一次空気噴出孔と、燃料ガス導通管の中心軸からの距離が円筒状ヘッダ部の中心軸から周壁までの距離よりも長い部分に二次空気噴出孔を、それぞれ複数個設けておき、円筒状ヘッダ部の周壁には、円筒状ヘッダ部の中心軸から放射状にメイン燃料ガスを噴射するメインガス燃料噴出孔を、バッフル板の一次空気噴出孔設置位置とは重ならない位置に設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記の先混合バーナにおいて、燃料ガス導通管の円筒状ヘッダ部とバッフル板で挟まれている部分の周壁に、バッフル板の一次空気噴出孔設置位置とは重ならない方向にサブ燃料ガスを噴射するサブガス燃料噴出孔を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記の先混合バーナにおいて、燃料ガス導通管のガス流路を狭める燃料ガス導通管流路縮小部材をバーナの先端部近くに設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施することで、円筒状ヘッダ部とバッフル板の間に負圧域が発生し、燃料ガスの一部は負圧域に引き込まれて負圧域で燃焼することになり、負圧域で小さく安定した火炎が発生する。そのため、円筒状ヘッダ部の下流側に発生するメイン火炎への火移り状態が大幅に改善され、振動燃焼などの異常が発生しにくくなる。また、燃料ガス導通管周壁の円筒状ヘッダ部とバッフル板の間の部分から保炎用ガスを負圧域に向けて噴射するようにしておくと、負圧域ではメインガス燃料噴出孔から噴射したメイン燃料ガスと、サブガス燃料噴出孔から噴射した燃料ガスが空気と混合することになり、負圧域での燃焼をさらに安定させることができる。そして、燃料ガス導通管のバーナ先端部近くに燃料ガス導通管流路縮小部材を設け、燃料ガス導通管内の圧力を高めることで、燃焼による圧力変動のガス流路への伝播を抑制でき、燃焼の安定性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施しているバーナの先端部分における断面図
【図2】本発明を実施しているバーナの先端部分における斜視図
【図3】図2を下方から見た平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施しているバーナの先端部分における断面図、図2は本発明を実施しているバーナの先端部分における斜視図、図3は図2を下方から見た平面図である。
【0012】
バーナは、中央に燃料ガスを供給する燃料ガス導通管1を持ち、燃料ガス導通管1の先端に円筒状ヘッダ部2設ける。円筒状ヘッダ部2は、燃料ガス導通管1と同一の中心軸を持ち、燃料ガス導通管1よりも径の大きな円筒形状であって、円筒状ヘッダ部2の下面(前壁)は塞ぎ、周壁にメインガス燃料噴出孔5を設けている。メインガス燃料噴出孔5は、燃料ガス導通管1から送られてきた燃料ガスを周方向へ噴射するものであり、8方向の等間隔に設けている。
【0013】
バーナの外周には、燃料ガス導通管1と同心であって燃料ガス導通管1及び円筒状ヘッダ部2の周囲を囲む円筒である燃焼筒3を設ける。燃料ガス導通管1と燃焼筒3の間は、燃焼用の空気を供給する空気供給流路12であり、燃料ガス導通管1の外面から燃焼筒3の内面までの空気供給流路12を塞ぐバッフル板4を設ける。バッフル板4は、円筒状ヘッダ部2よりも所定の距離を隔てた空気流上流側に設けており、バッフル板4には燃料ガス導通管に近い側から順に一次空気噴出孔7、二次空気噴出孔8、三次空気噴出口9を設けておく。一次空気噴出孔7と二次空気噴出孔8はバッフル板4を貫通させた小孔、三次空気噴出口9はバッフル板4の周縁部を切り欠いたものであり、一次空気噴出孔7・二次空気噴出孔8・三次空気噴出口9は、バッフル板の中心軸から8方向に等間隔で放射状に延びる線上に配置する。一次空気噴出孔7は、燃料ガス導通管1の中心軸から一次空気噴出孔7までの距離が、円筒状ヘッダ部2の中心軸から円筒状ヘッダ部の周壁までの距離よりも短くなる位置に配置し、一次空気噴出孔7から直下に噴射した空気は、円筒状ヘッダ部2の上面(後壁)に衝突するようにしておく。二次空気噴出孔8は、燃料ガス導通管1の中心軸から二次空気噴出孔8までの距離が、円筒状ヘッダ部2の中心軸から円筒状ヘッダ部の周壁までの距離よりも長くなる位置に配置しておく。
【0014】
燃料ガス導通管1の円筒状ヘッダ部2とバッフル板4で挟まれている部分には、周壁を貫通する小孔であるサブガス燃料噴出孔6を設ける。サブガス燃料噴出孔6もメインガス燃料噴出孔5と同様に燃料ガスを周方向へ噴射するものであり、8方向の等間隔に設けている。メインガス燃料噴出孔5とサブガス燃料噴出孔6は、同一方向に燃料ガスを噴射するようにしており、一次空気噴出孔7らを設置している放射状線とは半ピッチずらすことで、噴射方向が重ならないように配置する。
【0015】
燃料ガス導通管1のガス流路には、途中に流路縮小部を設ける。燃料ガス導通管1と円筒状ヘッダ部2の接合部に、燃料ガス導通管1の流路を狭める燃料ガス導通管流路縮小部材11を設けておく。円筒状ヘッダ部2の上面は、燃料ガス導通管1の中心軸部分に燃料ガス導通管1の径よりも小さな開口部を開けたものであり、燃料ガス導通管流路縮小部材11を設けたことで、燃料ガス導通管1内を送られてきた燃料ガスは、燃料ガス導通管流路縮小部材11の前後で圧力差が発生することになる。
【0016】
本バーナによる作用を説明する。空気供給流路12を通して送られてきた燃焼用空気は、一次空気噴出孔7・二次空気噴出孔8・三次空気噴出口9に分かれ、バッフル板4からバーナの先端方向へ向けて噴射される。一次空気噴出孔7を通過した一次空気は、直下に円筒状ヘッダ部2があるため、円筒状ヘッダ部の上面に衝突した後、円筒状ヘッダ部上面に沿って放射状に流れることになる。一次空気噴出孔7と二次空気噴出孔8からは空気が高速で噴射されているため、バッフル板4の下流側であって空気流から少し外れた部分には負圧域10が発生する。負圧域10は、一次空気噴出孔7・二次空気噴出孔8・円筒状ヘッダ部2で囲まれている部分に発生することになり、一次空気噴出孔7の配置位置から半ピッチずれた部分に8箇所の負圧域10が発生する。
【0017】
円筒状ヘッダ部2の周壁に設けているメインガス燃料噴出孔5から噴射する燃料ガスの大部分は、横向きに噴射した後にバッフル板4からの燃焼用空気と混合し、燃焼用空気とともに図の下方へと流れながら燃焼する。しかし、負圧域10が存在していると、メインガス燃料噴出孔5から噴射した燃料ガスの一部は、負圧域10を目指して円筒状ヘッダ部2の上面側へ回り込むことになる。そして、一次空気噴出孔7から噴射した一次空気は、円筒状ヘッダ部2によって放射状の流れとなっているため、空気流に燃料ガスを下方へ押し下げる作用は小さくなっている。そのため、メインガス燃料噴出孔5から噴射した燃料ガスの一部を効果的に負圧域10へ導くことができる。
【0018】
負圧域10に取り込まれた燃料ガスは、負圧域10で空気と混合して燃焼することになり、負圧域10で小さく安定した火炎が発生する。円筒状ヘッダ部2とバッフル板4の間に安定した火炎を発生させておくことで、円筒状ヘッダ部2の下流側に発生するメイン火炎への火移り状態が大幅に改善され、振動燃焼などの異常が発生しにくくなる。
【0019】
さらに、燃料ガス導通管周壁の円筒状ヘッダ部2とバッフル板4の間の部分にサブガス燃料噴出孔6を設けておき、サブガス燃料噴出孔6から燃料ガスを負圧域10に向けて噴射するようにしておくと、負圧域10ではサブガス燃料噴出孔6から噴射した燃料ガスも混合することになる。このことにより、負圧域10での燃焼をさらに安定させることができる。
【0020】
また、燃料ガスの供給圧力が低く、ガス噴射部の圧力と炉内圧力の差が小さくなると、燃焼火炎の形成による圧力変化が、燃料ガス導通管方向に伝わってガス噴出圧力が不安定になり、そのことで振動燃焼が発生しやすくなる。燃料ガス導通管1の先端近くである円筒状ヘッダ部2の接続部に燃料ガス導通管流路縮小部材11を設けておくと、燃料ガス導通管流路縮小部材11の前後で圧力差が発生する。燃料ガスを供給する圧力自体は同じであっても、燃料ガス導通管1内の圧力が高まることになると、燃料ガス導通管1へ伝わる圧力変動を抑制することができる。このことによって、燃焼の安定性をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 燃料ガス導通管
2 円筒状ヘッダ部
3 燃焼筒
4 バッフル板
5 メインガス燃料噴出孔
6 サブガス燃料噴出孔
7 一次空気噴出孔
8 二次空気噴出孔
9 三次空気噴出口
10 負圧域
11 燃料ガス導通管流路縮小部材
12 空気供給流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを供給する燃料ガス導通管の先端に燃料ガス導通管と同心であって燃料ガス導通管よりも径の大きな円筒状ヘッダ部、燃料ガス導通管の周囲を空気供給流路とし、前記円筒状ヘッダ部よりも空気流上流部分の燃料ガス導通管周囲に燃料ガス導通管と同心のバッフル板を設け、バッフル板には、燃料ガス導通管の中心軸からの距離が円筒状ヘッダ部の中心軸から周壁までの距離よりも短い部分に一次空気噴出孔と、燃料ガス導通管の中心軸からの距離が円筒状ヘッダ部の中心軸から周壁までの距離よりも長い部分に二次空気噴出孔を、それぞれ複数個設けておき、円筒状ヘッダ部の周壁には、円筒状ヘッダ部の中心軸から放射状にメイン燃料ガスを噴射するメインガス燃料噴出孔を、バッフル板の一次空気噴出孔設置位置とは重ならない位置に設けたことを特徴とする先混合バーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の先混合バーナにおいて、燃料ガス導通管の円筒状ヘッダ部とバッフル板で挟まれている部分の周壁に、バッフル板の一次空気噴出孔設置位置とは重ならない方向にサブ燃料ガスを噴射するサブガス燃料噴出孔を設けたことを特徴とする先混合バーナ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の先混合バーナにおいて、燃料ガス導通管のガス流路を狭める燃料ガス導通管流路縮小部材をバーナの先端部近くに設けたことを特徴とする先混合バーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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