先端補強部材を設けた杭及び該杭を用いた杭打ち工法
【課題】 鋼矢板から成る杭の岩盤等への杭の打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止した杭を提供する。【解決手段】 鋼矢板13から成る杭本体14の先端部に、杭本体14よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材15を取り付けた杭11Aを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭を補強し、杭の損傷を防止すると共に、杭打設時間の短縮を図り、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図った杭及び該杭を用いた杭打ち工法に関する。
【背景技術】
【0002】
此種従来の技術として、例えば、N値50以上の硬い地盤(岩盤・転石・玉石等)へ杭を打ち込む場合、打込み箇所に先行掘削を行ったり、杭以外の部材を用いて打込みを行い、その後、その部材を引き抜いて杭を打ち込む、所謂、置き換えによる工法が用いられている。
或いは、電動バイブロハンマを使用し、H型鋼等の杭の先端に先端特殊鋼を取付け、水ジェットの力で岩粉を除去しながら岩盤へ杭類を打込むことも行われている。
【0003】
例えば、図12及び図13に示す如く、H型鋼1から成る杭本体2の先端部に、該杭本体2よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材3が取り付けられた杭4は知られている。
【0004】
特許文献1には、従来例として、バイブロハンマにより超音波振動を与えてコンクリート矢板を地盤中に打込む技術が記載されており、又、特許文献1の発明としてコンクリート矢板の先端に、地盤に打込み可能な突端部材を連結した先杭コンクリート矢板が記載されている。
【特許文献1】特開2003−232031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来の技術として、例えば、N値50以上の硬い地盤(岩盤・転石・玉石など)へ杭を打ち込む場合、先行掘削、或いは、置き換え等により杭を打ち込む工法があるが、その場合、先に先行穴を開け、その先行穴に杭を打ち込むため、二工程を要し、打込みに時間がかかりすぎ、工期、施工コスト的にも問題があった。
【0006】
又、電動バイブロハンマを使用し、H型鋼等の杭の先端に先端特殊鋼を取付け、水ジェットの力で岩粉を除去しながら岩盤へ杭類を打込む工法等があるが、この工法はH型鋼から成る杭を用いて実施されている。
【0007】
又、特許文献1に記載の技術は、バイブロハンマによりコンクリート矢板を地盤中に打込む技術であるが、コンクリート矢板に関するものであり、H型鋼、或いは、鋼矢板を打ち込む技術ではない。
【0008】
以上の現状に鑑み、本発明は、H型鋼又は鋼矢板から成る杭の岩盤等への杭の打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止した杭及び該杭を用いた杭打ち工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、鋼矢板から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭を提供するものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成り、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成された先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭を提供するものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記先端補強部材の先端は斜欠されていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭を提供するものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記杭本体の側面の長手方向に延びて、該杭本体の一定方向の振動を規制する振動規制部材が取り付けられることを特徴とする請求項1,2又は3記載の杭を提供するものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向に水を噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭を提供するものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向にエアーを噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭を提供するものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、上記先端補強部材に、上記ノズルの噴射水の排水又は上記ノズルのエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の孔を開穿したことを特徴とする請求項5又は6記載の杭を提供するものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の杭を油圧式可変超高周波バイブロハンマによって岩盤等の硬い地盤に打ち込むことを特徴とする杭打ち工法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1記載の発明によれば、鋼矢板から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材を取り付けた杭を提供するので、前記先端補強部材によって、鋼矢板から成る杭の岩盤等への打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止できる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成り、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成された先端補強部材を取り付けた杭を提供するものであるので、前記先端補強部材、及び、前記刃によって、H型鋼又は鋼矢板から成る杭の岩盤等への杭の打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、上記先端補強部材の先端は斜欠されているので、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、連続的に杭を打ち込む場合に於いて、杭の傾きを防止することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、上記杭本体の側面の長手方向に延びて、該杭本体の一定方向の振動を規制する振動規制部材が取り付けられるので、請求項1,2又は3記載の発明の効果に加え、振動規制部材により振動を減衰して、振動エネルギーの損失を防止し、打ち込みを円滑にすることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向に水を噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたので、請求項1,2,3又は4記載の発明の効果に加え、ノズルによる水の噴射によって杭本体の打設を容易にすると共に、保護部材によって、打ち込み時に於けるノズルの損傷を防止することができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向にエアーを噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたので、請求項1,2,3又は4記載の発明の効果に加え、ノズルによるエアーの噴射によって杭本体の打設を容易にすると共に、保護部材によって、打ち込み時に於けるノズルの損傷を防止することができる。又、噴射水を使用しないので、泥水等を出さないという利点がある。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、上記先端補強部材に、上記ノズルの噴射水の排水又は上記ノズルのエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の孔を開穿したので、請求項5又は6記載の発明の効果に加え、前記孔によって噴射水又はエアーを円滑に流動させ、排水又は排気を促進することができる。
【0024】
請求項8記載の発明によれば、請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の杭を油圧式可変超高周波バイブロハンマによって岩盤等の硬い地盤に打ち込む杭打ち工法を提供するので、前記油圧式可変超高周波バイブロハンマによって、H型鋼又は鋼矢板から成る前記杭を岩盤等の硬い地盤に容易に打ち込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に於いて、11は、本発明の杭であり、杭11は、油圧式可変超高周波バイブロハンマ12によって、例えば、岩盤、転石、玉石等から成るN値50以上の硬い地盤Gに打ち込むためのものである。
【0026】
図2は、前記杭11の一例である杭11Aを示し、杭11Aは、鋼矢板13から成る杭本体14の先端部に、先端全面に及んで、杭本体14よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材15が取り付けられたものである。尚、先端補強部材15は、全体が高硬度の特殊鋼であっても良く、先端部が高硬度の特殊鋼を備えたものであっても良い。
【0027】
図3に杭本体14に先端補強部材15を取り付けた状態を拡大して示す。先端補強部材15は、杭本体14よりも大なる厚みを有し、杭本体14の先端に溶接16によって取り付けられる。尚、先端補強部材15の上部に凹部(図示せず)を形成し、凹部内に杭本体14の先端部の一部が挿入される構成としても良い。
【0028】
而して、例えば、前記杭11Aの打ち込みを行なう場合は、図1に示す如く、杭11Aの後端を油圧式可変超高周波バイブロハンマ12の把持部12aで把持し、油圧式可変超高周波バイブロハンマ12と共に杭11Aを他の適宜手段で鉛直方向に吊下して杭11Aの先端補強部材15を地盤Gに当て、油圧式可変超高周波バイブロハンマ12が発生する超高周波を杭11Aに伝達して杭11Aを地盤Gに打ち込んでゆく。
【0029】
油圧式可変超高周波バイブロハンマ12が発生する超高周波は振動数及び振幅を変化させることができ、地盤Gの硬さ、風化、劣化等、地盤Gの状況にあわせた打ち込みが可能となる。例えば、振動数は20〜60Hzの範囲で自由に変化させることができる。
【0030】
斯くして、前記杭11Aは、杭11Aの先端に先端補強部材15を設けているので、岩盤等の硬い地盤Gへの杭11Aの打ち込みが容易となり、従来の先行穴開けが不要となり、一工程で杭11Aの打ち込みが行なえるため、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ることができると共に、杭11Aの損傷を防止できる。
【0031】
図4は、前記鋼矢板13から成る杭本体14に取り付けられる先端補強部材(図2に於いて15)の各変形例を示し、同図(a)に示す先端補強部材21は、鋼矢板13の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材21の先端各辺の中央部が先端方向に向かって鋭利な刃21a,21a,21aに形成されたものである。
【0032】
同図(b)に示す先端補強部材22は、先端補強部材22の先端部に、先端方向に向かって鋭利な複数の刃22a,22a…が鋸歯状に形成されたものである。
【0033】
同図(c)に示す先端補強部材23は、鋼矢板13の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材23の先端部の各辺の両端部に先端方向に鋭利な刃23a,23bが形成されたものである。
【0034】
斯くして、前記先端補強部材21,22,23は、何れも、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成されており、施工する地盤の状態に応じて使い分けることができ、前記刃によって、鋼矢板13から成る杭11Aの岩盤等への杭の打ち込みが容易となり、従来の先行穴開けが不要となり、一工程で杭11Aの打ち込みが行なえるため、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0035】
図5は、前記杭11の他の一例である杭11Bを示し、杭11Bは、従来例に示した杭(図12に於いて4)の先端補強部材(図12に於いて3)を変形させたものである。
【0036】
即ち、同図(a)に示す先端補強部材31は、H型鋼1の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材31の先端各辺の中央部が先端方向に向かって鋭利な刃31a,31a,31aに形成されたものである。
【0037】
同図(b)に示す先端補強部材32は、先端補強部材32の先端部に、先端方向に向かって鋭利な複数の刃32a,32a…が鋸歯状に形成されたものである。
【0038】
同図(c)に示す先端補強部材33は、H型鋼1の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材33の先端部の両側辺の中央部に夫々先端方向に鋭利な刃33a,33aが形成され、先端部の中央辺の両端に夫々先端方向に鋭利な刃33b,33cが形成されたものである。
【0039】
斯くして、前記先端補強部材31,32,33は、何れも、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成されており、施工する地盤の状態に応じて使い分けることができ、前記刃によって、H型鋼1から成る杭11Bの岩盤等への杭11Bの打ち込みを容易にし、従来の先行穴開けが不要となり、一工程で杭11Bの打ち込みが行なえるため、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0040】
図6は、前記鋼矢板13から成る杭本体14に取り付けられる先端補強部材(図2に於いて15)の他の変形例としての先端補強部材を示し、図6(a)に示す先端補強部材41は、先端補強部材41の先端がガス切断等により斜欠された形状となっているものである。
【0041】
即ち、図7に示す如く、杭本体14と先端補強部材41から成る複数の杭11A,11A…が順次併設して打設されていく場合に於いて、前記先端補強部材41は、既に打設された杭11A方向の上方に向かって斜欠された形状となっている。
【0042】
これにより、前記油圧式可変超高周波バイブロハンマ12によって杭11Aを地盤Gに打設中に油圧式可変超高周波バイブロハンマ12の重量とその打設エネルギーによって杭11Aが打設順方向(打設順直進方向)に倒れないようにすることができる。
【0043】
図6(b)に示す先端補強部材42は、前記先端補強部材41の先端部に先端方向に向かって鋭利な複数の刃42a,42a…が鋸歯状に形成されたものである。
【0044】
前記先端補強部材42によっても前記先端補強部材41と同様の効果が期待できると共に、先端補強部材(図4に於いて22)と同じく、前記刃42a,42a…によって、鋼矢板13から成る杭11Aの岩盤等への杭の打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0045】
尚、図示は省略するが、従来例の前記先端補強部材3、又は、図5(b)に示す前記先端補強部材32を、前記先端補強部材41又は42の如く、先端を斜欠することも可能であり、然る時も、同様の効果が期待できる。
【0046】
図8及び図9は、前記鋼矢板(図2に於いて13)から成る杭(図2に於いて11A)の変形例としての杭51を示し、杭51は、杭本体14の側面の長手方向に延びて、杭本体14の一定方向の振動を規制する1〜複数の振動規制部材52,52…が取り付けられたものである。
【0047】
図8(a)は杭51の背面側を示しており、背面側の中央板14aに1本の振動規制部材52が配設されている。そして、同図(b)及び図9は杭51の正面側を示しており、中央板14aの正面側に2本の振動規制部材52,52が配設されている。又、図8(c)は、振動規制部材52,52の杭本体14の中央板14aへの取付け方法を示し、振動規制部材52は中央板14aへ溶接間隔10cm程度で溶接53,53…されて取り付けられる。
【0048】
この振動規制部材52により、杭本体14の一定方向の振動、即ち、杭本体14の幅方向の振動、所謂、杭本体14の横揺れを規制することができ、それによって、杭本体14の打設方向の振動を効率良く伝達することができる。
【0049】
即ち、前記油圧式可変超高周波バイブロハンマ12によって杭51を打設時に、岩盤に衝突した場合、杭本体14の打設エネルギーを減殺させないように打設エネルギーを打設方向に集中して伝達することができ、打設時間や工期を短縮できコストダウンを図ることができる。
【0050】
又、図示は省略するが、種々の前記先端補強部材3,21,22,23,31,32,33が設けられた前記杭4、11A,11Bに前記振動規制部材52を同様に取り付けることも可能であり、然る時も同様な効果が期待できる。
【0051】
図10は、前記鋼矢板13から成る杭(図2に於いて11A)の変形例としての杭61を示し、杭61は、鋼矢板13から成る杭本体14の先端部近傍であって、杭本体14の中央板14aと両側板14b,14cとが接する隅部に、杭本体14の打設方向に水を噴射するノズル62,62を設け、更に、前記先端補強部材15のノズル62,62先端近傍に、ノズル62,62を保護するための保護部材63,63を溶接等で取り付けたものである。
【0052】
更に又、前記先端補強部材15には、前記ノズル62,62の噴射水の排水を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の直径40mm程度の孔64,64…が開穿されている。
【0053】
前記ノズル62は前記杭本体14に固設された導水パイプ65に接続され、導水パイプ65から供給される水をジェット噴射し、打ち込み作業によって発生する岩粉等を除去するものである。
【0054】
前記保護部材63は、杭本体14と共に、打ち込み方向に推進される前記ノズル62の推進方向前方に位置しており、打ち込み時のノズル62前方の障害物を排除してノズル62を保護し、ノズル62の損傷を防ぐことができる。
【0055】
又、前記孔64は、前記ノズル62から噴出される水を円滑に流動させ、岩砕等を攪拌し、岩砕等の洗浄、排水を促進することができる。
【0056】
又、図示は省略するが、種々の先端補強部材3,21,22,23,31,32,33が設けられた前記杭4、11A,11Bに前記ノズル62,前記保護部材63,前記孔64を同様に取り付けることも可能であり、然る時も同様な効果が期待できる。
【0057】
図11は、前記鋼矢板13から成る杭(図2に於いて11A)の他の変形例としての杭71を示し、杭71は、鋼矢板13から成る杭本体14の先端部近傍であって、杭本体14の中央板14aと両側板14b,14cとが接する隅部に、杭本体14の打設方向にエアーを噴射するノズル72,72を設け、更に、前記先端補強部材15のノズル72,72先端近傍に、ノズル72,72を保護するための保護部材73,73を溶接等で取り付けたものである。
【0058】
更に又、前記先端補強部材15には、前記ノズル72,72のエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の直径40mm程度の孔74,74…が開穿されている。
【0059】
前記ノズル72は前記杭本体14に固設されたエアーパイプ75に接続され、エアーパイプ75から供給されるエアーをジェット噴射し、打ち込み作業によって発生する岩粉等を除去し、杭本体14の打設を容易にするものである。尚、前記エアーパイプ75はエアーを高圧供給するコンプレッサー76に接続されている。
【0060】
前記保護部材73は、杭本体14と共に、打ち込み方向に推進される前記ノズル72の推進方向前方に位置しており、打ち込み時のノズル72前方の障害物を排除してノズル72を保護し、ノズル72の損傷を防ぐことができる。
【0061】
又、前記孔74は、前記ノズル62から噴出されるエアーを円滑に流動させ、岩砕等を攪拌し、岩砕等の洗浄、排気を促進することができる。
【0062】
更に、図示は省略するが、種々の先端補強部材3,21,22,23,31,32,33が設けられた前記杭4、11A,11Bに前記ノズル72,前記保護部材73,前記孔74を同様に取り付けることも可能であり、然る時も同様な効果が期待できる。
更に又、前記杭71は、噴射水を使用しないので、泥水等を出さないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による先端補強部材を設けた杭を用いた杭打ち工法を説明する正面図である。
【図2】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の斜視図である。
【図3】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた杭に於ける先端補強部材の取付け方法を説明する説明図である。
【図4】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の変形例を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。(c)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図5】(a)本発明による先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の先端補強部材の変形例を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。(c)本発明による先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図6】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の打設順方向の説明図である。
【図8】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を設けた杭の背面側から見た斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を設けた杭の正面側から見た斜視図である。(c)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を取り付けた状態を説明する平面図である。
【図9】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を設けた杭の正面斜め側から見た斜視図である。
【図10】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に、水を噴射するノズル、保護部材を設け、孔を開穿した状態を示す斜視図である
【図11】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に、エアーを噴射するノズル、保護部材を設け、孔を開穿した状態を示す斜視図である
【図12】従来例の先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の斜視図である。
【図13】従来例の先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 H型鋼
2 杭本体
11,11A,11B,51,61,71 杭
12 油圧式可変超高周波バイブロハンマ
13 鋼矢板
14 杭本体
15,21,22,23,31,32,33,41,42 先端補強部材
21a,22a,23b,23c,31a,32a,33a 刃
52 振動規制部材
62,72 ノズル
63,73 保護部材
64,74 孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭を補強し、杭の損傷を防止すると共に、杭打設時間の短縮を図り、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図った杭及び該杭を用いた杭打ち工法に関する。
【背景技術】
【0002】
此種従来の技術として、例えば、N値50以上の硬い地盤(岩盤・転石・玉石等)へ杭を打ち込む場合、打込み箇所に先行掘削を行ったり、杭以外の部材を用いて打込みを行い、その後、その部材を引き抜いて杭を打ち込む、所謂、置き換えによる工法が用いられている。
或いは、電動バイブロハンマを使用し、H型鋼等の杭の先端に先端特殊鋼を取付け、水ジェットの力で岩粉を除去しながら岩盤へ杭類を打込むことも行われている。
【0003】
例えば、図12及び図13に示す如く、H型鋼1から成る杭本体2の先端部に、該杭本体2よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材3が取り付けられた杭4は知られている。
【0004】
特許文献1には、従来例として、バイブロハンマにより超音波振動を与えてコンクリート矢板を地盤中に打込む技術が記載されており、又、特許文献1の発明としてコンクリート矢板の先端に、地盤に打込み可能な突端部材を連結した先杭コンクリート矢板が記載されている。
【特許文献1】特開2003−232031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来の技術として、例えば、N値50以上の硬い地盤(岩盤・転石・玉石など)へ杭を打ち込む場合、先行掘削、或いは、置き換え等により杭を打ち込む工法があるが、その場合、先に先行穴を開け、その先行穴に杭を打ち込むため、二工程を要し、打込みに時間がかかりすぎ、工期、施工コスト的にも問題があった。
【0006】
又、電動バイブロハンマを使用し、H型鋼等の杭の先端に先端特殊鋼を取付け、水ジェットの力で岩粉を除去しながら岩盤へ杭類を打込む工法等があるが、この工法はH型鋼から成る杭を用いて実施されている。
【0007】
又、特許文献1に記載の技術は、バイブロハンマによりコンクリート矢板を地盤中に打込む技術であるが、コンクリート矢板に関するものであり、H型鋼、或いは、鋼矢板を打ち込む技術ではない。
【0008】
以上の現状に鑑み、本発明は、H型鋼又は鋼矢板から成る杭の岩盤等への杭の打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止した杭及び該杭を用いた杭打ち工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、鋼矢板から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭を提供するものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成り、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成された先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭を提供するものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記先端補強部材の先端は斜欠されていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭を提供するものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記杭本体の側面の長手方向に延びて、該杭本体の一定方向の振動を規制する振動規制部材が取り付けられることを特徴とする請求項1,2又は3記載の杭を提供するものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向に水を噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭を提供するものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向にエアーを噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭を提供するものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、上記先端補強部材に、上記ノズルの噴射水の排水又は上記ノズルのエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の孔を開穿したことを特徴とする請求項5又は6記載の杭を提供するものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の杭を油圧式可変超高周波バイブロハンマによって岩盤等の硬い地盤に打ち込むことを特徴とする杭打ち工法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1記載の発明によれば、鋼矢板から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材を取り付けた杭を提供するので、前記先端補強部材によって、鋼矢板から成る杭の岩盤等への打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止できる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成り、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成された先端補強部材を取り付けた杭を提供するものであるので、前記先端補強部材、及び、前記刃によって、H型鋼又は鋼矢板から成る杭の岩盤等への杭の打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、上記先端補強部材の先端は斜欠されているので、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、連続的に杭を打ち込む場合に於いて、杭の傾きを防止することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、上記杭本体の側面の長手方向に延びて、該杭本体の一定方向の振動を規制する振動規制部材が取り付けられるので、請求項1,2又は3記載の発明の効果に加え、振動規制部材により振動を減衰して、振動エネルギーの損失を防止し、打ち込みを円滑にすることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向に水を噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたので、請求項1,2,3又は4記載の発明の効果に加え、ノズルによる水の噴射によって杭本体の打設を容易にすると共に、保護部材によって、打ち込み時に於けるノズルの損傷を防止することができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向にエアーを噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたので、請求項1,2,3又は4記載の発明の効果に加え、ノズルによるエアーの噴射によって杭本体の打設を容易にすると共に、保護部材によって、打ち込み時に於けるノズルの損傷を防止することができる。又、噴射水を使用しないので、泥水等を出さないという利点がある。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、上記先端補強部材に、上記ノズルの噴射水の排水又は上記ノズルのエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の孔を開穿したので、請求項5又は6記載の発明の効果に加え、前記孔によって噴射水又はエアーを円滑に流動させ、排水又は排気を促進することができる。
【0024】
請求項8記載の発明によれば、請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の杭を油圧式可変超高周波バイブロハンマによって岩盤等の硬い地盤に打ち込む杭打ち工法を提供するので、前記油圧式可変超高周波バイブロハンマによって、H型鋼又は鋼矢板から成る前記杭を岩盤等の硬い地盤に容易に打ち込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に於いて、11は、本発明の杭であり、杭11は、油圧式可変超高周波バイブロハンマ12によって、例えば、岩盤、転石、玉石等から成るN値50以上の硬い地盤Gに打ち込むためのものである。
【0026】
図2は、前記杭11の一例である杭11Aを示し、杭11Aは、鋼矢板13から成る杭本体14の先端部に、先端全面に及んで、杭本体14よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材15が取り付けられたものである。尚、先端補強部材15は、全体が高硬度の特殊鋼であっても良く、先端部が高硬度の特殊鋼を備えたものであっても良い。
【0027】
図3に杭本体14に先端補強部材15を取り付けた状態を拡大して示す。先端補強部材15は、杭本体14よりも大なる厚みを有し、杭本体14の先端に溶接16によって取り付けられる。尚、先端補強部材15の上部に凹部(図示せず)を形成し、凹部内に杭本体14の先端部の一部が挿入される構成としても良い。
【0028】
而して、例えば、前記杭11Aの打ち込みを行なう場合は、図1に示す如く、杭11Aの後端を油圧式可変超高周波バイブロハンマ12の把持部12aで把持し、油圧式可変超高周波バイブロハンマ12と共に杭11Aを他の適宜手段で鉛直方向に吊下して杭11Aの先端補強部材15を地盤Gに当て、油圧式可変超高周波バイブロハンマ12が発生する超高周波を杭11Aに伝達して杭11Aを地盤Gに打ち込んでゆく。
【0029】
油圧式可変超高周波バイブロハンマ12が発生する超高周波は振動数及び振幅を変化させることができ、地盤Gの硬さ、風化、劣化等、地盤Gの状況にあわせた打ち込みが可能となる。例えば、振動数は20〜60Hzの範囲で自由に変化させることができる。
【0030】
斯くして、前記杭11Aは、杭11Aの先端に先端補強部材15を設けているので、岩盤等の硬い地盤Gへの杭11Aの打ち込みが容易となり、従来の先行穴開けが不要となり、一工程で杭11Aの打ち込みが行なえるため、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ることができると共に、杭11Aの損傷を防止できる。
【0031】
図4は、前記鋼矢板13から成る杭本体14に取り付けられる先端補強部材(図2に於いて15)の各変形例を示し、同図(a)に示す先端補強部材21は、鋼矢板13の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材21の先端各辺の中央部が先端方向に向かって鋭利な刃21a,21a,21aに形成されたものである。
【0032】
同図(b)に示す先端補強部材22は、先端補強部材22の先端部に、先端方向に向かって鋭利な複数の刃22a,22a…が鋸歯状に形成されたものである。
【0033】
同図(c)に示す先端補強部材23は、鋼矢板13の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材23の先端部の各辺の両端部に先端方向に鋭利な刃23a,23bが形成されたものである。
【0034】
斯くして、前記先端補強部材21,22,23は、何れも、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成されており、施工する地盤の状態に応じて使い分けることができ、前記刃によって、鋼矢板13から成る杭11Aの岩盤等への杭の打ち込みが容易となり、従来の先行穴開けが不要となり、一工程で杭11Aの打ち込みが行なえるため、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0035】
図5は、前記杭11の他の一例である杭11Bを示し、杭11Bは、従来例に示した杭(図12に於いて4)の先端補強部材(図12に於いて3)を変形させたものである。
【0036】
即ち、同図(a)に示す先端補強部材31は、H型鋼1の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材31の先端各辺の中央部が先端方向に向かって鋭利な刃31a,31a,31aに形成されたものである。
【0037】
同図(b)に示す先端補強部材32は、先端補強部材32の先端部に、先端方向に向かって鋭利な複数の刃32a,32a…が鋸歯状に形成されたものである。
【0038】
同図(c)に示す先端補強部材33は、H型鋼1の先端各辺の延長上に取り付けられる先端補強部材33の先端部の両側辺の中央部に夫々先端方向に鋭利な刃33a,33aが形成され、先端部の中央辺の両端に夫々先端方向に鋭利な刃33b,33cが形成されたものである。
【0039】
斯くして、前記先端補強部材31,32,33は、何れも、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成されており、施工する地盤の状態に応じて使い分けることができ、前記刃によって、H型鋼1から成る杭11Bの岩盤等への杭11Bの打ち込みを容易にし、従来の先行穴開けが不要となり、一工程で杭11Bの打ち込みが行なえるため、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0040】
図6は、前記鋼矢板13から成る杭本体14に取り付けられる先端補強部材(図2に於いて15)の他の変形例としての先端補強部材を示し、図6(a)に示す先端補強部材41は、先端補強部材41の先端がガス切断等により斜欠された形状となっているものである。
【0041】
即ち、図7に示す如く、杭本体14と先端補強部材41から成る複数の杭11A,11A…が順次併設して打設されていく場合に於いて、前記先端補強部材41は、既に打設された杭11A方向の上方に向かって斜欠された形状となっている。
【0042】
これにより、前記油圧式可変超高周波バイブロハンマ12によって杭11Aを地盤Gに打設中に油圧式可変超高周波バイブロハンマ12の重量とその打設エネルギーによって杭11Aが打設順方向(打設順直進方向)に倒れないようにすることができる。
【0043】
図6(b)に示す先端補強部材42は、前記先端補強部材41の先端部に先端方向に向かって鋭利な複数の刃42a,42a…が鋸歯状に形成されたものである。
【0044】
前記先端補強部材42によっても前記先端補強部材41と同様の効果が期待できると共に、先端補強部材(図4に於いて22)と同じく、前記刃42a,42a…によって、鋼矢板13から成る杭11Aの岩盤等への杭の打ち込みを容易にし、杭打設時間の短縮、工期の短縮、及び、施工コストの低減を図ると共に、杭の損傷を防止することができる。
【0045】
尚、図示は省略するが、従来例の前記先端補強部材3、又は、図5(b)に示す前記先端補強部材32を、前記先端補強部材41又は42の如く、先端を斜欠することも可能であり、然る時も、同様の効果が期待できる。
【0046】
図8及び図9は、前記鋼矢板(図2に於いて13)から成る杭(図2に於いて11A)の変形例としての杭51を示し、杭51は、杭本体14の側面の長手方向に延びて、杭本体14の一定方向の振動を規制する1〜複数の振動規制部材52,52…が取り付けられたものである。
【0047】
図8(a)は杭51の背面側を示しており、背面側の中央板14aに1本の振動規制部材52が配設されている。そして、同図(b)及び図9は杭51の正面側を示しており、中央板14aの正面側に2本の振動規制部材52,52が配設されている。又、図8(c)は、振動規制部材52,52の杭本体14の中央板14aへの取付け方法を示し、振動規制部材52は中央板14aへ溶接間隔10cm程度で溶接53,53…されて取り付けられる。
【0048】
この振動規制部材52により、杭本体14の一定方向の振動、即ち、杭本体14の幅方向の振動、所謂、杭本体14の横揺れを規制することができ、それによって、杭本体14の打設方向の振動を効率良く伝達することができる。
【0049】
即ち、前記油圧式可変超高周波バイブロハンマ12によって杭51を打設時に、岩盤に衝突した場合、杭本体14の打設エネルギーを減殺させないように打設エネルギーを打設方向に集中して伝達することができ、打設時間や工期を短縮できコストダウンを図ることができる。
【0050】
又、図示は省略するが、種々の前記先端補強部材3,21,22,23,31,32,33が設けられた前記杭4、11A,11Bに前記振動規制部材52を同様に取り付けることも可能であり、然る時も同様な効果が期待できる。
【0051】
図10は、前記鋼矢板13から成る杭(図2に於いて11A)の変形例としての杭61を示し、杭61は、鋼矢板13から成る杭本体14の先端部近傍であって、杭本体14の中央板14aと両側板14b,14cとが接する隅部に、杭本体14の打設方向に水を噴射するノズル62,62を設け、更に、前記先端補強部材15のノズル62,62先端近傍に、ノズル62,62を保護するための保護部材63,63を溶接等で取り付けたものである。
【0052】
更に又、前記先端補強部材15には、前記ノズル62,62の噴射水の排水を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の直径40mm程度の孔64,64…が開穿されている。
【0053】
前記ノズル62は前記杭本体14に固設された導水パイプ65に接続され、導水パイプ65から供給される水をジェット噴射し、打ち込み作業によって発生する岩粉等を除去するものである。
【0054】
前記保護部材63は、杭本体14と共に、打ち込み方向に推進される前記ノズル62の推進方向前方に位置しており、打ち込み時のノズル62前方の障害物を排除してノズル62を保護し、ノズル62の損傷を防ぐことができる。
【0055】
又、前記孔64は、前記ノズル62から噴出される水を円滑に流動させ、岩砕等を攪拌し、岩砕等の洗浄、排水を促進することができる。
【0056】
又、図示は省略するが、種々の先端補強部材3,21,22,23,31,32,33が設けられた前記杭4、11A,11Bに前記ノズル62,前記保護部材63,前記孔64を同様に取り付けることも可能であり、然る時も同様な効果が期待できる。
【0057】
図11は、前記鋼矢板13から成る杭(図2に於いて11A)の他の変形例としての杭71を示し、杭71は、鋼矢板13から成る杭本体14の先端部近傍であって、杭本体14の中央板14aと両側板14b,14cとが接する隅部に、杭本体14の打設方向にエアーを噴射するノズル72,72を設け、更に、前記先端補強部材15のノズル72,72先端近傍に、ノズル72,72を保護するための保護部材73,73を溶接等で取り付けたものである。
【0058】
更に又、前記先端補強部材15には、前記ノズル72,72のエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の直径40mm程度の孔74,74…が開穿されている。
【0059】
前記ノズル72は前記杭本体14に固設されたエアーパイプ75に接続され、エアーパイプ75から供給されるエアーをジェット噴射し、打ち込み作業によって発生する岩粉等を除去し、杭本体14の打設を容易にするものである。尚、前記エアーパイプ75はエアーを高圧供給するコンプレッサー76に接続されている。
【0060】
前記保護部材73は、杭本体14と共に、打ち込み方向に推進される前記ノズル72の推進方向前方に位置しており、打ち込み時のノズル72前方の障害物を排除してノズル72を保護し、ノズル72の損傷を防ぐことができる。
【0061】
又、前記孔74は、前記ノズル62から噴出されるエアーを円滑に流動させ、岩砕等を攪拌し、岩砕等の洗浄、排気を促進することができる。
【0062】
更に、図示は省略するが、種々の先端補強部材3,21,22,23,31,32,33が設けられた前記杭4、11A,11Bに前記ノズル72,前記保護部材73,前記孔74を同様に取り付けることも可能であり、然る時も同様な効果が期待できる。
更に又、前記杭71は、噴射水を使用しないので、泥水等を出さないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による先端補強部材を設けた杭を用いた杭打ち工法を説明する正面図である。
【図2】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の斜視図である。
【図3】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた杭に於ける先端補強部材の取付け方法を説明する説明図である。
【図4】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の変形例を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。(c)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図5】(a)本発明による先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の先端補強部材の変形例を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。(c)本発明による先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図6】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の先端補強部材の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭の打設順方向の説明図である。
【図8】(a)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を設けた杭の背面側から見た斜視図である。(b)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を設けた杭の正面側から見た斜視図である。(c)本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を取り付けた状態を説明する平面図である。
【図9】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に振動規制部材を設けた杭の正面斜め側から見た斜視図である。
【図10】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に、水を噴射するノズル、保護部材を設け、孔を開穿した状態を示す斜視図である
【図11】本発明による先端補強部材を設けた鋼矢板から成る杭に、エアーを噴射するノズル、保護部材を設け、孔を開穿した状態を示す斜視図である
【図12】従来例の先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の斜視図である。
【図13】従来例の先端補強部材を設けたH型鋼から成る杭の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1 H型鋼
2 杭本体
11,11A,11B,51,61,71 杭
12 油圧式可変超高周波バイブロハンマ
13 鋼矢板
14 杭本体
15,21,22,23,31,32,33,41,42 先端補強部材
21a,22a,23b,23c,31a,32a,33a 刃
52 振動規制部材
62,72 ノズル
63,73 保護部材
64,74 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭。
【請求項2】
鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成り、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成された先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭。
【請求項3】
上記先端補強部材の先端は斜欠されていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭。
【請求項4】
上記杭本体の側面の長手方向に延びて、該杭本体の一定方向の振動を規制する振動規制部材が取り付けられることを特徴とする請求項1,2又は3記載の杭。
【請求項5】
上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向に水を噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭。
【請求項6】
上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向にエアーを噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭。
【請求項7】
上記先端補強部材に、上記ノズルの噴射水の排水又は上記ノズルのエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の孔を開穿したことを特徴とする請求項5又は6記載の杭。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の杭を油圧式可変超高周波バイブロハンマによって岩盤等の硬い地盤に打ち込むことを特徴とする杭打ち工法。
【請求項1】
鋼矢板から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成る先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭。
【請求項2】
鋼矢板、又は、H型鋼から成る杭本体の先端部に、該杭本体よりも高硬度の特殊鋼から成り、先端方向に向かって鋭利な1乃至複数の刃が形成された先端補強部材を取り付けたことを特徴とする杭。
【請求項3】
上記先端補強部材の先端は斜欠されていることを特徴とする請求項1又は2記載の杭。
【請求項4】
上記杭本体の側面の長手方向に延びて、該杭本体の一定方向の振動を規制する振動規制部材が取り付けられることを特徴とする請求項1,2又は3記載の杭。
【請求項5】
上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向に水を噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭。
【請求項6】
上記杭本体の先端部近傍に、該杭本体の打設方向にエアーを噴射するノズルを設け、上記先端補強部材の該ノズル先端近傍に、該ノズルを保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の杭。
【請求項7】
上記先端補強部材に、上記ノズルの噴射水の排水又は上記ノズルのエアーの排気を促進するため、打設方向に直交する1乃至複数の孔を開穿したことを特徴とする請求項5又は6記載の杭。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の杭を油圧式可変超高周波バイブロハンマによって岩盤等の硬い地盤に打ち込むことを特徴とする杭打ち工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−32254(P2007−32254A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35144(P2006−35144)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(500261488)株式会社森重機工業 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(500261488)株式会社森重機工業 (1)
【Fターム(参考)】
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