説明

光−偏光性の固形の塗膜組成物、同上物から構成される光学レンズ、および同上物の製作方法

本発明は光−偏光性の固形の塗膜組成物に関し、溶媒に懸濁した、(i)少なくとも1種類の磁性体の粒子を含み、これが(ii)少なくとも1種類の2色性染料化合物を含むことを特徴とする。本発明は眼科用光学部品に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光−偏光光学物品、とりわけめがねレンズ用など光学ガラス分野に関し、より具体的には光−偏光性の固形の塗膜の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、光を偏光する特性を持つ光学ガラスを生産する方法は(i)ガラス塊(すなわち基材)を例えばハロゲン化銀を溶融した無機ガラス塊中に分散処理するか、または(ii)有機または無機の光学ガラスの少なくとも一方の面に、光−偏光塗膜層を被覆するかの何れかから成る。
光を偏光するための光学ガラス用の種々のタイプの固形の塗膜層が先行技術により知られている。
光−偏光ポリマーはとりわけ偏光フィルターを生産するために今まで用いられてきた。
【0003】
今まで用いられてきた光−偏光ポリマーとしては他のものと共に、ポリエチレンテレフタレート(PET)の様なアルキレンテレフタレートが含まれる。時には、PETをベースとした偏光膜は米国特許第5882774号に記載されている様に、ポリ(エチレンナフタレート)の様な結晶または半結晶の形のナフタレンジカルボン酸を、またはエチレングリコール、ナフタレンジカルボン酸またはテレフタル酸の様な他の酸から誘導されたコポリマーをも含む。
光−偏光成分として強磁性体を用いる光−偏光性の固形の塗膜層の製法についても記載されている。
【0004】
米国特許第5943156号によると、表面を導電膜で覆われた強磁性体素材の粒子を含むモノマーゲルを調合する。次いで光学ガラスの少なくともその一方の面を前記モノマーゲルで塗膜し、その全体を磁場内に配置して導電性となった強磁性粒子を整列させる。最終ステップにおいて、ゲル内に含まれる1つ以上のモノマーを硬化しポリマー塊内の導電強磁性粒子の整列を固定する。開始モノマー材料として、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランまたはトリフルオロプロピルトリメトキシシランの様なアルコキシル化誘導体が用いられ、これはゲルを形成する様に水を加えて溶液加水分解される。ここまで用いてきた前記強磁性体とは専ら金、銀、銅、ニッケルまたはスズなどの金属性導電膜で塗膜されたフレーク状の二酸化クロム粒子(CrO2)を意味する。
【0005】
PCT国際出願第WO90/13052号にも磁性粒子をベースとしてどの様にして偏光膜を生産するかについて記述されている。記載されている生産方法によると、前記磁性粒子を1種類以上のポリマーまたはプレポリマー材料を含む粘性媒体に加える。その後この粘性媒体を支持体に塗工してそこに層を形成する。次いで全体に磁場を作用させ、ポリマーまたはプレポリマー材料の硬化ステップに先立って磁性粒子を整列する。適したポリマーまたはプレポリマー材料としてポリウレタン類、アクリル類およびメタアクリル類、グリコールフタレートエステル類の様なポリエステル類、ナイロンTM類、ポリオレフィン類、もしくはより一般的に熱可塑または熱硬化性樹脂類、とりわけ有機ポリマー樹脂類が含まれる。特定の実施態様においては磁性粒子として、プラスチックビーズ、例えばポリスチレンビーズに組み込んだ磁性粒子が用いられ、前記プラスチックビーズはさらにいくらかの黒色炭素または他の顔料も含む。さらには磁性体素材を顔料内に組み込むか、もしくは磁性粒子を顔料または不透明な充填材含有材料で覆うかのいずれかのことも想定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現状技術は既知の方法に比べてもっと容易にもっと速く達成でき、かつもっと容易にもっと経済的に生産できる出発材料から実行できる偏光光学ガラスを生産する方法を必要としている。
また現状技術は光学ガラスの性質が無機物、有機物のいずれであれ、多大な調節を要しないで容易に実行できる様な方法を必要としている。
同様に、偏光光学ガラスを作るための改良された生産方法に用いることができる新規な偏光塗膜組成物も必要としている。
【0007】
本発明によると、光−偏光性の固形の塗膜組成物および当該組成物を開始材料として用いる偏光光学ガラスの生産方法が開発されている。
出願人は光学ガラス用の固形の塗膜を作る際に、溶媒中、好ましくは水性溶媒中に磁性体および1種類以上の2色性染料の両方の粒子を含む懸濁液をポリマーの格子状構造の形成と共に又は形成によらず、開始材料として用いることにより光−偏光特性が得られることを示した。
驚いたことに、我々は本発明により上述タイプの水性溶媒による液膜を透明の基材上に形成し全体を磁場作用にかけることにより、磁性粒子および2色性染料の両方の整列が観察できた。一端液膜が乾燥すると透明な基材上に優れた光−偏光特性を伴う固形の塗膜層が形成されることを示すことができた。
【0008】
この様に、驚くべきことに、磁性粒子および1種類以上の2色性染料を含む水性懸濁液による膜が透明基材の表面に形成され、次いで磁場作用にかけられると、磁性粒子の整列が1種類以上の染料の整列をも引き起こす。さらに、これら2つのタイプの化合物の整列は液膜が一端乾燥すると保存され、かくて透明基材面上の固形の塗膜層となり当該層は優れた光−偏光特性を提供する。
このことは出願人が磁性体粒子、とりわけ強磁性体を含む単純な水性懸濁液による液膜を光学基材面上に作り、次いで前記膜を磁場内で乾燥したところ光−偏光特性のない塗膜層ができることを驚きを以て観察しているから、とりわけ予想外のことである。
かくて、我々は磁性体が配向性マトリックス、とりわけポリマー格子を全く含まない固形の塗膜層内に組み込まれた場合には光を偏光しないことを驚きを以て知った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、(i)少なくとも1種類の磁性体、(ii)少なくとも1種類の2色性染料化合物、および随意的に(iii)少なくとも1種類の界面活性剤を溶媒内に分散して含む、光−偏光性の固形の塗膜組成物を提供することが本発明の目的である。
溶媒は水であることが好ましく、脱イオン水であることがさらに好ましい。
ここに用いる磁性体とは、好ましくは恒久的な磁気モーメントを、例え外部の磁場が無くとも持つ素材を意味する。
使用可能な磁性体には強磁性体またはフェリ磁性体が含まれる。
本発明の文脈において、強磁性粒子またはフェリ磁性粒子は現代技術で通常、光−偏光システムに用いられるどの様な公知のタイプのものでもよい。
【0010】
強磁性体は、鉄、ニッケル、ガドリニウム、ジスプロニウム、および種々のフェライト類の様に、一般に導電性のある金属または導電性のある合金である。
フェリ磁性体は一般にセラミックスであり、導電性に乏しいかまたは絶縁物である金属酸化物をベースとしている。
本発明による組成物に用いられる少なくとも1種類の磁性体粒子はFe2O3または化学式がMO.Fe2O3の物質から成るグループから選ばれることが好ましく、ここにMはZn、Cd、Fe、Ni、Cu、Co、Mg、Cr またはMnを表す。
Fe2O3粒子は磁赤鉄鉱としても知られるg-Fe2O3粒子であることが好ましい。
粒子はまた化学式MO.Fe2O3の粒子を含むこともあり、ここにMは上に掲げた金属を表す。これらは実施例に示す様に例えばCoFe2O4粒子であってもよい。
【0011】
好適な実施態様によると、少なくとも1種類の磁性体粒子は強磁性流体として用意される。本発明によると、「強磁性流体」とは0.001μmから0.3μm、好ましくは0.003μmから0.2μmでさらに好ましくは0.005μmから0.1μmの非常に微粒径で、実質的に球状または引き延ばされた形状で不活性の溶媒、好ましくは例えば脱イオン水の様な水性媒体に懸濁された強磁性体またはフェリ磁性体の粒子を意味する。ある実施態様においては、本発明による強磁性流体はフェリ磁性体の微粒子コロイド状懸濁液から構成される。ある実施態様においては、本発明による強磁性流体は懸濁粒子溶液内の1種類以上の界面活性剤から構成される層で被膜されていることもある。
【0012】
本発明によりここに用いられる「2色性染料」は決められた波長域に対し、光の2つの偏光直交成分の一方を吸収し偏光直交成分の他方を透過する染料を意味する。2色性染料は光を線形的に偏光する特性がある。光源、例えば多色光の光源に曝された場合、2色性染料は吸収波長において線形的に偏光された光線を伝達するが、その振動面はその染料が含まれる媒体中におけるその分子配向によることを特徴とする。
本発明による固形の塗膜組成物に含まれる2色性染料化合物は、4−アミノ−3−((4’−((1−ヒドロキシ−4−スルホ−2−ナフタレニル)アゾ)−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)−4−イル)アゾ)−1−ナフタレンスルホン酸ジナトリウム塩、C32H30N5NaO8S2(ダイレクトバイオレット51)、C34H28N6O16S4.4Na(シカゴスカイブルー6B)、C22H16N4O−4−[4−(フェニルアゾ)−1−ナフチルアゾ]フェノール(ディスパースオレンジ13)、Optiva社のTCFTM(Thin Crystal Film)およびSterling社の染料Vari-LightTM溶液No2Pから成るグループから選ばれることが好ましい。
【0013】
本発明による組成物は概して光−偏光光学ガラスを作るのに用いられ、とりわけ薄い色つき光学ガラス、中でも光学サングラスを作るのに用いられる。かくて、上に規定した様な組成物に含まれる2色性染料のタイプ、および2色性染料の数は末端用途の目的とするタイプにより、すなわち期待するガラスの最終的な色により異なる。生産した光−偏光光学ガラスの最終的な色味は光学ガラスに存在する複数の染料、すなわち光−偏光性の固形の塗膜層内に存在する染料のみならず、同様に偏光性の固形の塗膜層とは別に基材塊に組み込まれていることもある染料または1種類以上の付加的な、機能性塗膜層に存在することもある染料にもよることに留意すべきである。
本発明による固形の塗膜組成物は少なくとも2種類の異なる2色性染料を含むことが好ましく、2から6種類が好都合で、2から4種類の異なる2色性染料がさらに好ましい。
【0014】
本発明による固形の塗膜組成物内に存在する1種類以上の界面活性剤は、この様な組成物を調合する際に水性懸濁液の全体容積中で磁性粒子および染料の実質的に均質な統計的分布をつくり出す。当該組成物が磁場内の光学ガラス基材上に塗膜される膜として用いられる場合、1種類以上の界面活性剤は、とりわけ懸濁液中で粒子が集合することを減少または防止することにより、磁場方向に応じて粒子および染料の良好な整列をさらに高める。この様な粒子の集合は完全に回避されなくてはならず、それはこの様な集合が加えられた磁場方向に整列していない多数の粒子を必然的に含み、最終的な固形の塗膜層の光−偏光特性を著しく低下させるからである。
さらに、この様な集合は光を散乱する様に作られる可能性がある。光散乱は少なくとも光の部分的な偏光解消を誘発し、かくして期待される効果を減少または中和すらさせてしまう可能性がある。
【0015】
本発明による偏光性の固形の塗膜組成物に用いる界面活性剤はどの様な公知の界面活性化合物またはその混合物でもよいが、光に対して透過性があり溶液中の他の化合物のいかなる集合も誘発しないものが好ましい。
本発明による偏光性の固形の塗膜組成物に用いる界面活性剤は非イオンタイプの界面活性化合物(例えばフッ素、シリコンまたは単に炭化水素タイプ)が有利である。
界面活性化合物はEFKA 3034およびノニルフェノールエトキシレート(NPE)から選ばれることが好ましい。
界面活性剤をNPEとすることで優れた結果が得られる。
上に述べた組成物により最終の固形の塗膜層に最適な光−偏光特性がもたらされるが、ここにフェリ磁性粒子(固体)/2色性染料(固体)の重量比の変化は1:1から1:100、より好ましくは1:5から1:50で、この乾物重量比は1:7から1:33の範囲が好ましい。
【0016】
重量比は用いた磁性ナノ粒子によっては勿論、同様に染料によっても規定される。
最小比率および最大比率の間で変化することが好ましい。最小比率はこれ未満では最終の固形の膜内にナノ磁性粒子が不十分で、そのため膜内の2色性染料の一部のみしか整列せずその様な整列は最適ではない、という重量比に対応する。
最大重量比はそれを超えては最終の固形の膜内に十分に2色性染料がないという重量比である。例えすべての染料が整列したとしても十分な量で存在せず膜の2色性染料効果が最適ではない。
本発明による偏光性の固形の塗膜組成物において、少なくとも1種類の磁性体の粒子の量の変化は好ましくは重量で0.1から1%で、重量で0.3から0.8%が好ましい。
【0017】
少なくとも1種類の磁性体の粒子は形状が球形であることが好ましい。異方性粒子、とりわけ針状または円筒形状粒子も使用可能である。
磁性粒子はコア/シェルタイプのものでもよく、その場合コアは磁性体からできていてシェルは有機物塗膜または無機−有機のハイブリッド塗膜からできている。
塗膜材料はとりわけアルコキシラン、好ましくはエポキシラン型材料を含む場合もある。
好ましくは、少なくとも1種類のフェリ磁性体の平均粒径の範囲は0.001μmから0.3μmで、0.003μmから0.2μmが好ましく、0.005μmから0.1μmがより好ましい。
一般に、本発明による偏光性の固形の塗膜組成物内の2色性染料の量は光学ガラスに求められる最終的な色合いに大きく左右されて変わることになる。しかしながら、2色性染料の不十分な量は最終の固形の塗膜層の偏光特性におよぼす負の影響のため避けるべきである。
【0018】
本発明による別の実施態様によると、磁性体粒子が2色性染料の配向性に直接にではないが中継役となる化合物を介して影響を与えることがある。その様な場合、その化合物はモノマー、オリゴマーまたは好ましくはポリマーとして存在することがあり、磁性粒子の作用により配向する。とりわけ、米国特許第6245399号に記載例としてあるように、液晶タイプ化合物のシステムがゲスト−ホストシステムの場合がその例である。
本発明による塗膜組成物の重量に対し2色性染料の量の変化は1から10%、好ましくは4から6%であることが都合よい。
本発明による固形の塗膜組成物内の界面活性化合物の量は主に用いた化合物のタイプおよびその界面活性特性に依存して変わる。
【0019】
しかしながら、用いる界面活性剤の量は当業者なら一般的な知識、用いる界面活性剤の性質により容易に決定できる。
本発明による固形の塗膜組成物内に含まれる界面活性剤の量の変化は組成物の合計重量に対して重量で0.5から2%であることが都合良い。
本発明による偏光塗膜組成物を調合するのに用いる溶媒は好ましくは水で、より好ましくは脱イオン水である。前記水溶液はまた1種類以上の無色で水混和性の溶媒、例えばアルコール、とりわけエタノール、メタノール、プロパノールまたはブタノールの様なアルカノールも含むこともある。
本発明による偏光塗膜組成物はまた上記溶媒に可溶で溶媒が蒸発する最中または後に硬化するオリゴマーまたはポリマーの結合剤を含むこともある。
【0020】
この結合剤は反応性官能基、とりわけ(メタ)アクリレート官能基を持つこともあり光照射活性があり結合剤を架橋する。
溶媒が本質的に水性である場合、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリメタクリルアミド類の様な水溶性結合剤を用いることができる。
偏光塗膜組成物は好ましくは光照射の下で重合性のある、重合性モノマーを含むこともある。この場合、偏光塗膜組成物は光重合開始剤を含む。
これら重合性モノマーは単独でも、または上述の結合剤との組合せ(混合物)でも用いることができる。
【0021】
本発明のさらなる目的は光学ガラスを生産する方法を提供することで、好ましくは光学ガラスの少なくとも一方の面が光−偏光性の固形の塗膜層で覆われ、前記方法が次の:
a)光学製品の剥き出し、または1つ以上の機能塗膜層で覆われた表面に溶媒中に分散した磁性粒子を含む偏光塗膜組成物の液膜を形成し;
b)ステップa)の終わりに得られる様な組成物の液膜で覆われた前記光学製品を磁場の作用に曝し
c)前記の膜の乾燥をおこなう
ステップから構成され、少なくとも1種類の2色性染料化合物がステップa)の間に前記液膜内に存在するか、またはステップc)の後に前記の膜の表面に塗工されることを特徴とする。
【0022】
ステップa)において液膜は、例えばディッピングまたはスピンコートの様なとりわけ光学基材上に塗膜層を塗工する分野においてそれ自体公知のどの様な方法でも得られる。
ステップa)で得られる液膜は、本発明による塗膜組成物を1滴以上垂らし、次いでスピンコートすることにより、膜が光学製品基材の回転による遠心力の作用の下で形成され得られることが好ましい。
ステップa)において、回転速度の変化は500から1000rpm、加速度は毎分および毎秒当たり300から5000回転(「回転/分/秒」)の範囲が都合よく、一般に前記加速度は5000回転/分/秒である。
遠心にかける時間の変化は10から30秒までが好ましい。
【0023】
ステップb)において、偏光塗膜の液組成物膜で覆われた光学製品は磁場内に並べられ、その磁場の方向は処理する基材面に平行である。
ステップc)の前記膜の乾燥は少なくとも部分的には前記磁場の作用と同時に実施されることが好ましく、前記磁場が全乾燥時間を通じて維持されることがさらに好ましい。
一般に、磁場は必要な偏光効果を得るのに必要な時間だけ維持され、したがって広範囲に変化する可能性がある。
一般には1時間で十分であるが、液体組成物膜が例えば24時間に亘り暴露されることもある。
【0024】
通常の偏光面を作る場合、つまり全表面が一様な場合、ステップb)で加えられる磁場は当該ステップの全体を通じて一定の値で一定の配向性を持つことが好ましい。
さらに好ましくは加えられる磁場の値の変化は0.01から1テスラで、値は約0.2テスラであることが好ましい。
興味深い実施態様において、処理する光学製品は方法のステップb)で永久磁石の極の間に並べられている。
本発明による方法は非常に柔軟性に富むため、偏光の調整および/または偏光の変動域を設けることができる。
例えば偏光膜を塗工した光学製品の表面の偏光方向を変化させることを想定したり、または異なる配向で偏光する不連続域を想定することも可能である。
【0025】
この目的のため、光学製品を空間的および/または時間的に変化する磁場に委ねることもできる。
さらなる実施態様は、液体組成物膜のある部分域に一層急激な乾燥を引き起こし、一方でこの部分域の磁性体および2色性染料内の粒子配向を維持することから構成されている。
一旦前記部分域の偏光性が固定されてしまってから製品の残り部分に異なる偏光性を与えるために偏光膜を担う光学製品の相対的な配向および作用している磁場のそれを変えることもできる。
このステップは目標とする異なる偏光部分域の数に対応して必要な回数だけ繰り返すことが可能である。
【0026】
特定の実施態様において上記の方法は、光−偏光性の固形の塗膜層を固着するための付加的なステップd)を含む。
ステップd)はステップc)の終わりに得られた偏光光学ガラスを固着浴に浸漬して実行することが好ましい。
固着剤としてBaCl2を用いることが好ましい。
固着ステップd)は最も好ましくはBaCl2浴内でpH値の範囲が3から4、より好ましくはpH値3.5で、5秒から1分の範囲、より好ましくは10秒から40秒、さらにより好ましくは約20秒の間実施される。
ステップd)の間に、この様な固着ステップは続いて少なくとも1回の蒸留水中のすすぎステップ、より好ましくは少なくとも3回のすすぎステップがあり、これに乾燥、好ましくは室温の乾燥が3から30分、より好ましくは15分間続く。
【0027】
固着ステップにより固着剤が2色性染料の接近可能な化学基と複合することが可能となる。BaCl2の場合、バリウムイオンが2色性染料のアニオン系化学基と複合する。
すでに上で述べた様に、本発明による方法は無機ガラス製の光学基材に対しても有機ガラス製の光学基材に対しても同等に適用できる。
別の興味深い特徴によると、上記の方法はさらにa)ステップより前に、光学ガラス面に対する酸性またはアルカリ性の前処理ステップを含むこともあり、より具体的にはどの様な先行塗膜層も含まない剥き出しの光学ガラスに対してステップa)が行われる実施態様においてそうである。
【0028】
処理するガラス表面に対するこの前処理は前記表面に対する偏光性の固形の塗膜層の接着状態を向上させる。
本発明による方法にしたがって無機ガラス表面を処理するために、前処理ステップは酸性条件の下で実施されることが好ましく、例えば酢酸をベースとした水溶液の濃度が重量で2%から8%、より好ましくは3%から7%、なおより好ましくは5%で実施される。酸性の前処理ステップは通常高温雰囲気の40℃から60℃の温度範囲で実施され、温度は48℃が好ましい。酸性前処理は通常30分である。
【0029】
本発明の方法により有機ガラスの表面を処理するためには、前処理ステップはアルカリ性条件の下で実施されることが好ましく、例えば炭酸ソーダをベースとした水溶液で濃度が重量で2%から8%、より好ましくは3%から7%、なおより好ましくは5%で実施される。アルカリ性の前処理ステップは通常高温雰囲気の40℃から60℃の温度範囲で実施され、温度は50℃が好ましい。アルカリ性前処理は通常4から5分で4.5分の長さが好ましい。
我々は本発明による偏光塗膜層が優れた光−偏光性特性を持つことを証明した。
【0030】
我々は本発明による塗膜層のとりわけ光を偏光する能力についてISO 8980-3標準規格にしたがって測定を行った。この様にして前記塗膜層の偏光面に対し平行および垂直に線形的に偏光した可視光源に相次いで曝して塗膜層を経由する光透過率を測定した。本発明による塗膜層を経由する光透過率の測定は350nmから800nmの範囲の異なる連続する波長で行われた。これらの測定により、それぞれの波長について「平行透過率」/「垂直透過率」比から算定されるコントラスト比(隠蔽率)、以後は短縮して「CR」と称する、を定義することが可能となった。連続する波長に対するCRスペクトルが得られ、これにより本発明による偏光塗膜層の光−偏光特性が定義される。2色性染料としてSterling社が市販している染料の組合せを用いると、約20のCR値が得られる。2色性染料としてOptiva社が市販している染料を用いると、約30のCR値が得られる。さらに、本発明により与えられた偏光塗膜組成物に関しては、眼科用ガラスが平行面ガラスであっても矯正付ガラスであっても、CR値は殆ど近似しているか同じですらある。
【0031】
偏光性の固形の塗膜層は剥き出しの基材上に直接塗工することも、または1種類以上の付加的な機能性膜で既に覆われている基材上に塗工することもできる。これら付加的な、機能性膜は本発明による偏光塗膜層の上にさらに塗工することもできる。
第1の特定の実施態様においては、本発明による偏光塗膜層は剥き出しのガラス上に直接塗工される。
第2の特定の実施態様においては、本発明による偏光塗膜層は既にその表面が光学分野で従来から用いられている機能性膜の内の1種類以上の付加的な機能性膜で覆われている光学ガラス上に塗工される。
第3の実施態様において最終光学ガラス製品は、剥き出しのガラスまたは既に1種類以上の機能性膜で覆われたガラス上に同様に塗工した本発明による偏光性の固形の塗膜層が1種類以上の付加的な機能性塗膜層で覆われている。
【0032】
かくて、さらに進んだ都合の良い特性により、上記の方法はステップc)の後、またはステップc)が省かれる場合にはステップb)の後にも、さらに1種類以上の付加的な塗膜層を伴う1回以上の付加的な偏光性の固形の塗膜層を塗膜するステップを含むこともできる。
最終光学ガラス製品を構成する機能性塗膜層は一般に光学分野で従来から用いられている塗膜層、例えば反射防止塗膜層、耐摩耗塗膜層、耐衝撃塗膜層、光互変性塗膜層、オプトエレクトロニクス塗膜層、電気−光互変性塗膜層、淡彩付塗膜層またはロゴの様な印刷パターン付塗膜層などから選択される。上の塗膜層は積み重ね層の形で用いられその中に本発明による偏光塗膜層も組み込まれている。
【0033】
この様な塗膜層の積み重ね層は例えば次の様に塗膜層を次々と積み重ねて構成する積み重ね層である:
− 本発明による光−偏光塗膜層;
− 随意的に、耐衝撃層。ポリウレタンラテックスまたはアクリルラテックスが好ましい(この様な耐衝撃層は、とりわけポリウレタンラテックスを用いる場合には、本発明による光−偏光性の固形の塗膜組成物を置く前に塗工することが好ましい);
− 耐摩耗塗膜層またはハードコート。1種類以上のエポキシシランの加水分解物および1種類以上のコロイド状シリカの様な無機フィラーを含むことが好ましい;
− 1種類以上の反射防止層で一般には金属酸化物またはシリカの様な無機材料で構成される。
− 随意的に、疎水性の汚れ防止膜、または「トップコート」;上に述べた積み重ね層のそれぞれの層は当業者には周知の通常の方法により堆積される。
【0034】
一般に、前述した各種の反射防止塗膜(AR)を交互に含む積み重ね層の全体厚みの変動は80nmから800nmまでである。
耐摩耗層の厚みの変動は1から10マイクロメートルであることが好ましいが、2から6マイクロメートルがより好ましい。
耐衝撃プライマー層の厚みの変動は0.5から3マイクロメートルであることが好ましい。
本発明のさらなる目的は光−偏光光学ガラスを提供することで、その少なくとも一方の面は(i)磁性体粒子および(ii)2色性染料化合物でできた組合せから構成される光−偏光性の固形の塗膜層で覆われている。
前記光学ガラスは本明細書内で先に規定した方法により得られることが好ましい。
【0035】
さらに進んだ特性により、光−偏光塗膜は本明細書内で先に規定した様な光−偏光性の固形の塗膜組成物から得られる。
本発明による光学ガラスは好ましくは眼科用レンズであり、めがねレンズであることが好ましい。
本発明による偏光塗膜層で覆われた光学ガラス面は眼に向いた側の面とは反対側の面であることが好ましい。
光学ガラスは上に記載した機能性塗膜層から選ばれた少なくともさらに1種類の機能性塗膜層を含むことが好ましく、前記のさらなる機能性塗膜層は光−偏光性塗膜層の上側にでも下側にでも同様に積み重ねられる。
【0036】
さらなる機能性塗膜層は本発明による光−偏光性塗膜層の上側に積み重ねられることが好ましい。
本発明による光−偏光塗膜層がただ1種類のさらなる塗膜層で覆われる実施態様においては、前記の他の塗膜層は反射防止層または耐摩耗塗膜層から選ばれることが好ましい。
薄い厚みの層で強い偏光効果をもたらすことを可能にすることは本発明の利点である(すなわち偏光塗膜層に接着剤が全くない場合、その厚みは一般に約2ミクロン以下である)。層の厚みを増すことによりコントラスト比を調整することができる。
続いて本発明について説明するが次の実施例および添付図面に制約されるものではない。
【0037】
実施例において、別途記載がない限りすべてのパーセントおよび割合は重量に基づく。
【0038】
<実施例1> 2色性染料を全く含まず、フェリ磁性粒子を含む塗膜層(比較実施例)
コバルトフェライトをベースとした強磁性流体(Berlin Heartが市販しているMT-2531)を含む水性懸濁液を無機平行面ガラス基材上に「スピンコート」により堆積した。
堆積後、膜を永久磁石の極の間(空隙70mm、0.15テスラの磁場)で室温において24時間乾燥し、固形の塗膜層を得た。
偏光特性は偏光フィルターを装備した顕微鏡を用い、偏光面と想定される塗膜層に偏光した光をそれぞれ平行および垂直に線形的に配向して調べた。結果を図1に示す。
結果は偏光した光が前記塗膜層の想定される偏光面に対し平行(図1A)または垂直(図1B)のいずれに線形的に偏光されていても全面的に塗膜層を経由して透過することを示す。
これらの結果は明らかにフェリ磁性粒子が固形の塗膜層に組み込まれた場合に光を偏光しないことを示す。
【0039】
<実施例2> 2色性染料の組合せ(STERLING社が市販するVari-Light)を含む本発明による偏光塗膜層
本発明による偏光性の固形の塗膜層用の組成物を、強磁性流体(Berlin Heart社が市販するMT25-31)0.132g、2色性染料の組合せ(STERLING社が市販するVari-Light)6.6g、および界面活性剤(Sterling Optics社が市販するノニフェノールエトキシレート通称 NPE)0.022gから成る混合物を作ることにより調合した。
固形の塗膜層組成物中の強磁性流体(固体)/染料(固体)の重量比は1:7.5である。固形の塗膜層中の固体(界面活性剤を除く)の重量パーセントは次の通りであった:
− 染料: 88.2%
− 強磁性流体: 11.8%
【0040】
次いでEssilor International社が市販するStigmalタイプの、それぞれ平行面ガラスおよび「−2.00ジオプトル」矯正ガラスの2種類の有機ガラスの表面を酸性条件の下で次の溶液中で全30分行程の前処理を2回実施した:
− 48℃の塩基性溶液;
− 48℃の5%酢酸+0.5%非イオン系界面活性剤およびトルエンスルホン酸;
− 40℃の浸透水
上の塗膜層組成物を両方の前処理済み基材のそれぞれの上に速度500rpm、加速度5000rpm/秒で30秒間のスピンコートにより堆積した。
次いで、一方の面を偏光塗膜層組成物の液膜で覆われたガラスを永久磁石の両極の間(空隙70mm)に配置し、0.15テスラの磁場を処理する製品の表面に平行となる方向に作用させ、室温で24時間の乾燥工程を実施した。
【0041】
偏光特性は偏光フィルターを装備した顕微鏡を用い、偏光面と想定される塗膜層に偏光した光をそれぞれ平行および垂直に線形的に配向して調べた。
光が想定される偏光面に対し垂直に偏光された場合に図2に示す様に、平行面ガラスおよび「−2.00ジオプトル」矯正ガラスについて本発明による偏光性の固形の塗膜層による光の消滅が観察された。
両方のそれぞれのガラスに関するCRスペクトルはISO 8980-3 標準規格に準拠して実施した測定によってより具体的に決定した。
次の表1にCR測定結果を与えているがさらにこれは図3にも350nmから800nmの全波長域のスペクトルを示してある。
【0042】
【表1】

結果は、本発明による固形の塗膜層は確かに広範囲の波長内で優れた光−偏光特性を持つことを示している。
【0043】
<実施例3> Optiva社が市販する2色性染料の組合せを含む本発明による偏光塗膜層
本発明による偏光性の固形の塗膜層用の組成物を、強磁性流体(Berlin Heart社が市販するMT25-31)0.61g、Optiva社が市販するTCF2色性染料の組合せ(Thin Crystal Film)15.65g、および界面活性剤(Sterling Optics社が市販するノニフェノールエトキシレート通称NPE)0.182gおよび蒸留水15.67gから成る混合物を作ることにより調合した。
強磁性流体(固体)/染料(固体)の重量比は1:7.5である。塗膜組成物の乾燥物中の固形分(界面活性剤を除く)の重量パーセントは次の通りであった:
− 染料: 88.2%
− 強磁性流体: 11.8%
【0044】
次いでEssilor International社が市販するOrmaTMタイプの平行面ガラスを塩基性条件の下で次の塩基性溶液中で4.5分行程の処理を1回実施した:
− 50℃で5%炭酸ナトリウム
− 次いで水性溶液中のすすぎ洗い
上の塗膜層組成物を双方の前処理済みガラス基材のそれぞれの上に速度500回転/分、加速度5000rpm/秒で10秒間のスピンコートにより堆積した。
次いで、一方の面を偏光塗膜層組成物の液膜で覆われたガラスを永久磁石の両極の間(空隙70mm、0.15テスラの磁場)に配置し、その磁場の配向は平行で、前記磁場の下で乾燥工程を室温で24時間実施した。
【0045】
偏光塗膜層の厚みは1.10μmである。
平行面ガラスの想定される偏光面に対し光が垂直に偏光されている場合に本発明による偏光性の固形の塗膜層による光の消滅が観察された。
より具体的には、双方のガラスのそれぞれのCRスペクトルについて、ISO 89803標準規格にしたがって実行した測定により決定した。
下の表2にCR測定結果を与えているがさらにこれは図4にも350nmから800nmの全波長域のスペクトルを示してある。
【0046】
【表2】

結果はまた本発明による固形の塗膜層が広範囲の波長域で優れた光−偏光特性を持つことも示している。
【0047】
<実施例4> 強磁性流体EMG 805/Optiva社染料
本発明による偏光性の固形の塗膜層用の組成物を、強磁性流体(Ferrotec社が市販するEMG 805)0.13g、Optiva社が市販するTCF2色性染料の組合せ(Thin Crystal Film)3.40g、および界面活性剤(Sterling Optics社が市販するノニフェノールエトキシレート通称NPE)0.037gおよび蒸留水3.41gから成る混合物を作り調合した。
強磁性流体(固体)/染料(固体)の重量比は1:32である。塗膜組成物中の乾燥分の固体(界面活性剤を除く)の重量パーセントは次の通りであった:
− 染料: 97%
− 強磁性流体: 3%
次いでEssilor International社が市販するOrmaTMタイプの平行面ガラスを塩基性条件の下で、次の塩基性溶液中で4.5分間の処理を1回実施した:
− 50℃で5%炭酸ナトリウム
− 次いで水性溶液中のすすぎ洗い
【0048】
上の塗膜層組成物を双方の前処理済みガラス基材のそれぞれの上に速度500回転/分、加速度5000rpm/秒で10秒間のスピンコートにより堆積した。
次いで、一方の面を偏光塗膜層組成物の液膜で覆われたガラスを永久磁石の両極の間(空隙70mm、0.15テスラの磁場)に配置し、その磁場の配向は平行で、前記磁場の下で乾燥工程を室温で24時間実施した。
偏光塗膜層の厚みは0.89μmであった。
平行面ガラスの想定される偏光面に対して光が垂直に偏光されている場合に本発明による偏光性の固形の塗膜層による光の消滅が観察された。
より具体的には、双方のガラスのそれぞれのCRスペクトルについて、ISO 89803標準規格にしたがって実行した測定により決定した。
下の表3にCR測定結果を与えているがさらにこれは図5にも350nmから800nmの全波長域のスペクトルを示してある。
【0049】
【表3】

結果は本発明による固形の塗膜層が広範囲の波長域で優れた光−偏光特性を持つことを示している。
【0050】
<実施例5> 強磁性流体EMG 1111/Optiva社染料
本発明による偏光性の固形の塗膜層用の組成物を、強磁性流体(Ferrotec社が市販するEMG 1111)0.21g、Optiva社が市販するTCF2色性染料の組合せ(Thin Crystal Film)5.22g、および界面活性剤(Sterling Optics社が市販するノニフェノールエトキシレート通称NPE)0.060gおよび蒸留水5.22gから成る混合物を作り調合した。
強磁性流体(固体)/染料(固体)の重量比は1:12である。塗膜組成物の乾燥分の固体(界面活性剤を除く)の重量パーセントは次の通りであった:
− 染料: 92.5%
− 強磁性流体: 7.5%
次いでEssilor International社が市販するOrmaTMタイプの平行面ガラスは酸性条件の下で次の塩基溶液中で4.5分間の処理をおこなった:
− 50℃で5%炭酸ナトリウム
− 水による洗浄
【0051】
上の塗膜層組成物を双方の前処理済みガラス基材のそれぞれの上に速度500回転/分、加速度5000rpm/秒で10秒間のスピンコートにより堆積した。
次いで、一方の面を偏光塗膜層組成物の液膜で覆われたガラスを永久磁石の両極の間(空隙70mm、0.15テスラの磁場)に配置し、その磁場の配向は平行で、前記磁場の下で乾燥工程を室温で24時間実施した。
偏光塗膜層の厚みは0.72μmであった。
【0052】
平行面ガラスの想定される偏光面に対して光が垂直に偏光されている場合に本発明による偏光性の固形の塗膜層による光の消滅が観察された。
より具体的には、双方のガラスのそれぞれのCRスペクトルについて、ISO 89803標準規格にしたがって実行した測定により決定した。
表4にCR測定結果を与えているが、さらにこれは図6にも350nmから800nmの全波長域のスペクトルを示してある。
【0053】
【表4】

結果は本発明による固形の塗膜層が広範囲の波長域で優れた光−偏光特性を持つことを示している。
【0054】
<実施例6> Optiva社が市販する2色性染料の組合せおよび結合剤を含む本発明による偏光塗膜層
本発明による偏光性の固形の塗膜層用の組成物を、強磁性流体(Berlin Heart社が市販するMT25-31)、Optiva社が市販するTCF2色性染料の組合せ(Thin Crystal Film)、界面活性剤(Sterling Optics社が市販するノニフェノールエトキシレート通称NPE)、ポリマーPVA結合剤(ポリビニールアルコール)および蒸留水から成る混合物を次の様にして作り調合した:
PVA4g+蒸留水40gをガラスの小瓶に取り込む。PVAを水に完全に溶解するために混合物を80℃で3時間加熱した。
PVA/水の溶液10g、MT25-31を0.096g、Optiva社のTCF染料2.38gおよびNPEを0.066g加え混合物を調合した。
【0055】
次いでEssilor International社が市販するOrmaTMタイプの平行面ガラスの面を50℃で5%炭酸ナトリウム浴に浸漬し、次いで水浴内ですすぎ洗いして前処理をおこなった。
上の塗膜層組成物を前処理済み基材の上に速度500回転/分、加速度5000rpm/秒で10秒間のスピンコートにより堆積した。
当該溶液が堆積すると、一方の面を偏光塗膜層組成物の液膜で覆われたガラスを永久磁石の両極の間に実施例2の条件で配置し、磁石内で24時間室温で乾燥した。
実施例2の手順で得られた結果を下の表5に列挙している。
【0056】
【表5】

偏光効果を認めることができた。
【0057】
<実施例7> Optiva社が市販する2色性染料の組合せを含む本発明による偏光塗膜層
本実施例において本発明による偏光性の固形の塗膜層用の組成物は、事前に磁界に委ねたPVA/強磁性流体の最初の層の上に前記の層を堆積して調合した。
強磁性流体(Berlin Heart社が市販するMT25-31)、PVAおよび水を次の様にして混合物を調合した:
PVA4g+蒸留水40gをガラスの小瓶に取り込む。PVAを水に完全に溶解するために混合物を80℃で3時間加熱し、次いでPVA溶液を約30分間放冷した。
PVA/水の溶液15.3gをMT25-31 0.0157gに加えて混合物を作った。
次いでEssilor International社が市販するOrmaTM有機ガラスの面(倍率 −2.00ジオプトル)を50℃で5%炭酸ナトリウム浴に浸漬し、次いで水浴内ですすぎ洗いして前処理をおこなった。
【0058】
上の塗膜層組成物を前処理済み基材の上に速度500回転/分、加速度5000rpm/秒で10秒間のスピンコートにより堆積した。
当該溶液を堆積してから、ガラスを永久磁石の両極の間に実施例2の条件で配置し、磁石内で24時間室温で乾燥することでPVA/強磁性流体の固形の層を得た。
次いで染料溶液をOptiva TCF染料4gを蒸留水4gおよびNPE0.048gと混合して調合した。
この溶液をPVA/磁性流体の固形の層の上に速度1000回転/分、加速度5000rpm/秒で10秒間のスピンコートにより堆積された。
次いでガラスを室温で24時間乾燥した。
得られた最終ガラスの偏光特性を実施例2と同様の方法で測定した。
結果を表6に与える。
【0059】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】2色性染料を全く含まず、磁性粒子(Berlin Heart社市販のFerrofluid MT25-31)を含む塗膜を示し、顕微鏡写真はそれぞれ想定偏光面に対し平行(図1A)および想定偏光面に対し垂直(図1B)な偏光光源の透過を示している。
【図2】磁性粒子(Berlin Heart社市販のFerrofluid MT25-31)および2色性染料の組合せ(Sterling Optics社市販のVari-Light)を含む塗膜を示し、顕微鏡写真はそれぞれ想定偏光面に対し平行(図2A)および想定偏光面に対し垂直(図2B)な偏光光源の透過を示している。
【0061】
【図3】磁性体粒子(Berlin Heart社市販のFerrofluid MT25-31)および2色性染料の組合せ(Sterling社市販のVari-Light)を含む本発明による偏光塗膜層の350nmから800nmの範囲におよぶコントラスト比(CR)の値のスペクトルを示す。横軸には波長をナノメータで示す;縦軸はCR比の値である。
【図4】磁性体の粒子(Berlin Heart社市販のFerrofluid MT25-31)および2色性染料の組合せ(Optiva社市販のTCF)を含む本発明による偏光塗膜層の350nmから800nmにおよぶ範囲のコントラスト比(CR)の値のスペクトルを示す。横軸には波長をナノメータで示す;縦軸はCR比の値である。
【0062】
【図5】磁性体の粒子(Ferrotec社市販のFerrofluid EMG 805)および2色性染料の組合せ(Optiva社市販のTCF)を含む本発明による偏光塗膜層の350nmから800nmにおよぶ範囲のコントラスト比(CR)の値のスペクトルを示す。横軸には波長をナノメータで示す;縦軸はCR比の値である。
【図6】磁性体の粒子(Ferrotec社市販のFerrofluid EMG 1111)および2色性染料の組合せ(Optiva社市販のTCF)を含む本発明による偏光塗膜層の350nmから800nmにおよぶ範囲のコントラスト比(CR)の値のスペクトルを示す。横軸には波長をナノメータで示す;縦軸はCR比の値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒に懸濁した(i)少なくとも1種類の磁性体の粒子を含む光−偏光性の固形の塗膜組成物で、(ii)少なくとも1種類の2色性染料化合物を含むことを特徴とする、光−偏光性の固形の塗膜組成物。
【請求項2】
溶媒が水性溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種類の界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
磁性体が強磁性体またはフェリ磁性体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
フェリ磁性体粒子がFe2O3またはMがZn、Cd、Fe、Ni、Cu、Co、Mg、CrまたはMnを表す化学式MO.Fe2O3から成る粒子から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
2色性染料化合物が、4−アミノ−3−((4’−((1−ヒドロキシ−4−スルホ−2−ナフタレニル)アゾ)−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)−4−イル)アゾ)−1−ナフタレンスルホン酸ジナトリウム塩、C32H30N5NaO8S2(ダイレクトバイオレット51)、C34H28N6O16S4.4Na(シカゴスカイブルー6B)、C22H16N4O−4−[4−(フェニルアゾ)−1−ナフチルアゾ]フェノール(ディスパースオレンジ13)、Optiva社市販のTCFTM(Thin Crystal Film)およびSterling社市販のVari-LightTM溶液#2P染料から選ばれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
2から4種類の異なる2色性染料化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤化合物がEFKA 3034 およびノニフェノールエトキシレート(NPE)から選ばれることを特徴とする、請求項3〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
磁性粒子の2色性染料に対する乾燥物の重量比が1:1から1:100、好ましくは1:5から1:50、およびさらに好ましくは1:7から1:33の範囲であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
組成物の重量に対する少なくとも1種類の磁性体の粒子の量の変化が0.1から1%、好ましくは0.3から0.8%までであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種類の磁性体の粒子が球形粒子であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種類の磁性体の粒子の平均粒径の範囲が0.001μmから0.3μm、好ましくは0.003μmから0.2μm、および最も好ましくは0.005μmから0.1μmであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
組成物の重量に対する2色性染料の量の変化が1から10%、好ましくは4から6%までであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
組成物の全重量に対し界面活性剤化合物が重量で0.5から2%を占めることを特徴とする、請求項3〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種類のオリゴマーまたはポリマーの結合剤を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
結合剤がポリビニールアルコールであることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
モノマー、オリゴマーまたはポリマーの形で2色性染料の配向を引き起こす中継化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
中継化合物が液晶であることを特徴とする、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
少なくとも一方の面が光−偏光性の固形の塗膜層で覆われる光学製品を生産する方法で、前記方法が:
a)溶媒中に分散された磁性粒子を含む偏光性の固形の塗膜組成物の液膜を、剥き出しかまたは1種類以上の機能性塗膜層で覆われた光学製品の表面に適用し;
b)ステップa)の終わりに得られる様な、組成物の液膜で覆われた前記光学製品を磁場の作用に曝し、次いで
c)前記膜の乾燥をおこなう
ステップから構成され、少なくとも1種類の2色性染料化合物が、ステップa)中の前記の液膜内に存在するかまたはステップc)の後で前記の膜の表面に適用される、好ましくはステップa)を実行中の前記の液膜内に存在することを特徴とする、光学製品を生産する方法。
【請求項20】
ステップc)における前記の膜の乾燥が、少なくとも部分的には前記磁場の作用と同時に行われることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
光−偏光性の固形の塗膜層を固定する付加的なステップd)を含むことを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
ステップa)に先だって、光学ガラスの表面に対する酸または塩基による前処理ステップを含むことを特徴とする、請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ステップd)の後に、またはステップd)が省かれる場合はステップc)の後に、偏光性の固形の塗膜層に1種類以上の塗膜層を塗膜する1つ以上の付加的なステップを含むことを特徴とする、請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
少なくともその一方の面を(i)磁性体の粒子および(ii)2色性染料化合物からできた配合を含む光−偏光性の固形の塗膜層で覆われる、光−偏光光学製品。
【請求項25】
偏光性の固形の塗膜が請求項1〜18のいずれかに記載の組成物から得られることを特徴とする、請求項24に記載の光−偏光光学製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−516268(P2008−516268A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534066(P2007−534066)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050800
【国際公開番号】WO2006/037916
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(594116183)エシロール アテルナジオナール カンパニー ジェネラーレ デ オプティック (69)
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL COMPAGNIE GENERALE D’ OPTIQUE
【Fターム(参考)】