説明

光を分割する光学素子の検査装置及び光を分割する光学素子の検査方法

【課題】
ビームスプリッタのような光を分割する光学素子で透過及び反射した2つのレーザ光に発生する波面収差を精度よく効率的に測定することが可能な光を分割する光学素子の検査装置及び光を分割する光学素子の検査方法を提供することにある。
【解決手段】
レーザ光を出射するレーザ光出射手段と、レーザ光を入射してレーザ光の波面収差を測定する波面収差測定手段と、レーザ光出射手段から出射されたレーザ光を被検査物である光を分割する光学素子に導き、被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光を波面収差測定手段に導く光学系手段と、光学系手段に設けられ、被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光のうち、選定されたレーザ光が波面収差測定手段に入射するようレーザ光を遮断又はレーザ光の光路を変更するレーザ光選定手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビームスプリッタのような光を分割する光学素子の検査装置及び光を分割する光学素子の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入射した光を透過と反射との2つのビームに分割(分岐)する光学素子として例えばビームスプリッタは多くの装置に使われている。ビームスプリッタは、入射ビームに対して45°の角度にビーム分岐面が配置され、透過する光は入射ビームと平行になり、反射する光は入射ビームに対し直角になる。ビームスプリッタにはいくつかの構造タイプがあるが、直角プリズムを二つ貼り合わせた構造であれば、接合面には誘電体多層膜や金属薄膜のコーティングが施され、コーティングの厚さ等により透過と反射の2つのビームの光量を調整することができる。
【0003】
このような光学素子であるビームスプリッタの検査としては、例えば特許文献1に示されているように、透過と反射の2つのビームの振れ角や透過率、反射率を測定することが行われている。
【特許文献1】特開昭63−153442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のビームスプリッタのような光学素子の検査方法では、検査結果が許容値以下で良品とされたビームスプリッタであっても、ビーム分岐面における面の歪みやコーティングの厚さムラ等により透過と反射の2つのビームに波面収差が発生することがあり、ビームスプリッタが使われる装置によってはその波面収差が許容できない量である可能性があるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ビームスプリッタのような光を分割する光学素子で透過及び反射した2つのレーザ光に発生する波面収差を精度よく効率的に測定することが可能な光を分割する光学素子の検査装置及び光を分割する光学素子の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の光を分割する光学素子の検査装置は、レーザ光を出射するレーザ光出射手段と、レーザ光を入射してレーザ光の波面収差を測定する波面収差測定手段と、レーザ光出射手段から出射されたレーザ光を被検査物である光を分割する光学素子に導き、被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光を波面収差測定手段に導く光学系手段と、光学系手段に設けられ、被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光のうち、選定されたレーザ光が波面収差測定手段に入射するようレーザ光を遮断又はレーザ光の光路を変更するレーザ光選定手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の光を分割する光学素子の検査装置は、レーザ光選定手段が、少なくとも2つのシャッタとシャッタの開閉を制御するシャッタ開閉制御手段とから構成されることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の光を分割する光学素子の検査装置は、レーザ光選定手段が、ミラーとミラーの移動を制御するミラー移動制御手段とから構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の光を分割する光学素子の検査装置は、レーザ光出射手段から出射されたレーザ光の偏光状態を直線偏光から円偏光にする偏光状態可変手段を、レーザ光出射手段から被検査物である光を分割する光学素子までのレーザ光の光路上に配置可能にしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の光を分割する光学素子の検査装置は、レーザ光出射手段から出射されたレーザ光並びに被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光の光束径を変化させる光束径可変手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の光を分割する光学素子の検査装置は、レーザ光出射手段から出射されたレーザ光を、被検査物である光を分割する光学素子がない状態で、被検査物である光を分割する光学素子がある場合と同じ光路で波面収差測定手段に導く波面収差補正用光路手段と、波面収差補正用光路手段によりレーザ光を波面収差測定手段に導いたときの波面収差測定手段にて測定したレーザ光の波面収差に基づき、波面収差測定手段にて被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光の波面収差を測定した結果を補正する波面収差補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の光を分割する光学素子の検査装置は、波面収差測定手段が、シャックハルトマンセンサであることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の光を分割する光学素子の検査方法は、出射されたレーザ光を被検査物である光を分割する光学素子に導き、被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光のうちいずれかのレーザ光を、レーザ光を遮断又はレーザ光の光路を変更することで選定し、選定されたレーザ光の波面収差を測定することを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の光を分割する光学素子の検査方法は、出射されたレーザ光の波面収差を被検査物である光を分割する光学素子がない状態で、被検査物である光を分割する光学素子がある場合とレーザ光の光路を同じにして測定し、測定された波面収差に基づき、被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光の波面収差を測定した結果を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項8の発明によれば、光を分割する光学素子で透過及び反射したレーザ光の波面収差を測定する際、透過及び反射したレーザ光のどちらかを選定して波面収差を測定するようにしたことから、透過及び反射した2つのレーザ光に発生する波面収差を効率的に測定することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、透過及び反射したレーザ光のどちらかを選定する手段を、少なくとも2つのシャッタとシャッタの開閉を制御する手段とから構成することにより、透過及び反射したレーザ光のうち、波面収差を測定するレーザ光を効率的に選定することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、透過及び反射したレーザ光のどちらかを選定する手段を、ミラーとミラーの移動を制御する手段とから構成することにより、透過及び反射したレーザ光のうち、波面収差を測定するレーザ光を効率的に選定することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、レーザ光が被検査物に入射する前にレーザ光の偏光状態を直線偏光から円偏光にする手段を設けたことから、光を分割する光学素子が偏光ビームスプリッタであっても、レーザ光の偏光状態を直線偏光から円偏光にすることで、透過するレーザ光の強度と反射するレーザ光の強度をほぼ等しくでき、レーザ光に発生する波面収差を精度よく測定することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、出射したレーザ光と被検査物で透過及び反射したレーザ光の光束径を変化させる手段を設けたことから、光を分割する光学素子の大きさに合わせてレーザ光の光束径を変化させたうえで、波面収差測定手段に入射するレーザ光の光束径を一定にすることができ、レーザ光に発生する波面収差を精度よく測定することができる。
【0020】
請求項6及び請求項9の発明によれば、測定した波面収差から被検査物以外により発生する波面収差を除外する補正を行う手段を設けたことから、光を分割する光学素子で透過及び反射した2つのレーザ光に発生する波面収差を精度よく測定することができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、波面収差を測定する手段をシャックハルトマンセンサにすることにより、光を干渉させる系が不要であるため、装置の構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明の形態における光を分割する光学素子の検査装置は、例えばビームスプリッタのような光学素子を検査するための装置である。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第1の実施例を示す構成図である。図2は、実施例1のビームスプリッタ検査装置において補正用のレーザ光波面を求める方法を示す説明図である。ビームスプリッタ検査装置1は、光を分割する光学素子であるビームスプリッタObを検査する検査装置である。ビームスプリッタ検査装置1は、レーザ光源10、コリメートレンズ12、1/4波長板14、ハーフミラー16、ビームエキスパンダ18a,18b、シャッタ20,24、ミラー22,26、シャックハルトマンセンサ30、コントローラ40、画像生成装置42、入力装置44、モニタ装置46等で構成されている。
【0024】
レーザ光源10は、半導体レーザで構成されており、コントローラ40によりレーザ光の出射と出射停止を制御され、所定波長で直線偏光の偏光方向を有するレーザ光を出射する。直線偏光の偏光方向は、後述する1/4波長板14の進相軸及び遅相軸から45°の方向にある。コリメー卜レンズ12は、レーザ光源10から出射されたレーザ光(発散光)を平行光にする。1/4波長板14は、後述する被検査物であるビームスプリッタObが偏光ビームスプリッタであるときレーザ光の光路上にセットされる。レーザ光は、直線偏光の偏光方向が1/4波長板14の進相軸及び遅相軸から45°の方向にある状態で入射するので、透過した後はレーザ光は円偏光になる。
【0025】
ハーフミラー(透過光と反射光の割合が1:1のビームスプリッタ)16は、入射したレーザ光のおよそ半分を透過し、およそ半分を入射方向に直交する方向に反射させる。検査に用いられるレーザ光は、レーザ光源10側から入射したレーザ光の内透過した半分のレーザ光であり、後述する被検査物であるビームスプリッタOb側から入射したレーザ光の内反射した半分のレーザ光である。レーザ光源10側から入射したレーザ光で反射したレーザ光及びビームスプリッタOb側から入射したレーザ光で透過したレーザ光はそのままにされ検査には用いられない。
【0026】
ビームエキスパンダ18a,18bは、レーザ光源10側から入射したレーザ光の光束径を後述する被検査物であるピームスプリッタObの大きさに合った光束径に変え、ビームスプリッタOb側から入射したレーザ光の光束径を元の光束径に変える。ビームエキスパンダ18a,l8bの2つのレンズを交換することでレーザ光の光束径を様々に変化させることができる。
【0027】
被検査物のビームスプリッタObは、ビームエキスパンダ18a,18bで光束径を変えられたレーザ光を入射し、所定の比率のレーザ光を反射し、所定の比率のレーザ光を透過させる。被検査物のビームスプリッタObが偏光ビームスプリッタであるときは、円偏光が入射するため略半分のレーザ光が反射および透過する。そして、反射したレーザ光は、シャッタ20を介してミラー22で反射し元の光路を戻って、被検査物のビームスプリッタObに入射する。また、透過したレーザ光は、シャッタ24を介してミラー26で反射し元の光路を戻って、被検査物のビームスプリッタObに入射する。
【0028】
ミラー22,26で反射し、ビームスプリッ夕Obに入射したレーザ光も所定の比率のレーザ光が反射し、所定の比率のレーザ光が透過する。検査に用いられるレーザ光は、ハーフミラー16側に向かうレーザ光であり、ミラー22側から入射したレーザ光で透過したレーザ光及びミラー26側から入射したレーザ光で反射したレーザ光は、そのままにされ検査には用いられない。即ち、検査に用いられるレーザ光は、ハーフミラー16で透過、ビームスプリッタObで反射、ミラー22で反射、ビームスプリッタObで反射、ハーフミラー16で反射のレーザ光(以下、ビームスプリッタObの反射レーザ光という)と、ハーフミラー16で透過、ビームスプリッタObで透過、ミラー26で反射、ビームスプリッタObで透過、ハーフミラー16で反射のレーザ光(以下、ビームスプリッタObの透過レーザ光という)の2つである。
【0029】
尚、被検査物のビームスプリッタObが偏光ビームスプリッタであるときは、レーザ光源10側から入射したときに反射し、ミラー22で反射したレーザ光は大部分が反射し、レーザ光源10側から入射したときに透過し、ミラー26で反射したレーザ光は大部分が透過する。シャッタ20,24は、開閉がコントローラ40により制御され、どちらか1つのシャッタを閉状態にすることで、ビームスプリッタObの反射レーザ光及びビームスプリッタObの透過レーザ光のどちらかを後述するシャックハル卜マンセンサ30に入射させ、検査を行うことができる。
【0030】
レーザ光の検査は、ハーフミラー16で反射したレーザ光をシャックハル卜マンセンサ30に入射させ、波面を測定することで行われる。シャックハル卜マンセンサ30は、NDフィルタ32、マイクロレンズアレイ34、CCD撮像素子36で構成される。入射したレーザ光は、NDフィルタ32により適切な光量になり、マイクロレンズアレイ34によりCCD撮像素子36上に集光される。これによりCCD撮像素子36上には複数の点像が形成され、CCD撮像素子36は、この複数の点像に対応するビデオ信号を画像生成装置42に出力し、画像生成装置42は、コントローラ40からの指令があると同ビデオ信号に基づいてレーザ光の波面を計算し立体画像として表示するための立体画像データを生成し、レーザ光の波面収差を数値で表した評価値を計算してモニタ装置46に出力する。モニタ装置46は、この立体画像データに基づきレーザ光の波面の様子を立体画像として表示し、評価値を表示する。
【0031】
尚、画像生成装置42は、レーザ光の波面を計算する際、予め記憶されている同じ光路で被検査物のビームスプリッタObを透過又は反射しないときのレーザ光の波面により補正を行い、波面収差のないレーザ光が被検査物のビームスプリッタObのみを透過又は反射したときのレーザ光の波面を求める。言い換えれば、レーザ光源10が出射するレーザ光自体が持っている波面収差及びレーザ光がレーザ光源10から出射してからシャックハルトマンセンサ30に入射するまでの光路上にあるビームスプリッタOb以外の光学素子により発生する波面収差の合計の波面収差を求めて記憶しておき、この波面収差をビームスプリッタObが加わったときの波面収差から減算することでビームスプリッタObのみにより発生する波面収差を求めることを行う。
【0032】
このように構成されたビームスプリッタ検査装置1において、作業者はまず画像生成装置42に記憶させる補正用のレーザ光波面の測定を行う。作業者は、被検査物のビームスプリッタObをセットしないで入力装置44から透過レーザ光の波面測定に用いられる補正用のレーザ光波面測定を指示する。これにより、コントローラ40はレーザ光源10からレーザ光を出射させ、画像生成装置42にレーザ光の波面の計算と記憶を指示する。
【0033】
このときのレーザ光は、図2(a)に示すように、ビームスプリッタObの透過レーザ光を検査する場合と同じ光路でシャックハルトマンセンサ30に入射している。したがって画像生成装置42により計算されたレーザ光の波面は、検査対象のビームスプリッタObがある場合と同じ光路で検査対象のビームスプリッタObを透過しないときのレーザ光の波面である。画像生成装置42は、レーザ光の波面の計算結果をビームスプリッタObの透過レーザ光の波面を測定する際の補正用のレーザ光波面として画像生成装置42内に記憶する。
【0034】
次に、作業者は、被検査物のビームスプリッタObをセットする位置に波面収差の発生がないことが検査で確認されているミラー29をセットし、入力装置44から反射レーザ光の波面測定に用いられる補正用のレーザ光波面測定を指示する。これにより、コントローラ40はレーザ光源10からレーザ光を出射させ、画像生成装置42にてレーザ光の波面を計算する。このときのレーザ光は、図2(b)に示すように、ビームスプリッタObの反射レーザ光を検査する場合と同じ光路でシャックハルトマンセンサ30に入射している。したがって画像生成装置42により計算されたレーザ光の波面は、検査対象のビームスプリッタObがある場合と同じ光路で検査対象のビームスプリッタObで反射しないときのレーザ光の波面である。画像生成装置42は、レーザ光の波面の計算結果をビームスプリッタObの反射レーザ光の波面を測定する際の補正用のレーザ光波面として画像生成装置42内に記憶させる。尚、補正用のレーザ光波面は、短期の間には変化しないので補正用のレーザ光波面の測定は、定期的に行い、既存の記憶データを更新していけばよい。
【0035】
補正用のレーザ光波面の測定が終了するか、記憶されている補正用のレーザ光波面の更新が不要と判断すれば、作業者は被検査物のビームスプリッタObをセットし、入力装置44から検査の指示と、ビームスプリッタObの反射レーザ光及び透過レーザ光のどちらを検査するか指示する。これにより、コントローラ40は反射レーザ光の検査が指定されたときはシャッタ24を閉じ、透過レーザ光の検査が指定されたときはシャッタ20を閉じ、レーザ光源10からレーザ光を出射させ、画像生成装置42に補正に用いる補正用のレーザ光波面を指定したうえで、レーザ光の波面の計算を指示する。
【0036】
画像生成装置42は、CCD撮像素子36から入力したビデオ信号を用いてレーザ光の波面を計算し、次に記憶されている2つの補正用のレーザ光波面のうち、指定された補正用のレーザ光波面により補正を行い、立体画像として表示するための立体画像データを生成し、レーザ光の波面収差を数値で表した評価値を計算してモニタ装置46に出力する。モニタ装置46は、この立体画像データに基づきレーザ光の波面の様子を立体画像として表示し、レーザ光の波面収差の評価値を表示するので作業者は表示された立体画像と評価値を見て検査対象のビームスプリッタObの合否を判定する。または、波面収差の評価値の許容範囲を設定して画像生成装置42に記憶しておき、画像生成装置42が評価値の計算とともに合否を判定するようにしてもよい。
【実施例2】
【0037】
上記実施例1の形態は、様々な変形が可能である。上記実施例1では、シャックハルトマンセンサ30によりレーザ光の波面の測定を行ったが、シャックハルトマンセンサ30に替えて干渉計を用いてもよい。図3は、本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第2の実施例を示す構成図であり、干渉計を用いたビームスプリッタ検査装置の構成図である。本実施例2の上記実施例1と異なっている点は、シャックハルトマンセンサ30を除き、ミラー28,CCD撮像素子38を設けた点である。
【0038】
レーザ光源10から入射しハーフミラー16で反射したレーザ光は、ミラー28で反射し、ハーフミラー16を透過してCCD画像素子38に入射する。このとき、被検査物のビームスプリッタOb側からハーフミラー16に入射しハーフミラー16で反射してCCD撮像素子38に入射するレーザ光と干渉を起こす。これにより、CCD撮像素子38上には干渉縞が形成され、CCD撮像素子38は干渉縞の濃淡による強度のビデオ信号を出力する。画像生成装置42は、入力したビデオ信号に基づいて干渉縞の画像データを作成してモニタ装置46に出力し、モニタ装置46は干渉縞を表示する。さらに、画像生成装置42は、干渉縞の画像データからレーザ光の波面の立体画像データを作成して出力し、上記実施例1と同様、モニタ装置46にレーザ光の波面の様子を立体画像として表示する。
【0039】
この構成においては、レーザ光源10、コリメートレンズ12、1/4波長板14,ハーフミラー16及びミラー28は、波面収差が生じない(波面収差が許容限界内である)ものを用いる。このようにすれば干渉の結果生じる干渉縞は、ビームスプリッタOb側からハーフミラー16に入射するレーザ光の波面収差によるものとなる。尚、ミラー28の代わりに波面収差補正ミラーを用いることにより、レーザ光源10、コリメートレンズ12、ハーフミラー16で発生する波面収差を補正してハーフミラー16を透過してCCD撮像素子38に向かうレーザ光に波面収差が生じないようにしてもよい。
【0040】
この場合も画像生成装置42は立体画像データを作成するとともに波面収差の評価値を計算して出力し、モニタ装置46は立体画像と波面収差の評価値を表示するので上記実施例1同様、作業者は表示された立体画像と評価値を見て検査対象のビームスプリッタObの合否を判定することができる。また、本実施例の場合も上記実施例1と同様の方法により補正用のレーザ光波面を求めて画像生成装置42内に記憶しておき、干渉縞の画像データ及びレーザ光の波面の立体画像データを補正するようにする。
【実施例3】
【0041】
上記実施例1の形態においては、2つのシャッタ20,24の開閉によりビームスプリッタObの反射レーザ光及び透過レーザ光の波面をそれぞれ別々に測定したが、2つのシャッタ20,24に代えてミラーの移動によりビームスプリッタObの反射レーザ光及び透過レーザ光の波面をそれぞれ別々に測定するようにしてもよい。図4は、本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第3の実施例を示す構成図であり、ミラーの移動により反射レーザ光又は透過レーザ光の波面をそれぞれ別々に測定するビームスプリッタ検査装置の構成図である。
【0042】
レーザ光源10から出射され、コリメートンズ12で平行光となり被検査物のビームスプリッタObを透過したレーザ光は、そのままシャックハルトマンセンサ30に入射し、被検査物のビームスプリッタObで反射したレーザ光は、ミラー50,52,54で反射してシャックハル卜マンセンサ30に入射する。
【0043】
ミラー54は、水平移動ができる駆動機構にセットされており、駆動機構はコントローラ40からの指令によりミラー54を移動して2つの異なった位置にする。ミラー54が図4の実線で示された位置にあるときは、被検査物のビームスプリッタObを透過したレーザ光がシャックハルトマンセンサ30に入射し、ビームスプリッタObで反射したレーザ光は、ミラー54で反射してシャックハル卜マンセンサ30に入射しない方向に進む。
【0044】
ミラー54が図4の点線で示された位置にあるときは、被検査物のビームスプリッタObを透過したレーザ光は、ミラー54で遮断され、被検査物のビームスプリッタObで反射したレーザ光がミラー50,52,54で反射してシャックハル卜マンセンサ30に入射する。コントローラ40は、作業者が入力装置44から入力した、透過レーザ光の検査又は反射レーザ光の検査の指定に基づき、ミラー54を水平移動する駆動機構に指令を出力する。
【0045】
この場合も補正用のレーザ光波面を求めて記憶し、レーザ光の波面の補正を行う。補正用のレーザ光の波面を求めるときは、図5(a)のようにビームスプリッタObをなくしてミラー54をレーザ光の光路上にない位置にして、レーザ光をシャックハル卜マンセンサ30に入射させ、このとき画像処理装置42が取得したレーザ光の波面をビームスプリッタObの透過レーザ光の波面を測定する際の補正用のレーザ光波面とする。また、図5(b)のようにビームスプリッタObの位置に波面収差が発生しないミラー56をセットして、レーザ光をシャックハルトマンセンサ30に入射させ、このとき画像処理装置42が取得したレーザ光の波面を、ビームスプリッタObの反射レーザ光の波面を測定する際の補正用のレーザ光波面とする。画像処理装置42のデータ処理及びモニタ装置46の表示様式及び作業者が入力装置44から入力する指示はすべて上記実施例1と同様である。
【0046】
尚、本実施例3では、ビームエキスパンダーによりレーザ光の光束径を変化させると、シャックハル卜マンセンサ30に入射するレーザ光の光束径は一定でなくなるため、別のビームエキスパンダーによりレーザ光の光束径を元に戻す必要がある。よって本実施例3は、検査対象のビームスプリッタObが、ほぼ同じ大きさのものであるときに使用するのが望ましい。
【実施例4】
【0047】
上記実施例3においても、シャックハル卜マンセンサ30に代えて干渉計によりレーザ光の波面を測定するようにしてもよい。図6は、本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第4の実施例を示す構成図であり、実施例3におけるビームスプリッタの検査装置のシャックハルトマンセンサ30を干渉計60に代えたビームスプリッタ検査装置の構成図である。
【0048】
干渉計は、色々な方式のものを用いてもよいが、本実施例ではマッハツェンダー型の干渉計を用いている。干渉計60は、ハーフミラー61,69、ミラー64,65、集光レンズ62,63,66,68,ピンホール板67及びCCD撮像素子70から構成されており、入射するレーザ光をハーフミラー61で2つの異なる光路にそれぞれ導いた後、再び重ね合わせて干渉させ、入射したレーザ光の波面収差により発生する干渉縞を計測する。
【0049】
ハーフミラー61で反射したレーザ光は、ミラー65により直角方向に光路を変え、集光レンズ66により集光してピンホール板67にあるピンホール(4〜20μm)の周囲に集光された点像の中心部のみがピンホールにより透過する。これにより、レーザ光の波面収差は除去され、集光レンズ68で再び平行光になった後、ハーフミラー69で反射してCCD撮像素子70に参照光として入射する。ハーフミラー61を透過したレーザ光は、コンデンサレンズとしての集光レンズ62、リレーレンズとしての集光レンズ63を介してミラー64で反射し、ハーフミラー69を透過してCCD撮像素子70に被測定光として入射する。被測定光は、入射したレーザ光の波面収差が除去されず、参照光は入射したレーザ光の波面収差が除去されているため、2つのレーザ光の干渉の結果生じる干渉縞は入射したレーザ光の波面収差により発生することになる。
【0050】
本実施例4においては、CCD撮像素子70が出力するビデオ信号から、干渉縞、レーザ光の波面の立体画像及び波面収差の評価値を算出し表示する構成は実施例2と同じであり、補正用のレーザ光波面を求める方法は実施例3と同じである。尚、本実施例も実施例3同様、検査対象のビームスプリッタObが、ほぼ同じ大きさのものであるときに使用するのが望ましい。
【実施例5】
【0051】
上記実施例1においては、2つのシャッタ20,24の開閉によりビームスプリッタObの反射レーザ光及び透過レーザ光の波面をそれぞれ別々に検査する際、被検査物のビームスプリッタObで2回反射及び2回透過したレーザ光の波面を検査する構成にしたが、1回反射及び1回透過したレーザ光の波面を検査する構成にしてもよい。図7は、本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第5の実施例を示す構成図であり、2つのシャッタの開閉によりビームスプリッタObの反射レーザ光及び透過レーザ光の波面をそれぞれ別々に検査する際、ビームスプリッタObで1回反射及び1回透過したレーザ光の波面を検査するビームスプリッタ検査装置である。本実施例は、実施例3のビームスプリッタ検査装置3においてミラー54に代えて、シャッタ72,74,ハーフミラー76を設けた構成である。
【0052】
レーザ光源10から出射され、コリメートレンズ12で平行光となり被検査物のビームスプリッタObを透過したレーザ光は、シャッタ72を介してハーフミラー76を透過してそのままシャックハルトマンセンサ30に入射し、被検査物のビームスプリッタObで反射したレーザ光は、ミラー50,52で反射してシャッタ74を介してハーフミラー76で反射してシャックハルトマンセンサ30に入射する。この場合、上記実施例3と光学素子の配置のみが異なり、画像処理装置42のデータ処理及びモニタ装置46の表示様式及び作業者が入力装置44から入力する指示はすべて上記実施例3と同様である。また、補正用のレーザ光の波面を求める際、被検査物のビームスプリッタObを除いて波面測定し、被検査物のビームスプリッ夕Obの代わりに波面収差が発生しないミラー56をセットして波面測定する点も上記実施例3と同じである。
【0053】
また、この場合も実施例4同様、シャックハル卜マンセンサ30に替えて干渉計60を用いることができる。尚、本実施例5も実施例3,4同様、被検査物のビームスプリッタObが、ほぼ同じ大きさのものであるときに使用するのが望ましい。
【0054】
以上のように、上記実施例の光を分割する光学素子の検査装置であって、例えばビームスプリッタを検査するビームスプリッタ検査装置1〜5によれば、光を分割する光学素子で透過及び反射したレーザ光の波面収差を測定する際、透過及び反射したレーザ光のどちらかを選定して波面収差を測定するようにしたことから、透過及び反射した2つのレーザ光に発生する波面収差を効率的に測定することができる。
【0055】
また、透過及び反射したレーザ光のどちらかを選定する手段を、少なくとも2つのシャッタとシャッタの開閉を制御する手段とから構成することにより、透過及び反射したレーザ光のうち、波面収差を測定するレーザ光を効率的に選定することができる。
【0056】
さらに、透過及び反射したレーザ光のどちらかを選定する手段を、ミラーとミラーの移動を制御する手段とから構成することにより、透過及び反射したレーザ光のうち、波面収差を測定するレーザ光を効率的に選定することができる。
【0057】
さらに、レーザ光が被検査物に入射する前にレーザ光の偏光状態を直線偏光から円偏光にする手段を設けたことから、光を分割する光学素子が偏光ビームスプリッタであっても、レーザ光の偏光状態を直線偏光から円偏光にすることで、透過するレーザ光の強度と反射するレーザ光の強度をほぼ等しくでき、レーザ光に発生する波面収差を精度よく測定することができる。
【0058】
さらに、出射したレーザ光と被検査物で透過及び反射したレーザ光の光束径を変化させる手段を設けることで、光を分割する光学素子の大きさに合わせてレーザ光の光束径を変化させたうえで、波面収差測定手段に入射するレーザ光の光束径を一定にすることができ、レーザ光に発生する波面収差を精度よく測定することができる。
【0059】
さらに、測定した波面収差から被検査物以外により発生する波面収差を除外する補正を行う手段を設けることで、光を分割する光学素子で透過及び反射した2つのレーザ光に発生する波面収差を精度よく測定することができる。
【0060】
さらに、波面収差を測定する手段をシャックハルトマンセンサにすることで、光を干渉させる系が不要であるため、装置の構成を簡単にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明によれば、ビームスプリッタのような光を分割する光学素子で透過及び反射した2つのレーザ光に発生する波面収差を精度よく効率的に測定することが可能な光を分割する光学素子の検査装置及び光を分割する光学素子の検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】実施例1のビームスプリッタ検査装置において補正用のレーザ光波面を求める方法を示す説明図である。
【図3】本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第2の実施例を示す構成図である。
【図4】本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第3の実施例を示す構成図である。
【図5】実施例3のビームスプリッタ検査装置において補正用のレーザ光波面を求める方法を示す説明図である。
【図6】本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第4の実施例を示す構成図である。
【図7】本発明が適用されるビームスプリッタ検査装置の第5の実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0063】
1〜5・・・ビームスプリッタ検査装置
10・・・・レーザ光源
12・・・・コリメートレンズ
14・・・・1/4波長板
16・・・・ハーフミラー
18a,18b・・・ビームエキスパンダ
20・・・・シャッタ
22・・・・ミラー
24・・・・シャッタ
26・・・・ミラー
28・・・・ミラー
29・・・・ミラー
30・・・・シャックハルトマンセンサ
32・・・・NDフィルタ
34・・・・マイクロレンズアレイ
36・・・・CCD撮像素子
38・・・・CCD撮像素子
40・・・・コントローラ
42・・・・画像生成装置
44・・・・入力装置
46・・・・モニタ装置
50・・・・ミラー
52・・・・ミラー
54・・・・ミラー
56・・・・ミラー
60・・・・干渉計
61・・・・ハーフミラー
62・・・・集光レンズ
63・・・・集光レンズ
64・・・・ミラー
65・・・・ミラー
66・・・・集光レンズ
67・・・・ピンホール板
68・・・・集光レンズ
69・・・・ハーフミラー
70・・・・CCD撮像素子
72・・・・シャッタ
74・・・・シャッタ
76・・・・ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光出射手段と、
レーザ光を入射してレーザ光の波面収差を測定する波面収差測定手段と、
該レーザ光出射手段から出射されたレーザ光を被検査物である光を分割する光学素子に導き、該被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光を該波面収差測定手段に導く光学系手段と、
該光学系手段に設けられ、該被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光のうち、選定されたレーザ光が該波面収差測定手段に入射するようレーザ光を遮断又はレーザ光の光路を変更するレーザ光選定手段とを備えたことを特徴とする光を分割する光学素子の検査装置。
【請求項2】
前記レーザ光選定手段が、少なくとも2つのシャッタと該シャッタの開閉を制御するシャッタ開閉制御手段とから構成されることを特徴とする請求項1記載の光を分割する光学素子の検査装置。
【請求項3】
前記レーザ光選定手段が、ミラーと該ミラーの移動を制御するミラー移動制御手段とから構成されることを特徴とする請求項1記載の光を分割する光学素子の検査装置。
【請求項4】
前記レーザ光出射手段から出射されたレーザ光の偏光状態を直線偏光から円偏光にする偏光状態可変手段を、該レーザ光出射手段から前記被検査物である光を分割する光学素子までのレーザ光の光路上に配置可能にしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光を分割する光学素子の検査装置。
【請求項5】
前記レーザ光出射手段から出射されたレーザ光並びに前記被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光の光束径を変化させる光束径可変手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光を分割する光学素子の検査装置。
【請求項6】
前記レーザ光出射手段から出射されたレーザ光を、前記被検査物である光を分割する光学素子がない状態で、該被検査物である光を分割する光学素子がある場合と同じ光路で前記波面収差測定手段に導く波面収差補正用光路手段と、
該波面収差補正用光路手段によりレーザ光を該波面収差測定手段に導いたときの該波面収差測定手段にて測定したレーザ光の波面収差に基づき、該波面収差測定手段にて該被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光の波面収差を測定した結果を補正する波面収差補正手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光を分割する光学素子の検査装置。
【請求項7】
前記波面収差測定手段が、シャックハルトマンセンサであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光を分割する光学素子の検査装置。
【請求項8】
出射されたレーザ光を被検査物である光を分割する光学素子に導き、
該被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光のうちいずれかのレーザ光を、レーザ光を遮断又はレーザ光の光路を変更することで選定し、
該選定されたレーザ光の波面収差を測定することを特徴とする光を分割する光学素子の検査方法。
【請求項9】
出射されたレーザ光の波面収差を前記被検査物である光を分割する光学素子がない状態
で、該被検査物である光を分割する光学素子がある場合とレーザ光の光路を同じにして測定し、
該測定された波面収差に基づき、該被検査物である光を分割する光学素子にて透過及び反射したレーザ光の波面収差を測定した結果を補正することを特徴とする請求項8記載の光を分割する光学素子の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−168519(P2009−168519A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4819(P2008−4819)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】