説明

光アドレス可能なポリマーに基づく層構造体及び光導波路センサー

本発明は、少なくとも2つの層を含む光学層構造体、及び該層構造体に基づくセンサーに関する。層構造は、少なくとも1つの基材、少なくとも1つの(光)導波路層、及び光ビームをカップリングするカップリング素子を含んでなり、導波路層に隣接する層は、導波路層より小さい屈折率を有し、少なくとも1つの層は光アドレス可能なポリマーから作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アドレス可能なポリマーに基づく光学的に一体化された導波路センサー及びバイオセンサー又は化学センサーとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサー又は化学センサーは、信号変換器及び認識反応を利用して検体を定性的又は定量的に検出する器具である。認識反応は、非常に一般的には、検体と認識要素との特定の結合又は反応であると定義される。認識反応の例は、錯体への配位子の結合、イオンの錯化、(生物学的)受容体、膜受容体又はイオンチャンネルへの配位子(リガンド)の結合、抗原又はハプテン(部分抗原)の抗体への結合、基質の酵素への結合、DNA又はRNAのある種のタンパク質への結合、DNA/RNA/PNAのハイブリッド化、若しくは酵素よる基質のプロセシングである。検体は、イオン、タンパク質、天然又は合成抗原又はハプテン、ホルモン、サイトカイン、単糖類又は少糖類、代謝産物、又は診断に使用される他の生化学マーカー、酵素基質、DNA、RNA、PNA、潜在的活性成分、医薬、細胞、ビールスであり得る。認識要素の例は、金属/金属イオンの錯化剤、シクロデキストリン、クラウンエーテル、抗体、抗体断片、アンチカリン(Beste, G.; Schmidt, F.S.; Stibora, T.; Skerra A.; Proc. Natl. Acad. Sce. USA (1999)96, 1898-1903)、酵素、DNA、RNA、PNA、DNA/RNA結合タンパク質、酵素、受容体、膜受容体、イオンチャンネル、細胞接着タンパク質、ガングリオシド、単糖類又は少糖類である。
【0003】
このようなバイオセンサー又は化学センサーは、環境解析、栄養分野、ヒト又は動物の診断、及び作物保護において、検体を定性的及び/又は定量的に検出するために使用することができる。認識反応の特異性により、複雑な試料、例えば大気、汚染された水又は体液中の検体であっても、必要であるとしても簡単な予備的精製を行うだけで、定性的及び/又は定量的に検出することができる。加えて、バイオセンサー又は化学センサーは、(生)化学研究及び活性化合物の探索において、2つの異なる物質の間(例えば、タンパク質、DNA、RNA又は生物学的に活性な物質と、タンパク質、DNA、RNA等との間)の反応を調べるためにも、使用することができる。
【0004】
認識反応は、認識要素又は検体を信号変換器の表面に固定化することにより、信号変換器と組み合わせて、バイオセンサー又は化学センサーを提供することができる。認識反応、すなわち、検体と認識要素との結合又は反応の結果として、信号変換器の表面で直接媒体の光学的特性が変化し(例えば、光屈折率、吸収、蛍光、リン光、発光などの変化)、その変化が、信号変換器により測定できる信号に変換される。
【0005】
光導波路は、導波路層に接している媒体中の光学特性の変化を検出する信号変換器の1種である。光が伝導モードで導波路層中を伝播される場合、光照射野は、媒体/導波路界面で突然終了するのではなく、むしろ導波路に隣接する検出媒体中で指数関数的に減衰する。この指数関数的に減衰する光照射野は、エバネセント場と呼ばれる。導波路に接している媒体の光学的特性が、エバネセント場の中で変化する場合[例えば、光屈折率の変化(Tiefenthaler et al; US 4 815 843 (1989))、発光の変化(Kunz R.; US 5 442, 169 (1995))]、変化は、適当な測定装置を用いて検出することができる。媒体中の光学的特性の変化は導波路の表面に非常に近いところでのみ検出されることは、バイオセンサー又は化学センサーの信号変換器として導波路を使用することにとって極めて重要である。これは、導波路の界面への認識要素又は検体の固定化により、認識要素の結合又は認識要素上での反応は、検出媒体(液体、固体、気体)の光学的特性が導波路の界面で変化した時に、表面感受的に検出されることになるからである。
【0006】
実用化のためには、以下の要件が特に重要である;
簡単で経済的な製造(特に、「互換的方法」(compatible processes)による導波路の製造、及び必要なマクロ−、ミクロ−及びナノ構造の製作に関連して);
センサーの高感度;
バイオセンサーチップ上の測定野の小さい寸法;
良好な安定性[短期(小さいドリフト(特性変化))及び長期(良好な耐久性)]
【0007】
免疫測定は、最大10〜15分の培養時間及び最大1分の測定時間を必要とし;DNA測定は、95℃までの温度、16時間までの培養時間を必要とするが、測定には最大1分を要する。これら測定は、通常、主として水性媒体中で行われ、この場合、pHは、例えば5〜9であり、塩含量は1.5モル/Lまでである。とりわけ、チップは(暗所で)2年間貯蔵可能でなければならない。
【0008】
ポリマー被覆の場合に認識分子の適用には常に良好な適合性がある。これは、例えば、反応性基を、塗布前の合成段階で又は塗布後に、物理吸着又は化学吸着によって導入することができるからである。ポリマー表面のプラズマ処理及びその後の生体分子の物理吸着のようなプロセスが考えられる(例えば、最初にプラズマ処理され、次いでタンパク質により被覆されるマイクロタイタープレートの場合)。
【0009】
上記要件を満足する解決策に向けての1つの取り組みが、WO 01/06240に記載されている。しかしながら、この解決方法には、以下の欠点がある:
感度が、非常に長い光学距離を用いた場合にのみ十分大きくなる。提案された物質の屈折率は1.66未満と非常に小さいので、非常に長い測定距離が生じ、感度に関する要求と寸法に関する要求とを同時に満足することはできない。
【0010】
要求を満たすには、導波路の製造に、まず、導波路構造(層又は領域)に対しては非常の大きい屈折率(>1.7)を、及び伝送される波の進行方向に減衰される(エバネセント)野フラクションが伝播する隣接層又は領域に対しては非常に小さい屈折率(<約1.4)を有する材料を使用することが特に重要である。
【0011】
高い測定感度を達成することが主として重要であるから、過去数年間は、それを改良するために多大の努力が費やされてきた。解決策への取り組みの他の例は、文献及び特許明細書を参照して、以下で説明する。
【0012】
ガラス上の高屈折率無機層を使用することが考えられる。
その1つの例が、文献(K. Cottier, M. Wiki, G. Voirin, H. Gao, 及びR.E. Kunz, "Label-free highly sensitive detection of (small) molecules by wavelength interrogation of integrated optical chips", Sensors & Actuators B, vol 91/1-3 pp 241-251 (2003))に記載されている。セクション6に、製造方法が記載されている。その例では、まず、ガラス基板にリソグラフ法によって格子構造が形成され、次いで、五酸化タンタルの層が、導波路として作成され、その後、更なる工程において、カップリング構造が「局所的ディープエッチング」(localized deep etching)により製造される。
【0013】
既知の導波路の1つは、硬質誘電物質からなる。
従って、技術的に複雑な構造はフォトリソグラフィにより製造する必要がある。
このことにより、そのような導波路の製造コストが高くなる。
【0014】
ガラスを、プレス、キャスト及びエンボス加工によりにより構造化できることは知られているが、これらの加工方法は、非常に複雑で、制御するのが困難である。別の問題は、使用する工具の摩耗及び劣化である。
【0015】
従来技術では、非常に多くの方法工程、例えば、フォトリソグラフィ、エッチング、リフティングオフ、減圧下での霧化などが必要であり、加えて、各工程で、導波路に欠陥を生じることになる汚染物が混入する。例えば、格子(ナノ)構造が中断されている又は完全に存在しない(小)領域が発生して、格子カップリング効率の局所的変動が生じ、それが、特に蛍光センサー技術のためのチップ上の小さいスポットの場合、測定誤差の原因となる。
【0016】
また、カーボン基板上の高屈折率無機層も時々記載されている。
更に、カーボン基板上の高屈折率無機層もあり得る。そのようなチップは、例えば、文献[J. Duebendorfer, R.E. Kunz, G. Jobst, I. Moser 及びG. Urban, "Integrated Optical pH Sensor using Replicated Chirped Grating Coupler sensor Chips", Sensors and Actuators B, Vol. 50/3, 210-219 (1998)]及び[L.U. Kempen 及びR.E. Kunz, "Replicated Mach-Zehnder Interferometers with Focusing Grating Couplers for Sensing Applications", Sensors and Actuators B, Vol. 38-39, 295-299 (1997)]に記載されている。
【0017】
Duebendorferの文献では、センサーチップは、まず、格子構造を複製(レプリケーション)によりポリカーボネート基板にエンボスして製造され(同文献のセクション3参照)、次いで、チップは、二酸化チタン導波路層により被覆された。格子構造は、局所ごとに変化する格子定数を有するチャープ格子として形成された。
【0018】
Kempen らの文献は、Mach-Zehnder 干渉計、並びに集束カップリング及びデカップリング構造の両方を記載する。セクション3は、製造を記載する。この文献で、チップは、ポリカーボネート基板(フィルム)への複製により製造され、続いて、無機導波路層により被覆された。この例では、260nm厚のSiNx層が、プラズマ化学気相成長法(PECVD)により、ポリカーボネートの複製表面レリーフ上に堆積された。
【0019】
基材の複製は経済的であるが、そのような導波路の場合に屈折率層を被覆することは、高価であり、問題がある。導波路層の性質は最適ではない(欠点は、典型的な強い光散乱、孔、機械的応力である。)
【0020】
製造方法は複雑であり、特に、蒸着法自体、更に接着促進剤、バリア層などの形成は、複雑である。
【0021】
更なる問題には、ポリマー層の光吸収、異なる膨張係数に起因する層間の応力、化学的予備処理の際の層の剥離などが含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、導波路の2つの最も重要な特性、即ち簡単な製造、高感度を保ちながら、上記の欠点を解消できる検出プラットホームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、光学的に一体化された検出プラットホーム、及びその為の、光アドレス可能なポリマー(photoaddressable polymer(PAP))からなる少なくとも1つの層、より一般的には少なくとも1つの領域を有する層構造に関する。
【0024】
本発明は、
1つの基板層及び少なくとも1つの(光)導波路層並びに光ビームのカップリング用カップリング素子、特に光格子、プリズム又は導波路層の平面又は曲面上面を含んでなり、導波路層に隣接する層は導波路層より小さい屈折率を有する、少なくとも2つの層を有する光学的層構造体であって、少なくとも1つの層は光アドレス可能なポリマーからなることを特徴とする層構造体
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の光アドレス可能なポリマーは、好ましくは有機ポリマー又はオリゴマー、より好ましくは側鎖ポリマーである。
【0026】
側鎖ポリマーの主鎖は、以下の基本構造に由来する:ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリシリコーン、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン又はセルロース。ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリメタクリルアミドが好ましい。
【0027】
本発明のポリマー及びオリゴマーは、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも90℃のガラス転位温度を有する。ガラス転位温度は、例えば、B. Vollmer Grundriss der Makromolekularen Chemie, p. 406-410, Springer Verlag, Heidelerg 1962 に従って、測定することができる。
【0028】
本発明のポリマー及びオリゴマーは、ゲル透過クロマトグラフィ(ポリスチレンにより較正)により測定して、5000〜2000000g/モル、好ましくは8000〜15000000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0029】
本発明によれば、提供される光アドレス可能なポリマーの側鎖は、アゾ染料フラグメント、及び形状異方性を有する少なくとも1つの基(メソゲン)である。
【0030】
本発明において使用されるポリマーにおいて、アゾ染料は、ポリマー主鎖に、通常柔軟なスペーサを介して、共有結合される。アゾ染料は、電磁放射線と相互作用して、その空間的配置を変化させる。
【0031】
メソゲンは、通常、アゾ染料と同様に結合される。メソゲンは、受動的分子基として機能するので、必ずしも化学光を吸収する必要はない。従って、メソゲンは、上記の意味で光学活性(光能動的)ではない。光誘起複屈折を強め、光の作用の後に光誘起複屈折を安定化することが、メソゲンの役割である。
【0032】
化学光の照射後の染料の再配列は、例えば偏光吸収分光の検討から分かる。化学光により予め照射した試料を、UV/可視光分光計(例えば、CRAY 4G, UV/VIS 分光計)の2つの偏光子の間で染料の吸収のスペクトル領域において、調べる。試料をその法線の周りに回転し、偏光子の配置が、例えば直交位置で適切な場合、染料の再配列は、試料の角度の関数としての消光の強度プロフィールから得られ、従って、正確に決定できる。
【0033】
以下においてしばしば重大となる重要なパラメータは、分子の長軸の配列である。分子の長軸は、例えば、分子形状に関する分子モデル(例えば、CERIUS2)により決定することができる。
【0034】
電磁放射線と相互作用する基は、アゾ染料である。従って、本発明の物質は、少なくとも1つのアゾ染料を含む。
例えば、アゾ染料は、以下の式(I)の構造を有する:
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は非イオン性置換基である。
m及びnは、それぞれ独立に、0〜4、好ましくは0〜2の整数である。
X及びXは、-X1'-R又は-X2'-Rである。
ここで、X1'及びX2'は、それぞれ、単結合、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(RR)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-又は-(CNR-NR)-である。
R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、C-C20-アルキル、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル、C-C10-アリール、C-C20-アルキル-(C=O)-、C-C10-シクロアルキル-(C=O)-、C-C20-アルケニル-(C=O)-、C-C10-アリール-(C=O)-、C-C20-アルキル-(SO)-、C-C10-シクロアルキル-(SO)-、C-C20-アルケニル-(SO)-又はC-C10-アリール-(SO)-であるか、或いは
-X1'-R又は-X2'-Rは、それぞれ、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF又はCClであってよい。
R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリールである。
非イオン性置換基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、フェノキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリール、C-C20-アルキル-(C=O)-、C-C10-アリール-(C=O)-、C-C20-アルキル-(SO)-、C-C20-アルキル-(C=O)-O-、C-C20-アルキル-(C=O)-NH-、C-C10-アリール-(C=O)-NH-、C-C20-アルキル-O-(C=O)-、C-C20-アルキル-NH-(C=O)-又はC-C10-アリール-NH-(C=O)-を意味する。
アルキル、シクロアルキル、アルケニル及びアリール基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリールから成る群からの3個までの基により置換されていてよく、アルキル及びアルケニル基は直鎖又は分岐鎖であってよい。
ハロゲンは、弗素、塩素、臭素及び沃素、特に弗素及び塩素を意味する。
染料、特に式(I)のアゾ染料は、通常スペーサを介して、ポリマー骨格に共有結合される。例えば、その場合、X(又はX)はそのようなスペーサであり、特に式:
X1’-(Q)-T-S-
(ここで、X1’は、先に定義したとおりである。
Qは、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(RR)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-、-(CNR-NR)-、-(CH)-、p-又はm-C-、若しくは式:
【化2】

で示される2価の基である。
iは、0〜4の整数であり、i>1の場合、各Qは異なっていてよい。
Tは、-(CH)-であり、鎖は-O-、-NR-又は-OSiR10O-により中断されていてよい。
Sは、単結合、-O-、-S-又は-NR-である。
pは、2〜12、好ましくは2〜8,特に2〜4の整数である。
Rは、水素、メチル、エチル又はプロピルである。
R10は、メチル又はエチルである。
R〜Rは、先に定義したとおりである。)
で示されるものである。]
【0035】
ポリアクリレート又はポリメタクリレートに好ましい染料モノマーは、以下の式(II)を有する:
【化3】

(式中、Rは水素又はメチルであり、他の基はそれぞれ先に定義したとおりである。)
【0036】
特に好ましいモノマーは、以下の式(IIa)を有する:
【化4】

(式中,Xは、CN又は他の既知の電子吸引性基であり、Rは、好ましくはCNであり、R、S、T、Q、X1’及びR基、並びにi、m及びnはそれぞれ先に定義したとおりである。)
【0037】
例えば式(I)の染料に加えて、本発明の非晶質有機ポリマー又はオリゴマーは、異方性形状を持つ基を有していてもよい。そのような基も、通常スペーサを介して、ポリマー骨格に共有結合される。
【0038】
異方性形状を有する基は、例えば、以下の式(III)の構造を有する:
【化5】

(式中、Zは、式:
【化6】

又は
【化7】

で示される基である。
Aは、O、S又はN-C-C-アルキルである。
Xは、-X3'-(Q)j-T-S-である。
Xは、X4'-R13-である。
X3'及びX4'は、それぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(RR)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-又は-(CNR-NR)-である。
R、R及びR13は、それぞれ独立に、水素、C-C20-アルキル、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル、C-C10-アリール、C-C20-アルキル-(C=O)-、C-C10-シクロアルキル-(C=O)-、C-C20-アルケニル-(C=O)-、C-C10-アリール-(C=O)-、C-C20-アルキル-(SO)-、C-C10-シクロアルキル-(SO)-、C-C20-アルケニル-(SO)-又はC-C10-アリール-(SO)-である。
-X4'-R13は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF又はCClであってよい。
R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリールである。
Yは、単結合、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-O-、-NH-又は-N(CH)-である。
R11、R12及びR15は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、フェノキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリール、C-C20-アルキル-(C=O)-、C-C10-アリール-(C=O)-、C-C20-アルキル-(SO)-、C-C20-アルキル-(C=O)-O-、C-C20-アルキル-(C=O)-NH-、C-C10-アリール-(C=O)-NH-、C-C20-アルキル-O-(C=O)-、C-C20-アルキル-NH-(C=O)-又はC-C10-アリール-NH-(C=O)-である。
q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数、好ましくは0〜2の整数である。
Qは、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(RR)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-、-(CNR-NR)-、-(CH)-、p-又はm-C-、若しくは式:
【化8】

で示される2価の基である。
jは、0〜4の整数であり、j>1の場合、各Qは異なっていてよい。
Tは、-(CH)-であり、鎖は-O-、-N-R-又は-OSiR10O-により中断されていてよい。
Sは、単結合、-O-、-S-又は-N-R-である。
pは、2〜12、好ましくは2〜8,特に2〜4の整数である。
Rは、水素、メチル、エチル又はプロピルである。
R10は、メチル又はエチルである。]
【0039】
ポリアクリレート又はポリメタクリレートに対して形状異方性を有する基を持つ好ましいモノマーは、以下の式(IV)を有する:
【化9】

(式中、Rは、水素又はメチルである。他の置換基は先に定義したとおりである。)。
【0040】
アルキル、シクロアルキル、アルケニル及びアリール基は、更に、下記の群から選択される3個までの基により置換されていてよい:ハロゲン、シアノ、ニトロ、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリール。ただし、アルキル及びアルケニル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
ハロゲンは、弗素、塩素、臭素及び沃素、特に弗素及び塩素を意味する。
【0041】
形状異方性を有し、式(IV)で示されるモノマーで特に好ましいモノマーは、以下の式で表される:
【化10】

【0042】
これらの官能性モノマーに加えて、本発明のポリマー又はオリゴマーは、官能性モノマー、特に染料モノマーの割合を低下させるように主として機能するモノマーを含んでいてよい。この機能に加えて、そのような付加的モノマーは、ポリマー又はオリゴマーの他の性質、例えば、ガラス転位温度、液晶性、フィルム形成特性などにも有用であってよい。
【0043】
ポリアクリレート又はポリメタクリレートについては、そのようなモノマーは、下記式(V)のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである:
【化11】

(式中、Rは、水素又はメチルである。
Xは、-O-又は-(N-R15)-である。
R14及びR15は、それぞれ独立に、場合により分岐鎖していてもよいC-C20-アルキル、又は少なくとも1つの更なるアクリル基を有する基であるか、若しくはそれらが一緒になって架橋基-(CH)-(ここで、fは2〜6である)、-CH-CH-O-CH-CH-又は-CH-CH-N(R)-CH-CH-を形成する。
しかしながら、他のコモノマーも存在してよい。
【0044】
化合物II、IV及びVの割合は任意である。化合物IIの吸収係数に依存して、化合物IIの濃度は、特定の混合物に基づき、0.1〜100%である。化合物IIとIVの比は、100:0〜1:99、好ましくは100:0〜20:80、最も好ましくは100:0〜50:50である。
【0045】
ポリマー及びオリゴマーの構造により、式(II)の構造要素同士の分子間相互作用、又は式(IV)の構造要素及び式(V)の構造要素との分子間相互作用を、液晶状態の形成が抑制され、光学的等方性透明非散乱性フィルム、フォイル、板又は立方体が製造できるように、調節することができる。それにもかかわらず、分子間相互作用は、光の照射により、フォトクロミック側鎖及び非フォトクロミック側鎖の光化学誘導協同的指向再配列過程をもたらすのに十分なほど、強い。
【0046】
相互作用力は、好ましくは、式(II)の繰り返し単位の側鎖基間、又は式(IV)の繰り返し単位の側鎖基間で発生し、式(II)の側鎖の立体配置の光誘起変化が、他の側鎖基(IV)の協同的再配列として知られている、平行再配列を生じるのに十分である。
【0047】
光学等方性非晶質フォトクロミックポリマーにおいて、非常に高い光学異方性(0.4までのΔn)を誘起することもできる。
【0048】
化学光の影響により、ポリマー又はオリゴマーに整列状態(states of order)が生じ、光学的特性を変化、従って変調することができる。
【0049】
使用する光は、その波長が式(II)の繰り返し単位の吸収バンドの範囲、好ましくは長波長n-πバンドの範囲にある偏光である。
【0050】
70〜150℃、好ましくは100〜140℃の温度での偏光により整列された試料の熱処理により、光学異方性を更に増すことができる。
【0051】
ポリマー及びオリゴマーは、文献記載の方法、例えば、DD 276 297、DE-A 3 808 430、Macromolekulare Chemie 187, 1327-1334 (1984)、SU 887 574、Europ. Polym. 18, 561 (1982) 及びLiq. Cryst. 2, 195 (1987) に従って、製造することができる。
【0052】
特に適当な物質は、下記式(VI)〜(XI)で示されるポリマーの少なくとも1つを含む:
【化12】

【0053】
導波路物質として、光アドレス可能なポリマー(PAP)として知られる感光性ポリマーを使用することが特に好ましい。PAPは、非常に大きい屈折率の光誘起変化を示し、これは、入射光エネルギーにより目標どおりに調節することができる(可視光領域で屈折率nは1.3〜2.0、及び複屈折は好ましくは0.5より大)。そこで、均質PAP層では、照射により、異なる屈折率を有する領域を形成することができ、それ故に、光導波路として、或いは光のカップリング格子又はデカップリング格子として使用することができる。このようなことは、無機導波路では実現できない。このようにして、PAP層のみを照射して、間にある未照射領域により相互に光学的に分割された多くの分離された導波路を形成することができる。同じことがカップリング格子又はデカップリング格子にも当て嵌まり、1つのPAP層中に形成された、カップリング格子及び導波路からなる多くの個々にアドレス可能なセンサー領域を、非常に簡単でかつ柔軟に製造することができる。従って、PAP導波路は、複数の検体を異なる波長で同時に検出できる(多重)センサーアレーに非常に適している。
【0054】
あるいは、導波路層に直接適用されたPAP層は、カップリング格子又はデカップリング格子としてのみ使用することができる。屈折率の非常に敏感な光誘起変化により、吸収又は屈折率格子(相格子とも呼ばれる)を、PAP相の内部又は表面、即ち化学光に暴露されるPAP相の表面に対応する側面の近くの両方で、照射により、非常に簡単かつ経済的に、得ることができる。次いで、波は、有機又は無機物質からなっていてよい導波路層内を導かれる。この導波路層は、光格子が形成されたPAP層とは異なる光学特性を有するPAP物質であってよい。
【0055】
加えて、いくつかのPAP層は、ホログラフィック実験において、非常に顕著な表面格子を発現する。これは、PAPフィルム表面での規則的プロフィールとして生じ、センサーの為のカップリング/デカップリング格子として使用することができる。これは、温度安定性及び長期安定性を有する。PAP物質の吸収性は、広い波長範囲で調節することができるので、産業界で使用されるレーザ波長において、高い透明性(<3dB/cm)を達成することができる。
【0056】
PAP層の利点は、とりわけ光導波路及び格子構造の光誘起形成にある。このような構造を形成するために、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程が必要でない。
【0057】
PAPの薄層(10〜100nm)を、基本的に既知の方法、例えば、スピンコーティング、噴霧塗布、ナイフ塗布、浸漬などにより、適当な基材物質上に適用(塗布)することができる。このような方法は、高真空下での無機導波路の霧化(アトマイゼーション)又は蒸着に比べ、より簡単で安価である。
【0058】
一般的なポリマーとは異なり、PAPは、高い屈折率(n=2まで)を有しているので、高感度バイオセンサー又は化学センサーで使用するのに非常に適している。
【0059】
用途に依存するが、このようなPAP領域は、下記の機能の少なくとも1つを有する:
1.例えば、高感度(主)導波路を達成するための、非常に高い屈折率を有する領域の実現。層の、経済的で「適合性のある」製造。
2.付加的な方法工程が必要でない、PAP物質の直接照射によるナノ、ミクロ及びマクロ構造の、安価で簡単な実現。
【0060】
上記の機能により、プラットホーム上に領域を柔軟に規定でき、それは、非常に効率的にカップリング及びデカップリングすること(例えば、格子系センサー技術のため、並びにセンサー及び基準測定分野の規定)に役立つ。更に、構造は、例えば干渉計構造を実現するために、プラットホーム上の横断方向に規制された光波のために製造することもできる。
【0061】
本発明の主な利点は、製造コストの劇的な低減と製造の簡素化である。何故なら、ごく少ない方法工程のみが必要であり、少ない方法工程(例えば、認識層などの取り付け)の故に、製造時の層の品質は高い。例えば官能性基を共重合によりPAPに組み込むことができ、あるいは、表面のプラズマ処理によりタンパク質を吸着することもできる。マイクロタイタープレートの場合と同様、光化学による光誘起接着も可能である。
【0062】
高屈折率(領域)と低屈折率(領域)とを隣接させることも可能であり、両者は、ナノメートル範囲にあっても(例えば、形成された格子ナノ構造)、微視的又は巨視的範囲にあってもよい(例えば、ストリップ導波路の形成及びマイクロメートルからミリ及びセンチメートルの寸法を有するセンサーフィールドの規定)。
【0063】
光アドレス可能なポリマーが>1.65の屈折率、好ましくは>1.75の屈折率を有することを特徴とする層構造が好ましい。
また、導波路が複数の光誘起微視的及び/又は巨視的導光下部構造を有することを特徴とする層構造も好ましい。そのような下部構造は、周囲の領域の屈折率とは明らかに異なる屈折率を有する。
格子のみならず、導波路も、所望により、光誘起による形成されてよい。
【0064】
好ましい態様では、基材層は光学的に透明である。
本発明において、光学的に透明とは、450〜900nmの範囲の波長の放射線に対して、物質が少なくとも90%の透過率を有することを意味する。
【0065】
別の好ましい態様では、基材層は光学的に不透明であるが、基材層上に配置された付加的なバッファ層は光学的に透明である。
【0066】
層構造の好ましい形態では、カップリング素子は格子である。
カップリング素子は、光アドレス可能なポリマーを有する層に配置されていることが、特に好ましい。
【0067】
更に、導波路層が光アドレス可能なポリマーに基づいている層構造も好ましい。
特に好ましくは、導波路層が五酸化タンタル、二酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される単一化合物又はこれらの混合物、特に酸化チタンに基づいている層構造である。
特に好ましい層構造の例では、異なる格子定数を有する複数の格子がカップリング素子として存在する。
【0068】
本発明の好ましい態様では、導波路層の屈折率は、>1.6、より好ましくは>1.67である。
【0069】
層構造の有利な構造は、導波路層の層厚が導波路内を伝送される放射線の波長より小さい構造である。
とりわけ好ましいのは、導波路層が単一モード動作で作動し得る層構造である。
【0070】
層構造のさらに好ましい形態では、光ビームのデカップリングのためにデカップリングユニット、特に光格子が更に供給されている。
【0071】
層構造の特に好ましい形態では、導波路層の厚さは30〜300nmである。
【0072】
層構造の更に好ましい形態は、導波路層より小さい屈折率を有する中間層が導波路層と基材層との間に供給されていることを特徴とする。
この層構造の特に好ましい態様では、中間層は光学的に透明なポリマーに基づいている。
【0073】
特に好ましいのは、別の形態の層構造、すなわち、光アドレス可能なポリマーからなる層は、カップリング素子を含み、特にカップリング素子を有する層の上に配置された隣接層が導波路層であることを特徴とする層構造である。
【0074】
特に好ましい検出プラットホームは、透明基材、及び1つ又はそれ以上のPAPに基づく光学異方性層からなり、該層には、光導波路及び少なくとも1つの光格子構造からなる少なくとも1つのセンサー構造が1つ又はそれ以上の適切な照射工程により形成され、該構造は、PAPの未照射部分とは異なる屈折率を有するように異なっており、格子構造によりカップリングされた光は、導波路構造中を伝送され、導波路とそれに接触している試料との間の界面でのエバネセント(光減衰)野では、試料の光学的特性、例えば屈折率、発光、吸収などが、適当な検出装置により検出される。
【0075】
バイオセンサー又は化学センサーとして使用するのに好ましい一体化光導波路は、例えば、透明基材、及びPAPに基づく光学異方性層からなり、該層には、光導波路及び少なくとも1つの光格子構造からなる少なくとも1つのセンサー構造が1つ又はそれ以上の適切な照射工程により形成され、該構造は、PAPの残りの部分とは異なる屈折率を有するように異なっており、格子構造によりカップリングされた光は、全反射により又は伝導モードとして導波路構造中を伝送される。
【0076】
また、好ましいのは、透明基材からなり、該基材に、平面光導波路、及びPAPに基づく光学異方性薄層が適用されている検出プラットホームであり、該層には、少なくとも1つの光格子構造が1つ又はそれ以上の適切な照射工程により形成され、該構造は、PAPの残りの部分とは異なる屈折率を有するように異なっており、光は、格子構造により隣接する導波路にカップリングされ、導波路内を伝送され、導波路とそれに接触している試料との間の界面でのエバネセント野では、試料の光学的特性、例えば屈折率、発光、吸収などが、適当な検出装置により検出される。
【0077】
また、透明基材、及びPAPに基づく光学異方性層からなり、バイオセンサー又は化学センサーとして使用する一体化光導波路であって、該層には、光導波路及び少なくとも1つの光格子構造が1つ又はそれ以上の適切な照射工程により形成され、該構造は、PAPの残りの部分とは異なる屈折率を有するように異なっており、格子構造によりカップリングされた光は、全反射により又は伝導モードとして導波路構造中を伝送される光導波路も好ましい。
【0078】
好ましい検出プラットホームは、例えば、透明基材及びPAPに基づく光学異方性層からなり、該層には、光導波路及び少なくとも1つの光格子構造からなる少なくとも1つのセンサー構造が1つ又はそれ以上の適切な照射工程により形成され、該構造は、PAPの残りの部分とは異なる屈折率を有するように異なっており、格子構造によりカップリングされた光は、導波路構造中を伝送され、導波路とそれに接触している試料との間の界面でのエバネセント野は、発光性基材を励起して発光させ、空間に放射された光は適当な検出装置により検出される。
【0079】
とりわけ好ましい検出プラットホームは、透明基材及びPAPに基づく光学異方性層からなり、該層には、2つの光格子構造の間にある光導波路構造からなる少なくとも1つのセンサー構造が1つ又はそれ以上の適切な照射工程により形成され、該構造は、PAPの残りの部分とは異なる屈折率を有するように異なっており、格子構造によりカップリングされた光は、導波路構造中を伝送され、導波路とそれに接触している試料との間の界面でのエバネセント野は、発光性基材を励起して発光させ、導波路にバックカップリングされた光は、第2格子で再度デカップリングされて適当な検出装置により検出される。
【0080】
媒体の光学的特性の変化を導波路の表面に非常に近いところでのみ検出することは、バイオセンサー又は化学センサー中の信号変換器として導波路を使用することにとって、重要である。何故なら、導波路の界面での認識要素の固定化又は検体の固定化により、検出媒体(液体、固体、気体)の光学的特性が導波路の界面で変化する場合に、認識要素への結合又は認識要素の反応を表面感受的に検出することができるからである。
【0081】
透明基材、及びPAPに基づく光学異方性層からなる一体化光導波路であって、該層には、光導波路及び少なくとも1つの光格子構造からなる少なくとも1つのセンサー構造が1つ又はそれ以上の適切な照射工程により形成され、該構造は、PAPの残りの部分とは異なる屈折率を有するように異なっており、格子構造によりカップリングされた光は導波路構造中を伝送される光導波路が、特に好ましい。
【0082】
加えて、本発明は、センサー層、光源及び認識層、更に、本発明の層構造を含んでおり発光、散乱光、吸収又は屈折率の変換を検出する光学的検出器を含む、センサーを提供する。
【0083】
バイオセンサー又は化学センサーは、信号変換器(センサー層)及び認識反応によって、検体を定性的又は定量的に検出できる装置を意味する。認識反応は、ごく一般的には、認識要素との検体の特異的結合又は反応であると定義される。認識反応の例は、錯体への配位子の結合、イオンの錯化、(生物学的)受容体、膜受容体又はイオンチャンネルへの配位子の結合、抗原又はハプテンの抗体への結合、基質の酵素への結合、DNA又はRNAのある種のタンパク質への結合、DNA/RNA/PNAのハイブリッド化、又は酵素による基質のプロセッシングなどである。
【0084】
検体は、イオン、タンパク質、天然又は合成抗原又はハプテン、ホルモン、サイトカイン、単糖類又は少糖類、代謝産物、又は診断に使用される他の生化学マーカー、酵素基質、DNA、RNA、PNA、潜在的活性成分、医薬、細胞、ビールスなどである。認識要素の例は、金属/金属イオンの錯化剤、シクロデキストリン、クラウンエーテル、抗体、抗原断片、アンチカリン、酵素、DNA、RNA、PNA、DNA/RNA結合タンパク質、酵素、受容体、膜受容体、イオンチャンネル、細胞接着タンパク質、ガングリオシド、単糖類又は少糖類である。
【0085】
認識反応は、信号変換器、例えば本発明の層構造と、直接に又は有機中間層を介して、一体化でき、信号変換器の表面に認識要素又は検体を固定化することにより、バイオセンサー又は化学センサーを提供することができる。認識反応、即ち、検体と認識要素との結合又は反応により、信号変換器の表面に直接接する媒体の光学的性質の変化(例えば、屈折率、吸収、蛍光、燐光、発光などの変化)が生じ、この変化は、信号変換器により測定できる信号に変換される。
【0086】
本発明はさらに、環境解析、栄養分野、ヒト及び動物の診断、(生)化学研究及び活性化合物の探索において、生体分子、マーカー及び活性成分を分析するための、上記センサーの使用を提供する。
【0087】
このようなバイオセンサー又は化学センサーは、環境解析、栄養分野、ヒト又は動物の診断、及び作物保護において、検体を定性的及び/又は定量的に検出するために使用することができる。認識反応の特異性により、複雑な試料、例えば大気、汚染された水又は体液中の検体であっても、必要であるとしても簡単な予備的精製を行うだけで、定性的及び/又は定量的に検出することができる。加えて、バイオセンサー又は化学センサーは、(生)化学研究及び活性化合物の探索において、2つの異なる物質の間(例えば、タンパク質、DNA、RNA又は生物学的に活性な物質と、タンパク質、DNA、RNA等との間)の反応を調べるためにも、使用することができる。
【0088】
本発明は、本発明のセンサーを用いて生体分子を認識する方法も提供する。
【0089】
以下、添付図面を参照して、実施例により本発明を詳細に説明する。
図1a〜fは、本発明の層構造の種々の形態を模式的に示す図である。
【0090】
図2は、図1(a)の層構造のセンサー感度、即ち、本発明に従って屈折計法センサーチップを実現するために、基礎層構造上に付加的に配置された(生)化学付加層の厚さhlの変更に対する実効屈折率Nの変化(例えば、検体媒体(屈折率nc=1.33)からの分子の吸着による)を示す図である。他のデータは以下のとおりである:基材2は、屈折率ns=1.521を有するガラスから成る;感度曲線は、屈折率nf=1.6/1.75/1.95/2.15/2.35を有する導波路層1について、フィルム厚hfの関数として示される。結果は、633nmの波長を有するTM0モードの伝播について有効である。この図は、1.6よりも明らかに大きい屈折率nfを有する層1を用いることが重要であることを明瞭に示している。この図から、それぞれの場合、層1の最適厚さが読み取れ、また、達成できる最大感度も読み取れる。
【0091】
図3は、発光中心(例えば分子)の蛍光発光の導波路へのカップリング係数を示す図である。カップリング係数の正確な定義は文献(G. Voirin ら、"Si3N4/SiO2/Si waveguide grating for fluorescent biosensors", Proc. SPIE, Vol. 3620 (1999))に記載されている。層構造データは、図2の場合と同じであり、即ち、同じ層構造を、導波路表面の近傍にある中心の蛍光発光を測定する目的で蛍光系センサーに使用されるセンサーチップを実現するために使用する。
【0092】
係数は、導波路へ放射された蛍光放射の割合の指標である。即ち、係数2×以上は、導波路に2×以上大きいエネルギーが入ったことを意味する。分子は導波路上に直接配置されているものと推定した。図3(a)は、波長633nmにおいてTMモードでの放射についての蛍光カップリング係数を示し、一方、図3(b)は、TEモードでの放射についての係数を示す。例えば層屈折率nf=1.95について図3の(a)と(b)とを比較すると、TMモード(約180nmの層厚hfで、約1の最大係数)における放射は、TEモード(約90nmの層厚で、約0.3の最大係数)より約3×以上効率的であることが示される。この例は、カップリング格子を有さない導波路の領域について有効である。
【実施例】
【0093】
図1(a)は、層構造の1つの形態を示し、この形態では、PAP層1は同時に導波路層であり、光学的に透明な基材2上に直接適用された。層構造3は、層1中に直接形成された。製造のため、たった2つの工程、即ち、層1の適用、及び格子構造3の照射(により形成)しか必要でない。基材に好ましい材料はプラスチック及びガラスである。
【0094】
図1(b)は、変形例を示し、この例では、高屈折率を有する更なる層4が、PAP層1と基材との間に配置されている。この変形例の利点は、層1の特性を、格子構造3の最適形成に適合させることができ、高屈折率ポリマー層を導波路層4に使用でき、その性質は、導波路層を進行しているモードの低減衰及び/又は低散乱に関して最適化できることである。層4は、PAP層であってもよいが、そうである必要はない。層1及び4の屈折率は、同じであっても異なっていてもよい。しかし、層4は基材層2よりも高い屈折率を有すべきである。
【0095】
図1(c)は、層1及び4の順序を逆にした変形例を示す。実質的に、図1(b)について説明したのと同じ内容が当てはまるが、層1は基材層2よりも高い屈折率を有すべきである。ある用途にとっては、層4の表面特性を、生化学的認識層のカップリングに対して特に最適化し、一方、層1を、高屈折率及び格子構造3の形成に対して最適化することができるという利点が生じ得る。更に、カップリング構造3によりPAP層を環境の影響から保護することも利点である(この例では、層1は検体媒体と接触せず、検体媒体は層4のみと接触する)。
【0096】
図1(d)は、光学的に透明なバッファ層5を層1と基材2との間に配置した例を示す。この例では、PAP層1は、導波路層であり、バッファ層5は、基材2と層1との間を分離する機能を有していて、エバネセント波は、基材2中ではなく、層1の下の層5中を伝播する。この配置の利点は幾つかある。例えば、選択されるバッファ層の屈折率は非常に小さくてよいので、エバネセント波は、検体側(層1の上)の検体媒体に十分浸透し、従って、導波路表面の近傍のより大きい領域を試料容積として規定することができる。そのような配置は、反転対称導波路とも呼ばれ、Horvathらにより記載されている(Appl. Phys. Lett., Vol. 81/12, pp. 2166-2168 (2002年9月16日)参照)。用途及び製造方法に依存するが、更なる利点は、基材層が透明である必要はないことであろう。例えば、シリコン、III〜V化合物又は光電子ポリマーのような半導体も使用でき、従って、能動電気回路が基材中に実現され、それは、センサー信号を評価するために使用することができる(光学的読み出し用検出器も基材に直接形成できる)。しかしながら、金属又は他の材料を使用することも可能であり、即ち、センサーチップは、どのような基材にも適用できる。この場合、信号の光学的読み出しは層1の側でも、あるいは、基材層2中のスルーホール又は透明領域でも、行うことができる。
【0097】
図1(e)は、図1(d)の例のより複雑な変形例であり、高い屈折率を有する層4が層5とPAP層1との間に使用されている。異なる形態も可能である。カップリング構造3の製造及び認識層の形成のために、層1を最適化することも特に重要であり、一方、層4は、導波路として最適化することができる。他の利点は、図1(d)の配置の場合と同じである。特に、非透明性基材を使用でき、それにより、付加的な利点が生じる。
【0098】
図1(f)は、更なる変形例を示し、使用する導波路層は、高屈折率無機層6である。多くの材料から選択することが可能であり、例えば、五酸化タンタル、二酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ及び酸化ジルコニウムからなる群から選択でき、これらは単独で又は混合物として使用される。特に五酸化タンタルが使用される。この変形例は、とりわけ、2.3よりも大きいことがある非常に高い屈折率も利用可能であるので、最も高い感度を達成できるという利点を有する。更に、これらの層は、非常に良好な品質で製造できる。更なる利点は、基材層2も層6も、従来の層構造では高いコストを必要とした先に述べたような構造化が必要ないことである。図示した変形例では、カップリング構造3は、更なる方法工程を用いずに、PAP層1中に形成できる。この場合でさえ、非常に少ない工程、即ち、(i)基材2上への層6の堆積、(ii)層1の堆積、及び(iii)照射によるカップリング構造3の形成しか、必要でない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1a〜fは、本発明の層構造の種々の形態を模式的に示す図である。
【図2】図1(a)の層構造のセンサー感度を示す図である。
【図3】発光中心(例えば分子)の蛍光発光の導波路へのカップリング係数を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1:PAP層、2:基材、3:層構造、4:導波路層、5:バッファ層、6:無機層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの基板層及び少なくとも1つの(光)導波路層並びに光ビームのカップリング用カップリング素子、特に光格子、プリズム又は導波路層の平面又は曲面上面を含んでなり、導波路層に隣接する層は導波路層より小さい屈折率を有する、少なくとも2つの層を有する光学的層構造体であって、少なくとも1つの層は光アドレス可能なポリマーからなることを特徴とする光学層構造体。
【請求項2】
基板層が光学的に透明である請求項1に記載の層構造体。
【請求項3】
基板層は光学的に不透明であるが、付加的な光学的透明バッファ層5が不透明基板層上に配置されている請求項1に記載の層構造体。
【請求項4】
光アドレス可能なポリマーが、有機物質ポリマー又はオリゴマー、好ましくは側鎖ポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載の層構造体。
【請求項5】
光アドレス可能なポリマーが、式:
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は非イオン性置換基である。
m及びnは、それぞれ独立に、0〜4、好ましくは0〜2の整数である。
X及びXは、-X1'-R又は-X2'-Rである。
ここで、X1'及びX2'は、それぞれ、単結合、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(RR)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-又は-(CNR-NR)-である。
R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、C-C20-アルキル、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル、C-C10-アリール、C-C20-アルキル-(C=O)-、C-C10-シクロアルキル-(C=O)-、C-C20-アルケニル-(C=O)-、C-C10-アリール-(C=O)-、C-C20-アルキル-(SO)-、C-C10-シクロアルキル-(SO)-、C-C20-アルケニル-(SO)-又はC-C10-アリール-(SO)-であるか、或いは
-X1'-R又は-X2'-Rは、それぞれ、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF又はCClであってよい。
R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリールである。
非イオン性置換基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、フェノキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリール、C-C20-アルキル-(C=O)-、C-C10-アリール-(C=O)-、C-C20-アルキル-(SO)-、C-C20-アルキル-(C=O)-O-、C-C20-アルキル-(C=O)-NH-、C-C10-アリール-(C=O)-NH-、C-C20-アルキル-O-(C=O)-、C-C20-アルキル-NH-(C=O)-又はC-C10-アリール-NH-(C=O)-を意味する。
アルキル、シクロアルキル、アルケニル及びアリール基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C-C20-アルキル、C-C20-アルコキシ、C-C10-シクロアルキル、C-C20-アルケニル又はC-C10-アリールから成る群からの3個までの基により置換されていてよく、アルキル及びアルケニル基は直鎖又は分岐鎖であってよい。
ハロゲンは、弗素、塩素、臭素及び沃素、特に弗素及び塩素を意味する。
染料、特に式(I)のアゾ染料は、通常スペーサを介して、ポリマー骨格に共有結合される。例えば、その場合、X(又はX)はそのようなスペーサであり、特に式:
X1’-(Q)-T-S-
(ここで、X1’は、先に定義したとおりである。
Qは、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(RR)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-、-(CNR-NR)-、-(CH)-、p-又はm-C-、若しくは式:
【化2】

で示される2価の基である。
iは、0〜4の整数であり、i>1の場合、各Qは異なっていてよい。
Tは、-(CH)-であり、鎖は-O-、-NR-又は-OSiR10O-により中断されていてよい。
Sは、単結合、-O-、-S-又は-NR-である。
pは、2〜12、好ましくは2〜8,特に2〜4の整数である。
Rは、水素、メチル、エチル又はプロピルである。
R10は、メチル又はエチルである。
R〜Rは、先に定義したとおりである。)
で示されるものである。]
で示される化学的に結合した染料を含む請求項1〜4のいずれかに記載の層構造体。
【請求項6】
光アドレス可能なポリマーが、1.65を超える、好ましくは1.75を超える屈折率を有する請求項4又は5に記載の層構造体。
【請求項7】
カップリング素子が格子である請求項1〜6のいずれかに記載の層構造体。
【請求項8】
カップリング素子が、光アドレス可能なポリマーを含む層に実装されている請求項1〜67いずれかに記載の層構造体。
【請求項9】
導波路層が光アドレス可能なポリマーに基づく請求項1〜8のいずれかに記載の層構造体。
【請求項10】
導波路層が複数の微視的及び/又は巨視的導波構造を有する請求項1〜9のいずれかに記載の層構造体。
【請求項11】
導波路層が、五酸化タンタル、二酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される単一化合物又はこれらの混合物、特に酸化チタンに基づく請求項1〜10のいずれかに記載の層構造体。
【請求項12】
カップリング素子として、異なる格子定数を有する複数の格子が存在する請求項1〜11のいずれかに記載の層構造体。
【請求項13】
導波路層の屈折率が1.6を超える、好ましくは1.67を超える請求項1〜12のいずれかに記載の層構造体。
【請求項14】
導波路層の層厚が放射線の波長より小さい請求項1〜13のいずれかに記載の層構造体。
【請求項15】
導波路層が単一モード動作で機能することができる請求項1〜14のいずれかに記載の層構造体。
【請求項16】
光ビームをデカップルするために、更にデカップリングユニット、特に光格子が供給されている請求項1〜15のいずれかに記載の層構造体。
【請求項17】
導波路層の厚さが30〜300nmである請求項1〜16のいずれかに記載の層構造体。
【請求項18】
導波路層よりも小さい屈折率を有する中間層が導波路層と基板層との間に供給されている請求項1〜17のいずれかに記載の層構造体。
【請求項19】
中間層が光学的に透明なポリマーに基づく請求項18に記載の層構造体。
【請求項20】
光アドレス可能なポリマーからなる層がカップリング素子を含み、隣接層、特に光アドレス可能なポリマーからなる層の上に配置された隣接層が導波路層である請求項1〜19のいずれかに記載の層構造体。
【請求項21】
センサー層、光源及び認識層、並びに請求項1〜20のいずれかに記載の層構造を有する、発光、散乱光、吸収又は屈折率の変化を検出するための光検出器を含んでなるセンサー。
【請求項22】
環境解析、栄養分野、ヒト及び動物の診断、(生)化学研究及び活性化合物の探索において、生体分子、マーカー及び活性成分を分析するための、請求項21に記載のセンサーの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−514136(P2007−514136A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537125(P2006−537125)
【出願日】平成16年10月16日(2004.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011694
【国際公開番号】WO2005/047939
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】