光エンジン
本発明は、少なくとも1つの開口7を備えるチェンバ6と、このチェンバ内に配置された複数のLEDエレメント13とを有するような光エンジン1,2,3,4,5を記載したもので、実効的に上記チェンバ6の全内側表面が、所望の波長領域内の光に対して実質的に非吸収的であるような高反射性表面20として実現されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの開口を備えるチェンバと、このチェンバ内に配置された複数のLEDエレメントとを有するような光エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
光を1つの又は複数の光ファイバに結合し、これにより単一の光源から幾つかの遠隔位置へ(例えば、複数の自動車のヘッドライト/テイルライト等へ)光が伝送されるのを可能にする目的で、又は例えば集中された非常に高輝度の光ビームを外部世界に若しくは光ガイドの何らかの具現体に若しくは或る所望の仕様に従って放出光を整形及び/又はコリメートする目的でコリメートエレメントに直に放出するために高度に強力且つ高度に光的に局所化された光源に対する一般的な需要が存在する。一例は、例えばHIDランプ等の強力な単一光源を有する光エンジンである。通常は少なくとも放物面鏡及びコリメートレンズを有する二次光学系により、光源からの光は、光の伝送を可能にする光ファイバアレイ上に投影及び収束される。後者の例は、表示器バックライト及び自動車ヘッドライトを含む。近年、伝統的な光源と比較した場合のLED光源の幾つかの良く知られた利点により、伝統的光源の代替としてのLED光源の使用に対する関心が著しく増大している。
【0003】
過去10年の間に、LED(特に、固体無機LED)の設計及び製造に関する技術は、無機白色光放出LEDが今や40lm/Wattを正に超える効率で製造することができるような点まで急速に向上した。これは、伝統的な白色白熱電球(最良で16lm/Watt)及び殆どのハロゲンランプ(最良で30〜35lm/Watt)のものを明らかに超えるものである。単一のLEDダイからの光束出力は今や100lmを優に超えるまでに増加し、数年のうちに、LEDダイ当たり2.7ワットの入力電力において75ルーメン/Wattの効率を達成する、従って200ルーメン/LEDを発生することが可能になることが期待される。一方、LEDダイ当たりの限られた光出力は、依然として、LEDの予見可能な将来における照明目的のためのLEDの汎用的アプリケーションへの途上において克服されるべき障壁となっている。汎用照明源は、家庭内用途に対しては500〜1000ルーメンの、職業上用途に対しては1000〜3000ルーメンの範囲内の光束、即ち普通の白熱型及び蛍光型照明源の現在の出力を生成しなければならない。これは、数ダースまでものLEDダイからの光出力が単一の固定具内で結合され、所謂光エンジンとなる場合にのみLEDにより達成することができる。しかしながら、これは、それ自体で問題であり、高輝度の光源が必要とされる場合に問題となり始める。何故なら、例えば結合される全LEDからの放出光は、小さな寸法の小型のコリメートエレメントによりコリメートされねばならないからである。後者の良く知られた例は、自動車のヘッドランプである。この場合、通常は1500ルーメン程度を放出するH7ハロゲンランプ(55W入力電力)を利用する。これらの光束は約30Mcd/m2の輝度で放出される。キセノンHIDランプを使用する場合、達成される輝度は約80Mcd/m2まで増加する。対照的に、単一の1mm2のLEDダイが50ルーメンの白色光を放出するようになされた場合(これは、現在利用可能な技術で達成し得る略最良のものである)、単一のダイの輝度は8Mcd/m2に過ぎず、依然としてハロゲンランプのものより数倍低く、通常のHIDランプより一桁低い。状況は、複数のLEDダイが必要とされる場合は、隣接するダイの間の所要の間隔により大幅に悪化する。
【0004】
放出光の単一の集中(平行化)ビームを得るために種々のLEDダイからの光出力を一緒に結合することが可能なLED光エンジン("光発生器"とも呼ばれる)の一例が、米国特許第6,402,347号に開示されている。この光エンジンにおいて、個々のLEDエレメントは背面板上に取り付けられ、これらエレメントの各々にはコリメートドームが装備されている。隣接して整列されたフレネルレンズが、個々のLED光ビームの単一の出力エレメント(例えば、光学光ガイド)上への投影を可能にしている。このシステムの主たる問題は大きな光の損失であり、該損失は種々の光界面からの反射により約60%にも達し得る。この光エンジンの他の欠点は、該光エンジンの暈及び二次光学系の所要の高精度位置合わせであり、斯かる光エンジンのコストを上昇させる。更に、このようなLED光エンジンの寸法及びコストは、通常の高輝度光源のものを遙かに超えるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、LED型の光エンジンであって、製造するのが一層容易且つ安価であり、小型の寸法のものであり、既知のLED型光エンジンよりも良好な性能を示すような光エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、少なくとも1つの開口(アパーチャ)を備えるチェンバ及び該チェンバ内に配置される複数のLEDエレメントを有し、実効的に、上記チェンバの全ての内側表面が、特には可視領域、UV領域及び/又は赤外領域等の所望の領域内の光に対して実質的に非吸収性である高反射性の(好ましくは拡散反射性("白色反射性"とも呼ばれる)の)表面として具現されるような光エンジンを提供する。上記"高反射性"なる用語は、100%に近い、好ましくは≧95%の、より好ましくは≧98%の反射率として理解されるべきである。
【0007】
本発明により、LEDエレメントの間の表面領域を含み、LEDエレメントにより占有されていない全ての内側表面が高度に反射性であれば、斯かるLEDにより放出される実質的に全ての光は、恐らくは複数の多分多数の反射の後に上記開口を介して当該チェンバを離れる。斯様なチェンバ内での光の多重反射の現象は、"内部光再利用"として知られている。このような構成においては、各内部チェンバ表面は、LEDエレメントの表面の場合のように自身で光を放出するか又は光を反射するかのいずれにせよ、実効的に放出表面となる。本発明による光エンジンは、従来技術の光エンジンからの内部二次光学系は有さないので、製造するのが一層経済的である。望ましいなら、本発明による光エンジンには、当該光エンジンからの放出光ビームを整形及び/又はコリメートする目的で外部二次光学系(好ましくは、前記光エンジン開口の近傍に設けられる)を設けることができる。
【0008】
この様にして設計された"積分球"又は所謂"ウルブリヒト球"として構成されたチェンバにおいては、確かに、当該チェンバ内のLEDにより放出された光の殆ど大部分が上記開口を介して該チェンバから出力する。明らかに、全体の光エンジンの効率は、当該チェンバの内側表面の得られる反射率に最終的に依存する。斯かる内側表面の反射率は正確に100%には届きそうにないが、それでも、この限界には合理的に良く近づくことができる。以下においては、本発明による光エンジンにより例外的に良好な性能を得ることができることが示され、これによれば、最終的に得られる値は、チェンバ内のLED詰め込み密度(実装密度)、LEDの反射率及び当該光エンジンの光に曝される全内表面面積に対する上記開口の寸法等の当該光エンジンの正確な構造パラメータに常に依存する。従って、斯かる正確な構造パラメータは所望の用途に適するように選択されるべきである。
【0009】
以下においては、LEDは固体無機LEDダイであると仮定する。何故なら、これらは充分な光強度で目下入手可能であるからである。それにも拘わらず、充分な性能を提供する限りにおいて、例えばレーザダイオード、他の型式の半導体発光素子又は有機LED等の如何なる他のエレクトロルミネッセント素子も使用することができる。従って、以下における"LED"なる用語は、如何なる型式の適切なエレクトロルミネッセント素子に対する同義語と見なされるべきである。
【0010】
従属請求項及び後続する記載は、本発明の特に有利な実施例及びフィーチャを開示している。
【0011】
上記内側表面の反射率は、基本的に如何なる方法でも達成することができる。該反射率が好ましくは≧98%のように充分に高いことのみが重要である。好ましくは、該高反射性の表面は、チェンバの壁の内側表面にわたって拡散反射性材料を分布させることにより実現することができる。例えば、斯かる内側表面は、適切な材料により充分な厚さの粒子/バインダコーティングの形態で被覆することができる。
【0012】
本発明の特に好ましい実施例においては、上記拡散反射性材料は当該チェンバ壁の内側表面と、少なくとも所望の波長領域において透明な被覆板との間に封入される。この様に、該拡散反射性材料はチェンバ壁の内側表面と透明な被覆板との間に"挟まれる"。この構成は、反射性乾燥粉末(好ましくは、自由に流れる粉末)のような拡散反射性材料の使用を可能にする。好適な反射性白色粉末は、Al2O3、YBO3、BaSO4、TiO2、Ca-ピロリン酸塩(Ca-pyrophosphate)、Ca-ハロリン酸塩(Ca-halophosphate)、MgO又はこれら粒子の混合物等の無機粒子を含むことができる。如何なる有機バインダ材料の不存在も斯かる粉末粒子の反射率を増加させると共に、時間にわたる徐々の変色を防止する。5〜15μmなる平均粒径でのCa-ピロリン酸塩の使用が特に推奨されるが、その理由は、その安さ、容易な入手可能性、化学純度及び高温(>1000℃)に対する耐性、そのチェンバの内側表面と被覆板との間の相対的に狭い空間の乾燥粉末粒子による容易な充填を可能にするのに有用な約1%w/wのAlon-Cナノ粒子(即ち、ドイツ国、Degussa GmbHのAl2O3粒子)と混合される場合の自由に流れる粉末として振る舞う能力、及びその900℃での焼き鈍しの後の可視光に対する証明された非吸収特性である。Ca-ピロリン酸塩の場合、少なくとも98〜99%の反射率を達成するために、当該反射性粉末層は好ましくは少なくとも2mmの厚さを有すべきである。
【0013】
入力電力の光への変換に関して最大の可能な効率を達成するために、LEDエレメント内で発生される光の可能な限り多くが、実際にLEDからチェンバ内部に出射することが必要である。これは、LEDダイ表面と周囲との間の境界層において生じる内面反射によれば問題ではない。従って、本発明の好ましい実施例においては、当該光エンジンはLEDエレメントにより放出される光のチェンバ内への出力結合を向上させる出力結合手段を有する。
【0014】
上記出力結合手段は、例えばシリコーン樹脂及び/又は何らかの有機高分子材料から形成された透明ドームを有することができ、これらドームの各々は関連するLEDエレメントの光放出表面に光学的に接続される。LEDエレメント及び/又はLEDデバイス本体が取り付けられるチェンバ壁を被覆すると共に、拡散反射性白色材料を被覆する/挟むために被覆板が使用される場合、好ましくは、上記ドームは斯かる被覆板の孔を介して突出するようにする。LEDエレメントの周囲の斯様な透明ドームの存在は、LEDダイからの光の出力結合を促進する。一方、斯かるドームの存在は、当該光エンジンのチェンバ内での内部光再利用を実現することができる効率に悪影響を及ぼす可能性がある。LEDの特性及び関連する波長に依存して、関連するLEDエレメント内の又は斯かるエレメントに直に隣接するドームの底部で光の吸収が生じ得る。更に、当該光エンジンの内側における高度に反射性の被覆は、斯かるドームの間に位置する内側壁の表面領域上のみに存在し、これらドームは関連するLEDダイ自体の断面よりも大幅に大きな断面を有している。
【0015】
従って、他の実施例においては、上記LEDドームは単に省略される。この場合、白色反射性コーティングをLEDダイエレメントの間に塗布することができ、該コーティングはドームが使用される状況と比較して内側壁表面面積のかなり大きな割合を被覆するであろう。裸のLEDダイからの光の出力結合は本来余り効率的でないので、露出されたLEDダイ表面は好ましくは該ダイと光学的に接触する透明な散乱コーティング層により被覆されるようにするか、又は微細構造がLEDダイ表面に直に付与されるようにする。これらの後者の対策はLEDダイからの光の出力結合を促進する。
【0016】
最も好ましい実施例においては、反射性材料を被覆する前記透明な被覆板はLEDエレメントも被覆し、前記出力結合手段は、各々が関連するLEDエレメントの光放出面から上記透明被覆板まで延びるような複数の透明出力結合エレメントを有する。これによれば、上記の光学的な透明出力結合エレメント自体が上記被覆板の一部を形成してもよい。
【0017】
上記透明出力結合エレメントは、好ましくは、該出力結合エレメントと関連するLEDエレメントとの間の境界におけるよりも、該出力結合エレメントと上記透明被覆板との間の境界において一層広いような断面を有する。例えば、斯かる透明出力結合エレメントは、関連するLEDエレメントから離れる方向に広がるような断面を特徴とする円錐、放物又は四角錐形状を有することができる。このような形状は、該透明出力結合エレメントが、LEDダイで発生された光を出力結合すると共に該光を光導体のように上記透明被覆板を介してチェンバの内側に伝導するのを助けるのみならず、当該LEDに対するコリメータとして作用して該LEDの放出角を制限するのを助けることを保証する。
【0018】
本質的に、例えば光変換物質(通常、フルオレセント又は単に"蛍光(phosphor)"コーティングと呼ばれる)によりコーティングされたLEDダイ等の如何なるLEDエレメントも使用することができる。このようなLEDの蛍光コーティングは、或る波長において当該LEDにより放出された光の少なくとも一部が異なる波長に変換され、かくして、全体として光が所望の波長特性(即ち、或る色)で放出されるのを保証する。光干渉層をLEDダイと該LEDダイの表面上の蛍光コーティングとの間に配置し、該LEDダイ内部で発生された光の上記蛍光層への透過を促進すると共に該蛍光層からの蛍光変換された光のLEDダイへの透過を減少させるように作用させることができる。
【0019】
蛍光変換LEDが使用される場合、蛍光粒子等の光変換物質は、チェンバ壁の内側表面上に粒子/バインダコーティングとして分布されるか、又はチェンバ壁の内側表面と透明被覆板との間にバインダ無し乾燥粉末層として挟まれるかの何れかである例えば白色反射性粉末等の反射性材料上に(又は内に)分布させることができる。これは、処理する/詰め込む観点から一層容易且つ安価であるのみならず、蛍光飽和現象を打ち消すと共にダイからの光束出力を上昇させるのを助けるような戦略も提供する。例えば乾燥粉末の簡単な混合により拡散反射性白色粉末へ蛍光体を組み込むことは、LEDエレメントの製造を簡素化させると共に、大量の蛍光体を相対的に大きな表面領域にわたり拡散させることができるので高い光強度における蛍光飽和を防止する。拡散反射性白色粉末層又は拡散反射性粒子/バインダコーティングにおける蛍光体の量及び配置は、適切なカラー点が得られるように最適化することができる。この場合、蛍光無しLEDエレメントも使用することができる。
【0020】
付加的に又は代替的に、例えば赤、緑及び青等の異なる波長特性のLEDエレメントを光エンジン内に所望に応じて使用し及び配置することもできる。本発明による光エンジンが利用される場合、適切な色混合の問題は自動的に解決される。何故なら、個々のLEDダイは外側からは直接見ることができず、内部の色混合は内部光再利用過程によりなされるからである。
【0021】
前記開口は、基本的に、当該チェンバ壁の簡単な開口からなることができる。当該光エンジンの性能に対する開口パラメータの影響は、後に詳述する。当該光エンジンで発生された光が捕捉される例えば光ファイバ等の光導体エレメントを、該開口の近傍、内又は上に配置することができる。本発明の好ましい実施例においては、ビーム形成エレメントが該開口内に又は該開口の近傍に配置される。例えばレンズ、円錐状エレメント、四角錐状エレメント又は放物状エレメントの形態の光コリメートエレメントが特に好ましい。該開口を介して出射する光は、斯様なコリメートエレメントにより、規定された放出角内にコリメートされ、及び/又は規定された空間的/角度的光強度分布パターン内に整形される。
【0022】
例えばチェンバ内部と前記透明被覆板との間、及び/又はチェンバ内部と前記出力結合手段との間、及び/又はチェンバ内部と当該光エンジンの前記開口に配置されたコリメートエレメントとの間、及び/又はチェンバ内部とLEDダイ表面との間の境界等の、当該光エンジン内に存在する種々の光学的界面における内部反射による光の損失を最少化するために、当該チェンバは好ましくは下記のような材料により充填される。即ち、該材料とは、上記透明被覆板の及び/又は上記出力結合手段の及び/又は上記コリメートエレメントの及び/又は上記LEDエレメントの屈折率に近い又は、より好ましくは、一致するような屈折率を有すると共に、可視光に対して及び/又は上記LEDダイ内部で発生され該LEDダイから放出される光に対して上記種々の光学的界面の"光学的可視性"を低減し又は除去さえもするような材料である。
【0023】
このような材料は、所望の(一致する)屈折率を持つ固体樹脂(特にはシリコーン樹脂)又は透明な液体(特には油)等の有機媒質とすることができ、好ましくは可視光に対して及び/又は上記LEDダイ内で発生され該LEDダイから放出される光に対して実質的に非吸収性であるものとする。この対策は、空洞内の上記充填材料が前記光学エレメントと光学的に接触する場合に、当該光エンジンの開口に配置された該光学エレメントからのフレネル反射も最少化する。好ましい実施例は、上記材料が上記LEDエレメントの前端(front end)冷却にも使用されるような液体材料である場合に得られる。この場合、好ましくは、上記液体材料は、該液体の冷却効果を増加させるために当該光エンジンの空洞と何らかの追加の外部冷却装置との間を流体としてポンプ循環される。
【0024】
本発明による光エンジンは、LED照明機器であって、該照明機器が調整可能な輝度及び色の光出力ビームによる限定された面積の光出力開口を有し、該開口から光を幾つかの遠隔位置(特には自動車ヘッドランプ等の自動車ライトシステムにおける)に伝送することができることを特徴とするような如何なるLED照明機器用途にも使用することができる。放出される光出力ビームの輝度は、都合良く、当該光エンジン内部の個々のLEDエレメントに供給される電力を変化させることにより調整することができる。放出される光出力ビームの色も、例えば赤、緑及び青のLEDエレメント等の異なる波長特性のLEDエレメントが当該光エンジン内部に存在する状況下で、個々のLEDエレメントに供給される電力を変化させることにより調整することができる。
【0025】
本発明の他の目的及びフィーチャは、添付図面と関連して考察される下記詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、斯かる図面は本発明の限定を定めるものとしてではなく、解説の目的のためにのみ設計されたものであると理解されるべきである。尚、図面において同様の符号は全体を通して同一のエレメントを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
各図における対象物の寸法は明瞭化のために選定されており、必ずしも実際の相対寸法を反映していない。
【0027】
図1及び2は、本発明による光エンジンの特に好ましい実施例を示しており、ここで、図1は全体の光エンジンの断面を示し、図2はチェンバ壁の拡大された断面を示している。
【0028】
該光エンジン1は、例えば長方形の又は円筒の態様で構築されたチェンバ6を有している。表面面積Aexitの開口又はアパーチャ7が、チェンバ6の頂部に配置され、コリメートエレメント8につながっている。LEDエレメント13が、チェンバ6の内側壁10上に、外被に沿って及び開口7に対向する内側表面上に互いから或る距離で(即ち特定の格子に)配置されている。これらLEDエレメント13は、出力結合エレメント15を介して透明被覆板11に接続されている。
【0029】
この透明被覆板11は、チェンバ6内に該チェンバ16の内側壁に対して或る距離で配置されている。チェンバ6の全壁10は、開口7を備える頂部側も含め、透明被覆板11により被覆されている。透明被覆板11とチェンバ6の壁10の内側表面との間の間隙は、拡散反射性白色粉末により充填されている。該反射性白色粉末の好適な候補は、Al2O3、TiO2、YBO3、BaSO4、Ca-ピロリン酸塩、Ca-ハロリン酸塩又はMgOである。透明被覆板11のための好適な材料は、PMMA(ポリメチル-メタクリレート:polymethyl-methacrylate)、PC(ポリカーボネイト:polycarbonate)、樹脂性シリコーン化合物及びガラスを含む。この構造は、LEDダイにより占められていないチェンバ6の全内側表面20が高度に反射性となるのを保証する。
【0030】
上記壁の構造を図2に詳細に見ることができる。この場合、個々のLEDダイ13は取付スラグ14上に取り付けられ、これらスラグもLEDダイの周りの反射性頂面を特徴とする。透明な切頭反転三角錐又は円錐が、透明被覆板11に光学的に結合された出力結合エレメント15として作用する。更に、これらの出力結合エレメント15は、樹脂又は何らかの他の適切な接着剤状物質によりLEDダイ13に光学的に結合されている。これらの出力結合エレメント15を樹脂又は同様の物質により透明被覆板11に光学的に結合する代わりに、これらエレメントは好ましくは透明被覆板11の一部として直に形成することもできる。出力結合エレメント15は、放出された光を当該光エンジン1の内部9に向かって案内する。円錐形出力結合エレメント15の断面は、関連するLEDダイ13から離れる方向に広がっている。好ましくは、これら出力結合エレメントは、垂直線に対して5°と65°との間の傾き角、より好ましくは垂直線に対して20°と50°との間の傾き角、最も好ましくは垂直線に対して約45°の傾き角を特徴する。
【0031】
透明被覆板11とチェンバ6の非透明外壁10の内側表面との間の距離、即ち拡散反射性粉末層12の厚さは、好ましくは、約2〜3mmである。粉末層12はチェンバ6の高度に反射性の表面20を提供し、これが内部光再利用を可能にする。コリメートエレメント8は、開口7上に配置されると共に、例えば透明なプラスチック材料から形成され、当該光エンジン1の上記開口から放出される光を入力する。該コリメートエレメント8の形状は、放出される光ビームの伝搬方向に対して測定してコリメーション半角θCより大きな角度では該コリメートエレメント8の出射面から実質的に如何なる光も放出されないように選定される。
【0032】
透明被覆板11からチェンバ6の内側への光の出力結合を改善すると共に、チェンバ6からコリメートエレメント8への光の結合を簡単化するために、全体のチェンバ6の内部9は、透明被覆板11の屈折率に且つ恐らくはコリメートエレメント8の屈折率にも近い又は一層好ましくは一致するような屈折率を持つ固体又は液体の媒体22により充填される。被覆板11と媒体22との間の境界界面における、及びコリメートエレメント8と媒体22との間の界面における不所望な光損失を惹起する反射は、これにより防止されるか又は少なくとも減少される。媒体22が液体の媒体である場合、例えば該液体媒体22をチェンバ6と外部の冷却装置との間でポンプ送りすることにより前端でのLED冷却の目的にも使用することができる。
【0033】
図3は、チェンバ6の壁10の内側表面の幾らか変更された構造を示している。ここでは、LEDダイ13はチェンバ壁10の内側表面上に直に取り付けられている。光学接触層16が、各LEDダイ13上に配置されている。この接触層16は、LEDダイ13からの光の出力結合を促進するために散乱粒子を含むことができる。透明被覆板11はブロック状の出力結合エレメント15'を特徴とし、これらブロック状出力結合エレメントは透明被覆板11からLEDダイ13に向かい突出し、延長部又は橋絡部として作用して、接触層16との光学的接触を提供する。透明被覆板11と壁10の内側表面との間の空間は、ここでも、反射性乾燥白色粉末12で充填されている。
【0034】
図4は、他の可能な構成を示している。図3におけるのと同様に、LEDダイ13は内側壁10上に配置されている。LEDダイ13により放出される光のLEDダイ表面を介しての出力結合を容易にするために、LEDダイ13は、好ましくは、該LEDダイの表面と光学的接触状態にある透明散乱層17により囲繞され、これによりLEDダイ13からチェンバ6への光の出力結合を促進する。高度に拡散反射性の白色粒子/バインダ層18が、個々のLED13の間に位置される内側壁10の表面を被覆している。
【0035】
図5には、他の可能性のある構成を見ることができ、そこでは、各々がLEDダイエレメント(図示略)を備えるLED装置本体23が、外壁10の内側表面上に取り付けられている。LEDダイエレメント自体はLEDドーム19内に封入され、これらドームはLEDダイから放出される光の良好な出力結合を保証する。LEDドーム19が突出するような格子パターン状の適切な開口を備える被覆板21が、LED装置本体23を覆っている。LEDドーム19の間における被覆板21の表面は白色拡散反射性粒子/バインダコーティング18により被覆され、該コーティングは高反射性コーティング層18となるような充分な厚さを有している。
【0036】
光エンジンの他の例示的構成2が図6に示されている。該構成と図1に示した例との間の基本的な相違は、チェンバ6が図1の光エンジンのものとは異なるように構成されている点にある。この場合、チェンバ6は、個々のLEDが図1に示した例におけるように取り付けられた床壁10を特徴としている。しかしながら、ここでは、側壁10'が上記床壁10から開口7に向かって円錐状に延在している。これらの側壁10'上にはLEDは配置されていない。所望の高反射性内側表面20を付与するために、透明被覆板11は、床壁10に対するのと同様に、側壁10'の内側から約2〜3mmの距離に配置され、該被覆板11と側壁10'との間の空間、並びに床壁10と被覆板11との間におけるLED取付エレメント14、ダイ13及び出力結合エレメント15の間の空間は高度に反射性の白色粉末12により充填されている。ここでも、コリメートエレメント18が開口7に配置されている。この光エンジン2の前記光エンジン1に対する利点は、減少された体積、特に減少された高さにある。一方、チェンバの内側壁の全面積に対するLEDエレメントの数は、より少ない。何故なら、側壁10'はLEDエレメントにより占められていないからである。
【0037】
本発明による光エンジンの他の実施例3が図7に示されている。この光エンジン3のハウジング6は、前記光エンジン2のハウジングと同様の幾何学構造を特徴としている。しかしながら、LEDエレメントは図5に示したのと同じ態様で基板10上に取り付けられている。即ち、LEDデバイス本体23、及びLEDダイ(図示略)が封入された支持LEDドーム19が、基板10を占めている。LEDが取り付けられた基板壁10の表面、並びにLEDデバイス本体23の側壁及び頂部の両方が白色拡散反射性コーティング18により被覆され、突出するドーム19のみがコーティングされないままとなっている。LEDドーム19が突出する格子パターン状の適切な開口を備える透明被覆板11'が、LEDデバイス本体23を覆っている。この透明被覆板11'と外壁10の内側表面との間の空間は、反射性白色乾燥粉末12により充填されている。側壁10'の内側表面と透明被覆板11との間に配置された反射性材料12を伴って開口7に向かい狭まる円錐状側壁10'は、図6の光エンジン2に関するのと同様の態様で構築されている。
【0038】
図8は、本発明による光エンジンの他の実施例4を示し、該実施例は外側ハウジングに関しては図7に記載した例と同様の態様で構築されている。しかしながら、図7の例におけるのとは別に、ここでは透明被覆板11'も反射性白色乾燥粉末12も使用されていない。代わりに、ここでは、円錐状チェンバ壁10'も内側が拡散反射性粒子/バインダ層18により被覆され、高反射性表面20を付与するようになっている。更に、白色拡散反射性粒子/バインダ層18は、チェンバ壁10の内側表面上に、及び透明ドーム19の間に位置するLEDデバイス本体23の表面上にも存在する。
【0039】
図9は本発明による光エンジンの他の実施例5を示し、該実施例は図1及び図6の例とはチェンバ6の外形のみが本質的に相違する。チェンバ6の下部は円筒状又は長方形状であり、基底壁10及び側壁10は、各々、或る格子パターンで配置されたLEDエレメント13により占められている。チェンバ6の上部は、図6の光エンジン2の円錐形に形成された側壁10'と同様の態様で開口7に対して円錐状に狭まっている。チェンバ6の上部の該円錐状の壁10'は、内側がLEDエレメント13によっては占められておらず、高度に反射性の表面20のみを有している。ここでも、この高反射性表面20は、壁10、10'から或る距離に配置された透明被覆板11、及び壁10、10'の内側表面と被覆板11との間の空間を充填する白色反射性粉末12により形成されている。
【0040】
図6ないし9に示す全ての場合において、チェンバ6の内部9は、図1の光エンジン1に関して説明したように、好ましくは適切な屈折率を有する固体又は液体媒体22により充填される。
【0041】
上記異なる例は、チェンバ6が基本的に如何なる種類の外部幾何学形状を有し得ることも示している。更に、開口7は、必ずしも側壁における円形開口である必要はなく、必ずしも光学エレメント8が設けられる必要もないことが力説されるべきである。如何なる側壁(好ましくは、相対的に小さな寸法の)も、構造から単に除外して開口を付与することもできる。これが、図10の単純化された概要図の円筒状チェンバ6により示されている。基本的に、このようなチェンバ6は、例えば対向する側面上の開口のように、如何なる基本的表面幾何学構造も有することができる。例えば、両方の小さな面が外界に対して開放しているような長尺の光エンジン立方体を想像することもできる。これは、光エンジンの意図される機能及び当該光エンジンが動作する空間的制約に依存する。
【0042】
チェンバの幾何学構造、チェンバ内のLEDエレメントの数及び開口の寸法等の正確な構造パラメータは、当該光エンジンの最大寸法及び所望の出力パラメータ等の制約に依存する。従って、以下では達成可能な出力パラメータが当該光エンジンの構造パラメータにどの様に依存するかを説明する。
【0043】
表面積Aexitの単一の開口又は出射ポート7、及び出射ポート表面面積Aexitを含む全内部表面積Aengineを有するような図1に図示した光エンジンボックスを考察しよう。各々が(投影された)平らな頂部面積ALEDを有するような合計でNLED個のLEDダイエレメント13が光エンジン1の壁10の内側表面に取り付けられていると仮定する。また、各LEDエレメント13は反射率RLEDを有し、自身のダイ面積ALEDから光束φLEDを放出すると仮定する。LEDエレメント13の周りには反射率Rwallの白色拡散反射性の壁20が横方向に存在する。
【0044】
開口出射ポート7を介して外界へ逃れる、内部で生成された光の透過される割合Tは:
【数1】
なる級数から得られ、これは、
【数2】
なる"開口割合"の場合、
【数3】
と等価となる。
【0045】
これによれば、Ravは、
【数4】
に従う当該光エンジンの内壁の非出射部の平均された内部反射率Ravを示し、ここで、
【数5】
は、内部反射する光エンジン表面面積Aengine−AexitのLEDエレメント13により覆われる割合を示す。
【0046】
上記式は、内部の光エンジンの壁の如何なる特定の形状も仮定していない。一方、式(1)における級数展開(series expansion)は小さな開口割合fに対してのみ成り立つ。単一の平らな光放出面を有するような光エンジンの極端な場合には、放出する光源の経路には反射する面がないので、最大のf=0.5及び"定義により"T=1を有する。この場合、式(1)は誤ってT<1を予測するが、容易に達成可能なRav>0.90である限り該エラーは大きなものではない。
【0047】
現実的な光エンジンに対しては、好ましくは上限f≒0.3〜0.4が維持されるべきであるが、本発明による光エンジンの概念は、明らかに、より小さなfの値に対して一層関心があるものである。例えば、6つの面のうちの1つのみが開放しているような立方体として実施化された光エンジンはf=0.17なる開口割合を有する。開口割合fに対する一層小さな値は、上記立方体を一層長方形にすると共に、その2つの小さな面のうちの一方のみを開放状態に維持することにより、容易に得ることができる。本発明の好ましい実施例においては、開口割合fは、≦0.15、より好ましくは≦0.1とすべきである。例えば、2cmの直径、3cmのチェンバ長及び1cmの開口直径を持つ図1による光エンジン1はf=0.03なる開口割合を有する。
【0048】
RLED=Rwall=Rav=1の場合、光の損失は存在せず、如何なる任意の小さな開口割合fに対しても式(1)に従いT=1を得る。これは、理論的に、f→0の場合に極端に高い輝度レベルの生成を可能にする。しかしながら、現実には、光学的な光損失を完全に回避することは決してできないから、これは不可能である。
【0049】
従って、システムパラメータの関数として光エンジン1の開口出射ポート7で達成可能な輝度に関する方程式を導出することも興味深いものである。個々のLEDダイエレメント13の輝度レベルBLEDに対して正規化された開口出射ポート7(コリメートエレメント8は存在しないと仮定する)における輝度Bexitを示す輝度比Bは、
【数6】
から得られ、これは、LEDダイ13及び開口出射ポート7の両方がコリメートされていない光(即ち、θc=90°のランバート光)を放出する場合に有効である。
【0050】
更に、以下においては"輝度集中係数"とも呼ぶ第2輝度比L(θ)に関する関係を、
【数7】
により導出することも有益であり、この比は、光放出出射面(これは、コリメートエレメント8の投影された光放出出射面Acolとすることができる)の輝度Bexit(θc)の、LEDエレメント13が実装密度θLEDで取り付けられた表面積Ascreen=Aengine−Aexitの仮想フラットスクリーンのスクリーン平均輝度Bscreen(θc)に対する比を示す。ここで、光は、ビームの伝搬方向に対してコリメーション半角θc内に角度制限されたコリメートされたビームとして放出されると仮定される。コリメートされない光に対しては、θc=90°となる。
【0051】
輝度集中係数L(θc)を知ることは、光エンジン1の内側にNLED個のダイを表面実装密度θLEDで一緒に詰め込むことにより、NLED個のダイがフラットな光放出スクリーン上に同一の表面実装密度で単に取り付けられた単純な状況と比較して正味の光集中が達成されたか否かを示すことになる。L(θc)>1なる値は相対的光(輝度)集中を示し、L(θc)<1なる値は相対的光(輝度)の希釈を示す。明らかに、斯様に大きなL(θc)の値は実際に可能であり、確かに1より大きな値が一般的に望ましい。
【0052】
図1に示すように、光エンジン1が2Dコリメートされた光を放出するようになされている場合、関連する出射ポート表面面積は、光エンジン1の出射ポート7に取り付けられたコリメートエレメント8の投影された出力面Acolのものとなる。エテンデュ(etendue)の法則に従えば、所与のコリメーション半角θcに対して、コリメートエレメント8の最小の所要の出力表面面積Acolは、
【数8】
により図1の光エンジン1の開口7の出力面積Aexitに関係し、従って減少するθcにおいて放出面Acolの不可避的拡大を示す。
【0053】
スクリーン平均輝度レベルBscreen(θc)は、
【数9】
に従いBLED(θc)に関係する。
【0054】
図1による光エンジン1の実施例では、個々のLEDエレメントには四角錐状出力結合エレメント15の形態のコリメートエレメントが設けられている。従って、個々のLEDの見かけの光放出表面面積も増加するが、これらは、フラットな取付スクリーン上での、
【数10】
なるLED実装密度制約が満たされる限りにおいて、斯かるスクリーンを拡大することなしに該取付スクリーン(式(4)の導出のために先に規定した表面面積Ascreenの仮想フラットスクリーン)上で直接調整することができる。この場合、該スクリーン表面面積Ascreenはθcとは独立とすることができる。
【0055】
上述したことから、及びθc<90°ならば式(4)におけるBexitは光エンジン1の開口7上に取り付けられたコリメートエレメント8の光出力面における輝度Bcolを示すことを心に留めると、L(θc)は、
【数11】
から得られることになる。
【0056】
θc=90°(ランバート光)なる特別な場合に関して、図11は、透過率(transmission)T及び輝度比Bの計算値を、現実的な条件に対応する反射率Rwall=0.98及びRLED=0.50並びに実装密度θLED=0.05における開口割合fの関数として示す。
【0057】
図11からは、開口割合fが減少すると、出射ポートにおける達成可能な輝度比Bは増加するが、当該光エンジンを離脱する内部生成光の透過割合Tに比例する光束出力が大幅に減少することが明らかである。光束及び輝度は、これらの関係が開口割合fに対して逆の傾向を示すので、
【数12】
に従う品質パラメータQを定義することに意味がある。
【0058】
図11では、品質パラメータQも開口割合fの関数としてプロットされている。このプロットから、Qは最適な開口割合foptにおいて最大値を経ることが明らかとなる。foptの値は、
【数13】
から得られ、ここでRavは式(2)により与えられる。
【0059】
しかしながら、Qはf=foptの近傍では開口割合fに強くは依存しない。高いBより高いTの方が重要である場合(例えば、一般照明用途に関係する場合)、f>foptなる値を選択することが推奨される。高いBが高いTより重要な場合は、逆が真となる。
【0060】
図12は、実装密度θLED=0.05及びθc=90°における種々のRLED及びRwallの値に関して品質パラメータQの計算値を開口割合fの関数として示している(IはRwall=0.98及びRLED=0.7;IIはRwall=0.98及びRLED=0.5;IIIはRwall=0.96及びRLED=0.5)。foptの周辺の開口割合に対して品質パラメータQは目立って低下する。即ち、反射率RLED及びRwallが減少すると、曲線が平らになる。
【0061】
更に、図13は一定のRwall=0.98及びRLED=0.5並びにθc=90°における種々の値θLEDに関して品質パラメータQの計算値を開口割合fの関数として示している。見られるように、品質パラメータQは実装密度θLEDの増加に伴いfの全範囲にわたり増加する。
【0062】
図14、15及び16は、現実的な反射率Rwall=0.98及びRLED=0.5における光集中係数L(θc)の計算値を、開口割合fの種々の値に関して(図14では、一定の実装密度θLED=0.05で)、及び種々の値θLEDに関して(図15においては一定の開口割合f=0.05で、図16においては一定の開口割合f=0.1で)示している。全図において、曲線は式(7)による制約の下で描かれている。
【0063】
少なくともθc=60°(一般照明用途)に対して、本発明による光エンジンの使用は、80%のルーメン出力(即ち、T=0.8)において、係数5までの数値で著しい輝度集中が達成されるのを可能にすることが明らかである。また、より高い光集中係数Lは、開口割合fを減少させることにより、ルーメン効率の減少を犠牲にして達成することができる。
【0064】
Rwall及びRLEDが常に現実に可能な限り高く選定されるとすると、開口割合fの関数として当該性能に影響を与えるものは、主として内壁上のLEDエレメントの実装密度θLEDである。一方における輝度と他方におけるルーメン効率との間で、常に妥協点を捜さねばならない。また、全体として必要とされるルーメン出力を考慮しなければならず、これによれば、当該光エンジンの寸法は総ルーメン出力に直に比例する。
【0065】
高いルーメン効率が最も重要である場合は、低いθLED≒0.01においてf≒0.10〜0.12の開口割合を選択することが推奨される。これは、T≒0.8及びB≒0.07を可能にし、これはθc=90°において取付壁のスクリーン平均輝度より依然として7倍明るい。輝度集中係数L(θc)はθcが減少すると減少するが、θc=40°までかなりに留まる。
【0066】
高い輝度が最も重要である場合は、高いLED実装密度θLED≒0.05、又は実現可能ならそれ以上を選択することが推奨される。最大に達成可能なLED実装密度を上昇させるために、LEDエレメントの冷却を、例えば先に提案した一致する屈折率の冷却液により実施すべきである。f≒0.1においては、小さなT=0.65ではあるが、より高い輝度比B=0.3を有し、これは、θc=90°において、取付壁のスクリーン平均輝度B=θLEDより依然として6倍明るい。輝度は、開口割合fを例えばf=0.05まで低下させることにより更に増加させることができる。f≒0.1において、品質パラメータQはθLEDが増加すると大幅に改善する。従って、本発明による光エンジンから最大の利益を得るためには、θLEDをθLED=0.10における又はそれを超えるレベルまで増加させることが非常に重要である。
【0067】
以上、本発明を好ましい実施例及びそれらの変形例の形態で開示したが、これらに対して本発明の範囲を逸脱すること無しに多数の更なる修正及び変形をなすことができると理解される。また、明瞭化のために、本出願を通して単数形の使用は複数を排除するものではなく、"有する"なる文言は他のステップ又は構成要素を排除するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明による光エンジンの第1実施例を示す。
【図2】図2は、図1による光エンジンのチェンバの壁の一部の拡大図を示す。
【図3】図3は、本発明の第2実施例による光エンジンのチェンバの壁の拡大された一部を示す。
【図4】図4は、本発明の第3実施例による光エンジンのチェンバの壁の拡大された一部を示す。
【図5】図5は、本発明の第4実施例による光エンジンのチェンバの壁の拡大された一部を示す。
【図6】図6は、本発明による光エンジンの第5実施例を示す。
【図7】図7は、本発明による光エンジンの第6実施例を示す。
【図8】図8は、本発明による光エンジンの第7実施例を示す。
【図9】図9は、本発明による光エンジンの第8実施例を示す。
【図10】図10は、本発明の第9実施例による光エンジンのチェンバの形状の単純化された概念図を示す。
【図11】図11は、開口割合fの、− 当該光エンジンから放出(透過)される内部発生光の割合T、− 個々のLEDエレメントの輝度に対して正規化された当該光エンジンからの放出光ビームの輝度を示す輝度比B、− 品質パラメータQ、に対する影響を図示するグラフである。
【図12】図12は、内側の反射する壁表面及びLED表面の種々の反射率に対して、開口割合fに対する品質パラメータQの依存度を示すグラフである。
【図13】図13は、当該光エンジンの内側壁上のLEDエレメントの幾つかの実装密度θLEDに関して、開口割合fに対する品質パラメータQの依存度を示すグラフである。
【図14】図14は、種々の開口割合fに関して、コリメーション角度θCに対する光集中係数Lの依存度を示すグラフである。
【図15】図15は、特定の第1開口割合fに対する種々のLED実装密度θLEDに関して、コリメーション角度θCに対する光集中係数Lの依存度を示すグラフである。
【図16】図16は、特定の第2開口割合fに対する種々のLED実装密度θLEDに関して、コリメーション角度θCに対する光集中係数Lの依存度を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの開口を備えるチェンバと、このチェンバ内に配置された複数のLEDエレメントとを有するような光エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
光を1つの又は複数の光ファイバに結合し、これにより単一の光源から幾つかの遠隔位置へ(例えば、複数の自動車のヘッドライト/テイルライト等へ)光が伝送されるのを可能にする目的で、又は例えば集中された非常に高輝度の光ビームを外部世界に若しくは光ガイドの何らかの具現体に若しくは或る所望の仕様に従って放出光を整形及び/又はコリメートする目的でコリメートエレメントに直に放出するために高度に強力且つ高度に光的に局所化された光源に対する一般的な需要が存在する。一例は、例えばHIDランプ等の強力な単一光源を有する光エンジンである。通常は少なくとも放物面鏡及びコリメートレンズを有する二次光学系により、光源からの光は、光の伝送を可能にする光ファイバアレイ上に投影及び収束される。後者の例は、表示器バックライト及び自動車ヘッドライトを含む。近年、伝統的な光源と比較した場合のLED光源の幾つかの良く知られた利点により、伝統的光源の代替としてのLED光源の使用に対する関心が著しく増大している。
【0003】
過去10年の間に、LED(特に、固体無機LED)の設計及び製造に関する技術は、無機白色光放出LEDが今や40lm/Wattを正に超える効率で製造することができるような点まで急速に向上した。これは、伝統的な白色白熱電球(最良で16lm/Watt)及び殆どのハロゲンランプ(最良で30〜35lm/Watt)のものを明らかに超えるものである。単一のLEDダイからの光束出力は今や100lmを優に超えるまでに増加し、数年のうちに、LEDダイ当たり2.7ワットの入力電力において75ルーメン/Wattの効率を達成する、従って200ルーメン/LEDを発生することが可能になることが期待される。一方、LEDダイ当たりの限られた光出力は、依然として、LEDの予見可能な将来における照明目的のためのLEDの汎用的アプリケーションへの途上において克服されるべき障壁となっている。汎用照明源は、家庭内用途に対しては500〜1000ルーメンの、職業上用途に対しては1000〜3000ルーメンの範囲内の光束、即ち普通の白熱型及び蛍光型照明源の現在の出力を生成しなければならない。これは、数ダースまでものLEDダイからの光出力が単一の固定具内で結合され、所謂光エンジンとなる場合にのみLEDにより達成することができる。しかしながら、これは、それ自体で問題であり、高輝度の光源が必要とされる場合に問題となり始める。何故なら、例えば結合される全LEDからの放出光は、小さな寸法の小型のコリメートエレメントによりコリメートされねばならないからである。後者の良く知られた例は、自動車のヘッドランプである。この場合、通常は1500ルーメン程度を放出するH7ハロゲンランプ(55W入力電力)を利用する。これらの光束は約30Mcd/m2の輝度で放出される。キセノンHIDランプを使用する場合、達成される輝度は約80Mcd/m2まで増加する。対照的に、単一の1mm2のLEDダイが50ルーメンの白色光を放出するようになされた場合(これは、現在利用可能な技術で達成し得る略最良のものである)、単一のダイの輝度は8Mcd/m2に過ぎず、依然としてハロゲンランプのものより数倍低く、通常のHIDランプより一桁低い。状況は、複数のLEDダイが必要とされる場合は、隣接するダイの間の所要の間隔により大幅に悪化する。
【0004】
放出光の単一の集中(平行化)ビームを得るために種々のLEDダイからの光出力を一緒に結合することが可能なLED光エンジン("光発生器"とも呼ばれる)の一例が、米国特許第6,402,347号に開示されている。この光エンジンにおいて、個々のLEDエレメントは背面板上に取り付けられ、これらエレメントの各々にはコリメートドームが装備されている。隣接して整列されたフレネルレンズが、個々のLED光ビームの単一の出力エレメント(例えば、光学光ガイド)上への投影を可能にしている。このシステムの主たる問題は大きな光の損失であり、該損失は種々の光界面からの反射により約60%にも達し得る。この光エンジンの他の欠点は、該光エンジンの暈及び二次光学系の所要の高精度位置合わせであり、斯かる光エンジンのコストを上昇させる。更に、このようなLED光エンジンの寸法及びコストは、通常の高輝度光源のものを遙かに超えるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、LED型の光エンジンであって、製造するのが一層容易且つ安価であり、小型の寸法のものであり、既知のLED型光エンジンよりも良好な性能を示すような光エンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、少なくとも1つの開口(アパーチャ)を備えるチェンバ及び該チェンバ内に配置される複数のLEDエレメントを有し、実効的に、上記チェンバの全ての内側表面が、特には可視領域、UV領域及び/又は赤外領域等の所望の領域内の光に対して実質的に非吸収性である高反射性の(好ましくは拡散反射性("白色反射性"とも呼ばれる)の)表面として具現されるような光エンジンを提供する。上記"高反射性"なる用語は、100%に近い、好ましくは≧95%の、より好ましくは≧98%の反射率として理解されるべきである。
【0007】
本発明により、LEDエレメントの間の表面領域を含み、LEDエレメントにより占有されていない全ての内側表面が高度に反射性であれば、斯かるLEDにより放出される実質的に全ての光は、恐らくは複数の多分多数の反射の後に上記開口を介して当該チェンバを離れる。斯様なチェンバ内での光の多重反射の現象は、"内部光再利用"として知られている。このような構成においては、各内部チェンバ表面は、LEDエレメントの表面の場合のように自身で光を放出するか又は光を反射するかのいずれにせよ、実効的に放出表面となる。本発明による光エンジンは、従来技術の光エンジンからの内部二次光学系は有さないので、製造するのが一層経済的である。望ましいなら、本発明による光エンジンには、当該光エンジンからの放出光ビームを整形及び/又はコリメートする目的で外部二次光学系(好ましくは、前記光エンジン開口の近傍に設けられる)を設けることができる。
【0008】
この様にして設計された"積分球"又は所謂"ウルブリヒト球"として構成されたチェンバにおいては、確かに、当該チェンバ内のLEDにより放出された光の殆ど大部分が上記開口を介して該チェンバから出力する。明らかに、全体の光エンジンの効率は、当該チェンバの内側表面の得られる反射率に最終的に依存する。斯かる内側表面の反射率は正確に100%には届きそうにないが、それでも、この限界には合理的に良く近づくことができる。以下においては、本発明による光エンジンにより例外的に良好な性能を得ることができることが示され、これによれば、最終的に得られる値は、チェンバ内のLED詰め込み密度(実装密度)、LEDの反射率及び当該光エンジンの光に曝される全内表面面積に対する上記開口の寸法等の当該光エンジンの正確な構造パラメータに常に依存する。従って、斯かる正確な構造パラメータは所望の用途に適するように選択されるべきである。
【0009】
以下においては、LEDは固体無機LEDダイであると仮定する。何故なら、これらは充分な光強度で目下入手可能であるからである。それにも拘わらず、充分な性能を提供する限りにおいて、例えばレーザダイオード、他の型式の半導体発光素子又は有機LED等の如何なる他のエレクトロルミネッセント素子も使用することができる。従って、以下における"LED"なる用語は、如何なる型式の適切なエレクトロルミネッセント素子に対する同義語と見なされるべきである。
【0010】
従属請求項及び後続する記載は、本発明の特に有利な実施例及びフィーチャを開示している。
【0011】
上記内側表面の反射率は、基本的に如何なる方法でも達成することができる。該反射率が好ましくは≧98%のように充分に高いことのみが重要である。好ましくは、該高反射性の表面は、チェンバの壁の内側表面にわたって拡散反射性材料を分布させることにより実現することができる。例えば、斯かる内側表面は、適切な材料により充分な厚さの粒子/バインダコーティングの形態で被覆することができる。
【0012】
本発明の特に好ましい実施例においては、上記拡散反射性材料は当該チェンバ壁の内側表面と、少なくとも所望の波長領域において透明な被覆板との間に封入される。この様に、該拡散反射性材料はチェンバ壁の内側表面と透明な被覆板との間に"挟まれる"。この構成は、反射性乾燥粉末(好ましくは、自由に流れる粉末)のような拡散反射性材料の使用を可能にする。好適な反射性白色粉末は、Al2O3、YBO3、BaSO4、TiO2、Ca-ピロリン酸塩(Ca-pyrophosphate)、Ca-ハロリン酸塩(Ca-halophosphate)、MgO又はこれら粒子の混合物等の無機粒子を含むことができる。如何なる有機バインダ材料の不存在も斯かる粉末粒子の反射率を増加させると共に、時間にわたる徐々の変色を防止する。5〜15μmなる平均粒径でのCa-ピロリン酸塩の使用が特に推奨されるが、その理由は、その安さ、容易な入手可能性、化学純度及び高温(>1000℃)に対する耐性、そのチェンバの内側表面と被覆板との間の相対的に狭い空間の乾燥粉末粒子による容易な充填を可能にするのに有用な約1%w/wのAlon-Cナノ粒子(即ち、ドイツ国、Degussa GmbHのAl2O3粒子)と混合される場合の自由に流れる粉末として振る舞う能力、及びその900℃での焼き鈍しの後の可視光に対する証明された非吸収特性である。Ca-ピロリン酸塩の場合、少なくとも98〜99%の反射率を達成するために、当該反射性粉末層は好ましくは少なくとも2mmの厚さを有すべきである。
【0013】
入力電力の光への変換に関して最大の可能な効率を達成するために、LEDエレメント内で発生される光の可能な限り多くが、実際にLEDからチェンバ内部に出射することが必要である。これは、LEDダイ表面と周囲との間の境界層において生じる内面反射によれば問題ではない。従って、本発明の好ましい実施例においては、当該光エンジンはLEDエレメントにより放出される光のチェンバ内への出力結合を向上させる出力結合手段を有する。
【0014】
上記出力結合手段は、例えばシリコーン樹脂及び/又は何らかの有機高分子材料から形成された透明ドームを有することができ、これらドームの各々は関連するLEDエレメントの光放出表面に光学的に接続される。LEDエレメント及び/又はLEDデバイス本体が取り付けられるチェンバ壁を被覆すると共に、拡散反射性白色材料を被覆する/挟むために被覆板が使用される場合、好ましくは、上記ドームは斯かる被覆板の孔を介して突出するようにする。LEDエレメントの周囲の斯様な透明ドームの存在は、LEDダイからの光の出力結合を促進する。一方、斯かるドームの存在は、当該光エンジンのチェンバ内での内部光再利用を実現することができる効率に悪影響を及ぼす可能性がある。LEDの特性及び関連する波長に依存して、関連するLEDエレメント内の又は斯かるエレメントに直に隣接するドームの底部で光の吸収が生じ得る。更に、当該光エンジンの内側における高度に反射性の被覆は、斯かるドームの間に位置する内側壁の表面領域上のみに存在し、これらドームは関連するLEDダイ自体の断面よりも大幅に大きな断面を有している。
【0015】
従って、他の実施例においては、上記LEDドームは単に省略される。この場合、白色反射性コーティングをLEDダイエレメントの間に塗布することができ、該コーティングはドームが使用される状況と比較して内側壁表面面積のかなり大きな割合を被覆するであろう。裸のLEDダイからの光の出力結合は本来余り効率的でないので、露出されたLEDダイ表面は好ましくは該ダイと光学的に接触する透明な散乱コーティング層により被覆されるようにするか、又は微細構造がLEDダイ表面に直に付与されるようにする。これらの後者の対策はLEDダイからの光の出力結合を促進する。
【0016】
最も好ましい実施例においては、反射性材料を被覆する前記透明な被覆板はLEDエレメントも被覆し、前記出力結合手段は、各々が関連するLEDエレメントの光放出面から上記透明被覆板まで延びるような複数の透明出力結合エレメントを有する。これによれば、上記の光学的な透明出力結合エレメント自体が上記被覆板の一部を形成してもよい。
【0017】
上記透明出力結合エレメントは、好ましくは、該出力結合エレメントと関連するLEDエレメントとの間の境界におけるよりも、該出力結合エレメントと上記透明被覆板との間の境界において一層広いような断面を有する。例えば、斯かる透明出力結合エレメントは、関連するLEDエレメントから離れる方向に広がるような断面を特徴とする円錐、放物又は四角錐形状を有することができる。このような形状は、該透明出力結合エレメントが、LEDダイで発生された光を出力結合すると共に該光を光導体のように上記透明被覆板を介してチェンバの内側に伝導するのを助けるのみならず、当該LEDに対するコリメータとして作用して該LEDの放出角を制限するのを助けることを保証する。
【0018】
本質的に、例えば光変換物質(通常、フルオレセント又は単に"蛍光(phosphor)"コーティングと呼ばれる)によりコーティングされたLEDダイ等の如何なるLEDエレメントも使用することができる。このようなLEDの蛍光コーティングは、或る波長において当該LEDにより放出された光の少なくとも一部が異なる波長に変換され、かくして、全体として光が所望の波長特性(即ち、或る色)で放出されるのを保証する。光干渉層をLEDダイと該LEDダイの表面上の蛍光コーティングとの間に配置し、該LEDダイ内部で発生された光の上記蛍光層への透過を促進すると共に該蛍光層からの蛍光変換された光のLEDダイへの透過を減少させるように作用させることができる。
【0019】
蛍光変換LEDが使用される場合、蛍光粒子等の光変換物質は、チェンバ壁の内側表面上に粒子/バインダコーティングとして分布されるか、又はチェンバ壁の内側表面と透明被覆板との間にバインダ無し乾燥粉末層として挟まれるかの何れかである例えば白色反射性粉末等の反射性材料上に(又は内に)分布させることができる。これは、処理する/詰め込む観点から一層容易且つ安価であるのみならず、蛍光飽和現象を打ち消すと共にダイからの光束出力を上昇させるのを助けるような戦略も提供する。例えば乾燥粉末の簡単な混合により拡散反射性白色粉末へ蛍光体を組み込むことは、LEDエレメントの製造を簡素化させると共に、大量の蛍光体を相対的に大きな表面領域にわたり拡散させることができるので高い光強度における蛍光飽和を防止する。拡散反射性白色粉末層又は拡散反射性粒子/バインダコーティングにおける蛍光体の量及び配置は、適切なカラー点が得られるように最適化することができる。この場合、蛍光無しLEDエレメントも使用することができる。
【0020】
付加的に又は代替的に、例えば赤、緑及び青等の異なる波長特性のLEDエレメントを光エンジン内に所望に応じて使用し及び配置することもできる。本発明による光エンジンが利用される場合、適切な色混合の問題は自動的に解決される。何故なら、個々のLEDダイは外側からは直接見ることができず、内部の色混合は内部光再利用過程によりなされるからである。
【0021】
前記開口は、基本的に、当該チェンバ壁の簡単な開口からなることができる。当該光エンジンの性能に対する開口パラメータの影響は、後に詳述する。当該光エンジンで発生された光が捕捉される例えば光ファイバ等の光導体エレメントを、該開口の近傍、内又は上に配置することができる。本発明の好ましい実施例においては、ビーム形成エレメントが該開口内に又は該開口の近傍に配置される。例えばレンズ、円錐状エレメント、四角錐状エレメント又は放物状エレメントの形態の光コリメートエレメントが特に好ましい。該開口を介して出射する光は、斯様なコリメートエレメントにより、規定された放出角内にコリメートされ、及び/又は規定された空間的/角度的光強度分布パターン内に整形される。
【0022】
例えばチェンバ内部と前記透明被覆板との間、及び/又はチェンバ内部と前記出力結合手段との間、及び/又はチェンバ内部と当該光エンジンの前記開口に配置されたコリメートエレメントとの間、及び/又はチェンバ内部とLEDダイ表面との間の境界等の、当該光エンジン内に存在する種々の光学的界面における内部反射による光の損失を最少化するために、当該チェンバは好ましくは下記のような材料により充填される。即ち、該材料とは、上記透明被覆板の及び/又は上記出力結合手段の及び/又は上記コリメートエレメントの及び/又は上記LEDエレメントの屈折率に近い又は、より好ましくは、一致するような屈折率を有すると共に、可視光に対して及び/又は上記LEDダイ内部で発生され該LEDダイから放出される光に対して上記種々の光学的界面の"光学的可視性"を低減し又は除去さえもするような材料である。
【0023】
このような材料は、所望の(一致する)屈折率を持つ固体樹脂(特にはシリコーン樹脂)又は透明な液体(特には油)等の有機媒質とすることができ、好ましくは可視光に対して及び/又は上記LEDダイ内で発生され該LEDダイから放出される光に対して実質的に非吸収性であるものとする。この対策は、空洞内の上記充填材料が前記光学エレメントと光学的に接触する場合に、当該光エンジンの開口に配置された該光学エレメントからのフレネル反射も最少化する。好ましい実施例は、上記材料が上記LEDエレメントの前端(front end)冷却にも使用されるような液体材料である場合に得られる。この場合、好ましくは、上記液体材料は、該液体の冷却効果を増加させるために当該光エンジンの空洞と何らかの追加の外部冷却装置との間を流体としてポンプ循環される。
【0024】
本発明による光エンジンは、LED照明機器であって、該照明機器が調整可能な輝度及び色の光出力ビームによる限定された面積の光出力開口を有し、該開口から光を幾つかの遠隔位置(特には自動車ヘッドランプ等の自動車ライトシステムにおける)に伝送することができることを特徴とするような如何なるLED照明機器用途にも使用することができる。放出される光出力ビームの輝度は、都合良く、当該光エンジン内部の個々のLEDエレメントに供給される電力を変化させることにより調整することができる。放出される光出力ビームの色も、例えば赤、緑及び青のLEDエレメント等の異なる波長特性のLEDエレメントが当該光エンジン内部に存在する状況下で、個々のLEDエレメントに供給される電力を変化させることにより調整することができる。
【0025】
本発明の他の目的及びフィーチャは、添付図面と関連して考察される下記詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、斯かる図面は本発明の限定を定めるものとしてではなく、解説の目的のためにのみ設計されたものであると理解されるべきである。尚、図面において同様の符号は全体を通して同一のエレメントを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
各図における対象物の寸法は明瞭化のために選定されており、必ずしも実際の相対寸法を反映していない。
【0027】
図1及び2は、本発明による光エンジンの特に好ましい実施例を示しており、ここで、図1は全体の光エンジンの断面を示し、図2はチェンバ壁の拡大された断面を示している。
【0028】
該光エンジン1は、例えば長方形の又は円筒の態様で構築されたチェンバ6を有している。表面面積Aexitの開口又はアパーチャ7が、チェンバ6の頂部に配置され、コリメートエレメント8につながっている。LEDエレメント13が、チェンバ6の内側壁10上に、外被に沿って及び開口7に対向する内側表面上に互いから或る距離で(即ち特定の格子に)配置されている。これらLEDエレメント13は、出力結合エレメント15を介して透明被覆板11に接続されている。
【0029】
この透明被覆板11は、チェンバ6内に該チェンバ16の内側壁に対して或る距離で配置されている。チェンバ6の全壁10は、開口7を備える頂部側も含め、透明被覆板11により被覆されている。透明被覆板11とチェンバ6の壁10の内側表面との間の間隙は、拡散反射性白色粉末により充填されている。該反射性白色粉末の好適な候補は、Al2O3、TiO2、YBO3、BaSO4、Ca-ピロリン酸塩、Ca-ハロリン酸塩又はMgOである。透明被覆板11のための好適な材料は、PMMA(ポリメチル-メタクリレート:polymethyl-methacrylate)、PC(ポリカーボネイト:polycarbonate)、樹脂性シリコーン化合物及びガラスを含む。この構造は、LEDダイにより占められていないチェンバ6の全内側表面20が高度に反射性となるのを保証する。
【0030】
上記壁の構造を図2に詳細に見ることができる。この場合、個々のLEDダイ13は取付スラグ14上に取り付けられ、これらスラグもLEDダイの周りの反射性頂面を特徴とする。透明な切頭反転三角錐又は円錐が、透明被覆板11に光学的に結合された出力結合エレメント15として作用する。更に、これらの出力結合エレメント15は、樹脂又は何らかの他の適切な接着剤状物質によりLEDダイ13に光学的に結合されている。これらの出力結合エレメント15を樹脂又は同様の物質により透明被覆板11に光学的に結合する代わりに、これらエレメントは好ましくは透明被覆板11の一部として直に形成することもできる。出力結合エレメント15は、放出された光を当該光エンジン1の内部9に向かって案内する。円錐形出力結合エレメント15の断面は、関連するLEDダイ13から離れる方向に広がっている。好ましくは、これら出力結合エレメントは、垂直線に対して5°と65°との間の傾き角、より好ましくは垂直線に対して20°と50°との間の傾き角、最も好ましくは垂直線に対して約45°の傾き角を特徴する。
【0031】
透明被覆板11とチェンバ6の非透明外壁10の内側表面との間の距離、即ち拡散反射性粉末層12の厚さは、好ましくは、約2〜3mmである。粉末層12はチェンバ6の高度に反射性の表面20を提供し、これが内部光再利用を可能にする。コリメートエレメント8は、開口7上に配置されると共に、例えば透明なプラスチック材料から形成され、当該光エンジン1の上記開口から放出される光を入力する。該コリメートエレメント8の形状は、放出される光ビームの伝搬方向に対して測定してコリメーション半角θCより大きな角度では該コリメートエレメント8の出射面から実質的に如何なる光も放出されないように選定される。
【0032】
透明被覆板11からチェンバ6の内側への光の出力結合を改善すると共に、チェンバ6からコリメートエレメント8への光の結合を簡単化するために、全体のチェンバ6の内部9は、透明被覆板11の屈折率に且つ恐らくはコリメートエレメント8の屈折率にも近い又は一層好ましくは一致するような屈折率を持つ固体又は液体の媒体22により充填される。被覆板11と媒体22との間の境界界面における、及びコリメートエレメント8と媒体22との間の界面における不所望な光損失を惹起する反射は、これにより防止されるか又は少なくとも減少される。媒体22が液体の媒体である場合、例えば該液体媒体22をチェンバ6と外部の冷却装置との間でポンプ送りすることにより前端でのLED冷却の目的にも使用することができる。
【0033】
図3は、チェンバ6の壁10の内側表面の幾らか変更された構造を示している。ここでは、LEDダイ13はチェンバ壁10の内側表面上に直に取り付けられている。光学接触層16が、各LEDダイ13上に配置されている。この接触層16は、LEDダイ13からの光の出力結合を促進するために散乱粒子を含むことができる。透明被覆板11はブロック状の出力結合エレメント15'を特徴とし、これらブロック状出力結合エレメントは透明被覆板11からLEDダイ13に向かい突出し、延長部又は橋絡部として作用して、接触層16との光学的接触を提供する。透明被覆板11と壁10の内側表面との間の空間は、ここでも、反射性乾燥白色粉末12で充填されている。
【0034】
図4は、他の可能な構成を示している。図3におけるのと同様に、LEDダイ13は内側壁10上に配置されている。LEDダイ13により放出される光のLEDダイ表面を介しての出力結合を容易にするために、LEDダイ13は、好ましくは、該LEDダイの表面と光学的接触状態にある透明散乱層17により囲繞され、これによりLEDダイ13からチェンバ6への光の出力結合を促進する。高度に拡散反射性の白色粒子/バインダ層18が、個々のLED13の間に位置される内側壁10の表面を被覆している。
【0035】
図5には、他の可能性のある構成を見ることができ、そこでは、各々がLEDダイエレメント(図示略)を備えるLED装置本体23が、外壁10の内側表面上に取り付けられている。LEDダイエレメント自体はLEDドーム19内に封入され、これらドームはLEDダイから放出される光の良好な出力結合を保証する。LEDドーム19が突出するような格子パターン状の適切な開口を備える被覆板21が、LED装置本体23を覆っている。LEDドーム19の間における被覆板21の表面は白色拡散反射性粒子/バインダコーティング18により被覆され、該コーティングは高反射性コーティング層18となるような充分な厚さを有している。
【0036】
光エンジンの他の例示的構成2が図6に示されている。該構成と図1に示した例との間の基本的な相違は、チェンバ6が図1の光エンジンのものとは異なるように構成されている点にある。この場合、チェンバ6は、個々のLEDが図1に示した例におけるように取り付けられた床壁10を特徴としている。しかしながら、ここでは、側壁10'が上記床壁10から開口7に向かって円錐状に延在している。これらの側壁10'上にはLEDは配置されていない。所望の高反射性内側表面20を付与するために、透明被覆板11は、床壁10に対するのと同様に、側壁10'の内側から約2〜3mmの距離に配置され、該被覆板11と側壁10'との間の空間、並びに床壁10と被覆板11との間におけるLED取付エレメント14、ダイ13及び出力結合エレメント15の間の空間は高度に反射性の白色粉末12により充填されている。ここでも、コリメートエレメント18が開口7に配置されている。この光エンジン2の前記光エンジン1に対する利点は、減少された体積、特に減少された高さにある。一方、チェンバの内側壁の全面積に対するLEDエレメントの数は、より少ない。何故なら、側壁10'はLEDエレメントにより占められていないからである。
【0037】
本発明による光エンジンの他の実施例3が図7に示されている。この光エンジン3のハウジング6は、前記光エンジン2のハウジングと同様の幾何学構造を特徴としている。しかしながら、LEDエレメントは図5に示したのと同じ態様で基板10上に取り付けられている。即ち、LEDデバイス本体23、及びLEDダイ(図示略)が封入された支持LEDドーム19が、基板10を占めている。LEDが取り付けられた基板壁10の表面、並びにLEDデバイス本体23の側壁及び頂部の両方が白色拡散反射性コーティング18により被覆され、突出するドーム19のみがコーティングされないままとなっている。LEDドーム19が突出する格子パターン状の適切な開口を備える透明被覆板11'が、LEDデバイス本体23を覆っている。この透明被覆板11'と外壁10の内側表面との間の空間は、反射性白色乾燥粉末12により充填されている。側壁10'の内側表面と透明被覆板11との間に配置された反射性材料12を伴って開口7に向かい狭まる円錐状側壁10'は、図6の光エンジン2に関するのと同様の態様で構築されている。
【0038】
図8は、本発明による光エンジンの他の実施例4を示し、該実施例は外側ハウジングに関しては図7に記載した例と同様の態様で構築されている。しかしながら、図7の例におけるのとは別に、ここでは透明被覆板11'も反射性白色乾燥粉末12も使用されていない。代わりに、ここでは、円錐状チェンバ壁10'も内側が拡散反射性粒子/バインダ層18により被覆され、高反射性表面20を付与するようになっている。更に、白色拡散反射性粒子/バインダ層18は、チェンバ壁10の内側表面上に、及び透明ドーム19の間に位置するLEDデバイス本体23の表面上にも存在する。
【0039】
図9は本発明による光エンジンの他の実施例5を示し、該実施例は図1及び図6の例とはチェンバ6の外形のみが本質的に相違する。チェンバ6の下部は円筒状又は長方形状であり、基底壁10及び側壁10は、各々、或る格子パターンで配置されたLEDエレメント13により占められている。チェンバ6の上部は、図6の光エンジン2の円錐形に形成された側壁10'と同様の態様で開口7に対して円錐状に狭まっている。チェンバ6の上部の該円錐状の壁10'は、内側がLEDエレメント13によっては占められておらず、高度に反射性の表面20のみを有している。ここでも、この高反射性表面20は、壁10、10'から或る距離に配置された透明被覆板11、及び壁10、10'の内側表面と被覆板11との間の空間を充填する白色反射性粉末12により形成されている。
【0040】
図6ないし9に示す全ての場合において、チェンバ6の内部9は、図1の光エンジン1に関して説明したように、好ましくは適切な屈折率を有する固体又は液体媒体22により充填される。
【0041】
上記異なる例は、チェンバ6が基本的に如何なる種類の外部幾何学形状を有し得ることも示している。更に、開口7は、必ずしも側壁における円形開口である必要はなく、必ずしも光学エレメント8が設けられる必要もないことが力説されるべきである。如何なる側壁(好ましくは、相対的に小さな寸法の)も、構造から単に除外して開口を付与することもできる。これが、図10の単純化された概要図の円筒状チェンバ6により示されている。基本的に、このようなチェンバ6は、例えば対向する側面上の開口のように、如何なる基本的表面幾何学構造も有することができる。例えば、両方の小さな面が外界に対して開放しているような長尺の光エンジン立方体を想像することもできる。これは、光エンジンの意図される機能及び当該光エンジンが動作する空間的制約に依存する。
【0042】
チェンバの幾何学構造、チェンバ内のLEDエレメントの数及び開口の寸法等の正確な構造パラメータは、当該光エンジンの最大寸法及び所望の出力パラメータ等の制約に依存する。従って、以下では達成可能な出力パラメータが当該光エンジンの構造パラメータにどの様に依存するかを説明する。
【0043】
表面積Aexitの単一の開口又は出射ポート7、及び出射ポート表面面積Aexitを含む全内部表面積Aengineを有するような図1に図示した光エンジンボックスを考察しよう。各々が(投影された)平らな頂部面積ALEDを有するような合計でNLED個のLEDダイエレメント13が光エンジン1の壁10の内側表面に取り付けられていると仮定する。また、各LEDエレメント13は反射率RLEDを有し、自身のダイ面積ALEDから光束φLEDを放出すると仮定する。LEDエレメント13の周りには反射率Rwallの白色拡散反射性の壁20が横方向に存在する。
【0044】
開口出射ポート7を介して外界へ逃れる、内部で生成された光の透過される割合Tは:
【数1】
なる級数から得られ、これは、
【数2】
なる"開口割合"の場合、
【数3】
と等価となる。
【0045】
これによれば、Ravは、
【数4】
に従う当該光エンジンの内壁の非出射部の平均された内部反射率Ravを示し、ここで、
【数5】
は、内部反射する光エンジン表面面積Aengine−AexitのLEDエレメント13により覆われる割合を示す。
【0046】
上記式は、内部の光エンジンの壁の如何なる特定の形状も仮定していない。一方、式(1)における級数展開(series expansion)は小さな開口割合fに対してのみ成り立つ。単一の平らな光放出面を有するような光エンジンの極端な場合には、放出する光源の経路には反射する面がないので、最大のf=0.5及び"定義により"T=1を有する。この場合、式(1)は誤ってT<1を予測するが、容易に達成可能なRav>0.90である限り該エラーは大きなものではない。
【0047】
現実的な光エンジンに対しては、好ましくは上限f≒0.3〜0.4が維持されるべきであるが、本発明による光エンジンの概念は、明らかに、より小さなfの値に対して一層関心があるものである。例えば、6つの面のうちの1つのみが開放しているような立方体として実施化された光エンジンはf=0.17なる開口割合を有する。開口割合fに対する一層小さな値は、上記立方体を一層長方形にすると共に、その2つの小さな面のうちの一方のみを開放状態に維持することにより、容易に得ることができる。本発明の好ましい実施例においては、開口割合fは、≦0.15、より好ましくは≦0.1とすべきである。例えば、2cmの直径、3cmのチェンバ長及び1cmの開口直径を持つ図1による光エンジン1はf=0.03なる開口割合を有する。
【0048】
RLED=Rwall=Rav=1の場合、光の損失は存在せず、如何なる任意の小さな開口割合fに対しても式(1)に従いT=1を得る。これは、理論的に、f→0の場合に極端に高い輝度レベルの生成を可能にする。しかしながら、現実には、光学的な光損失を完全に回避することは決してできないから、これは不可能である。
【0049】
従って、システムパラメータの関数として光エンジン1の開口出射ポート7で達成可能な輝度に関する方程式を導出することも興味深いものである。個々のLEDダイエレメント13の輝度レベルBLEDに対して正規化された開口出射ポート7(コリメートエレメント8は存在しないと仮定する)における輝度Bexitを示す輝度比Bは、
【数6】
から得られ、これは、LEDダイ13及び開口出射ポート7の両方がコリメートされていない光(即ち、θc=90°のランバート光)を放出する場合に有効である。
【0050】
更に、以下においては"輝度集中係数"とも呼ぶ第2輝度比L(θ)に関する関係を、
【数7】
により導出することも有益であり、この比は、光放出出射面(これは、コリメートエレメント8の投影された光放出出射面Acolとすることができる)の輝度Bexit(θc)の、LEDエレメント13が実装密度θLEDで取り付けられた表面積Ascreen=Aengine−Aexitの仮想フラットスクリーンのスクリーン平均輝度Bscreen(θc)に対する比を示す。ここで、光は、ビームの伝搬方向に対してコリメーション半角θc内に角度制限されたコリメートされたビームとして放出されると仮定される。コリメートされない光に対しては、θc=90°となる。
【0051】
輝度集中係数L(θc)を知ることは、光エンジン1の内側にNLED個のダイを表面実装密度θLEDで一緒に詰め込むことにより、NLED個のダイがフラットな光放出スクリーン上に同一の表面実装密度で単に取り付けられた単純な状況と比較して正味の光集中が達成されたか否かを示すことになる。L(θc)>1なる値は相対的光(輝度)集中を示し、L(θc)<1なる値は相対的光(輝度)の希釈を示す。明らかに、斯様に大きなL(θc)の値は実際に可能であり、確かに1より大きな値が一般的に望ましい。
【0052】
図1に示すように、光エンジン1が2Dコリメートされた光を放出するようになされている場合、関連する出射ポート表面面積は、光エンジン1の出射ポート7に取り付けられたコリメートエレメント8の投影された出力面Acolのものとなる。エテンデュ(etendue)の法則に従えば、所与のコリメーション半角θcに対して、コリメートエレメント8の最小の所要の出力表面面積Acolは、
【数8】
により図1の光エンジン1の開口7の出力面積Aexitに関係し、従って減少するθcにおいて放出面Acolの不可避的拡大を示す。
【0053】
スクリーン平均輝度レベルBscreen(θc)は、
【数9】
に従いBLED(θc)に関係する。
【0054】
図1による光エンジン1の実施例では、個々のLEDエレメントには四角錐状出力結合エレメント15の形態のコリメートエレメントが設けられている。従って、個々のLEDの見かけの光放出表面面積も増加するが、これらは、フラットな取付スクリーン上での、
【数10】
なるLED実装密度制約が満たされる限りにおいて、斯かるスクリーンを拡大することなしに該取付スクリーン(式(4)の導出のために先に規定した表面面積Ascreenの仮想フラットスクリーン)上で直接調整することができる。この場合、該スクリーン表面面積Ascreenはθcとは独立とすることができる。
【0055】
上述したことから、及びθc<90°ならば式(4)におけるBexitは光エンジン1の開口7上に取り付けられたコリメートエレメント8の光出力面における輝度Bcolを示すことを心に留めると、L(θc)は、
【数11】
から得られることになる。
【0056】
θc=90°(ランバート光)なる特別な場合に関して、図11は、透過率(transmission)T及び輝度比Bの計算値を、現実的な条件に対応する反射率Rwall=0.98及びRLED=0.50並びに実装密度θLED=0.05における開口割合fの関数として示す。
【0057】
図11からは、開口割合fが減少すると、出射ポートにおける達成可能な輝度比Bは増加するが、当該光エンジンを離脱する内部生成光の透過割合Tに比例する光束出力が大幅に減少することが明らかである。光束及び輝度は、これらの関係が開口割合fに対して逆の傾向を示すので、
【数12】
に従う品質パラメータQを定義することに意味がある。
【0058】
図11では、品質パラメータQも開口割合fの関数としてプロットされている。このプロットから、Qは最適な開口割合foptにおいて最大値を経ることが明らかとなる。foptの値は、
【数13】
から得られ、ここでRavは式(2)により与えられる。
【0059】
しかしながら、Qはf=foptの近傍では開口割合fに強くは依存しない。高いBより高いTの方が重要である場合(例えば、一般照明用途に関係する場合)、f>foptなる値を選択することが推奨される。高いBが高いTより重要な場合は、逆が真となる。
【0060】
図12は、実装密度θLED=0.05及びθc=90°における種々のRLED及びRwallの値に関して品質パラメータQの計算値を開口割合fの関数として示している(IはRwall=0.98及びRLED=0.7;IIはRwall=0.98及びRLED=0.5;IIIはRwall=0.96及びRLED=0.5)。foptの周辺の開口割合に対して品質パラメータQは目立って低下する。即ち、反射率RLED及びRwallが減少すると、曲線が平らになる。
【0061】
更に、図13は一定のRwall=0.98及びRLED=0.5並びにθc=90°における種々の値θLEDに関して品質パラメータQの計算値を開口割合fの関数として示している。見られるように、品質パラメータQは実装密度θLEDの増加に伴いfの全範囲にわたり増加する。
【0062】
図14、15及び16は、現実的な反射率Rwall=0.98及びRLED=0.5における光集中係数L(θc)の計算値を、開口割合fの種々の値に関して(図14では、一定の実装密度θLED=0.05で)、及び種々の値θLEDに関して(図15においては一定の開口割合f=0.05で、図16においては一定の開口割合f=0.1で)示している。全図において、曲線は式(7)による制約の下で描かれている。
【0063】
少なくともθc=60°(一般照明用途)に対して、本発明による光エンジンの使用は、80%のルーメン出力(即ち、T=0.8)において、係数5までの数値で著しい輝度集中が達成されるのを可能にすることが明らかである。また、より高い光集中係数Lは、開口割合fを減少させることにより、ルーメン効率の減少を犠牲にして達成することができる。
【0064】
Rwall及びRLEDが常に現実に可能な限り高く選定されるとすると、開口割合fの関数として当該性能に影響を与えるものは、主として内壁上のLEDエレメントの実装密度θLEDである。一方における輝度と他方におけるルーメン効率との間で、常に妥協点を捜さねばならない。また、全体として必要とされるルーメン出力を考慮しなければならず、これによれば、当該光エンジンの寸法は総ルーメン出力に直に比例する。
【0065】
高いルーメン効率が最も重要である場合は、低いθLED≒0.01においてf≒0.10〜0.12の開口割合を選択することが推奨される。これは、T≒0.8及びB≒0.07を可能にし、これはθc=90°において取付壁のスクリーン平均輝度より依然として7倍明るい。輝度集中係数L(θc)はθcが減少すると減少するが、θc=40°までかなりに留まる。
【0066】
高い輝度が最も重要である場合は、高いLED実装密度θLED≒0.05、又は実現可能ならそれ以上を選択することが推奨される。最大に達成可能なLED実装密度を上昇させるために、LEDエレメントの冷却を、例えば先に提案した一致する屈折率の冷却液により実施すべきである。f≒0.1においては、小さなT=0.65ではあるが、より高い輝度比B=0.3を有し、これは、θc=90°において、取付壁のスクリーン平均輝度B=θLEDより依然として6倍明るい。輝度は、開口割合fを例えばf=0.05まで低下させることにより更に増加させることができる。f≒0.1において、品質パラメータQはθLEDが増加すると大幅に改善する。従って、本発明による光エンジンから最大の利益を得るためには、θLEDをθLED=0.10における又はそれを超えるレベルまで増加させることが非常に重要である。
【0067】
以上、本発明を好ましい実施例及びそれらの変形例の形態で開示したが、これらに対して本発明の範囲を逸脱すること無しに多数の更なる修正及び変形をなすことができると理解される。また、明瞭化のために、本出願を通して単数形の使用は複数を排除するものではなく、"有する"なる文言は他のステップ又は構成要素を排除するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明による光エンジンの第1実施例を示す。
【図2】図2は、図1による光エンジンのチェンバの壁の一部の拡大図を示す。
【図3】図3は、本発明の第2実施例による光エンジンのチェンバの壁の拡大された一部を示す。
【図4】図4は、本発明の第3実施例による光エンジンのチェンバの壁の拡大された一部を示す。
【図5】図5は、本発明の第4実施例による光エンジンのチェンバの壁の拡大された一部を示す。
【図6】図6は、本発明による光エンジンの第5実施例を示す。
【図7】図7は、本発明による光エンジンの第6実施例を示す。
【図8】図8は、本発明による光エンジンの第7実施例を示す。
【図9】図9は、本発明による光エンジンの第8実施例を示す。
【図10】図10は、本発明の第9実施例による光エンジンのチェンバの形状の単純化された概念図を示す。
【図11】図11は、開口割合fの、− 当該光エンジンから放出(透過)される内部発生光の割合T、− 個々のLEDエレメントの輝度に対して正規化された当該光エンジンからの放出光ビームの輝度を示す輝度比B、− 品質パラメータQ、に対する影響を図示するグラフである。
【図12】図12は、内側の反射する壁表面及びLED表面の種々の反射率に対して、開口割合fに対する品質パラメータQの依存度を示すグラフである。
【図13】図13は、当該光エンジンの内側壁上のLEDエレメントの幾つかの実装密度θLEDに関して、開口割合fに対する品質パラメータQの依存度を示すグラフである。
【図14】図14は、種々の開口割合fに関して、コリメーション角度θCに対する光集中係数Lの依存度を示すグラフである。
【図15】図15は、特定の第1開口割合fに対する種々のLED実装密度θLEDに関して、コリメーション角度θCに対する光集中係数Lの依存度を示すグラフである。
【図16】図16は、特定の第2開口割合fに対する種々のLED実装密度θLEDに関して、コリメーション角度θCに対する光集中係数Lの依存度を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの開口を備えるチェンバと、このチェンバ内に配置された複数のLEDエレメントとを有し、実効的に前記チェンバの全内側表面が、所望の波長領域内の光に対して実質的に非吸収的である高反射性表面として実現されているような光エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の光エンジンにおいて、前記LEDエレメントにより放出される光の前記チェンバ内への出力結合を向上させる出力結合手段を有するような光エンジン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光エンジンにおいて、前記高反射性表面が、前記チェンバの壁の内側表面上に分布される拡散反射性材料により実現されるような光エンジン。
【請求項4】
請求項3に記載の光エンジンにおいて、前記拡散反射性材料が、透明被覆板と前記チェンバの壁の内側表面との間に封入されているような光エンジン。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の光エンジンにおいて、前記拡散反射性材料が反射性乾燥粉末を有するような光エンジン。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の光エンジンにおいて、前記透明被覆板が前記LEDエレメントを覆い、前記出力結合手段が、各々が対応するLEDエレメントの光放出面から前記透明被覆板まで延びる複数の透明出力結合エレメントを有するような光エンジン。
【請求項7】
請求項6に記載の光エンジンにおいて、前記透明出力結合エレメントが、当該透明出力結合エレメントと対応するLEDエレメントとの間の境界におけるよりも当該出力結合エレメントと前記透明被覆板との間の境界において一層広い断面を有するような光エンジン。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記出力結合手段が、各々が対応するLEDエレメントの光放出面に光学的に結合された透明なドームを有するような光エンジン。
【請求項9】
請求項8に記載の光エンジンにおいて、前記ドームが、前記LEDエレメントが取り付けられた前記チェンバの壁を被覆する被覆板の孔を介して突出するような光エンジン。
【請求項10】
請求項3ないし9の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記チェンバの壁の内側表面上に分布された前記反射性材料が、光変換物質を有するような光エンジン。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、異なる波長のLEDエレメントが前記チェンバ内に配置されているような光エンジン。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記チェンバの前記開口に配置された光コリメートエレメントを有するような光エンジン。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記チェンバが、前記透明被覆板の及び/又は前記出力結合手段の及び/又は前記コリメートエレメントの及び/又は前記LEDエレメントの屈折率に近い又は好ましくは一致する屈折率を有する材料により充填されているような光エンジン。
【請求項14】
請求項13に記載の光エンジンにおいて、前記材料が、前記LEDエレメントの前端冷却にも使用される液体材料であるような光エンジン。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記開口の表面面積を含む当該光エンジンの全内部表面面積に対する前記開口の表面面積の比により定義される開口割合が、好ましくは≦0.15、より好ましくは≦0.1であるような光エンジン。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか一項に記載の光エンジンを含む自動車用ライトシステム。
【請求項1】
少なくとも1つの開口を備えるチェンバと、このチェンバ内に配置された複数のLEDエレメントとを有し、実効的に前記チェンバの全内側表面が、所望の波長領域内の光に対して実質的に非吸収的である高反射性表面として実現されているような光エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載の光エンジンにおいて、前記LEDエレメントにより放出される光の前記チェンバ内への出力結合を向上させる出力結合手段を有するような光エンジン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の光エンジンにおいて、前記高反射性表面が、前記チェンバの壁の内側表面上に分布される拡散反射性材料により実現されるような光エンジン。
【請求項4】
請求項3に記載の光エンジンにおいて、前記拡散反射性材料が、透明被覆板と前記チェンバの壁の内側表面との間に封入されているような光エンジン。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の光エンジンにおいて、前記拡散反射性材料が反射性乾燥粉末を有するような光エンジン。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の光エンジンにおいて、前記透明被覆板が前記LEDエレメントを覆い、前記出力結合手段が、各々が対応するLEDエレメントの光放出面から前記透明被覆板まで延びる複数の透明出力結合エレメントを有するような光エンジン。
【請求項7】
請求項6に記載の光エンジンにおいて、前記透明出力結合エレメントが、当該透明出力結合エレメントと対応するLEDエレメントとの間の境界におけるよりも当該出力結合エレメントと前記透明被覆板との間の境界において一層広い断面を有するような光エンジン。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記出力結合手段が、各々が対応するLEDエレメントの光放出面に光学的に結合された透明なドームを有するような光エンジン。
【請求項9】
請求項8に記載の光エンジンにおいて、前記ドームが、前記LEDエレメントが取り付けられた前記チェンバの壁を被覆する被覆板の孔を介して突出するような光エンジン。
【請求項10】
請求項3ないし9の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記チェンバの壁の内側表面上に分布された前記反射性材料が、光変換物質を有するような光エンジン。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、異なる波長のLEDエレメントが前記チェンバ内に配置されているような光エンジン。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記チェンバの前記開口に配置された光コリメートエレメントを有するような光エンジン。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記チェンバが、前記透明被覆板の及び/又は前記出力結合手段の及び/又は前記コリメートエレメントの及び/又は前記LEDエレメントの屈折率に近い又は好ましくは一致する屈折率を有する材料により充填されているような光エンジン。
【請求項14】
請求項13に記載の光エンジンにおいて、前記材料が、前記LEDエレメントの前端冷却にも使用される液体材料であるような光エンジン。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一項に記載の光エンジンにおいて、前記開口の表面面積を含む当該光エンジンの全内部表面面積に対する前記開口の表面面積の比により定義される開口割合が、好ましくは≦0.15、より好ましくは≦0.1であるような光エンジン。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか一項に記載の光エンジンを含む自動車用ライトシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−509515(P2008−509515A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524453(P2007−524453)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052583
【国際公開番号】WO2006/016324
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052583
【国際公開番号】WO2006/016324
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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