説明

光ケーブル接続用クロージャ

【課題】浸水に対するクロージャの補修に際して、クロージャを開けることなく、内部に浸水しているか否かを確実に検出できる光ケーブル接続用クロージャを提供する。
【解決手段】光ケーブル11の接続又は分岐に用いられ、開閉可能な下部筐体2と上部筐体3の両端に端面板4a,4bを配してなるクロージャ1で、前記の端面板4a,4bに、クロージャ内に浸入した水に接触して浸水状態を外部から電気的導通により検出する検出端子14が設けられていることを特徴とする。また、前記の検出端子14は、高さ方向の位置を異ならせて複数設けて、浸水量を推定できるようにする。また、クロージャ内に浸入した水を、遠隔により検知可能な浸水検知センサ20を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルの接続又は分岐に用いられるクロージャで、クロージャ内の浸水状態を検出する機能を備えた光ケーブル接続用クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークは、複数本の光ファイバ心線が収納された光ファイバケーブルで形成され、一般にクロージャと呼ばれる接続函を用いて、架空布設または地下布設される。クロージャ内で、光ファイバケーブルの各光ファイバ心線を相互接続、あるいは、引き落としのための分岐接続等が行われた後、クロージャ内に水分等が浸入しないように密封封止して閉じられる。
【0003】
光ファイバケーブルを地下布設する場合、クロージャは、通常、マンホールやハンドホール等に設置される。マンホールやハンドホールは、道路際にあって雨等によって水没することが多く、このため地下専用のクロージャは、水密性仕様となっていて、クロージャ内に水が入らないようになっている。一般的な仕様によれば、耐水圧39kPa(0.4kg/cm)〜98kPa(1.0kg/cm)の特性をもつため、水深4m〜10mまでの水密性を有する。
【0004】
しかし、水密性を有するクロージャでも、組立てのミスや光ファイバケーブルの損傷により、クロージャ内に水が浸入することがある。このため、クロージャ内に浸水検知センサを配し、遠隔地から浸水を検知する方法が知られている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0005】
浸水検知センサとしては、例えば、図4に示すようなものが用いられている。浸水検知センサ20は、受け部材21と膨潤材23によって移動する押圧部材22とからなる。受け部材21側には凹部21aが設けられ、押圧部材22側には凹部21aに対応する凸部22aが設けられ、この凹部21aと凸部22aの間にセンサ用光ファイバ12’が配置される。
【0006】
図4(A)に示す状態から、浸水検知センサ20が浸水状態となって膨潤材23が水分を含んで膨潤すると、図4(B)に示すように、押圧部材22を受け部材21側に押圧し、センサ用光ファイバ12’が湾曲される。このセンサ用光ファイバ12’の湾曲部分は、光損失が増加するので、これを遠隔地にある監視装置で計測することにより、浸水が生じたクロージャの位置を含めて検知することができる。
【0007】
クロージャで部分的に曲げられた光ファイバの光損失増は、OTDR( Optical Time-Domain Reflectometer )と言われている光パルス試験器を用いて検知される。この光パルス試験器は、光ファイバの一端から入力した光パルスが、反射して戻ってきた光パルスの散乱光(後方散乱光)を解析することで、クロージャの浸水検知と、どの位置にあるクロージャであるかを特定することができる。これによって、浸水が検知されたクロージャの補修が行われる。
【特許文献1】特開2005−20852号公報
【特許文献2】特開2000−258225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クロージャの浸水検知は、光ファイバの損失増加と遠隔地(通常、監視センタ)からの距離をOTDRで測定することにより行われる。この場合、監視センタに近い位置にあるクロージャは、精度よく検知することができるが、監視センタから遠い位置にあるクロージャの検知が困難になることがある。これは、監視センタに近い位置のクロージャに浸水があり、その浸水検知用の光ファイバに大きな損失増があると、その下流側にあるクロージャの浸水検知用の光ファイバまで光パルスが届かず、OTDRによる検出ができなくなることがある。
【0009】
また、クロージャが、比較的短い距離間隔で多数配設されていると、クロージャの位置の検知精度が悪く、現地に行って浸水しているクロージャの補修を行う場合に、クロージャが浸水しているか外部からは判別しにくい。このため、実際には浸水していない正常なクロージャを間違って開けてしまうことがある。クロージャの開閉作業は、非常に時間を要することから、この間違いによる作業ロスは、大きな問題である。
【0010】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、浸水に対するクロージャの補修に際して、クロージャを開けることなく、内部に浸水しているか否かを確実に検出できる光ケーブル接続用クロージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による光ケーブル接続用クロージャは、光ケーブルの接続又は分岐に用いられ、開閉可能な下部筐体と上部筐体の両端に端面板を配してなるクロージャで、前記の端面板に、クロージャ内に浸入した水に接触して浸水状態を外部から電気的導通により検出する検出端子が設けられていることを特徴とする。
また、前記の検出端子は、高さ方向の位置を異ならせて複数設けて、浸水量を推定できるようにしてもよい。また、クロージャ内に浸入した水を、遠隔により検知可能な浸水検知センサを備えているものとしてもよい。なお、本発明による光ケーブル接続用クロージャは、地下に配設して使用されクロージャに特に有用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、現地に行ってクロージャを開ける前に、クロージャの端面板に設けられている導電端子を用いて導通状態を測定することにより、クロージャ内に浸水があるかないかを簡単に検出することができる。この結果、内部に浸水のないクロージャを間違って開けることがなく、作業ロスの発生を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は、光ケーブルの接続に用いられるクロージャの一例を示す図である。図中、1はクロージャ、2は下部筐体、3は上部筐体、4a,4bは端面板、5a,5bは掛け金部材、6a,6bは係止部、7はフレーム部材、8は支持固定部材、9は吊り棒、10は光ファイバ収納トレイ、11は光ケーブル、11aはドロップ光ケーブル、12は光ファイバ心線を示す。
【0014】
クロージャ1は、例えば、図1に示すように、樹脂等で成形された半筒状の下部筐体2と上部筐体3からなり、その両端部を樹脂製の端面板4a,4bで閉塞した形状で構成される。下部筐体2には、例えば、複数の掛け金部材5aが設けられ、また相手の掛け金部材が係止する複数の係止部6aが形成されている。上部筐体3側にも、同様な複数の掛け金部材5bと複数の係止部6bを有していて、下部筐体2と上部筐体3は、それぞれの掛け金部材5a,5bを相手側の係止部6a,6bに掛けてロックすることにより閉塞される。
【0015】
端面版4aと4bは、下部筐体2と上部筐体3の両端部に形成されている嵌合溝に嵌め込むようにして支持され、下部筐体2と上部筐体3を閉じることにより固定される。なお、下部筐体2と上部筐体3及び端面板4a,4bの接合、嵌合部分はシール部材が介装されていて、水密構造で閉じられる。下部筐体2側には、フレーム部材7が配設され、フレーム部材7の両端には支持固定部材8が取付けられていて、下部筐体2に取付け固定される。
【0016】
フレーム部材7には、一対の吊り棒9が片持ち梁で設けられていて、この吊り棒9を用いて光ファイバ心線の接続部材、分岐部材、余長等を収納処理する光ファイバ収納トレイ10を吊り支持するように構成されている。また、光ケーブル11及びドロップ光ケーブル11aは、端面板4a,4bに開けられている挿通孔に、水密構造で導入できるように構成されている。
【0017】
一方の端面板(4a又は4b)の挿通孔からクロージャ内に導入された光ケーブル11の端部は、ケーブル外被を除去して内部の光ファイバ心線12(又はテープ心線)を、所定長さだけ露出させる。光ケーブル11及びドロップ光ケーブル11aのケーブル外被を除去した近傍部分は、下部筐体2の支持固定部材8により引き留め固定する(図示されず)。露出された光ファイバ心線12は、反対側の端面板(4b又は4a)から導入されている光ケーブル11の所定の光ファイバ心線12と、融着接続等により接続し、このときの補強スリーブ及び余長を光ファイバ収納トレイ10に収納する。また、ドロップ光ケーブル11aの光ファイバ心線と光ケーブル11の光ファイバ心線との接続部も同様である。
【0018】
光ファイバ収納トレイ10は、例えば、透明な樹脂で形成され余長等の収納状態が判るようにして、一対の吊り棒9に吊下げる形でクロージャ1内に複数個配される。このうちの1つの光ファイバ収納トレイ10には、浸水検知用の光ファイバ心線を収納し、また、この光ファイバ収納トレイ10を利用して、後述するようにトレイ下部に浸水検出センサを支持させるようにしてもよい。
【0019】
図2に、本発明に係る浸水状態を検出する検知機構の構成例を説明する図で、図2(A)はクロージャの端部分の内側を示す図、図2(B)はクロージャの端部分の外側を示す図である。図中、13、13’は浸水検出導線、14、14’は検出端子を示す。その他の符号は、図1で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0020】
本発明による浸水状態を検出する機構は、左右の端面板4a,4bの少なくとも一方の側に、図2(A)に示すように、クロージャ内に露出するように浸水検出導線13を設け、図2(B)に示すように、この浸水検出導線13に電気的に導通する検出端子14をクロージャ外に露出するように設けて構成される。浸水検出導線13は、クロージャの底部位置から上部方向に向けて、その高さ位置を変えて複数設けることができる。また、浸水検出導線13の他に、クロージャの最下部に接する導体端部を有する浸水検出導線13’(コモン導線)を設けるようにしてもよい。
【0021】
検出端子14は、それぞれの浸水検出導線13に対応して複数設けることができ、また、浸水検出導線13’に対応する検出端子14’(コモン端子)を設けることができる。これらの検出端子14,14’は、端面板4a,4bに水密構造で設けられ、クロージャ外部からテスタ等の導通試験器のプローブ端子が当てられるか、クランプされる形状で形成される。
【0022】
図3は、上述したクロージャの浸水状態を検出する方法を説明する図である。図中の符号は、図1,2で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。図3に示すようにクロージャ1は、上述したように、下部筐体2と上部筐体3の両端部に端面板4aと4bを配して閉塞され、水密構造で形成されているものとする。光ケーブル11間の接続及び分岐は、光ファイバ収納トレイ10を用いて、接続スリーブ、余長等が収納されて整理される。
【0023】
少なくとも一方の端面板(例えば、左側の端面板4a)には、図2で説明した複数の浸水検出導線13a〜13dがクロージャ内に露出するように設けられ、また、それぞれの浸水検出導線13a〜13dに電気的に接続された検出端子14a〜14dが水密構造で設けられる。なお、図3では省略してあるが、図2で説明したクロージャの最下部に接する導体端部を有する浸水検出導線13’とその検出端子14’を設けるようにしてもよい。なお、図3では、もう一方の端面板(右側の端面板4b)にも、同様に浸水検出導線13とその検出端子14を設ける例で示してある。
【0024】
また、上記構成のクロージャ1で、光ファイバを用いた浸水検知センサ20を備え、クロージャ内に浸水が生じたか否かを遠隔地から検知することが可能なシステムとすることができる。浸水検知センサ20には、例えば、背景技術の項で説明したのと同様な、図4に示す構造のものを用いることができる。この浸水検知センサ20は、複数の光ファイバ収納トレイ10の1つを利用して、その下部に支持させるようにして設置することができる。そして、光ケーブル11内の光ファイバ心線12の1本をセンサ用光ファイバ12’として、浸水検知センサ20に挿通させる。
【0025】
この浸水検知センサ20は、クロージャ1内に浸水が生じ、膨潤材23が水分を含んで膨潤すると、図4(A)から図4(B)のように、押圧部材22を受け部材21側に押圧し、センサ用光ファイバ12’を湾曲する。この結果、このセンサ用光ファイバ12’の湾曲部分の光損失が増加するので、これを遠隔地からOTDRで計測することにより、浸水が生じたクロージャの地点を含めて検知することができる。
【0026】
図3において、遠隔地において、クロージャ1への浸水が検知されたとする。この結果、クロージャ1が設置された場所に係員が出張し、テスタ等の導通試験器のプローブ端子を外部に露出している端面板4aと4bの検出端子14a〜14dの何れかに当てて、その導通をチェックする。実際に、クロージャ内に浸水が生じている場合は、浸水検出導線13の先端が水に接触して、左右の検出端子14間で導通が検出され、浸水を確認することができる。なお、コモン導線、コモン端子が設けられている場合は、端面板4aと4bの何れか一方の側のコモン端子と検出端子14a〜14d間で導通の有無で浸水状態を検出することができる。
【0027】
この結果、クロージャを開けて浸水状態を修復させる。他方、遠隔地からの検知では浸水が検知されたが、導通チェックの結果、浸水が確認できない場合は、そのクロージャを開かずに、近傍にある他のクロージャの浸水状態の導通チェックを行う。これにより、クロージャの無駄な開閉作業の発生を回避し、作業の効率化を図ることができる。
また、上下方向に高さ位置を異ならせた複数の浸水検出導線13a〜13dとその検出端子14a〜14dを選ぶことにより、クロージャ内の浸水量の概略を知ることができる。この浸水量を把握することにより、修復に緊急を要する状態であるか、しばらくは放置しておいても可能かどうか、検出結果を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の対象とされるクロージャの一例を説明する図である。
【図2】本発明によるクロージャの浸水状態の検出機構を説明する図である。
【図3】本発明のクロージャで、浸水状態の検出方法を説明する図である。
【図4】従来の浸水検知センサの一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
1…クロージャ、2…下部筐体、3…上部筐体、4a,4b…端面板、5a,5b…掛け金部材、6a,6b…係止部、7…フレーム部材、8…支持固定部材、9…吊り棒、10…光ファイバ収納トレイ、11…光ケーブル、11a…ドロップ光ケーブル、12…光ファイバ心線、12’…センサ用光ファイバ、13、13’…浸水検出導線、14、14’…検出端子、20…浸水検知センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルの接続又は分岐に用いられ、開閉可能な下部筐体と上部筐体の両端に端面板を配してなるクロージャであって、
前記端面板に、前記クロージャ内に浸入した水に接触して浸水状態を外部から電気的導通により検出する検出端子が設けられていることを特徴とする光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項2】
高さ方向の位置が異なる複数の前記検出端子を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項3】
前記クロージャ内に浸入した水を、遠隔により検出することが可能な浸水検知センサを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ケーブル接続用クロージャ。
【請求項4】
地下に配設して使用されることを特徴とする請求項3に記載の光ケーブル接続用クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−75348(P2009−75348A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243990(P2007−243990)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【Fターム(参考)】