説明

光ケーブル

【課題】光ケーブルに対する光ケーブル用端子の固着力を十分高くすることが可能であり、且つ光ファイバが断線し難い光ケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ21、22がシース材3に覆われている光ケーブル1において、前記シース材3をポリフェニレンエーテル樹脂を含む材料から構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光ケーブル(光ファイバケーブルと称されることもある)は、多量の情報の高速通信が可能であることから、家庭用、産業用の情報通信に広く利用されている。
【0003】
従来、室内用途の光ケーブルとして、例えば特許文献1に記載されているように、光ファイバ心線と鋼線からなるテンションメンバが難燃ポリエチレン製のシース材で被覆された光ケーブルが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−202471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ケーブル同士或いは光ケーブルと機器との接続は、光ケーブルの端末に光ケーブルコネクタ(光コネクタ或いは光ファイバコネクタと称されることもある)を設けて、該光ケーブルコネクタを介して行う。従来、光ケーブルを光ケーブルコネクタに固定するには、光ケーブルのテンションメンバを光ケーブルに固定する方法が一般的であった。しかしテンションメンバを用いて固定する場合、作業に非常に手間がかかるという問題があった。そこで、光ケーブルのシース材の上から光ケーブル用端子を圧着して固定し、この光ケーブル用端子を光ケーブル用コネクタに固定する方法を試みた。
【0006】
光ケーブルが室内で使用される際には、光ケーブルが強く引張られることがないが、自動車用等の室外で使用される場合には、光ケーブルに強い力が加わることが予想される。そのため室外で使用される光ケーブルは光ケーブル端子に対する高い固着力が要求される。
【0007】
しかしながら、従来の室内用光ケーブルを用いた場合、端子取付けの圧着の圧力により、光ケーブルの内部の光ファイバに局所的に圧力が加わり、光ファイバが断線してしまう不具合があることが判った。そこで光ファイバが断線しないように弱い力で圧着すると、光ケーブル端子のシース材に対する固着力が不十分であり、光ケーブルが強く引張られると、光ケーブルが光ケーブル用端子から抜けてしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、光ケーブルに対する光ケーブル用端子の固着力を十分高くすることが可能であり、且つ光ケーブルに光ケーブル用端子を圧着する際に光ファイバが断線し難い光ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の光ケーブルは、光ファイバがシース材に覆われている光ケーブルにおいて、前記シース材がポリフェニレンエーテルを含む材料から構成されていることを要旨とするものである。
【0010】
本発明光ケーブルにおいて、前記シース材が、引張り弾性率700MPa以上であることや、オレフィン系樹脂及び/又はスチレン系樹脂を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光ケーブルは、シース材がポリフェニレンエーテルを含む材料から構成されていることにより、弾性率が大きく硬いシース材であるため、従来の柔軟なポリエチレン系樹脂をシース材として用いた光ケーブルと比較して、シース材の上から光ケーブル用端子を圧着する場合の圧力により、光ケーブルの内部の光ファイバに局所的な圧力により断線する虞がなく、光ケーブル用端子の光ケーブルに対する固着力を高めることができ、固着力の優れた端子付き光ケーブルが得られる。
【0012】
更に本発明光ケーブルは、シース材が硬いことから、光ケーブル端子の圧着の際の断面変形を抑制することで、シース材の内部の光ファイバに対するダメージを減少させることができる。
【0013】
更に本発明光ケーブルは、シース材がポリフェニレンエーテルを含む材料を用いたことにより、優れた耐熱性、耐油性等を有することから、例えば自動車用等の屋外で使用される光ケーブルとして最適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の光ケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】図2は図1の光ケーブルの端末に光ケーブル用端子を取付けた端子付き光ケーブルの一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2の端子付き光ケーブルの圧着部分のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の光ケーブルの一例を示す断面図である。図1の光ケーブル1は、光信号を伝達する送信用と受信用の二本の光ファイバ21、22が、ポリフェニレンエーテルを含む材料から構成されているシース材3により被覆されている。更に図1の光ケーブル1は、シース材3の内部の光ファイバ21、22よりも外側の位置に、テンションメンバ41、42が、光ファイバ21、22に沿って配置されている。テンションメンバ41、42は、光ケーブル1自身の機械的強度を高める抗張力線として設けられている。
【0016】
光ケーブル1のシース材3は断面が略矩形状に形成され、図中左右方向の略中央の上下に、凹溝形状のノッチ51、52が上下対象に設けられている。この光ケーブル1の断面の大きさは、厚さD=2.0mm、幅W=3.2mmである。
【0017】
本発明の光ケーブル1は、シース材3にポリフェニレンエーテルを含む材料を用いた点に大きな特徴がある。ポリフェニレンエーテルを含む材料としては、ポリフェニレンエーテル以外の樹脂として、オレフィン系樹脂や、スチレン系樹脂を含んでいるのが好ましい。これらの他の樹脂を添加することで、成形性等を向上させることができる。またポリフェニレンエーテルを含む材料は、ポリフェニレンエーテルが組成物全体の中の20質量%以上含まれていればよい。
【0018】
ポリフェニレンエーテルを含む材料としては、一般に変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)と称される樹脂を用いることができる。このような樹脂として例えば市販品では、SABIC社製:NORYL WCV072 Resin、NORYL WCV065 Resin等がある。
【0019】
また上記ポリフェニレンエーテルを含む樹脂は、上記の樹脂成分以外に酸化防止剤、老化防止剤、充填剤等の各種添加材を、本発明の目的を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
【0020】
シース材3を構成する材料の引張り弾性率は、700MPa以上であることが好ましい。引張り弾性率が高くなると、シース材3に光コネクタ用端子を圧着する際に、シース材の断面変形を小さくして内部の光ファイバの変形によるダメージを更に小さくすることができる。また引張り弾性率の上限は1100MPa以下であるのが、ケーブルが曲げやすく取り扱いやすいなどの理由から好ましい。
【0021】
光ファイバ21、22は、コアと、コアよりも低い屈折率を有しコアの外周を覆うクラッドを備える。光ファイバ21、22は、例えば、石英ガラス等のガラスファイバを用いることができる。ガラスファイバは、コアとクラッドの両方が石英ガラスを用いたものであってもよいし、コアのみを石英ガラスとし、クラッドにプラスチックを用いたものであっても、いずれでもよい。また光ファイバ21、22はガラスファイバの外側が紫外線硬化型樹脂等により被覆されていてもよい。
【0022】
テンションメンバ41、42は、金属線材、アラミッド繊維等の高強度ポリマー繊維束、ロッド状等の形態のものが用いられる。
【0023】
以下、本発明の光ケーブルを用いた端子付き光ケーブルについて説明する。図2は図1の光ケーブルの端末に光ケーブル用端子を取付けた端子付き光ケーブルの一例を示す斜視図である。図2に示すように、端子付き光ケーブル6は、上記光ケーブル1の端末に、光ケーブル用端子7が圧着されて取付けられている。尚、図2の端子付き光ケーブル6は、光ケーブル用端子7から端部側が皮剥ぎされて、2本の光ファイバ21、22がシース材3から外部に露出した状態に形成されている。
【0024】
光ケーブル用端子7は、金属板等を打ち抜き曲げ加工されて形成されたものであり、光ケーブル1を光ケーブルコネクタ等(図示せず)の他の部材に固定するための固定部71と、光ケーブル用端子7を光ケーブル1に固定するためのバレル部72とから構成されている。光ケーブル用端子7の固定部71は、幅方向の断面が略U字状に形成されている。また、特に図示しないが、圧着前のバレル部72は、固定部71と同様に上側が開口した開口部として形成されている。
【0025】
光ケーブル1に光ケーブル用端子7を取付けるには、光ケーブル1をバレル部72の開口部から挿入し、シース材3の上からバレル部72をかしめて圧着する。図3は、図2の端子付き光ケーブルのバレル部の幅方向の断面図である。光ケーブル1に光ケーブル用端子7を圧着すると、図3に示すように、端子付き光ケーブルは、光ケーブル用端子7のバレル部72が、シース材3を圧縮変形して、シース材3と密着する。
【0026】
端子付き光ケーブル6において、光ケーブル1に光ケーブル用端子7を圧着する場合、シース材3の圧縮率が大きくなると、固着力も大きくなる。しかし、シース材3の圧縮率が大きくなると、光ファイバ21、22が変形し信号損失が大きくなり、ひいては断線に至る。本発明は、シース材3がポリフェニレンエーテルを含む材料から構成されているので、小さな圧縮率で大きな固着力が得られる。これに対し従来のシース材にポリエチレン樹脂を用いた室内用光ケーブルは、十分な固着力を得るためには、圧縮率を大きくする必要があった。
【0027】
室外で使用される光ケーブルは、実際の使用状況を考慮すると100N以上の固着力が要求されている。本発明光ケーブルを用いた場合、100N以上の固着力が得られる。しかしながらポリエチレン樹脂のシース材を用いた光ケーブルでは、100N以上の固着力が得られるまでシース材の圧縮率を大きくして光ケーブル端子を圧着すると、光ファイバが断線してしまい、100N以上の固着力は得られなかった。以下、実施例比較例を用いて、圧縮率と固着力との関係について説明する。
【実施例】
【0028】
[実施例] 下記の配合組成からなる組成物をシース材として用い、押出し機のダイスから光ファイバの周囲に組成物を押し出し成形して図1に示す形状の光ケーブルを得た。次に得られた光ケーブルの端末に光ケーブル用端子を圧着して端子付き光ケーブルを作製した。このとき表1に示すようにケーブル断面圧縮率を85%から50%まで5%ずつ変化させて圧着を行った。得られた端子付き光ケーブルの固着力と信号損失を測定した。測定結果を表1に示す。また、固着力と信号損失の測定方法は、以下の通りである。表1に示すように、実施例の光ケーブルを用いた場合、ケーブル断面圧縮率が75%及び70%の場合に、固着力が100N以上で且つ光ファイバの断線のない端子付き光ケーブルを得ることができた。尚、ケーブル断面圧縮率は、全く圧縮されていない状態の断面積に対する圧着後の断面積の割合(%)である。すなわち圧縮率は、100%の場合、全く圧縮されていない状態であり、数値が小さいほど変形が大きいことになる。
【0029】
[シース材の配合組成(単位:質量部)]SABIC社製NORYL WCV065Resin100部、難燃剤30部、酸化防止剤0.5部、老化防止剤15部
【0030】
[固着力の測定方法] 片端を端子圧着した光ケーブルを、端子より小さい穴が空いた目板に通し、目板と光ケーブルを引張った際の力をロードセルで測定し最大値を固着力とする。
【0031】
[信号損失の測定方法] 片端を端子圧着した光ケーブルについて、ケーブル内の光ファイバへ入射した光源からの光信号を逆端側でパワーメータにて受光し信号損失を測定する。圧着前の信号損失との差分を損失増加とする。
【0032】
[比較例] 比較のためにシース材としてポリエチレン樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして比較例の光ケーブルを作製した。比較例の光ケーブルを用いてケーブル断面圧縮率を85%から50%まで5%ずつ変化させて、圧着を行い端子付き光ケーブルを得た。得られた端子付き光ケーブルの固着力と信号損失について測定した。測定結果を表1に示す。
【0033】
比較例の光ケーブルを用いた端子付き光ケーブルは、ケーブル断面圧縮率を55%、50%として圧着した場合、100N以上の固着力が得られた。しかし、この圧縮率ではシース材の変形が大きくなり光ファイバは断線していた。比較例の光ケーブルを用いた端子付き光ケーブルは、光ファイバが断線しないケーブル断面圧縮率は65%以下であった。しかしこの圧縮率では固着力が94Nであり、100N以上の固着力は得られなかった。
【0034】
【表1】

【0035】
本発明は上記実施例に限定されず、種々の改変が可能である。例えば上記実施例の光ケーブルは、光ファイバが2本型の態様を示したが、本発明光ケーブルは、光ファイバが1本型、4本型、8本型等のいずれでもよい。また、本発明光ケーブルは、テンションメンバの有無、その数や構造等についても特に限定されない。
【0036】
本発明の光ケーブルは、耐熱性、耐油性が要求される自動車用等の屋外で使用される用途に最適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 光ケーブル
21、22 光ファイバ
3 シース材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線がシース材に覆われている光ケーブルにおいて、前記シース材がポリフェニレンエーテルを含む材料から構成されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
前記シース材が、引張り弾性率700MPa以上であることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記シース材が、オレフィン系樹脂及び/又はスチレン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の光ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate