光ケーブル
【課題】光ケーブルを曲げても光ファイバ心線を固定する部材によって過大な引張りひずみ又は圧縮ひずみが発生せず、また、光ファイバ心線を固定する固定部材の配設によって光ケーブルの製造線速が制限されない光ケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】スロットロッド３のスロット溝３ａの内部に光ファイバ心線の束２を収納し、スロットロッド３の周りを外被７で被覆した光ケーブル１において、紐状の粘着性部材１０と紐状の非粘着性部材１１とを撚り合わせてなる心線固定部材６を、光ファイバ心線の束２における長手方向に沿わせて粘着性部材１０を断続的に接着させると共にスロット溝３ａにも粘着性部材１０を断続的に接着させたことを特徴とする。
【解決手段】スロットロッド３のスロット溝３ａの内部に光ファイバ心線の束２を収納し、スロットロッド３の周りを外被７で被覆した光ケーブル１において、紐状の粘着性部材１０と紐状の非粘着性部材１１とを撚り合わせてなる心線固定部材６を、光ファイバ心線の束２における長手方向に沿わせて粘着性部材１０を断続的に接着させると共にスロット溝３ａにも粘着性部材１０を断続的に接着させたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数の光ファイバ心線をスロットロッドのスロット溝内に収納した光ケーブルに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、多数の光ファイバ心線（あるいは、光ファイバテープ心線）をスロットロッドのスロット溝内に収納し、スロットロッドの周囲を外被で被覆したものがある。この光ケーブルは、スロット溝内を光ファイバ心線が移動し、光ケーブル端末から引き込まれたり、飛び出したりするという問題があった。
上記問題に対し、光ファイバ心線がスロットロッドのスロット溝内で移動しないように、固定部材を光ファイバ心線の長手方向に沿って連続的又は断続的に配置することが考えられる。
【０００３】
しかし、固定部材を光ファイバ心線の長手方向に沿って連続的に配置すると、光ファイバ心線は、固定部材を介してスロットロッドのスロット溝内に完全に拘束されることとなる。光ファイバ心線は、このような状態でケーブルを曲げ伸ばしすると、曲がりの内側や外側に動くことができず、過大な張りひずみ又は過大な圧縮ひずみにより伝送損失の増加が生じる問題があった。
【０００４】
また、例えば、特許文献１には、光ファイバ心線の長手方向に沿って、固定部材を断続的に配置し、光ファイバ心線を固定する方法が開示されている。
図４（Ａ）は、上記特許文献１に開示の光ケーブル１０１を示し、複数の光ファイバテープ心線１０２をスロットロッド１０３のスロット溝１０３ａに収納して形成されている。スロットロッド１０３には、テンションメンバ１０４が一体に埋設され、スロット溝１０３ａの開口部は、縦添えテープ１０５により塞がれ、外被１０６により全体を被覆している。縦添えテープ１０５の内面には、長手方向に沿って、断続的に固定部材である紫外線硬化性樹脂１０７が固着されており、この紫外線硬化性樹脂１０７が光ファイバテープ心線１０２を押圧して光ファイバテープ心線１０２を固定している。
【０００５】
図４（Ｂ）は、上記光ケーブル１０１の製造方法を示し、ＵＶ樹脂充填装置１０８から紫外線硬化性樹脂１０７が間欠的に縦添えテープ１０５に噴射される。そして、ＵＶランプ１１０から紫外線１１１が紫外線硬化性樹脂１０７に照射され、紫外線硬化性樹脂１０７を縦添えテープ１０５に固着硬化させた後、縦添えテープ１０５を反転させて、縦添えテープ１０５を光ファイバテープ心線１０２が格納されたスロット溝１０３ａの開口部を覆うように縦添えさせている。そして、硬化された紫外線硬化性樹脂１０７が光ファイバテープ心線１０２を断続的に抑え、その状態で押出成形機１１２により外被１０６が押出成形により成形され、光ケーブル１０１が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００８−３１００１８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、光ケーブル１０１は、紫外線硬化性樹脂１０７を縦添えテープ１０５に対して間欠的に噴射する為に、一定の間隔毎に紫外線硬化性樹脂１０７の付着と硬化を行う必要があり、ＵＶ樹脂の充填制御と硬化時間等により製造線速が制限されるという問題があった。
【０００８】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、光ケーブルを曲げても光ファイバ心線を固定する部材によって過大な引張りひずみ又は圧縮ひずみが発生せず、また、光ファイバ心線を固定する固定部材の配設によって光ケーブルの製造線速が制限されない光ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
スロットロッドのスロット溝内に光ファイバ心線の束を収納し、スロットロッドの周りを外被で被覆した光ケーブルにおいて、紐状の粘着性部材と紐状の非粘着性部材とを撚り合わせてなる心線固定部材を、光ファイバ心線の束における長手方向に沿わせて粘着性部材を断続的に接着させると共にスロット溝にも粘着性部材を断続的に接着させたことを特徴とする。
なお、スロットロットは、スロット溝を１つとすることができる。また、心線固定部材は、１本の粘着性部材と２本以上の非粘着性部材とで撚り合わされていることが好ましい。
【発明の効果】
【００１０】
本発明の光ケーブルによれば、光ファイバ心線は、スロット溝に心線固定部材を介して断続的に固定される。これにより、本発明の光ケーブルは、ケーブルの曲げる時に、光ファイバ心線に過大な引張りひずみ又は圧縮ひずみが生じるのを回避することができる。
また、心線固定部材は、光ファイバ心線に連続的の添わせる構成であるため、従来の固定部材を断続的に付着する構成と比較し、光ケーブルの製造線速を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本発明の光ケーブルの概略を説明する図である。
【図２】心線固定部材の一例を示す図である。
【図３】本発明の光ケーブルを製造するための集合装置の一部を示す図である。
【図４】従来の光ケーブルとその製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
図１により、本発明に係る光ケーブル１を説明する。図１は、本発明の光ケーブルの一例を示す断面図である。光ケーブル１は、複数の光ファイバ心線の束２をスロッドロッド３のスロット溝３ａに心線固定部材６と共に収納し、外被７で被覆して構成される。なお、スロットロッド３には、テンションメンバ４が長手方向に埋設一体化されていると共に、スロット溝３ａの開口は、縦添えテープ５により塞がれている。
【００１３】
本実施形態において、光ファイバ心線の束２は、例えば、４本（複数）の光ファイバ素線を一列に並べて一括被覆した光ファイバテープ心線を、複数枚重ねて撚り合わせた形態のものが用いられる。
なお、光ファイバ心線の束２を、光ファイバテープ心線を積層した例で説明するがこれに限定されるものではない、例えば、光ファイバ心線の束２は、光ファイバテープ心線でも良いし、１本の光ファイバ素線を有した光ファイバ心線を複数撚って束ねたものであっても良い。
【００１４】
スロットロッド３は、例えば、外径が６〜７ｍｍ程度の略丸棒形状であり、その長手方向に沿って撚りのない直線状のスロット溝３ａが１つ形成されている。スロットロッド３の断面形状は、図に示すように、略Ｕ字状でその底部がスロットロット中心部に達する形状となっている。また、スロットロッド３の内部には、長手方向に沿ってテンションメンバ４が埋設されている。
なお、本実施形態においては、スロットロッド３にスロット溝３ａが１つ形成される態様で説明したが複数形成させても良い。この場合、スロットロッドの中心部にテンションメンバ４が配され、その周りに、複数のスロット溝３が形成される形態となる。
【００１５】
また、スロット溝３ａが１本の場合は、スロットロッド３の断面における中央部までの深さがあり、前述した光ファイバ心線の束２を収納した際、スロットロッド３の断面における中央部に位置するようになっている。
また、スロット溝３ａの幅は、上記の溝の深さと関連して後述する心線固定部材６を光ファイバ心線の束２が収納されたスロット溝３ａに収納した際、心線固定部材６が光ファイバテープ心線とスロット溝３ａとに接触するような幅とする。さらに、スロット溝３ａの内部で光ファイバ心線の束２と心線固定部材６とが撓むことができる程度の隙間ができる幅となるように設計される。
【００１６】
テンションメンバ４は、スロットロッド３の長手方向の引っ張り強度を持たせる線条体であり、例えば、鋼線やＦＲＰなどである。
縦添えテープ５は、スロットロッド３のスロット溝３ａの開口部に縦添えされて開口部を覆うテープであり、例えば、不織布、ＰＥＴテープなどのプラスチックテープなどである。
【００１７】
図２を参照して、心線固定部材６を説明する。図２は、心線固定部材を示す図である。
心線固定部材６は、例えば、１本の紐状の粘着性部材１０と２本の紐状の非粘着性部材１１とから成り、いずれも可撓性を有する紐状の部材である。
この心線固定部材６は、紐状の粘着性部材１０と紐状の非粘着性部材１１とを所定のピッチで撚り合わせ構成される。これにより、例えば、心線固定部材６を、光ファイバ心線の束２の長手方向に沿って接触させた場合、粘着性部材１０が光ファイバ心線の束２及びスロット溝３ａの壁面に断続的に接着して固定することができる。
【００１８】
ここで、所定のピッチで撚り合わせとは、例えば、２００〜４００ｍｍのピッチで撚り合わせることをいう。また、紐状の粘着性部材１０は、例えば、材料がスチレン系のエラストマで外径が１ｍｍ程度のもので、紐状の非粘着性部材１１は、例えば、材料がポリエチレンで外径が粘着性部材１０と同径の１ｍｍ程度のものが用いられる。
【００１９】
なお、心線固定部材６は、１本の紐状の粘着性部材１０と２本の紐状の非粘着性部材１１とで構成される態様で説明したがこれに限定されるものではない。例えば、心線固定部材６は、少なくとも１本以上の紐状の粘着性部材１０と２本以上の紐状の非粘着性部材１１とで構成させても良い。このとき、紐状の粘着性部材１０より紐状の非粘着性部材１１の本数が多い方が好ましい。
【００２０】
外被７は、縦添えテープ５によりスロット溝３ａが覆われたスロットロッド３の外周を所定の厚みで被覆するものである。外被７は、例えば、材料が難燃性ポリエチレン樹脂を用い、押出し成形機により加熱温度が１６０℃〜２００℃で厚さが１．５ｍｍ程度に押出し成形で形成される。
【００２１】
図３は、本発明の光ケーブルを製造するための集合装置の一部を示す図である。集合装置２１は、上流側から下流側へ向かって、スロットロット３の繰出し装置（不図示）、複数の光ファイバ心線の繰出し装置２２、心線固定部材６の繰出し装置２３、縦添えテープ５の繰出し装置２４、押出し成形機２５、冷却装置（不図示）、及び巻取り装置（不図示）が配置されている。
【００２２】
スロットロッド３は、スロットロッド３の繰出し装置から引き出され光ファイバ心線の束２と心線固定部材６とが収納され、外被５を被覆して巻取り装置で光ケーブル１として巻き取られる。
光ファイバ心線の繰出し装置２２からは、複数の光ファイバ心線（または光ファイバテープ心線）が引き出されるとともに図示しない公知の手段で光ファイバ心線の束２とされ、スロットロッド３のスロット溝３ａに連続的に挿入される。Ａ−Ａ断面は、光ファイバ心線の束２がスロット溝３ａに挿入された様子を示す図である。このとき、光ファイバ心線の束２は、スロットロッド３の断面における中央部に位置する。
【００２３】
次いで、心線固定部材６の繰出し装置２３からは、心線固定部材６が引き出されて光ファイバ心線の束２が既に挿入されたスロット溝３ａの内部に連続的に挿入されていく。Ｂ−Ｂ断面は、心線固定部材６がスロット溝３ａに挿入された様子を示す図である。このとき、心線固定部材６の粘着性部材１０は、光ファイバ心線の束２とスロット溝３ａに断続的に接着して固定する。すなわち、光ファイバ心線の束２は、心線固定部材６を介して、スロット溝３ａに断続的に固定される。
【００２４】
次いで、縦添えテープ５の繰出し装置２４からは、縦添えテープ５が引き出されてスロットロッド３のスロッド溝３ａの開口を塞ぐように縦添えされていく。Ｃ−Ｃ断面は、スロット溝３ａの開口が縦添えテープ５によって塞がれた様子を示す図である。このとき、スロット溝３ａの開口が縦添えテープ５によって塞がれることによりできる空間には、光ファイバ心線の束２と心線固定部材６とが撓むことができる程度の隙間ができている。
【００２５】
次いで、押出し成形機２５によりスロット溝３ａの開口が縦添えテープ５により塞がれたスロットロッド３に外被７が被覆されるとともに図示しない冷却装置によって冷却されて形成される。Ｄ−Ｄ断面は、外被７がスロットロッド３に形成された様子を示す断面図である。以上により、本発明に係る光ケーブル１が製造される。
【００２６】
本発明に係る光ケーブル１によれば、光ファイバ心線の束２は、スロット溝３ａに対して心線固定部材６により、その長手方向に断続的に接着固定される。これにより、光ケーブル１が屈曲された場合に、光ファイバ心線の束２の固定されていない部分がスロット溝３ａの内部で動いて、過大な引張りひずみ、又は、過大な圧縮ひずみの発生を回避することができる。
【００２７】
本発明に係る光ケーブル１によれば、スロット溝３ａの深さがスロットロッド３の断面における中央部までの深さがあり、光ファイバ心線の束２がスロットロッド３の断面における中央部に位置するようになっている。これにより、本発明に係る光ケーブル１は、光ファイバ心線の束２がスロットロッド３の径方向外方に配置される構成と比較して、光ケーブル１が屈曲された際の引張りひずみ、又は、圧縮ひずみを小さくすることができる。
【００２８】
また、本発明の光ケーブル１は、連続する心線固定部材６を光ファイバ心線に添わせて光ファイバ心線の束２を固定する構成であるため、光ファイバ心線の束２を固定する固定部材を断続的に配置する従来の構成と比較し、固定部材を断続的に配設する必要がなく、固定部材の配設により光ケーブル１の製造線速が制限されることがない。
【符号の説明】
【００２９】
１…光ケーブル、２…光ファイバ心線の束、３…スロットロッド、３ａ…スロット溝、４…テンションメンバ、５…縦添えテープ、６…心線固定部材、７…外被、１０…粘着性部材、１１…非粘着性部材、２１…集合装置、２２…繰出し装置、２３…繰出し装置、２４…繰出し装置、２５…押出し成形機、１０１…光ケーブル、１０２…光ファイバ心線、１０３…スロットロッド、１０３ａ…スロット溝、１０４…テンションメンバ、１０５…縦添えテープ、１０６…外被、１０７…紫外線硬化性樹脂、１０８…ＵＶ樹脂充填装置、１１０…ＵＶランプ、１１１…紫外線、１１２…押出し成形機。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数の光ファイバ心線をスロットロッドのスロット溝内に収納した光ケーブルに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、多数の光ファイバ心線（あるいは、光ファイバテープ心線）をスロットロッドのスロット溝内に収納し、スロットロッドの周囲を外被で被覆したものがある。この光ケーブルは、スロット溝内を光ファイバ心線が移動し、光ケーブル端末から引き込まれたり、飛び出したりするという問題があった。
上記問題に対し、光ファイバ心線がスロットロッドのスロット溝内で移動しないように、固定部材を光ファイバ心線の長手方向に沿って連続的又は断続的に配置することが考えられる。
【０００３】
しかし、固定部材を光ファイバ心線の長手方向に沿って連続的に配置すると、光ファイバ心線は、固定部材を介してスロットロッドのスロット溝内に完全に拘束されることとなる。光ファイバ心線は、このような状態でケーブルを曲げ伸ばしすると、曲がりの内側や外側に動くことができず、過大な張りひずみ又は過大な圧縮ひずみにより伝送損失の増加が生じる問題があった。
【０００４】
また、例えば、特許文献１には、光ファイバ心線の長手方向に沿って、固定部材を断続的に配置し、光ファイバ心線を固定する方法が開示されている。
図４（Ａ）は、上記特許文献１に開示の光ケーブル１０１を示し、複数の光ファイバテープ心線１０２をスロットロッド１０３のスロット溝１０３ａに収納して形成されている。スロットロッド１０３には、テンションメンバ１０４が一体に埋設され、スロット溝１０３ａの開口部は、縦添えテープ１０５により塞がれ、外被１０６により全体を被覆している。縦添えテープ１０５の内面には、長手方向に沿って、断続的に固定部材である紫外線硬化性樹脂１０７が固着されており、この紫外線硬化性樹脂１０７が光ファイバテープ心線１０２を押圧して光ファイバテープ心線１０２を固定している。
【０００５】
図４（Ｂ）は、上記光ケーブル１０１の製造方法を示し、ＵＶ樹脂充填装置１０８から紫外線硬化性樹脂１０７が間欠的に縦添えテープ１０５に噴射される。そして、ＵＶランプ１１０から紫外線１１１が紫外線硬化性樹脂１０７に照射され、紫外線硬化性樹脂１０７を縦添えテープ１０５に固着硬化させた後、縦添えテープ１０５を反転させて、縦添えテープ１０５を光ファイバテープ心線１０２が格納されたスロット溝１０３ａの開口部を覆うように縦添えさせている。そして、硬化された紫外線硬化性樹脂１０７が光ファイバテープ心線１０２を断続的に抑え、その状態で押出成形機１１２により外被１０６が押出成形により成形され、光ケーブル１０１が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００８−３１００１８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、光ケーブル１０１は、紫外線硬化性樹脂１０７を縦添えテープ１０５に対して間欠的に噴射する為に、一定の間隔毎に紫外線硬化性樹脂１０７の付着と硬化を行う必要があり、ＵＶ樹脂の充填制御と硬化時間等により製造線速が制限されるという問題があった。
【０００８】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、光ケーブルを曲げても光ファイバ心線を固定する部材によって過大な引張りひずみ又は圧縮ひずみが発生せず、また、光ファイバ心線を固定する固定部材の配設によって光ケーブルの製造線速が制限されない光ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
スロットロッドのスロット溝内に光ファイバ心線の束を収納し、スロットロッドの周りを外被で被覆した光ケーブルにおいて、紐状の粘着性部材と紐状の非粘着性部材とを撚り合わせてなる心線固定部材を、光ファイバ心線の束における長手方向に沿わせて粘着性部材を断続的に接着させると共にスロット溝にも粘着性部材を断続的に接着させたことを特徴とする。
なお、スロットロットは、スロット溝を１つとすることができる。また、心線固定部材は、１本の粘着性部材と２本以上の非粘着性部材とで撚り合わされていることが好ましい。
【発明の効果】
【００１０】
本発明の光ケーブルによれば、光ファイバ心線は、スロット溝に心線固定部材を介して断続的に固定される。これにより、本発明の光ケーブルは、ケーブルの曲げる時に、光ファイバ心線に過大な引張りひずみ又は圧縮ひずみが生じるのを回避することができる。
また、心線固定部材は、光ファイバ心線に連続的の添わせる構成であるため、従来の固定部材を断続的に付着する構成と比較し、光ケーブルの製造線速を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本発明の光ケーブルの概略を説明する図である。
【図２】心線固定部材の一例を示す図である。
【図３】本発明の光ケーブルを製造するための集合装置の一部を示す図である。
【図４】従来の光ケーブルとその製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
図１により、本発明に係る光ケーブル１を説明する。図１は、本発明の光ケーブルの一例を示す断面図である。光ケーブル１は、複数の光ファイバ心線の束２をスロッドロッド３のスロット溝３ａに心線固定部材６と共に収納し、外被７で被覆して構成される。なお、スロットロッド３には、テンションメンバ４が長手方向に埋設一体化されていると共に、スロット溝３ａの開口は、縦添えテープ５により塞がれている。
【００１３】
本実施形態において、光ファイバ心線の束２は、例えば、４本（複数）の光ファイバ素線を一列に並べて一括被覆した光ファイバテープ心線を、複数枚重ねて撚り合わせた形態のものが用いられる。
なお、光ファイバ心線の束２を、光ファイバテープ心線を積層した例で説明するがこれに限定されるものではない、例えば、光ファイバ心線の束２は、光ファイバテープ心線でも良いし、１本の光ファイバ素線を有した光ファイバ心線を複数撚って束ねたものであっても良い。
【００１４】
スロットロッド３は、例えば、外径が６〜７ｍｍ程度の略丸棒形状であり、その長手方向に沿って撚りのない直線状のスロット溝３ａが１つ形成されている。スロットロッド３の断面形状は、図に示すように、略Ｕ字状でその底部がスロットロット中心部に達する形状となっている。また、スロットロッド３の内部には、長手方向に沿ってテンションメンバ４が埋設されている。
なお、本実施形態においては、スロットロッド３にスロット溝３ａが１つ形成される態様で説明したが複数形成させても良い。この場合、スロットロッドの中心部にテンションメンバ４が配され、その周りに、複数のスロット溝３が形成される形態となる。
【００１５】
また、スロット溝３ａが１本の場合は、スロットロッド３の断面における中央部までの深さがあり、前述した光ファイバ心線の束２を収納した際、スロットロッド３の断面における中央部に位置するようになっている。
また、スロット溝３ａの幅は、上記の溝の深さと関連して後述する心線固定部材６を光ファイバ心線の束２が収納されたスロット溝３ａに収納した際、心線固定部材６が光ファイバテープ心線とスロット溝３ａとに接触するような幅とする。さらに、スロット溝３ａの内部で光ファイバ心線の束２と心線固定部材６とが撓むことができる程度の隙間ができる幅となるように設計される。
【００１６】
テンションメンバ４は、スロットロッド３の長手方向の引っ張り強度を持たせる線条体であり、例えば、鋼線やＦＲＰなどである。
縦添えテープ５は、スロットロッド３のスロット溝３ａの開口部に縦添えされて開口部を覆うテープであり、例えば、不織布、ＰＥＴテープなどのプラスチックテープなどである。
【００１７】
図２を参照して、心線固定部材６を説明する。図２は、心線固定部材を示す図である。
心線固定部材６は、例えば、１本の紐状の粘着性部材１０と２本の紐状の非粘着性部材１１とから成り、いずれも可撓性を有する紐状の部材である。
この心線固定部材６は、紐状の粘着性部材１０と紐状の非粘着性部材１１とを所定のピッチで撚り合わせ構成される。これにより、例えば、心線固定部材６を、光ファイバ心線の束２の長手方向に沿って接触させた場合、粘着性部材１０が光ファイバ心線の束２及びスロット溝３ａの壁面に断続的に接着して固定することができる。
【００１８】
ここで、所定のピッチで撚り合わせとは、例えば、２００〜４００ｍｍのピッチで撚り合わせることをいう。また、紐状の粘着性部材１０は、例えば、材料がスチレン系のエラストマで外径が１ｍｍ程度のもので、紐状の非粘着性部材１１は、例えば、材料がポリエチレンで外径が粘着性部材１０と同径の１ｍｍ程度のものが用いられる。
【００１９】
なお、心線固定部材６は、１本の紐状の粘着性部材１０と２本の紐状の非粘着性部材１１とで構成される態様で説明したがこれに限定されるものではない。例えば、心線固定部材６は、少なくとも１本以上の紐状の粘着性部材１０と２本以上の紐状の非粘着性部材１１とで構成させても良い。このとき、紐状の粘着性部材１０より紐状の非粘着性部材１１の本数が多い方が好ましい。
【００２０】
外被７は、縦添えテープ５によりスロット溝３ａが覆われたスロットロッド３の外周を所定の厚みで被覆するものである。外被７は、例えば、材料が難燃性ポリエチレン樹脂を用い、押出し成形機により加熱温度が１６０℃〜２００℃で厚さが１．５ｍｍ程度に押出し成形で形成される。
【００２１】
図３は、本発明の光ケーブルを製造するための集合装置の一部を示す図である。集合装置２１は、上流側から下流側へ向かって、スロットロット３の繰出し装置（不図示）、複数の光ファイバ心線の繰出し装置２２、心線固定部材６の繰出し装置２３、縦添えテープ５の繰出し装置２４、押出し成形機２５、冷却装置（不図示）、及び巻取り装置（不図示）が配置されている。
【００２２】
スロットロッド３は、スロットロッド３の繰出し装置から引き出され光ファイバ心線の束２と心線固定部材６とが収納され、外被５を被覆して巻取り装置で光ケーブル１として巻き取られる。
光ファイバ心線の繰出し装置２２からは、複数の光ファイバ心線（または光ファイバテープ心線）が引き出されるとともに図示しない公知の手段で光ファイバ心線の束２とされ、スロットロッド３のスロット溝３ａに連続的に挿入される。Ａ−Ａ断面は、光ファイバ心線の束２がスロット溝３ａに挿入された様子を示す図である。このとき、光ファイバ心線の束２は、スロットロッド３の断面における中央部に位置する。
【００２３】
次いで、心線固定部材６の繰出し装置２３からは、心線固定部材６が引き出されて光ファイバ心線の束２が既に挿入されたスロット溝３ａの内部に連続的に挿入されていく。Ｂ−Ｂ断面は、心線固定部材６がスロット溝３ａに挿入された様子を示す図である。このとき、心線固定部材６の粘着性部材１０は、光ファイバ心線の束２とスロット溝３ａに断続的に接着して固定する。すなわち、光ファイバ心線の束２は、心線固定部材６を介して、スロット溝３ａに断続的に固定される。
【００２４】
次いで、縦添えテープ５の繰出し装置２４からは、縦添えテープ５が引き出されてスロットロッド３のスロッド溝３ａの開口を塞ぐように縦添えされていく。Ｃ−Ｃ断面は、スロット溝３ａの開口が縦添えテープ５によって塞がれた様子を示す図である。このとき、スロット溝３ａの開口が縦添えテープ５によって塞がれることによりできる空間には、光ファイバ心線の束２と心線固定部材６とが撓むことができる程度の隙間ができている。
【００２５】
次いで、押出し成形機２５によりスロット溝３ａの開口が縦添えテープ５により塞がれたスロットロッド３に外被７が被覆されるとともに図示しない冷却装置によって冷却されて形成される。Ｄ−Ｄ断面は、外被７がスロットロッド３に形成された様子を示す断面図である。以上により、本発明に係る光ケーブル１が製造される。
【００２６】
本発明に係る光ケーブル１によれば、光ファイバ心線の束２は、スロット溝３ａに対して心線固定部材６により、その長手方向に断続的に接着固定される。これにより、光ケーブル１が屈曲された場合に、光ファイバ心線の束２の固定されていない部分がスロット溝３ａの内部で動いて、過大な引張りひずみ、又は、過大な圧縮ひずみの発生を回避することができる。
【００２７】
本発明に係る光ケーブル１によれば、スロット溝３ａの深さがスロットロッド３の断面における中央部までの深さがあり、光ファイバ心線の束２がスロットロッド３の断面における中央部に位置するようになっている。これにより、本発明に係る光ケーブル１は、光ファイバ心線の束２がスロットロッド３の径方向外方に配置される構成と比較して、光ケーブル１が屈曲された際の引張りひずみ、又は、圧縮ひずみを小さくすることができる。
【００２８】
また、本発明の光ケーブル１は、連続する心線固定部材６を光ファイバ心線に添わせて光ファイバ心線の束２を固定する構成であるため、光ファイバ心線の束２を固定する固定部材を断続的に配置する従来の構成と比較し、固定部材を断続的に配設する必要がなく、固定部材の配設により光ケーブル１の製造線速が制限されることがない。
【符号の説明】
【００２９】
１…光ケーブル、２…光ファイバ心線の束、３…スロットロッド、３ａ…スロット溝、４…テンションメンバ、５…縦添えテープ、６…心線固定部材、７…外被、１０…粘着性部材、１１…非粘着性部材、２１…集合装置、２２…繰出し装置、２３…繰出し装置、２４…繰出し装置、２５…押出し成形機、１０１…光ケーブル、１０２…光ファイバ心線、１０３…スロットロッド、１０３ａ…スロット溝、１０４…テンションメンバ、１０５…縦添えテープ、１０６…外被、１０７…紫外線硬化性樹脂、１０８…ＵＶ樹脂充填装置、１１０…ＵＶランプ、１１１…紫外線、１１２…押出し成形機。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
スロットロッドのスロット溝内に光ファイバ心線の束を収納し、前記スロットロッドの周りを外被で被覆した光ケーブルであって、
紐状の粘着性部材と紐状の非粘着性部材とを撚り合わせてなる心線固定部材を、前記光ファイバ心線の束の長手方向に沿わせて前記粘着性部材を断続的に接着させると共に前記スロット溝にも前記粘着性部材を断続的に接着させたことを特徴とする光ケーブル。
【請求項２】
前記スロットロッドは、スロット溝がひとつであることを特徴とする請求項１に記載の光ケーブル。
【請求項３】
前記心線固定部材は、１本の前記粘着性部材と２本以上の前記非粘着性部材とで撚り合わされていることを特徴とする請求項１又は２に記載の光ケーブル。
【請求項１】
スロットロッドのスロット溝内に光ファイバ心線の束を収納し、前記スロットロッドの周りを外被で被覆した光ケーブルであって、
紐状の粘着性部材と紐状の非粘着性部材とを撚り合わせてなる心線固定部材を、前記光ファイバ心線の束の長手方向に沿わせて前記粘着性部材を断続的に接着させると共に前記スロット溝にも前記粘着性部材を断続的に接着させたことを特徴とする光ケーブル。
【請求項２】
前記スロットロッドは、スロット溝がひとつであることを特徴とする請求項１に記載の光ケーブル。
【請求項３】
前記心線固定部材は、１本の前記粘着性部材と２本以上の前記非粘着性部材とで撚り合わされていることを特徴とする請求項１又は２に記載の光ケーブル。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１２−４７８７７（Ｐ２０１２−４７８７７Ａ）
【公開日】平成２４年３月８日（２０１２．３．８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１８８２５８（Ｐ２０１０−１８８２５８）
【出願日】平成２２年８月２５日（２０１０．８．２５）
【出願人】（０００００２１３０）住友電気工業株式会社 (12,747)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年３月８日（２０１２．３．８）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年８月２５日（２０１０．８．２５）
【出願人】（０００００２１３０）住友電気工業株式会社 (12,747)
【Ｆターム（参考）】
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