説明

光コネクタ付き光モジュール、及び、光コネクタ付き光モジュールを有する並列光伝送装置

【課題】接着剤を接着剤溜部から容易に注入して光コネクタが光モジュールに対して固定でき、光コネクタを光モジュール基板に対して簡単にかつ確実に位置決めできる光コネクタ付き光モジュール及び並列光伝送装置を提供する。
【解決手段】光モジュール基板34と電気素子33とこれらを覆うカバー35とを有し、光モジュール3と、光モジュール3に接続される光コネクタ4とを備え、カバー35は、光コネクタの3のコネクタ部42を配置するための開口部39を有し、開口部39を形成する内縁部には、コネクタ部42の壁部との間に接着剤を溜める接着剤溜部130と、接着剤溜部130と連通し前記壁部との間に隙間145を生じさせる隙間部とが形成されており、隙間部が形成されている内縁部は下部が切り欠かれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ付き光モジュール及び光コネクタ付き光モジュールを有する並列光伝送装置に関し、特に光コネクタを光モジュールに対して接着剤により位置決めして固定する光コネクタ付き光モジュール及びこの光コネクタ付き光モジュールを有する並列光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーコンピュータ等のハイエンドなシステム装置においては、複数のCPU(中央処理装置)の並列動作により情報通信の大容量化と高速化を実現する傾向にあり、このシステム装置内のポートおよびシステム装置間では、大容量で高速高密度な情報信号伝送が要求されている。
【0003】
情報信号を電気信号で伝送する電気伝送方式だけでは、伝送速度や伝送損失等の観点から限界を迎えつつあるために、光伝送を利用した光インターコネクション方式による信号伝送が実用化されている。光インターコネクション方式は、電気伝送方式に比較してはるかに広帯域な信号伝送を行うことが可能であるとともに、小型かつ低消費電力の光モジュールを使用した信号伝送システムを構築できるという利点がある。
【0004】
この光インターコネクション方式では、発光素子を有する光モジュールが、電気基板に実装されており、例えば電気基板から入力された電気信号が光モジュールにより光信号に変換されて、光ファイバに出力される。この発光素子としては、例えば面発光レーザ型半導体レーザ素子(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等がある。
【0005】
この電気基板には電気プラガブルソケットが配置され、光モジュールは、電気プラガブルソケットに嵌め込んだ後に押さえ部材を用いて電気プラガブルソケット側に押さえて固定するようになっている。光モジュールには、光モジュール基板の上に発光素子の駆動用IC(集積回路素子)が実装されており、この光モジュール基板とICに対してカバーを装着してICを覆う構造である。このようなICを含む光モジュールには、光コネクタが位置決めして固定され、光コネクタのテープファイバを光モジュール基板に対して位置決めする。
【0006】
また、光ファイバ束の各光ファイバを光コネクタのV溝に沿って整列させて押さえ板により押さえ付けて、各光ファイバを光コネクタに接着する例がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−48477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の技術のように、光ファイバの各ファイバを光コネクタの各V溝に沿って整列させて押さえ板により押さえ付けて各光ファイバを光コネクタに接着して固定する作業は煩雑であり、このようなV溝を用いた固定技術は上述した光モジュールに対して光コネクタを位置決めして固定するのには適用できない。
【0009】
そして、光コネクタが光モジュールに対して固定でき、光コネクタのテープファイバを光モジュール基板に対して簡単にかつ確実に位置決めできることが望まれている。
また従来は、コネクタと接着部の隙間を小さくすると一般的に用いられている接着剤では粘度が高く十分に接着剤が行き渡らずに強度が保てない、隙間を広くすると接着剤の固化の際に位置ズレが生じるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、接着剤を接着部近傍に設けた接着剤溜部から容易に注入して光コネクタが光モジュールに対して固定でき、光コネクタを光モジュール基板に対して簡単にかつ確実に位置決めできる光コネクタ付き光モジュール及びこの光コネクタ付き光モジュールを有する並列光伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解消するために、本発明の光コネクタ付き光モジュールは、光モジュール基板と、電気素子と、前記光モジュール基板と前記電気素子を覆うカバーとを有し、電気信号を光信号に或いは光信号を電気信号に変換する機能を有する光モジュールと、前記光モジュールとの間で前記光信号を伝送するファイバと、前記ファイバを接続するコネクタ部とを有する光コネクタと、を備え、前記カバーは、前記コネクタ部を配置するための開口部を有し、前記開口部を形成する前記カバーの内縁部には、前記コネクタ部の壁部との間に接着剤を溜める接着剤溜部と、前記接着剤溜部と連通し、前記コネクタ部の前記壁部との間に隙間を生じさせる隙間部とが形成されており、前記隙間部が形成されている内縁部は、下部が切り欠かれていることを特徴とする。これにより、接着剤を接着剤溜部から接着剤塗布位置を決めながら容易に注入して光コネクタが光モジュールに対して固定でき、光コネクタのファイバを光モジュール基板に対して簡単にかつ確実に位置決めできる。
【0012】
本発明の光コネクタ付き光モジュールでは、前記接着剤溜部に前記接着剤が充填されるとともに、前記隙間部の上部と下部の少なくとも一部とに前記接着剤が埋められることが好ましい。
【0013】
本発明の光コネクタ付き光モジュールでは、前記コネクタ部の前記壁部は、第1壁部と前記第1壁部とは反対側の第2壁部を有し、前記接着剤溜部は、前記コネクタ部の前記第1壁部に対面する複数の第1溜部と、前記コネクタ部の前記第2壁部に対面する複数の第2溜部と、を有してもよい。これにより、コネクタ部の複数の第1壁部と複数の第2壁部は、接着剤溜部から接着剤を注入して光モジュールのカバーに対して確実に固定できる。
【0014】
本発明の光コネクタ付き光モジュールでは、前記接着剤溜部は、半円形状の凹部であってもよい。これにより、接着剤は、半円形状の凹部である接着剤溜部から接着剤塗布位置を決めながら容易に注入でき、光コネクタを光モジュールのカバーに対して確実に固定できる。
【0015】
本発明の光コネクタ付き光モジュールでは、前記カバーの前記内縁部の上端は面取りされていてもよい。
【0016】
本発明の光コネクタ付き光モジュールでは、前記接着剤は、エポキシ樹脂接着剤であってもよい。これにより、コネクタ部と光モジュールのカバーを、エポキシ樹脂接着剤を用いて強力に固定することができる。また、本発明の光コネクタ付き光モジュールでは、前記接着剤は、位置決め用の紫外線硬化樹脂と、保持用の熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤とからなっていてもよい。
【0017】
また、本発明の並列光伝送装置は、複数の電気端子を有する電気基板と、前記電気端子と電気的に接続された上述の光コネクタ付き光モジュールと、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の並列光伝送装置では、前記電気基板に固定される電気プラガブルソケットと、前記電気プラガブルソケットに着脱自在に固定される押さえ部材と、をさらに備え、前記光コネクタ付き光モジュールは、前記電気プラガブルソケットを介して前記電気端子と電気的に接続され、前記押え部材は、前記コネクタ付き光モジュールと前記電気プラガブルソケットの上に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接着剤を接着剤溜部から接着剤塗布位置を決めながら容易に注入して光コネクタが光モジュールに対して固定でき、光コネクタを光モジュール基板に対して簡単にかつ確実に位置決めできる光コネクタ付き光モジュール及びこの光コネクタ付き光モジュールを有する並列光伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の並列光伝送装置の好ましい実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す並列光伝送装置の要素を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図3】光モジュールと光コネクタを示す分解斜視図である。
【図4】図3に示す光モジュールと光コネクタを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A線における光モジュールと光コネクタの断面図である。
【図6】図6(A)は、図5のC−C線における光モジュールの断面図であり、図6(B)は、図5のD−D線における光モジュールの断面図である。
【図7】図7(A)は、図5のM−M線における光モジュールの断面図であり、図7(B)は、図5のN−N線における光モジュールの断面図である。
【図8】本発明の並列光伝送装置の別の実施形態を示す斜視図である。
【図9】図8のK−K線における断面図である。
【図10】図10(A)は、図9のP−P線における断面図であり、図10(B)は、図9のQ−Q線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の並列光伝送装置の好ましい実施形態を示す分解斜視図である。図2は、並列光伝送装置の要素を組み立てた状態を示す斜視図である。
【0022】
図1と図2に示す並列光伝送装置100は、コンピュータ等のシステム装置の電気基板(ボード)間において、光インターコネクションを実現する際に使用でき、電気基板に光モジュールを着脱自在に実装されている。この並列光伝送装置100では、システム装置の小型化には、電気基板に対して垂直方向の空間は小さい方が望ましいため、光モジュールに光接続される光ファイバは、電気基板に対して平行に配線される。
【0023】
図1に示すように、並列光伝送装置100は、電気基板(PCB:Printed Circuit Board)5と、光モジュール3と、電気プラガブルソケット1と、押さえ部材2と、光コネクタ4を備えている。
【0024】
図1に示すように、電気基板5は、電気信号を入出力させるための2次元アレイ状に配列された複数の電気端子51と、4つのネジ孔52を有する電気基板であり、電気端子51は電極パターンに電気的に接続されている。電気基板5の表面および裏面には、複数の電気端子51(例えば微細な平たい電極を格子状に並べたLGA(Land Grid Array)端子)と、各電気端子51と接続された配線パターンと、グランドパターンとがそれぞれ形成されている。
【0025】
図1に示すように、電気プラガブルソケット1は矩形の部材であり、電気プラガブルソケット1は、格子状に並べた複数の接続端子部13が配置された底壁部13Cと、光モジュール3を収容するモジュール収容凹部14を形成する周壁部14Bと、凹部状の光コネクタ収容部24と、を有する。電気プラガブルソケット1は電気基板5の位置決めピン孔53により位置決めされ、電気プラガブルソケット1は、ネジ5Bを4つの貫通孔15を介して電気基板5の4つのネジ孔52にねじ込むことで電気基板5に対して固定される。各接続端子部13は、電気基板5側の電気端子51と電気的に接続される第1のコンタクトピンと、光モジュール3のESA基板(光モジュール基板)34側の電気端子と電気的に接続される第2のコンタクトピンとを有するばね状の接続端子であり、押圧力を受けると両コネクタピンが電気的に接続されるようになっている。
【0026】
電気プラガブルソケット1は、電気基板5に固定された状態では、第1のコンタクトピンが電気基板5側の電気端子51と電気的に接続される。この状態で、光モジュール3をモジュール収容凹部14内に収容し、押さえ部材2を電気プラガブルソケット1の周壁部14Bの上面にネジ5Cで固定すると、光モジュール3の上面が押さえ部材2によって押圧され、光モジュール3のESA基板(光モジュール基板の一例)34側の各電気端子と電気基板5側の各電気端子51とが、電気プラガブルソケット1の複数の接続端子部13を介して電気的に接続される。
【0027】
図3は、この光モジュール3と光コネクタ4を示す分解斜視図であり、光モジュール3の構造例を示している。
図3に示すように、光モジュール3は、ESA基板(光モジュール基板)34と、このモジュール基板34の配線パターン上に実装された光素子アレイ(例えばVCSELアレイ)32と、モジュール基板34の配線パターン上に実装されて光素子アレイ32と電気的に接続されたIC(電気素子)33と、モジュールカバー35を有する。
【0028】
モジュールカバー35は、ほぼ矩形の部材であるが、光コネクタ4を嵌め込んで位置決めするための開口部39が形成されている。このモジュール基板34の表面および裏面には、複数の電気端子(LGA端子)と、複数の電気端子と電気的に接続された配線パターンと、グランドパターンとがそれぞれ形成されている。
図1と図2に示すように、光モジュール3は、電気プラガブルソケット1のモジュール収容凹部14内に着脱自在に装着され、光モジュール3は、装着時には電気プラガブルソケット1を介して電気端子と電気的に接続されて電気信号を光信号に或いは光信号を電気信号に変換する機能を有する。
【0029】
具体的には、モジュール基板34の一面(表面)上には、2つの差動信号用端子を1組とし、チャンネル数(例えば12ch)と同数の複数組の差動信号用端子と、IC33へ電源供給するための複数の電源供給用端子と、ICへ制御信号を供給するための複数の制御信号供給用端子と、グランドパターンとが形成されている。その他面には、一面上にある複数組の差動信号用端子、複数の電源供給用端子および複数の制御信号供給用端子とそれぞれ電気的に接続された複数の端子(差動信号用端子、電源供給用端子および制御信号供給用端子)と、一面上にあるグランドパターンと電気的に接続されたグランドパターンとが形成されている。
【0030】
IC33は、モジュール基板34の一面(表面)上にフリップチップ実装(FCB:Flip Chip Bonding)されており、光素子アレイ32とワイヤディングにより電気的に接続され,IC33は光素子アレイ32を駆動する駆動用ICである。
【0031】
次に、図1と図3に示す光コネクタ4を説明すると、光コネクタ4は、光モジュール3との間で光信号を並列に伝送するテープファイバ41とコネクタ部42とを有する。コネクタ部42は、押さえ部材2を電気プラガブルソケット1に固定した状態で、押さえ部材2の窓21内に配置される。テープファイバ41は、別の光コネクタ43に接続され、光モジュール3との間で光信号を並列に伝送する。
【0032】
図1に示す押さえ部材2は、熱伝導性を有するほぼ矩形の部材であり、窓21とヒートシンク91を有している。この例では、ヒートシンク91は押さえ部材2に対して一体的に形成されている。このヒートシンク91は一例として複数本の棒状部材を有しており、複数本の棒状部材は、放熱面積を増やすために、テープファイバ41の長手方向Tとは直交する方向Vに沿って平行に突出して設けられている。この窓21は、電気プラガブルソケット1の光コネクタ収容部24に対応した位置に形成されている。
【0033】
図2に示すように、押さえ部材2は、光モジュール3と電気プラガブルソケット1の上に配置され、押さえ部材2は、押さえ部材2のネジ5Cを4つの貫通孔23と介して電気プラガブルソケット1の4つのネジ孔17にねじ込むことで、電気プラガブルソケット1に対して着脱自在に固定される。
【0034】
上述したように、図1に示す電気プラガブルソケット1を用いた構成であるため、光モジュール3に不都合が生じた場合に、押さえ部材2を外して、光モジュール3を電気プラガブルソケット1のモジュール収容凹部14から取り出して、再度新しい光モジュール3をモジュール収容凹部14に収容して押さえ部材2を電気プラガブルソケット1に固定する。これにより、本発明の実施形態の並列光伝送装置100は、光モジュールをPCB基板に半田付けして固定した場合の光伝送装置よりも、故障時のメンテナンスが容易になり、コストが削減され、信頼性が向上する。
【0035】
図4は、図1に示す光モジュール3と光コネクタ4の構造例を詳しく示す斜視図である。図5は、図4のA−A線における光モジュール3と光コネクタ4の断面図である。図6(A)は、図5のC−C線における光モジュール3の断面図であり、図6(B)は、図5のD−D線における光モジュール3の断面図である。図7(A)は、図5のM−M線における光モジュールの断面図であり、図7(B)は、図5のN−N線における光モジュールの断面図である。
【0036】
図4と図5に示すように、光コネクタ4のコネクタ部42は、モジュールカバー35の開口部39内に位置決め(調芯)されたあと開口部39内に接着剤Wによりモジュールカバー35に対して固定されている。
【0037】
図5に示すように、チップコンデンサ29と光素子アレイ32とIC33は、モジュール基板34の一面(表面)上に実装されている。テープファイバ41の複数本の光ファイバ41Fは、T方向からV方向にほぼ90度折り曲げられて、光ファイバ41Fの先端部は光素子アレイ32に対面している。
【0038】
図5に示すモジュールカバー35は、モジュール基板34とIC(電気素子)33を覆うための熱伝導性を有する板状のカバーであり、すでに説明した開口部39と、凹状の内部空間部50と、段差部51を有している。モジュールカバー35は、段差部51によりモジュール基板34の端部に嵌め込まれることで、モジュールカバー35はモジュール基板34に対してT方向とV方向に関して位置決めされている。図6に示す内部空間部50の高さH2は、IC33の高さH1よりも大きく、内部空間部50の幅W2は、IC33の幅W1よりも大きい。
【0039】
図5と図6(A)に示すように、モジュールカバー35の内面とIC33の上面との間には、モジュールカバー35とIC33の上面との間にできる高さ公差のよる隙間を補償するために、熱伝導性を有する公差補償部材60が設けられている。この公差補償部材60は、モジュールカバー35の寸法が予め定めた設計寸法からばらつき、しかもIC33の寸法が設計寸法からばらつき、そしてIC33がモジュール基板34に搭載された時の高さ寸法が設計寸法からばらつくことの少なくとも1つから発生する隙間を埋めるのに用いられる。つまり、公差補償部材60は、光モジュール3を組み立てる際に、モジュールカバー35の内面とIC33の上面との間における公差(寸法のばらつき)によりできる隙間を補償する板状の部材である。公差補償部材60は、熱伝導性を有する例えば金属材料である銅板であるが、特に熱伝導性が良好であれば材質には限定されない。
【0040】
このように公差補償部材60は、平坦な金属板あるいは凹部を有する好ましくは銅板のような金属板である。凹部を有する金属板を用いることでバネ性を持たせることができる。公差補償部材60としては、複数種類の厚みのものを用意しておいて、モジュールカバー35の内面とIC33の上面との間の隙間の大きさ、すなわち公差のばらつきに応じてこの隙間を埋めるようにする。
【0041】
図6(A)に示すように、公差補償部材60の熱伝導を行う面積は、IC33の上面の面積よりも大きく設定されている。これにより、IC33が動作時に発生する熱は、より熱伝導を良好にするためにより広く確保された熱伝導面積により、モジュールカバー35側に効率良く伝えることができる。モジュールカバー35の内面35FとIC33の上面33Fとの間には、公差補償部材60が挿入して配置されている。しかも、モジュールカバー35の内面35Fと公差補償部材60の上面との間には、例えばAgペーストのような熱伝導性を有するペースト61が配置されている。これにより、ペースト61がモジュールカバー35の内面35Fと公差補償部材60の上面とを熱的に密着して固定でき、モジュールカバー35の内面35Fと公差補償部材60の上面との間の熱伝導性を向上できる。
【0042】
さらに、公差補償部材60の下面とIC33の上面33Fとの間には、放熱材62が塗布することにより配置されている。放熱材62としては、例えばシリコーングリース、シリコーンゴム、あるいはAgペーストを採用できる。これにより、放熱材62は、公差補償部材60の下面とIC33の上面33Fとを熱的に密着でき、公差補償部材60の下面とIC33の上面33Fとの間の熱伝導性を向上できる。
なお、図6(B)に示すように、モジュールカバー35の内面35Dとモジュール基板34の表面34Fとは、エポキシ樹脂とAgペーストで熱的に接着されている。
【0043】
次に、図4と図5と、図7(A)と図7(B)を参照して、接着剤溜部130について説明する。
図4と図5に示すように、光コネクタ4のコネクタ部42は、ほぼ矩形状の開口部39内に接着剤Wを注入してモジュールカバー35の開口部39内に位置決めされ、接着剤Wを硬化させることでモジュールカバー35に対して固定されている。
【0044】
図4に示すように、モジュールカバー35は、ほぼU字型の内縁部121を有している。この内縁部121は、光コネクタ4のコネクタ部42を配置するための長方形状の開口部39を形成している。コネクタ部42は第1壁部41Rと第2壁部41Sを有しており、第1壁部41Rと第2壁部41Sとは反対位置にある側面である。この内縁部121には、コネクタ部42の第1壁部41Rと第2壁部41Sとの間に接着剤Wを溜めるための接着剤溜部130と、接着剤溜部130と連通し、コネクタ部42の第1壁部41Rと第2壁部41Sとの間に隙間145を生じさせる隙間部とが形成されている。接着剤溜部130は例えば半円形状の凹部である。
【0045】
図示例では、接着剤溜部130は、2つの第1溜部130Rと2つの第2溜部130Sを有している。第1溜部130Rは、互いにT方向において離れて形成されており、コネクタ部42の第1壁部41Rに対面している。また、2つの第2溜部130Sは、互いにT方向において離れて形成されており、コネクタ部42の第2壁部41Sに対面している。
モジュールカバー35の内縁部121とコネクタ部42の第1壁部41Rと第2壁部41Sとの間には、それぞれ小さな隙間145が形成されている。
【0046】
図7(A)に示すように、内縁部121の上端は、面取りされている。また、隙間部が形成されている内縁部は、図7(A)に示すように、下部が切り欠かれている。
【0047】
使用される接着剤Wとしては、例えばエポキシ樹脂接着剤、アクリル樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤等が採用できるが、特に好ましいのは強度的にしかも耐熱性の優れたエポキシ樹脂接着剤である。接着剤Wが第1溜部130R、130Rと第2溜部130S、130Sから例えば注入器具であるニードルにより注入されると、図4と図5と図7(A)と図7(B)に示すように接着剤Wはコネクタ部42とモジュールカバー35の間の隙間に充填できる。すなわち、接着剤溜部130に接着剤が充填されるとともに、隙間部の上部と下部の少なくとも一部とに接着剤が埋められる。これにより、コネクタ部42はモジュールカバー35とモジュール基板34の表面に対して確実にかつ容易に固定することができる。
【0048】
光コネクタ4のコネクタ部42が、光モジュール3に対して位置決めして接着剤Wを用いて固定される手順例を説明する。
まず、開口部39内にコネクタ部42を配置して、4つの第1溜部130R、130Rと第2溜部130S、130Sに深さ方向で1/3までUV(紫外線硬化)硬化樹脂がニードルにより注入され、コネクタ部42の位置合わせを行った後に、紫外線を照射することで、コネクタ部42の第1壁部41Rと第2壁部41Sを内縁部121に対して仮固定する。これによって続く熱硬化時に位置ズレが起こらない。
【0049】
次に、4つの接着剤溜部130R、130Rと接着剤溜部130S、130Sにおいてニードルを用いて熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤をカバー上面近傍まで注入して、エポキシ樹脂接着剤を熱硬化してコネクタ部42をモジュールカバー35とモジュール基板34の表面に対して固定する。その後、必要に応じて、トラボンド(商品名)により表面を覆う。このようにして光コネクタ4と光モジュール3は接着剤Wを用いてユニット化することができる。
【0050】
その後、図1に示す電気プラガブルソケット1が、電気基板5に対して複数のネジ5Bにより固定される。光コネクタ4と光モジュール3の組み立てユニットが電気プラガブルソケット1のモジュール収容凹部14内に収容され、その後押さえ部材2が電気プラガブルソケット1に対ししてネジ5Cを用いて固定されることで、並列光伝送装置100の組み立て作業が終わる。
このようにして、本発明の実施形態では、接着剤を接着剤溜部から容易に注入して光コネクタが光モジュールに対して固定でき、光コネクタを光モジュール基板に対して簡単にかつ確実に位置決めでき、かつ硬化後も位置ずれすることがない。
【0051】
次に、本発明の別の実施形態を説明する。
図8は、本発明の光モジュールと光コネクタを示す斜視図であり、図9は、図8のK−K線における光モジュールと光コネクタの断面図である。図10(A)は、図9のP−P線における光モジュールと光コネクタの断面図であり、図10(B)は、図9のQ−Q線における光モジュールと光コネクタの断面図である。なお、図8〜図10に示す要素が、図4〜図6に示す要素と同様である場合には、同じ符号を記して説明を省略する。
図4と図5に示す光モジュール3では、テープファイバ41の複数本の光ファイバ41Fは、ほぼ90度折り曲げられて、光ファイバ41Fの先端部は光素子アレイ32に対面している。
【0052】
これに対して、図8と図9に示す光コネクタ4Aでは、テープファイバ41とコネクタ部42を有しているが、コネクタ部42は、テープファイバ41の複数の光ファイバの先端部41Gと光素子アレイ32との間に配置されたレンズアレイ81とを有している。レンズアレイ81は、光ファイバの先端部41Gに対応して集光レンズ80と、反射ミラー82を有する。例えば、光素子アレイ32からの光は、レンズアレイ80において90度反射して光ファイバの先端部41Gに導かれる。
【0053】
この実施形態における接着剤溜部230について説明する。図8と図9に示すように、光コネクタ4Aのコネクタ部42は、開口部39内に接着剤Wを注入してモジュールカバー35の開口部39内に位置決めされ、接着剤Wによりモジュールカバー35に対して固定されている。
【0054】
図8に示すように、モジュールカバー35は、内縁部121を有している。この内縁部121は、光コネクタ4Aのコネクタ部42を配置するための開口部39を形成している。
この内縁部121には、コネクタ部42の第1壁部41Rと第2壁部41Sとの間に接着剤Wを溜めるための接着剤溜部230が形成されている。接着剤溜部230は例えば半円形状の凹部である。接着剤溜部230は、2つの第1溜部230Rと2つの第2溜部230Sを有する。
【0055】
2つの接着剤溜部230Rは、互いにT方向において離れて形成されており、コネクタ部42の第1壁部41Rに対面している。また、2つの接着剤溜部230Sは、互いにT方向において離れて形成されており、コネクタ部42の第2壁部41Sに対面している。
【0056】
接着剤Wが接着剤溜部230R、230Rと接着剤溜部230S、230Sからニードルにより注入されると、図8と図9と図10(A)と図10(B)に示すようにコネクタ部42とモジュールカバー35の間の隙間に充填できるので、コネクタ部42はモジュールカバー35とモジュール基板34の表面に対して固定することができる。
【0057】
上述した本発明の各実施形態では、接着剤溜部130.230は、ともに2つの第1溜部と2つの第2溜部を有しており、これらの溜部に対して例えばニードルを用いて接着剤を簡単に確実に注入して塗布することができるので、光モジュールにおける接着剤の塗布量と接着剤の塗布位置の管理が可能になる。コネクタ部42はモジュールカバー35とモジュール基板34は、接着剤Wを用いて接着するので、光インターフェース部分である光コネクタ4と光モジュール3のユニットの強度をより高めることができ、光学的な安定性を得ることができる。
【0058】
接着剤樹脂としては、接着剤樹脂が硬化する際に収縮が小さい高粘度の樹脂を用いることが望ましい。もし低粘度の接着剤樹脂を用いると、接着剤が広がってしまいやすく硬化時に収縮率が大きい。そこで高粘度の接着剤樹脂を使用することが望ましく、このような高粘度の樹脂はニードルを用いて第1溜部と第2溜部に対して容易に確実に注入することができる。
【0059】
コネクタ部42をモジュールカバー35側に位置合わせするために、コネクタ部の左右の壁部と、モジュールカバー35側の内縁部121との間には、微小な隙間が必要である。このような接着剤溜部をモジュールカバー35に設けることで、コネクタ部42の壁部とモジュールカバー35の内縁部121の間の隙間が、例えば300μm程度であっても、接着剤溜部を用いて高粘度の接着材を簡単に確実に注入して塗布でき、接着剤塗布作業が容易になり接着剤塗布作業性を上げることができる。
【0060】
本発明の並列光伝送装置の実施形態では、接着剤を接着剤溜部から接着剤塗布位置を決めながら容易に注入して光コネクタが光モジュールに対して固定でき、光コネクタを光モジュール基板に対して簡単にかつ確実に位置決めできる。
【0061】
しかも、接着剤溜部は、半円形状の凹部である。これにより、接着剤は、接着剤溜部から容易に注入でき、光コネクタを光モジュールのカバーに対して確実に固定できる。コネクタ部の壁部は、第1壁部と第1壁部とは反対側の第2壁部を有し、接着剤溜部は、コネクタ部の第1壁部に対面する複数の第1溜部と、コネクタ部の第2壁部に対面する複数の第2溜部と、を有する。これにより、コネクタ部の複数の第1壁部と複数の第2壁部は、接着剤溜部から接着剤を注入して光モジュールのカバーに対して確実に固定できる。
【0062】
カバーの内縁部とコネクタ部の壁部との間には、隙間が形成されている。これにより、コネクタ部は、この隙間を利用して光モジュールのカバーに対して位置決め調整ができる。また、接着剤は、エポキシ樹脂接着剤である。これにより、コネクタ部と光モジュールのカバーを、エポキシ樹脂接着剤を用いて強力に固定することができる。
接着剤は、好ましくは位置決め用の紫外線硬化樹脂と、保持用の熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤とからなる。
【0063】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
接着剤溜部130,230は上から見て例えば半円形状の凹部であるが、例えば三角形、半楕円形の凹部等の他の形状を採用しても良い。接着剤溜部130.230は、ともに2つの第1溜部と2つの第2溜部を有しているが、第1溜部の設定数と第2溜部の設定数はこれに限らず、1つの第1溜部と1つの第2溜部を設けることや、3つ以上の第1溜部と3つ以上の第2溜部を設けるようにしても良い。また、光モジュール3に含まれるレンズアレイ81と光コネクタ4Aの接続部近傍に溜部を設けて接続を補強することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 電気プラガブルソケット
2 押さえ部材
3 光モジュール
4 光コネクタ
5 PCB(Printed Circuit Board)基板(電気基板の一例)
13 複数の接続端子部
13C 底壁部
14 収容凹部
14B 周壁部
21 押さえ部材の窓
24 光コネクタ収容部
32 光素子アレイ(例えばVCSELアレイ)
33 IC(電気素子)
34 ESA基板(光モジュール基板)
35 モジュールカバー(カバーの一例)
39 モジュールカバーの開口部
41 テープファイバ
42 コネクタ部
51 電気端子
100 並列光伝送装置
130,230 接着剤溜部
130R、230R 第1溜部
130S、230S 第2溜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光モジュール基板と、電気素子と、前記光モジュール基板と前記電気素子を覆うカバーとを有し、電気信号を光信号に或いは光信号を電気信号に変換する機能を有する光モジュールと、
前記光モジュールとの間で前記光信号を伝送するファイバと、前記ファイバを接続するコネクタ部とを有する光コネクタと、を備え、
前記カバーは、前記コネクタ部を配置するための開口部を有し、
前記開口部を形成する前記カバーの内縁部には、
前記コネクタ部の壁部との間に接着剤を溜める接着剤溜部と、前記接着剤溜部と連通し、前記コネクタ部の前記壁部との間に隙間を生じさせる隙間部とが形成されており、
前記隙間部が形成されている内縁部は、下部が切り欠かれていることを特徴とする光コネクタ付き光モジュール。
【請求項2】
前記接着剤溜部に前記接着剤が充填されるとともに、前記隙間部の上部と下部の少なくとも一部とに前記接着剤が埋められることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ付き光モジュール。
【請求項3】
前記コネクタ部の前記壁部は、第1壁部と前記第1壁部とは反対側の第2壁部を有し、
前記接着剤溜部は、前記コネクタ部の前記第1壁部に対面する複数の第1溜部と、前記コネクタ部の前記第2壁部に対面する複数の第2溜部と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光コネクタ付き光モジュール。
【請求項4】
前記接着剤溜部は、半円形状の凹部であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光コネクタ付き光モジュール。
【請求項5】
前記カバーの前記内縁部の上端は面取りされていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光コネクタ付き光モジュール。
【請求項6】
前記接着剤は、エポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光コネクタ付き光モジュール。
【請求項7】
前記接着剤は、位置決め用の紫外線硬化樹脂と、保持用の熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤とからなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光コネクタ付き光モジュール。
【請求項8】
複数の電気端子を有する電気基板と、
前記電気端子と電気的に接続された請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光コネクタ付き光モジュールと、
を有することを特徴とする並列光伝送装置。
【請求項9】
前記電気基板に固定される電気プラガブルソケットと、
前記電気プラガブルソケットに着脱自在に固定される押さえ部材と、をさらに備え、
前記光コネクタ付き光モジュールは、前記電気プラガブルソケットを介して前記電気端子と電気的に接続され、
前記押え部材は、前記コネクタ付き光モジュールと前記電気プラガブルソケットの上に配置されることを特徴とする請求項8に記載の並列光伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−168563(P2012−168563A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131794(P2012−131794)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2009−19762(P2009−19762)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】