説明

光コネクタ用クリップ、補強用クリップ付きコネクタ結合体及びその組立方法

【課題】破損したクリップを交換することなく、しかも、MT形光コネクタを用いて光ファイバ同士を接続した接続部を殆ど(あるいは全く)動かすことなく、一対のMT形光コネクタに所望の突き合わせ力を確保できる技術の開発。
【解決手段】概略アーチ形に形成された細長板状の一対の弾性板部11を一対の連結板部12で連結してなる枠状に構成され、MTクリップ3によって突き合わせ状態が維持された一対のMTコネクタ2を内側空間10Sに収納した状態で、一対の弾性板部11の弾性によって一対の連結板部12が前記一対のMTコネクタ2の後端面2bを押圧することで、一対のMTコネクタ2に突き合わせ力を付与する光コネクタ用クリップ10、このクリップ10を突き合わせ力を補うための補強材として使用した補強用クリップ付きコネクタ結合体及びその組立方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MT形光コネクタ(JIS C 5981に制定されるF12形多心光コネクタ。MT:Mechanically Transferable。)同士を突き合わせ状態で一括保持することでMT形光コネクタ同士の突き合わせ力を確保するための光コネクタ用クリップ、補強用クリップ付きコネクタ結合体及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MT形光コネクタは、ピン嵌合位置決め方式の光コネクタ(プラグ)として知られている。
MT形光コネクタ(以下、単にMTコネクタとも言う)を用いた光ファイバ同士の接続は、図18(a)、(b)に示すように、光ファイバ101、102(図示例では光ファイバテープ心線)の先端に設けたMTコネクタ110(区別のため符号101の光ファイバ先端のMTコネクタに符号111、符号102の光ファイバ先端のMTコネクタに符号112を付す)同士をその先端の接合端面111a、112a同士を接合して突き合わせ、板ばね状のクリップ120(クランプスプリング。以下、MTクリップとも言う)を用いて一括保持して突き合わせ状態を維持する。
一対のMTコネクタ110は、一方のMTコネクタ111のガイドピン穴106に嵌合して接合端面111aから突出させたガイドピン104を他方のMTコネクタ112のガイドピン穴106に挿入して嵌合することにより高精度に位置決めされる。また、MTクリップ120によって突き合わせ状態の一対のMTコネクタ111、112に突き合わせ力が与えられることで、MTコネクタ111、112の接合端面111a、112aに露出している裸光ファイバ103の先端同士の突き合わせ状態が維持され、これにより光ファイバ101、102同士の接続状態が安定に保たれる。
MTクリップ120は、例えば特許文献1記載のような専用の工具(以下、クリップ脱着工具)を用いて、突き合わせ状態の一対のMTコネクタ110に対する脱着作業を行うことが一般的である。
なお、図19において符号131はクロージャ130内に設けられたコネクタ収納ケースであり、図20に示すようにコネクタ結合体108を複数配列させて取り出し可能に収納するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−35682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記MTクリップ120は金属製(ステンレスが一般的)の部品であり、長期使用可能であるが、何等かの外的要因により破損することがある。MTクリップ120が破損すると、MTコネクタ110間の突き合わせ力の不足による損失増大や、MTコネクタ110間が離隔することによる通信障害を招く虞がある。
そこで、従来は、クリップの交換によって対応する。例えば図19に示すように光ファイバケーブル109同士の接続箇所に設けられたクロージャ130内の光ファイバ107先端に設けられた一対のMTコネクタ110を突き合わせ状態で一括保持したMTクリップ120の交換は、クリップ脱着工具を用いた交換作業の作業スペースを確保するべく、図19中仮想線で示すように、突き合わせ状態の一対のMTコネクタ110をMTクリップ120によって一括保持してなるコネクタ結合体108をクロージャ130から取り出して作業を行うことが一般的となっていた。
【0005】
しかしながら、このような交換作業では、コネクタ結合体108をクロージャ130から取り出す際に光ファイバ107の余長を引き出し、取り出したコネクタ結合体108を再収納する際には光ファイバ107の余長処理が必要になるため、活線状態の光ファイバの光通信に影響を与えやすい、作業に手間が掛かるといった問題があった。
また、この交換作業は、突き合わせ状態の一対のMTコネクタ110からMTクリップ120を取り外すと突き合わせ力が除荷されるためMTコネクタ110の間が離隔しやすくなる。このため、作業対象のコネクタ結合体108にて光接続されている活線状態の光ファイバ107、107の通信の瞬断が生じる可能性がある。しかし、これまで、クリップ脱着工具を用いた交換作業中の瞬断を確実に防止できる適切な手段が無いのが実情であった。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みて、破損したMTクリップを交換することなく、しかも、MT形光コネクタを用いて光ファイバ同士を接続した接続部を殆ど(あるいは全く)動かすことなく、所期の損失(接続損失)でのコネクタ接続を実現する突き合わせ力の確保を可能とする光コネクタ用クリップ、補強用クリップ付きコネクタ結合体及びその組立方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、光ファイバの先端に設けられたMT形光コネクタ同士を突き合わせ状態で一括保持して一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与するための光コネクタ用クリップであって、概略アーチ形に形成された細長板状の一対の弾性板部と、突き合わせ状態の前記一対のMT形光コネクタの先端側の接合端面とは反対側の後端面に当接される板状あるいは棒状に形成され、互いに離隔させて配置された前記一対の弾性板部を連結する一対の当接片部とを有し、前記一対の弾性板部の長手方向両端が互いに平行に設けられた前記一対の当接片部を介してそれぞれ連結されてなる枠状に構成され、前記一対の弾性板部はその内側面が互いに対面する向きで設けられ、前記弾性板部の長手方向中央部に作用させた押圧力によって前記弾性板部を前記一対の弾性板部の間の距離が縮小するように弾性変形させることで前記当接片部間が離隔されることを特徴とする光コネクタ用クリップを提供する。
第2の発明は、互いに離隔して設けられた前記一対の当接片部の間隔方向であるクリップ長手方向の両端部が、前記弾性板部の弾性によって前記一対の当接片部の間に挟み込むように保持された突き合わせ状態の一対のMT形光コネクタの後端から延びる光ファイバを通すための切り欠き状のファイバ挿通用開口部が形成された門形となっていることを特徴とする第1の発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第3の発明は、前記当接片部には前記一対の弾性板部の間隔方向に前記MT形光コネクタの長方形状の前記後端面の長手方向寸法よりも大きい寸法が確保されており、
前記一対の弾性板部が突き合わせ状態の一対の前記MT形光コネクタの前記後端面の長手方向と一致する方向である幅方向の両側に配置されるようにして、一対の当接片部を突き合わせ状態の一対のMT形光コネクタの後端面にそれぞれ当接させて装着されることを特徴とする第1又は第2の発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第4の発明は、光ファイバの先端に設けられたMT形光コネクタ同士を突き合わせ状態で一括保持して一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与するための光コネクタ用クリップであって、弾性変形可能な細長板状に形成されその全長あるいは長手方向中央部が概略アーチ形に形成された弾性板部の長手方向両端に、MT形光コネクタの先端側の接合端面とは反対側の後端面に当接させて係合される爪状の当接片部が、前記弾性板部の内側面から突出するように形成されていることを特徴とする光コネクタ用クリップを提供する。
第5の発明は、突き合わせ状態の前記一対のMT形光コネクタに対して、前記弾性板部をその幅方向が外観板状の前記MT形光コネクタの長方形状の接合端面の長手方向と一致する方向である幅方向に揃う向きで、前記一対のMT形光コネクタの片面側に配置する際に、前記一対のMT形光コネクタの一方又は両方の幅方向の端部に当接することで前記弾性板部を前記MT形光コネクタの幅方向に位置決めするための位置決め用当接片が前記弾性板部から前記当接片部が突設されている装着面側に突出するように形成されていることを特徴とする第4の発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第6の発明は、前記一対のMT形光コネクタに装着状態から取り外す作業を、前記板状本体の長手方向中央部を押圧して弾性変形させた状態で、前記一対のMT形光コネクタの長方形状の後端面の長手方向と一致する方向である幅方向に沿ってスライド移動させて前記一対のMT形光コネクタから離脱させることにより行えることを特徴とする第4又は5の発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第7の発明は、前記弾性板部は、その長手方向中央部の中央板部と、この中央板部の両側に前記中央板部に対して傾斜して設けられた一対の傾斜板部とを具備することを特徴とする第1〜6のいずれかの発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第8の発明は、前記弾性板部は、その長手方向中央部に概略アーチ形に形成されたアーチ形張出部を有し、前記アーチ形張出部は、前記弾性板部の両面のうち、該弾性板部の長手方向両端の前記当接片部が突設されている装着面側とは反対の背面側に張り出すように形成されていることを特徴とする第1〜7のいずれかの発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第9の発明は、前記弾性板部の両面のうち前記当接片部が突設されている側の面である装着面に、前記弾性板部の両端の当接片部の間に互いに突き合わせ状態で一括保持された一対のMT形光コネクタに当接可能なコネクタ当接突部が、前記弾性板部の両端の当接片部の間にて前記弾性板部の長手方向中央を介して両側の互いに離隔した位置に突設されていることを特徴とする第1〜8のいずれかの発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第10の発明は、前記コネクタ当接突部が、前記弾性板部からその前記装着面側に該装着面に対して傾斜して延出された弾性片によって形成されていることを特徴とする第9の発明の光コネクタ用クリップを提供する。
第11の発明は、一対のMT形光コネクタと、この一対のMT形光コネクタを突き合わせ状態で一括保持したクリップと、第1〜10のいずれかの発明の光コネクタ用クリップである補強用クリップとを具備し、前記クリップは、細長板状の主板部と該主板部の両端に立設された挟持用弾性片とを具備し、突き合わせ状態の前記一対のMT形光コネクタの後端面にそれぞれ前記挟持用弾性片が当接されるようにして前記挟持用弾性片の間に前記一対のMT形光コネクタを挟み込むようにして一括保持し、前記補強用クリップは、前記弾性板部の両端に位置する当接片部を前記一対のMT形光コネクタの後端面に当接させ前記弾性板部の弾性によって前記一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与して装着されていることを特徴とする補強用クリップ付きコネクタ結合体を提供する。
第8の発明は、光ファイバ先端に設けられたMT形光コネクタ同士をクリップを用いて互いに突き合わせた状態で一括保持してなるコネクタ結合体に、第1〜10のいずれかの発明の光コネクタ用クリップである補強用クリップを、その前記弾性板部の両端に位置する当接片部を前記一対のMT形光コネクタの後端面に当接させ前記弾性板部の弾性によって前記一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与して装着することを特徴とする補強用クリップ付きコネクタ結合体の組立方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光コネクタ用クリップは、その弾性板部の両端に位置する当接片部を突き合わせ状態の一対のMT形光コネクタの後端面に当接させた状態で、前記弾性板部の弾性によって前記一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与して前記一対のMT形光コネクタに装着することができる。したがって、本発明によれば、光コネクタ用クリップを、光ファイバ先端に設けられたMT形光コネクタ同士をクリップを用いて互いに突き合わせた状態で一括保持してなるコネクタ結合体の一対のMT形光コネクタに装着することで、前記一対のMT形光コネクタの突き合わせ力を補うための補強用クリップ(補強材)として用いることができる。これにより、クリップを交換することなく、コネクタ結合体の一対のMT形光コネクタに所期の損失でのコネクタ接続を実現するに要する突き合わせ力を確保することができる。
【0009】
また、本発明に係る光コネクタ用クリップは、弾性板部を押圧力を作用させて弾性変形させることで、弾性板部の両端に位置する当接片部間の距離を容易に拡げることができる構成であり、コネクタ結合体に装着する作業を、工具等を使用することなく、例えば作業者が手指で簡単に行うことができる。このため、MT形光コネクタを用いて光ファイバ同士を接続した接続部を殆ど(あるいは全く)動かすことなく、コネクタ結合体に装着する作業を行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の光コネクタ用クリップの構造を示す図であって、(a)は底面側とは反対の側から見た斜視図、(b)は底面側から見た斜視図、(c)は平面図、(d)は側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の補強用クリップ付きコネクタ結合体の構造を示す分解斜視図である。
【図3】図2の補強用クリップ付きコネクタ結合体の構造を示す正断面図である。
【図4】図2の補強用クリップ付きコネクタ結合体の構造を示す平面図である。
【図5】図2の補強用クリップ付きコネクタ結合体の構造を示す側面図である。
【図6】図1の光コネクタ用クリップを用いた補強用クリップ付きコネクタ結合体の組立方法の一例を説明する図である。
【図7】本発明の第2実施形態の光コネクタ用クリップの構造を示す図であって、(a)は正面図、(b)は板状本体の内側面の側から見た図、(c)は側面図、(d)は前記内側面とは反対側から見た斜視図、(e)前記内側面の側から見た斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態の補強用クリップ付きコネクタ結合体の構造を示す分解斜視図である。
【図9】図8の光コネクタ用クリップを用いた補強用クリップ付きコネクタ結合体の組立方法を説明する図である。
【図10】図7の光コネクタ用クリップを用いた補強用クリップ付きコネクタ結合体の組立方法の一例を説明する図である。
【図11】(a)は図8の光コネクタ用クリップのコネクタ結合体からの取り外し方法を説明する図、(b)は光コネクタ用クリップをコネクタ結合体に対してMT形光コネクタの幅方向にスライド移動させて離脱させる取り外し方法を説明する図である。
【図12】第2実施形態の光コネクタ用クリップの変形例を示す斜視図である。
【図13】図12の光コネクタ用クリップをコネクタ結合体の一対のMT形光コネクタに装着する作業を説明する図である。
【図14】図12の光コネクタ用クリップを説明する図であって、(a)は前記光コネクタ用クリップをコネクタ結合体の一対のMT形光コネクタに装着した状態を示す正面図、(b)はコネクタ結合体の一対のMT形光コネクタに装着状態の前記光コネクタ用クリップを前記一対のMT形光コネクタから取り外す作業を説明する図である。
【図15】第3実施形態の光コネクタ用クリップを示す図であって、(a)は正面図、(b)は装着面側から見た図、(c)は(a)の右側面図である。
【図16】図15の光コネクタ用クリップを示す全体斜視図である。
【図17】(a)は図15の光コネクタ用クリップをコネクタ結合体の一対のMT形光コネクタに装着する作業を説明する図、(b)はコネクタ結合体の一対のMT形光コネクタに装着状態の前記光コネクタ用クリップを前記一対のMT形光コネクタから取り外す作業を説明する図である。
【図18】MT形光コネクタを用いたコネクタ結合体の構造を説明する図であって、(a)は分解斜視図、(b)は組み立て状態を示す正面図である。
【図19】クロージャ内に収納されているコネクタ結合体のクリップ交換作業を説明する図である。
【図20】クロージャ内に設けられるコネクタ収納ケースを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した光コネクタ用クリップ、補強用クリップ付きコネクタ結合体及びその組立方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る第1実施形態の光コネクタ用クリップ、補強用クリップ付きコネクタ結合体及びその組立方法を説明する。
図1(a)〜(d)に示すように、この実施形態の光コネクタ用クリップ10(以下、補強用クリップとも言う)は、細長板状の一対の弾性板部11と、互いに離隔させて配置された前記一対の弾性板部11を互いに連結する一対の連結板部12(当接片部)とを具備してなる枠状に構成されている。
【0013】
図2〜図4に示すように、この補強用クリップ10は、光ファイバ1(図示例では光ファイバテープ心線。図中、2本の光ファイバ1の区別のため、符号1a、1bを付記する)の先端に設けられたMT形光コネクタ2(以下、単にMTコネクタとも言う。図中区別のため光ファイバ1a先端のMTコネクタに符号2A、光ファイバ1b先端のMTコネクタに符号2Bを付す)同士をクリップ3(クランプスプリング。以下、MTクリップとも言う)を用いて突き合わせ状態(各MTコネクタ2の先端面である接合端面2a同士の突き合わせた状態)で一括保持してなるコネクタ結合体4に装着して、このコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に突き合わせ力(互いに押し付ける方向の力)を与えるものである。
【0014】
MTコネクタ2は、光ファイバ1a、1bの先端へのフェルール5(MTフェルール)の取り付けによって光ファイバ1a、1bの先端に設けられている。図4に示すように、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2A、2Bの一方(ここでは符号2AのMTコネクタ)はそのフェルール5にガイドピン6を取り付けたものである。コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2A、2Bは、一方の光コネクタ2(2A)のガイドピン6の前記接合端面2aから突出された部分を、MTコネクタ2A、2Bの他方(ここでは符号2BのMTコネクタ)のフェルール5に形成されているガイドピン穴7に挿入、嵌合して高精度に位置決めして突き合わされている。
【0015】
MTコネクタ2の接合端面2a及び該接合端面2aとは反対側の後端面2bは、いずれもフェルール5に形成されている端面である。
【0016】
図3、図4に示すように、補強用クリップ10において、板状に形成されている一対の連結板部12は、前記コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の前記接合端面2aとは反対側の後端面2bに当接させて係合されるものであり、互いに平行に設けられている。
図1(a)〜(d)に示すように、一対の弾性板部11は概略アーチ形に形成されており、それぞれ長手方向両端が前記連結板部12と繋がっている。補強用クリップ10は、一対の弾性板部11のそれぞれの長手方向両端が連結板部12を介して繋がっている(連結されている)全体として枠状の構造になっている。一対の弾性板部11のそれぞれの長手方向両端は、一対の弾性板部11の間隔方向における前記連結板部12の両端に繋がっている。
【0017】
図1(a)〜(d)に示すように、この補強用クリップ10において、アーチ形の一対の弾性板部11は、その内側面11sが互いに対面する向きで設けられている。
また、一対の弾性板部11は、具体的には、その長手方向中央部の中央板部11aと、この中央板部11aの両側に前記中央板部11aに対して傾斜して設けられた一対の傾斜板部11b、11bとを具備して構成されている。補強用クリップ10において、一対の弾性板部11の中央板部11aは互いに平行に設けられている。
【0018】
図1(a)〜(d)に示すように、図示例の前記補強用クリップ10は、全体として8角形の枠状に形成されている。
また、本発明に係る光コネクタ用クリップとしては、例えば、円弧状に湾曲するアーチ形に形成された細長板状の弾性板部を採用した構成としても良い。
【0019】
図示例の補強用クリップ10は、全体が、例えばステンレス等の金属あるいはプラスチックによって一体に形成された1部品となっている。
【0020】
図4に示すように、この補強用クリップ10は、作業者が手指で、前記弾性板部11の長手方向中央部(具体的には中央板部11a)に前記一対の弾性板部11を互いに接近させるように押圧力を作用させることで前記弾性板部11を弾性変形させ、一対の弾性板部11の間の距離を縮小させることができる。また、この補強用クリップ10は、上述のように前記弾性板部11の長手方向中央部(具体的には中央板部11a)に作用させた押圧力によって一対の弾性板部11の間の距離が縮小するように一対の弾性板部11が弾性変形されることで、一対の連結板部12間の離隔距離が増大するように構成されている。
【0021】
図1(c)に示す補強用クリップ10の一対の連結板部12間の距離L12(補強用クリップ10に外力を加えていないときの距離)は、この補強用クリップ10を装着するコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離L(図4参照)よりも若干小さく設定される。
但し、上述のように前記弾性板部11の長手方向中央部(具体的には中央板部11a)に作用させた押圧力によって一対の弾性板部11の間の距離が縮小するように一対の弾性板部11を弾性変形することで、一対の連結板部12間の離隔距離を、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離Lと同等あるいは前記距離Lよりも大きくできるように構成される。
【0022】
図3〜図5に示すように、この補強用クリップ10は、その内側空間10Sにコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2を収納し、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2bに一対の連結板部12をそれぞれ当接させた状態で前記一対の弾性板部11の弾性を前記一対のMTコネクタ2にその突き合わせ力として作用させる。この補強用クリップ10を、MTクリップ3が破損しているコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着したとき、一対のMTコネクタ2にMTクリップ3の弾性によって突き合わせ力がある程度作用している場合は、前記一対の弾性板部11の弾性によって一対のMTコネクタ2の突き合わせ力を増力(増強)できる。MTクリップ3の破損によって、突き合わせ力が与えられていないに等しい場合は、この補強用クリップ10の装着の結果、一対の弾性板部11の弾性によって、一対のMTコネクタ2に、所期の損失でのコネクタ接続を実現するに要する突き合わせ力を与えることが可能である。
【0023】
この補強用クリップ10をコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2に装着するには、補強用クリップ10の内側空間10Sにコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2を収納する必要がある。例えば、図4に示すように、作業者が手指で一対の弾性板部11の長手方向中央部(具体的には中央板部11a)に押圧力を作用させて一対の弾性板部11を互いの離隔距離が縮小するように弾性変形させ、一対の連結板部12間の離隔距離をコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離L(図4参照)よりも大きくしておく(図4仮想線)ことで、補強用クリップ10の内側空間10Sにコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2を収納する作業を容易に行える。
【0024】
そして、前記内側空間10Sにコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2を収納した後、前記弾性板部11の押圧をやめ、弾性板部11に前記押圧力が作用していない状態とすると、一対の弾性板部11の弾性復元力によって一対の連結板部12の間の離隔距離が縮小し、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端面2bに当接された一対の連結板部12がそれぞれMTコネクタ2を互いに突き合わせ方向に押圧することとなる。
補強用クリップ10は、一対の弾性板部11の弾性復元力によって、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2を一対の連結板部12の間に挟み込むことで、前記一対のMTコネクタ2に装着される。これにより、補強用クリップ付きコネクタ結合体4Aが組み立てられる。
【0025】
補強用クリップ10をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着して一対のMTコネクタ2を一括保持したとき、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2には、MTクリップ3の弾性力の他、補強用クリップ10の弾性力も突き合わせ力として作用することとなる。したがって、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着した補強用クリップ10によって一対のMTコネクタ2を一括保持すれば、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の突き合わせ力を補うことができる。つまり、補強用クリップ10を、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の突き合わせ力を補うための補強材として使用することができる。
このため、例えばMTクリップ3が破損している場合に、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着した補強用クリップ10によって一対のMTコネクタ2を一括保持すれば、補強用クリップ10を、所期の損失でのコネクタ接続に要する突き合わせ力の安定確保に有効に機能させることができる。
【0026】
また、MTクリップ3を使用せずこの補強用クリップ10のみを使用して、一対のMTコネクタ2に所期の損失でのコネクタ接続に要する突き合わせ力を確保できる構成とすることも可能であるため、例えばMTクリップ3の破損によって突き合わせ力が与えられていないに等しい場合でも、この補強用クリップ10の装着の結果、一対の弾性板部11の弾性によって、一対のMTコネクタ2に、所期の損失でのコネクタ接続を実現するための突き合わせ力を与えることが可能である。
【0027】
また、補強用クリップ10の一対の弾性板部11の弾性をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に突き合わせ力として作用させることで、一対のMTコネクタ2間の離隔を防ぐこと(突き合わせ状態の安定確保)も可能であることは言うまでも無い。
【0028】
図1(a)、(b)に示すように、この補強用クリップ10の一対の連結板部12の間隔方向であるクリップ長手方向(図1(c)、図3、図4における左右方向)の両端部において、前記連結板部12の両側には、細長板状の一対の弾性板部11の長手方向両端がその幅方向(弾性板部11の長手方向及び厚み方向に垂直の方向。図1(d)における左右方向)が互いに平行になるようにして配置されている。この補強用クリップ10において、一対の弾性板部11の幅方向を、以下、クリップ高さ方向とも言う。
【0029】
前記連結板部12は、一対の弾性板部11の間隔方向に延在する板状に形成されており、その両側の弾性板部11の端部のクリップ高さ方向における片端から中央部までの範囲を互いに連結している。連結板部12の両側の弾性板部11の端部の間に位置する領域の内、連結板部12が存在しない所は、補強用クリップ10の内側空間10S内に収納された突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端から延びる光ファイバ1a、1bを通すためのファイバ挿通用開口部13とされている。
この補強用クリップ10のクリップ長手方向両端部は、前記ファイバ挿通用開口部13が切り欠き状に形成された門形となっている。
【0030】
また、連結板部12は、一対の弾性板部11を連結しかつMTコネクタ2の後端面2bに当接されることで前記弾性板部11の弾性によって発生される押圧力をMTコネクタ2に作用させ(つまり、一対のMTコネクタ2を挟み込む)一対のMTコネクタ2に突き合わせ力を与えるものであり、本発明に係る当接片部として機能するものであるが、本発明に係る光コネクタ用クリップに係る当接片部としては、前記連結板部12のように板状に形成されたものに限定されない。本発明は、当接片部が、例えば図示例の連結板部12に比べて、クリップ高さ方向における寸法を小さくした棒状になっている構成も含む。
【0031】
この補強用クリップ10をコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2に装着する際には、補強用クリップ10の内側空間10S内に収納された突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端から延びる光ファイバ1a、1b及びMTコネクタ2の後端から突出するブーツ8を前記ファイバ挿通用開口部13に収納し、前記光ファイバ1a、1bが前記ファイバ挿通用開口部13から補強用クリップ10の外側に引き出されるようにする。
なお、補強用クリップ10は、光ファイバ1a、1bに、連結板部12からの押圧力によって曲げが与えられないように、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対する装着位置を調整する。
【0032】
図3、図5に示すように、この補強クリップ10をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着する際、前記連結板部12は、一対のMTコネクタ2の後端面2bのうち、MTクリップ3の当接位置を避けた所に当接される。
以下、この点をより具体的に説明する。
【0033】
図3に示すように、MTクリップ3は、細長板状の主板部31と該主板部31の長手方向両端に立設された挟持用弾性片32とを具備し、突き合わせ状態の前記一対のMTコネクタ2の後端面2bにそれぞれ前記挟持用弾性片32が当接されるようにして前記挟持用弾性片32の間に前記一対のMTコネクタ2を挟み込むようにして一括保持している。
【0034】
MTクリップ3の挟持用弾性片32は、前記主板部31の長手方向両端から延出するC形の第1湾曲部32aの先端に、該第1湾曲部32aとは逆向きに湾曲するC形の第2湾曲部32bを有する概略S字形のばね片となっている。この挟持用弾性片32の前記第2湾曲部32bは第1湾曲部32aから主板部31の長手方向中央部側に張り出すように形成されている。MTクリップ3を用いて、主板部31の長手方向両端の挟持用弾性片32の間に突き合わせ状態の前記一対のMTコネクタ2を挟み込むようにして一括保持するとき、MTコネクタ2の後端面2bには挟持用弾性片32の前記第2湾曲部32bが当接される。
【0035】
図2、図5に示すように、前記挟持用弾性片32は、前記主板部31の長手方向両端において主板部31の幅方向両端にそれぞれ突設されている。挟持用弾性片32は、前記主板部31の長手方向両端に2つずつ、前記主板部31の計4箇所に突設されている。
主板部31の長手方向の端部において主板部31の幅方向両端に互いに離隔して設けられている挟持用弾性片32は、その第2湾曲部32bが、MTコネクタ2の長方形状の後端面2bの長手方向において光ファイバ1及びブーツ8を避けてその両側の位置に当接される。
【0036】
また、MTクリップ3の各挟持用弾性片32(具体的には第2湾曲部32b)のMTコネクタ2の後端面2bに対する当接位置は、外観板状のMTコネクタ2の厚み方向(すなわち、前記後端面2bにおいてその長手方向に直交する方向(後端面2bの幅方向))の中央部であり、各挟持用弾性片32の第2湾曲部32bはMTコネクタ2の後端面2bに当接させたときに、丁度、フェルール5に貫設されているガイドピン穴7の前記後端面2bにおける開口部を塞ぐように配置される。
【0037】
補強用クリップ10は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着して一対のMTコネクタ2を一括保持する際に、コネクタ結合体4に対して該コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の厚み方向においてMTクリップ3の主板部31とは反対の側から一対のMTコネクタ2の外側に外挿して、一対のMTコネクタ2を囲繞するようにして配置する。補強用クリップ10は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対して、クリップ高さ方向においてファイバ挿通用開口部13が形成されている側(以下、底面側とも言う)から外挿する。
【0038】
MTコネクタ2の後端面2bにおける補強用クリップ10の連結部12の当接可能範囲(一対のMTコネクタ2の厚み方向における当接範囲)は、連結部12が、挟持用弾性片32の第2湾曲部32b及び/又はMTコネクタ2の後端面2bから突出されているブーツ8に当接する位置から前記MTクリップ3の主板部31とは反対側の範囲である。
【0039】
コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着して前記一対のMTコネクタ2を一括保持した補強用クリップ10は、一対の弾性板部11に互いに接近させる方向の押圧力を作用させて前記弾性板部11を弾性変形させることで、コネクタ結合体4から簡単に取り外すことができる。
【0040】
図6中、符号91は、クロージャ9内に設けられたコネクタ収納ケースを示す。
図6において、前記コネクタ収納ケース91には、クロージャ9内の光ファイバ1同士の接続部であるコネクタ結合体4が複数配列させて収納されている。コネクタ結合体4は、そのMTコネクタ2の幅方向(長方形状の接合端面2a及び後端面2bの長手方向に一致する方向)が前記コネクタ収納ケース91の底板91aに垂直の向きで、コネクタ収納ケース91に収納されている。
【0041】
クロージャ9内に、MTクリップ3が破損しているコネクタ結合体4が存在するとき、前記クロージャ9を開放した状態にて該当のコネクタ結合体4(詳細には一対のMTコネクタ2)に前記補強用クリップ10を装着し、この補強用クリップ10の弾性(具体的には弾性板部11の弾性)を一対のMTコネクタ2に突き合わせ力として作用させることで、一対のMTコネクタ2の突き合わせ力を補うことができる。その結果、破損したMTクリップ3を取り外すこと無く、一対のMTコネクタ2の突き合わせ力を確実に確保でき、一対のMTコネクタ2間の離隔を防ぐことができる。
【0042】
図6に示すように、クロージャ9内のコネクタ収納ケース91に収納されているコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に補強用クリップ10を装着して突き合わせ力を補う作業を行う場合は、コネクタ収納ケース91から作業対象のコネクタ結合体4を取り出し、補強用クリップ10を装着(補強用クリップ付きコネクタ結合体を組み立て)した後、この補強用クリップ10を装着済みのコネクタ結合体4(補強用クリップ付きコネクタ結合体)をコネクタ収納ケース91に収納する。
【0043】
既述のように、補強用クリップ10は、作業者が手指で一対の弾性板部11に互いに接近させる方向の押圧力を作用させて前記弾性板部11を弾性変形させることで、その内側空間10Sにコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2を収納する作業を簡単に行うことができ、また、内側空間10Sにコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2を収納した後、弾性板部11の押圧をやめることで、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に簡単に装着することができる。つまり、補強用クリップ10をコネクタ結合体4に装着する作業は、特別な工具を使用する必要が無い。このため、補強用クリップ10をコネクタ結合体4に装着する作業は、MTクリップの脱着用の工具(例えば特許文献1)を用いたMTクリップの脱着作業に比べて、必要となる作業スペースが格段に小さくて済む。
【0044】
また、補強用クリップ10をコネクタ結合体4に装着する作業(補強用クリップ付きコネクタ結合体の組立方法。換言すれば、コネクタ結合体の突き合わせ力補強方法)は、コネクタ結合体4からMTクリップ3を除去することなく、このMTクリップ3が一対のMTコネクタ2を一括保持した状態のまま行う。したがって、補強用クリップ10をコネクタ結合体4に装着する作業は、作業対象のコネクタ結合体4をクロージャ9から取り出すことなく、クロージャや光接続箱といったクロージャ9内に手指を入れて行うことができる。また、この結果、作業対象のコネクタ結合体4及び該コネクタ結合体4にて互いに接続されている光ファイバ1を殆ど動かさなくて済むため、活線状態にて作業を行っても通信の瞬断を容易に防ぐことができる。
【0045】
上述のような補強用クリップ10の装着作業であれば、クロージャ9からのコネクタ結合体4の取り出しに伴う余長の引き出しや、クロージャ9の外側にて補強用クリップ10の装着作業を行ったコネクタ結合体4のクロージャ9内への収納時に必要となる余長処理も省略できることは言うまでも無い。
このため、作業対象のコネクタ結合体4にて互いに接続されている光ファイバ1のみならず、クロージャ9内の他の光ファイバの通信に影響を与えることを回避する点でも有利である。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の光コネクタ用クリップ、補強用クリップ付きコネクタ結合体及びその組立方法を説明する。
図7(a)〜(e)に示すように、この実施形態の光コネクタ用クリップ20(以下、補強用クリップとも言う)は、概略アーチ形に形成された細長板状の板状本体21(弾性板部)の長手方向両端に、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2bに当接させて係合される爪状の係合爪22(当接片部)が突設されている構成になっている。
【0047】
前記板状本体21は、具体的には、その長手方向中央部の中央板部21aと、この中央板部21aの両側に前記中央板部21aに対して傾斜して設けられた一対の傾斜板部21bとを具備する構成となっている。
但し、本発明に係る光コネクタ用クリップとしては、例えば、円弧状に湾曲するアーチ形に形成された細長板状の板状本体(弾性板部)を採用した構成としても良い。
【0048】
前記係合爪22は、前記板状本体21の内側面21sから突出するように形成されている。また、図示例の補強用クリップ20において、前記係合爪22は、板状本体21の長手方向両端において、板状本体21の幅方向(図7(b)上下方向)全長にわたって延在する突条状に形成されている。
但し、本発明に係る光コネクタ用クリップとしては、前記係合爪が、例えば板状本体21の幅方向の複数箇所に分散配置して突設されている構成も採用可能である。
【0049】
図9に示すように、板状本体21の長手方向両端の係合爪22の間の離隔距離L22は、この補強用クリップ20の適用対象のコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離Lよりも若干短く設定される。
【0050】
この補強用クリップ20は、その全体が金属によって一体に形成された1部品になっている。但し、本発明に係る光コネクタ用クリップとしては、これに限定されず、複数部材によって構成されたものであっても良い。
また、前記板状本体21は作業者が手指で弾性変形させることが可能になっている。
【0051】
図8、図9に示すように、この補強用クリップ20は、前記板状本体21の長手方向両端の前記係合爪22を、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2bにそれぞれ係合させた状態で、前記一対のMTコネクタ2に前記板状本体21の弾性を突き合わせ力として作用させて装着される。
また、図9に示すように、この補強用クリップ20は、板状本体21が、コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に対して、該一対のMTコネクタ2の厚み方向においてMTクリップ3の主板部31とは反対の側に位置するように装着される。
【0052】
この補強用クリップ20をコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に装着するには、図9に示すように、まず、補強用クリップ20を、コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に対して、該一対のMTコネクタ2の厚み方向においてMTクリップ3の主板部31とは反対の側から、前記板状本体21の内側面21sが前記一対のMTコネクタ2に対面する向きで当接させる。そして、板状本体21の長手方向中央部(具体的には中央板部21a)をコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に向けて押圧する押圧力によって板状本体21を弾性変形させ、板状本体21の長手方向両端の係合爪22をコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2の後端面2bに配置する。
【0053】
図9に示すように、この補強用クリップ20の板状本体21の長手方向両端の係合爪22の間の離隔距離L22は、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離Lよりも若干短く設定されているが、この補強用クリップ20の板状本体21を一対のMTコネクタ2に対してMTクリップ3の主板部31とは反対の側に配置し、前記押圧力によって板状本体21を弾性変形させる(中央板部21aに押圧力を作用させる)と、これに伴い、板状本体21の長手方向両端の係合爪22の間の離隔距離が増大する。板状本体21の長手方向両端の係合爪22の間の離隔距離は、板状本体21の弾性変形によって、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離Lと同等あるいは前記距離Lよりも大きくなるように設定される。
【0054】
板状本体21の長手方向両端の係合爪22をコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2の後端面2bに配置した後、前記板状本体21の長手方向中央部の押圧を停止する。
これにより、板状本体21の弾性復元力によって、コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2が、板状本体21の長手方向両端の前記係合爪22の間に挟み込まれるようにして一括保持される。
【0055】
この補強用クリップ20は、板状本体21の長手方向中央部を押圧するだけで、極めて簡単にコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に装着することができる。
また、補強用クリップ20は、板状本体21の幅方向がコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2の幅方向に一致する向きで、コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に装着される。
コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に補強用クリップ20が装着されることで補強用クリップ付きコネクタ結合体4Bが組み立てられる。
【0056】
補強用クリップ20をコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に装着することで、コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2には、コネクタ結合体4のMTクリップ3によって与えられる突き合わせ力の他に、前記板状本体21の弾性によって与えられる突き合わせ力も作用することになる。補強用クリップ20は、コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2の突き合わせ力を補う機能を果たす。つまり、補強用クリップ20を、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の突き合わせ力を補うための補強材として使用することができる。
したがって、例えばコネクタ結合体4のMTクリップ3が破損している場合、この補強用クリップ20を一対のMTコネクタ2に装着することで、突き合わせ力を補うことができる。これにより、MTコネクタ2間が離隔することを防ぐことができる(突き合わせ状態を維持できる)。
【0057】
前記補強用クリップ20の一対の係合爪22は、MTクリップ3の挟持用弾性片32の第2湾曲部32b及び/又はMTコネクタ2から突出するブーツ8に当接する位置、及び該位置から前記MTクリップ3の主板部31とは反対側にずれた位置で、前記後端面2bに対して係合可能である。
図9では、補強用クリップ20の一対の係合爪22を、MTクリップ3の挟持用弾性片32の第2湾曲部32bに当接する位置で一対のMTコネクタ2の後端面2bに係合させた状態を示す。
【0058】
また、図8等に示すように、この補強用クリップ20には、コネクタ結合体4のMTコネクタ2の幅方向の端部に当接することで前記板状本体21を前記MTコネクタ2の幅方向に位置決めするための位置決め用当接片23が突設されている。
前記位置決め用当接片23は、板状本体21の幅方向の片端から内側面21sから突出するように形成されている。したがって、この補強用クリップ20は、例えば図10に示すように、前記位置決め用当接片23をコネクタ結合体4のMTコネクタ2の幅方向の端部に当接するだけで前記MTコネクタ2の幅方向における位置決めを極めて簡単に行うことができる。
【0059】
なお、図示例の補強用クリップ20の前記位置決め用当接片23は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2のうちの片方のみに当接されるようになっている。但し、本発明はこれに限定されず、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の両方に当接される位置決め用当接片を具備する構成としても良い。
【0060】
コネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に装着された補強用クリップ20は、図11(a)に示すように板状本体21の長手方向中央部(具体的には中央板部21a)をコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2に向けて押圧して板状本体21を弾性変形させ、これにより板状本体21の長手方向両端の前記係合爪22の間を離隔させることで、前記一対のMTコネクタ2から離脱させる(取り外す)ことができる。
【0061】
この補強用クリップ20も、工具を使用することなく、作業者が手指で操作するだけで、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に簡単に装着でき、しかも、装着作業を行うために要する作業スペースが非常に小さくて済むことは第1実施形態の補強用クリップ10と同様である。また、この補強用クリップ20を用いて、クロージャ9内のコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着して突き合わせ力を補う作業は、コネクタ結合体4のMTクリップ3を取り外すことなく行える。
このため、この補強用クリップ20をクロージャ9内のコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着して突き合わせ力を補う作業を、作業対象のコネクタ結合体4をクロージャ9から取り出すことなく、クロージャや光接続箱といったクロージャ9内にて行うことができる。この結果、作業対象のコネクタ結合体4及び該コネクタ結合体4にて互いに接続されている光ファイバ1を殆ど動かさなくて済むため、活線状態にて作業を行っても通信の瞬断を容易に防ぐことができる。
【0062】
クロージャ9内のコネクタ収納ケース91(図10参照)に収納されているコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に補強用クリップ20を装着して突き合わせ力を補う作業を行う場合は、例えば、クロージャ9を開放した状態にてコネクタ収納ケース91から作業対象のコネクタ結合体4を取り出し(クロージャ9から取り出す必要は無い)、図10に示すように、クロージャ9内にて補強用クリップ20を装着(補強用クリップ付きコネクタ結合体4Bを組み立て)した後、この補強用クリップ20を装着済みのコネクタ結合体4(補強用クリップ付きコネクタ結合体4B)をコネクタ収納ケース91に収納する。
【0063】
但し、この補強用クリップ20は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の片面側(MTクリップ3の主板部31とは反対の側)から板状本体21の長手方向中央部に作用させた押圧力によって前記一対のMTコネクタ2に対して押し付けるだけで、前記一対のMTコネクタ2に装着できるため、例えば、コネクタ収納ケース91内にて、作業対象のコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の片面側(MTクリップ3の主板部31とは反対の側)に補強用クリップ20を挿入できる大きさの空きスペースを確保できる場合は、コネクタ結合体4をコネクタ収納ケース91から取り出さずに、補強用クリップ20の装着作業を行うことも可能である。この場合、作業対象のコネクタ結合体4を全く動かすことなく補強用クリップ20の装着作業を行えるため、通信の瞬断等の不都合が生じにくい。このため、活線状態での作業を行う上で非常に有利である。
【0064】
この補強用クリップ20は、作業対象のコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の片面側(MTクリップ3の主板部31とは反対の側)に板状本体21と該板状本体21の長手方向中央部を押圧する手指とを挿入できる大きさの空きスペースを確保できれば、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対する装着作業を行うことが可能であり、装着のために必要な作業スペースが非常に小さくて済む。装着作業のための作業スペースは、第1実施形態の補強用クリップ10に比べてもさらに小さく(狭く)することが可能である。
【0065】
コネクタ結合体4に対する補強用クリップ20の装着作業のやり直し等のため補強用クリップ付きコネクタ結合体4Bから補強用クリップ20を取り外す場合、この取り外し作業は、図11(a)に示すように作業者が手指で補強用クリップ20の板状本体21をその長手方向中央部を押圧して弾性変形させ、板状本体21の長手方向両端の前記係合爪22の間を離隔させ、この状態で図11(b)に示すように補強用クリップ20をコネクタ結合体4に対してその一対のMTコネクタ2の幅方向に沿ってスライド移動させて前記一対のMTコネクタ2から離脱させることも可能である。このとき、補強用クリップ20はコネクタ結合体4に対して位置決め用当接片23がコネクタ結合体4のMTコネクタ2から離隔する方向にスライド移動させる。
【0066】
この取り外し作業の場合、作業に要する作業スペースが非常に小さくて済むといった利点がある。したがって、例えば、図11(b)に示すように、補強用クリップ20が装着されているコネクタ結合体4(補強用クリップ付きコネクタ結合体4B)がクロージャ9(図示例では詳細にはコネクタ収納ケース91)に収納状態のまま、コネクタ結合体4からの補強用クリップ20の取り外し作業を行うといったことも容易に実現できる。
【0067】
なお、上述のように、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着状態の補強用クリップをその板状本体の長手方向中央部を押圧して弾性変形させた状態で、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の幅方向に沿ってスライド移動させて前記一対のMTコネクタ2から取り外す手法は、本実施形態に係る後述の変形例や第3実施形態にも適用可能である。
【0068】
(第2実施形態の変形例)
図12、図13、図14(a)、(b)に示すように、補強用クリップとしては、図7(a)〜(e)、図8、図9等に例示した補強用クリップ20の板状本体21の内側面21sに、前記板状本体21の両端の係合爪22間に一括保持した一対のMT形光コネクタに当接可能なコネクタ当接突部51を突設した構成のもの(補強用クリップ50)を使用することも可能である。
【0069】
図12、図14(a)に示すように、この補強用クリップ50の前記コネクタ当接突部51は、前記板状本体21の長手方向においてその両端の係合爪22の間にて該板状本体21の長手方向中央を介して両側の位置で内側面21sに突設されている。
図示例の補強用クリップ50において、前記コネクタ当接突部51は、具体的には、板状本体21の長手方向において両側の傾斜板部21bの中央板部21a側の端部から、その内側面21sの側、すなわち、板状本体21の両面のうち係合爪22が突設されている側(装着面側)に突出するように形成されている。
【0070】
また、この補強用クリップ50は、前記コネクタ当接突部51を含む全体が金属によって一体に形成された1部品になっている。但し、本発明に係る補強用クリップとしては、これに限定されず、複数部材によって構成されたものであっても良い。
【0071】
図13に示すように、この補強用クリップ50のコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対する装着は、既述の補強用クリップ20と同様にして、補強用クリップ50の板状本体21の長手方向中央部(具体的には中央板部21a)に押圧力P31を作用させて、補強用クリップ50をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2にMTクリップ3の主板部31とは反対の側から押し付ければ良い。
【0072】
このとき、補強用クリップ50は、治具両端の係合爪22がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端のフランジ部2cの後端面2b外周のエッジ部付近に当接した状態で、前記押圧力P31によって補強用クリップ50の板状本体21が概略アーチ形から弾性変形され平板状に近付く結果、板状本体21の長手方向両端間の距離の増大により、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2bにそれぞれ係合する位置に配置される。
【0073】
補強用クリップ50は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対する押し付けにより、図14(a)に示すように板状本体21の両端の係合爪22の間にコネクタ結合体4の互いに突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2を一括保持して前記一対のMTコネクタ2に装着される。補強用クリップ50を、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着することで補強用クリップ付きコネクタ結合体4Cを組み立てることができる。
【0074】
補強用クリップ50は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対する押し付けにより板状本体21の両端の係合爪22をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端面2bにそれぞれ係合する位置に配置した後、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対する押し付けを完了することで、板状本体21が該板状本体21自体の弾性復元力によりアーチ形に戻る。これにより、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に補強用クリップ50を装着して組み立てた補強用クリップ付きコネクタ結合体4Cにおいて、前記コネクタ当接突部51がMTコネクタ2から離隔した位置に配置されることとなる。
【0075】
また、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着した前記補強用クリップ50は、係合爪22の板状本体21からの突出寸法の設定により、前記板状本体21から突出する係合爪22の突端がMTクリップ3の第2湾曲部32bに当接したときに、板状本体21の長手方向両端部がMTコネクタ2のフランジ部2cから離隔した位置に配置されるようになっている。このため、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に補強用クリップ50を装着したとき、板状本体21はその全長にわたってMTコネクタ2に接触しない位置に配置される。
【0076】
補強用クリップ50の前記コネクタ当接突部51は板状本体21の長手方向の互いに離隔した2箇所に突設されている。図14(a)に示すように、この補強用クリップ50をコネクタ結合体4に装着したときには、板状本体21の長手方向中央部がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の接合端面2a同士を突き合わせ接合した接合部に対応する位置に配置され、板状本体21の長手方向中央を介して両側の前記コネクタ当接突部51が、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対応する位置に配置される。図14(b)に示すように前記押圧力P32によって板状本体21を弾性変形させたときには、一対のMTコネクタ2の個々に、それぞれ対応する位置のコネクタ当接突部51が当接される。
但し、補強用クリップ50における前記コネクタ当接突部51の突設位置は、図13、図14(b)に示すように板状本体21をその長手方向中央部に与えた押圧力P31、P32によって弾性変形させたときに、MTコネクタ2におけるその後端のフランジ部2cから接合端面2a側の部分に当接するように設定される。
【0077】
図14(b)に示すように、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2に装着されている補強用クリップ50をコネクタ結合体4から取り外すには、板状本体21の長手方向中央部(具体的には中央板部21a)に一対のMTコネクタ2に向かって押圧する押圧力P32を与え(コネクタ結合体4はMTクリップ3の主板部31に押圧力P32とは反対向きに作用する力(反力)を以て支持する)て板状本体21を弾性変形させれば良い。
【0078】
補強用クリップ付きコネクタ結合体4Cの一対のMTコネクタ2に装着状態の補強用クリップ50を前記一対のMTコネクタ2から取り外すべく、板状本体21の長手方向中央部(具体的には中央板部21a)に前記押圧力P32を与えたとき、補強用クリップ50は、その両端の係合爪22がMTクリップ3の第2湾曲部32bに当接する位置からMTコネクタ2の厚さ方向においてMTクリップ3の主板部31が配置されている側(図14(a)において下側)へは移動しないことで、板状本体21が弾性変形してアーチ形から平板状に近付くことになる。補強用クリップ50は、板状本体21が平板状になると、板状本体21両端の係合爪22間の距離が、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離Lと同等あるいは前記距離Lよりも若干大きくなるため、前記押圧力32によって板状本体21を略平板状に弾性変形させることで、前記一対のMTコネクタ2からの取り外しを楽に行える。
【0079】
ところで、図11(a)に示すように、コネクタ当接突部51を具備していない既述の補強用クリップ20の場合、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着された状態にて板状本体21の長手方向中央部を押圧して取り外し作業を行うとき、板状本体21の長手方向中央部を押圧する押圧力によって、板状本体21がその長手方向両端から中央部側に行くにしたがってコネクタ結合体4のMTクリップ3の主板部31に接近する凹形に弾性変形されることで、板状本体21の長手方向中央部が、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の接合端面2a同士を突き合わせ接合した接合部付近に当接し得る。このため、例えば、コネクタ結合体4のMTクリップ3の主板部31の長手方向両端に板状本体21の長手方向中央部をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に向かって押圧する押圧力に対する反力が与えられるようにして、板状本体21の中央板部21aの中央部を手指で押圧する場合、仮に、板状本体21の長手方向中央部に必要以上に過大な押圧力を与えてしまい、凹形に弾性変形された板状本体21の長手方向中央部が前記一対のMTコネクタ2の接合部付近を強く押圧するようになると、コネクタ結合体4に曲げ力(撓み力)を与える可能性がある。
【0080】
作業者が片手の手指でコネクタ結合体4を把持しようとする場合、MTクリップ3の主板部31に当てた人差し指及び中指とMTコネクタ2に当てた親指との間でコネクタ結合体4を挟み込むことが考えられるが、MTクリップ3の主板部31の長さは20mm程度であるため、人差し指と中指とが前記主板部31の長手方向両端に配置される傾向がある。
作業者が片手の手指でコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着状態の補強用クリップ20の取り外し作業を行う場合、コネクタ結合体4のMTクリップ3の主板部31に人差し指と中指とを当て、親指で補強用クリップ20の板状本体21の中央板部21aを押圧することが考えられるが、この場合、人差し指と中指とが前記主板部31の長手方向両端に配置されると、上述のように、コネクタ結合体4のMTクリップ3の主板部31の長手方向両端に板状本体21の長手方向中央部を押圧する押圧力に対する反力が与えられるようにして板状本体21の中央板部21aを押圧する状況が発生することが想定される。
【0081】
ここで説明する実施形態の補強用クリップ50のコネクタ結合体4からの取り外しの場合は、図14(b)に示すように、前記押圧力P32を板状本体21の長手方向中央部(具体的には中央板部21a)に作用させたとき、板状本体21の弾性変形によって板状本体21の長手方向2箇所の前記コネクタ当接突部51がMTコネクタ2に当接する。このため、上述のようにコネクタ結合体4のMTクリップ3の主板部31の長手方向両端に板状本体21の長手方向中央部を押圧する押圧力に対する反力が与えられるようにして板状本体21の中央板部21aに押圧力P32を与えて取り外し作業を行う場合、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接した前記コネクタ当接突部51によって、前記押圧力P32に対してコネクタ結合体4が負担する応力を分散できる。これにより、前記押圧力P32の付与に起因してコネクタ結合体4に与えられる曲げ力(撓み力)を緩和することができる。
【0082】
この補強用クリップ50は、前記板状本体21の長手方向2箇所のコネクタ当接突部51がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接した後は、板状本体21の押圧の継続により板状本体21の長手方向2箇所のコネクタ当接突部51間に位置する部分(突部間延在部。図示例では中央板部21aと一致)の弾性変形が進行したとしても、コネクタ当接突部51によって板状本体21とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間が離隔した状態が保たれるように構成されており、板状本体21の長手方向中央部がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の接合部に当接して押圧力を与えることを防ぐことができる。これにより、板状本体21の長手方向2箇所のコネクタ当接突部51により、前記押圧力P32に対してコネクタ結合体4が負担する応力を確実に分散できる。
【0083】
このように、補強用クリップ50をコネクタ結合体4から取り外す作業においては、極めて簡単な構成(コネクタ当接突部51を設ける)により、コネクタ結合体4に作用する曲げ力(撓み力)を緩和でき、コネクタ結合体4に撓み変形が与えられることを防ぐことができる。
コネクタ結合体4の撓み変形の防止は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の結合状態に影響を与えることを防ぐことができ、一対のMTコネクタ2の相互の位置決め精度の安定維持に有効に寄与する。
【0084】
なお、この補強用クリップ50は、前記板状本体21の長手方向2箇所のコネクタ当接突部51がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接した後、板状本体21の押圧の継続により板状本体21の長手方向2箇所のコネクタ当接突部51間に位置する突部間延在部の弾性変形の進行により、前記突部間延在部がその長手方向両端から中央部側に行くにしたがってコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の接合部付近に接近する凹形に弾性変形され、その長手方向中央部が前記一対のMTコネクタ2の接合部付近に当接可能になっている構成も採用可能である。但し、この場合も、板状本体21の長手方向2箇所のコネクタ当接突部51によって、前記押圧力P32に対してコネクタ結合体4が負担する応力を分散できるため、コネクタ結合体4に作用する曲げ力(撓み力)を緩和でき、コネクタ結合体4に撓み変形が与えられることを防ぐことができる。
【0085】
また、上述のように、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着状態の補強用クリップ50に前記押圧力P32を作用させて前記一対のMTコネクタ2から取り外す作業において、補強用クリップ50の弾性変形の進行により前記コネクタ当接突部51がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接することで、コネクタ結合体4に作用する応力を分散できる構成であれば、補強用クリップ50の両端の係合爪22がMTクリップ3の第2湾曲部32bを押圧する押圧力が過大になって、係合爪22がMTコネクタ2の後端面2bとMTクリップ3の第2湾曲部32bとの間に割り込み、ブーツ8及びその内側に内挿されている光ファイバ1を押圧して前記光ファイバ1に曲げを与えるといった不都合を防止できるといった利点もある。
【0086】
MTクリップ3は、その両端の挟持用弾性片32の間に一対のMTコネクタ2を挟み込むようにしてしっかりと保持する。このため、仮に前記補強用クリップ50からコネクタ当接突部51を省略した構成の補強用クリップをコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着した場合であっても、補強用クリップを一対のMTコネクタ2から取り外すために板状本体21の長手方向中央部に与えた押圧力によって板状本体21端部の係合爪22がMTコネクタ2の後端面2bとMTクリップ3の第2湾曲部32bとの間に割り込むことは容易ではない。
これに対して、コネクタ当接突部51を具備する前記補強用クリップ50の場合は、一対のMTコネクタ2からの取り外し作業時に、前記コネクタ当接突部51がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接することで、板状本体21端部の係合爪22にMTコネクタ2の後端面2bとMTクリップ3の第2湾曲部32bとの間への割り込みを生じさせるような過大な力(第2湾曲部32bへの押圧力)が作用することを防ぐことができる。
【0087】
また、上述の補強用クリップ50であれば、図13に示すように、該補強用クリップ50をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着する際にも、補強用クリップ50のコネクタ当接突部51がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接することで、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の撓み防止、板状本体21端部の係合爪22がコネクタ結合体4のMTコネクタ2の後端面2bとMTクリップ3の第2湾曲部32bとの間に割り込むことの防止に有効に寄与することは言うまでも無い。
【0088】
図示例の補強用クリップ50は、板状本体21が該板状本体21の長手方向中央部をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に向かって押圧する押圧力によって弾性変形されてアーチ形から略平板状になったときに、前記コネクタ当接突部51がMTコネクタ2に当接するように構成されている。図14(b)に示すように、図示例の補強用クリップ50は、より詳細には、板状本体21が前記押圧力によって弾性変形されてアーチ形から平板状になった後、さらに板状本体21の弾性変形が若干進行し、板状本体21の長手方向中央部が板状本体21の他の部分に比べて僅かにコネクタ結合体4のMTクリップ3の主板部31寄りに位置する凹形になったところで前記コネクタ当接突部51がMTコネクタ2に当接するように構成されている。
【0089】
なお、補強用クリップ50の板状本体21長手方向におけるコネクタ当接突部51の突設位置としては、前記板状本体21の長手方向においてその両端の係合爪22の間にて該板状本体21の長手方向中央を介して両側に離隔した2箇所であればよく、図示例のように板状本体21の長手方向において両側の傾斜板部21bの中央板部21a側の端部に限定されるものではない。例えば中央板部21aの両端に突設した構成、中央板部21aの両側の傾斜板部21bの中央部にそれぞれ突設した構成等も採用可能である。
但し、前記コネクタ当接突部51は、板状本体21の長手方向中央部をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に向かって押圧する押圧力によって板状本体21を弾性変形させることで、コネクタ結合体の一対のMTコネクタ2に対してコネクタ当接突部51がひとつずつ、同時に当接されるように設ける。
【0090】
また、補強用クリップ50としては、板状本体21が平板状になると同時に、前記コネクタ当接突部51がMTコネクタ2に当接する構成も採用可能である。
【0091】
(第3実施形態)
図15(a)〜(c)、図16、図17(a)、(b)に示すように、補強用クリップとしては、細長板状の板状本体61(弾性板部)の長手方向両端に、該板状本体61の長手方向両端から延出する部分をそれぞれU字状に曲げ成形して該板状本体61の片面側に突出させた挟持用曲げ片部62(当接片部)を有し、前記板状本体61はその長手方向中央部が、該板状本体61の両面のうち前記挟持用曲げ片部62が突設されている装着面61a側とは反対の背面61b側に張り出す概略アーチ形に形成されたアーチ形張出部63とされ、さらに、前記板状本体61から延出され該板状本体61の前記装着面61aに沿って設けられた板ばね状の弾性片からなるコネクタ当接突部64(以下、コネクタ当接用弾性片とも言う)と、前記アーチ形張出部63に突設されコネクタ結合体4のMTコネクタ2の幅方向の端部に当接することで前記板状本体61を前記MTコネクタ2の幅方向に位置決めするための位置決め用当接片65とを有する構成となっている補強用クリップ60を使用することも可能である。
【0092】
この補強用クリップ60は、その全体が金属によって一体に形成された1部品になっている。図示例の補強用クリップ60は具体的には、1枚の金属板に切断、折り曲げ成形等の加工を行って形成したものである。但し、本発明に係る補強用クリップとしては、これに限定されず、複数部材によって構成されたものであっても良い。
また、前記板状本体61は作業者が手指で弾性変形させることが可能になっている。
【0093】
図15(a)、図17(a)、(b)に示すように、前記アーチ形張出部63は、具体的には、板状本体61の長手方向中央部の頂板部63aと、この頂板部63aの両側に該頂板部63aに対して傾斜して設けられた一対の傾斜板部63bとを具備する構成となっている。
但し、本発明に係る補強用クリップとしては、例えば、円弧状に湾曲するアーチ形に形成された細長板状の板状本体(弾性板部)を採用した構成としても良い。
【0094】
図15(a)〜(c)、図16に示すように、前記コネクタ当接用弾性片64は、前記板状本体61の幅方向の端部から前記装着面61aの幅方向中央部に向かって延出する細長片である。このコネクタ当接用弾性片64は、前記板状本体61側の基端部から先端部側に行くにしたがって前記装着面61aから離隔するように前記装着面61aに対して傾斜して設けられている。
この補強用クリップ60において前記コネクタ当接用弾性片64は、板状本体61の長手方向において前記アーチ形張出部63、すなわち両端の挟持用曲げ片部62と前記アーチ形張出部63との間の2箇所にて、それぞれ板状本体61の幅方向両側の端部に突設されており、計4本が設けられている。
【0095】
図15(a)〜(c)、図16に示すように、位置決め用当接片65は、前記アーチ形張出部63の頂板部63aにおける板状本体61の幅方向の片端から装着面61a側に前記頂板部63aに垂直に突出するように形成されている。したがって、この補強用クリップ60は、例えば前記位置決め用当接片65をコネクタ結合体4のMTコネクタ2の幅方向の端部に当接するだけで前記MTコネクタ2の幅方向における位置決めを極めて簡単に行うことができる。
【0096】
図15(a)等に示すように、この補強用クリップ60の板状本体61の長手方向両端の挟持用曲げ片部62の先端部62aは、コネクタ結合体4の互いに突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2に対して押圧により係合容易にするために、板状本体61の長手方向において互いに離隔する方向に反り返るように湾曲成形されている。
【0097】
補強用クリップ60の板状本体61の長手方向両端の挟持用曲げ片部62の先端部62a間の離隔距離(湾曲成形されている先端部62a間の最狭部の離隔距離)は、コネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離L(図9参照)よりも若干短く設定されている。この補強用クリップ60は板状本体61両端の挟持用曲げ片部62、アーチ形張出部63等の弾性変形により、挟持用曲げ片部62の先端部62a間の離隔距離を一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離Lと同等あるいは前記距離Lよりも大きくすることが可能であり、これにより、図17(a)に示すように板状本体61の弾性によって両端の挟持用曲げ片部62間にコネクタ結合体4の突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2を挟み込むようにして保持することができる。
【0098】
図17(a)に示すように、この補強用クリップ60をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着するには、コネクタ結合体4の互いに突き合わせ状態の一対のMTコネクタ2を介してMTクリップ3の主板部31とは反対の側から、板状本体61の長手方向中央部(具体的にはアーチ形張出部63の頂板部63a)に押圧力を作用させて該補強用クリップ60を前記一対のMTコネクタ2に向かって押圧すれば良い。
【0099】
この補強用クリップ60は、治具両端の挟持用曲げ片部62の先端部62aをコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端のフランジ部2cの後端面2b外周のエッジ部付近にそれぞれ当接させた状態にて、補強用クリップ60の板状本体61の長手方向中央部(具体的にはアーチ形張出部63の頂板部63a)を前記一対のMTコネクタ2に向かって押圧すると、板状本体61及び該板状本体61両端の挟持用曲げ片部62の弾性変形により、治具両端の挟持用曲げ片部62の先端部62aをコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端面2bにそれぞれ係合する位置に配置できる。
【0100】
そして、治具両端の挟持用曲げ片部62の先端部62aがコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の後端面2bにそれぞれ係合する位置に配置されたら、板状本体61の長手方向中央部の押圧を完了する。これにより、板状本体61及び該板状本体61両端の挟持用曲げ片部62の弾性復元力によって、両端の挟持用曲げ片部62の先端部62a間にコネクタ結合体4の前記一対のMTコネクタ2が一括保持され、補強用クリップ60が前記一対のMTコネクタ2に対して装着状態となり、補強用クリップ付きコネクタ結合体4Dが組み立てられる。
【0101】
図17(a)に示すように、前記補強用クリップ60は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着したとき、板状本体61の長手方向の2箇所のコネクタ当接用弾性片64がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接することで、板状本体61がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2から離隔した位置に配置される。
補強用クリップ60をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着するとき、前記コネクタ当接用弾性片64は、補強用クリップ60の板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間に挟み込まれることで、板状本体61の装着面61aに当接する位置まで弾性変形可能である。
【0102】
図15(c)に示すように、前記コネクタ当接用弾性片64は、具体的には、板状本体61から延出する細長板ばね状の弾性片本体64aの先端に、該コネクタ当接用弾性片64の先端部を前記弾性片本体64aに対して板状本体61の装着面61a側に曲げた箇所である屈曲部64bを有する構成であり、補強用クリップ60の板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間に挟み込まれたとき、前記屈曲部64bから先端側の先端片部64cの先端が板状本体61の装着面61aに当接する位置まで弾性変形可能である。
このコネクタ当接用弾性片64は、前記先端片部64cの先端が板状本体61の装着面61aに当接することで、板状本体61の装着面61a側に前記屈曲部64bを頂部とする山形の突部(以下、山形突部とも言う)を形成する。
【0103】
補強用クリップ60は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着したとき、板状本体61の弾性復元力によりアーチ形張出部63がアーチ形となれば、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接したコネクタ当接用弾性片64によって、板状本体61がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2から離隔した位置に配置されるようになっている。
【0104】
補強用クリップ60のコネクタ当接用弾性片64は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に対する補強用クリップ60の装着作業において、板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間に挟み込まれて先端片部64c先端が板状本体61の装着面61aに当接して山形突部を形成したとき、山形突部の板状本体61からの突出寸法、すなわち板状本体61の装着面61aから屈曲部64b(山形突部)の頂部までの距離によって、板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間に板状本体61をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に接触させない大きさの離隔距離を確保でき、板状本体61をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2から離隔した位置に配置できるように構成されている。なお、このとき、コネクタ当接用弾性片64の屈曲部64b(山形突部)の頂部にコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2が当接した状態となる。
【0105】
図17(a)に示すように、補強用クリップ60は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着するとき、コネクタ当接用弾性片64をその先端片部64c先端が板状本体61の装着面61aに当接して山形突部を形成する所まで板状本体61を一対のMTコネクタ2に押圧して接近させた後、板状本体61の長手方向中央部を一対のMTコネクタ2の接合部に向けて押圧する押圧力を解除することで、コネクタ当接用弾性片64が山形突部を形成するか、あるいは該コネクタ当接用弾性片64自体の弾性によって先端片部64c先端が板状本体61の装着面61aから離隔した状態となる。後者の場合は、板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間の離隔距離が、前記コネクタ当接用弾性片64が山形突部を形成するときに比べて大きくなる。
【0106】
補強用クリップ付きコネクタ結合体4D(図17(a)参照)のコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着状態の補強用クリップ60を前記一対のMTコネクタ2から取り外すには、図17(b)に示すように、補強用クリップ60の板状本体61の長手方向中央部(具体的にはアーチ形張出部63の頂板部63a)をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に向けて押圧して前記アーチ形張出部63を弾性変形することで該アーチ形張出部63をアーチ形から平板状に近付け、コネクタ結合体4から撤去すれば良い。
【0107】
この補強用クリップ60は、板状本体61の長手方向中央部にコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に向かって押圧する押圧力P4を作用させて板状本体61を弾性変形させ、前記アーチ形張出部63を平板状にすることで、挟持用曲げ片部62の先端部62a間の離隔距離を一対のMTコネクタ2の後端面2b間の距離Lと同等あるいは前記距離Lよりも大きくすることが可能であるため、前記押圧力P4によって板状本体61を弾性変形させ略平板状にすることで、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2からの取り外しを楽に行うことができる。
【0108】
ここで説明する実施形態の補強用クリップ付きコネクタ結合体4D(図17(a)参照)の補強用クリップ60のコネクタ結合体4からの取り外しの場合、図17(b)に示すように、前記押圧力P4を板状本体61の長手方向中央部(具体的にはアーチ形張出部63の頂板部63a)に作用させたとき、板状本体61の弾性変形の進行によって板状本体61の長手方向2箇所の前記コネクタ当接用弾性片64を弾性変形させ、各コネクタ当接用弾性片64がその先端片部64c先端が板状本体61の装着面61aに当接して山形突部を形成する所まで板状本体61を一対のMTコネクタ2に押圧して接近させ、この山形突部の頂部(屈曲部64bの頂部)がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接した状態とする。
【0109】
前記補強用クリップ60のコネクタ当接用弾性片64は、板状本体61のアーチ形張出部63に比べて小さい力で弾性変形可能に形成されている。このため、前記補強用クリップ60は前記押圧力P4によって板状本体61を弾性変形させることで、板状本体61のアーチ形張出部63以外の部分の弾性変形によって板状本体61の長手方向2箇所の前記コネクタ当接用弾性片64が弾性変形されて前記山形突部を形成した後に、アーチ形張出部63がアーチ形から平板状に近付くように弾性変形を開始する。
【0110】
前記補強用クリップ60は、例えばコネクタ結合体4のMTクリップ3の主板部31の長手方向両端に板状本体61の長手方向中央部を押圧する押圧力に対する反力が与えられるようにして板状本体61の中央板部に押圧力P4を与えて取り外し作業を行う場合に、板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間に前記山形突部を形成したコネクタ当接用弾性片64が挟み込まれることで、板状本体61の長手方向2箇所の山形突部によって前記押圧力P4に対してコネクタ結合体4が負担する応力を分散できる。これにより、前記押圧力P4の付与に起因してコネクタ結合体4に与えられる曲げ力(撓み力)を緩和できる。
【0111】
また、この補強用クリップ60は、前記板状本体61の長手方向2箇所の山形突部がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接した後は、板状本体61の押圧の継続により板状本体61の長手方向2箇所の山形突部間に位置する部分(突部間延在部。図示例ではアーチ形張出部63と一致)の弾性変形が進行したとしても、山形突部によって板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間が離隔した状態が保たれるように構成されており、板状本体61の長手方向中央部がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の接合部に当接して押圧力を与えることを防ぐことができる。これにより、板状本体61の長手方向2箇所の山形突部によって前記押圧力P4に対してコネクタ結合体4が負担する応力を確実に分散できる。
【0112】
このように、補強用クリップ60をコネクタ結合体4から取り外す作業においては、極めて簡単な構成(コネクタ当接用弾性片64を設ける)により、コネクタ結合体4に作用する曲げ力(撓み力)を緩和でき、コネクタ結合体4に撓み変形が与えられることを防ぐことができる。
コネクタ結合体4の撓み変形の防止は、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の結合状態に影響を与えることを防ぐことができ、一対のMTコネクタ2の相互の位置決め精度の安定維持に有効に寄与する。
【0113】
さらに、前記山形突部は若干の弾性変形が可能であり、補強用クリップ60は、板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間に挟み込まれた山形突部の弾性変形によって、板状本体61の長手方向中央部をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に向かって押圧する押圧力P4を吸収でき、これによっても前記押圧力P4に対してコネクタ結合体4が負担する応力を軽減できるといった利点がある。
【0114】
なお、この補強用クリップ60は、前記板状本体61の長手方向2箇所の山形突部がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接した後、板状本体61の押圧の継続により板状本体61の長手方向2箇所の山形突部間に位置する部分(突部間延在部。図示例ではアーチ形張出部63と一致)の弾性変形の進行により、前記突部間延在部がその長手方向両端から中央部側に行くにしたがってコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の接合部付近に接近する凹形に弾性変形され、その長手方向中央部が前記一対のMTコネクタ2の接合部付近に当接可能になっている構成も採用可能である。但し、この場合も、板状本体61の長手方向2箇所の山形突部によって、前記押圧力P4に対してコネクタ結合体4が負担する応力を分散できるため、コネクタ結合体4に作用する曲げ力(撓み力)を緩和でき、コネクタ結合体4に撓み変形が与えられることを防ぐことができる。
【0115】
また、上述のように、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着状態の補強用クリップ60に前記押圧力P4を作用させて前記一対のMTコネクタ2から取り外す作業において、補強用クリップ60の弾性変形の進行により前記コネクタ当接用弾性片64が形成した山形突部がコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接することで、コネクタ結合体4に作用する応力を分散できる構成であれば、補強用クリップ60の両端の挟持用曲げ片部62の先端部62aがMTクリップ3の第2湾曲部32bを押圧する押圧力が過大になって、挟持用曲げ片部先端部62aがMTコネクタ2の後端面2bとMTクリップ3の第2湾曲部32bとの間に割り込み、ブーツ8及びその内側に内挿されている光ファイバ1を押圧して前記光ファイバ1に曲げを与えるといった不都合を防止できるといった利点もある。
【0116】
また、上述の補強用クリップ60であれば、図17(a)に示すように、該補強用クリップ60をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に装着する際にも、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に当接したコネクタ当接用弾性片64が山形突部を形成することで、コネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2の撓み防止、板状本体61端部の挟持用曲げ片部先端部62aがコネクタ結合体4のMTコネクタ2の後端面2bとMTクリップ3の第2湾曲部32bとの間に割り込むことの防止に有効に寄与することは言うまでも無い。
【0117】
なお、補強用クリップ60の板状本体61長手方向におけるコネクタ当接用弾性片64の突設位置としては、前記板状本体61の長手方向においてその両端の挟持用曲げ片部62の間にて該板状本体61の長手方向中央を介して両側に離隔した2箇所であればよく、図示例のように板状本体61の長手方向において両側の挟持用曲げ片部62とアーチ形張出部63との間に限定されるものではない。例えばコネクタ当接用弾性片64をアーチ形張出部63の長手方向両端に突設した構成等も採用可能である。
但し、板状本体61の長手方向中央を介して両側の前記コネクタ当接用弾性片64は、板状本体61の長手方向中央部をコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2に向かって押圧する押圧力によって板状本体61を弾性変形させることで、コネクタ結合体の一対のMTコネクタ2に対して、同時に当接されるように設ける。
【0118】
コネクタ当接用弾性片としては、その先端部に屈曲部64bが形成されている構成に限定されず、例えば屈曲部64bが形成されておらず、その全長が真っ直ぐな細長板状になっている構成(全長が弾性片本体である構成)や、アーチ状に湾曲しており、板状本体61とコネクタ結合体4の一対のMTコネクタ2との間に挟み込まれたときにその長手方向中央部を頂部とする山形(弓形)の突部を形成する構成等も採用可能である。
【0119】
本発明に係る光コネクタ用クリップとしては、第1実施形態の弾性板部の中央板部の両側の傾斜板部にコネクタ当接突部を突設した構成や、中央板部の弾性板部長手方向における両端にコネクタ当接突部を突設した構成も採用可能可能である。コネクタ当接突部は弾性板部の内側面11s(装着面)に突設する。また、第1実施形態の光コネクタ用クリップの一対の弾性板部をその長手方向全長が概略アーチ形のものにかえて、長手方向中央部が概略アーチ形に形成された細長板状のものを採用することも可能である。
【0120】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、適宜変更可能であることは言うまでも無い。
本発明に係る光コネクタ用クリップは、MTクリップを使用しないで、単独で、突き合わせ状態の一対のMTコネクタの一括保持、突き合わせ力の付与に使用することも可能である。
【符号の説明】
【0121】
1、1a、1b…光ファイバ、2、2A、2B…MT形光コネクタ、2a…接合端面、2b…後端面、3…クリップ(MTクリップ)、31…主板部、32…挟持用弾性片、32a…第1湾曲部、32b…第2湾曲部、4…コネクタ結合体、4A、4B…補強用クリップ付きコネクタ結合体、5…フェルール、6…ガイドピン、7…ガイドピン穴、8…ブーツ、9…クロージャ、91…コネクタ収納ケース、
10…光コネクタ用クリップ(補強用クリップ)、10S…内側空間、11…弾性板部、11a…中央板部、11b…傾斜板部、11s…内側面、装着面、12…当接片部(連結板部)、13…ファイバ挿通用開口部、
20…光コネクタ用クリップ(補強用クリップ)、21…弾性板部(板状本体)、21a…中央板部、21b…傾斜板部、21s…内側面、装着面、22…当接片部(係合爪)、23…位置決め用当接片、
50…光コネクタ用クリップ(補強用クリップ)、51…コネクタ当接片部、
60…光コネクタ用クリップ(補強用クリップ)、61…弾性板部(板状本体)、61a…装着面、61b…背面、62…当接片部(挟持用曲げ片部)、62a…(当接片部の)先端部、63…アーチ形張出部、64…コネクタ当接突部、弾性片(コネクタ当接用弾性片)、64c…(コネクタ当接突部、弾性片の)先端部、65…位置決め用当接片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ(1、1a、1b)の先端に設けられたMT形光コネクタ(2、2A、2B)同士を突き合わせ状態で一括保持して一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与するための光コネクタ用クリップであって、
概略アーチ形に形成された細長板状の一対の弾性板部(11)と、突き合わせ状態の前記一対のMT形光コネクタの先端側の接合端面(2a)とは反対側の後端面(2b)に当接される板状あるいは棒状に形成され、互いに離隔させて配置された前記一対の弾性板部を連結する一対の当接片部(12)とを有し、前記一対の弾性板部の長手方向両端が互いに平行に設けられた前記一対の当接片部を介してそれぞれ連結されてなる枠状に構成され、
前記一対の弾性板部はその内側面(11s)が互いに対面する向きで設けられ、前記弾性板部の長手方向中央部に作用させた押圧力によって前記弾性板部を前記一対の弾性板部の間の距離が縮小するように弾性変形させることで前記当接片部間が離隔されることを特徴とする光コネクタ用クリップ(10)。
【請求項2】
互いに離隔して設けられた前記一対の当接片部の間隔方向であるクリップ長手方向の両端部が、前記弾性板部の弾性によって前記一対の当接片部の間に挟み込むように保持された突き合わせ状態の一対のMT形光コネクタの後端から延びる光ファイバを通すための切り欠き状のファイバ挿通用開口部(13)が形成された門形となっていることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項3】
前記当接片部には前記一対の弾性板部の間隔方向に前記MT形光コネクタの長方形状の前記後端面の長手方向寸法よりも大きい寸法が確保されており、
前記一対の弾性板部が突き合わせ状態の一対の前記MT形光コネクタの前記後端面の長手方向と一致する方向である幅方向の両側に配置されるようにして、一対の当接片部を突き合わせ状態の一対のMT形光コネクタの後端面にそれぞれ当接させて装着されることを特徴とする請求項1又は2記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項4】
光ファイバ(1、1a、1b)の先端に設けられたMT形光コネクタ(2、2A、2B)同士を突き合わせ状態で一括保持して一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与するための光コネクタ用クリップであって、
弾性変形可能な細長板状に形成されその全長あるいは長手方向中央部が概略アーチ形に形成された弾性板部(21、61)の長手方向両端に、MT形光コネクタの先端側の接合端面(2a)とは反対側の後端面(2b)に当接させて係合される爪状の当接片部(22、62)が、前記弾性板部の内側面(21s)から突出するように形成されていることを特徴とする光コネクタ用クリップ(20、50、60)。
【請求項5】
突き合わせ状態の前記一対のMT形光コネクタに対して、前記弾性板部をその幅方向が外観板状の前記MT形光コネクタの長方形状の接合端面の長手方向と一致する方向である幅方向に揃う向きで、前記一対のMT形光コネクタの片面側に配置する際に、前記一対のMT形光コネクタの一方又は両方の幅方向の端部に当接することで前記弾性板部を前記MT形光コネクタの幅方向に位置決めするための位置決め用当接片(23、65)が前記弾性板部から前記当接片部が突設されている装着面側に突出するように形成されていることを特徴とする請求項4記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項6】
前記一対のMT形光コネクタに装着状態から取り外す作業を、前記板状本体の長手方向中央部を押圧して弾性変形させた状態で、前記一対のMT形光コネクタの長方形状の後端面の長手方向と一致する方向である幅方向に沿ってスライド移動させて前記一対のMT形光コネクタから離脱させることにより行えることを特徴とする請求項4又は5記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項7】
前記弾性板部は、その長手方向中央部の中央板部(11a、21a)と、この中央板部の両側に前記中央板部に対して傾斜して設けられた一対の傾斜板部(11b、21b)とを具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項8】
前記弾性板部は、その長手方向中央部に概略アーチ形に形成されたアーチ形張出部(63)を有し、
前記アーチ形張出部は、前記弾性板部の両面のうち、該弾性板部(61)の長手方向両端の前記当接片部が突設されている装着面側とは反対の背面側に張り出すように形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項9】
前記弾性板部の両面のうち前記当接片部が突設されている側の面である装着面(11s、21s、61a)に、前記弾性板部の両端の当接片部の間に互いに突き合わせ状態で一括保持された一対のMT形光コネクタに当接可能なコネクタ当接突部(51、64)が、前記弾性板部の両端の当接片部の間にて前記弾性板部の長手方向中央を介して両側の互いに離隔した位置に突設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項10】
前記コネクタ当接突部が、前記弾性板部からその前記装着面側に該装着面に対して傾斜して延出された弾性片によって形成されていることを特徴とする請求項9記載の光コネクタ用クリップ。
【請求項11】
一対のMT形光コネクタ(2、2A、2B)と、この一対のMT形光コネクタを突き合わせ状態で一括保持したクリップ(3)と、請求項1〜10のいずれかに記載の光コネクタ用クリップである補強用クリップ(10、20、50、60)とを具備し、
前記クリップは、細長板状の主板部(31)と該主板部の両端に立設された挟持用弾性片(32)とを具備し、突き合わせ状態の前記一対のMT形光コネクタの後端面にそれぞれ前記挟持用弾性片が当接されるようにして前記挟持用弾性片の間に前記一対のMT形光コネクタを挟み込むようにして一括保持し、
前記補強用クリップは、前記弾性板部の両端に位置する当接片部を前記一対のMT形光コネクタの後端面に当接させ前記弾性板部の弾性によって前記一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与して装着されていることを特徴とする補強用クリップ付きコネクタ結合体(4A、4B、4C、4D)。
【請求項12】
光ファイバ(1、1a、1b)先端に設けられたMT形光コネクタ(2、2A、2B)同士をクリップ(3)を用いて互いに突き合わせた状態で一括保持してなるコネクタ結合体(4)に、請求項1〜10のいずれかに記載の光コネクタ用クリップである補強用クリップ(10、20、50、60)を、その前記弾性板部の両端に位置する当接片部を前記一対のMT形光コネクタの後端面に当接させ前記弾性板部の弾性によって前記一対のMT形光コネクタに突き合わせ力を付与して装着することを特徴とする補強用クリップ付きコネクタ結合体の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−75814(P2011−75814A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226870(P2009−226870)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【Fターム(参考)】