説明

光ディスク、記録装置

【課題】高密度記録の際にPLL引き込み性能を良好に維持できるようにする。
【解決手段】ユーザデータ領域に記録される符号化データの最短波長パターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われる高密度記録を実行する場合に、プリアンブルパターン及びポストアンブルパターンについては、そのすべてが光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンとする。即ちPLL回路に供給される再生信号が良好に得られる範囲で、プリアンブルパターンを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク及び光ディスクに対してデータ記録を行う記録装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2004−95151号公報
【特許文献2】国際公開第2006/97881号パンフレット
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Junichiro TONAMI(外6名),”Advanced Technologies for Read Channel on Blu-ray Disc”, Japanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No. 7B, 2004, pp. 4821-4826
【非特許文献2】Satoru Higashino(外4名), “Hybrid Equalized Partial Response Path-Feedback Maximum Likelihood toward Higher Density Blu-ray Disc”, IEEE Transactions on Consumer Electronics, Vol. 51, No. 1, FEBRUARY 2005
【背景技術】
【0004】
例えばブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標):以下「BD」という)等の光記録媒体が知られている。
BDのような光ディスクにおいては、最小データ記録単位の先頭にランインを、またその最後にランアウトを付した記録フォーマットが採用されている。
このランインまたはランアウトは、アシンメトリなどの記録補正やPLL(Phase Locked Loop)の引き込みに利用するためのある決まったパターンの繰り返しで構成されているプリアンブルまたはポストアンブルが含まれている。
一般にこの繰り返しパターンは、ユーザーデータ領域における最短波長以上のパターンを用いて構成される。例えば、BDシステムではユーザデータの符号化にRLL(1−7)PP変調(RLL;Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))を用いており、最短繰り返し周期は2Tである。従って繰り返しパターンは2T以上のもので構成されている。
【0005】
BDにおいては最小記録単位をRUB(Recoeding Unit Block)という。図8にBDにおけるRUBの構造を示している。
図8(a)のようにRUBは、ランイン(Run-in)、フィジカルクラスタ(Physical Cluster)、ランアウト(Run-out)から構成される。
【0006】
ランインの構造を図8(b)に示す。ランインは、先頭の1100チャネルビットの範囲がガードGD1とされる。ガードGD1にはAPC領域を含む。また1660チャネルビットの範囲がプリアンブルPrAとされる。
プリアンブルPrA内には、ランインの先頭から2640ビット目の位置から30チャネルビットでシンクSY1が配置される。また2710ビット目の位置から30チャネルビットでシンクSY2が配置される。シンクSY1,SY2は、再生時におけるフィジカルクラスタの開始位置の指標となる。
プリアンブルPrA内において、シンクSY1,SY2以外は、上記の繰り返しパターンが配置される。
図において「(3/3/2/2/5/5)」と示しているのは、ピット(マーク)とスペースの繰り返しとしての3T、3T、2T、2T、5T、5Tのパターンを意味する。
プリアンブルPrAの最初の1540チャネルビットの範囲は、(3/3/2/2/5/5)パターンが77回繰り返し記録される。またシンクSY1に続く40チャネルビットの範囲に、(3/3/2/2/5/5)パターンが2回繰り返し記録される。またシンクSY2に続く20チャネルビットの範囲に(3/3/2/2/5/5)パターンが1回記録される。
なお、1100チャネルビットのガードGD1の領域にも、同じく(3/3/2/2/5/5)パターンが55回繰り返し記録される。
【0007】
ランアウトの構造は図8(c)に示される。
ランアウトは前半の564チャネルビットの範囲がポストアンブルPoAとされ、後半の540チャネルビットの範囲がガードGD2とされる。
ポストアンブルPoAの先頭には30チャネルビットでシンクSY3が配置される。
続く54チャネルビットの範囲に9Tのピット(マーク)とスペースのパターンが6回繰り返し記録される。そして続く480チャネルビットの範囲に(3/3/2/2/5/5)パターンが24回繰り返し記録される。
またガードGD2では、(3/3/2/2/5/5)パターンが27回繰り返し記録される。
【0008】
BDでは、このようなRUB構造となるが、ユーザーデータを正しく再生するためには、RUBの先頭のラインインパターン内でPLLを正しく引き込んでおかなければならない。ランインパターンを用いてPLLを引き込む方法が上記特許文献1や非特許文献1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、現行のBDフォーマットにおいて、記録パターンの周期を短くして記録することで、さらなる高密度記録を実現することが検討されている。
例えば現行のBDフォーマットでは、1層において25GBの記録容量とされているが、これを32GB、33GB等に拡大する。
ところが記録パターンの周期を短くして記録すると、再生回折限界以上の周波数の記録パターンを記録してしまうことがある。このような高密度ディスクを再生する際には、ランインパターンの最短周期の再生波形の出力が十分に得ることができずに、PLL引き込み特性を悪化させることになる。
【0010】
光記録再生装置の再生特性はレーザーの波長λ[nm]と光学ピックアップの開口率NA (Numerical Aperture)によって決定される。
この再生特性には回折限界Scが存在し、Sc[1/m]=2×NA/λで決定される空間周波数以上の再生波形を読み出すことができない。ただし、この式における回折限界の単位は空間周波数であるので、実際の光学系が読み出すことができる回折限界周波数fcはディスクの線速度v[m/sec]を掛けてfc=Sc×vで求めることになる。
【0011】
再生周波数をデータ転送ビットレート(fs)で規格化した光学再生特性は図9に示すMTF(Modulation Transfer Function)によって表される。
現在の1層当たり25GB容量のBDフォーマットでは、λ=405nm、NA=0.85、v=4.917 [m/sec]、データ転送ビットレートfs=66[MHz]であるので、データビットレート対回折限界周波数はfc/fs=0.313となる。
【0012】
BDでは最短波長が2TのRLL(1−7)PP符号で変調を行ったデータを記録するために、最短波長(2T)の周波数はチャンネル周波数の0.5/2=0.25のところになる。
図9からわかるように、この場合2T周波数はMTFの回折限界周波数よりも低い周波数であるために、2Tデータを再生することができるシステムであることがわかる。
【0013】
しかしながら、同じデータビットレートでさらなる高密度記録を行うことを考えると、例えば線速度を下げて記録することになる。
このとき破線で示すように、31.25GBで丁度回折限界周波数が2T周波数に達する。すると、32GBや33GBの記録を考えた場合には、2T周波数が回折限界周波数以上となる。例えば一点鎖線で示すように、33GBの場合では、2T周波数未満でカットオフとなり、もはや最短波長(2T)の再生データを得ることができない。
【0014】
このため、図8のようにプリアンブルPrAに(3/3/2/2/5/5)パターンが形成されていると、高密度化記録を行った場合には、特にその2Tパターンの再生信号が良好に得られない。これによってPLL引き込み性能が悪化する。
【0015】
そこで本発明では、高密度記録を行う場合でも、PLL引き込み性能を悪化させないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光ディスクは、プリアンブルパターンを含むランイン領域と、ユーザデータ領域と、ポストアンブルパターンを含むランアウト領域とで最小記録単位が形成されるデータフォーマットでデータが記録され、上記ユーザデータ領域には、符号化データの最短波長パターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われており、上記ランイン領域と上記ランアウト領域では、上記プリアンブルパターンのすべてが上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つパターンにより記録されている。
また上記ポストアンブルパターンのすべても上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つパターンにより記録されている。
また上記ユーザデータ領域には、RLL(1−7)PP符号化データの最短波長である2Tパターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われている。
また上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンは、30ビット周期で形成され、かつNRZ符号電荷蓄積値であるDSV(Digital Sum Value)が0となるパターンとされている。
また上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンは、6T、5T及び4Tの組み合わせによる繰り返しパターンで構成される。
また上記ランイン領域の2640ビット目、及び2710ビット目の位置に30ビットのシンクIDが配置され、また上記ランアウト領域の先頭に30ビットのシンクIDが配置される。
また上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとされる30ビット周期のパターンと同一のパターンが、上記ランイン領域及び上記ランアウト領域におけるガード領域にも記録されている。
【0017】
本発明の記録装置は、プリアンブルパターンを含むランイン領域と、ユーザデータ領域と、ポストアンブルパターンを含むランアウト領域とで最小記録単位が形成されるデータフォーマットが用いられる光ディスクを回転駆動させながら、記録データに基づくレーザ照射を行ってデータ記録を行う記録部と、上記ユーザデータ領域に記録される符号化データの最短波長パターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われるように、上記記録部の動作を制御する制御部と、上記ユーザデータ領域に記録するユーザデータを符号化して符号化データを形成し、また上記ランイン領域及びランアウト領域に記録するデータを発生させて、上記データフォーマットによる記録データを形成して上記記録部に供給するとともに、上記プリアンブルパターンは、そのすべてが上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンとして発生させる記録データ生成部とを備える。
また上記記録データ生成部は、上記ポストアンブルパターンも、そのすべてが上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンとして発生させる。
また上記記録データ生成部は、上記ユーザデータに対し、RLL(1−7)PP符号化を行うとともに、上記制御部は、符号化データの最短波長である2Tパターンの基本調波周波数が、上記光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われるように、上記記録部の動作を制御する。
また上記記録データ生成部は、上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとして、30ビット周期で、かつNRZ符号電荷蓄積値であるDSVが0となるパターンを発生させる。
また上記記録データ生成部は、上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとして、6T、5T及び4Tの組み合わせによる繰り返しパターンを発生させる。
また上記記録データ生成部は、上記ランイン領域及びランアウト領域に記録するデータとして、上記ランイン領域の2640ビット目、及び2710ビット目の位置に30ビットのシンクIDを配置し、また上記ランアウト領域の先頭に30ビットのシンクIDを配置する。
また上記記録データ生成部は、上記ランイン領域及びランアウト領域に記録するデータとして、上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとされる30ビット周期のパターンと同一のパターンが、上記ランイン領域及び上記ランアウト領域におけるガード領域にも配置されるようにする。
【0018】
即ち本発明では、ユーザデータ領域に記録される符号化データの最短波長パターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われる高密度記録を実行する場合に対応する。
この場合に、プリアンブルパターン及びポストアンブルパターンについては、そのすべてが光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンとする。
ユーザデータについては、例えばPRML(Partial Response Maximum Likelihood)復号方式等により、最短波長パターンが光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われても、ユーザデータを復号できる。しかし復号前の再生信号からPLL引き込みを行うためのプリアンブルパターン、ポストアンブルパターンについては最短波長パターンの再生信号が適切に得られないと、PLL引き込み性能が悪化する。そこでプリアンブルパターン、ポストアンブルパターンについては光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンのみで形成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プリアンブルパターン、ポストアンブルパターンのすべてが光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンとしていることで、高密度記録を行っても再生時のPLL引き込み性能を良好に維持できる。
またBDに適用した場合において現行のBDフォーマットとの互換を取ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態のBDのRUB構造の説明図である。
【図2】実施の形態のディスクドライブ装置のブロック図である。
【図3】実施の形態のデータ検出処理部のブロック図である。
【図4】実施の形態のプリアンブルで得られる再生波形の説明図である。
【図5】実施の形態のPLLキャプチャレンジの説明図である。
【図6】実施の形態のPLLキャプチャレンジの説明図である。
【図7】実施の形態のディスクドライブ装置のエンコード処理の説明図である。
【図8】従来のBDのRUB構造の説明図である。
【図9】高密度記録を考慮したMTFの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
[1.実施の形態のRUB構造]
[2.ディスクドライブ装置の構成]
[3.PLL引き込み動作]
[4.記録処理]
【0022】
[1.実施の形態のRUB構造]

本実施の形態の光ディスクをBD(ブルーレイディスク)としての例で説明する。
なおBD規格のディスクとしては、情報がエンボスピット列で記録された再生専用ディスク(BD−ROM)や、相変化記録層や有機色素記録層を用いた記録可能型ディスク(リライタブルディスク(BD−RW)やライトワンスディスク(BD−R))が存在する。本実施の形態は、これらのいずれでも適用できるものである。
【0023】
記録可能型ディスクの場合、波長405nmのレーザ(いわゆる青色レーザ)とNAが0.85の対物レンズの組み合わせという条件下でフェイズチェンジマーク(相変化マーク)や色素変化マークの記録再生を行うものとされる。
再生専用ディスクについては、λ/4程度の深さのエンボスピットにより再生専用のデータが記録される。
これらは、64KB(キロバイト)のデータブロックを1つの記録再生単位(RUB:Recording Unit Block)として記録再生を行う。
【0024】
なお、記録可能型ディスクの場合、ディスク上にはグルーブ(溝)が蛇行(ウォブリング)されて形成され、このウォブリンググルーブが記録再生トラックとされる。そしてグルーブのウォブリングは、いわゆるADIP(Address in Pregroove)データを含むものとされる。つまりグルーブのウォブリング情報を検出することで、ディスク上のアドレスを得ることができるようにされている。
【0025】
記録可能型ディスクの場合、ウォブリンググルーブによって形成されるトラック上にはフェイズチェンジマークや色素変化マークによるレコーディングマークが記録される。フェイズチェンジマークや色素変化マークとしてはRLL(1−7)PP変調されたデータが記録される。チャネルクロック周期を「T」とすると、マーク長は2Tから8Tとなる。
再生専用ディスクの場合、グルーブは形成されないが、同様にRLL(1−7)PP変調方式で変調されたデータがエンボスピット列として記録されているものとなる。
【0026】
特に本実施の形態のBDは、例えば記録再生の線速度を下げることなどにより、記録パターンの周期を短くして記録することで、現行のBDよりも高密度記録を実現するものである。例えば現行のBDフォーマットでは、1層において25GBの記録容量とされているが、これを30GB、33GB等に拡大する。
【0027】
先にも述べたがBDでは、最小データ記録単位としてのRUBとして、先頭にランインを、またその最後にランアウトを付した記録フォーマットが採用されている。
このランインまたはランアウトは、アシンメトリなどの記録補正やPLL(Phase Locked Loop)の引き込みに利用するためのある決まったパターンの繰り返しで構成されているプリアンブルまたはポストアンブルが含まれている。
本実施の形態の光ディスクとしてのBDでは、このRUB構造として、図1に例示する構造を採用する。
【0028】
図1(a)に示すように、RUBはランイン、フィジカルクラスタ、ランアウトから成る。
フィジカルクラスタはユーザデータをいわゆるECCブロック単位で記録する領域である。BDの場合、RLL(1−7)PP符号化データとしてのユーザデータは2T〜8Tのラン長のピット(マーク)とスペースから成る。
なお本例では、上記のように高密度記録のために、記録パターンの周期を短くして記録する。すると、ユーザデータとしては、最短波長である2Tパターンの基本調波周波数が、記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われる場合がある。この場合、例えばPRML復号を行うようにすることでユーザデータを再生できる。
【0029】
このようなユーザデータの記録が行われる高密度記録を考慮して、本例ではランイン、ランアウトが図1(b)(c)のように設定される。
図1(b)に示すように、ランインは、先頭の1110チャネルビットの範囲がガードGD1とされる。ガードGD1にはAPC領域を含む。また1650チャネルビットの範囲がプリアンブルPrAとされる。
プリアンブルPrA内には、ランインの先頭から2640ビット目の位置から30チャネルビットでシンクSY1が配置される。また2710ビット目の位置から30チャネルビットでシンクSY2が配置される。シンクSY1,SY2は、再生時におけるフィジカルクラスタの開始位置の指標となる。
プリアンブルPrA内において、シンクSY1,SY2以外は、30ビット周期の繰り返しパターンが配置される。
図において「(5/5/4/4/6/6)」と示しているのは、ピット(マーク)とスペースの繰り返しとしての5T、5T、4T、4T、6T、6Tによる30ビット周期のパターンを意味する。
プリアンブルPrAの最初の1530チャネルビットの範囲は、(5/5/4/4/6/6)パターンが51回繰り返し記録される。またシンクSY1に続く30チャネルビットの範囲に、(5/5/4/4/6/6)パターンが1回記録される。
その後は、最後の(5/5/4/4/6/6)パターンを、シンクSY2を挟んで(5/5)パターンと(4/4/6/6)パターンに分けている。つまり10チャネルビットで(5/5)パターンを配置してからシンクSY2を配置し、またシンクSY2に続く20チャネルビットの範囲に(4/4/6/6)パターンを配置する。
また、1110チャネルビットのガードGD1の領域には、(5/5/4/4/6/6)パターンが37回繰り返し記録される。
【0030】
ランアウトの構造は図1(c)に示される。
ランアウトは前半の564チャネルビットの範囲がポストアンブルPoAとされ、後半の540チャネルビットの範囲がガードGD2とされる。
ポストアンブルPoAの先頭には30チャネルビットでシンクSY3が配置される。シンクSY3はフィジカルクラスタの終了を示す指標となる。
続く54チャネルビットの範囲に9Tのピット(マーク)とスペースのパターンが6回繰り返し記録される。そして続く480チャネルビットの範囲に30ビット周期の(5/5/4/4/6/6)パターンが16回繰り返し記録される。
またガードGD2では、(5/5/4/4/6/6)パターンが18回繰り返し記録される。
【0031】
本例のBDとしての光ディスクでは、このようなRUB構造となる。
即ち、(5/5/4/4/6/6)パターンとしてのプリアンブルパターンを含むランインと、ユーザデータ領域たるフィジカルクラスタと、(5/5/4/4/6/6)パターンとしてのポストアンブルパターンを含むランアウトとで、最小記録単位となるRUBが形成される。
そしてフィジカルクラスタでは、RLL(1−7)PP符号化データの最短波長パターン(2T)の基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われる。
ランインとランアウトでは、プリアンブルパターン又はポストアンブルパターンのすべてが光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つパターンにより記録されている。つまり(5/5/4/4/6/6)パターンを構成する、4T、5T、6Tはいずれも、回折限界未満の基本調波周波数を持つパターンである。
このような本例の光ディスクに対応する再生装置では、ユーザーデータを正しく再生するために、RUBの先頭のラインインパターン内でPLLを引き込む動作を行うことになる。
【0032】
[2.ディスクドライブ装置の構成]

続いて、本実施の形態の光ディスクに対して記録再生を行う実施の形態のディスクドライブ装置について説明する。
本実施の形態のディスクドライブ装置は、ブルーレイディスク規格としての再生専用ディスクや記録可能型ディスク(ライトワンスディスクやリライタブルディスク)に対応して再生や記録を行うことができるものとする。
【0033】
図2に示す光ディスク90は、上記図1で説明したデータフォーマットのBD方式のディスクである。
光ディスク90は、ディスクドライブ装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモータ2によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。
そして再生時には光ピックアップ(光学ヘッド)1によって光ディスク90上のトラックに記録された情報の読出が行われる。
また光ディスク90に対してのデータ記録時には、光ピックアップ1によって光ディスク90上のトラックに、ユーザーデータがフェイズチェンジマークもしくは色素変化マークとして記録される。
【0034】
なお、光ディスク90の内周エリア91等には、再生専用の管理情報として例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出もピックアップ1により行われる。
さらに光ディスク90に対しては、光ピックアップ1によってディスク90上のグルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報の読み出しもおこなわれる。
【0035】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオード、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズが設けられる。また対物レンズを介してディスク記録面にレーザ光を照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される。レーザダイオードは、例えば波長405nmのいわゆる青色レーザを出力する。また光学系によるNAは0.85である。
光ピックアップ1内において対物レンズは二軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光ピックアップ1におけるレーザダイオードはレーザドライバ13からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
【0036】
光ディスク90からの反射光情報はフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当する再生情報信号(RF信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。
さらに、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号を生成する。
マトリクス回路4から出力される再生情報信号はデータ検出処理部5へ、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号は光学ブロックサーボ回路11へ、プッシュプル信号はウォブル信号処理回路15へ、それぞれ供給される。
【0037】
データ検出処理部5は、再生情報信号の2値化処理を行う。
このデータ検出処理部5は、RF信号のA/D変換処理、PLLによる再生クロック生成処理、PR(Partial Response)等化処理、ビタビ復号(最尤復号)等を行い、パーシャルレスポンス最尤復号処理(PRML検出方式:Partial Response Maximum Likelihood検出方式)により、2値データ列を得る。
【0038】
例えばデータ検出処理部5は図3のように構成される。
マトリクス回路4からの再生情報信号は、AGC(Automatic Gain Control)回路でゲイン調整され、PLL回路52に供給される。
PLL回路52は、A/D変換器53、位相誤差検出器54、ループフィルタ55、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)で構成される。
AGC回路51からのアナログ信号がA/D変換器53に入力される。A/D変換器はVCO56からのクロック周期でアナログ信号をサンプリングしてデジタルデータに変換する。このサンプリングされたデジタルデータは、PR等化器57でパーシャルレスポンス等化処理され、最尤復号器58でビタビデコードされる。
位相誤差検出器54は、PLL引き込み時は、A/D変換器53によるサンプリングデータから位相誤差を検出し、引き込みが終了した段階でPR等化器57内の等化波形から位相誤差検出を行う。
位相誤差検出結果はループフィルタ55によって帯域制限されてVCO56に入力され、クロック周波数制御が行われる。
【0039】
例えばこの図3のような構成で、データ検出処理部5は、光ディスク90から読み出した情報としての2値データ列(ビタビ復号結果)を、図2に示す後段のエンコード/デコード部7に供給する。
【0040】
図2におけるエンコード/デコード部7は、再生時おける再生データの復調と、記録時における記録データの変調処理を行う。即ち、再生時にはデータ復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等を行い、また記録時にはECCエンコード、インターリーブ、データ変調等を行う。
再生時においては、上記データ検出処理部5で復号された2値データ列がエンコード/デコード部7に供給される。エンコード/デコード部7では上記2値データ列に対する復調処理を行い、光ディスク90からの再生データを得る。即ち、即ちRLL(1−7)PP変調が施されて光ディスク90に記録されたデータに対しての復調処理と、エラー訂正を行うECCデコード処理を行って、光ディスク90からの再生データを得る。
エンコード/デコード部7で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインターフェース8に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器100に転送される。ホスト機器100とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
【0041】
光ディスク90に対する記録/再生時にはADIP情報の処理が行われる。
即ちグルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路4から出力されるプッシュプル信号は、ウォブル信号処理回路6においてデジタル化されたウォブルデータとされる。またPLL処理によりプッシュプル信号に同期したクロックが生成される。
ウォブルデータはADIP復調回路16でMSK復調、STW復調され、ADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ9に供給される。
アドレスデコーダ9は、供給されるデータについてのデコードを行い、アドレス値を得て、システムコントローラ10に供給する。
【0042】
記録時には、ホスト機器100から記録データが転送されてくるが、その記録データはホストインターフェース8を介してエンコード/デコード部7に供給される。
この場合エンコード/デコード部7は、記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加(ECCエンコード)やインターリーブ、サブコードの付加等を行う。またこれらの処理を施したデータに対して、RLL(1−7)PP方式の変調を施す。
【0043】
エンコード/デコード部7で処理された記録データは、ライトストラテジ部14において、記録補償処理される。即ち記録層の特性、レーザ光のスポット形状、記録線速度等に対する最適記録パワーの微調整やレーザドライブパルス波形の調整などが行われた状態のレーザドライブパルスとされ、レーザドライバ13に供給される。
そしてレーザドライバ13は、記録補償処理したレーザドライブパルスを光ピックアップ1内のレーザダイオードに与えてレーザ発光駆動を実行させる。これにより光ディスク90に、記録データに応じたマークが形成されることになる。
なお、レーザドライバ13は、いわゆるAPC回路(Auto Power Control)を備え、光ピックアップ1内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタの出力によりレーザ出力パワーをモニタしながらレーザの出力が温度などによらず一定になるように制御する。
記録時及び再生時のレーザ出力の目標値はシステムコントローラ10から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御する。
【0044】
光学ブロックサーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号から、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
即ちフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じてフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号を生成し、二軸ドライバ18によりピックアップ1内の二軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光ピックアップ1、マトリクス回路4、光学ブロックサーボ回路11、二軸ドライバ18、二軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
また光学ブロックサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
また光学ブロックサーボ回路11は、トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成する。そしてスレッドドライバ19がスレッドドライブ信号に基づいてスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有する。そしてスレッド機構3がスレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0045】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモータ2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、データ信号処理回路5内のPLLによって生成される再生クロックが、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ17によりスピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0046】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインターフェース8を介して与えられるホスト機器100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えばホスト機器100から書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ10は、まず書き込むべきアドレスに光ピックアップ1を移動させる。そしてエンコード/デコード部7により、ホスト機器100から転送されてきたデータ(例えばビデオデータやオーディオデータ等)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そして上記のようにエンコードされたデータに応じてレーザドライバ13がレーザ発光駆動することで記録が実行される。
【0047】
また例えばホスト機器100から、光ディスク90に記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合は、システムコントローラ10はまず指示されたアドレスを目的としてシーク動作制御を行う。即ち光学ブロックサーボ回路11に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光ピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器100に転送するために必要な動作制御を行う。即ちディスク90からのデータ読出を行い、データ検出処理部5、エンコード/デコード部7における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0048】
ここで本例のディスクドライブ装置は、上述したように、BDフォーマットにおいて現行よりも高密度の記録再生を行う。この場合、例えば記録時には線速度を下げることで高密度記録を実行する。或いはチャネルクロックを変えることによって実現しても良い。システムコントローラ10は、そのような高密度記録としての動作を、各部に指示できる。
【0049】
なお、本発明請求項7の記録装置における記録部とは、スピンドルモータ2,光ピックアップ1、スレッド機構3、レーザドライバ13、ライトストラテジ14等の部位に相当する。
また制御部は、システムコントローラ10、光学ブロックサーボ回路11、スピンドルサーボ回路12等の部位に相当する。
また記録データ生成部は、エンコード/デコード部7に相当する。
【0050】
以上の図2の例は、ホスト機器100に接続されるディスクドライブ装置として説明したが、ディスクドライブ装置としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインターフェース部位の構成が、図2とは異なるものとなる。つまり、ユーザーの操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。もちろんディスクドライブ装置の構成例としては他にも多様に考えられる。
【0051】
[3.PLL引き込み動作]

以下、本例の光ディスク90の再生時のPLL引き込み動作について説明する。
ここでまずディスクドライブ装置の再生特性について述べる。
ディスクドライブ装置の再生特性はレーザーの波長λ[nm]と光ピックアップ1の開口率NAによって決定される。
そして上述もしたように、再生特性には回折限界Scが存在し、Sc[1/m]=2×NA/λで決定される空間周波数以上の再生波形を読み出すことができない。ただし、この式における回折限界の単位は空間周波数であるので、実際の光学系が読み出すことができる回折限界周波数fcはディスクの線速度v[m/sec]を掛けてfc=Sc×vで求めることになる。そして、再生周波数をデータ転送ビットレートfsで規格化した光学再生特性は図9のMTFによって表される。
【0052】
現行の1層当たり25GB容量のBDフォーマットでは、λ=405nm、NA=0.85、v=4.917[m/sec]、データ転送ビットレートfs=66[MHz]であるので、データビットレート対回折限界周波数はfc/fs=0.313となる。
ここで、BDフォーマットでの最短波長2Tの周波数はチャンネル周波数の0.5/2=0.25のところになり、この場合MTFの回折限界周波数よりも低い周波数であるために2Tデータを再生することができると先に述べた。
【0053】
しかしながら本例の光ディスク90として、同じデータビットレートでさらなる高密度記録を行うことを考えると、線速度を下げて記録することになる。
すると、例えば32GBや33GBの記録を考えた場合には、31.25GBで2T周波数が丁度回折限界周波数に達するために、最短波長の再生データを得ることができない。
【0054】
例えば31.25GB記録の場合、線速度v=4.917×(25/31.25)=3.9336[m/sec]とすることとなるが、この場合、回折限界周波数fc=16.5[MHz]であり、データビットレート対回折限界周波数(fc/fs)=0.25となる。つまり31.25GB記録の場合、2T周波数がカットオフとなる。
【0055】
そして例えば33GB記録の場合を考えると、線速度v=4.917×(25/33)=3.725[m/sec]にすることとなる。この場合、回折限界周波数fc=15.6[MHz]であり、データビットレート対回折限界周波数(fc/fs)=0.236となる。
即ち33GB記録の場合を図9の一点鎖線で示しているが、2T周波数(0.25)は、回折限界以上となる。この場合、2T信号は再生できないものとなる。
32GB記録の場合は示していないが、同様に2T信号は再生できない。
【0056】
これは、ランインのプリアンブルパターンとして2Tパターンが含まれていると、その2Tパターンに対応した信号が十分に得られないことを意味する。これによってPLL引き込み性能が悪化する。
つまり、PLL引き込みのためのプリアンブルパターンに、基本調波周波数が光学的回折限界以上になるパターンがあると、PLL引き込み性能が悪化する。
【0057】
なお、2Tパターンはフィジカルクラスタにおけるユーザデータには最小ラン長のパターンとして含まれている。
但し高密度記録データを再生する方法としては、PRMLなどの、例えば非特許文献2に示すような信号処理を用いることによって再生することができることが知られている。つまりユーザデータとして基本調波周波数が光学的回折限界以上のパターンが存在しても、本例のディスクドライブ装置のようにPRML復号を行う場合、問題はない。
従って、問題となるのはPLL引き込みに用いるプリアンブルパターンに2T等の短いラン長のパターンが存在する場合となる。
【0058】
本例の光ディスク90は、プリアンブルパターン、ポストアンブルパターンが、上記図1で説明した(5/5/4/4/6/6)パターンのように全て5T、4T、6Tで構成されている。
つまり、ランインとランアウトでは、プリアンブルパターン、ポストアンブルパターンのすべてが光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つパターンとされているものである。これはプリアンブルパターンで2Tパターンを用いないことで、PLL引き込み性能を悪化させないようにするものである。
【0059】
PLL引き込み動作の例を説明する。
一般にPRMLシステムを動作させる場合には、プリアンブルパターン内で位相同期を充分におこなっておく必要がある。
この位相同期のためのPLL引き込みを高速に行うためには、位相誤差検出結果をなるべく早くフィードバックする必要がある。このため、デコード遅延の大きいPRMLの出力ではなく、ゼロクロス検出を用いることが一般的である。
【0060】
本例のディスクドライブ装置では、上述した図3のようにPLL回路52が構成されている。
例えば、BDのシステムで33GBの密度で記録したデータを再生することを考えると、4Tパターンの基本調波周波数はデータビットレートに対する規格化周波数で0.5/4=0.125である。これは図9に示すMTFを見ても充分再生される領域であることがわかる。
【0061】
そこで本例の光ディスク90は図1に示したように、ランインのガードGD1とプリアンブルPrAを(5/5/4/4/6/6)パターンとする。これにより、この部分の最短波長は4Tであって2Tが含まれなくなり、ランイン内のパターンのすべての波形が再生されることになる。
【0062】
ランインのガードGD1やプリアンブルPrAでPLLを収束させることを考えると、シンクSY1までの間で、図4に示すような再生波形の連続が得られる。
例えばあるゼロクロスする2連続データをx0およびx1とすると、次式に示すようにその符号に応じてゼロクロスした時点での位相誤差Peを計算することができる。
if(x0>0,x1<0) Pe=−(x0+x1)
else if(x0<0,x1>0) Pe=(x0+x1)
つまりx0が正、x1が負の値のときは、位相誤差Pe=−(x0+x1)で求められる。またx0が負、x1が正の値のときは、位相誤差Pe=(x0+x1)で求められる。
図3のPLL回路52では、位相誤差検出器54が、このような位相誤差検出を行うことによって、データサンプリング位相を引き込むことができる。
【0063】
本例のプリアンブルパターンにおけるPLLの引き込み特性を述べる。
プリアンブルパターンにおけるPLL引き込みの目的の一つとして、光ディスクの偏芯などによる再生信号周波数とVCOの中心周波数ずれを吸収することがある。
容量33.4GBの密度の再生実験において、再生信号周波数とVCO中心周波数の誤差に対して、PLLの引き込みクロック数を測定した結果を図5に示す。
破線で示す”5/3/2”は、図8の従来のプリアンブルパターンを用いてPLLの引き込みクロック数を測定した結果である。また実線で示す”5/4/6”は図1の本例のプリアンブルパターンを用いてPLLの引き込みクロック数を測定した結果である。
クライテリアを1000クロックとした場合の引き込み可能範囲(以下キャプチャレンジと呼ぶ)は、”5/4/6”の場合が「A」、”5/3/2”の場合が「B」となっている。
これは光ディスクのチルトがない場合(Bottom)の結果であるが、”5/3/2”よりも”5/4/6”のパターンの方がキャプチャレンジが広いことがわかる。
【0064】
また、同様の測定をラジアル方向及びタンジェンシャル方向にディスクが±0.6度チルトした場合のキャプチャレンジの測定結果を図6に示す。キャプチャレンジを縦軸にとり、各チルト状態の場合で、”5/3/2”の場合(斜線)と”5/4/6”の場合(斜線なし)でキャプチャレンジを示している。
図から、各チルト状態において、”5/4/6”のパターンの方がキャプチャレンジが広いことがわかり、特にチルトが大きい場合において”5/4/6”パターンのキャプチャレンジが広くなることが確認できた。
これらの結果から、本例のプリアンブルパターンを用いることによって、光ディスクを高密度記録した場合の再生波形において、PLLの引き込み性能を向上させることができることがわかる。
【0065】
なお、(5/5/4/4/6/6)パターンを用いる場合、次のような利点もある。
まず(5/5/4/4/6/6)パターンのDSVは0であるので、この連続パターンによる再生波形の直流成分は抑制されている。
また30ビット周期の(5/5/4/4/6/6)パターンを図1のように適切に配置することで、現行のプリアンブル、ポストアンブルのデータサイズをそのまま適用したパターン配置が実現しやすい。
【0066】
また、図1(b)のようにプリアンブルPrA内の最初の(5/5/4/4/6/6)パターンは51個連続させた後にシンクSY1を配置していることで、シンクSY1はランインの先頭から2640ビット目の位置となる。またシンクSY1の後は、(5/5/4/4/6/6)パターン1個の後に(5/5)パターン、シンクSY2、(4/4/6/6)パターンとしていることで、シンクSY2はランインの先頭から2710ビット目の位置となる。これは図8と比較して分かるようにシンクSY1,SY2の位置が従来と同様となっており、現行フォーマットの互換に好適となる。
【0067】
また、図1(c)に示したようにポストアンブルPoAとガードGD2は、9Tパターンと(5/5/4/4/6/6)パターンで形成され、最短波長に2Tが含まれなくなる。このためランアウト内のすべての波形が再生されることになり、再生処理上、適切である。
またポストアンブルPoA内のシンクSY3と6連続の9Tの後の(5/5/4/4/6/6)パターンを16回連続させるという配置構成とすることによって、図8のランアウトと同様にシンクSY3を先頭に配置でき、現行との互換の好適である。
【0068】
[4.記録処理]

以上のように本例の光ディスク90では、ランイン、ランアウトにおいて2Tパターンが含まれないデータ構造としている。
光ディスク90が、再生専用ディスクの場合は、図1のRUBフォーマットがエンボスピット列によって形成されることになる。
一方、光ディスク90が記録可能型のディスク(BD−RW、BD−R)である場合は、ディスクドライブ装置が、図1のRUBフォーマットによるデータ列を形成することになる。
【0069】
上記図2のディスクドライブ装置は、本発明の記録装置の実施の形態となるが、その場合、ディスクドライブ装置が図1のRUBフォーマットを形成する記録動作を行う。
このため、エンコード/デコード部7においては、図7に示すような記録データエンコード処理を行うものとする。
【0070】
記録すべきユーザデータに対しては、手順S1としてECCエンコード処理及びインターリーブを行う。そして手順S2としてRLL(1−7)PP変調を施す。
一方、内部メモリテーブルにランイン、ランアウトのパターンを記憶しておき、手順S3として所定タイミングで当該パターンをテーブルから読み出す。即ち図1(b)(c)で説明したパターンである。
手順S4は、RLL(1−7)PP変調されたECCブロック単位のユーザデータと、ランインパターン、ランアウトパターンを所定タイミングで繋いでRUBを構成する。
そしてRUB構造とされた記録データストリームに対し、手順S5でNRZI変換を行う。このように生成した記録データストリームをライトストラテジ部14に供給する。
【0071】
以上のようにエンコード/デコード部7において、図1(b)(c)のランイン、ランアウトのパターンを記憶しておき、それを用いて記録データ生成処理を行う。これにより光ディスク90には、2Tパターンを含まないランイン、ランアウトのフォーマットで記録が行われる。その光ディスク90を再生する際には、上記の通り適切なPLL引き込みを行うことができることになる。
【0072】
以上、実施の形態の光ディスク90及びディスクドライブ装置について説明してきたが、本発明は、その要旨の範囲で各種の変更が可能である。
例えばランイン、ランアウトのパターンは(5/5/4/4/6/6)パターンに限られない。あくまでも、良好な再生波形が得られ、PLL引き込み性能が低下しなければ良いため、実行する記録密度や、ピット(マーク)/スペースのラン長と回折限界周波数の関係からパターン設定されればよい。特にその場合に、DSVの考慮、現行フォーマットとの互換の考慮(シンク位置の考慮)等がなされることが適切である。
【0073】
また、高密度記録に関しては、線速度を低下させて記録するものとしたが、線速度は変えずに記録/転送に用いるチャネルクロック周波数を高周波数化することでもよい。さらに、線速度の低下とチャネルクロックの高周波数化の両方を行っても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 光ピックアップ、5 データ検出処理部、7 エンコード/デコード部、10 システムコントローラ、13 レーザドライバ、52 PLL回路、53 A/D変換器、54 位相誤差検出部、55 ループフィルタ、56 VCO、57 PR等化器、58 最尤復号器、90 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリアンブルパターンを含むランイン領域と、ユーザデータ領域と、ポストアンブルパターンを含むランアウト領域とで最小記録単位が形成されるデータフォーマットでデータが記録され、
上記ユーザデータ領域には、符号化データの最短波長パターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われており、
上記ランイン領域では、上記プリアンブルパターンのすべてが上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つパターンにより記録されている光ディスク。
【請求項2】
上記ランアウト領域では、上記ポストアンブルパターンのすべてが上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つパターンにより記録されている請求項1に記載の光ディスク。
【請求項3】
上記ユーザデータ領域には、RLL(1−7)PP符号化データの最短波長である2Tパターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われている請求項2に記載の光ディスク。
【請求項4】
上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンは、30ビット周期で形成され、かつNRZ符号電荷蓄積値であるDSVが0となるパターンとされている請求項3に記載の光ディスク。
【請求項5】
上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンは、6T、5T及び4Tの組み合わせによる繰り返しパターンで構成される請求項4に記載の光ディスク。
【請求項6】
上記ランイン領域の2640ビット目、及び2710ビット目の位置に30ビットのシンクIDが配置され、また上記ランアウト領域の先頭に30ビットのシンクIDが配置される請求項4に記載の光ディスク。
【請求項7】
上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとされる30ビット周期のパターンと同一のパターンが、上記ランイン領域及び上記ランアウト領域におけるガード領域にも記録されている請求項4に記載の光ディスク。
【請求項8】
プリアンブルパターンを含むランイン領域と、ユーザデータ領域と、ポストアンブルパターンを含むランアウト領域とで最小記録単位が形成されるデータフォーマットが用いられる光ディスクを回転駆動させながら、記録データに基づくレーザ照射を行ってデータ記録を行う記録部と、
上記ユーザデータ領域に記録される符号化データの最短波長パターンの基本調波周波数が、光ディスク記録再生系における光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われるように、上記記録部の動作を制御する制御部と、
上記ユーザデータ領域に記録するユーザデータを符号化して符号化データを形成し、また上記ランイン領域及びランアウト領域に記録するデータを発生させて、上記データフォーマットによる記録データを形成して上記記録部に供給するとともに、上記プリアンブルパターンは、そのすべてが上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンとして発生させる記録データ生成部と、
を備えた記録装置。
【請求項9】
上記記録データ生成部は、上記ポストアンブルパターンは、そのすべてが上記光学的回折限界未満の基本調波周波数を持つことになるパターンとして発生させる請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
上記記録データ生成部は、上記ユーザデータに対し、RLL(1−7)PP符号化を行うとともに、
上記制御部は、符号化データの最短波長である2Tパターンの基本調波周波数が、上記光学的回折限界以上になる状態でデータ記録が行われるように、上記記録部の動作を制御する請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
上記記録データ生成部は、上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとして、30ビット周期で、かつNRZ符号電荷蓄積値であるDSVが0となるパターンを発生させる請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
上記記録データ生成部は、上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとして、6T、5T及び4Tの組み合わせによる繰り返しパターンを発生させる請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
上記記録データ生成部は、上記ランイン領域及びランアウト領域に記録するデータとして、上記ランイン領域の2640ビット目、及び2710ビット目の位置に30ビットのシンクIDを配置し、また上記ランアウト領域の先頭に30ビットのシンクIDを配置する請求項11に記載の記録装置。
【請求項14】
上記記録データ生成部は、上記ランイン領域及びランアウト領域に記録するデータとして、上記プリアンブルパターン及び上記ポストアンブルパターンとされる30ビット周期のパターンと同一のパターンが、上記ランイン領域及び上記ランアウト領域におけるガード領域にも配置されるようにする請求項11に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−192046(P2010−192046A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36319(P2009−36319)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】