説明

光ディスク用紫外線硬化型組成物及び光ディスク

【課題】 硬化時に反りが生じ難く、長時間にわたり荷重が加わった際にも経時でエラーが回復することにより好適に信号再生が可能な光ディスクを提供する。
【解決手段】 3官能以上の多官能の脂肪族ポリオールを使用した多官能ウレタン(メタ)アクリレートを(メタ)アクリレートオリゴマーとして含有する紫外線硬化型組成物により、低弾性かつ低ガラス転移温度の硬化膜を形成でき、荷重が加わった際にも好適にエラーが回復し、更に硬化時の反りが少ない光ディスクを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの光透過層として有用な紫外線硬化型組成物及び少なくとも光反射層と光透過層とが形成され、前記光透過層を通して370nm〜430nmの範囲内に発振波長を有するブルーレーザーにより記録又は再生を行う光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
高密度記録可能な光ディスクとして主流となっているDVD(Digital Versatile Disc)は厚さ0.6mmの2枚の基板を接着剤で貼り合わせた構造を有している。DVDにおいては高密度化を達成するため、CD(Compact Disc)に比べ短波長の650nmのレーザーを用い、光学系も高開口数化している。
【0003】
しかし、HDTV(high definition television)に対応した高画質の映像等を記録または再生する為には更なる高密度化が必要となる。DVDの次世代に位置する更なる高密度記録の方法及びその光ディスクの検討が行われており、DVDよりも更に短波長のブルーレーザー及び高開口数の光学系を用いる新しい光ディスク構造による高密度記録方式が提案されている。
【0004】
この新しい光ディスクはポリカーボネート等のプラスチックで形成される透明又は不透明の基板上に記録層を形成し、次いで記録層上に約100μmの光透過層を積層してなり、該光透過層を通して記録光又は再生光が、あるいはその両方が入射する構造の光ディスクである。この光ディスクの光透過層には、生産性の観点から、紫外線硬化型組成物を使用することがもっぱら研究されている。
【0005】
ブルーレーザーを使用した光ディスクは長期に安定した記録再生特性を保持する必要がある。そのため、光透過層は、長期間の使用においても、その表面の変形や、傷付きにより、記録再生特性に悪影響を与えないことが望まれる。DVD及びCDは、記録光又は再生光が入射する面に、ポリカーボネートが基板材料として使用されているが、上記光ディスクは、紫外線硬化型組成物の硬化膜が、入射面になるため、ポリカーボネートに比較して、長時間にわたり荷重が加わると、変形等により信号再生エラーが増加する問題があった。
【0006】
このようなエラー増加を引き起こす変形が生じ難い光透過層を使用した光ディスクとしては、例えば、光透過層の25℃における動的弾性率が1.5〜3.0GPaである光情報媒体が開示されている(特許文献1参照)。しかし、当該光ディスクは、光透過層の弾性率が高く、光ディスクの製造時に反りが生じやすく、加えて温湿度環境が急激に変化した場合の反り変化が大きいという問題があった。
【0007】
ブルーレーザーにより記録又は再生を行う光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物としては、例えば、脂肪族炭素原子に結合しているイソシアネート基を1分子中に3個以上有する化合物とポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるラジカル硬化性ウレタンアクリレートとラジカル硬化性モノマーとを含有する紫外線硬化型組成物が開示されている(特許文献2参照)。当該紫外線硬化型組成物は、光透過層に用いた場合、耐擦傷性及び光透過性に優れた硬化膜を与えるものであるが、高温高湿環境下に長期間暴露すると、再生信号が劣化する問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−123316号公報
【特許文献2】特開2005−319459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、硬化時に反りが生じ難く、長時間にわたり荷重が加わった際にも経時でエラーが回復することにより好適に信号再生が可能な光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、3官能以上の多官能の脂肪族ポリオールを使用した多官能ウレタン(メタ)アクリレートを(メタ)アクリレートオリゴマーとして含有する紫外線硬化型組成物により、低弾性かつ低ガラス転移温度の硬化膜を形成でき、荷重が加わった際にも好適にエラーが回復し、更に硬化時の反りが少ない光ディスクを実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光ディスクは、反りが生じ難く、長時間にわたり荷重が加わった際に経時でエラーが回復することにより好適に信号再生が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマーを含有し、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、分子内に3個以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオールと、分子内に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートと、分子内にヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとからなる多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有する。また、当該光ディスク紫外線硬化型組成物は、基板上に、少なくとも光反射層と、光透過層とが積層され、前記光透過層側からレーザー光を入射して情報の再生を行う光ディスクの光透過層として使用される。
【0013】
[(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明においては、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、上記の分子内に3個以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオール(a)と、分子内に2個イソシアネート基を有するジイソシアネート(b)と、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)とから得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)を使用する。当該多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)の使用により、湿熱環境変化時に反りの少ない柔軟性を硬化膜に付与できる。また、ウレタン(メタ)アクリレートの有するウレタン結合により、凝集性が向上し、凝集破壊が生じにくくなるため、得られる硬化物は好適な密着性を有する。
【0014】
3個以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオール(a)は、数平均分子量が100〜3000であることが好ましく、100〜2000であることがより好ましい。数平均分子量を当該範囲とすることで、硬化膜に荷重をかけた際のエラーの回復に優位な架橋構造を好適に形成できる。
【0015】
脂肪族ポリオール(a)としては、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリン、及びこれらポリオールのアルキレンオキサイド付加物を好ましく使用できる。当該アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを使用できる。また、これらポリオールのε−カプロラクトン等のラクトン付加物を使用しても良い。
【0016】
これら脂肪族ポリオール(a)の中でも、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、グリセリン、及び、これらのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物が特に好ましい。
【0017】
分子内に2個以上のイソシアネート基を有するジイソシアネート(b)としては、上記脂肪族ポリオール(a)により形成される優位な架橋構造を阻害しないものであれば特に制限されないが、数平均分子量が100〜1000のジイソシアネートであることが好ましく、100〜800であることがより好ましい。このようなジイソシアネート(b)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートなどのポリイソシアネート類が挙げられる。なかでも、分子内に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物が好ましく、特にイソホロンジイソシアネート及びビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンは、色相の悪化が無く、かつ光線透過性も低下することがないため特に好ましい。
【0018】
ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)としては、上記脂肪族ポリオール(a)により形成される優位な架橋構造を阻害しないものであれば特に制限されないが、数平均分子量が100〜1000のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートであることが好ましく、100〜800であることがより好ましい。このようなヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが有る。あるいは2個以上のヒドロキシキル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる化合物でも良く、例えばグリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコール化合物のモノ(メタ)アクリレート体等が挙げられる。なかでも、(U1)成分が低粘度で、硬化物に柔軟性を付与できることからヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびこれらのポリε−カプロラクトン付加物が好ましい。
【0019】
上記化合物から構成される多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)としては、1000〜20000であることが好ましく、1000〜15000であることがより好ましい。これにより、本発明の紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクの耐久性及び耐光性がより優れたものとなる。なお、GPCは東ソー(株)社製 HLC−8020を用い、カラムはGMHxl−GMHxl−G200Hxl−G1000Hxlwを使用するものとし、溶媒はTHFを用い、1.0ml/minの流量でカラム温度が40℃、検出器温度が30℃、分子量は標準ポリスチレン換算で測定を行うものとする。
【0020】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)を使用する場合には、紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の5〜80質量%で使用することが好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)の含有量を当該範囲とすることで硬化膜に適度な柔軟性を付与することが可能となり、特に湿熱環境変化時における反りの少ない硬化膜を実現できる。
【0021】
本発明の紫外線硬化型組成物においては、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)以外のウレタン(メタ)アクリレートや、他のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートを併用してもよい。
【0022】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)以外のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレートなどのポリウレタン(メタ)アクリレート等を例示できる。また、上記脂肪族ポリオール(a)とは異なるポリオールと、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0023】
また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させることで得られたエポキシアクリレートを用いることができる。グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加ジグリシジルエーテル、ビスフェノールFあるいはそのアルキレンオキサイド付加ジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加ジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールFあるいはそのアルキレンオキサイド付加ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができ、これらのエポキシ(メタ)アクリレート等の活性エネルギー線硬化性オリゴマーの1種もしくは2種以上を用いる事が出来る。
【0024】
これら他の(メタ)アクリレートオリゴマーを使用する場合には、(メタ)アクリレートオリゴマーの総量が、紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の20〜80質量%程度で調整することが好ましい。
【0025】
[(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の紫外線硬化型組成物に使用する(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に制限されず、一分子中に一の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー(以下、単官能(メタ)アクリレートと称する)や、一分子中に二個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー(以下、二官能の(メタ)アクリレートと称する。)、更には一分子中に三以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー(以下、多官能の(メタ)アクリレートモノマーと称する。)を使用でき、これらを適宜配合することで、所望の粘度、硬化後の弾性率を有する組成物を得ることができる。
【0026】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、等の脂肪族(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタンアダマンチル(メタ)アクリレート、などを使用できる。
【0027】
なかでも、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートを用いた場合、膜厚変化量が少なく、反り変化量も少なくなるため、好ましい。
【0028】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、脂環式の二官能(メタ)アクリレートとして、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を使用できる。
【0029】
なかでもトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が好ましく、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0030】
また、硬化後の弾性率を高く調整したい場合に、三官能以上の(メタ)アクリレートを使用してもよく、例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、等を使用できる。
【0031】
また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、ビニルエーテルモノマー等の紫外線硬化性化合物も必要に応じて使用できる。
【0032】
本発明においては、(メタ)アクリレートモノマーとして、二官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物全量中の二官能(メタ)アクリレートの含有量は、5〜50質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。
【0033】
本発明における紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物全量中の単官能(メタ)アクリレートの含有量としては、5〜40質量%であることが好ましく、特に10〜35質量%であることが好ましい。また、三官能以上の(メタ)アクリレートの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に20質量%以下であることが好ましい。
【0034】
[開始剤、添加剤]
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物中には、上記(メタ)アクリレートオリゴマーや(メタ)アクリレートモノマー以外に、公知の光重合開始剤、及び熱重合開始剤等を用いる事が出来る。
【0035】
本発明に使用できる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型の光重合開始剤等がある。
【0036】
本発明の紫外線硬化型組成物には、必要に応じて、添加剤として、界面活性剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤を使用することもできる。また、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が使用でき、更に、前記の光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。
【0037】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有する。当該紫外線硬化型組成物により、低弾性かつ低ガラス転移温度の硬化膜を形成でき、荷重が加わった際にも好適にエラーが回復し、更に硬化時の反りが少ない光ディスクを実現できる。
【0038】
本発明においては、上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有することで、弾性率とガラス転移温度を好適な範囲とすることができ、紫外線照射時の硬化収縮を低減し、湿熱環境変化時における反り変化の少ない硬化膜を実現できる。また、紫外線硬化後の硬化膜は、23℃における弾性率が1500MPa以下でガラス転移温度が50℃以下との光透過層を実現できるため、外部からの荷重によって変形しても元に復元しやすく寸法安定性に優れた光透過層を有する光ディスクを実現できる。
【0039】
また、本発明の紫外線硬化型組成物においては、その設計(メタ)アクリロイル基濃度を3.8mmol/g以下、好ましくは3.7mmol/g以下、より好ましくは3.6mmol/g以下とする。設計(メタ)アクリロイル基濃度を当該範囲とすることで、紫外線照射時の硬化収縮を低減し、湿熱環境変化時における反り変化の少ない硬化膜を形成できるため、光ディスクに適用した際に様々な使用環境下での反り変化を低減できる。
【0040】
紫外線硬化型組成物中の(メタ)アクリロイル基濃度とは、紫外線硬化型組成物1g中に含まれる(メタ)アクリロイル基の濃度(mmol)をいう。詳細には、(メタ)アクリレート成分を任意の複数成分含んでいる紫外線硬化型組成物においては、下式により算出される濃度である。
【0041】
[紫外線硬化型組成物の(メタ)アクリロイル基濃度]=[Σm/Σm](mmol/g)
:紫外線硬化型組成物に含まれる成分iの配合量(g)
:成分iの(メタ)アクリロイル基濃度(mmol/g)
【0042】
また、個々の(メタ)アクリレート成分であるi成分の(メタ)アクリロイル基濃度は、下式により算出される。
【0043】
[成分iの(メタ)アクリロイル基濃度]=[F×10/M](mmol/g)
F:成分iの1分子あたりの(メタ)アクリロイル基数
M:成分iの1分子あたりの分子量(g/mol)
【0044】
なお、上記算出に際し、組成物中の添加剤等の質量は計算の際に考慮しないものとする。
【0045】
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線を照射した後の硬化膜の弾性率が、1500MPa(23℃)以下、ガラス転移温度が50℃以下であることが好ましい。中でも弾性率が50〜1000MPa、ガラス転移温度が10〜45℃となる組成であることがより好ましい。硬化膜の弾性率及びガラス転移温度が、当該範囲であると、外部からの荷重によって光透過層が変形しても元に復元しやすい光ディスクを得ることができる。
【0046】
本発明の紫外線硬化型組成物は、上記紫外線硬化性化合物を調整し、粘度を800〜5000mPa・s、好ましくは1000〜2500mPa・sとすることで、厚膜の光透過層を好適に形成できる。
[光ディスク]
本発明の光ディスクは、基板上に、少なくとも光反射層と光透過層とが形成され、光透過層を通してレーザー光により記録又は再生を行う光ディスクであって、光透過層が、上記の紫外線硬化型組成物の硬化物からなるものである。本発明の光ディスクは、光透過層として、上記の紫外線硬化型組成物を使用することにより、高温高湿下でも、銀又は銀合金を反射膜として使用した場合に、優れた耐久性を得ることができるため、良好に情報の記録・再生を行うことができる。
【0047】
本発明の光ディスクにおける光透過層は、レーザー光の発振波長が370〜430nmであるブルーレーザーを効率良く透過することが好ましく、100μmの厚さにおいて405nmの光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0048】
本発明の光ディスクにおける光透過層の厚みは70〜110μmであることが好ましい。光透過層の厚みは、通常、約100μmに設定されるが、厚みは光透過率や信号の読み取り及び記録に大きく影響を及ぼすため、十分な管理が必要である。光透過層は、当該厚さの硬化層単層で形成されていても、複数層が積層されていてもよい。
【0049】
光反射層としては、レーザー光を反射し、記録・再生が可能な光ディスクを形成できるものであればよく、例えば、金、銅、アルミニウムなどの金属又はその合金、シリコンなどの無機化合物を使用できる。なかでも、400nm近傍の光の反射率が高いことから銀又は銀を主成分とする合金を使用することが好ましい。光反射層の厚さは、10〜60nm程度の厚さとすることが好ましい。
【0050】
基板としては、ディスク形状の円形樹脂基板を使用でき、当該樹脂としてはポリカーボネートを好ましく使用できる。光ディスクが再生専用の場合には、基板上に情報記録を担うピットが光反射層と積層される表面に形成される。
【0051】
また、書込可能な光ディスクの場合には、光反射層と光透過層との間に情報記録層が設けられる。情報記録層としては、情報の記録・再生が可能であればよく、相変化型記録層、光磁気記録層、あるいは有機色素型記録層のいずれであってもよい。
【0052】
情報記録層が相変化型記録層である場合には、当該情報記録層は通常、誘電体層と相変化膜から構成される。誘電体層は、相変化層に発生する熱を緩衝する機能、ディスクの反射率を調整する機能を求められ、ZnSとSiOの混合組成が用いられる。相変化膜は、膜の相変化により非晶状態と結晶状態で反射率差を生じるものであり、Ge−Sb−Te系、Sb−Te系、Ag−In−Sb−Te系合金を用いることができる。
【0053】
本願発明の光ディスクは、情報記録部位が二つ以上形成されていても良い。例えば、再生専用光ディスクの場合には、ピットを有する基板上に、第一の光反射層、第一の光透過層が積層され、当該第一の光透過層上又は他の層を積層し、当該層上に第二の光反射層、第二の光透過層を形成してもよい。この場合には第一の光透過層やこれに積層する他の層上にピットが形成される。また、記録・再生可能な光ディスクの場合は、基板上に、情報記録層、光反射層及び光透過層が積層された構成を有するものであるが、当該光透過層上に更に、第二の光反射層、第二の情報記録層、第二の光透過層を形成して二層の情報記録層を有する構成、あるいは、同様に層を積層して三層以上の情報記録層を有する構成としてもよい。複数層を積層する場合には、各層の層厚さの和が上記の厚さになるように適宜調整すればよい。
【0054】
また、本発明の光ディスクにおいては、光透過層が最表面の層であってもよいが、更にその表層に表面コート層を設けてもよい。
【0055】
光反射層上に塗布した紫外線硬化型組成物を紫外線照射することにより硬化させる場合、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、USP5904795記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0056】
紫外線を照射する場合、積算光量は0.05〜1J/cmとなるようにコントロールするのが好ましい。積算光量は0.05〜0.8J/cmであることがより好ましく、0.05〜0.6J/cmであることが特に好ましい。本発明の光ディスクに使用する紫外線硬化型組成物は、積算光量が少量であっても、十分に硬化し、光ディスク端面や表面のタックが発生せず、更に光ディスクの反りや歪みが発生しない。
【0057】
[実施態様]
以下、本発明の光ディスクの具体例として、単層型光ディスク及び二層型光ディスクの具体的構成の一例を以下に示す。
【0058】
本発明の光ディスクのうち、単層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図1に示したように、基板1上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う構成が例示できる。図中の凹凸は、記録トラック(グルーブ)を模式的に表したものである。光透過層3は、本発明の紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、その厚さは100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0059】
図2は図1に示した構成の最表層にハードコート層4を設けた構成である。ハードコート層は、高硬度で、耐摩耗性に優れる層であることが好ましい。ハードコート層の厚さは、1〜10μmであることが好ましく、3〜5μmであることがより好ましい
多層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図3に示したように、基板1上に、光反射層5と、光透過層6とが積層され、さらにその上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層3側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う二層型光ディスクの構成が例示できる。光透過層3及び光透過層6は、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、少なくともいずれかの層が本発明の紫外線硬化型組成物からなる層である。層の厚さとしては、光透過層3の厚さと光透過層6の厚さの和が100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0060】
当該構成の二層型光ディスクにおいては、記録トラック(グルーブ)が、光透過層6の表面にも形成されるため、光透過層6は、接着性に優れる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層の上に、記録トラックを好適に形成できる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層を積層した複層で形成されていてもよい。また当該構成においても最表層にハードコート層が設けられていてもよい。
【0061】
図1に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形することによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜する。この上に本発明の紫外線硬化型組成物を塗布し、ディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させ、光透過層3を形成し、図1の光ディスクを作製する。図2の光ディスクの場合には、この上に更にスピンコート等によりハードコート層4を形成する。
【0062】
図3に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形にすることによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に、基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層6を成膜する。
【0063】
この上に、本発明の紫外線硬化型組成物又は任意の紫外線硬化型組成物の光透過層5を形成するが、その際に型を用いて表面に記録トラック(グルーブ)を転写する。記録トラック(グルーブ)を転写する工程は次の通りである。基板1に形成された光反射層6上に紫外線硬化型組成物を塗布し、その上に記録トラック(グルーブ)を形成するための型と貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させる。その後、型を剥離して、光透過層5の記録トラック(グルーブ)を有する側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜し、この上に、紫外線硬化型組成物を塗付した後、紫外線照射により硬化させ、光透過層3を形成することで、図3の光ディスクを作製できる。また、光反射層に相変化型記録層を用いる場合でも上記と同様の方法により光ディスクを作成することができる。
【実施例】
【0064】
次に、合成例及び実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0065】
<合成例1>(HEA−CL2中間体の合成)
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、プラクセルM 684g(ε−カプロラクトン、ダイセル化学工業(株)製)、HEA 348g(2−ヒドロキシエチルアクリレート:大阪有機化学工業(株)製)、ネオスタンU−28 0.21g(オクタン酸錫:日東化成(株)製)、メトキノン 0.21g(p−メトキシフェノール:精工化学工業(株)製、重合禁止剤)、K−NOX BHT 2.06g(2,6−ジ−t−ブチル−P―クレゾール:エボニックデグサジャパン(株)製、酸化防止剤)を入れ、均一に混合しながら徐々に昇温した。130℃で反応し、サンプリングを行い、ガードナー粘度が一定となったところで反応を終了し、HEA−CL2中間体(2−ヒドロキシエチルアクリレート−ε−カプロラクトン2モル付加物)を得た。
【0066】
<合成例2>(HEA−CL3中間体の合成)
各原料成分を表1に示す組成比率で用いた以外は合成例1と同様にして反応を行い、HEA−CL3中間体(2−ヒドロキシエチルアクリレート−ε−カプロラクトン3モル付加物)を得た。
【0067】
<合成例3>(UA1の合成)
合成例1と同様の装置を用い、VESTANAT IPDI 799.2g(3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート:エボニックデグサジャパン(株)製)、ネオスタンU−820 0.84g(オクチル錫系化合物:日東化成(株)製、ウレタン化触媒)、メトキノン 0.84g(p−メトキシフェノール:精工化学工業(株)製、重合禁止剤)、K−NOX BHT 8.37g(2,6−ジ−t−ブチル−p―クレゾール:エボニックデグサジャパン(株)製、酸化防止剤)を入れ、均一に混合しながら徐々に昇温した。50℃に達したところで、アクトコールMN−1500 1502.7g(3官能ポリオール、三井化学ポリウレタン(株)製、水酸基価112mgKOH/g)を分割添加し、80℃で2時間反応後、HEA 487.2gを分割添加し、さらに8時間反応させた。NCO%が0.2%以下になったことを確認し、PEA(フェノキシエチルアクリレート、ライトアクリレート PO−A、共栄社化学(株)製) 697.3gを加え、混合し、ウレタンアクリレート(UA1)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物を得た。得られたウレタンアクリレートの各原料組成を表2に示す。
【0068】
<合成例4>(UA2の合成)
合成例1と同様の装置を用い、VESTANAT IPDI 666g、ネオスタンU−820 0.65g、メトキノン 0.24g、K−NOX BHT 2.40gを入れ、均一に混合しながら徐々に昇温した。50℃に達したところで、合成例2で合成したHEA−CL3中間体(合成例2、2−ヒドロキシエチルアクリレート−ε−カプロラクトン3モル付加物)1374gを分割添加し、80℃で2時間反応後、トリメチロールプロパン(脂肪族多官能ポリオール、三菱ガス化学(株)製)134gを加えさらに10時間反応させた。NCO%が0.2%以下になったことを確認し、PEA 544.3gを加え、混合し、ウレタンアクリレート(UA2)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物を得た。得られたウレタンアクリレートの各原料組成を表2に示す。
【0069】
<合成例5>(UA3の合成)
各原料成分を表2に示す組成比率で用いた以外は合成例3と同様にして反応を行い、ウレタンアクリレート(UA3)を得た。
【0070】
<合成例6>(UA4の合成)
合成例1と同様の装置を用い、バーノックDN−980S(ポリイソシアネート、DIC(株)製)367.8g、ネオスタンU−200(ブチル錫系化合物、日東化成(株)製、ウレタン化触媒)0.1g、メトキノン 0.1g、K−NOX BHT 2.01gを入れ、均一に混合しながら徐々に昇温した。60℃に達したところで、合成例1で合成したHEA−CL2中間体(合成例1、2−ヒドロキシエチルアクリレート−ε−カプロラクトン2モル付加物))650.6gを分割添加し、80℃で3時間反応させた。NCO%が0.2%以下になったことを確認し、ウレタンアクリレート(UA4)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物を得た。得られたウレタンアクリレートの各原料組成を表2に示す。
【0071】
<合成例7>(UA5の合成)
合成例1と同様の装置を用い、コスモネートT−100S (トルエンジイソシアネート、三井化学ポリウレタン(株)製)351.5gを入れ、PTG850SN(2官能ポリオール、保土谷化学(株)製、水酸基価126.3mgKOH/g)861gを分割添加し、65℃で2時間反応後、メトキノン 0.44g、ステアラーTBH(酸化防止剤 精工化学(株)製)0.29g、HEA 236.6を入れ、均一に混合した。さらにネオスタンU−200 0.2gを分割添加し、70℃で6時間反応させた。NCO%が0.2%以下になったことを確認し、ウレタンアクリレート(UA5)を含有する淡黄色透明の樹脂状の反応混合物を得た。得られたウレタンアクリレートの各原料組成を表2に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
<表1の脚注>
プラクセルM:ε−カプロラクトン、ダイセル化学工業(株)製
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
ネオスタンU−28:オクタン酸錫、日東化成(株)、触媒
メトキノン:p−メトキシフェノール、精工化学工業(株)製、重合禁止剤
K−NOX BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p―クレゾール、エボニックデグサジャパン(株)製、酸化防止剤
【0074】
【表2】

【0075】
<表2の脚注>
VESTANAT IPDI:3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、エボニックデグサジャパン(株)製
コスモネート T−100S:トルエンジイソシアネート、三井化学ポリウレタン(株)製
バーノックDN−980S:ポリイソシアネート化合物、DIC(株)製
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
HEA−CL2中間体:2−ヒドロキシエチルアクリレート−ε−カプロラクタム2トン付加物(表1合成例1参照)
HEA−CL3中間体:2−ヒドロキシエチルアクリレート−ε−カプロラクトン3モル付加物(表1合成例2参照)
アクトコールMN−1500:3官能ポリオール、三井化学ポリウレタン(株)製、水酸基価112mgKOH/g
TMP:トリメチロールプロパン、三菱ガス化学(株)製
di−TMP:ジトリメチロールプロパン、三菱ガス化学(株)製
PTG850SN:2官能ポリオール、保土谷化学(株)製、水酸基価126.3mgKOH/g
ネオスタンU−820:オクチル錫系化合物、日東化成(株)製、ウレタン化触媒
ネオスタンU−200:ブチル錫系化合物、日東化成(株)製、ウレタン化触媒
メトキノン:p−メトキシフェノール、精工化学工業(株)製、重合禁止剤
K−NOX BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p―クレゾール、エボニックデグサジャパン(株)製、酸化防止剤
ステアラーTBH:t−ブチルハイドロキノン、精工化学(株)製、重合禁止剤
【0076】
下記表3、表4に示した組成(表中の組成の数値は質量部を表す)により配合した各組成物を60℃で3時間加熱、溶解して、実施例1〜6及び比較例1〜4の各実施例及び比較例の紫外線硬化型組成物を調製した。得られた組成物について、下記の評価を行い、得られた結果を表3、表4に示す。
【0077】
<粘度の測定方法>
紫外線硬化型組成物について、25℃における粘度をB型粘度計((株)東京計器製、BM型)を用いて測定した。
【0078】
<硬度・信号・反り評価用光ディスクの作成条件>
直径120mm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を準備し、(株)コベルコ科研製銀合金ターゲットGBD05(銀を主成分とするビスマスとの合金)を20〜40nmの膜厚でスパッタした後、反対面側に窒化シリコン(SiNx)を5〜10nmの膜厚でスパッタした。得られた基板の銀合金反射膜上に、表1の各組成物をオリジン電気(株)製の塗布実験機を使用し膜厚が硬化後に100±5μmとなるように塗布した。さらに、ハードコートを硬化後の膜厚が3±1μmとなるように塗布した。なお、ハードコートはDIC(株)製のダイキュアクリアHC−1を用いた。ウシオ電機(株)製クセノンフラッシュ照射装置(型式:FUV−201WJ02)を使用し、仮硬化2ショット(充電電圧3420V)、本硬化20ショット(充電電圧3420V)、ハードコート硬化10ショット(充電電圧3420V)の条件で紫外線を照射、硬化させ試験用サンプルディスクを得た。
【0079】
<弾性率の測定方法>
フィッシャースコープHM2000(フィッシャーインストルメンツ社)を用いて、上記方法にて得た各サンプルディスクの光透過層の面を、稜間角136°のビッカース圧子を図4の荷重プログラムにて押し込み、23℃における弾性率を測定した。
【0080】
<ガラス転移温度の測定方法>
各サンプルディスクについて400番の耐水研磨紙(三共理化学(株)製)を用いて光透過層表面のハードコートを削った後、硬化物層から試験片を切り出した。自動動的粘弾性測定装置RSA−3(ティー・エイ・インストルメント(株)製)を用いて損失正接(tanδ)を測定し、そのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0081】
<光ディスクの荷重試験>
各サンプルディスクの光透過層の面に、CD保管用不織布シートを載せ、半径35〜45mmの範囲に625gの重り(単位面積あたりの荷重24.9g/cm)を載せ、23℃50%RH環境下で96時間荷重を与え続けた。その後、ディスクから重りと不織布を取り出し、パルステック工業(株)製「BD MASTER」を用いてエラーレートSER測定した。除荷後1時間経過時点でのSERの平均値を下記基準に基づき評価した。
◎:2×10−4以下
○:2×10−4を超え5×10−3未満
×:5×10−3を超える
【0082】
<光ディスクの耐久試験>
各サンプルディスクについて環境試験器「PR−2PK」(エスペック(株)製)を使用して、80℃85%RHの湿熱環境下で240時間曝露を行った。その後、23℃50%RHの環境下に24時間放置した後、各サンプルディスクのエラーレートRandom SERをパルステック工業(株)製「BD MASTER」を用いて測定した。耐久試験後のRandom SERの平均値を下記基準に基づき評価した。
◎:2×10−4以下
○:2×10−4を越え5×10−3以下
×:5×10−3を越える
【0083】
<光ディスクの湿度ショック試験>
各サンプルディスクについて23℃50%RHの環境下にて光ディスク機械特性評価装置IQPC(Dr.Schwab Inspection Technology社製)を用い、半径位置58mmでのRadial Tiltを測定し、これを初期値とした。初期値を測定した各サンプルディスクを25℃95%RHの環境下に96時間放置した後、23℃50%Rの環境下に取り出し、3時間後まで反り測定をおこなった。最大値または最小値と初期値との差から最大変化量を求め、下記基準に基づき評価を行った。ここで、反り角の値が正(+)の場合は硬化物層側とは反対側に、負(−)の場合は硬化物層側に反ったことを意味する。
◎:初期値からの最大変化量が±0.8度以内
○:初期値からの最大変化量が±0.8度を超え±1.0度以内
×:初期値からの最大変化量が±1.0度を超える
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
表3、表4中の記号は以下のとおりである。
UA1:合成例3に記載のウレタンアクリレート
UA2:合成例4に記載のウレタンアクリレート
UA3:合成例5に記載のウレタンアクリレート
UA4:合成例6に記載のウレタンアクリレート
UA5:合成例7に記載のウレタンアクリレート
HPNDA:ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート
HX−220:カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬(株)製)
PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート(14EG−A 共栄社化学(株)製)
PEA:フェノキシエチルアクリレート
NVF:N−ビニルホルムアミド
THF−A:テトラヒドロフルフリルアクリレート
PM−2:エチレンオキシド変性リン酸メタクリレート(日本化薬(株)製)
GA:没食子酸(大日本住友製薬(株)製)
Irg184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0087】
表3〜4に示すように、本発明の組成物を使用した実施例1〜6の光ディスクは、荷重試験後のエラーレートの回復に優れ、耐久試験において良好な信号特性を示した。さらに、各湿度ショック試験後の反り変化も小さく優れた寸法安定性を示した。一方、比較例1〜4の光ディスクは、荷重試験後のエラーレートの回復に優れるものの、耐久性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図2】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図3】本発明の二層型光ディスクの一例を示す図である。
【図4】実施例での弾性率及び塑性変形率の測定における荷重プログラム図である。
【符号の説明】
【0089】
1 基板
2 光反射層
3 紫外線硬化型組成物の光透過層
4 ハードコート層
5 光反射層
6 紫外線硬化型組成物の光透過層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも光反射層と、光透過層とが積層され、前記光透過層側からレーザー光を入射して情報の再生を行う光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、
(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマーを含有し、
(メタ)アクリレートオリゴマーとして、分子内に3個以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオール(a)と、分子内に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート(b)と、分子内にヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを有するヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)とからなる多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)を含有することを特徴とする光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ポリオール(a)の数平均分子量が100〜3000、前記ジイソシアネート(b)の数平均分子量が100〜1000、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)の数平均分子量が100〜1000である請求項1に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリオール(a)が、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリン、および、これらのアルキレンオキサイド付加物又はラクトン付加物から選ばれる脂肪族ポリオールであるである請求項1又は2に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート(c)が、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびこれらのε−カプロラクトン等のラクトン付加物、ポリアルキレンオキサイドのモノ(メタ)アクリレートからなる多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)である請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項5】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(U1)の含有量が、紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の20〜80質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレートモノマーとして、二官能(メタ)アクリレートを、紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物中の10〜50質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項7】
紫外線硬化後の硬化膜表面に、稜間角136°のビッカース圧子を荷重100mNで押し込んで測定される弾性率(23℃)が1500MPa以下であり、前記硬化膜のガラス転移温度が50℃以下である請求項1〜6のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項8】
紫外線硬化型組成物の(メタ)アクリロイル基濃度が3.8mmol/g以下である請求項1〜7のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項9】
基板上に、少なくとも光反射層と、紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の再生を行う光ディスクであって、
前記紫外線硬化型組成物が、請求項1〜8のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスク。
【請求項10】
前記光透過層の厚さが90〜110μmの範囲にある請求項9に記載の光ディスク。
【請求項11】
前記紫外線硬化型組成物の硬化膜表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重100mNで押し込んで測定される弾性率が1500MPa以下であり、前記硬化膜のガラス転移温度が50℃以下である請求項9又は10に記載の光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−211867(P2010−211867A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57831(P2009−57831)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】