説明

光ディスク用紫外線硬化型組成物

【課題】 アルミニウム、金、金合金、銀、銀合金、及びケイ素化合物等の金属又は無機化合物により形成された反射膜に対する初期接着性、及び高温高湿環境下に長時間放置した後における接着力に優れ、反射膜の外観変化を起こすことが無く、更に信号の読み取りエラーを増加することがない、高温高湿環境下に曝露された場合の耐久性に優れる光ディスクを製造することが可能な光ディスク用紫外線硬化型組成物を提供する。
【解決手段】 ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)と二塩基酸無水物(a2)から得られるハーフエステル化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)とを反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂、及び式(1)


で表される化合物を含有することを特徴とする光ディスク用紫外線硬化型組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備え、更にその反射膜上に紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる保護層を備えた光ディスク、及び少なくとも1枚の光ディスク用基板に情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備えた2枚の基板を紫外線硬化型組成物の硬化膜により貼り合わせた貼り合わせ型の光ディスクに使用するための該紫外線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクには種々のタイプがある。例えば、基板上に形成された情報記録層上に該記録層を保護するための紫外線硬化型樹脂組成物の硬化膜が形成された光ディスクや、少なくとも1枚の光ディスク用基板に情報記録層が形成された2枚の基板を紫外線硬化型樹脂組成物の硬化膜により貼り合わせた貼り合わせ型の光ディスクがある。
情報記録層とは、ポリカーボネート等の合成樹脂からなる光ディスク用基板上に形成した、ピットと称する凹凸、相変化材料又は色素等からなる層と、その上に形成された情報読み取り用のレーザー光を反射するための半透明反射膜又は完全反射膜とからなる積層体である。半透明反射膜及び完全反射膜は情報記録層の最上部に形成される層であり、一般的には金属又は金属合金の薄膜からなる層である。
【0003】
貼り合わせ型の光ディスクの代表例としては、DVD(ディジタルバーサタイルディスク又はディジタルビデオディスク)がある。中でも再生専用型のDVDにおいては、種々のタイプが存在する。例えば、「DVD−10」と称する光ディスクは、基板の片面に記録情報に対応するピットと称する凹凸を設け、その上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための層として、例えばアルミニウムの層を形成した光ディスク用ポリカーボネート基板を2枚用意して、それらをアルミニウムの層を接着面として貼り合わせたものである。「DVD−5」は、「DVD−10」を製造するための前記基板と、情報記録層を設けていない通常の透明なポリカーボネート基板とを貼り合わせたものである。また、「DVD−9」は、基板の片面に設けたピット上にアルミニウムの反射膜を形成した基板と、基板の片面に設けたピット上に金又は金を主成分とする合金、銀又は銀を主成分とする合金或いはケイ素化合物等からなる半透明反射膜を形成した基板とを、反射膜同士を接着面として貼り合わせたものである。更に、「DVD−18」は、片面に2層の情報記録層を有する基板を2枚貼り合わせた構造のものである。現在では記録容量が大きく片面から2層の情報を読み取れる「DVD−9」が主流になっている。
【0004】
このDVD−9等の半透明反射膜としては、金またはケイ素化合物が主として使用されている。しかし、金は材料の値段が非常に高くコスト面で不利であり、またケイ素化合物は成膜が非常に困難であるという欠点がある。そこで、金と比較して低コストであり成膜も容易であることから銀または銀を主成分とする合金への置き換えが盛んに検討されている。
【0005】
さらに、DVDは再生専用型と記録型に大別でき、記録型のDVDにおいては、追記型のDVD−R、DVD+Rと呼ばれる方式と書き換え型のDVD−RW、DVD+RW、DVD−RAMと呼ばれる方式がある。これらのDVDの内、追記型のDVD−R、DVD+Rと呼ばれるDVDは、他のDVDとは異なり、記録層に有機色素を用いるという特徴を持つ。追記型光ディスクは、透明基板上に、レーザー光の照射によって不可逆的に光学特性が変化したり凹凸形状が形成されたりすることによって記録層が形成される。この記録層としては、例えばレーザー光の照射による加熱で分解し、その光学定数が変化すると共に、体積変化によって基板の変形を生じさせるシアニン系、フタロシアニン系、アゾ系の有機色素等が用いられる。
【0006】
こうした多くの方式が開発されているが、次々に開発される種々の記録方式を用いた光ディスクには、情報記録層に記録された信号が安定して読み取れること、信号の読み取りエラーの発生が極力抑えられていることが共通して求められている。特に、高温高湿環境下に長時間曝露された後であっても、情報記録層を形成する反射膜の外観変化が無く、信号の読み取りエラーの増加が起こらないことが重要である。
【0007】
ところで、そのような光ディスクの特性は、情報記録層上に設けられる樹脂層を形成するための紫外線硬化型組成物の特性により大きく影響される。例えば、貼り合わせ型の光ディスクに使用される紫外線硬化型組成物としては、情報記録面を形成する種々の材料に対して優れた接着性を示す事が求められている。即ち、光ディスク用紫外線硬化型組成物が接着する対象となる被接着体は、ポリカーボネート、アルミニウム、金、金合金、銀、銀合金、ケイ素化合物、有機色素等が有るが、これら総てに対し優れた接着力を示すことが求められている。
【0008】
貼り合わせ型の光ディスクに使用される紫外線硬化型組成物として、1分子中に1個の水酸基を含有する(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物の反応物であるハーフエステル化合物と1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂との反応物と反応性希釈剤と光重合開始剤を含有する光ディスク貼り合わせ用紫外線硬化性接着剤組成物に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。当該技術は、銀等からなる半透明反射膜を有する貼り合わせ型光ディスクにおいて、高い耐久性(信頼性)を有する接着剤組成物を提供することを目的としており、80℃、85%RH環境下に500時間放置した後も反射膜の外観変化が発生しないことが報告されている。しかしながら、当該技術に記載された実施例の組成物、つまり、2−アクリロイルオキシエチルフタレートとビスフェノールA型のエポキシ樹脂の反応物を含有する紫外線硬化型組成物を詳細に検討すると、初期の接着力が低く、また、高温高湿環境下に長時間放置した後における接着力の低下、及び信号の読み取りエラーの増加が認められ、実用上、更に、改良が必要であることが判明した。
【0009】
また、金属反射膜を備えた光ディスクにおいて、アモルファスシリコン樹脂基板と金、銀、銅、アルミニウム等の金属反射膜の両方に優れた密着性を有する組成物に関する技術が報告されている(例えば、特許文献2参照)。当該技術では、ジシクロペンタジエンジアクリレート、チオキサントン系化合物及びリン酸基を有する(メタ)アクリレートを含有する光ディスク用紫外線硬化型組成物に関する技術が提案さている。更に、当該技術では、重合禁止剤として、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、2,5−t−ブチル−ハイドロキノン、フェノチアジン等を光ディスク用紫外線硬化型組成物全体に対し0.1〜5質量%の範囲で使用できることが記載されている。
【0010】
一方、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物とジカルボン酸無水物とエポキシ樹脂とを反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂と、ラジカル重合性単量体とを必須成分として含有する活性エネルギー線硬化型塗料用組成物に関する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。当該技術は、高い硬度とクラックの発生を抑制する伸度を有する硬化塗膜を得るための木材用塗料を主目的としている。また、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートと酸無水物と二官能以上のエポキシ樹脂とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、及び必要に応じて加えられる(メタ)アクリロイル基含有化合物を含有する活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物に関する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。当該技術は、硬化速度が速く、硬化物が光ファイバーコーティング用として適切な耐湿熱性、低吸湿性を有する活性エネルギー線硬化型光ファイバーコーティング用樹脂組成物を提供することを目的としている。しかしながら、これらの文献には光ディスクに関する技術については何ら記載されておらず、特に高温高湿環境下に長時間放置した前後における接着力の低下、及び信号の読み取りエラーを抑制した光ディスクについては全く触れられていない。
【0011】
また、DVD−9等の金属反射膜を備えた光ディスクにおける別の課題として、接着剤として使用する紫外線硬化型組成物による金属反射膜の腐食がある。この課題を解決するための技術として、例えば、カチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤、及びアルミニウム腐食防止剤としてヒドロキシカルボン酸を含有する接着剤組成物をアルミニウムの蒸着膜等の薄膜に塗布する技術が報告されている(例えば、特許文献5参照)。ヒドロキシカルボン酸の例としては、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、2−メチル乳酸、ヒドロキシピルビン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α,α−ジフェニルグリコール酸、マンデル酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、p−ヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、シトラジン酸、ケリダム酸、没食子酸等が挙げられている。
【0012】
ところで、接着性に優れ、且つ速硬性の二液型のアクリル系接着剤として、(メタ)アクリル酸及びそのエステルから選ばれるアクリル系化合物とパーオキシエステル系重合開始剤と没食子酸誘導体とその他添加剤を含有する接着剤組成物を第一液として使用する技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。更に、接着時に接着部分からはみ出した第一液を硬化させるため、接着剤組成物に光重合開始剤を添加し、紫外線を照射することにより、はみ出した接着剤を硬化させることが提案されている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−206449号公報(特許請求の範囲、第4段落、実施例)
【特許文献2】特開2002−285042号公報(特許請求の範囲、第28段落、第29段落、第34段落)
【特許文献3】特開2003−105230号公報(特許請求の範囲、第5段落、実施例)
【特許文献4】特開2004−51905号公報(特許請求の範囲、第5段落、実施例)
【特許文献5】特開2002−146331号公報(特許請求の範囲、第6段落、第25段落)
【特許文献6】特開平3−134081号公報(特許請求の範囲、第6頁右上欄5行目〜同左下欄17行目、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上の如く、光ディスク技術分野においては、これまで高温高湿環境下に長時間曝露した時の耐久性、金属反射膜の耐腐食性、紫外線硬化型組成物のアルミニウム、金、金合金、銀、銀合金、及びケイ素化合物等の金属又は無機化合物により形成された反射膜に対する接着性等の改善が検討されてきた。本発明者等は、このような従来公知の課題を含め、特に、銀又は銀を主成分とする合金の反射膜を有する光ディスクの開発に関して種々検討を進めてきた。その結果、上記課題以外に新たに別の課題があることを見出した。その課題とは、銀又は銀を主成分とする合金の反射膜を備えた光ディスクが蛍光灯等の室内灯に暴露された場合、該反射膜が黒変して反射率の低下やPIエラー(parity of inner-code error)の増加を引き起こし、極端な場合には情報の読み取りが不可能になるという問題である。この課題の克服は、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を備えた光ディスクの実用特性を向上させるため非常に重要である。
【0015】
したがって、本発明の目的は、アルミニウム、金、金合金、銀、銀合金、及びケイ素化合物等の金属又は無機化合物により形成された反射膜に対する初期接着性、及び高温高湿環境下に長時間放置した後における接着力に優れ、反射膜の外観変化を起こすことが無く、更に信号の読み取りエラーを増加することがない、高温高湿環境下に曝露された場合の耐久性に優れる光ディスクを製造することが可能な光ディスク用紫外線硬化型組成物を提供することにある。特に、本発明の他の目的は、上記課題を克服し、更に、蛍光灯等の室内灯に曝露された場合であっても反射膜が黒変することがなく、信号の読み取りエラー(PIエラー)の増加や反射率低下を起こすことがない、耐光性に優れた、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を備えた光ディスクを製造することが可能な光ディスク用紫外線硬化型組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従来から、光ディスク基板の情報記録面と紫外線硬化型組成物の硬化皮膜との接着性を向上させるためには、紫外線硬化型組成物が硬化する際の収縮率を低減させたり、硬化後の膜の弾性率を低くすることにより、硬化時の歪みを低下させ、或いは緩和することが有効であることが判っている。そのための手段として、比較的高分子量のオリゴマーの使用比率を増加して、低分子量のモノマーの使用比率を低く抑えることが従来から試みられている。
【0017】
本発明者らは、本発明の課題を解決するため、コーティング剤や接着剤の分野において広く使われており、光ディスク用紫外線硬化型組成物においても一般的に用いられているビスフェノールA型エポキシアクリレートを含有する紫外線硬化型組成物を検討した。しかしながら、ビスフェノールA型エポキシアクリレートは粘度が高く、したがって、塗工性能を一定に保つために該化合物を多く使用することが困難であり、しかも、該化合物を使用した組成物は、硬化後の硬化皮膜の弾性率が高くなり、硬化時の歪みが緩和されない。そのため、信号の読み取りエラーや外観不良等の不具合が起こり易かった。更に、高温高湿環境下に長時間曝露した場合、熱や水分によって硬化時の歪みが記録層表面で更に拡大し、信号の読み取りエラーの増加や外観不良が起こる原因となることが判った。
【0018】
そこで、前記特許文献1の実施例に記載されている2−アクリロイルオキシエチルフタレートとビスフェノールA型のエポキシ樹脂の反応物を含有する紫外線硬化型組成物を検討した。該反応物を含有する紫外線硬化型組成物は、該反応物を多く含有しても塗工性能を損なうほど粘度が上昇することはなかった。しかしながら、該反応物を含有する紫外線硬化型組成物の硬化皮膜は、光ディスク基板の情報記録面に対する初期の接着力が低く、また、高温高湿環境下に長時間放置した後における接着力の低下が起こり、更に信号の読み取りエラーの増加が発生した。これは、該反応物を含有する紫外線硬化型組成物の硬化膜の弾性率が高く、したがって、硬化時に発生した歪みが緩和されないためと推測している。
【0019】
以上の結果を基に、本発明者らは硬化時に発生した歪みを緩和することができる分子構造を有するオリゴマーを検討した。その結果、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物と二塩基酸無水物から得られるハーフエステル化合物と、エポキシ樹脂とを反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂が目的とする特性を有することが判った。
【0020】
更に、種々添加剤を検討する中で、フェノール性水酸基を2個以上有する特定構造の化合物を含有することにより、信号の読み取りエラー(PIエラー)の増加をさらに抑えることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
すなわち本発明は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)と二塩基酸無水物(a2)から得られるハーフエステル化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)とを反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂、及び式(1)
【0022】
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4及びRはそれぞれ独立的に、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)炭素数1〜8のアルコキシル基、(v)カルボキシル基、(vi)式(2)
【0023】
【化2】

(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される基、或いは(vii)置換基としてカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシル基又はアルコキシル基を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基若しくはアルケニル基を表すが、R1、R2、R3、R4及びRの中の少なくともひとつは水酸基である。)で表される化合物を含有することを特徴とする光ディスク用紫外線硬化型組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物で使用するエポキシアクリレート樹脂は、該組成物中に多量に含有された場合であっても、該組成物の粘度を極端に増加させることがない。したがって、該組成物の塗工性能を低下させることが無く、また、該組成物の硬化被膜の弾性率を低く抑えることができ、硬化時あるいはその後に生じた硬化膜内の歪みを緩和することができる。そのため本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物の硬化皮膜は、光ディスク基板の情報記録面に対する初期の接着力が高く、高温高湿環境下に長時間放置した後の接着力の低下を起こすことがない。むしろ、上記エポキシアクリレート樹脂を多く含有する組成物を使用した系は、高温高湿環境下での耐久試験後の接着力が初期よりも向上している。これは本発明により見出された特異な現象であり、本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物における優れた効果である。
【0025】
また、フェノール性水酸基を2個以上有する特定構造の化合物は、特に、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜が蛍光灯等の室内灯に曝露された場合の該反射膜の黒変防止に効果的である。なお、前記特許文献2、5、6には銀又は銀を主成分とする合金からなる半透明反射膜を備えた光ディスクにおける耐光性に関しては全く触れられておらず、また、該光ディスクに使用する光ディスク用紫外線硬化型組成物に使用する具体的な添加剤については全く記載されていない。したがって、これらの特許文献は、銀又は銀を主成分とする合金を反射膜として使用した光ディスクの耐光性を改善する方法に関して特段の手段を指し示すものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)と二塩基酸無水物(a2)から得られるハーフエステル化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)とを反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂を含有する。
なお、本明細書中で反射膜とは、情報読み取り用のレーザー光を反射するための半透明反射膜又は該レーザー光を実質的に透過しない完全反射膜のことであり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のことであり、アクリル酸又はメタクリル酸の誘導体についても同様である。
【0027】
前記エポキシアクリレート樹脂は、下記の反応工程で製造することが好ましい。
第一段の反応として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)の水酸基と、二塩基酸無水物(a2)とを、(a1)の水酸基と二塩基酸無水物(a2)のモル比が0.9〜1.1、好ましくは等モルにて反応させてハーフエステル化合物(A)を得る。
第二段の反応として、得られたハーフエステル化合物(A)とエポキシ樹脂(B)とを、ハーフエステル化合物(A)のカルボキシル基とエポキシ樹脂(B)のグリシジル基とを、モル比が0.9〜1.1、好ましくは等モルにて反応させる。
【0028】
この第1段反応は禁止剤の存在下、反応温度60〜120℃、好ましくは70〜100℃で反応する事が望ましい。60℃以下では反応時間が長くなり、120℃以上ではヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)の不飽和二重結合の重合が起きやすくなる。第2段の反応は、60℃以下では反応時間が長くなり、120℃以上ではヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)の不飽和二重結合の重合が起きやすくなるため、禁止剤の存在下、反応温度60〜120℃、好ましくは70〜100℃で反応する事が望ましい。グリシジル基の開環触媒として公知任意の触媒を用いる事が出来る。トリエチレンジアミン、トリnブチルアミン等の三級アミン類、トリフェニルフォスファイト、亜燐酸エステル、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類などがその代表例として挙げる事が出来る。
【0029】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにラクトンを開環付加して得られる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。ラクトンとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
中でも、1モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートに2モルのε−カプロラクトンが付加した化合物が好ましい。
【0030】
エポキシアクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は900〜8000であることが好ましく、1200〜3000であることがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は、1.3〜2.8であることが好ましく、1.4〜2.0であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)及び(Mw/Mn)が上記範囲であるとエポキシアクリレート樹脂の粘度が低く、紫外線硬化型組成物としてのエポキシアクリレート樹脂(オリゴマー)の濃度を高くできるため、不飽和二重結合濃度を下げる事が出来、その結果、硬化塗膜の硬化収縮による歪みが減少するため、好ましい。
【0031】
二塩基酸無水物(a2)としては、フタル酸無水物、1,2,3,6テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、2,3,4,5−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、ヘキサヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、琥珀酸無水物及びその誘導体、モノアルキル琥珀酸無水物及びその誘導体、ジアルキル琥珀酸無水物及びその誘導体、マレイン酸無水物及びその誘導体、モノアルキルマレイン酸無水物及びその誘導体、ジアルキルマレイン酸無水物及びその誘導体が挙げられる。中でもフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物を用いることが好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂(B)としては、特に構造が限定されるものではないが、例えば、ビスフェノ−ル型エポキシ樹脂類、ノボラック型エポキシ樹脂類、脂環式エポキシ樹脂類、グリシジルエステル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、複素環式エポキシ樹脂類、臭素化エポキシ樹脂類などが挙げられる。
【0033】
上記のビスフェノ−ル型エポキシ樹脂類としては、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂の2級水酸基にεカプロラクトン付加したラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルS型エポキシ樹脂等;上記のノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノ−ルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等;上記脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレ−ト、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等;前記グリシジルエステル類としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマ−酸グリシジルエステル等;前記グリシジルアミン類としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP−アミノフェノ−ル、N,N−ジグリシジルアニリン等;前記複素環式エポキシ樹脂としては、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレ−ト等が挙げられる。
中でも、ビスフェノ−ル型エポキシ樹脂がコストパーフォマンスに優れ、取りわけビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂が、接着力、耐久性などの性能とコストに優れ、好ましい。
【0034】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物中には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)と二塩基酸無水物(a2)から得られるハーフエステル化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)とを反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂を、紫外線硬化型組成物全体に対して10〜90質量%含有することが好ましく、20〜70質量%含有することが好ましい。また、紫外線硬化型組成物中には公知のラジカル重合性モノマー、オリゴマー、光重合開始剤、及び熱重合開始剤等を用いる事が出来る。
【0035】
ラジカル重合性モノマーとして、例えば、単官能(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチルー1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキルエーテル(メタ)ポリアクリレート類、;ノルボルナンジメタノールジアクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等の脂環構造を有するモノマー類、;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート構造を有するモノマー類、;ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルモノマー等を挙げることができ、前記ラジカル重合性不飽和モノマーの1種もしくは2種以上を用いることができる。
【0037】
本発明で使用することのできるオリゴマーとしては、例えば、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレートなどのポリウレタン(メタ)アクリレート或いは、ポリエステル骨格のポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格のポリオールに(メタ)アクリル酸をエステル化したポリエーテル(メタ)アクリレート等の活性エネルギー線線硬化性オリゴマーの1種もしくは2種以上を用いる事が出来る。
【0038】
光重合開始剤としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、分子開裂型または水素引き抜き型のものが本発明で使用する光重合開始剤として好適である。本発明に使用する光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型の光重合開始剤を使用することができる。
【0039】
また、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が使用でき、更に、前記の光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、これらは、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れ、かつ紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。また、紫外線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤として、界面活性剤、レベリング剤、熱重合禁止剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト等の酸化防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤を使用することもできる
【0040】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、式(1)で表される化合物を含有する。式(1)で表される化合物を含有することにより、紫外線硬化型組成物の硬化皮膜の初期接着力をより高くすることができ、更に、光ディスクを高温高湿環境下に長時間放置した後の接着力の低下、反射膜の外観変化、及び信号の読み取りエラーの増加を相当程度防止することができる。
【0041】
【化3】

(式中、R1、R2、R3、R4及びRはそれぞれ独立的に、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)炭素数1〜8のアルコキシル基、(v)カルボキシル基、(vi)式(2)
【0042】
【化4】

(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される基、或いは(vii)置換基としてカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシル基又はアルコキシル基を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基若しくはアルケニル基を表すが、R1、R2、R3、R4及びRの中の少なくともひとつは水酸基である。)
【0043】
前記式(1)で表される化合物としては種々の構造の化合物があるが、中でも下記式(3)で表される没食子酸又は没食子酸エステルであることが好ましい。
【0044】
【化5】

(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)
【0045】
アルキル基及びアルケニル基は分岐状又は直鎖状であって良く、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。中でも、Rは水素原子、又は無置換の炭素数1〜20の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は無置換の炭素数1〜8の分岐鎖を有していてもよいアルキル基であることがより好ましい。更に、水素原子、又は無置換の炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい
【0046】
没食子酸エステルとしては、具体的には、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソプロピル、没食子酸イソペンチル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、没食子酸テトラデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸オクタデシル等がある。式(3)で表される化合物としては、没食子酸を使用することが好ましい。没食子酸は、市販品として、例えば、大日本製薬(株)製が容易に入手可能である。
【0047】
また、前記式(1)で表される化合物としては、下記式(4)で表される化合物も好ましい。
【0048】
【化6】

(式中、R8、R9、R10及びR11はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
【0049】
式(4)中、R8、R9、R10及びR11は、具体的には、(i)水素原子、(ii)フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等のハロゲン原子、(iii)メトキシ、エトキシ、ブトキシ、オクチロキシ等のアルコキシル基、(iv)メチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリル又はオクタデシル等のアルキル基、(v)エテニル、プロペニル又は2−ブテニル等のアルケニル基、(vi)4−カルボキシブチル、2−メトキシカルボニルエチル、メトキシメチル、エトキシメチル等が挙げられる。
【0050】
式(4)で表される化合物中で好ましいのは、カテコール、3−sec−ブチルカテコール、3−tert−ブチルカテコール、4−sec−ブチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、3−sec−ブチル−4−tert−ブチルカテコール、3−tert−ブチル−5−sec−ブチルカテコール、4−オクチルカテコール及び4−ステアリルカテコールであり、より好ましいのは、カテコール及び4−tert−ブチルカテコールである。特に4−tert−ブチルカテコールを使用することが好ましい。4−tert−ブチルカテコールの市販品としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製DIC TBC−5Pがある。
【0051】
更に、前記式(1)で表される化合物としては、下記式(5)及び式(6)で表される化合物も好ましい。
【0052】
【化7】

(式中、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
【0053】
【化8】

(式中、R19、R20、R21及びR22はそれぞれ独立的に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルコキシル基、置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基、或いは置換基として-COOH、-COOR12、-OCOR13又は-OR14を有していても良い炭素数1〜24のアルケニル基を表す(式中、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立的に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルケニル基を表す。)。)
【0054】
式(5)中のR15、R16、R17及びR18、及び、式(6)中のR19、R20、R21及びR22は、具体的には、水素原子、メチル基、プロピル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、iso-ヘキシル基、tert-オクチル基等が挙げられる。
【0055】
式(5)で表される化合物の中で好ましいのは、ハイドロキノン、2−ヒドロキシハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン又は2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノンである。また、式(6)で表される化合物中で好ましいのは、レソルシノール(benzene-1,3-diol)、オルシノール(5-methylbenzene-1,3-diol)である。これらの中では、式(5)で表される化合物の方が式(6)で表される化合物よりも好ましく、式(5)で表される化合物の中でもハイドロキノン(benzene-1,4-diol)、2−ヒドロキシハイドロキノン(benzene-1,2,4-triol)を使用することがより好ましい。また、式(1)で表される化合物として、本発明で使用することが好ましいその他の化合物としてはピロガロール(1,2,3-trihydroxybenzene)がある。
【0056】
上記式(3)〜式(6)で表される化合物の中で、式(3)で表される没食子酸又は没食子酸エステル及び式(5)で表されるハイドロキノン系化合物は、高温高湿環境下における耐久性を特に向上させることができ、式(1)で表される化合物の中でも特に好ましい化合物である。また、式(3)及び式(5)で表される化合物の中では没食子酸が最も好ましい化合物である。
【0057】
式(1)で表される化合物の紫外線硬化型組成物中への添加量としては、紫外線硬化型組成物全体に対して、0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。0.3〜7質量%であることが更に好ましく、1〜5質量部であることが特に好ましい。
【0058】
式(1)で表される化合物を使用した紫外線硬化型組成物による硬化皮膜は、特に、銀又は銀を主成分とする合金を反射膜として使用した光ディスクが、蛍光灯等の室内灯、例えば、中心波長領域が500〜650nmの光源に晒された場合でも、銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜が黒変することを防ぎ、信号の読み取りエラーや反射率の低下等を防止することができる。
【0059】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクは、例えば、第1の基板上に情報読み取り用のレーザー光を反射するための第1の反射膜を備え、更に該第1の反射膜上に上記紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層を備えた構造を有する光ディスクである。そのような光ディスクとしては、例えば、銀又は銀を主成分とする合金の薄膜を光反射層とし、該光反射層上に保護層として紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層を備えたCD−ROM又はCD−R等がある。また、例えば、銀又は銀を主成分とする合金の薄膜からなる光反射層を有する基板を、該光反射層を接着面として紫外線硬化型組成物により他の基板と貼り合わせたDVD−5がある。
【0060】
また、本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクは、前記第1の反射膜上に設けた上記紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる樹脂層上に、更に、情報読み取り用のレーザー光を反射するための第2の反射膜を備えた第2の基板が、前記樹脂層と前記第2の反射膜とが接するように、前記樹脂層上に設けられた構造の光ディスクであっても良い。このような構造の光ディスクとしては、情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜を備えた2枚の光ディスク用基板の少なくとも一方の基板が、その表面に、例えば銀又は銀を主成分とする合金からなる反射膜を有し、2枚の基板の反射膜同士を接着面として前記2枚の光ディスク用基板を貼り合わせたDVD−9、DVD−18、DVD−10等の貼り合わせ型の光ディスクがある。
【0061】
光ディスク用基板としては、光ディスク用基板として通常用いられるものが使用でき、特にポリカーボネート基板を好適に用いることができる。また、情報読み取り用のレーザー光を反射するための反射膜としては、種々の材料を使用することができる。例えば、アルミニウム、金、金合金、銀、銀合金、ケイ素化合物、等が使用可能である。中でも、本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクとしては銀又は銀を主成分とする合金を使用することが好ましい。光ディスクに用いられる「銀を主成分とする合金」としては、例えば、米国特許第6007889号公報に記載されている銀と金の比率(AgAu)が以下の比率である銀合金があげられる。
0.9<x<0.999
0.001≦≦0.10
【0062】
光ディスクのタイプは、好ましくは再生専用型DVDである「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」、書き込み可能型のDVD−R、DVD+R、書き換え可能型のDVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等のDVDであり、特に好ましくは「DVD−9」及び「DVD−18」である。
【0063】
また、本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクはこれらには限定されず、例えば、厚さ約1.1mmの光ディスク用基板の、例えば銀又は銀を主成分とする合金の薄膜上に、該組成物の硬化膜による、厚さ約0.1mm程度の保護層又はカバー層又は光透過層を形成したもの、すなわち、情報読み書き用のレーザー光として青紫色レーザー光に適したタイプのものであっても良いし、DVDと同様の厚さ0.6mmの基板を2枚貼り合わせた構造を有するSACD(スーパーオーディオCD)であっても良い。
【0064】
以下に、「DVD−5」、「DVD−10」、「DVD−9」及び「DVD−18」を製造する場合の例を記載する。本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクの例としてはこれらに限定されるものではない。また、下記製造例で使用する紫外線硬化型組成物は、本発明で使用する上記式(1)で表される化合物を含有した紫外線硬化型組成物を意味する。
【0065】
(DVD−9の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に40〜60nmの金属薄膜(第2の反射膜)が積層された光ディスク用基板(A:第2の基板)1枚と、記録情報を担うピットと称する凹凸の上に10〜30nmの銀又は銀を主成分とする合金の半透明反射膜(半透明反射膜:第1の反射膜)が積層された光ディスク用基板(B:第1の基板)1枚を用意する。
【0066】
なお、前記第2の反射膜としては、例えばアルミニウムを主成分とするものや銀又は銀を主成分とする合金を使用することができる。また、前記光ディスク用基板としては、光ディスク用基板として公知のものが使用できる。例えば、アモルファスポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等が挙げられるが、特にポリカーボネート基板を使用することが好ましい。
【0067】
次いで、紫外線硬化型組成物を前記基板(A:第2の基板)の金属薄膜(第2の反射膜)上に塗布し、更に、半透明反射膜(第1の反射膜)が積層された前記基板(B:第1の基板)を、半透明反射膜(第1の反射膜)の膜面が接着面となるように、金属薄膜(第2の反射膜)面に塗布された紫外線硬化型組成物を介して基板(A:第2の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−9」とする。
【0068】
(DVD−18の製造)
更に、前記のDVD−9を製造した後に、基板(A:第2の基板)上に形成された金属薄膜(第2の反射膜)を基板(B:第1の基板)側に残したまま、基板(A:第2の基板)のみを剥離することにより、基板(B:第1の基板)/半透明反射膜(第1の反射膜)/紫外線硬化型組成物の硬化膜/金属薄膜(第2の反射膜)が順次積層されたディスク中間体を作製する。そのようなディスク中間体を2枚用意する。次いで、この2枚のディスク中間体の金属薄膜(第1の反射膜)を接着面として、それらが対向するように接着することにより「DVD−18」が得られる。
【0069】
(DVD−10の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、銀又は銀を主成分とする合金による40〜60nmの反射膜が積層された光ディスク用第2の基板枚(C1:第1の基板)及び(C2:第2の基板)を用意する。片方の基板(C1:第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)上に紫外線硬化型組成物を塗布し、もう片方の基板(C2:第2の基板)を反射膜(第2の反射膜)の膜面が接着面となるように、基板(C1:第1の基板)の反射膜(第1の反射膜)面に塗布された前記組成物を介して基板(C1:第1の基板)と貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−10」とする。
【0070】
(DVD−5の製造)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に、銀又は銀を主成分とする合金による40〜60nmの第1の反射膜が積層された光ディスク用基板(D:第1の基板)を用意する。別に、ピットを有さない光ディスク用基板(E)を用意する。基板(D:第1の基板)の前記第1の反射膜上に紫外線硬化型組成物を塗布し、該組成物を介して基板(D:第1の基板)と基板(E)を貼り合わせ、この貼り合わせた2枚の基板の片面又は両面から紫外線を照射して、両者を接着させ「DVD−5」とする。
【0071】
紫外線照射にあたっては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、米国特許第5904795号公報記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【実施例】
【0072】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0073】
<合成例−1>
還流冷却管、及び空気導入管、温度計を備えた攪拌機付き反応器に、プラクセルFA2D(ダイセル化学(株)製 2−ヒドロキシエチルアクリレートのεカプロラクトン2モル付加物)を505部、無水フタル酸を217部メトキノン0.5部加えて攪拌乍ら90℃まで昇温する。9時間90℃で反応後、エピクロン850(大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量276g/当量)を276部、トリフェニルホスフィン2部加えて95℃ 5時間反応して、酸価0.8KOHmg/g、粘度(25℃、mPas)132000の<J−1>を得た。GPC測定分子量は、数平均分子量(Mn)1483,重量平均分子量(Mw)2542,分散度(Mw/Mn)は1.71であった。
【0074】
<合成例−2>
還流冷却管、及び空気導入管、温度計を備えた攪拌機付き反応器に、プラクセルFA2D(ダイセル化学(株)製 2−ヒドロキシエチルアクリレートのεカプロラクトン2モル付加物)を502部、リカシッドTH(新日本理化(株)製 テトラヒドロ無水フタル酸)を222部メトキノン0.5部加えて攪拌乍ら90℃まで昇温する。9時間90℃で反応後、エピクロン850(大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/当量)を274部、トリフェニルホスフィン2部加えて95℃ 5時間反応して、酸価0.8KOHmg/g、粘度(25℃、mPas)132000の<J−2>を得た。GPC測定分子量は、数平均分子量(Mn)1483,重量平均分子量(Mw)2542,分散度(Mw/Mn)は1.71であった。
【0075】
<合成例−3>
還流冷却管、及び空気導入管、温度計を備えた攪拌機付き反応器に、プラクセルFA2D(ダイセル化学(株)製 2−ヒドロキシエチルアクリレートのεカプロラクトン2モル付加物)を500部、リカシッドHH(新日本理化(株)製 ヘキサヒドロ無水フタル酸)を224部メトキノン0.2部加えて攪拌乍ら90℃まで昇温する。9時間90℃で反応後、エピクロン850(大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/当量)を273部、トリフェニルホスフィン2部加えて95℃ 5時間反応して酸価0.8KOHmg/g、粘度(25℃、mPas)125000の<J−3>を得た。GPC測定分子量は、数平均分子量(Mn)1587,重量平均分子量(Mw)2787,分散度(Mw/Mn)は1.75であった。
【0076】
<合成例−4>
還流冷却管、及び空気導入管、温度計を備えた攪拌機付き反応器に、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)を310部、リカシッドSA(新日本理化(株)製 無水琥珀酸)を239部メトキノン0.4部加えて攪拌乍ら90℃まで昇温する。9時間90℃で反応後、エピクロン850(大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/当量)を448部、トリフェニルホスフィン2部加えて95℃ 5時間反応して、冷却した。酸価0.8KOHmg/g、半固形の<h−1>を得た。GPC測定分子量は、数平均分子量(Mn)978,重量平均分子量(Mw)1560,分散度(Mw/Mn)は1.59であった。
【0077】
<合成例−5>
還流冷却管、水を分離するデカンター及び空気導入管、温度計を備えた攪拌機付き反応器に、エピクロン1055(大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量478g/当量)を865部、アクリル酸133部、メトキノン0.5部、トリフェニルホスフィン2部加えて95℃5時間反応して、酸価1.0KOHmg/g、融点49℃の<h−2>を得た。GPC測定分子量は、数平均分子量(Mn)1439,重量平均分子量(Mw)2892,分散度(Mw/Mn)は2.01であった。
【0078】
<合成例−6>
還流冷却管、水を分離するデカンター及び空気導入管、温度計を備えた攪拌機付き反応器に、YD−8125(東都化成(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量173g/当量)を346部、とライトエステルHOA−MPL(無水フタル酸と2−アクリロイルオキシエチルフタレートのハーフエステル 共栄社化学(株)製)501.6部、メトキノン0.4部、トリフェニルホスフィン2部加えて98℃5時間反応して、酸価0.9KOHmg/g、半固形の<h−3>を得た。GPC測定分子量は、数平均分子量(Mn)1140,重量平均分子量(Mw)1769,分散度(Mw/Mn)は1.55であった。
【0079】
<紫外線硬化型組成物および光ディスクの製造>
下記表1及び表2に示した組成により配合した各組成物を60℃で3時間加熱、溶解して、各紫外線硬化型組成物を調製した。各組成物の粘度は25℃においてB型粘度計にて測定した。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
表1及び表2中の化合物は以下の通り。
BPE4A:ライトアクリレートBP4EA(共栄社化学(株)製)
EOTMPTA:アロニックスM−350
(東亜合成製 トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート)
M220:アロニックスM−220
(東亞合成(株)製 トリプロピレングリコールジアクリレート)
THFA:大阪有機化学工業(株)製 テトラフルフリルアクリレート
PHE:大阪有機化学工業(株)製 フェノキシエチルアクリレート
カヤラッドR−684:日本化薬(株)製 トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート
TEGDA:テトラエチレングリコールジアクリレート
Irg.184:イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
TPO:ダロキュアTPO(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製
Irg.651:イルガキュア651(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
DBE:N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
【0083】
(DVD−9型ディスクの作製)
記録情報を担うピットと称する凹凸の上に40〜60nmのアルミニウム金属薄膜(反射層)が積層された光ディスク用ポリカーボネート基板1枚と、記録情報を担うピットと称する凹凸の上に15nmの銀を主成分とする合金の半透明膜(半透明反射層)が積層された光ディスク用ポリカーボネート基板1枚を用意した。
次いで、表1及び表2の各紫外線硬化型組成物を前記基板のアルミニウム薄膜上に塗布し、更に、銀を主成分とする合金の半透明膜が積層された前記基板を、半透明膜の膜面が接着面となるように、アルミニウム薄膜面に塗布された紫外線硬化型組成物を介して基板と重ね合わせた。次いでスピンコーターで硬化塗膜の膜厚が約50〜60μmになるよう回転させた。次いで、ウシオ電機株式会社製「クセノンフラッシュ照射装置 SBC−04型」を用い、設定電圧1800Vで、銀合金半透明膜付きの基板側から空気中で10ショット紫外線を照射して、各紫外線硬化型組成物の硬化膜により貼り合わせたDVD−9型光ディスクを作製した。
【0084】
(DVD−9型ディスクの耐久試験及びPIエラーの測定)
エスペック株式会社製「PR−2PK」を使用して、80℃85%RH160時間の高温高湿環境下での曝露(耐久試験)を行った。試験前後のサンプルについて、銀合金半透明膜のついた情報記録層(L0と称す)のPIエラー及びアルミニウム反射膜記録層(L1と称す)のPIエラーを測定し評価した。
【0085】
(PIエラーの測定及び反射率の測定)
PIエラー及び反射率は、Audio Development 社製 「SA−300」により測定した。またPIエラー比(耐久試験後/耐久試験前)を計算により求め、評価した。評価結果を表3及び表4に示した。組成物1〜8のサンプルは、高温高湿環境下での耐久試験においても良好な結果を示した。
また、反射率の測定結果を、耐久試験前後の反射率を耐久試験前−耐久試験後の差によって表した。組成物1〜8のサンプルは差が小さく、高温高湿環境下での耐久試験においても良好な結果を示した。
(外観変化)
また、耐久試験前後の外観変化を目視にて確認した。
○:変化無し、 ×:アルミニウム薄膜又は銀を主成分とする合金の半透明膜の光沢変化やピンホールが発生する等の外観変化、又は黄変、黒変等の変色がある。
【0086】
(耐久試験前後の接着力の測定)
金属反射膜としてアルミニウム薄膜又は銀を主成分とする合金の半透明膜を有するポリカーボネート基板の該金属反射膜の面上に、表1及び表2の各紫外線硬化型組成物をスピンコーターで硬化塗膜の膜厚が約50〜60μmになるよう塗布し、告いでアイグラフィックス社製メタルハライドUVランプ120w、0.5J/cmにて該塗膜を硬化させて、接着力測定用サンプルを作製した。各サンプルについて、エスペック株式会社製「PR−2PK」を使用して、80℃85%RH24時間の高温高湿環境下で耐久試験を行った。その後、サンドペーパー#1500,#280で塗膜を全体が薄く曇る程度に軽く研磨し、水、エタノールで研磨粉を拭き取り、小西ボンド製構造用接着剤WF−731を用い10mm角の治具を研磨した面に取り付けた。テスター産業製プッシュプルゲージ(500Nフルスケール)にて基板に取り付けた治具を引っ張り、その引っ張り強度を測定し、接着力とした。
【0087】
(弾性率の測定方法)
紫外線硬化型組成物を、ガラス板上に硬化塗膜が50〜60μmになるように塗布した後、メタルハライドランプ(コールドミラー付き、ランプ出力120W/cm)を用いて窒素雰囲気中で500mJ/cmで硬化させた。この硬化塗膜の弾性率をティー・エイ・インストルメント(株)社の自動動的粘弾性測定装置で測定し、25℃における動的弾性率E’を弾性率とした。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
<耐光性試験(蛍光灯曝露試験)>
上記と同様な方法で、15nmの厚さの銀を主成分とする合金の半透明反射膜を有するDVD−9サンプルを作製した。各サンプルについて蛍光灯下における曝露試験を実施し、耐光性を評価した。20Wの蛍光灯(三菱電気製、ネオルミスーパーFLR20SW/M(20ワット))3本を蛍光灯の中心間距離が9cmになるように同一平面上に並列させ、中央の蛍光灯から10cmの位置に光ディスクの読み取り面側(銀合金半透明反射膜側)が蛍光灯に対向するように配置して、蛍光灯の曝露試験を行った。72時間の曝露を行い、その前後の各サンプルのPIエラー、反射率を測定し耐光性を評価した。また、黒変の有無については目視で判断した。黒変が発生しなかったサンプルは○、黒変が起きたサンプルは×とした。表5、表6に結果を示す。
【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
オリゴマーh−2の融点は49℃であり、25℃に於ける粘度を測定できないが、h−2をわずか15%含有する比較例4の組成物は粘度が高く、塗工に適する粘度の上限に達した。実施例4、5、7のオリゴマーの含有比率は43%であるが、オリゴマーの使用比率が15%である比較例4の組成物より粘度が低い。オリゴマーJ1〜J3は比較例4の組成物で使用しているオリゴマーh−2に比べ、光ディスク用紫外線硬化型組成物のオリゴマー含有比率を高くする事が出来る。
【0094】
また、硬化塗膜の弾性率(E’/MPa)は、合成例J−1、J−2、J−3のオリゴマーを増やすと低下するが、比較例2及び比較例3の組成物で使用するオリゴマーh−1ではオリゴマーの含有比率を増やすと弾性率が高くなる。更に、表3、表4中の弾性率(E’ / MPa)を比較すると比較例2〜5の組成物の硬化皮膜の弾性率は、実施例1〜7の組成物の硬化皮膜の弾性率に比べ高弾性率であった。特にh−2のオリゴマーを含む比較例4の組成物は高弾性率である事がわかる。以上のことから、塗料の粘度を高くすることがない特殊な構造を有するオリゴマーを多く含有する組成物を使用することにより、優れた接着強度を有し、高温高湿環境下に放置された場合の耐久性に優れ、金属反射膜の外観変化や変色が起こらない光ディスクを得ることができることが判る。
【0095】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、硬化膜の弾性率を高くすることがないオリゴマーを多く使用しているため、硬化後の膜に歪みが生じたとしても応力緩和が働き、その歪みを速やかに解消するので、該組成物を使用した光ディスクは高温高湿環境下に曝された場合でも初期の接着力が低下することがない。特に、オリゴマーJ−1〜J−3を48%若しくは43%含有する組成物は、耐久試験後の接着力が、初期よりもむしろ向上している。これは本発明により見出された特異な現象であり、本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用した光ディスクが優れた耐久性能を有することを証明するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)と二塩基酸無水物(a2)から得られるハーフエステル化合物(A)と、エポキシ樹脂(B)とを反応させて得られるエポキシアクリレート樹脂、及び式(1)
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4及びRはそれぞれ独立的に、(i)水素原子、(ii)ハロゲン原子、(iii)水酸基、(iv)炭素数1〜8のアルコキシル基、(v)カルボキシル基、(vi)式(2)
【化2】

(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される基、或いは(vii)置換基としてカルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシル基又はアルコキシル基を有していても良い炭素数1〜24のアルキル基若しくはアルケニル基を表すが、R1、R2、R3、R4及びRの中の少なくともひとつは水酸基である。)で表される化合物を含有することを特徴とする光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物(a1)が、1モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートに2モルのε−カプロラクトンが付加した化合物である請求項1記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項3】
前記エポキシアクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)が1000〜8000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)が1.3〜2.8である請求項1又は2のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、式(3)
【化3】

(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜20のアルケニル基を表す。)で表される化合物である請求項1、2又は3のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物が、カテコール、3−sec−ブチルカテコール、3−tert−ブチルカテコール、4−sec−ブチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチルカテコール、3−sec−ブチル−4−tert−ブチルカテコール、3−tert−ブチル−5−sec−ブチルカテコール、4−オクチルカテコール、4−ステアリルカテコール、ハイドロキノン、2−ヒドロキシハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン、レソルシノール、オルシノール又はピロガロールである請求項1、2又は3のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。

【公開番号】特開2006−164390(P2006−164390A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354025(P2004−354025)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】