光ディスク装置、ピックアップの駆動方法
【課題】ピックアップの製造上の個体差があっても、高速でシークできる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】
光ディスク装置は、ピックアップ、スレッドモータ、エラー信号生成部、RFアンプ、トラックカウント回路431、サーボ回路44、ドライバ回路45、制御部5を備える。サーボ回路44は、第1速度目標値生成回路441、アンプ444、速度制御回路442、セレクタ449を備える。ピックアップ2が粗シークする時に、セレクタ449は、目標位置に接近するまでは、アンプ444の出力を選択して出力する。また、制御部5は、調整処理52を備える。調整処理の実行時には、目標位置に移動する途中までの間に、スレッドモータ21の移動距離をトラックカウント回路431で調べ、比率R=実移動距離/移動距離の設計値を算出する。目標位置に移動する途中から、アンプ444のゲインを元のゲインに対しR倍に設定する。
【解決手段】
光ディスク装置は、ピックアップ、スレッドモータ、エラー信号生成部、RFアンプ、トラックカウント回路431、サーボ回路44、ドライバ回路45、制御部5を備える。サーボ回路44は、第1速度目標値生成回路441、アンプ444、速度制御回路442、セレクタ449を備える。ピックアップ2が粗シークする時に、セレクタ449は、目標位置に接近するまでは、アンプ444の出力を選択して出力する。また、制御部5は、調整処理52を備える。調整処理の実行時には、目標位置に移動する途中までの間に、スレッドモータ21の移動距離をトラックカウント回路431で調べ、比率R=実移動距離/移動距離の設計値を算出する。目標位置に移動する途中から、アンプ444のゲインを元のゲインに対しR倍に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップをトラバースシーク(粗シーク)させる光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ディスクに記録されたデータを読み取る光学ピックアップを有する光ディスク装置が実用化されている。光ディスクには、円周方向に沿ってトラックが刻まれており、このトラックが半径方向に並んでいる。このピックアップは、レーザ光を光ディスクに照射する発光素子と、レーザ光を光ディスクに集光するレンズと、レンズを移動させてピックアップを所定のトラックに追従させるアクチュエータと、光ディスクに反射した反射光を信号に変換する受光素子を備えている。
【0003】
光ディスク装置は、所定のアドレスのデータを読み取るため、ピックアップのレンズではなく、ピックアップ全体を半径方向に沿って粗くシークさせる。これを、「粗シーク」、または「トラバースシーク」という。
【0004】
その後、光ディスク装置は、アクチュエータにより、ピックアップを所定のトラックに追従させて、ピックアップを目標のアドレスの位置に正確に到達させる。ここで、製造上の個体差により、ピックアップが移動しやすい個体と、ピックアップが移動しにくい個体があることが知られている。迅速なシーク動作のためには、このような個体差の問題を解決する必要がある。
【0005】
特許文献1、2には、シーク時間を短縮する光ディスク装置等が開示されている。特に特許文献1には、予めシークの状態を学習することなくシーク時間を短縮するため、目標トラックまでの本数と、実際に移動したトラック数の比較により、スレッドモータの駆動電圧を調整する旨の記載がある。また、特許文献1には、目標トラックまでの本数と、実際に移動した本数の比較により、速度制御を行っている旨の記載がある。また、実施形態の段落18には、目標速度プロファイルに追従するようにトラバース制御機構を制御する旨の記載がある。
【特許文献1】特開2003−22632公報
【特許文献2】特開昭6−203396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、速度制御のみを行いながらピックアップを移動させる場合のシーク速度には限界があった。即ち、速度制御は、何らかの目標との差に基づいて制御するものである。この目標との差が0になった場合には、駆動力が0になり、目標との差が出て初めて駆動力が付加される。そのタイムラグにより、制御が後手後手に回ってしまう問題があった。したがって、シーク速度を上げることができない。そうすると、例えば、動画ファイルを視聴する場合に、光ディスク装置が再生するまで時間がかかり、ユーザをいらいらさせる虞があった。
【0007】
本発明は、目標位置とは全く無関係な別途のシーク動作をすることなく、ピックアップの製造上の個体差に応じて、粗シーク時の移動速度を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、以下のように構成することができる。
【0009】
(1) ピックアップをトラバース移動させる動力部と、
一定の駆動力以上の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する駆動部と、を備えた光ディスク装置において、
前記駆動部は、
前記一定の駆動力を調整する調整手段と、
前記調整手段により調整した駆動力で、前記動力部を駆動する通常駆動手段と、を備え、
前記調整手段は、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行い、(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記動力部に与える駆動力を調整し、(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する。
【0010】
この構成では、調整手段により、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、個々のピックアップの動き易さに応じて、駆動力を調整することができる。また、通常の駆動時には、毎回、速度制御を行わずに、調整した一定電圧をスレッドモータに印加しているので高速で移動できる。したがって、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、より高速にシークさせることができる。
【0011】
なお、本願でいうシークの概念には、ピックアップの光学系のアクチュエータだけを移動させることを含まないものとする。
【0012】
(2) 前記通常駆動手段および前記調整手段は、目標位置までの距離またはトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力以上の駆動力を与えることに代えて、前記ピップアップの移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える。
【0013】
この構成では、目標位置に近づくと速度制御を行うので、より精度良くピックアップを目標位置に停止することができる。
【0014】
(3) 前記通常駆動手段は、前記一定の駆動力に加え、目標速度との差に基づく駆動力を前記動力部に与える。
【0015】
この構成では、前記一定の駆動力を与えることにより、高速な移動と安定性を確保できる。また、目標との速度差に応じて駆動部に駆動力を与えるから、加速性能を向上できる。さらに、調整手段により調整しても、仮に目標速度との速度差が実際に生じている場合でも、これを是正できる。
【0016】
以下、(1)〜(3)の方法クレームに対応する(4)〜(6)の方法を行ってもよい。
【0017】
(4) 光ディスク装置のピックアップを粗シークによりトラバース移動させる動力部を駆動するピックアップの駆動方法において、
粗シーク時の駆動電圧を調整する調整ステップと、
前記調整手段により調整した一定の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する通常駆動ステップと、を実行するものであって、
前記調整ステップは、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、
前記調整ステップでは、
(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行うテスト駆動ステップと、
(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記ピックアップに与える駆動力を調整する調整ステップと、
(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する調整後移動ステップと、を実行する。
【0018】
(5) 前記通常駆動ステップおよび前記調整ステップでは、目標位置までのトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力を前記動力部に与えることを停止し、ピックアップ2の移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える。
【0019】
(6) 前記通常駆動ステップでは、前記一定の駆動電圧に加え、目標速度V1との差に基づく駆動電圧を付加する駆動力を前記動力部に与える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、調整手段により、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、シーク時の移動状態に応じて、即ち、個々のピックアップの移動のしやすさに応じて、駆動電圧を調整することができる。また、通常の駆動時には、調整した一定の駆動力を動力部に与えているので高速で移動できる。したがって、ピックアップは、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、より高速にシークすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態である光ディスク装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態である光ディスク装置1の主要部の構成を示すブロック図である。この実施形態の光ディスク装置1(以下、単に「装置1」と称する。)はCDプレーヤである。装置1は、ピックアップ2と、スピンドルモータ22と、スレッドモータ21と、エラー信号生成部41と、サーボ回路44と、駆動信号に基づいてサーボ制御を行うドライバ回路45と、再生信号を出力する再生部47と、操作部6と、制御部5とを備えている。
【0023】
ピックアップ2は、発光素子23、コリメータレンズ(不図示)、ハーフミラー24、レンズ25、受光素子27、2軸のアクチュエータを備えている。ピックアップ2は、再生時において、光ディスク100に対して読取パワーのレーザ光を照射し、光ディスク100からの反射光をフォトディテクタで検出する。これにより、光ディスク100に記録されている情報を光学的に読み出す。
【0024】
ピックアップ2の発光素子23は、レーザ光を出力する光源である。受光素子27は、複数の受光素子で形成されており、光ディスク100からの反射光を検出(光電変換)する。
【0025】
ピックアップ2の対物レンズ25は、光ディスク100に対するレーザ光の照射位置を調節する。また、2軸のアクチュエータは、ピアゾ素子または電磁コイルなどで形成する。これらは、対物レンズを光ディスク100に接離する方向、および光ディスク100の半径方向に移動させる。
【0026】
なお、以下では、2軸のアクチュエータのうち、光ディスク100の半径方向に移動させるものを単に「アクチュエータ26」と称する。
【0027】
また、ピックアップ2は、公知の光ディスク装置と同様に、光ディスク100の半径方向に沿って設けられた軸に移動自在に取り付けられており、ピックアップ2に貫通するねじが取り付けられている。
【0028】
スレッドモータ21は、ピックアップ2に貫通しているねじを回転させ、ピックアップ2を光ディスク100の半径方向に移動させる。スレッドモータ21には、正逆いずれについてもパルス電圧の駆動電圧が供給でき、これにより、ピックアップ2に駆動力が与えられる。スピンドルモータ22は、サーボ回路44の駆動により、光ディスク100を回転させる。
【0029】
なお、スレッドモータ21は、本発明の「動力部」に相当する。
【0030】
エラー信号生成部41は、複数の受光素子の出力に基づいてフォーカスエラー信号(以下、「FE信号」と称する。)、トラッキングエラー信号(以下、「TE信号」と称する。)を生成し、これをサーボ回路44に出力する。
【0031】
RFアンプ43は、受光素子の出力の全加算信号であるRF信号を生成し、これを増幅等して再生部47に出力する。RF信号は、光ディスク100に記録されているデータの読取信号である。
【0032】
トラックカウント回路431は、フィルタと、比較器と、アップカウンタを備えている。トラック横断パルスは、シーク時にトラックの数を数えてアドレスをカウントするためのパルスである。フィルタは、RFアンプ43から出力されたRF信号からトラック横断パルスを生成するための前処理を行う。比較器は、RF信号を所定の閾値と比較する。これにより比較器は、RF信号の周期の強度差を2値のパルス(トラック横断パルス)に変換する。アップカウンタは、トラック横断パルスの立ち上がりをカウントする。これにより、シーク時に横断したトラック数をカウントでき、アドレスの移動量を概算できる。
【0033】
サーボ回路44は、エラー信号生成部41が出力したFE信号、TE信号に基づいて、FE信号の値を0(または基準レベル)にするためのフォーカシング駆動信号、およびTE信号の値を0(または基準レベル)にするためのトラッキング駆動信号を生成し、これらをドライバ回路45に出力する。ドライバ回路45は、これらの駆動信号に基づいて、アクチュエータ、スレッドモータ21、スピンドルモータ22に電圧を印加して、これらを駆動する。
【0034】
再生部47は、RF信号を復調等して映像と音声のデータを取り出し、エラー(誤り)訂正し、これをデコードして再生信号を生成し、外部に出力する。
【0035】
制御部5は、例えばマイコンまたはこれを含むシステムICである。制御部5は、ROM50、RAM59、CPUを備える。ROM50には、制御データに加え、粗シーク処理51、調整処理52、通常シーク処理53を実行するサブプログラムが記録されている。RAM59は、制御プログラムなどを展開するワークフィールドである。制御部5は、これらのプログラムをRAM59に呼び出して実行させることにより、所定の動作を行う。
【0036】
制御部5は、制御信号440を出力することにより、所定のアドレスへの移動を指示する。
【0037】
粗シーク処理51では、スレッドモータ21を駆動してトラバースシークさせる処理である。粗シーク処理51では、調整処理52と、通常シーク処理53を含んでいる。調整処理52では、目標位置に移動する途中の位置までの間に、スレッドモータ21の動きやすさを調査して、サーボ回路44にゲイン調整された増幅率450を出力する。また、この途中の位置から、調整した増幅率450に切り換えて、目標位置に到達させる。
【0038】
操作部6は、ユーザから、光ディスク装置1に対する各種の動作を指示する入力を受け付ける。操作部6には、再生キーや特殊再生キーや停止キー等が設けられている。光ディスク装置1に対してユーザが入力したコマンドが制御部10に入力される。また、操作部6は、光ディスク装置1本体に、リモコン信号受信部(不図示)を備える。ユーザは、リモコン信号検出部に対し、外部からリモコン(不図示)を用いて、コマンドを入力する。
【0039】
次に、図2を用いて、本発明の実施形態である光ディスク装置のサーボ回路44、ドライバ回路45の実施例について説明する。図2(A)は、サーボ回路44と、ドライバ回路45のうちのスレッドモータ用駆動回路451(以下、適宜、単に「モータ駆動回路451」と称する。)を表わしている。図2(B)は、サーボ回路44の速度制御回路442の例を表わしている。
【0040】
図2(A)に示すように、サーボ回路44は、第1速度目標値生成回路441(以下、適宜、単に「第1生成回路441」と称する。)、速度制御回路442、アンプ444、セレクタ449を備える。ドライバ回路45は、スレッドモータ用駆動回路451を備える。
【0041】
第1生成回路441は、速度目標値の設計値を生成する。具体的には、一定の基準電圧を生成する。この基準電圧は、標準的なピックアップ2であれば、所定の速度を出すことができる設計値とすることができる。アンプ444は、第1生成回路441が出力する基準電圧を増幅する。アンプ444には、制御部5によりゲイン調整された増幅率450が入力される。また、モータ駆動回路451は、スレッドモータ21を駆動する。
【0042】
速度制御回路442は、目標のトラックに近づいた場合に、位置誤差フィードバックにより所定の位置に近づける。速度制御回路442は、トラックカウント回路431が出力するトラック数に基づいて、ピックアップ2の速度を制御する。
【0043】
セレクタ449は、アンプ444の出力と、速度制御回路442の出力を切り換える。セレクタ449の出力をアンプ444側に設定した場合には、粗シークにより高速でピックアップ2を移動させることができる。セレクタ449の出力を速度制御回路442に設定した場合には、目標位置との差に応じた駆動電圧を出力することができ、粗シークよりも精密に目標位置に近づけることができる。
【0044】
粗シークでピックアップ2を駆動するときは、駆動回路451は、スレッドモータ21に一定の振幅の駆動電圧を印加するので、ピックアップ2は、高速で移動することができる。即ち、速度制御だけを行った場合では、目標速度との差が0になった場合には、駆動力が0になり、目標との差が出て初めて駆動力が付加される。そのタイムラグにより、制御が後手後手に回ってしまうという問題を解消できる。要するに、速度目標値に追従する(後から追いかける)制御よりも、ステップ状の一定電圧を与えた方が、高速で移動できる可能性があるということである。ただし、このフィードフォアードの制御方法では、スレッドモータ21の個体差をフィードバックしない。この個体差の問題については、本実施形態では、制御部5が調整処理52により、ゲイン調整を行っており、ゲイン調整された増幅率450がアンプ444に入力されるので、この問題を解消できる。
【0045】
図2(B)を用いて、速度制御回路442の具体例について説明する。トラックカウント回路431は、前述のとおり、トラック横断パルスを生成し、ピックアップ2のディスク100上の照射位置が横断したトラックの数を数える。位置誤差検出部445は、目標位置までの距離(トラック横断パルスの数)を算出する。第2速度目標値生成回路446(以下、単に「第2生成回路446」と称する。)は、速度目標値を表わす電圧を出力する。第2生成回路446は、電圧を調整する構成を備えている。第2生成回路446は、位置誤差検出部445の出力に基づいて、速度目標値を定める。この速度目標値は、目標位置までの距離に応じて段階的に変えるようにしてもよいし、関数により、連続的に変えるようにしてもよい。
【0046】
速度検出回路447は、トラックカウント回路431に基づいて、移動距離、移動速度を電圧で出力する。位置誤差検出部442は、目標位置との差を電圧で出力する。アンプ448は、第2生成回路446、速度検出回路447の出力の差分を増幅する。
【0047】
図3を用いて、トラックカウント回路431がトラック横断パルスの求める方法の一例について説明する。図3(A)の波形43Aは、シーク時に所定の速度の達したときのRF信号の様子を模式的に表している。RF信号は受光素子27の出力電圧の全加算信号であるから、常に正になる。光ディスクのトラックの溝では反射量が少なくRF信号の出力は0に近く、トラック上では大きく観測される。そこで、トラック→溝→トラックと繰り返すと、43Aのような波形になる。
【0048】
図3(B)は、トラック横断パルスの例を表している。図3(A)の波形をトラックカウント回路431のフィルタを通して、ノイズを除去する。具体的には、帯域を制限して、トラック横断パルスの周波数付近の帯域の信号を通す。そして、トラックカウント回路431の比較器は、閾値432と比較して、大きければHI、小さければLOWを出力する。
これにより、トラックカウント回路431の比較器は、図3(B)の波形43Bに示すようなトラック横断パルスを出力する。
【0049】
図4を用いて、本発明の実施形態である光ディスク装置のサーボ回路により、ピックアップを移動させたときの時間と速度との関係について説明する。図4の横軸は時間[秒]を表わしている。縦軸は、速度をトラック横断パルスの数/秒、即ち[Hz]で表わしている。軌跡71は、増幅率450を基準ゲイン(これをGとする。)とした場合を表わしている。図4の加速期間0〜T0[秒]までは、速度V1まで加速する。その後、スレッドモータ21の機械的な駆動系の摩擦力と、ドライバ回路4が印加する電圧(駆動力)とが釣り合って一定速度になる。
【0050】
その後、時刻T1で、スレッドモータ21への電圧の印加を停止すると、ピックアップ2は、惰性で移動し、速度が低下して最後には停止する。
【0051】
ここで、横軸と、軌跡71で囲まれた部分の面積が、ピックアップ2が実際に移動した距離になる。実装上は、厳密にはトラック横断パルスの数になる(以下、距離というときは同じ)。
【0052】
また、線72は、ゲイン調整された増幅率450をアンプ444に入力した場合の速度の線を表わしている。第1生成回路441には、標準的なスレッドモータ21の機械的駆動系を備えていることを想定してゲインを設定している。生産個体によっては、この駆動系の摩擦力が大きく、ピックアップ2を必ずしも目標の速度で移動させることができない。そこで、以下の比率Rを計算する。
【0053】
R=(時刻0〜時刻T1の間に実際に移動した距離(パルス数))
/(時刻0〜時刻T1の間に移動する距離の設計値(パルス数))
この値Rを用いて、次回の移動時には、速度V2=V1×Rで移動するように速度を調整する。そのために本実施形態では、制御部5がスレッドモータ21に印加する電圧を調整する。具体的には、制御部5は、アンプ444の増幅率450をG×Rに設定する。
【0054】
このように調整することにより、加速期間(0〜T0)は、期間(0〜T01)となり短くなる。また、最高速度も、V1からV2に大きくなる。
【0055】
なお、ピックアップ2に印加する駆動電圧と、移動速度V1、V2は必ずしも比例するものでないが、本実施形態では、ほぼ比例するものとして計算している。また、Rと駆動電圧の関係が分かれば、Rに基づいて、より精度よく駆動電圧の調整値を計算できる。
【0056】
次に、図5を用いて、本発明の実施形態である光ディスク装置の調整処理52について説明する。図5は、調整処理52を行う場合のピックアップ2の速度の変化を表わす。以上の図4では、速度を調整する方法について説明した。しかし、制御部5がこの調整処理を別途行っていたのでは、ピックアップ2は、無駄なシークをすることになる。そこで、本実施形態の調整処理では、制御部5は、所定の目標値が与えられたときに、目標値まで移動する間に、駆動電圧の調整を行う。
【0057】
まず、図5の軌跡73のとおり、制御部5は、時刻0から時刻T1まで、アンプ444のゲインを1にして、サーボ回路44、駆動回路455にピックアップ2を駆動させる。T1まで移動した時点で、シーク速度算出部442は、時刻0から時刻T1までに移動したトラック横断パルスの数を数える。
【0058】
ここで、第1生成回路441で印加する電圧は、暫定的な設計値である。具体的には、この電圧を「標準的なスレッドモータ21の駆動系であれば、装置1に必要なピックアップ2の速度で移動できる電圧」に設定することができる。また、時間T1を、「その速度V1で移動した場合に、標準的なスレッドモータ21の駆動系であれば、ピックアップ2が所定距離L1を移動できる時間」に設定できる。この距離L1は、目標までの距離L1までに到達しない距離とする。目標までの距離を大きく超えてしまうと、後戻りする必要があるからである。
【0059】
この調整処理52によれば、仮にピックアップ2の速度が設計値より遅い場合には、速度V1をより高速な速度V2に調整することができる。したがって、目標位置に到達する前に速度を調整したほうが好ましい。また、逆に、仮にピックアップ2の速度が設計値の速い場合には、目標位置に到達する前に、速度を低減するから、行き過ぎないよう是正することができる。
【0060】
なお、距離L1は、一定にする必要はなく、目標位置を超えないように、目標位置に応じて変動するのが望ましい。例えば、目標までの距離L0の0.8倍とすることができる。
【0061】
時刻T1の後、線74のとおり、サーボ回路44は、ピックアップ2の速度をV2=V1×R2に調整する。ここで、R2は、
R2=(時刻0〜時刻T1の間に実際に移動した距離(パルス数))
/(時刻0〜時刻T1の間に移動する距離の設計値L1(パルス数))
とすることができる。このように調整するために、スレッドモータ21の駆動力を調整する。具体的には、制御部5は、アンプ444の増幅率450をG×R2に設定して、スレッドモータ21の駆動電圧を調整する。
【0062】
なお、ここでは、ピックアップ2の速度とこの印加電圧は、比例するものとして計算する。また、R2と駆動電圧の関係が分かれば、R2に基づいて、より精度よく駆動電圧の調整値を計算することも可能である。
【0063】
また、軌跡74で設定する時間(T2−T1)は、速度V2で、目標位置までの残りの距離を移動できる時間とする。この時間(T2−T1)は、標準的なスレッドモータ21を基準とした移動時間の設計値とすればよい。以上のとおり速度を調整しているからである。ただし、この時間(T2−T1)の計算に当たっては、時刻T2以降に惰性で移動する距離を計算に入れるのが望ましい。
【0064】
次に、図6、図7を用いて、調整処理52のフローについて説明する。図6のフローは、ST11〜ST16と、ST21〜ST23と、ST3に大別できる。ST11〜ST16では、図5の軌跡73に沿って移動するための動作を行う。ST21〜ST23では、図5の軌跡74に沿って移動するための動作を行う。ST3は、目標位置に近づいた所定範囲内になると作動する割り込み処理のサブフローである。ST3では、より正確に目標位置へ到達するため、速度制御を行う。なお、ST3の詳細は、図7に示している。
【0065】
図6のST11で、目標値が与えられた場合に、暫定の印加電圧V1(即ちこれを決定するためのアンプ444のゲイン)と、図5で説明した移動時間T1を決定する。
ST12で、制御部5は、速度制御をオフにする。具体的には、セレクタ445をアンプ444の出力に切り換える。
ST13で、サーボ回路44は、電圧V1を出力して、ピックアップ2の移動を開始させる。ST14で、ピックアップ2の移動時間中(時刻0〜時刻T1)、トラックカウント回路431は、トラック横断パルスをカウントし、位置検出部442に出力する。これにより、移動距離を測定することができる。速度V1での移動は、時刻T1で終了する。
その間、ST3で、割り込み処理を受け付ける。
【0066】
時刻T1の後、装置1は、制御部5の制御の下で、ST21以下のフローを実行する。
ST15では、位置検出部442は、着地地点でのトラック横断パルスを出力する。
ST16では、制御部5は、調整電圧V1を決定する。実装上は、制御部5がアンプ444のゲインを決定する。
ST21で、速度制御をオフにした状態で(仮に速度制御がオンであれば解除する。)、電圧V2をピックアップ2に印加して、その移動を開始する。その後、回路431は、トラック横断パルスを出力する。ピックアップ2の移動を、前述した時間(T2−T1)の間、継続する。この間、ST3の割り込み処理を受け付ける。
【0067】
図7は、図6のST3の割り込み処理を表わしている。制御部5は、ピックアップ2の移動中に、定期的にST31、ST32の判断を行っている。この判断に基づき、ST33等の割り込み処理を行う。ST31では、目標位置と現在位置との距離[パルス数]が、所定距離P1[パルス数]より小さいか否か判断する。所定距離より小さい場合には(ST31のYES)、目標位置に到達したものとみなして、調整処理52を終了する。
【0068】
ST32では、目標位置と現在位置との距離[パルス数]が、所定距離P2(P2>P1)[パルス数]より小さいか否か判断する。この距離が、所定距離より小さい場合には(ST32のYES)、ST33に移動する。ここで、P2を、例えば300パルスとすることができる。
【0069】
ST31、ST32の判断がいずれも否定であれば、即ち、以上のST31、ST32のYESに該当しない場合には(ST31のNO,ST32のNO)、元のフローに戻る(RETURN)。
【0070】
ST33で、速度制御をオンにする。即ち、セレクタ449の出力をアンプ445側に切り換える。これにより、サーボ回路44は、速度誤差に基づいて、より正確に目標位置に移動させる。また、これと同時に第1生成回路441の電圧の出力を停止してもよい。ST32の後、ST34で、ST31と同じく、目標位置と現在位置との距離[パルス数](L3とする。)が、所定距離P1[パルス数]より小さいか否か判断する。L3が所定距離より大きい場合には、(ST34のNO)である限り、この速度制御を継続する。L3が所定距離より小さい場合には(ST34のYES)、目標位置に到達したものとみなして、調整処理52を終了する。
【0071】
以上図5〜図7で示した調整処理52を、定期的に行うのが望ましい。例えば、光ディスク装置1の起動時などに行ってもよい。制御部5が一旦、調整処理52を行なった後は、通常シーク処理53を行う。即ち、調整した電圧をスレッドモータ21に印加して移動させる。
【0072】
以上のとおり、調整処理52によれば、以下の効果が生じる。
(A)制御部5がアンプ444のゲインを調整した後は、ピックアップ2の動きやすさに応じて調整した速度で移動できる。
(B)また、軌跡73、74にしたがって速度を変化させると、スレッドモータ21の動きやすさについて、別途の試験をすることなく速度を調整できる。
(C)また、この調整後は、スレッドモータ21に一定の電圧が印加されるから、高速で移動できる。即ち、速度制御だけを行う構成のように、目標速度との速度誤差が0になっても、サーボ回路44は、電圧の印加が停止するのではないから、より高速に移動することができる。
(D)また、サーボ回路44の作用により、ドライバ回路45が常時一定以上の電圧をスレッドモータ21に印加するから、ピックアップ2の速度が安定する。したがって、トラック横断パルスのパルス幅が均一になり、トラックカウント回路431は、これをより正確に数えることができる。
【0073】
なお、以上の(C)の効果は、一定の駆動力の成分をスレッドモータ21に与えてれば生じ、そのような構成でもよい。例えば、後述する第2実施形態のように、一定の駆動力の他に別の駆動力の成分を与えていても、この効果は失わない。
【0074】
次に、図8を用いて、粗シーク処理51に含まれる通常シーク処理53について説明する。
ST41で、ピックアップ2を目標位置へ移動するまでの時間T3を決定する。アンプ444のゲインを調整しているので、時間T3は、図6のST11と同様、標準的なスレッドモータ21を基準とする設計値とすればよい。
ST42で、サーボ回路44は、速度制御をオフにする。具体的には、すでにオフとなっていれば、その状態を継続する。
ST43で、電圧V2をスレッドモータ21に印加することを開始する。ST44で、ピックアップ2の移動中に、トラックカウント回路431は、トラック横断パルスを測定する。この間に、図7で説明した割り込み処理(ST3)を行う。
【0075】
次に、図9を用いて、第1の実施形態の光ディスク装置の応用にかかる第2の実施形態の光ディスク装置(以下、「光ディスク装置1A」、または単に「装置1A」と称する。)について説明する。図9は、光ディスク装置1Aのサーボ回路44Aを表わしている。光ディスク装置1Aは、図1の構成と略同じであるが、サーボ回路440(サーボ回路44に相当する。)、および制御方法が一部異なる。以下で説明する相違点以外は、第1の実施形態の装置1と同じ構成なので以上の説明を準用する。
【0076】
第2の実施形態の光ディスク装置のサーボ回路440は、セレクタ449の代わりに、加算器8、電子スイッチ81を備える。加算器8は、アンプ444の出力と、速度制御回路442A(第1実施形態の速度制御回路442に相当する。)の出力を合計する。速度制御回路442Aは、速度制御回路442の出力に電子スイッチ81を設けたものである。制御部5は、電子スイッチ81を制御する。
【0077】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、図6、図7で示した第1実施形態の「調整処理52」に対応する調整処理を行う。また、第1実施形態と同様、図8で示した第1実施形態の通常シーク処理に相当する処理を行う。以下、この実施形態では、これらの処理をそれぞれ、単に「調整処理52A」、「通常シーク処理53A」と称する。
【0078】
次に、図9に加え、図10を参照して、第2実施形態の通常シーク処理53Aについて説明する。図10は、この処理におけるピックアップ2の速度変化である。この実施形態では、粗シーク時においても、速度制御回路442Aが電圧の出力を行う。また、セレクタ449が回路442Aの出力を加算する。
【0079】
図9の速度制御回路442Aに示すように、第2生成回路446が出力する目標速度と、速度検出回路447が出力する実際の速度との間に誤差がある場合には、速度誤差に応じた電圧が、アンプ444の出力に付加される。これにより、特に動きが遅い加速期間では、目標速度との差が大きくなるから、目標速度に到達したときよりも大きな電圧がスレッドモータ21に印加される。これにより、加速期間を短縮できる。
【0080】
図10を用いて、より具体的に加速時間について説明する。図10(A)に示すように、加速時間は、第1実施形態の加速期間(0〜T01)よりも短い加速期間(0〜T02)となる。その後、目標速度に到達すれば、速度誤差が0となり、速度制御回路442Aの出力は0となる。その後は、スレッドモータ21の機械的な駆動系の摩擦力と、スレッドモータ21に与える駆動力が釣り合い、第1実施形態と同様、速度が目標速度V2となる。
【0081】
図10(B)は、仮に、調整処理52Aに用いた調整のパラメータが適切でない場合を示している。ここで、調整処理後の実際の速度をV2とする。仮にこのようなことが生じても、図10(B)に示すように、速度誤差に応じて、スレッドモータ21に駆動力を与えることができる。これにより、軌跡76に示すように加速後の速度を目標の速度V3に到達させることができる。
【0082】
次に、図11、図12を用いて第2実施形態の調整処理52Aについて説明する。ST120、ST210以外は、図6、図7で示した処理と同じである。そこで、以上の説明を準用する。この処理は、第1実施形態と実質的に同様であり、第1の実施形態の調整っ処理を本実施形態に適合させるため、図6、図7の速度制御に関するST12、ST21の処理を変更する。
【0083】
ここで、第1の実施形態のST12、ST21は、スレッドモータ21の機械的な駆動系の動きやすさを調べるために、アンプ444の出力だけを調査するものである。したがって、第2実施形態でも、図6のST12について速度制御をオフにするため、スイッチ81をオフにして、アンプ448の出力を停止する。
【0084】
第1実施形態のST21は、実質的に通常シーク処理53Aと変わらない。したがって、これを第2の実施形態へ適用したST210では、速度制御回路442Aの出力をオンにするのが好ましい。即ち、スイッチ81をオンにする。また、粗シーク時の目標速度を第2生成回路446に設定する。
【0085】
ST30は、第1実施形態の図7のST3を第2の実施形態へ適用した処理である。ここで、ST3は、目標値に近接した場合の処理である。したがって、これを第2の実施形態へ適用したST30では、第1生成回路441の出力を0にするか、アンプ444の出力にスイッチ81と同様のスイッチ(不図示)を設けて、アンプ444の出力を停止する。また、スイッチ81をオンにしたまま維持する。
【0086】
次に図13のフロー図を用いて、第2実施形態の光ディスク装置の通常シーク処理53Aについて説明する。この処理は、ST420のみが第1実施形態の図9と異なり、ほかの処理は同じであるので、以上の説明を準用する。図13では、ST42の代わりに、スイッチ81をオンにする処理を行う。または、スイッチ81がすでにオンになっていれば、それを維持して、アンプ448の出力を加算器8で加算する。ST3の適用については、図13で説明した調整処理52Aを実行する。
【0087】
次に、図14を用いて、第1実施形態のサーボ回路44を変形した実施例について説明する。この実施例のサーボ回路44Bは、速度制御回路442の代わりに、第2生成回路446がない速度制御回路442Aを備えている。また、第3速度目標値生成回路443(以下、「第3生成回路443」と称する。)が第1生成回路441、第2生成回路446を兼ねている。位置誤差検出部445の出力、即ち、目標位置と現在位置との差の値(以下では、これをDと称する。)がL2以上であれば(図7の割り込み処理のST32のNO)、第3生成回路443は、その値を最高速度が出るような電圧値に設定する。DがL2未満であれば(割り込み処理のST32のYES)、ST33で段階的(または連続的に)に速度目標値を小さくする。即ち、第3生成回路443に設定する電圧を小さくする。これにより、目標位置までの距離がL2未満であれば、速度を減少させることができる。
【0088】
ここで、前述のとおり、第3生成回路441が第1生成回路441、第2生成回路446を兼ねる。したがって、第2生成回路446の出力に相当する第3生成回路441の出力は、速度検出回路447の出力と比較できる電圧値になっている必要がある。また、アンプ444のゲインも調整する必要がある。
【0089】
なお、図14の実施例は、容易に第2実施形態へ応用できる。図14のセレクタ449の代わりに加算器8を適用する。そして、図11〜図13のフローはそのまま用いることができる。サーボ回路44の処理については、以上の図14の説明を準用する。
【0090】
以上の実施形態について補足する。
【0091】
以上の実施形態で、「常時」電圧を印加すると説明したが、駆動回路451で、PWM制御等のパルス制御を行っている場合や、スレッドモータ21をACモータとする場合には、以上の説明を「一定の駆動力を与えている」と置き換えることができる。
【0092】
以上の図1の説明では、機能ごとに分離したブロックで説明したが、実装上では、これらの機能のうち、いずれかが複数の機能が一体となったシステムICで構成してもよいし、一つのブロックを複数に分離して構成してもよい。各ブロックの役割分担について、実装上では、あるブロックの一部の機能を他のブロックの一部の機能としてもよい。
【0093】
以上で示した構成について、ピックアップ2を半径方向に移動させる方法は、スレッドモータ21に限らず、移動できればよい。例えば、リニアモータで駆動するものでもよい。
【0094】
以上の実施形態では、第1速度目標値生成回路441、アンプ444を用いて、サーボ回路44から電圧を印加して、駆動力をスレッドモータ21に与え、アンプ444で駆動力を調整した。しかし、スレッドモータ21を駆動するための一定の駆動力を与えることができる駆動部であって、その駆動力を調整できるようにしていれば、サーボ回路44、ドライバ回路45に限らず、どのような構成でもよいし、各ブロックの役割分担もどのようなものでもよい。
【0095】
以上の説明で、サーボ回路44、44Aが電圧を出力し、ドライバ回路45がスレッドモータ21に駆動電圧を印加することは、本発明の「動力部」を「駆動」することに該当する。
【0096】
また、第1実施形態では、粗シークを行う場合には、速度制御回路442は必ずしも必要でない。速度制御をせず、そのままスレッドモータ21を惰性で停止するようにしてもよい。なお、スレッドモータ21の停止の後は、アクチュエータ26によりトラッキングサーボ制御して、所定のトラックに到達させるようにしてもよい。
【0097】
ピックアップ2の速度を測る別の方法としては、距測センサにより距離測定を行う方法、トラックオンしてアドレスを測る方法、回転数を検出して測る方法などでも可能である。これらの穂方法を用いる場合には、トラックカウント回路431の代わりに、これらの方法を具現化する構成を備えるようにする。
【0098】
速度制御回路442の構成のような速度フィードバックでなくても、位置との誤差に応じた駆動力が出力できるような位置誤差フィードバックでもよい。
【0099】
以上の説明で、処理のフローで大小比較をしている説明の中に、「≦」、「<」(以上、以下、未満、越えている)という意味の説明があるとすれば、相互に読み替えて適用してもよい。即ち、閾値により判断していればよく、「≦」か「<」かいずれを適用すべきかについて技術的な意味はない。
【0100】
また、以上の説明では、スレッドモータ21が動きにくい個体を中心に説明したが、第1実施形態の装置1によれば、動きやすい個体についても、速度を減らす方向へ調整することができるから、目標位置から行き過ぎてしまうことを防止できる。第2実施形態の装置1Aについても、速度の行き過ぎがあれば、サーボ回路44Aは、目標の速度になるよう、アンプ444の出力から減算する。したがって、動きやすい個体については、目標位置から行き過ぎてしまう作用が生じる。図14の構成も同様である。
【0101】
ピックアップ2の速度を測る別の方法としては、距測センサにより距離測定を行う方法、トラックオンしてアドレスを測る方法、回転数を検出して測る方法などでも可能である。これらの方法を用いる場合には、トラックカウント回路431の代わりに、これらの方法を具現化する構成を備えるようにする。
【0102】
以上では、CDプレーヤを用いて説明したが、DVD,ブルーレイディスク等の光ディスクにも応用できる。また、以上の実施形態では、全加算信号のRF信号を用いて、トラック横断パルスを生成したが、ディスクの種類によっては、トラッキングエラー信号の強弱に基づいて生成してもよい。この場合、図3の閾値432は0となる。また、この場合には、図1において、光ディスク装置1は、トラックカウント回路431の代わりに、エラー信号生成部41とサーボ回路44の間にトラックカウント回路を備えるようにする。
【0103】
速度制御回路442の構成のような速度フィードバックでなくても、位置との誤差に応じた駆動力が出力できるような位置誤差フィードバックでもよい。
【0104】
以上の説明で、大小比較において「≦」、「<」(以上、以下、未満、越えている)という意味の説明があるとすれば、「≦」と「<」を相互に読み替えて適用してもよい。即ち、閾値により判断していればよく、「≦」か「<」かいずれを適用すべきかについて技術的な意味はない。
【0105】
また、以上の説明では、スレッドモータ21が動きにくい個体を中心に説明したが、第1実施形態の装置1によれば、動きやすい個体についても、速度を減らす方向へ調整することができるから、目標位置から行き過ぎてしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0106】
1−光ディスク装置、 2−ピックアップ、
21−スレッドモータ、 22−スピンドルモータ、
23−発光素子、 24−ハーフミラー、 25−レンズ、
251、252−焦点、 26−アクチュエータ、
27−受光素子、 41−エラー信号生成部、 43−RFアンプ、43A〜43F−波形、
431−トラックカウント回路、 432−閾値、 44−サーボ回路、
441−第1速度目標値生成回路、 442−速度制御回路、
444−アンプ、 445−位置誤差検出部、 446−第2速度目標値生成回路、
447−速度検出回路、 449−セレクタ、
45−ドライバ回路、 450−ゲイン調整された増幅率、
451−スレッドモータ用駆動回路、 452−アクチュエータ用駆動回路、
47−再生部、 5−制御部、 50−ROM、 51−粗シーク処理、
52−調整処理、 54−タイマ、 55−トラック数カウント処理、
59−RAM、 6−操作部、 71〜74−軌跡、
8−加算器、 81−電子スイッチ、
V1−速度、 V2−速度、 100−光ディスク
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施形態の光ディスク装置の主要部の構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態の光ディスク装置のサーボ回路、駆動回路の実施例
【図3】トラック横断パルスの求め方の例を表す図
【図4】第1実施形態の光ディスク装置のサーボ回路によりピックアップを移動させたときの時間と速度との関係を表す図
【図5】第1実施形態の光ディスク装置の調整処理におけるピックアップの速度変化を表わす図
【図6】第1実施形態の光ディスク装置の調整処理を表わすフロー図
【図7】第1実施形態の光ディスク装置の割り込み処理を表わすフロー図
【図8】第1実施形態の光ディスク装置のサーボ回路のブロック図
【図9】第1実施形態の光ディスク装置の通常シーク処理のピックアップの速度変化を表わす図
【図10】第2実施形態の光ディスク装置のサーボ回路によりピックアップを移動させたときの時間と速度との関係を表す図
【図11】第2実施形態の光ディスク装置の調整処理を表わすフロー図
【図12】第2実施形態の光ディスク装置の割り込み処理を表わすフロー図
【図13】第2実施形態の光ディスク装置の通常シーク処理のピックアップの速度変化を表わす図
【図14】第2実施形態の光ディスク装置の図8とは異なるサーボ回路の例
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップをトラバースシーク(粗シーク)させる光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ディスクに記録されたデータを読み取る光学ピックアップを有する光ディスク装置が実用化されている。光ディスクには、円周方向に沿ってトラックが刻まれており、このトラックが半径方向に並んでいる。このピックアップは、レーザ光を光ディスクに照射する発光素子と、レーザ光を光ディスクに集光するレンズと、レンズを移動させてピックアップを所定のトラックに追従させるアクチュエータと、光ディスクに反射した反射光を信号に変換する受光素子を備えている。
【0003】
光ディスク装置は、所定のアドレスのデータを読み取るため、ピックアップのレンズではなく、ピックアップ全体を半径方向に沿って粗くシークさせる。これを、「粗シーク」、または「トラバースシーク」という。
【0004】
その後、光ディスク装置は、アクチュエータにより、ピックアップを所定のトラックに追従させて、ピックアップを目標のアドレスの位置に正確に到達させる。ここで、製造上の個体差により、ピックアップが移動しやすい個体と、ピックアップが移動しにくい個体があることが知られている。迅速なシーク動作のためには、このような個体差の問題を解決する必要がある。
【0005】
特許文献1、2には、シーク時間を短縮する光ディスク装置等が開示されている。特に特許文献1には、予めシークの状態を学習することなくシーク時間を短縮するため、目標トラックまでの本数と、実際に移動したトラック数の比較により、スレッドモータの駆動電圧を調整する旨の記載がある。また、特許文献1には、目標トラックまでの本数と、実際に移動した本数の比較により、速度制御を行っている旨の記載がある。また、実施形態の段落18には、目標速度プロファイルに追従するようにトラバース制御機構を制御する旨の記載がある。
【特許文献1】特開2003−22632公報
【特許文献2】特開昭6−203396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、速度制御のみを行いながらピックアップを移動させる場合のシーク速度には限界があった。即ち、速度制御は、何らかの目標との差に基づいて制御するものである。この目標との差が0になった場合には、駆動力が0になり、目標との差が出て初めて駆動力が付加される。そのタイムラグにより、制御が後手後手に回ってしまう問題があった。したがって、シーク速度を上げることができない。そうすると、例えば、動画ファイルを視聴する場合に、光ディスク装置が再生するまで時間がかかり、ユーザをいらいらさせる虞があった。
【0007】
本発明は、目標位置とは全く無関係な別途のシーク動作をすることなく、ピックアップの製造上の個体差に応じて、粗シーク時の移動速度を高速化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、以下のように構成することができる。
【0009】
(1) ピックアップをトラバース移動させる動力部と、
一定の駆動力以上の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する駆動部と、を備えた光ディスク装置において、
前記駆動部は、
前記一定の駆動力を調整する調整手段と、
前記調整手段により調整した駆動力で、前記動力部を駆動する通常駆動手段と、を備え、
前記調整手段は、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行い、(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記動力部に与える駆動力を調整し、(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する。
【0010】
この構成では、調整手段により、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、個々のピックアップの動き易さに応じて、駆動力を調整することができる。また、通常の駆動時には、毎回、速度制御を行わずに、調整した一定電圧をスレッドモータに印加しているので高速で移動できる。したがって、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、より高速にシークさせることができる。
【0011】
なお、本願でいうシークの概念には、ピックアップの光学系のアクチュエータだけを移動させることを含まないものとする。
【0012】
(2) 前記通常駆動手段および前記調整手段は、目標位置までの距離またはトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力以上の駆動力を与えることに代えて、前記ピップアップの移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える。
【0013】
この構成では、目標位置に近づくと速度制御を行うので、より精度良くピックアップを目標位置に停止することができる。
【0014】
(3) 前記通常駆動手段は、前記一定の駆動力に加え、目標速度との差に基づく駆動力を前記動力部に与える。
【0015】
この構成では、前記一定の駆動力を与えることにより、高速な移動と安定性を確保できる。また、目標との速度差に応じて駆動部に駆動力を与えるから、加速性能を向上できる。さらに、調整手段により調整しても、仮に目標速度との速度差が実際に生じている場合でも、これを是正できる。
【0016】
以下、(1)〜(3)の方法クレームに対応する(4)〜(6)の方法を行ってもよい。
【0017】
(4) 光ディスク装置のピックアップを粗シークによりトラバース移動させる動力部を駆動するピックアップの駆動方法において、
粗シーク時の駆動電圧を調整する調整ステップと、
前記調整手段により調整した一定の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する通常駆動ステップと、を実行するものであって、
前記調整ステップは、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、
前記調整ステップでは、
(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行うテスト駆動ステップと、
(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記ピックアップに与える駆動力を調整する調整ステップと、
(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する調整後移動ステップと、を実行する。
【0018】
(5) 前記通常駆動ステップおよび前記調整ステップでは、目標位置までのトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力を前記動力部に与えることを停止し、ピックアップ2の移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える。
【0019】
(6) 前記通常駆動ステップでは、前記一定の駆動電圧に加え、目標速度V1との差に基づく駆動電圧を付加する駆動力を前記動力部に与える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、調整手段により、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、シーク時の移動状態に応じて、即ち、個々のピックアップの移動のしやすさに応じて、駆動電圧を調整することができる。また、通常の駆動時には、調整した一定の駆動力を動力部に与えているので高速で移動できる。したがって、ピックアップは、予め定めた別途のシーク動作をすることなく、より高速にシークすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態である光ディスク装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態である光ディスク装置1の主要部の構成を示すブロック図である。この実施形態の光ディスク装置1(以下、単に「装置1」と称する。)はCDプレーヤである。装置1は、ピックアップ2と、スピンドルモータ22と、スレッドモータ21と、エラー信号生成部41と、サーボ回路44と、駆動信号に基づいてサーボ制御を行うドライバ回路45と、再生信号を出力する再生部47と、操作部6と、制御部5とを備えている。
【0023】
ピックアップ2は、発光素子23、コリメータレンズ(不図示)、ハーフミラー24、レンズ25、受光素子27、2軸のアクチュエータを備えている。ピックアップ2は、再生時において、光ディスク100に対して読取パワーのレーザ光を照射し、光ディスク100からの反射光をフォトディテクタで検出する。これにより、光ディスク100に記録されている情報を光学的に読み出す。
【0024】
ピックアップ2の発光素子23は、レーザ光を出力する光源である。受光素子27は、複数の受光素子で形成されており、光ディスク100からの反射光を検出(光電変換)する。
【0025】
ピックアップ2の対物レンズ25は、光ディスク100に対するレーザ光の照射位置を調節する。また、2軸のアクチュエータは、ピアゾ素子または電磁コイルなどで形成する。これらは、対物レンズを光ディスク100に接離する方向、および光ディスク100の半径方向に移動させる。
【0026】
なお、以下では、2軸のアクチュエータのうち、光ディスク100の半径方向に移動させるものを単に「アクチュエータ26」と称する。
【0027】
また、ピックアップ2は、公知の光ディスク装置と同様に、光ディスク100の半径方向に沿って設けられた軸に移動自在に取り付けられており、ピックアップ2に貫通するねじが取り付けられている。
【0028】
スレッドモータ21は、ピックアップ2に貫通しているねじを回転させ、ピックアップ2を光ディスク100の半径方向に移動させる。スレッドモータ21には、正逆いずれについてもパルス電圧の駆動電圧が供給でき、これにより、ピックアップ2に駆動力が与えられる。スピンドルモータ22は、サーボ回路44の駆動により、光ディスク100を回転させる。
【0029】
なお、スレッドモータ21は、本発明の「動力部」に相当する。
【0030】
エラー信号生成部41は、複数の受光素子の出力に基づいてフォーカスエラー信号(以下、「FE信号」と称する。)、トラッキングエラー信号(以下、「TE信号」と称する。)を生成し、これをサーボ回路44に出力する。
【0031】
RFアンプ43は、受光素子の出力の全加算信号であるRF信号を生成し、これを増幅等して再生部47に出力する。RF信号は、光ディスク100に記録されているデータの読取信号である。
【0032】
トラックカウント回路431は、フィルタと、比較器と、アップカウンタを備えている。トラック横断パルスは、シーク時にトラックの数を数えてアドレスをカウントするためのパルスである。フィルタは、RFアンプ43から出力されたRF信号からトラック横断パルスを生成するための前処理を行う。比較器は、RF信号を所定の閾値と比較する。これにより比較器は、RF信号の周期の強度差を2値のパルス(トラック横断パルス)に変換する。アップカウンタは、トラック横断パルスの立ち上がりをカウントする。これにより、シーク時に横断したトラック数をカウントでき、アドレスの移動量を概算できる。
【0033】
サーボ回路44は、エラー信号生成部41が出力したFE信号、TE信号に基づいて、FE信号の値を0(または基準レベル)にするためのフォーカシング駆動信号、およびTE信号の値を0(または基準レベル)にするためのトラッキング駆動信号を生成し、これらをドライバ回路45に出力する。ドライバ回路45は、これらの駆動信号に基づいて、アクチュエータ、スレッドモータ21、スピンドルモータ22に電圧を印加して、これらを駆動する。
【0034】
再生部47は、RF信号を復調等して映像と音声のデータを取り出し、エラー(誤り)訂正し、これをデコードして再生信号を生成し、外部に出力する。
【0035】
制御部5は、例えばマイコンまたはこれを含むシステムICである。制御部5は、ROM50、RAM59、CPUを備える。ROM50には、制御データに加え、粗シーク処理51、調整処理52、通常シーク処理53を実行するサブプログラムが記録されている。RAM59は、制御プログラムなどを展開するワークフィールドである。制御部5は、これらのプログラムをRAM59に呼び出して実行させることにより、所定の動作を行う。
【0036】
制御部5は、制御信号440を出力することにより、所定のアドレスへの移動を指示する。
【0037】
粗シーク処理51では、スレッドモータ21を駆動してトラバースシークさせる処理である。粗シーク処理51では、調整処理52と、通常シーク処理53を含んでいる。調整処理52では、目標位置に移動する途中の位置までの間に、スレッドモータ21の動きやすさを調査して、サーボ回路44にゲイン調整された増幅率450を出力する。また、この途中の位置から、調整した増幅率450に切り換えて、目標位置に到達させる。
【0038】
操作部6は、ユーザから、光ディスク装置1に対する各種の動作を指示する入力を受け付ける。操作部6には、再生キーや特殊再生キーや停止キー等が設けられている。光ディスク装置1に対してユーザが入力したコマンドが制御部10に入力される。また、操作部6は、光ディスク装置1本体に、リモコン信号受信部(不図示)を備える。ユーザは、リモコン信号検出部に対し、外部からリモコン(不図示)を用いて、コマンドを入力する。
【0039】
次に、図2を用いて、本発明の実施形態である光ディスク装置のサーボ回路44、ドライバ回路45の実施例について説明する。図2(A)は、サーボ回路44と、ドライバ回路45のうちのスレッドモータ用駆動回路451(以下、適宜、単に「モータ駆動回路451」と称する。)を表わしている。図2(B)は、サーボ回路44の速度制御回路442の例を表わしている。
【0040】
図2(A)に示すように、サーボ回路44は、第1速度目標値生成回路441(以下、適宜、単に「第1生成回路441」と称する。)、速度制御回路442、アンプ444、セレクタ449を備える。ドライバ回路45は、スレッドモータ用駆動回路451を備える。
【0041】
第1生成回路441は、速度目標値の設計値を生成する。具体的には、一定の基準電圧を生成する。この基準電圧は、標準的なピックアップ2であれば、所定の速度を出すことができる設計値とすることができる。アンプ444は、第1生成回路441が出力する基準電圧を増幅する。アンプ444には、制御部5によりゲイン調整された増幅率450が入力される。また、モータ駆動回路451は、スレッドモータ21を駆動する。
【0042】
速度制御回路442は、目標のトラックに近づいた場合に、位置誤差フィードバックにより所定の位置に近づける。速度制御回路442は、トラックカウント回路431が出力するトラック数に基づいて、ピックアップ2の速度を制御する。
【0043】
セレクタ449は、アンプ444の出力と、速度制御回路442の出力を切り換える。セレクタ449の出力をアンプ444側に設定した場合には、粗シークにより高速でピックアップ2を移動させることができる。セレクタ449の出力を速度制御回路442に設定した場合には、目標位置との差に応じた駆動電圧を出力することができ、粗シークよりも精密に目標位置に近づけることができる。
【0044】
粗シークでピックアップ2を駆動するときは、駆動回路451は、スレッドモータ21に一定の振幅の駆動電圧を印加するので、ピックアップ2は、高速で移動することができる。即ち、速度制御だけを行った場合では、目標速度との差が0になった場合には、駆動力が0になり、目標との差が出て初めて駆動力が付加される。そのタイムラグにより、制御が後手後手に回ってしまうという問題を解消できる。要するに、速度目標値に追従する(後から追いかける)制御よりも、ステップ状の一定電圧を与えた方が、高速で移動できる可能性があるということである。ただし、このフィードフォアードの制御方法では、スレッドモータ21の個体差をフィードバックしない。この個体差の問題については、本実施形態では、制御部5が調整処理52により、ゲイン調整を行っており、ゲイン調整された増幅率450がアンプ444に入力されるので、この問題を解消できる。
【0045】
図2(B)を用いて、速度制御回路442の具体例について説明する。トラックカウント回路431は、前述のとおり、トラック横断パルスを生成し、ピックアップ2のディスク100上の照射位置が横断したトラックの数を数える。位置誤差検出部445は、目標位置までの距離(トラック横断パルスの数)を算出する。第2速度目標値生成回路446(以下、単に「第2生成回路446」と称する。)は、速度目標値を表わす電圧を出力する。第2生成回路446は、電圧を調整する構成を備えている。第2生成回路446は、位置誤差検出部445の出力に基づいて、速度目標値を定める。この速度目標値は、目標位置までの距離に応じて段階的に変えるようにしてもよいし、関数により、連続的に変えるようにしてもよい。
【0046】
速度検出回路447は、トラックカウント回路431に基づいて、移動距離、移動速度を電圧で出力する。位置誤差検出部442は、目標位置との差を電圧で出力する。アンプ448は、第2生成回路446、速度検出回路447の出力の差分を増幅する。
【0047】
図3を用いて、トラックカウント回路431がトラック横断パルスの求める方法の一例について説明する。図3(A)の波形43Aは、シーク時に所定の速度の達したときのRF信号の様子を模式的に表している。RF信号は受光素子27の出力電圧の全加算信号であるから、常に正になる。光ディスクのトラックの溝では反射量が少なくRF信号の出力は0に近く、トラック上では大きく観測される。そこで、トラック→溝→トラックと繰り返すと、43Aのような波形になる。
【0048】
図3(B)は、トラック横断パルスの例を表している。図3(A)の波形をトラックカウント回路431のフィルタを通して、ノイズを除去する。具体的には、帯域を制限して、トラック横断パルスの周波数付近の帯域の信号を通す。そして、トラックカウント回路431の比較器は、閾値432と比較して、大きければHI、小さければLOWを出力する。
これにより、トラックカウント回路431の比較器は、図3(B)の波形43Bに示すようなトラック横断パルスを出力する。
【0049】
図4を用いて、本発明の実施形態である光ディスク装置のサーボ回路により、ピックアップを移動させたときの時間と速度との関係について説明する。図4の横軸は時間[秒]を表わしている。縦軸は、速度をトラック横断パルスの数/秒、即ち[Hz]で表わしている。軌跡71は、増幅率450を基準ゲイン(これをGとする。)とした場合を表わしている。図4の加速期間0〜T0[秒]までは、速度V1まで加速する。その後、スレッドモータ21の機械的な駆動系の摩擦力と、ドライバ回路4が印加する電圧(駆動力)とが釣り合って一定速度になる。
【0050】
その後、時刻T1で、スレッドモータ21への電圧の印加を停止すると、ピックアップ2は、惰性で移動し、速度が低下して最後には停止する。
【0051】
ここで、横軸と、軌跡71で囲まれた部分の面積が、ピックアップ2が実際に移動した距離になる。実装上は、厳密にはトラック横断パルスの数になる(以下、距離というときは同じ)。
【0052】
また、線72は、ゲイン調整された増幅率450をアンプ444に入力した場合の速度の線を表わしている。第1生成回路441には、標準的なスレッドモータ21の機械的駆動系を備えていることを想定してゲインを設定している。生産個体によっては、この駆動系の摩擦力が大きく、ピックアップ2を必ずしも目標の速度で移動させることができない。そこで、以下の比率Rを計算する。
【0053】
R=(時刻0〜時刻T1の間に実際に移動した距離(パルス数))
/(時刻0〜時刻T1の間に移動する距離の設計値(パルス数))
この値Rを用いて、次回の移動時には、速度V2=V1×Rで移動するように速度を調整する。そのために本実施形態では、制御部5がスレッドモータ21に印加する電圧を調整する。具体的には、制御部5は、アンプ444の増幅率450をG×Rに設定する。
【0054】
このように調整することにより、加速期間(0〜T0)は、期間(0〜T01)となり短くなる。また、最高速度も、V1からV2に大きくなる。
【0055】
なお、ピックアップ2に印加する駆動電圧と、移動速度V1、V2は必ずしも比例するものでないが、本実施形態では、ほぼ比例するものとして計算している。また、Rと駆動電圧の関係が分かれば、Rに基づいて、より精度よく駆動電圧の調整値を計算できる。
【0056】
次に、図5を用いて、本発明の実施形態である光ディスク装置の調整処理52について説明する。図5は、調整処理52を行う場合のピックアップ2の速度の変化を表わす。以上の図4では、速度を調整する方法について説明した。しかし、制御部5がこの調整処理を別途行っていたのでは、ピックアップ2は、無駄なシークをすることになる。そこで、本実施形態の調整処理では、制御部5は、所定の目標値が与えられたときに、目標値まで移動する間に、駆動電圧の調整を行う。
【0057】
まず、図5の軌跡73のとおり、制御部5は、時刻0から時刻T1まで、アンプ444のゲインを1にして、サーボ回路44、駆動回路455にピックアップ2を駆動させる。T1まで移動した時点で、シーク速度算出部442は、時刻0から時刻T1までに移動したトラック横断パルスの数を数える。
【0058】
ここで、第1生成回路441で印加する電圧は、暫定的な設計値である。具体的には、この電圧を「標準的なスレッドモータ21の駆動系であれば、装置1に必要なピックアップ2の速度で移動できる電圧」に設定することができる。また、時間T1を、「その速度V1で移動した場合に、標準的なスレッドモータ21の駆動系であれば、ピックアップ2が所定距離L1を移動できる時間」に設定できる。この距離L1は、目標までの距離L1までに到達しない距離とする。目標までの距離を大きく超えてしまうと、後戻りする必要があるからである。
【0059】
この調整処理52によれば、仮にピックアップ2の速度が設計値より遅い場合には、速度V1をより高速な速度V2に調整することができる。したがって、目標位置に到達する前に速度を調整したほうが好ましい。また、逆に、仮にピックアップ2の速度が設計値の速い場合には、目標位置に到達する前に、速度を低減するから、行き過ぎないよう是正することができる。
【0060】
なお、距離L1は、一定にする必要はなく、目標位置を超えないように、目標位置に応じて変動するのが望ましい。例えば、目標までの距離L0の0.8倍とすることができる。
【0061】
時刻T1の後、線74のとおり、サーボ回路44は、ピックアップ2の速度をV2=V1×R2に調整する。ここで、R2は、
R2=(時刻0〜時刻T1の間に実際に移動した距離(パルス数))
/(時刻0〜時刻T1の間に移動する距離の設計値L1(パルス数))
とすることができる。このように調整するために、スレッドモータ21の駆動力を調整する。具体的には、制御部5は、アンプ444の増幅率450をG×R2に設定して、スレッドモータ21の駆動電圧を調整する。
【0062】
なお、ここでは、ピックアップ2の速度とこの印加電圧は、比例するものとして計算する。また、R2と駆動電圧の関係が分かれば、R2に基づいて、より精度よく駆動電圧の調整値を計算することも可能である。
【0063】
また、軌跡74で設定する時間(T2−T1)は、速度V2で、目標位置までの残りの距離を移動できる時間とする。この時間(T2−T1)は、標準的なスレッドモータ21を基準とした移動時間の設計値とすればよい。以上のとおり速度を調整しているからである。ただし、この時間(T2−T1)の計算に当たっては、時刻T2以降に惰性で移動する距離を計算に入れるのが望ましい。
【0064】
次に、図6、図7を用いて、調整処理52のフローについて説明する。図6のフローは、ST11〜ST16と、ST21〜ST23と、ST3に大別できる。ST11〜ST16では、図5の軌跡73に沿って移動するための動作を行う。ST21〜ST23では、図5の軌跡74に沿って移動するための動作を行う。ST3は、目標位置に近づいた所定範囲内になると作動する割り込み処理のサブフローである。ST3では、より正確に目標位置へ到達するため、速度制御を行う。なお、ST3の詳細は、図7に示している。
【0065】
図6のST11で、目標値が与えられた場合に、暫定の印加電圧V1(即ちこれを決定するためのアンプ444のゲイン)と、図5で説明した移動時間T1を決定する。
ST12で、制御部5は、速度制御をオフにする。具体的には、セレクタ445をアンプ444の出力に切り換える。
ST13で、サーボ回路44は、電圧V1を出力して、ピックアップ2の移動を開始させる。ST14で、ピックアップ2の移動時間中(時刻0〜時刻T1)、トラックカウント回路431は、トラック横断パルスをカウントし、位置検出部442に出力する。これにより、移動距離を測定することができる。速度V1での移動は、時刻T1で終了する。
その間、ST3で、割り込み処理を受け付ける。
【0066】
時刻T1の後、装置1は、制御部5の制御の下で、ST21以下のフローを実行する。
ST15では、位置検出部442は、着地地点でのトラック横断パルスを出力する。
ST16では、制御部5は、調整電圧V1を決定する。実装上は、制御部5がアンプ444のゲインを決定する。
ST21で、速度制御をオフにした状態で(仮に速度制御がオンであれば解除する。)、電圧V2をピックアップ2に印加して、その移動を開始する。その後、回路431は、トラック横断パルスを出力する。ピックアップ2の移動を、前述した時間(T2−T1)の間、継続する。この間、ST3の割り込み処理を受け付ける。
【0067】
図7は、図6のST3の割り込み処理を表わしている。制御部5は、ピックアップ2の移動中に、定期的にST31、ST32の判断を行っている。この判断に基づき、ST33等の割り込み処理を行う。ST31では、目標位置と現在位置との距離[パルス数]が、所定距離P1[パルス数]より小さいか否か判断する。所定距離より小さい場合には(ST31のYES)、目標位置に到達したものとみなして、調整処理52を終了する。
【0068】
ST32では、目標位置と現在位置との距離[パルス数]が、所定距離P2(P2>P1)[パルス数]より小さいか否か判断する。この距離が、所定距離より小さい場合には(ST32のYES)、ST33に移動する。ここで、P2を、例えば300パルスとすることができる。
【0069】
ST31、ST32の判断がいずれも否定であれば、即ち、以上のST31、ST32のYESに該当しない場合には(ST31のNO,ST32のNO)、元のフローに戻る(RETURN)。
【0070】
ST33で、速度制御をオンにする。即ち、セレクタ449の出力をアンプ445側に切り換える。これにより、サーボ回路44は、速度誤差に基づいて、より正確に目標位置に移動させる。また、これと同時に第1生成回路441の電圧の出力を停止してもよい。ST32の後、ST34で、ST31と同じく、目標位置と現在位置との距離[パルス数](L3とする。)が、所定距離P1[パルス数]より小さいか否か判断する。L3が所定距離より大きい場合には、(ST34のNO)である限り、この速度制御を継続する。L3が所定距離より小さい場合には(ST34のYES)、目標位置に到達したものとみなして、調整処理52を終了する。
【0071】
以上図5〜図7で示した調整処理52を、定期的に行うのが望ましい。例えば、光ディスク装置1の起動時などに行ってもよい。制御部5が一旦、調整処理52を行なった後は、通常シーク処理53を行う。即ち、調整した電圧をスレッドモータ21に印加して移動させる。
【0072】
以上のとおり、調整処理52によれば、以下の効果が生じる。
(A)制御部5がアンプ444のゲインを調整した後は、ピックアップ2の動きやすさに応じて調整した速度で移動できる。
(B)また、軌跡73、74にしたがって速度を変化させると、スレッドモータ21の動きやすさについて、別途の試験をすることなく速度を調整できる。
(C)また、この調整後は、スレッドモータ21に一定の電圧が印加されるから、高速で移動できる。即ち、速度制御だけを行う構成のように、目標速度との速度誤差が0になっても、サーボ回路44は、電圧の印加が停止するのではないから、より高速に移動することができる。
(D)また、サーボ回路44の作用により、ドライバ回路45が常時一定以上の電圧をスレッドモータ21に印加するから、ピックアップ2の速度が安定する。したがって、トラック横断パルスのパルス幅が均一になり、トラックカウント回路431は、これをより正確に数えることができる。
【0073】
なお、以上の(C)の効果は、一定の駆動力の成分をスレッドモータ21に与えてれば生じ、そのような構成でもよい。例えば、後述する第2実施形態のように、一定の駆動力の他に別の駆動力の成分を与えていても、この効果は失わない。
【0074】
次に、図8を用いて、粗シーク処理51に含まれる通常シーク処理53について説明する。
ST41で、ピックアップ2を目標位置へ移動するまでの時間T3を決定する。アンプ444のゲインを調整しているので、時間T3は、図6のST11と同様、標準的なスレッドモータ21を基準とする設計値とすればよい。
ST42で、サーボ回路44は、速度制御をオフにする。具体的には、すでにオフとなっていれば、その状態を継続する。
ST43で、電圧V2をスレッドモータ21に印加することを開始する。ST44で、ピックアップ2の移動中に、トラックカウント回路431は、トラック横断パルスを測定する。この間に、図7で説明した割り込み処理(ST3)を行う。
【0075】
次に、図9を用いて、第1の実施形態の光ディスク装置の応用にかかる第2の実施形態の光ディスク装置(以下、「光ディスク装置1A」、または単に「装置1A」と称する。)について説明する。図9は、光ディスク装置1Aのサーボ回路44Aを表わしている。光ディスク装置1Aは、図1の構成と略同じであるが、サーボ回路440(サーボ回路44に相当する。)、および制御方法が一部異なる。以下で説明する相違点以外は、第1の実施形態の装置1と同じ構成なので以上の説明を準用する。
【0076】
第2の実施形態の光ディスク装置のサーボ回路440は、セレクタ449の代わりに、加算器8、電子スイッチ81を備える。加算器8は、アンプ444の出力と、速度制御回路442A(第1実施形態の速度制御回路442に相当する。)の出力を合計する。速度制御回路442Aは、速度制御回路442の出力に電子スイッチ81を設けたものである。制御部5は、電子スイッチ81を制御する。
【0077】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、図6、図7で示した第1実施形態の「調整処理52」に対応する調整処理を行う。また、第1実施形態と同様、図8で示した第1実施形態の通常シーク処理に相当する処理を行う。以下、この実施形態では、これらの処理をそれぞれ、単に「調整処理52A」、「通常シーク処理53A」と称する。
【0078】
次に、図9に加え、図10を参照して、第2実施形態の通常シーク処理53Aについて説明する。図10は、この処理におけるピックアップ2の速度変化である。この実施形態では、粗シーク時においても、速度制御回路442Aが電圧の出力を行う。また、セレクタ449が回路442Aの出力を加算する。
【0079】
図9の速度制御回路442Aに示すように、第2生成回路446が出力する目標速度と、速度検出回路447が出力する実際の速度との間に誤差がある場合には、速度誤差に応じた電圧が、アンプ444の出力に付加される。これにより、特に動きが遅い加速期間では、目標速度との差が大きくなるから、目標速度に到達したときよりも大きな電圧がスレッドモータ21に印加される。これにより、加速期間を短縮できる。
【0080】
図10を用いて、より具体的に加速時間について説明する。図10(A)に示すように、加速時間は、第1実施形態の加速期間(0〜T01)よりも短い加速期間(0〜T02)となる。その後、目標速度に到達すれば、速度誤差が0となり、速度制御回路442Aの出力は0となる。その後は、スレッドモータ21の機械的な駆動系の摩擦力と、スレッドモータ21に与える駆動力が釣り合い、第1実施形態と同様、速度が目標速度V2となる。
【0081】
図10(B)は、仮に、調整処理52Aに用いた調整のパラメータが適切でない場合を示している。ここで、調整処理後の実際の速度をV2とする。仮にこのようなことが生じても、図10(B)に示すように、速度誤差に応じて、スレッドモータ21に駆動力を与えることができる。これにより、軌跡76に示すように加速後の速度を目標の速度V3に到達させることができる。
【0082】
次に、図11、図12を用いて第2実施形態の調整処理52Aについて説明する。ST120、ST210以外は、図6、図7で示した処理と同じである。そこで、以上の説明を準用する。この処理は、第1実施形態と実質的に同様であり、第1の実施形態の調整っ処理を本実施形態に適合させるため、図6、図7の速度制御に関するST12、ST21の処理を変更する。
【0083】
ここで、第1の実施形態のST12、ST21は、スレッドモータ21の機械的な駆動系の動きやすさを調べるために、アンプ444の出力だけを調査するものである。したがって、第2実施形態でも、図6のST12について速度制御をオフにするため、スイッチ81をオフにして、アンプ448の出力を停止する。
【0084】
第1実施形態のST21は、実質的に通常シーク処理53Aと変わらない。したがって、これを第2の実施形態へ適用したST210では、速度制御回路442Aの出力をオンにするのが好ましい。即ち、スイッチ81をオンにする。また、粗シーク時の目標速度を第2生成回路446に設定する。
【0085】
ST30は、第1実施形態の図7のST3を第2の実施形態へ適用した処理である。ここで、ST3は、目標値に近接した場合の処理である。したがって、これを第2の実施形態へ適用したST30では、第1生成回路441の出力を0にするか、アンプ444の出力にスイッチ81と同様のスイッチ(不図示)を設けて、アンプ444の出力を停止する。また、スイッチ81をオンにしたまま維持する。
【0086】
次に図13のフロー図を用いて、第2実施形態の光ディスク装置の通常シーク処理53Aについて説明する。この処理は、ST420のみが第1実施形態の図9と異なり、ほかの処理は同じであるので、以上の説明を準用する。図13では、ST42の代わりに、スイッチ81をオンにする処理を行う。または、スイッチ81がすでにオンになっていれば、それを維持して、アンプ448の出力を加算器8で加算する。ST3の適用については、図13で説明した調整処理52Aを実行する。
【0087】
次に、図14を用いて、第1実施形態のサーボ回路44を変形した実施例について説明する。この実施例のサーボ回路44Bは、速度制御回路442の代わりに、第2生成回路446がない速度制御回路442Aを備えている。また、第3速度目標値生成回路443(以下、「第3生成回路443」と称する。)が第1生成回路441、第2生成回路446を兼ねている。位置誤差検出部445の出力、即ち、目標位置と現在位置との差の値(以下では、これをDと称する。)がL2以上であれば(図7の割り込み処理のST32のNO)、第3生成回路443は、その値を最高速度が出るような電圧値に設定する。DがL2未満であれば(割り込み処理のST32のYES)、ST33で段階的(または連続的に)に速度目標値を小さくする。即ち、第3生成回路443に設定する電圧を小さくする。これにより、目標位置までの距離がL2未満であれば、速度を減少させることができる。
【0088】
ここで、前述のとおり、第3生成回路441が第1生成回路441、第2生成回路446を兼ねる。したがって、第2生成回路446の出力に相当する第3生成回路441の出力は、速度検出回路447の出力と比較できる電圧値になっている必要がある。また、アンプ444のゲインも調整する必要がある。
【0089】
なお、図14の実施例は、容易に第2実施形態へ応用できる。図14のセレクタ449の代わりに加算器8を適用する。そして、図11〜図13のフローはそのまま用いることができる。サーボ回路44の処理については、以上の図14の説明を準用する。
【0090】
以上の実施形態について補足する。
【0091】
以上の実施形態で、「常時」電圧を印加すると説明したが、駆動回路451で、PWM制御等のパルス制御を行っている場合や、スレッドモータ21をACモータとする場合には、以上の説明を「一定の駆動力を与えている」と置き換えることができる。
【0092】
以上の図1の説明では、機能ごとに分離したブロックで説明したが、実装上では、これらの機能のうち、いずれかが複数の機能が一体となったシステムICで構成してもよいし、一つのブロックを複数に分離して構成してもよい。各ブロックの役割分担について、実装上では、あるブロックの一部の機能を他のブロックの一部の機能としてもよい。
【0093】
以上で示した構成について、ピックアップ2を半径方向に移動させる方法は、スレッドモータ21に限らず、移動できればよい。例えば、リニアモータで駆動するものでもよい。
【0094】
以上の実施形態では、第1速度目標値生成回路441、アンプ444を用いて、サーボ回路44から電圧を印加して、駆動力をスレッドモータ21に与え、アンプ444で駆動力を調整した。しかし、スレッドモータ21を駆動するための一定の駆動力を与えることができる駆動部であって、その駆動力を調整できるようにしていれば、サーボ回路44、ドライバ回路45に限らず、どのような構成でもよいし、各ブロックの役割分担もどのようなものでもよい。
【0095】
以上の説明で、サーボ回路44、44Aが電圧を出力し、ドライバ回路45がスレッドモータ21に駆動電圧を印加することは、本発明の「動力部」を「駆動」することに該当する。
【0096】
また、第1実施形態では、粗シークを行う場合には、速度制御回路442は必ずしも必要でない。速度制御をせず、そのままスレッドモータ21を惰性で停止するようにしてもよい。なお、スレッドモータ21の停止の後は、アクチュエータ26によりトラッキングサーボ制御して、所定のトラックに到達させるようにしてもよい。
【0097】
ピックアップ2の速度を測る別の方法としては、距測センサにより距離測定を行う方法、トラックオンしてアドレスを測る方法、回転数を検出して測る方法などでも可能である。これらの穂方法を用いる場合には、トラックカウント回路431の代わりに、これらの方法を具現化する構成を備えるようにする。
【0098】
速度制御回路442の構成のような速度フィードバックでなくても、位置との誤差に応じた駆動力が出力できるような位置誤差フィードバックでもよい。
【0099】
以上の説明で、処理のフローで大小比較をしている説明の中に、「≦」、「<」(以上、以下、未満、越えている)という意味の説明があるとすれば、相互に読み替えて適用してもよい。即ち、閾値により判断していればよく、「≦」か「<」かいずれを適用すべきかについて技術的な意味はない。
【0100】
また、以上の説明では、スレッドモータ21が動きにくい個体を中心に説明したが、第1実施形態の装置1によれば、動きやすい個体についても、速度を減らす方向へ調整することができるから、目標位置から行き過ぎてしまうことを防止できる。第2実施形態の装置1Aについても、速度の行き過ぎがあれば、サーボ回路44Aは、目標の速度になるよう、アンプ444の出力から減算する。したがって、動きやすい個体については、目標位置から行き過ぎてしまう作用が生じる。図14の構成も同様である。
【0101】
ピックアップ2の速度を測る別の方法としては、距測センサにより距離測定を行う方法、トラックオンしてアドレスを測る方法、回転数を検出して測る方法などでも可能である。これらの方法を用いる場合には、トラックカウント回路431の代わりに、これらの方法を具現化する構成を備えるようにする。
【0102】
以上では、CDプレーヤを用いて説明したが、DVD,ブルーレイディスク等の光ディスクにも応用できる。また、以上の実施形態では、全加算信号のRF信号を用いて、トラック横断パルスを生成したが、ディスクの種類によっては、トラッキングエラー信号の強弱に基づいて生成してもよい。この場合、図3の閾値432は0となる。また、この場合には、図1において、光ディスク装置1は、トラックカウント回路431の代わりに、エラー信号生成部41とサーボ回路44の間にトラックカウント回路を備えるようにする。
【0103】
速度制御回路442の構成のような速度フィードバックでなくても、位置との誤差に応じた駆動力が出力できるような位置誤差フィードバックでもよい。
【0104】
以上の説明で、大小比較において「≦」、「<」(以上、以下、未満、越えている)という意味の説明があるとすれば、「≦」と「<」を相互に読み替えて適用してもよい。即ち、閾値により判断していればよく、「≦」か「<」かいずれを適用すべきかについて技術的な意味はない。
【0105】
また、以上の説明では、スレッドモータ21が動きにくい個体を中心に説明したが、第1実施形態の装置1によれば、動きやすい個体についても、速度を減らす方向へ調整することができるから、目標位置から行き過ぎてしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0106】
1−光ディスク装置、 2−ピックアップ、
21−スレッドモータ、 22−スピンドルモータ、
23−発光素子、 24−ハーフミラー、 25−レンズ、
251、252−焦点、 26−アクチュエータ、
27−受光素子、 41−エラー信号生成部、 43−RFアンプ、43A〜43F−波形、
431−トラックカウント回路、 432−閾値、 44−サーボ回路、
441−第1速度目標値生成回路、 442−速度制御回路、
444−アンプ、 445−位置誤差検出部、 446−第2速度目標値生成回路、
447−速度検出回路、 449−セレクタ、
45−ドライバ回路、 450−ゲイン調整された増幅率、
451−スレッドモータ用駆動回路、 452−アクチュエータ用駆動回路、
47−再生部、 5−制御部、 50−ROM、 51−粗シーク処理、
52−調整処理、 54−タイマ、 55−トラック数カウント処理、
59−RAM、 6−操作部、 71〜74−軌跡、
8−加算器、 81−電子スイッチ、
V1−速度、 V2−速度、 100−光ディスク
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施形態の光ディスク装置の主要部の構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態の光ディスク装置のサーボ回路、駆動回路の実施例
【図3】トラック横断パルスの求め方の例を表す図
【図4】第1実施形態の光ディスク装置のサーボ回路によりピックアップを移動させたときの時間と速度との関係を表す図
【図5】第1実施形態の光ディスク装置の調整処理におけるピックアップの速度変化を表わす図
【図6】第1実施形態の光ディスク装置の調整処理を表わすフロー図
【図7】第1実施形態の光ディスク装置の割り込み処理を表わすフロー図
【図8】第1実施形態の光ディスク装置のサーボ回路のブロック図
【図9】第1実施形態の光ディスク装置の通常シーク処理のピックアップの速度変化を表わす図
【図10】第2実施形態の光ディスク装置のサーボ回路によりピックアップを移動させたときの時間と速度との関係を表す図
【図11】第2実施形態の光ディスク装置の調整処理を表わすフロー図
【図12】第2実施形態の光ディスク装置の割り込み処理を表わすフロー図
【図13】第2実施形態の光ディスク装置の通常シーク処理のピックアップの速度変化を表わす図
【図14】第2実施形態の光ディスク装置の図8とは異なるサーボ回路の例
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップをトラバース方向にシークさせる動力部と、
一定の駆動力以上の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する駆動部と、を備えた光ディスク装置において、
前記駆動部は、
前記一定の駆動力を調整する調整手段と、
前記調整手段により調整した駆動力で、前記動力部を駆動する通常駆動手段と、を備え、
前記調整手段は、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行い、(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記動力部に与える駆動力を調整し、(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する光ディスク装置。
【請求項2】
前記通常駆動手段および前記調整手段は、目標位置までの距離またはトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力以上の駆動力を与えることに代えて、前記ピップアップの移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える光ディスク装置。
【請求項3】
前記通常駆動手段は、前記一定の駆動力に加え、目標速度との差に基づく駆動力を前記動力部に与える請求項1または請求項2のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスク装置のピックアップを粗シークによりトラバース移動させる動力部を駆動するピックアップの駆動方法において、
粗シーク時の駆動電圧を調整する調整ステップと、
前記調整手段により調整した一定の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する通常駆動ステップと、を実行するものであって、
前記調整ステップは、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、
前記調整ステップでは、
(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行うテスト駆動ステップと、
(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記ピックアップに与える駆動力を調整する調整ステップと、
(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する調整後移動ステップと、を実行するピックアップの駆動方法。
【請求項5】
前記通常駆動ステップおよび前記調整ステップでは、目標位置までのトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力を前記動力部に与えることを停止し、ピックアップ2の移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える請求項1または請求項2のいずれかに記載のピックアップの駆動方法。
【請求項6】
前記通常駆動ステップでは、前記一定の駆動力に加え、目標速度V1との差に基づく駆動電圧を付加する駆動力を前記動力部に与える請求項1または請求項2のいずれかに記載のピックアップの駆動方法。
【請求項1】
ピックアップをトラバース方向にシークさせる動力部と、
一定の駆動力以上の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する駆動部と、を備えた光ディスク装置において、
前記駆動部は、
前記一定の駆動力を調整する調整手段と、
前記調整手段により調整した駆動力で、前記動力部を駆動する通常駆動手段と、を備え、
前記調整手段は、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行い、(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記動力部に与える駆動力を調整し、(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する光ディスク装置。
【請求項2】
前記通常駆動手段および前記調整手段は、目標位置までの距離またはトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力以上の駆動力を与えることに代えて、前記ピップアップの移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える光ディスク装置。
【請求項3】
前記通常駆動手段は、前記一定の駆動力に加え、目標速度との差に基づく駆動力を前記動力部に与える請求項1または請求項2のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスク装置のピックアップを粗シークによりトラバース移動させる動力部を駆動するピックアップの駆動方法において、
粗シーク時の駆動電圧を調整する調整ステップと、
前記調整手段により調整した一定の駆動力を与えて、前記動力部を駆動する通常駆動ステップと、を実行するものであって、
前記調整ステップは、(A)目標位置への移動の指示がされた場合に行うものであって、
前記調整ステップでは、
(B)前記目標位置への移動途中に、前記目標位置へ向かう方向へ暫定的な駆動力を駆動部に与えるテスト駆動を行うテスト駆動ステップと、
(C)前記テスト駆動中のピックアップの動き易さに基づいて、前記ピックアップに与える駆動力を調整する調整ステップと、
(D)当該調整した駆動力を与えて、残りの前記目標位置までの間の距離を移動する調整後移動ステップと、を実行するピックアップの駆動方法。
【請求項5】
前記通常駆動ステップおよび前記調整ステップでは、目標位置までのトラック数が所定範囲内になると、前記一定の駆動力を前記動力部に与えることを停止し、ピックアップ2の移動速度に基づく駆動力を前記動力部に与える請求項1または請求項2のいずれかに記載のピックアップの駆動方法。
【請求項6】
前記通常駆動ステップでは、前記一定の駆動力に加え、目標速度V1との差に基づく駆動電圧を付加する駆動力を前記動力部に与える請求項1または請求項2のいずれかに記載のピックアップの駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−48732(P2009−48732A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215425(P2007−215425)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
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