説明

光ディスク装置、情報記録方法および情報記録媒体

【課題】多層の記録型光ディスクで発生する、ディスク内の層間距離バラツキによる迷光、信号光の層間漏れこみ、および記録、未記録領域での透過率差による再生、記録性能の劣化を防止する。
【解決手段】多層の記録型光ディスクにおいて交替処理を行う場合に、交替処理が発生した層に係わらず対物レンズに最も近い層の交替記録領域から順番に交替記録領域を使用する。もしくは対物レンズに最も近い層にのみ交替記録領域を設ける。もしくは各層の交替記録領域で、他層と半径位置をずらして優先的に交替を実施する優先交替記録領域を設ける。もしくは各層の交替記録領域とその上下層の交替記録領域に半径位置、もしくは交替記録開始半径位置が重ならないように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層を有する光ディスクおよび該光ディスクに情報を記録する光ディスク装置、情報記録方法における記録不良時の交替処理に関する。
【背景技術】
【0002】
記録可能な光ディスクであるDVD-RAM、Blu-ray Disc(以下BD)およびHD DVD Disc (以下HD)では、データ領域での記録不良発生時の交替処理が規格書に記載されている。交替処理とは、情報記録後にその記録情報を再生して再生信号品質を評価し、再生信号不良、即ち記録不良検出時にディスク上の所定領域に前述の記録情報と同一の情報を記録する処理である。この以下所定領域を交替領域と呼び、この再生信号品質評価動作をベリファイと呼ぶ。交替領域はDVD-RAM、BD、HDとも内周、外周にそれぞれ設けられている。交替記録処理およびその信頼性向上については特許文献1、2に詳述されている。
【0003】
一方、近年記録容量の大容量化を目指して、各種記録型ディスクの多層化が進められている。現在ではDVD-R/RW、+RW、BDで2層の記録媒体が規格化されている。多層ディスクでは、単層ディスクと違って、記録時に他層の影響を考慮することが必要である。このような多層の記録技術については、特許文献3に詳述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−85797号公報
【特許文献2】特開2006−185509号公報
【特許文献3】特開2000−311346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交替記録領域への記録はデータ領域での記録不良時の保護であるため、通常のデータ領域での記録動作よりも記録動作の信頼性を高くすることが必要である。
【0006】
一方、光ディスクを多層化した場合、他層の影響として以下が発生する。1.ディスク面内における各層の層間距離バラツキによる迷光信号漏れこみ発生2.記録、再生層以外の層での擬似焦点および焦点ずれスポットよる迷光信号、および情報信号の漏れこみ発生3.他層の記録、未記録での透過率差による記録ばらつきの発生
1. および2による迷光の漏れこみは信号S/Nを低下させ、サーボ安定性の低下、、および記録、再生動作の信頼性が低下を発生させる。さらに、多層化でのディスク製造コスト低減などを狙って層間厚を一定とすると、2の擬似信号の漏れこみが発生する。これはサーボ誤差信号の漏れこみによる変動、再生信号漏れこみによる信号品質低下につながる。このような状況では、ベリファイ時の記録信号の再生品質評価に誤りが発生し、正しいベリファイ動作を保証できなくなる。3は、データ記録部のマーク、スペース部で記録膜の状態が異なることから、透過率に差が生じて記録が均一に行われなくなる可能性がある。これらの影響は、ディスクの層数の増加による層間隔の減少に伴って大きくなる。
前述の特許文献1,2では、交替記録処理の信頼性向上にむけて、データの並べ替え、記録位置の変更などの手法が記載されているが、前述の多層ディスクでの問題点に対する対応ついてはなんら考慮されていなかった。また、上記課題のうち、記録信頼性の改善方法として特許文献3では多層ディスクの記録、未記録部での記録パワー学習の補正方法が記載されている。これによれば、多層ディスクでの記録学習の信頼性は向上させることができるが、記録動作、とくに交替領域での記録を考慮した記録信頼性の向上については記載されていない。
【0007】
本発明の目的は、多層ディスクに適した交替領域が設定される、光ディスク装置、記録方法および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、その一例として、交替領域の配置を工夫することで達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多層ディスクに適した交替領域が設定される、光ディスク装置、記録方法および記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施例である光ディスク装置の構成図
【図2】第1の実施例における光ディスクの内周部分の記録領域配置図
【図3】第1の実施例における光ディスク装置の記録処理フロー図
【図4】第6の実施例における光ディスクの内周部分の記録領域配置図
【図5】第2 の実施例における光ディスクの内周部分の記録領域配置図
【図6】第2の実施例における光ディスク装置の記録処理フロー図
【図7】第3の実施例である光ディスク装置の構成図
【図8】第3の実施例における光ディスクの内周部分の記録領域配置図
【図9】第3の実施例における光ディスク装置の記録処理フロー図
【図10】第4の実施例における光ディスクの内周部分の記録領域配置図
【図11】第5の実施例における光ディスクの内周部分の記録領域配置図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の第1の実施例における光ディスク装置の構成図を示す。
【0013】
データ記録時、図のホスト115より送られた記録データはマイコン114で受信される。マイコン114では、記録データをディスクに記録する記録位置、即ちアドレス情報を位置制御回路120に送る。位置制御回路120では、送られてきたアドレス情報に基づいて、スピンドルモータ102の回転数制御、ピックアップ122の半径位置制御、およびアクチュエータ107の制御を行う。
【0014】
これと同時に受信された記録データは変調回路116に送られる。変調回路116では、ディスク101に対応した所定の変調方式により記録情報を変調し、記録用レーザーパルスを生成する記録ストラテジ生成117に記録データを送る。記録ストラテジ生成回路117は、生成した記録ストラテジに従ってレーザードライバ121を介してレーザ103を駆動する。レーザ103より出射された記録レーザ光はコリメートレンズ104、ビームスプリッタ105、対物レンズ106を通してディスク101の情報記録面に集光され、マーク、スペースによる情報記録を行う。
【0015】
データ再生時はレーザ103から再生パワーでレーザ光を射出し、記録時と同様の経路でディスク101上に集光される。ディスク101で反射された反射光は、ビームスプリッタ105で分岐され集光レンズ108で集光されて光電変換素子109で電気信号(以下信号)に変換される。得られた信号はI/V変換回路 110, 信号処理回路111を経て復調回路112により復調され、マイコン114を経由してホスト115に送られる。
【0016】
また、ベリファイ時など記録信号品質の評価が必要な場合は、信号処理回路111の出力は信号品質評価回路113に入力される。信号品質評価回路113は所定の評価方法において再生信号を評価し、交替処理必要の有無をマイコン114に報告する。
【0017】
交替処理発生時は、交替記録アドレス選択回路118が交替アドレスメモリ119を参照して交替記録アドレスを決定する。交替アドレスメモリ119はディスクから読み出した交替領域の記録アドレス管理情報が格納されている。交替処理により交替処理が終了した際は、該交替元のデータ領域アドレス、交替領域のデータ記録アドレスなどのアドレス管理情報が交替アドレスメモリに追記、または更新され、記録動作終了、もしくはディスクを光ディスク装置から取り出す際に、本メモリ情報が交替記録管理情報としてディスクに追記、または更新される。
【0018】
図2は、層番号L_0からL_Xまでの(X+1)層から構成される光ディスクにおける内周部分の記録領域の配置を示す図である。ディスクの各層にはInner Zone、内周交代記録エリア(ISA)、データ記録領域などが設けられている。本ディスクでは、L0層の内周から外周に向かってデータを順番に記録し、L_0層からL_1層、L_2層と順に層を変更しながら記録を行うこととする。また、レーザは図の対物レンズ106を介して下側から照射されるものとする。
【0019】
なお、今後上記複数の層で構成されるディスクにおいて、対物レンズに近い層を手前の層、対物レンズから遠い層を奥の層と呼ぶ。
【0020】
以下に本実施例での交替処理について説明する。
【0021】
L_0層のデータ領域にデータ記録を行っていた際に、図2の201の部分で交替処理が発生したとする。このとき図1に示す光ディスク装置では交替記録位置選択回路118が交替アドレスメモリ119の内容を確認し、交替記録可能で最も手前の交替記録領域、本実施例ではL_X層の交替記録領域202にデータを記録する。以下図の203、205、207の部分で交替処理が発生した場合、204、206、208のようにL_X層の交替記録領域に連続してデータを記録する。また、L_X層の交替記録領域がすべてデータ記録済みになった場合は、光ディスク装置の交替記録位置選択回路でそれを判定して、L_X層の次に手前の層であるL_(X-1)層の交替記録領域にデータを記録する。このようにして、最も手前の層から順にデータ記録な交替記録領域を探してデータ記録を行う。
【0022】
以上に示した本実施例におけるデータ記録処理の動作フローを図3に示す。ドライブでPCなどのホストからの記録データ受信後(301)、ディスクのデータ領域内の所定アドレスにデータ記録を行う(302)。次に記録データのベリファイ再生を行い(303)、記録品質の確認を行う(304)。記録品質が所定の品質に対して十分良好であれば交替処理は行われず、ホストにデータ記録完了を報告して処理を終了する(309)。
【0023】
処理304で記録品質不良と判断された場合、図2のL_X層の交替記録領域を選択して(305)、交替記録可能かどうかの確認を行う(306 )。L_X層の交替記録領域に記録可能領域がある場合は、L_X層内の交替領域内の所定アドレスにデータ記録を行い(308)、交替アドレスメモリの更新を行い、ホストにデータ記録完了を報告して処理を終了する(309)。L_X層の交替記録領域に記録可能領域がない場合は、1つ奥の層、即ちL_(X-1)層に対して、L_X層と同様に交替記録領域に記録可能領域があるかどうか確認を行い、交替記録を実施する。
【0024】
本実施例のように交替処理時に手前の層の交替記録領域から奥の層の交替記録領域に向かって順次データを記録していくことにより、交替記録領域にデータを記録する際、および交替記録領域からデータを再生する際に、対物レンズから該データの記録された記録層までにレーザ光が透過する層数を最小にすることができる。これにより、1.透過層からの迷光漏れこみによるサーボ振られによる記録、再生不良の発生2.透過層に記録された情報信号の漏れこみによる記録、再生信号品質の劣化3.透過層での記録、未記録部での透過率差による記録不良の発生を最小限に押さえることができ、交替記録領域において安定したデータ記録を実現することができる。
【0025】
なお、多層ディスクにおいて、全層に上記交替記録領域を配置する必要はない。そのため、全層に配置される交替記録領域を1つの層、例えば図2のL_X層のみに固めて配置してもよい。L_X層のみに交替記録領域を配置した場合は、すべての交替記録処理において上記実施例1の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0026】
次に本発明の第2の実施例について説明する。
【0027】
本実施例では、光ディスク装置およびディスクの構成については第1の実施例と同様だが、交替処理時の交替記録領域選択が異なる。本部分について図5を用いて説明する。
【0028】
第1の実施例と同様に、L_0層からL_X層まで層数(X+1)層から構成される光ディスク200において、L_0層のデータ領域にデータ記録を行っていた際に、図5の501の部分で交替処理が発生したとする。このとき図1に示す光ディスク装置の交替記録位置選択回路118では、交替記録可能で最も奥の交替記録領域、本実施例ではL_0層の交替記録領域502にデータを記録する。以下図の503、505、507の部分で交替処理が発生した場合、504、506、508のようにL0層の交替記録領域に連続してデータを記録する。また、L_0層の交替記録領域がすべてデータ記録済みになった場合は、光ディスク装置の交替記録位置選択回路でそれを判定して、L_0層の次に奥の層であるL_1層の交替領域を選択するようにする。このようにして、最も奥の層から順にデータ記録な交替記録領域を探してデータ記録を行う。
【0029】
以上に示した本実施例におけるデータ記録処理の動作フローを図6に示す。本図で図3と同一の処理の部分については同一の番号を付してあり、説明を省略する。図3との違いは、記録データのベリファイ再生で交替処理が必要と判断されたのち、まずL_0層の交替領域を選択する点である(601)。また、選択した層の交替領域に記録可能な領域があるか判断したあと、交替記録領域が空いていない場合は対物レンズに対して1つ手前の層、本実施例ではL_1層の交替領域を選択する点が異なる(602)。
【0030】
本実施例のように交替処理時に奥の層の交替記録領域から手前の層の交替記録領域に向かって順次データを記録していくことにより、交替記録領域にデータを記録する際に、対物レンズから該データの記録された記録層までにレーザ光が透過する層をすべてデータが未記録の状態にすることができる。これにより、1.記録、再生層以外の層での擬似焦点および焦点ずれスポットよる他層情報信号の漏れこみ2.透過層での記録、未記録部での透過率差による記録不良発生を最小限に抑え、交替領域における安定したデータ記録を実現することができる。さらに、本実施例では交替領域を対物レンズから最も遠い層から最も近い層まで順次1層ずつ使用することにより、上記のデータ記録安定化の効果をすべての交替領域記録で実現することができる。
【0031】
なお、本実施例においても第1の実施例と同様に、全層に上記交替記録領域を配置する必要がないことは言うまでもない。
【実施例3】
【0032】
(重ならない交替領域アドレス空間配置)
次に本発明の第3の実施例について以下に説明する。
【0033】
図7は本実施例における光ディスク装置の構成図を示す。本図において図1と同一機能を有する部分については同一の番号を付してあり、ここでは説明を省略する。図7と図1の相違は以下の点である。1.図1で交替領域での記録アドレス選択を行う交替記録アドレス選択回路118の代わりに、交替優先領域とその他の領域で優先順位を分けて交替記録アドレス選択を行う、優先判定付き交替記録アドレス選択回路701とした。2.図1で交替領域の記録アドレス管理情報を保持する交替領域アドレスメモリ119のなかを、優先交替領域アドレスメモリ702と、通常交替領域アドレスメモリ703に分けた。優先交替領域アドレスメモリは、後述の優先交替領域の記録アドレス管理情報を保持するメモリであり、通常交替領域アドレスメモリは、上記以外の通常交替領域の記録アドレス管理情報を保持するメモリである。
【0034】
図8は本実施例におけるL_0層からL_X層まで層数(X+1)層から構成される光ディスクの内周部分のデータ記録領域を示す図である。ディスクの初期フォーマット時に各層の801部分が交替記録領域として指定されているものとする。図の802、804、806、808、810は優先交替記録領域であり、あらかじめディスクでのアドレス空間が規格書などで指定されているものとする。本領域は、図8に示すように他層の優先交替記録領域との半径位置の重なり部分が無いように配置される。また、上記のように優先交替記録領域はディスク上のアドレス空間として指定される。また、記録型光ディスクではアドレス情報はウォブル、ピットなどによりディスク基板部分に埋め込まれていることが多い。しかし、多層ディスクでは基板を張り合わせて層構造を生成する場合もあり、その場合は張り合わせ精度により層間でのアドレス位置のずれが発生する。そのため、たとえばL_0層の優先交替記録領域802とL_1層の優先交替記録領域804については、803に示す緩衝領域を設ける。これにより、張り合わせ位置のずれによる、層間の優先交替記録領域の半径位置の重なりが発生しないようにする。図の803、805、807、809が上記緩衝領域であり、この部分はデータ記録は行われない。
【0035】
図7、8を用いて本実施例のデータ記録時における光ディスク装置の動作について説明する。ただし、交替処理を行うまでの一連の動作は実施例1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0036】
図8の光ディスクにおいて、L_1層のデータ領域871のデータ記録時に交替処理が発生した場合を考える。このとき、優先判定付き交替記録アドレス選択回路701は、まず優先交替記録領域アドレスメモリ702の確認を行う。優先交替記録領域アドレスメモリは各層の優先交替記録領域のアドレス管理情報が記録されており、図8では802、804、806、808、810部分の優先交替記録領域のアドレス管理情報が記録されている。本例ではデータ記録領域871と同一層である領域804のアドレス管理情報を確認し、領域804で交替記録が可能である場合は、領域804内部のアドレス配置規則に従って図8の872に示すように領域804にデータ記録を行う。記録が実行されると、記録アドレスが優先交替記録領域アドレスメモリ702に追加登録される。
【0037】
一方領域内の全アドレス記録済みなどの理由により領域804への交替記録が不可と判断された場合、優先判定付き交替記録アドレス選択回路701は続いて通常交替記録領域アドレスメモリ703の確認を行う。通常交替記録領域アドレスメモリはディスクの初期フォーマット時に指定された交替領域のうち、前述の優先交替記録領域以外の交替記録領域部分を指す。通常交替記録領域に交替記録を行う場合は、図8の873に示すようにデータ記録領域871と同一層である領域811に通常交替記録領域内部のアドレス配置規則に従ってデータを記録する。記録が実行されると、記録アドレスが通常交替記録領域アドレスメモリ703に追加登録される。
【0038】
以上に示した本実施例におけるデータ記録処理の動作フローを図9に示す。図の304に示す記録品質判定処理までは第1の実施例の図3と同様の処理フローであり、ここでは説明を省略する。記録品質判定処理で交替処理が必要と判断された場合、まず優先交替記録領域に交替記録可能かどうかの確認を行う(901)。可能であれば交替処理が必要なデータを優先交替記録領域へ記録し、優先交替記録アドレスメモリを更新し(902)、ホストへデータ記録完了報告して処理を終了する(309)。優先交替記録領域に交替記録不可能な場合は、交替処理が必要なデータを通常交替記録領域へ記録し、通常交替記録アドレスメモリを更新し(903)、ホストへデータ記録完了報告して処理を終了する(309)。
【0039】
本実施例では、交替処理において、層間での半径位置の重なりのない優先交替記録記録領域に優先的にデータを記録することにより、交替記録データ量がすくない場合において対物レンズから該データの記録された記録層までにレーザ光が透過する層を未記録の状態にすることができる。これにより、1.記録、再生層以外の層での擬似焦点および焦点ずれスポットよる他層情報信号の漏れこみ2.透過層での記録、未記録部での透過率差による記録不良発生を最小限に抑え、交替記録領域における安定したデータ記録を実現することができる。
【0040】
なお、上記では通常交替記録領域への記録時のアドレス選択については、とくに指定をしていない。しかし、例えば図8の優先交替記録領域802への記録が不可の場合、隣接層からの漏れこみを考慮して、隣接層の優先交替記録領域の半径位置と異なる半径位置、たとえば図8の通常交替記録領域の領域891に記録を行うことにより、記録、再生層以外の層での擬似焦点および焦点ずれスポットよる他層情報信号の漏れこみを低減することはできる。
【0041】
さらに上記において、擬似焦点、および層間距離のばらつきによる迷光信号の漏れこみ、もしくは情報信号の漏れこみの低減効果によっては、隣接層ではなくN層(Nは任意の数)離れた層の優先交替記録領域の半径位置と異なる半径位置の通常交替記録領域に記録を行うことも考えられる。
【0042】
また、本実施例では優先交替領域について、ディスクの規格などであらかじめ指定されている例を示したが、交替記録処理の交替元アドレス情報(データ領域アドレス)と交替先アドレス情報(交替記録領域アドレス)の対応が交替記録管理情報などに登録されていれば、必ずしも優先交替記録領域をディスク規格で指定する必要はなく、光ディスク装置内部の情報として管理することも可能である。
【実施例4】
【0043】
(実施例3のフォーマット時の配置)
次に本発明の第4の実施例について説明する。
【0044】
図10は本実施例の光ディスク1000における、内周側の交替記録領域の配置を示す図である。図の1001から1005の色付け部分が交替記録領域を示す。交替領域は、前述のようにディスクの規格で定められた領域に対して、ディスクの初期化実行時にアプリケーションなどにより指定される。本実施例では、ある層とその1つ手前の層において、交替記録領域の先頭の半径位置が所定の距離だけずれるように交替記録領域を配置する。この関係を式で示すと以下となる。
【0045】
R_AltS(N+1) < R_AltS(N) + RA(N) … (2)
式(2)でR_AltS(N)はN層の交替記録領域の開始半径位置を表し、RA(N)はN層における上記半径位置のずらし量を表す。RA(N)は、図10における1011、1012、1013に相当し、これらは層毎に一定量でなくてもよい。
【0046】
このように交替記録領域を配置することにより、図10の1011、1012、1013部分にデータを記録する場合において、対物レンズから該データの記録された記録層までにレーザ光が透過する層を未記録の状態にすることができ、前述の第3の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0047】
さらに、本実施例の交替記録領域配置では、各層の交替記録領域の先頭アドレスからデータ記録を実施して前述の第3の実施例と同様の効果を得ることができ、実施例3で示した優先交替記録領域アドレスメモリが必要ない。これにより、光ディスクドライブ内部の構成、および処理を簡素化できる。
【0048】
また、本実施例では各層の交替記録領域の開始半径位置R_AltS(N)の関係を示したが、同様の関係は各層の交替記録領域の終了半径位置についても適用可能であることは言うまでもない。
【実施例5】
【0049】
(交替記録領域の層間千鳥配置)
次に本発明の第5の実施例について説明する。
【0050】
図11は本実施例の光ディスク1100における、内周側の交替記録領域の配置を示す図である。前述の他層からの影響のうち、1.ディスク面内における各層の層間距離バラツキによる迷光信号漏れこみ発生2.記録、再生層以外の層での擬似焦点および焦点ずれスポットよる他層情報信号の漏れこみ発生は、隣接層からの影響が大きい。そのため、本実施例では偶数番目の層と奇数番目の層で、交替記録領域の半径位置を異なるように配置する。例えば、L_2N層(N=0,2,…,X/2)ではInner Zone終了半径位置から交替記録領域を配置し、L_(2N+1) 層(N=0,2,…,(X-2)/2)では、上記L_2N層の交替記録領域の終了する半径位置から交替記録領域を配置する。なお、実際の交替記録領域はディスク上のアドレスなどで管理されるが、第3の実施例にて説明したように層間でのアドレス位置が発生する。そのため、たとえば上記L_(2N+1)層の交替記録領域開始アドレスの前に第3の実施例で示した緩衝領域を設けることが考えられるが、ここでは煩雑になるため省略してある。本実施例の交替記録領域の配置を用いることにより、1.層間隔の面内ばらつきによる上下層からの記録データの漏れこみによるサーボ信号振られでの記録不良発生2.層間隔の面内ばらつきによる上下層からの記録データの漏れこみによる再生信号劣化の影響を低減することができる。
【0051】
なお、本実施例では1層おきに交替記録領域を同じ半径位置としたが、記録データの層間干渉の影響範囲によっては、N層おき(Nは任意の数)に交替記録領域を同じ半径位置とすることも考えられ、本実施例のみに限定されるものではない。
【実施例6】
【0052】
(交替記録領域の層間千鳥配置)
次に本発明の第6の実施例について説明する。
【0053】
図4は本実施例の光ディスク1200における、内周側における交替記録動作を示す図である。図の1201が交替領域、1202がデータ記録領域である。本実施例では、前述の第5の実施例と同様の課題を解決するため、各層で同じ半径位置に連続して配置された交替記録領域において、偶数番目の層と奇数番目の層で交替記録領域の使用開始位置を変える。例えば、図4に示すようにL_0層のデータ記録時に1203にて交替処理が発生した場合、交替記録領域1201の最も内周側の領域1204に交替記録を行う。以下L_0層では交替記録領域1201の内周側から順に交替記録領域を使用する。次にL_1層のデータ記録時に1205で交替処理が発生した場合、交替記録領域1201の最も外周側の領域1206に交替記録を行う。以下L_1層では交替記録領域1201の外周側から順に交替記録領域を使用する。このように、本実施例では偶数層では交替記録領域を内周側から使用し、奇数層側では交替記録領域を外周側から使用する。これにより、各層の交替記録を実施する半径位置が、上下層の交替記録領域で使用されている半径位置と重なるまでは、前述の第5の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明の第1から第6の実施例では、多層ディスクに連続的にデータ記録を行う場合、および各層にランダムにデータ記録を行う場合における層の記録順番によらず、同様の効果を得られることはいうまでもない。
【0055】
また、本発明の第1から第6の実施例では、すべてディスク内周側での交替処理についての例を示したが、外周に交替記録領域を持つディスクについては、外周の交替記録領域においても本発明の実施例と同様にすることで、該実施例と同様の効果を得ることができることも自明である。
【0056】
また、上記1から5の実施例における交替領域内での記録位置については、本実施例では交替領域の内周側から連続してデータ記録を行う例を示したが、アドレスの昇順、降順、または任意のアドレス順序など様々な配置が考えられ、本例に限定されるものではない。
【0057】
なお、第1の実施例等で記載したように、交替処理においては交替元アドレスと交替先(交替領域内)アドレスの対応情報などの交替記録管理情報を、ディスクへ記録することが必要である。これらの処理、およびおよび交替記録管理情報のディスク上の記録領域配置についても、本発明が適用可能である。交替記録管理情報の記録、および交替記録管理情報のディスク上の記録領域配置について本発明を適用することにより、交替記録処理管理の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0058】
101 …記録媒体、102 …スピンドルモータ、103 …レーザ光源、104 …コリメータレンズ、105 …ビームスプリッタ、106 …対物レンズ、107 …アクチュエータ、108…集光レンズ、109…光電変換素子、110…IV変換素子、121…レーザードライバ、122…光ピックアップ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層を有し、少なくとも2層以上に交替領域を具備する光ディスクに対して、レーザ光を照射して情報の記録を行う光ディスク装置であって、
レーザ光を照射して情報の記録を行うピックアップと、
前記ピックアップにより記録された情報が不良と判断されるときに交替領域に交替処理する交替処理回路と、
前記交替処理回路を制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記交替処理回路が使用する交替領域として所定の層から使用するように制御する、光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置であって、
前記制御回路は、前記ピックアップから近い面に存在する交替領域から使用するように制御する、光ディスク装置。
【請求項3】
請求項2記載の光ディスク装置であって、
前記制御回路は、前記ピックアップから近い面に存在する交替領域が不足すると判断する場合に、前記ピックアップから次に近い面に存在する交替領域を使用するように制御する、光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ディスク装置であって、
前記制御回路は、前記ピックアップから遠い面に存在する交替領域から使用するように制御する、光ディスク装置。
【請求項5】
請求項4記載の光ディスク装置であって、
前記制御回路は、前記ピックアップから遠い面に存在する交替領域が不足すると判断する場合に、前記ピックアップから次に遠い面に存在する交替領域を使用するように制御する、光ディスク装置。
【請求項6】
複数の記録層を有し、少なくとも2層以上に交替領域を具備する光ディスクに対して、レーザ光を照射して情報の記録を行う光ディスク装置であって、
レーザ光を照射して情報の記録を行うピックアップと、
前記ピックアップにより記録された情報が不良と判断されるときに交替領域に交替処理する交替処理回路と、
前記交替処理回路を制御する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記交替処理回路が使用する交替領域として、他層に存在する交替領域と半径位置が重ならない位置から優先的から使用するように制御する、光ディスク装置。
【請求項7】
請求項6記載の光ディスク装置であって、
前記他層に存在する交替領域は、記録済み領域である、光ディスク装置。
【請求項8】
請求項6記載の光ディスク装置であって、
前記他層に存在する交替領域は、未記録領域である、光ディスク装置。
【請求項9】
複数の記録層を有し、少なくとも2層以上に交替領域を具備する光ディスクに対して、レーザ光を照射して情報の記録を行う記録方法であって、
レーザ光を照射して情報を記録し、
前記記録された情報が不良と判断されるときには、交替領域として所定の層から使用するように交替処理する、記録方法。
【請求項10】
請求項9記載の記録方法であって、
ピックアップから近い面に存在する交替領域から使用するように処理する、記録方法。
【請求項11】
請求項10記載の記録方法であって、
ピックアップから近い面に存在する交替領域が不足すると判断する場合には、前記ピックアップから次に近い面に存在する交替領域を使用するように処理する、記録方法。
【請求項12】
請求項9記載の記録方法であって、
ピックアップから遠い面に存在する交替領域から使用するように処理する、記録方法。
【請求項13】
請求項12記載の光ディスク装置であって、
ピックアップから遠い面に存在する交替領域が不足すると判断する場合には、前記ピックアップから次に遠い面に存在する交替領域を使用するように処理する、記録方法。
【請求項14】
複数の記録層を有し、少なくとも2層以上に交替領域を具備する光ディスクに対して、レーザ光を照射して情報の記録を行う記録方法であって、
レーザ光を照射して情報を記録し、
前記記録された情報が不良と判断されるときには、他層に存在する交替領域と半径位置が重ならない位置から優先的から使用し交替処理する、記録方法。
【請求項15】
請求項14記載の記録方法であって、
前記他層に存在する交替領域は、記録済み領域である、記録方法。
【請求項16】
請求項14記載の記録方法であって、
前記他層に存在する交替領域は、未記録領域である、記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−53977(P2012−53977A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226347(P2011−226347)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2007−260486(P2007−260486)の分割
【原出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】