説明

光ディスク装置と光ディスク装置の製造方法

【課題】レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立を図ることが可能な光ディスク装置と光ディスク装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の光ディスク装置は、筐体と、筐体から出没自在に取り付けられたトレイと、筐体とトレイを移動自在に保持する保持部を有し、保持部は筐体に設けられた第一のレール取付部とトレイに設けられた第二のレール取付部と第一、第二のレール取付部に摺動可能に設けられたレールを有する光ディスク装置であって、レールは曲げ部13の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面16、17をつなぐ曲面部14または平面部の少なくとも一方を有したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップにより光ディスクに対して情報の記録又は再生の少なくとも一方を行なう光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、CD−ROM/R/RW、DVD−ROM/RAM/R/RWなどがすでに実用化されており、各方面への応用と高性能化への開発が活発に行われている。特に最近では、パーソナルコンピュータの急速な市場拡大に伴い、光ディスク装置のパーソナルコンピュータへの内蔵普及率も高くなっている。電子機器に搭載される光ディスクの装着方法としては、筐体よりトレイが引き出され、このトレイにディスクを取り付け、再び筐体に戻して装着する方式(以下トレイ方式と称する)が一般的である。以下、従来のトレイ方式光ディスク装置の構成について、図5、図6を参照して説明する。
【0003】
図5は、従来の光ディスク装置の外観図である。図5において、1は光ディスク装置、2は筐体、2aは上部筐体部、2bは下部筐体部、3はトレイ、4は光ピックアップモジュール、5はレール、6aは筐体側レール保持部、6bはトレイ側レール保持部、7はスピンドルモータ、7aはディスク装着部、8は金属製カバー、8aは開口、9はキャリッジ、10はベゼル、11はイジェクトボタン、12は光ピックアップである。
【0004】
光ディスク装置1は、筐体2と、筐体2に出没自在に保持されたトレイ3を有している。筐体2は、金属製の上部筐体部2a、下部筐体部2bを組み合わせて袋状であり、筐体2の開口8aからトレイ3が出没する構成となっている。トレイ3には、裏面から光ピックアップモジュール4が取り付けられている。トレイ3の両側部には移動自在にレール5が設けられ、このレール5は、トレイ3に一体に設けられたトレイ側レール保持部6bに保持されている。なお、図5では、一方の側部にのみレール5が設けられているが、他方の側面部に同様のレールが設けられていてもよい。上部筐体部2aと下部筐体部2bとは図示していない係止手段と螺旋などを用いて、互いに強固に固定されている。
【0005】
光ピックアップモジュール4は、光ディスクを回転駆動させるスピンドルモータ7と、スピンドルモータ7から外周にかけて開口8aを設けた金属製カバー8と、開口8aから一部が露出したキャリッジ9を少なくとも有している。キャリッジ9は、光ピックアップモジュール4に設けられた複数の案内シャフトに移動自在に保持されており、しかも図示していないフィードモータによって、スピンドルモータ7に近づいたり、離れたりするように移動できる。
【0006】
10はトレイ3の前面に設けられたベゼルで、ベゼル10は筐体2の開口8aを塞ぐ程度の大きさで構成されている。キャリッジ9には、高出力のレーザーダイオード等の光源、各種光学部材及び光ディスク上に光スポットを構成する対物レンズなどが搭載されている。筐体2の奥部には固定して設けられた回路基板があり、回路基板には信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。トレイ3に設けられた図示していない回路基板同士を電気的に接続するフレキシブルなプリント基板は、略U字型に形成され、外部コネクタはコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、この外部コネクタを介して光ディスク装置内に電力を供給したり、あるいは外部からの信号を光ディスク装置1内に導いたり、あるいは光ディスク装置1で生成された電気信号を電子機器などに送出する。トレイ3の前端面に設けられたベゼル10にはイジェクトボタン11が設けられており、このイジェクトボタン11を押すことで、筐体2に設けられた係合部とトレイ3に設けられた係合部との係合を解除し、トレイ3は筐体2から光ディスクが
着脱できるよう引き出すことができる。
【0007】
図6は、従来の光ディスク装置のレールを示す図であり、ステンレス材を従来からの工法で加工した場合の様子を示す図である。図6において、5はレール、13は曲げ部である。レール5は、筐体2からトレイ3が引き出された状態でトレイ3を保持する必要があるため、構成材料には重量よりも機械的強度が優先され、ステンレスが広く用いられている。
【0008】
光ディスク装置は、近年のパーソナルコンピュータの小型化に伴って、薄型で軽量なものが求められている。特に、ノートブック型パーソナルコンピュータに搭載される内蔵型光ディスク装置や外付け用の光ディスク装置においては、持ち運びが便利なように機械的強度に優れ、重量が軽いものへの要求が高い。機械的強度と軽量化の関係は相反するものであり、機械的強度を追求すると軽量化に支障をきたし、軽量化を追及すると機械的強度に支障をきたすのが一般的である。
【0009】
先行例としては、(特許文献1)等がある。
【特許文献1】特許第2950136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光ディスク装置の薄型化もしくは軽量化を進めるに当たっては、それらを構成する部品の薄型化や軽量化が不可欠である。薄型化、軽量化については、一般的に、構成材料の材料厚みを薄くすることや軽量材料を使用するなどの手法が用いられるのであるが、これらの場合、同時に外部荷重によって変形しやすい構成となったり、構成材料の加工に不都合が生じたりする。
【0011】
図7は、従来の光ディスク装置のレールを示す図であり、アルミニウム合金などの軽量材料を従来からの工法で加工した場合の様子を示す図である。図7において、5はレール、13は曲げ部である。トレイ方式の光ディスク装置1は、トレイ3を支えるレール5の材料として鉄系の材料の一つであるステンレスが広く用いられる。この理由として、ステンレスが機械的強度特性に優れ、また曲げ加工時の伸び特性が良好なため加工が容易であるからである。
【0012】
しかしながら、光ディスク装置1の更なる軽量化を図る場合には、レール5の材料としてステンレスを用いるのは好ましくなく、現在、アルミニウム合金などの軽量材料を用いる試みがなされている。機械的強度については、アルミニウム合金などの軽量材料の原料構成比率などの変更によりステンレス相当の機械的強度を確保することができたが、曲げ加工時の伸び特性がステンレスに対して1/2〜1/3程度であるため、ステンレスに対して加工性が劣っている。そのため、アルミニウム合金などの軽量材料を用いて、曲げ加工によりレール5を形成した場合、図7に示すレール5の曲げ部13は、図6に示すレール5の曲げ部13と比較して、レール5の曲げ部13のコーナー部の肉厚のみが大きく減少し、機械的強度劣化が発生する。曲げ部13の角度が大きければ大きいほど、この現象は顕著となるが、レール5を形成するために必要な角度略90°でもこの影響を受ける。
【0013】
本発明は上記課題を解決するものであり、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立を図ることが可能な光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、筐体と、前記筐体から出没自在に取り付けられたトレイと、前記筐体と前記
トレイを移動自在に保持する保持部を有し、前記保持部は前記筐体に設けられた第一のレール取付部と前記トレイに設けられた第二のレール取付部と前記第一、第二のレール取付部に摺動可能に設けられたレールを有する光ディスク装置であって、前記レールは曲げ部の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を有したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成により、レールは曲げ部の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を有することによって、レールの曲げ加工時に発生する曲げ部の肉厚の著しい減少を緩和することができ、曲げ部の機械的強度劣化を防止することができる。
【0016】
このことにより、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立を図ることが可能な光ディスク装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
請求項1記載の発明は、筐体と、前記筐体から出没自在に取り付けられたトレイと、前記筐体と前記トレイを移動自在に保持する保持部を有し、前記保持部は前記筐体に設けられた第一のレール取付部と前記トレイに設けられた第二のレール取付部と前記第一、第二のレール取付部に摺動可能に設けられたレールを有する光ディスク装置であって、前記レールは曲げ部の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を有したものであり、レールは曲げ部の内面を構成する複数の面の少なくとも2面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を有することにより、レールの加工時に発生する曲げ部の肉厚の著しい減少を緩和することができ、曲げ部の機械的強度劣化を防止することができるため、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立をすることができ、光ディスク装置の軽量化を図ることができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方がストライキング加工を用いることにより形成されているものであり、レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方がストライキング加工を用いることにより容易に形成することができるため、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、生産性を低下させること無く、機械的強度の確保と軽量化の両立をすることができ、光ディスク装置の軽量化を図ることができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記2つの面で構成される曲げ部の角度が略90°であることを特徴とするものであり、前記2つの面で構成される曲げ部の角度が略90°であることによりストライキング加工によるレールの曲げ部の内面に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方の形成を容易に行なうことができ、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、生産性を低下させること無く、機械的強度の確保と軽量化の両立をすることができ、光ディスク装置の軽量化を図ることができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部は、前記レールの長手方向に対して垂直方向に半径を持つ円弧で構成されたものであり、レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部を広範囲にわたり形成することにより曲げ部の急峻な形状変化を防ぐことができ、曲げ部の機械的強度劣化を効率良く防止することができるため、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立をすることができ、光ディスク装置の軽量化を図ることができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、筐体と、前記筐体から出没自在に取り付けられたトレイと、前
記筐体と前記トレイを移動自在に保持する保持部を有し、前記保持部は前記筐体に設けられた第一のレール取付部と前記トレイに設けられた第二のレール取付部と前記第一、第二のレール取付部に摺動可能に設けられたレールを有する光ディスク装置であって、前記レールは曲げ部の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を有しており、前記曲げ部に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方がストライキング加工を用いることにより形成され、前記曲げ部の角度は略90°であり、前記曲面部は前記レールの長手方向に対して垂直方向に半径方向を持つ円弧で構成されたことを特徴とするものであり、レールの加工時に発生する曲げ部の肉厚の著しい減少を緩和することができ、曲げ部の機械的強度劣化を効率良く、しかも精度良く防止することができるため、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立をすることができ、光ディスク装置の軽量化を図ることができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、前記レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方は、前記ストライキング加工が行なわれることにより形成されることを特徴とするものであり、前記レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方の形成がストライキング加工と同時に行なわれることにより、レールの加工時に発生する曲げ部の肉厚の著しい減少を緩和することができ、機械的強度劣化を防止することができるため、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立をすることができ、光ディスク装置の軽量化を図ることができる。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態における光ディスク装置の外観図であり、トレイ3を筐体2から引き出した図である。図1において、1は光ディスク装置、2は筐体、3はトレイ、4は光ピックアップモジュール、5はレール、6aは筐体側レール保持部、6bはトレイ側レール保持部、7はスピンドルモータ、7aはディスク装着部、8は金属製カバー、8aは開口、9はキャリッジ、10はベゼル、11はイジェクトボタン、12は光ピックアップである。
【0024】
図1において、筐体2は上部筐体部2aと下部筐体部2bを組み合わせて袋状に構成されている。上部筐体部2aと下部筐体部2bとは好ましくは螺旋などを用いて、互いに強固に固定されている。筐体2の構成材料としては鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属材料や樹脂材料によって構成される。また、上部筐体部2a及び下部筐体部2bはそれぞれ同種の材料で構成しても良いし、異種の材料で構成しても良い。また、上部筐体部2a及び下部筐体部2bそれぞれの主平面部の平均肉厚は0.4mm〜1.6mmの間であり、この平均肉厚の比較的薄い場合には上部筐体部2a及び下部筐体部2bは金属材料で構成され、例えば、金属板をプレス加工などによって形成される。また、平均肉厚の比較的厚い場合には上部筐体部2a及び下部筐体部2bは樹脂材料やダイカスト(アルミニウム合金やマグネシウム合金など)で構成される。筐体2を樹脂材料で構成した場合には、光ディスク装置1の軽量化を実現できる。3は筐体2に出没自在に設けられたトレイで、このトレイ3は樹脂製のフレームで構成され、光ピックアップモジュール4が設けられている。光ピックアップモジュール(PUM)4には光学系を構成した光ピックアップ12とディスクを回転させるスピンドルモータ7及び制御回路(図示せず)で構成されている。光ピックアップ12は、光ディスクに光を照射することで、光ディスクに情報を書き込むかあるいは情報を読み出す動作の少なくとも一方を行なう。スピンドルモータ7にはディスク装着部7aがあり、ディスクを装着し回転駆動させる。トレイ3の両側部にはトレイ側レール保持部6bがあり、両側部共にレール5とディスク引き出し方向に摺動自在に嵌合している。また、レール5は筐体2両側部内面に設けられたレールガイドともディスク引き出し方向に摺動自在に嵌合しており、トレイ3は筐体2からディスクが着脱できるよう引き出すことが出来る。
【0025】
筐体2の奥部には固定して設けられた制御基板があり、制御基板には信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。トレイ3に設けられた図示していない制御基板同士を電気的に接続するフレキシブルなプリント基板は、略U字型に形成され、外部コネクタはコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、この外部コネクタを介して光ディスク装置内に電力を供給したり、或いは外部からの電気信号を光ディスク装置1内に導いたり、あるいは光ディスク装置1で生成された電気信号を電子機器などに送出する。トレイ3の前端面に設けられたベゼル10には、イジェクトボタン11が設けられており、このイジェクトボタン11を押すことで、筐体2に設けられた係合部(図示せず)とトレイ3に設けられた係合部(図示せず)との係合を解除する。
【0026】
以下、本発明の実施の形態1の特徴部分について説明する。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置のレールを示す図であり、レールの曲げ部の内面を構成する2つの面をつなぐ面が曲面部であるものである。図2(a)はレール全体を示した図であり、図2(b)は図2(a)の本発明部分を示す拡大図である。図2において、5はレール、13は曲げ部、14は曲面部、16、17は面である。また、図4は光ディスク装置のレールの曲げ加工を示す図である。図4において、5はレール、18はパンチ、19はダイ、20はパンチ、21は突起、22はガイド、23はダイである。レール5は筐体2からトレイ3が引き出された状態でトレイ3を保持する必要があるため、構成材料の特性としては重量よりも機械的強度が優先され、従来からステンレスが広く用いられていた。また、レール5は、筐体2に設けられた筐体側レール保持部6aとトレイ3に設けられたトレイ側レール保持部6bと摺動可能に設けられる必要があるため、高い寸法精度が必要である。そのため、レール5の加工には一般的にストライキング加工という手法が用いられる。
【0028】
ストライキング加工とは、金属材料の曲げ加工において曲げ角度の精度向上を図るための手法であり、図4(a)、図4(b)に示す曲げ加工金型1のダイ19のレール5と接触する部分の一部に直方体状の突起21を設置し、それを利用して金属材料をパンチすることで曲げ加工時に発生する戻り応力を軽減することを主な目的とする。ここで、曲げ加工金型1と曲げ加工金型2によるレール5の曲げ加工について図4を用いて説明する。まず、曲げ加工が必要なレール5は、曲げ加工金型1のパンチ18とダイ19で形成される隙間に(1)の矢印方向に規定量だけ挿入される。規定量だけ挿入されたレール5は、パンチ18が(2)の矢印方向に移動することにより、パンチ18とダイ19により挟み込まれ、ダイ19に設けられた突起21によりストライキング加工が行なわれる。次に、ストライキング加工が行なわれたレール5は曲げ加工金型1から曲げ加工金型2へ移動する。移動したレール5は図4(c)に示す曲げ加工金型2のガイド22とダイ23で形成される隙間に(3)の矢印方向に規定量だけ挿入され、規定量だけ挿入されたレール5はガイド22が(4)の矢印方向に移動することによりガイド22とダイ23で挟み込まれ固定され、最後に図4(d)に示すパンチ20が(5)の矢印方向に移動し圧力を加えることによってレール5の曲げ部13を形成する。ストライキング加工されたレール5の曲げ部13は、曲げ加工時に発生した応力が軽減されるため、精度の良い直角度を得ることができる。図4に示すように光ディスク装置1のレール5の加工に用いられる曲げ加工金型1のダイ19に設けられる直方体状の突起21は、幅1mm、高さ0.05mm程度のもので、曲げ加工金型1と曲げ加工金型2より曲げ部13が形成されると、図6に示すようなレールの曲げ部となる。
【0029】
本発明では、レール5に、曲げ部13の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を設ける。
【0030】
本実施の形態では、レール5に、図2に示すような曲げ部13の内面を構成する複数の
面から2つの面16、17をつなぐ曲面部14を設けることとした。曲げ部13の内面に設けられた曲面部14はストライキング加工を用いることにより形成され、前記2つの面16、17で構成される曲げ部の角度は略90°つまり85°〜95°程度とし、曲面部14はレール5の長手方向に対して垂直方向に半径方向を持つ円弧で構成する。曲面部14が設けられる場所は、レール5に配置されている曲げ部13のうち少なくとも1ヶ所でもよく、また図2に示すようにレール5に配置されている曲げ部13の全てに設けても良い。機械的強度の確保と軽量化の両立を最大限に図ろうとすれば、曲面部14が設けられる場所はレール5に配置されている曲げ部13の全てに設けることが好ましい。
【0031】
ここで、光ディスク装置の軽量化のため、レールの材料を変更する場合について説明する。光ディスク装置1の軽量化のために、その構成部品であるレール5の構成材料をステンレスからアルミニウム合金などの軽量材料に変更した場合、機械的強度と加工の容易性の点において劣化が生じる。機械的強度においてはアルミニウム合金などの軽量材料の原料構成比率などの変更によりステンレス相当の強度を確保することができたが、加工の容易性においては曲げ加工時の伸び特性がステンレスに対して1/2〜1/3程度であるため、ステンレスに対して加工性が劣っている。
【0032】
このようなアルミニウム合金などの軽量材料をそのまま、光ディスク装置1のレール5の材料に用いると、曲げ加工を行なう際のストライキング加工により曲げ部13が、図7に示すような形状となる。そのため、アルミニウム合金などの軽量材料を用いて、曲げ加工によりレール5を形成した場合、レール5の曲げ部13のコーナー部の肉厚が大きく減少し、機械的強度の劣化が発生する。
【0033】
ところが、図2に示す本発明の一実施の形態では、レール5に曲げ部13の内面を構成する複数の面から2つの面16、17をつなぐ曲面部14を設けることによって、従来、ストライキング加工で曲げ部13を形成する際に受けていた角度形成部分のストレス、つまりレール5の曲げ加工時に発生する曲げ部13の肉厚の著しい減少を緩和することができる。
【0034】
そのため、レール5は曲げ部13の機械的強度劣化を防止することができ、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立を図ることが可能な光ディスク装置1を実現することができる。
【0035】
なお、本実施の形態では、2つの面16、17で構成される曲げ部13の角度は略90°に限定されるものではないが、レール5の曲げ部13の内面に設けられる曲面部14や平面部15の形成を容易に行なおうとすれば、前記2つの面16、17で構成される曲げ部13の角度は略90°が好ましい。また、曲面部14はレール5の長手方向に対して垂直方向に半径方向を持つ円弧で構成することに限定されるものではないが、本発明の効果を最大限に発揮しようとすれば、レール5の曲げ部13の内面に設けられた曲面部14を広範囲にわたり形成することにより曲げ部13の急峻な形状変化を防ぐことができるレール5の長手方向に対して垂直方向に半径方向を持つ円弧で構成することが好ましい。
【0036】
(実施の形態2)
レール5が曲げ部13の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ平面部を有する場合について説明する。
【0037】
図3は本発明の実施の形態2における光ディスク装置のレールを示す図で、レールの曲げ部の内面を構成する2つの面をつなぐ面が平面部であるものである。図3(a)はレール全体を示した図であり、図3(b)は図3(a)の本発明部分を示す拡大図である。光ディスク装置全体の構成は実施の形態1と同様である。図3において、5はレール、13
は曲げ部、15は平面部、16、17は面である。また、図4は光ディスク装置のレールの曲げ加工を示す図である。図4において、5はレール、18はパンチ、19はダイ、20はパンチ、21は突起、22はガイド、23はダイである。
【0038】
以下、本発明の実施の形態2の特徴部分について説明する。
【0039】
レール5は筐体2からトレイ3が引き出された状態でトレイ3を保持する必要があるため、構成材料の特性としては重量よりも機械的強度が優先され、従来からステンレスが広く用いられていた。また、レール5は、筐体2に設けられた筐体側レール保持部6aとトレイ3に設けられたトレイ側レール保持部6bと摺動可能に設けられる必要があるため、高い寸法精度が必要である。そのため、レール5の加工には一般的にストライキング加工という手法が用いられる。
【0040】
ストライキング加工とは、金属材料の曲げ加工において曲げ角度の精度向上を図るための手法であり、図4(a)、図4(b)に示す曲げ加工金型1のダイ19のレール5と接触する部分の一部に直方体状の突起21を設置し、それを利用して金属材料をパンチすることで曲げ加工時に発生する戻り応力を軽減することを主な目的とする。ここで、曲げ加工金型1と曲げ加工金型2によるレール5の曲げ加工について図4を用いて説明する。まず、曲げ加工が必要なレール5は、曲げ加工金型1のパンチ18とダイ19で形成される隙間に(1)の矢印方向に規定量だけ挿入される。規定量だけ挿入されたレール5は、パンチ18が(2)の矢印方向に移動することにより、パンチ18とダイ19により挟み込まれ、ダイ19に設けられた突起21によりストライキング加工が行なわれる。次に、ストライキング加工が行なわれたレール5は曲げ加工金型1から曲げ加工金型2へ移動する。移動したレール5は図4(c)に示す曲げ加工金型2のガイド22とダイ23で形成される隙間に(3)の矢印方向に規定量だけ挿入され、規定量だけ挿入されたレール5はガイド22が(4)の矢印方向に移動することによりガイド22とダイ23で挟み込まれ固定され、最後に図4(d)に示すパンチ20が(5)の矢印方向に移動し圧力を加えることによってレール5の曲げ部13を形成する。ストライキング加工されたレール5の曲げ部13は、曲げ加工時に発生した応力が軽減されるため、精度の良い直角度を得ることができる。図4に示すように光ディスク装置1のレール5の加工に用いられる曲げ加工金型1のダイ19に設けられる直方体状の突起21は、幅1mm、高さ0.05mm程度のもので、曲げ加工金型1と曲げ加工金型2より曲げ部13が形成されると、図6に示すようなレール5の曲げ部13となる。
【0041】
本発明では、レール5に、曲げ部13の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を設ける。
【0042】
本実施の形態では、レール5に、図3に示すように曲げ部13の内面を構成する複数の面から2つの面16、17をつなぐ平面部15を設けることとした。曲げ部13の内面に設けられた平面部15はストライキング加工を用いることにより形成され、前記2つの面16、17で構成される曲げ部13の角度は略90°つまり85°〜95°程度とする。平面部15が設けられる場所は、レール5に配置されている曲げ部13のうち少なくとも1ヶ所でもよく、また図3に示すようにレール5に配置されている曲げ部13の全てに設けても良いし、図2に示す曲げ部13の内面を構成する複数の面から2つの面16、17をつなぐ曲面部14と共に用いても良い。機械的強度の確保と軽量化の両立を最大限に図ろうとすれば、平面部15や曲面部14が設けられる場所はレール5に配置されている曲げ部13の全てに設けることが好ましい。
【0043】
ここで、光ディスク装置1の軽量化のため、レール5の材料を変更する場合について説明する。光ディスク装置1の軽量化のために、その構成部品であるレール5の構成材料を
ステンレスからアルミニウム合金などの軽量材料に変更した場合、機械的強度と加工の容易性の点において劣化が生じる。機械的強度においてはアルミニウム合金などの軽量材料の原料構成比率などの変更によりステンレス相当の強度を確保することができたが、加工の容易性においては、曲げ加工時の伸び特性がステンレスに対して1/2〜1/3程度であるため、ステンレスに対して加工性が劣っている。
【0044】
このようなアルミニウム合金などの軽量材料をそのまま、光ディスク装置1のレール5の材料に用いると、曲げ加工を行なう際のストライキング加工により曲げ部13が図7に示すような形状となる。そのため、アルミニウム合金などの軽量材料を用いて、曲げ加工によりレール5を形成した場合、レール5の曲げ部13のコーナー部の肉厚が大きく減少し、機械的強度の劣化が発生する。
【0045】
ところが、図3に示す本発明の実施の形態2では、レール5に曲げ部13の内面を構成する複数の面から2つの面16、17をつなぐ平面部15を設けることによって、従来ストライキング加工で曲げ部13を形成する際に受けていた角度形成部分のストレス、つまりレール5の曲げ加工時に発生する曲げ部13の肉厚の著しい減少を緩和することができる。
【0046】
そのため、レール5は曲げ部13の機械的強度劣化を防止することができ、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立を図ることが可能な光ディスク装置1を実現することができる。
【0047】
なお、本実施の形態2では、2つの面で構成される曲げ部13の曲げ角度は略90°に限定されるものではないし、レール5の曲げ部13の内面に設けられる曲面部14や平面部15の形成を容易に行なおうとすれば、前記2つの面で構成される曲げ部13の角度は略90°が好ましい。
【0048】
また、本実施の形態2は実施の形態1と共に用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、レール材料に軽量材料を用いたものであっても、機械的強度の確保と軽量化の両立を図ることが可能な光ディスク装置を実現することができ、光ピックアップにより光ディスクに対して情報の記録又は再生の少なくとも一方を行なう光ディスク装置などに適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態における光ディスク装置の外観図
【図2】本発明の実施の形態1における光ディスク装置のレールを示す図
【図3】本発明の実施の形態2における光ディスク装置のレールを示す図
【図4】光ディスク装置のレールの曲げ加工を示す図
【図5】従来の光ディスク装置の外観図
【図6】従来の光ディスク装置のレールを示す図
【図7】従来の光ディスク装置のレールを示す図
【符号の説明】
【0051】
1 光ディスク装置
2 筐体
2a 上部筐体部
2b 下部筐体部
3 トレイ
4 光ピックアップモジュール
5 レール
6a 筐体側レール保持部
6b トレイ側レール保持部
7 スピンドルモータ
7a ディスク装着部
8 金属製カバー
8a 開口
9 キャリッジ
10 ベゼル
11 イジェクトボタン
12 光ピックアップ
13 曲げ部
14 曲面部
15 平面部
16 面
17 面
18 パンチ
19 ダイ
20 パンチ
21 突起
22 ガイド
23 ダイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体から出没自在に取り付けられたトレイと、前記筐体と前記トレイを移動自在に保持する保持部を有し、前記保持部は前記筐体に設けられた第一のレール取付部と前記トレイに設けられた第二のレール取付部と前記第一、第二のレール取付部に摺動可能に設けられたレールを有する光ディスク装置であって、前記レールは曲げ部の内面を構成する複数の面の少なくとも2つの面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を有したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方は、ストライキング加工を用いることにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記2つの面で構成される曲げ部の角度は、略90°であることを特徴とする請求項1〜2いずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部は、前記レールの長手方向に対して垂直方向に半径を持つ円弧で構成されたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
筐体と、前記筐体から出没自在に取り付けられたトレイと、前記筐体と前記トレイを移動自在に保持する保持部を有し、前記保持部は前記筐体に設けられた第一のレール取付部と前記トレイに設けられた第二のレール取付部と前記第一、第二のレール取付部に摺動可能に設けられたレールを有する光ディスク装置であって、前記レールは曲げ部の内面を構成する複数の面の少なくとも2面をつなぐ曲面部または平面部の少なくとも一方を有しており、前記曲げ部に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方がストライキング加工を用いることにより形成され、前記曲げ部の角度は略90°であり、前記曲面部は前記レールの長手方向に対して垂直方向に半径方向を持つ円弧で構成されたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
前記レールの曲げ部の内面に設けられた曲面部または平面部の少なくとも一方は、前記ストライキング加工が行なわれることにより形成されることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の光ディスク装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−4540(P2006−4540A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181042(P2004−181042)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】