説明

光ディスク装置及び光ディスクの欠陥処理方法

【課題】
AGC回路の過渡応答を抑制し、再生エラーを低減することができる光ディスク装置及び光ディスクの欠陥処理方法を提供すること。
【解決手段】
本発明では、光ディスクのRF信号からディフェクト信号が検出されているとき、その検出信号が出力されている所定の期間だけそのディフェクト信号をハイパスフィルタにかけるようなRFスイッチ2が設けられている。これにより、RFスイッチ2のIN2が選択されてディフェクト信号をサブHPF1に通した場合、そのディフェクト信号を減衰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録された信号を再生可能な光ディスク装置及びその光ディスクの欠陥信号を処理する欠陥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブルーレイディスク(Blu−ray Disk)にデータを記録再生する光ディスク装置が出現している。ブルーレイディスクによれば、波長405nmの青紫色レーザと、開口数(NA)0.85の対物レンズに加えて、光透過保護層厚0.1ミリメートルのディスク構造を採用することにより、直径12cmの書き換え可能な相変化光ディスクの片面に最大27GBのデータを記録することができる。
【0003】
DVDでは、680nmの光に於いては、カバー層が厚い事、レーザ波長が680nmが長く、ビーム径が大きい事等で、ディスクについた指紋、傷、ゴミ等に関しては大きなきな弊害にはならない。ところが、ブルーレイディスクでは、DVDに比べて記録密度が約5倍、ディスクの光透過保護層が約1/7であるためディスク表面の欠陥(ディフェクト)の影響を受けやすい。そこで、ECC(Error Correction Code)のエラー訂正能力を高くするために、1ECCブロックのサイズを、ブルーレイディスクの記録再生単位であるRUB(Recording Unit Block)と同じ大きさである64KByteと大きくしてある。しかし、想定外の大きな指紋や大きな擦り傷などの欠陥がディスク面にあると、データが欠如してしまい、これにより1ECC部(1RUB)の1/3にも達し、1RUBのデータが破綻してしまう。
【0004】
また、このようなディスクの欠陥により、欠陥から復帰した後のPLL(Phase Locked Loop)のロックイン時間や、AGC(Automatic Gain Control)の過渡応答による再生RF信号のDC変動等によるエラーが加算されることで、ECCエラーとなる場合がある。
【0005】
このような不具合を発生する原因は、ディスク欠陥によるデータの欠如であり、その対策として、従来よりディスク欠陥に起因する信号の欠落や指紋などの汚れに起因する信号レベルの低下を、AGC回路が持つ時定数やHPF(ハイパスフィルタ)のカットオフ周波数で補償(吸収)する方法を採っていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−123945号公報(段落0035、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、680nmの光ディスクで2値データを扱う再生系では、2値の比較が再生RF信号のレベルの影響を殆ど受けないという理由からAGC回路が不要とされており、ディスク欠陥に対しては、比較動作に再生信号にQFB(Quantized Feedback)(いわゆるオートスライサ)を掛けることによってゼロクロス点の変動を抑圧していた。
【0007】
ところが、ここへ来て、ブルーレイディスクのように更なる高密度記録を達成するために、1−7PP(parity pre−serve/prohibit)RMTR(Repeated Minimum Transition Runlength)を採用し、A/D変換を必要とするものが登場し、再生回路中にAGC回路が再び必要となってきた。これは、A/D変換でのS/N低下を最小限に抑えるためにA/D変換のレンジに対して、RF信号のレベルが小さすぎないようにするためである。
【0008】
しかしながら、このように再生回路にAGC回路を搭載した場合、ディスク上の未記録部から記録部、記録部から未記録部ヘの変化や、大きな欠陥によるRF信号の低下や欠如に対する、ループの周波数応答が問題となってくる。特に、AGCの前段にHPFが設けられる構成が採られ、これによりDC成分を除去するので、上述のように、このHPFによるAGCの過渡応答が原因でエラーを引き起こすという問題もある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、AGC回路の過渡応答を抑制し、再生エラーを低減することができる光ディスク装置及び光ディスクの欠陥処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る光ディスク装置は、信号が記録された光ディスクからの反射光を用いて、前記信号をRF信号として再生するRF信号再生手段と、前記RF信号の周波数より低い周波数を有する、前記再生されたRF信号に含まれた欠陥信号を検出して所定の期間だけ検出信号を出力する検出手段と、前記欠陥信号を減衰させるとともに前記RF信号を通過させるハイパスフィルタと、前記出力された検出信号に基づき、前記所定の期間だけ前記欠陥信号をハイパスフィルタにかけるようにスイッチするスイッチ手段とを具備する。
【0011】
本発明では、光ディスクのRF信号から欠陥信号が検出されているとき、その検出信号が出力されている所定の期間だけその欠陥信号をハイパスフィルタにかけるようなスイッチ手段が設けられている。これにより、スイッチ手段の選択によりハイパスフィルタに欠陥信号が入力された場合、欠陥信号を減衰させることができる。また、例えばこのスイッチの後段にAGC回路が設けられている場合に、そのAGC回路の過渡応答を抑制するために、最適なカットオフ周波数のハイパスフィルタが備えられることが好ましい。欠陥信号の周波数は、例えば50KHz〜200KHzである。
【0012】
本発明の一の形態によれば、前記所定の期間は、前記欠陥信号が発生している期間に含まれる第1の期間、及び該第1の期間の終了時から連続する期間であってその期間の終了時が前記欠陥信号が発生している期間の終了時から遅延する第2の期間でなる。本発明では、実際の欠陥信号の終了時から遅延するまで、欠陥信号に対してハイパスフィルタをかけるようにしたので、欠陥信号の最後の部分でDC成分が尾を引くことを抑制でき、したがって例えばAGC回路の過渡応答を防止することができる。
【0013】
本発明の一の形態によれば、前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、1.0MHz〜3.0MHzであることが好ましい。
【0014】
本発明の一の形態によれば、当該光ディスク装置は、前記反射光量のゲインを自動制御するAGC回路と、前記AGC回路に前記所定の期間だけAGCホールドをかけるAGCホールド手段とをさらに具備する。これにより、さらにAGC回路の過渡応答を抑制するとともに、エラーを低減することができる。
【0015】
本発明の一の形態によれば、当該光ディスク装置は、前記光ディスクに記録された同期信号からクロックを生成するPLL回路と、前記所定の期間だけPLLホールドをかけるPLLホールド手段とをさらに具備すればよい。この同期信号は、光ディスクに所定間隔で記録された信号である。
【0016】
本発明に係る光ディスクの欠陥処理方法は、信号が記録された光ディスクからの反射光を用いて、前記信号をRF信号として再生するステップと、前記RF信号の周波数より低い周波数を有する、前記再生されたRF信号に含まれた欠陥信号を検出して所定の期間だけ検出信号を出力するステップと、前記出力された検出信号に基づき、前記欠陥信号をカットするとともに前記RF信号を通過させるハイパスフィルタに前記所定の期間だけかけるようにスイッチするステップとを具備する。
【0017】
本発明では、検出信号が出力されている所定の期間だけその欠陥信号をハイパスフィルタにかけるようなスイッチングにより、欠陥信号を減衰させ、例えばAGCの過渡応答を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、AGC回路の過渡応答を抑制し、再生エラーを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
この光ディスク装置101は、DVD±R/RW、CD−R/RW、ブルーレイディスクのような光ディスク102を回転駆動するスピンドルモータ103、PD(フォト・ディテクタ)104やレーザ光源105を有する光ピックアップ106、この光ピックアップ106を光ディスク102の半径方向に移動する送りモータ107、装置全体及び信号処理やサーボ制御などの個別制御を行うシステムコントローラ108、光ピックアップ106のPD(フォト・ディテクタ)104から出力される各種の信号に基づいてフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、RF信号を生成するプリアンプ109、ディスク表面のディフェクトによる再生RF信号のDC変動を抑制するディフェクト信号処理回路110、信号の変調、復調及びECCの付加、ECCに基づくエラー訂正処理を行う信号変復調器&ECC部111、スピンドルモータ103及び送りモータ107を駆動制御するサーボ制御部112、外部コンピュータ130を接続するためのインターフェース113、D/A変換器114、オーディオ・ビジュアル処理部115、オーディオ・ビジュアル信号入出力処理部116、レーザ光源105を駆動するレーザ制御部117を有している。
【0022】
図2は、図1に示すディフェクト信号処理回路110の構成を示すブロック図である。ディフェクト信号処理回路110は、上記プリアンプ109からのRF再生信号をそのまま通過させる信号と、コンデンサC1及び抵抗R1でなるハイパスフィルタを通した信号に分割するサブHPF1、分割された信号がIN1及びIN2にそれぞれ入力され、入力されたいずれか一方の信号を選択するRFスイッチ2、コンデンサC2及び抵抗R2でなり、RF信号に含まれる、ディスクの回転周期により発生する低域成分を除去するメインHPF3、メディアによって信号レベルのばらつき等がある場合に、安定的に復調できるようにするために信号レベルを一定レベルに自動的にコントロールするAGC回路4、符号間干渉を抑え、減衰する高域のレベルを増強するイコライザ5、アナログ信号をデジタル変換するA/D変換器6、光ディスク102に所定間隔で記録された同期信号を基にクロックを生成するPLL回路11を有する。また、ディフェクト信号処理回路110は、RF再生信号からディフェクトを検出するディフェクト検出回路7、ディフェクト検出回路7で検出されたディフェクト検出信号のパルスと、そのディフェクトがあった光ディスク上の記録位置、つまりアドレス情報を記憶するメモリ8、このメモリ8の記憶処理や読み出しタイミング等を制御するメモリコントローラ9、メモリ8からアドレス情報を読み出し、また、ディフェクト信号処理回路110の全体的な統括制御を行うプロセッサ10を有している。
【0023】
光ディスクからの反射率の極度の低下または極度の上昇でなるディフェクトは、指紋や傷等で発生し、これらのディフェクトは、1RUBの一部分であるものがほとんどである。したがって、メモリ8が記憶する上記アドレス情報とは、ディフェクトがあったRUBのアドレス情報及びそのRUBごとに1つずつ記録されている同期信号を基準としたディフェクトまでの時間情報等であってもよい。一般的に、ブルーレイの光ディスク102には、1RUBごとに1つの同期信号及び3つのアドレス情報が記録されている。
【0024】
サブHPF1のカットオフ周波数fcsは、メインHPF3のカットオフ周波数fcmより高く設定されている。サブHPF1のカットオフ周波数fcsは、ブルーレイのRF信号である2T〜8Tを十分通過する周波数に設定される。例えばfcsは1MHzに設定される。ブルーレイの2倍速再生のシステムが採用される場合、fcsは1〜3MHzに設定される。一方、メインHPF3のカットオフ周波数fcmは、データエラーを起こさない程度の帯域とされ、例えば33〜66KHzに設定される。
【0025】
プロセッサ10は、ディフェクト検出回路7で検出されたディフェクト信号に基づいて、以下のような、ディフェクト処理のためのディフェクト処理信号21、22及び23を生成し、RFスイッチ2、AGC回路4及びPLL回路11にそれぞれ出力する。具体的には、ディフェクト処理信号21、22及び23は、それぞれ、RFスイッチ2の切り替えるためのスイッチパルス信号21、AGC回路4のゲインをホールドするAGCホールド信号22、及びPLL回路11をホールドするPLLホールド信号23である。PLLホールドは、例えば図示しないVCO(電圧制御発振器)に入力される電圧を、PLLホールド信号23が出力される直前の状態に保持することにより実現される。
【0026】
以上のように構成された光ディスク装置101の大まかな再生動作について説明する。
【0027】
プリアンプ109で再生されたRF信号の出力は、サブHPF1に入力される。適正なRF再生信号が得られている場合には、RFスイッチ2は、IN1を選択してHPF1の出力を入力している。つまり、そのままのRF信号を入力する。そして、メインHPF3により、不要な低域成分やDC成分が除去され、AGC回路4にRF信号が供給される。AGC回路4ではRF信号が一定のゲインに調整され、イコライザ5において、減衰する高域のレベルが増強され、A/D変換器6においてデジタル化されてデータが取り出される。PLL回路11では、A/D変換器6の出力からクロック信号が生成され、信号変復調器&ECC部111においてそのクロック信号を基にデータの復調、エラー訂正が行われる。データの復調及びエラー訂正が行われると、データがインターフェース113を介して外部コンピュータに供給されたり、D/A変換器114でアナログ信号に変換されてオーディオ・ビジュアル処理部115で映像や音声が再生されたりする。
【0028】
図3は、従来において、AGCホールド後のAGC回路の過渡応答を説明するための波形図である。図3(a)に示すように、光ディスク上の大きな傷や指紋等があると、光ディスクからの反射率が大きく低下するような信号が生じる。つまりRF再生信号に大きな落ち込むディフェクト信号が生じる。なお、図3中、斜線で示す部分がRFの高周波信号である。図3(b)に示すように、このディフェクト信号がLPF(ローパスフィルタ)に通されると、周波数の高域が取り除かれる。ディフェクト信号のレベルが図3(b)の閾値レベルTHより小さくなったときに、図3(c)に示すディフェクト検出信号Dが生成される。ディフェクト検出信号Dが生成されると、このディフェクト検出信号Dに基づき、図3(d)に示すようにAまたはBの電位でAGCホールドがかけられる。しかしながら、閾値THの設定により、ディフェクト信号の検出信号Dが遅延してON状態となり、さらに図3(a)に示すディフェクト信号の終了前に検出信号DがOFF状態となっている。このため、図3(d)のAGCホールドが解除された後に、図3(e)(AGC回路の出力を示す。)のCの期間でAGC回路に過渡応答が発生してしまう。また、上述したように、AGC入力にDC成分が含まれていると、過渡応答が生じる。なお、通常、AGC回路の入力前には、ディスクの回転周期で生じる反射率変動による低域成分やDC成分を除去するHPFが設けられているため、AGC出力信号は図3(e)で示すような微分形となる。
【0029】
ディフェクト信号を高精度に検出するために閾値THのレベルを高く設定することも考えられるが、閾値THを高く設定してしまうと、図3(a)のように大きなディフェクトではなく、ECC部でエラー訂正可能な範囲の小さなディフェクトでもディフェクト検出信号として検出してしまうため処理が無駄になる。本実施の形態に係る光ディスク装置101は、上記したようなAGCの過渡応答をなくして、極力エラーを低減しようとするものである。
【0030】
図4に、実際のディフェクトの波形を示す。各グラフの符号31がAGC回路の出力波形、符号32がディフェクト信号(プリアンプの出力)、符号33がディフェクト検出信号(図4(d)、(e)では、図3(b)で示したLPFの出力)である。図に示すように、AGCの出力波形31は、微分された形となっている。図4(a)、(b)及び(c)で示された反射率が低下するディフェクトとは逆に、図4(d)、(e)で示されたディフェクトは反射率が増加するスクラッチ傷である。このようなスクラッチ傷は、比較的幅が狭い。つまり、比較的短時間のディフェクトである。また、図4(c)、(d)及び(e)で示されるディフェクトは、図4(a)及び(b)のディフェクトと比べ、深さが浅く、RF信号の低下が小さいので、サグの発生が大きく見えるが、図4(a)〜(e)はすべて大きなエラーにつながるディフェクトである。
【0031】
また、図8及び図9に、それぞれHPFの低周波応答の波形を示す。これらは、通常AGC回路に入力されるHPFの出力波形であり、図8はステップ波、図9はサイン波で示している。符号34a及び44aは20μs幅のパルス入力であり、符号35a及び45aはそれらに対するHPF応答である。符号34b及び44bは、1μs幅のパルス入力であり、符号35b及び45bはそれらのHPF応答である。これから判るように、低周波の信号がHPFに通されると、信号の後にHPFの時定数による減衰特性を起こす。これが、AGC回路で過渡応答を引き起こす原因となる。
【0032】
図5は、本実施の形態に係るディフェクト処理の信号波形を示す図である。図5(a)に示すように、例えばHS時点で始まり、HE時点で終了する20μs程度のディフェクト信号があった場合、図3(c)で示した場合と同様に閾値を設け、ディフェクト検出回路7は、図5(b)に示すように20μsより短い期間のディフェクト検出信号Dを生成してプロセッサ10に出力する。プロセッサ10は、このディフェクトの検出期間に対応する光ディスク102上のアドレス情報を、そのディフェクト検出期間の情報と対応付けてメモリ8に記憶させる。この場合、プロセッサ10は、再生クロック(例えば66MHz)を10MHz程度に分周してメモリ8に書き込めばよい。ディフェクトは数μsからであり、0.1μs程度の精度であれば十分だからである。
【0033】
ディフェクト検出信号Dが検出されると、通常再生時においては、プロセッサ10は、図5(c)に示すように、ディフェクト検出信号Dの期間よりxだけ長いディフェクト処理信号Fを生成する。このディフェクト処理信号F(あるいは、後述するディフェクト処理信号G)は、上述したように、ディフェクトによる影響を改善するための信号であり、RFスイッチ2、AGC回路4及びPLL回路11にそれぞれ出力する信号である。このxは、図5(a)に示すディフェクト信号の終了時HEを含むように、つまり、ディフェクト処理信号Fの終了時FEがHEと同じ、あるいはHEより後になるように設定される。このxは、例えば4〜8μsとすればよい。これにより、ディフェクト処理期間が長くなり、例えば、このディフェクト処理信号Fの期間だけAGCホールドを行えば、AGCホールド解除後のAGC過渡応答等を抑えることができる。これにより、エラーを低減することができる。AGCホールドに限らず、PLLホールドや、後述するようにRFスイッチ2によるスイッチング処理も合わせて行うようにしてもよい。なお、PLLホールドは、20μs以下のディフェクト信号に対しては行わない。
【0034】
一方、図5(c)で示すディフェクト処理信号Fが生成された場合でも、ECCが破綻した場合、プロセッサ10は再度の再生(リトライ)を行うように制御する。具体的には、プロセッサ10は、メモリ8に記憶された、ディフェクトが生じたRUBのディスク上のアドレス情報に基づき、例えばそのディフェクト部分が含まれるRUBの1ブロックを再生するための図示しないリード信号を生成し、さらに、メモリ8に記憶されたディフェクト検出の信号パルスRをメモリ8から読み出す。この場合、同期信号を基準としたディフェクト開始(ディフェクト検出信号Dの立上がり)までの時間情報等に基づき、そのディフェクト検出の信号パルスRの読み出されるタイミングが次のように設定される。つまり、信号パルスRの立上がりRSがディフェクトの信号の開始時HSより前となるように設定される。さらに、プロセッサ10は、図5(e)に示すように、元のディフェクト検出信号Dよりyだけ早めたディフェクト処理信号Gを生成する。このyは、ディフェクト処理信号Gのパルスが、HS〜HEを完全に包含するように設定される。図5では、FEとGEとが同じタイミングになっているが、これは異なるタイミングであってもよい。また、yは、例えば4〜8μsとすればよい。これにより、例えば約6μs分のエラー改善区間を増やすことができ、ECCの破綻を抑制することができる。
【0035】
また、ブルーレイディスクのトラックピッチpは、図6に示すように、0.32μmと狭く、数百μmのディフェクト15、16、17及び18が有った場合、隣接するトラック同士では、ディスク回転周期においてほぼ同じタイミングで、ほぼ同じ影響を受ける事となる。つまり、ディフェクト15等に対してトラックピッチpが十分小さければ、ディフェクトの形に関わらず、トラックごとのディフェクト形状はほぼ相似と言える。従って、CLV(Constant Linear Velocity)の連続再生では、ディスク1回転前のディフェクト信号を使用する事が可能となるので、通常再生(アドレスが連続変化する再生)でもエラーの低減をすることができる。つまり、一度ディフェクトの信号を検出し、そのアドレスを記憶していれば、ディスクの回転周期でほぼ同じ、あるいは相似形のディフェクトが検出されることが予測可能となる。このことを利用することにより、大きなディフェクトがあってもリトライを要せず、連続再生が可能となり、無駄なリトライ動作を減らすことができる。この場合、具体的には、各トラックごとのディフェクトは相似形であることが多いので、図5(e)に比べて、図7(e)に示すようにエラー改善区間が6±Xμs(Xはディフェクトの予測形状に応じた値である。)となる。
【0036】
次に、RFスイッチ2に関わる部分の動作について説明する。
【0037】
プリアンプ109の出力は、図2に示すサブHPF1に入力され、上述したように、適正なRF再生信号が得られている場合には、RFスイッチ2は、IN1を選択してHPF1の出力を入力している。つまり、そのままのRF信号を入力する。
【0038】
一方、図5(a)に示すようなディフェクト信号が合った場合、ディフェクト検出回路7は、図5(b)に示すような検出信号をプロセッサ10に出力する。プロセッサ10は、この検出信号に基づいて、図5(e)に示すように、リトライ時のディフェクト処理信号G、例えばスイッチパルスを生成してRFスイッチ2に出力する。そうすると、RFスイッチ2は、IN2にディフェクト信号を入力する。つまり、ディフェクト信号をサブHPF1のハイパス部を通すようにする。これにより、ディフェクト信号を減衰させることができ、エラーを低減することができる。
【0039】
また、プロセッサ10は、スイッチパルス信号21だけでなく、これに加え、AGCホールド信号22及びPLLホールド信号23のうち少なくとも一方を出力するようにしてもよい。
【0040】
図10及び図11は、RFスイッチ2によるDC成分除去の様子を示す波形図である。符号36はディフェクト低周波信号、符号37はRFスイッチ2のIN1に信号が入力された場合のメインHPF3の出力、符号38はサブHPF1のハイパスそのものの出力(IN2に入力される信号)をそれぞれ示している。また、符号39は、符号41のスイッチパルスがディフェクト信号から遅延してRFスイッチ2に入力され、これによりRFスイッチ2でIN2が選択された場合の当該RFスイッチ2の出力、符号40はそのときのメインHPF3の出力をそれぞれ示している。動作をわかりやすくするため、このようにスイッチパルス41の入力を、ディフェクト信号36に対して遅延させた。実際の回路では、図3(c)や図5(b)等で示したように、ディフェクト検出はディフェクト信号に対して遅れるので、より現実に近く、わかりやすい。また、図11で示すスイッチパルス41は、図10のそれに比べ遅くON状態になるように、かつ、ディフェクト信号36の終了時より早くOFF状態になるようにした。
【0041】
図10及び図11から、IN2にスイッチングされることにより、メインHPF3による影響がなくなっていることが判る。このように、ディフェクト信号があったときは、メインHPF3の入力前、つまり、AGC回路4の入力前に、メインHPF3の時定数より小さい時定数のサブHPF1に切り替えられることで、AGC回路4の過渡応答を抑制し、エラーを低減することができる。
【0042】
図12及び図13は、(a)、(b)及び(c)それぞれディフェクトの応答の実際の波形を示す図であり、図12は本実施の形態に係るもの、図13は従来のものである。符号42aはディフェクト信号、符号43aはサブHPF1を通してRFスイッチのIN2に切り替えられたときのAGC回路4の出力でAGCホールドをかけたもの、符号44aはディフェクト検出信号である。図13についても同様であり、符号43bはサブHPF1及びRFスイッチ2はない状態で、AGCホールドをかけない場合のAGC回路の出力を示している。図12、図13において、それぞれの(a)、(b)及び(c)はディフェクトの種類や幅が異なる。
【0043】
図13においては、ディフェクト信号の最後におけるAGC出力波形43bにDC変動が見えるが、図12ではそのDC変動が改善されていることが判る。図13(b)においては、DC変動がないように見えるが、これは、DCレベルが符号43b−1で示す部分で一旦上がっており、かつ、DCが変化する位置にRF信号がないためである。この場合、エラーが低減される。
【0044】
図14、図15及び図16は、図12及び図13に示すようなディフェクトのあるRUBを再生して、LDC(Long Distance Code)エラーを測定したときの測定結果を示すグラフである。横軸が測定回数、縦軸がLDCのエラー個数を示している。なお、LDCは、ブルーレイディスクで採用されている誤り訂正の方式であり、リードソロモン符号のパリティを長くして訂正能力を向上させたものである。
【0045】
図14は、ディフェクトのタイプが図中(1)や(2)の場合のグラフである。図14から判るように、AGCホールドなしの場合に比べ、AGCホールドの場合及びAGCホールド+スイッチング処理の場合に、エラーが大幅に改善されている。
【0046】
図15は、ディフェクトのタイプが図14と同様に(1)や(2)の場合のグラフであり、14の場合より測定回数を多くしたものである。図15において、RFゲートとは、ディフェクト検出があったときに信号を遮断してしまう処理である。この図15から判るように、3者とも同等の改善効果が得られている。図15に示す結果から、ECCの破綻を1RUB当り3000個と仮定すると、AGCホールドでは6個、AGCホールドなしでは、平均1個、AGCホールド+スイッチング処理では6個まで許容される。
【0047】
図16は、ディフェクトタイプが図中(3)に示すようなタイプの場合のグラフである。AGCホールドした方が、しないときより安定に劣化している。AGCホールドした場合に比べ、AGCホールド+スイッチング処理では安定して半減する。図16に示す結果から、ECCの破綻を1RUB当り3000個と仮定すると、AGCホールドでは4個、AGCホールドなしでは、平均7個、AGCホールド+スイッチング処理では9個まで許容される。
【0048】
図14、図15及び図16から、AGCホールド+スイッチング処理のように組み合わせの処理が最もエラーが低減することが判る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すディフェクト信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図3】従来において、AGCホールド後のAGC回路の過渡応答を説明するための波形図である。
【図4】実際のディフェクトの波形を示す。
【図5】本実施の形態に係るディフェクト処理の信号波形を示す図である。
【図6】ディスク表面のディフェクトとトラックピッチとの関係を示す模式図である。
【図7】図6に示すディフェクト処理をする場合の信号波形を示す図である。
【図8】HPFの低周波応答の波形(ステップ波入力)を示す図である。
【図9】HPFの低周波応答の波形(サイン波入力)を示す図である。
【図10】RFスイッチによるDC成分除去の様子を示す波形図である。
【図11】RFスイッチによるDC成分除去の様子を示す波形図である(スイッチパルスタイミングを変えた場合)。
【図12】本実施の形態に係るディフェクトの応答の実際の波形図である。
【図13】従来におけるディフェクトの応答の実際の波形図である。
【図14】LDCエラーを測定したときの測定結果を示すグラフである(その1)。
【図15】LDCエラーを測定したときの測定結果を示すグラフである(その2)。
【図16】LDCエラーを測定したときの測定結果を示すグラフである(その3)。
【図17】RFスイッチの実際の回路例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 サブHPF
2 RFスイッチ
3 メインHPF
4 AGC回路
7 ディフェクト検出回路
8 メモリ
10 プロセッサ
11 PLL回路
101 光ディスク装置
102 光ディスク
110 ディフェクト信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号が記録された光ディスクからの反射光を用いて、前記信号をRF信号として再生するRF信号再生手段と、
前記RF信号の周波数より低い周波数を有する、前記再生されたRF信号に含まれた欠陥信号を検出して所定の期間だけ検出信号を出力する検出手段と、
前記欠陥信号を減衰させるとともに前記RF信号を通過させるハイパスフィルタと、
前記出力された検出信号に基づき、前記所定の期間だけ前記欠陥信号をハイパスフィルタにかけるようにスイッチするスイッチ手段と
を具備することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記所定の期間は、前記欠陥信号が発生している期間に含まれる第1の期間、及び該第1の期間の終了時から連続する期間であってその期間の終了時が前記欠陥信号が発生している期間の終了時から遅延する第2の期間でなることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、1.0MHz〜3.0MHzであることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記反射光量のゲインを自動制御するAGC回路と、
前記AGC回路に前記所定の期間だけAGCホールドをかけるAGCホールド手段と
をさらに具備することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記光ディスクに記録された同期信号からクロックを生成するPLL回路と、
当該光ディスク装置は、前記所定の期間だけPLLホールドをかけるPLLホールド手段と
をさらに具備することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
信号が記録された光ディスクからの反射光を用いて、前記信号をRF信号として再生するステップと、
前記RF信号の周波数より低い周波数を有する、前記再生されたRF信号に含まれた欠陥信号を検出して所定の期間だけ検出信号を出力するステップと、
前記出力された検出信号に基づき、前記欠陥信号をカットするとともに前記RF信号を通過させるハイパスフィルタに前記所定の期間だけかけるようにスイッチするステップと
を具備することを特徴とする光ディスクの欠陥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−120256(P2006−120256A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307683(P2004−307683)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】