説明

光ディスク装置

【課題】 光ディスクの表面形態の違いを適確に検知し、それによって光ディスクの種類を正確に判別することができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】 光ディスク装置は、グルーブを有する第1の光ディスクおよびグルーブを有しない第2の光ディスクを含む複数種類の光ディスクのうちから任意に選択された光ディスクが装填され得る。この光ディスク装置は、光ディスク1の記録面にレーザ光を照射する光学系と、光ディスク1の内周側および外周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第1出力信号および第2出力信号を生成する光検出部7と、光ディスク1の記録トラックを横断するようにレーザ光の照射位置を移動させる照射位置制御部10と、装填されている光ディスク1がグルーブを有しているか否かを第1出力信号および/または第2出力信号の上側エンベロープ信号に基づいて判断するディスク判別部13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ディスク装置に関し、より詳細には、当該装置に装填された光ディスクが再生専用の光ディスクおよび記録可能な光ディスクのいずれであるかを判別することのできる光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】DVD等の光ディスクは、AV(Audio Video)データやコンピュータデータのデジタル著作物を記録する媒体として広く普及している。光ディスクは、再生専用のものと記録可能なものに大別される。記録可能ディスクは、著作権を侵害しない範囲での記録を目的として作製されているが、デジタル著作物を不正にコピーする用途に使われ、違法ディスクの流布につながることもある。これを防止するため、光ディスク装置では、再生専用ディスクと記録可能ディスクを判別し、記録可能ディスクが装填されている場合には、著作権保護のための適切な処理を行なう必要がある。記録可能ディスクの改竄による誤判別を防止するため、再生専用ディスクと記録可能ディスクの物理的な構造の相違を検出して判別する必要がある。
【0003】以下、図面を参照しながら、再生専用ディスクと記録可能ディスクとの間にある物理的な構造の相違を説明する。
【0004】図1(a)は、再生専用ディスクの記録面の一部を切り取った斜視図であり、隣接する2つの記録トラック140が拡大表示されている。
【0005】図1(a)に示される再生専用ディスクでは、鏡面状の記録面に螺旋状の記録トラック140に沿ってピット141とスペース142が配列されている。ピット141は、鏡面状の記録面に対して垂直な方向に変位した部分(凹部または凸部)であり、エンボス状に形成されている。スペース142は、記録トラック140上においてピット141が形成されていない鏡面部分である。情報は、ピット141とスペース142の配列によって記録されている。
【0006】図1(b)は、記録可能ディスクの記録面の一部を切り取った斜視図であり、隣接する2つのグルーブ143が拡大表示されいる。グルーブ143は、記録トラック上に形成されている。
【0007】図1(b)に示される記録可能ディスクでは、グルーブ143に沿って記録マーク144とスペース145が配列されている。グルーブ143は、光ディスク上において螺旋状または同心円状に形成されている。図1(b)では明確に示されていないが、光ディスク上には記録膜が形成されている。記録膜には、書き込み用レーザパルスの照射によって屈折率が変化する相変化型記録膜や光吸収率が変化する有機色素膜が広く用いられている。記録マーク144は、レーザパルスの照射によって記録膜の相変化等が局所的に生じた部分であり、書換え可能に形成され。記録マーク144が形成されている部分と、スペース145の部分との間では、読み出し用レーザ光に対する反射率が異なるため、読み出し用レーザ光をグルーブ上に照射し、その反射光の強度(反射光量)を検出すれば、記録マーク144およびスペース145の配列状態を検知することが可能である。こうして記録可能ディスク上の情報は記録マーク144とスペース145の配列によって随時記録される。
【0008】上述のように、再生専用ディスクと記録可能ディスクとの間には、記録面上に物理的な構造の違いがあり、グルーブは、記録可能ディスクにしか存在しない。
【0009】特許文献1は、記録可能ディスクにしか存在しないグルーブに注目し、グルーブの有無を検出することによって記録可能ディスクと再生専用ディスクの判別を行なう技術を開示している。
【0010】図2を参照しながら、特許文献1に開示されているグルーブ検出方法を説明する。図2は、光ディスク装置のグルーブ検出に用いられる装置の構成を示している。
【0011】図2に示す構成では、領域A、B、C、Dに分割されたフォトディテクタ(PD)200が光ディスクから反射した光ビームを受け、各領域A、B、C、Dで光電変換が行われる。その結果、各領域A、B、C、Dに入射した光の強さ(光量)に応じて4種類の電気信号が出力される。
【0012】フォトディテクタ200の4つの領域A、B、C、Dから出力された電気信号は、加算回路201に入力される。加算回路200は、これらの電気信号をすべて加算し、RF信号を出力する。
【0013】加算回路201から出たRF信号は、サンプルホールド(SH)回路202へ入力される。サンプルホールド回路202は、加算回路201から出たRF信号のサンプルおよびホールドを行い、ピークホールド信号を生成する。
【0014】サンプルホールド回路202から出力されるピークホールド信号は、ローパスフィルタ(LPF)203に入力される。ローパスフィルタ203は、サンプルホールド回路202が出力するピークホールド信号の高周波成分を除去し、上側エンベロープ信号を生成する。
【0015】図3(a)は、記録可能ディスクが装填されている場合に得られるRF信号Hと上側エンベロープ信号Iの波形例を示し、図3(b)は再生専用ディスクが装填されている場合に得られるRF信号Hと上側エンベロープ信号Iの波形例を示している。図3(a)および(b)は、光ディスク上における光ビームスポットが光ディスクの記録トラックを横断する際に得られるRF信号Hおよび上側エンベロープ信号Iの波形を示している。なお、RF信号Hは、図2の加算回路201から出力される信号である。エンベロープ信号Iは、図2のローパスフィルタ203から出力される信号であり、エンベロープ信号Iの波形は、RF信号Hの上側エンベロープの形と等しい。
【0016】図3(a)に示すように、記録可能ディスクが光ディスクに装填されている場合は、光ビームスポットが記録トラックを横切る際にグルーブによる光の回折の影響で反射光量が変化する。このため、RF信号Hの上側エンベロープは、光ビームスポットが単位時間当たりに横切るグルーブの数に対応した周波数で変動し、その周波数で上側エンベロープIも変動する。
【0017】再生専用ディスクが光ディスク装置に装填されている場合は、光ディスクの記録面にグルーブが形成されていないため、光ビームスポットが記録トラックを横断しても、図3(b)に示すように、RF信号Hの上側エンベロープはほとんど変動しない。したがって、エンベロープ信号Iもほとんど変動しない。
【0018】特許文献1に記載されている光ディスク装置では、このように記録可能ディスクと再生専用ディスクから得られる上側エンベロープ信号Iにグルーブの有無による違いが生じることに着目し、この違いを検出することでディスクの判別を行なっている。
【0019】
【特許文献1】特開2001−28159号公報
【特許文献2】特開2001−357533号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来技術によれば、フォトディテクタが受けた光の総量に基づいてディスク判別を行なっているため、光ディスク上における光ビームスポットの形状や光量分布グルーブの構成等の違いに応じてエンベロープ信号の変化が微小になる場合があり、その場合は、光ディスクのグルーブの有無を判別することが困難になる。光ビームスポットの形状や光量分布は、光ヘッドの光学系の構成や光ディスクの設計によって異なるほか、光ディスクに対する光ビームのチルト、フォーカス位置ずれからも影響を受ける。このため、上記従来技術では、グルーブ有無の判別について十分に高い信頼性が得られない。
【0021】本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、光ビームスポットの形状や光量分布の違いに影響を受けることなく、光ディスクの表面形態の違いを適確に検知し、それによって光ディスクの種類を正確に判別することができる光ディスク装置およびその駆動方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明による光ディスク装置は、グルーブを有する第1の光ディスクおよびグルーブを有しない第2の光ディスクを含む複数種類の光ディスクのうちから任意に選択された光ディスクが装填され得る光ディスク装置であって、装填された光ディスクの記録面にレーザ光を照射する光学系と、前記光ディスクからの反射光を受け、前記光ディスクの内周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第1出力信号、および、前記光ディスクの外周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第2出力信号を生成する光検出部と、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置が前記光ディスクの記録トラックを横断するように前記レーザ光の前記光ディスク上における照射位置を移動させる照射位置制御部と、装填されている光ディスクがグルーブを有しているか否かを前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および/または第2出力信号の上側エンベロープ信号に基づいて判断するディスク判別部とを備えている。
【0023】ある好ましい実施形態において、前記第1の光ディスクは記録膜を備えた記録可能光ディスクであり、前記第2の光ディスクは前記記録トラックに沿って形成された複数のピットを有する再生専用光ディスクである。
【0024】ある好ましい実施形態において、前記光検出部は、前記光ディスクからの反射光を受光し、前記レーザ光が照射された部分の光を、少なくとも前記記録トラックの接線方向に2分割するように前記光ディスクからの反射光を分割し、その各光量に応じた信号を出力する。
【0025】ある好ましい実施形態において、前記ディスク判別部は、前記第1出力信号または前記第2出力信号を受け取り、受け取った信号について高強度側のピーク検波を行なうことにより受光量の最大値を検出し、前記上側エンベロープ信号を生成するピーク検波回路と、前記上側エンベロープ信号の交流振幅を検出する振幅検出部とを有する。
【0026】ある好ましい実施形態において、前記ディスク判別部は、前記第1出力信号および前記第2出力信号を受け取り、受け取った出力信号の各々について高強度側のピーク検波を行なうことにより受光量の最大値を検出し、前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および前記第2出力信号の上側エンベロープ信号を生成するピーク検波回路と、前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および前記第2出力信号の上側エンベロープ信号の差を検出する差分検出部と、前記差分検出部の出力する信号の交流振幅を検出する振幅検出部とを有する。
【0027】ある好ましい実施形態において、前記ピーク検波回路から出力される信号の極値のうち、反射光量の高い方の極値によって前記振幅検出部の出力信号を正規化する振幅正規化部をさらに有している。
【0028】ある好ましい実施形態において、前記ピーク検波回路は、前記光ディスクの内周側から反射された光の全光量に応じた第1出力信号、および/または、前記光ディスクの外周側から反射された光の全光量に応じた第2出力信号を受け取り、前記第1出力信号および/または第2出力信号の反射光量の高い方のピーク検波を行なう。
【0029】ある好ましい実施形態において、前記レーザ光の照射位置と前記記録トラックの中心とのずれに応じたトラッキング誤差信号を、前記光検出部の出力信号に基づいて出力するトラッキング誤差検出部を備え、前記振幅検出部は、前記ピーク検波回路の出力信号のうち、前記トラッキング誤差検出部の出力信号に同期した成分の振幅を検出する同期検波部を有し、前記同期検波部の出力を前記交流振幅として出力する。
【0030】ある好ましい実施形態において、前記振幅検出部は、定められた第1の時間内における前記ピーク検波回路の出力信号の最大値および最小値を検出する最大小値検出部と、前記最大小値検出部が検出した最大値と最小値との間にある差を検出する最大小値差検出部とを有し、前記最大小値差検出部の出力を前記交流振幅として出力する。
【0031】ある好ましい実施形態において、前記最大小値検出部は、前記定められた第1の時間を複数に分割した第2の時間内ごとに前記ピーク検波回路の出力信号の最大値と最小値を検出する分割最大小値検出部と、前記分割最大小値検出部が検出した複数の最大値の平均値および複数の最小値の平均値を検出する平均値検出部を有し、前記平均値検出部が出力する前記複数の最大値の平均値および複数の最小値の平均値を、前記ピーク検波回路の出力信号の定められた第1の時間内における最大値および最小値とする。
【0032】ある好ましい実施形態において、前記平均値検出部は、前記分割最大小値検出部が検出した前記複数最大値中の最大値および最小値または最大値および最小値とそれぞれに大きさで順ずる複数の値、および前記複数最小値中の最大値および最小値または最大値および最小値とそれぞれに大きさで順ずる複数の値を除外して前記複数最大値および複数最小値の平均値を検出する。
【0033】ある好ましい実施形態において、前記光検出部の出力信号に基づき、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置が前記記録トラックをある時から定められた回数横断する時間を検出する横断時間検出部を有し、前記最大小値検出部は、前記定められた第1および第2の時間を前記横断時間検出部が出力する時間とする。
【0034】ある好ましい実施形態において、前記ピーク検波回路は、前記光検出部から出力された前記第1出力信号および/または前記第2出力信号の波形を鈍らせる回路要素を有している。
【0035】ある好ましい実施形態において、前記照射位置制御部は、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置を前記光ディスクの一定の半径位置に固定し、回転する前記光ディスクの偏心によって前記レーザ光の照射位置を前記記録トラックの中心からオフセットさせる。
【0036】ある好ましい実施形態において、前記照射位置制御部は、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置を前記光ディスクの半径方向に移動させ、それによって前記レーザ光の照射位置を前記記録トラックの中心からオフセットさせる。
【0037】ある好ましい実施形態において、前記ディスク判別部の出力に基づいて前記光ディスクの再生の許可/非許可を決定する再生制御部を有しており、前記再生制御部は、装填されている前記光ディスクが再生専用光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合には前記光ディスクの再生を許可し、装填されている前記光ディスクが記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合には前記光ディスクの再生を許可しない。
【0038】ある好ましい実施形態において、装填されている前記光ディスクが記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合に、前記記録可能光ディスクに記録されている情報が合法的に記録されているか、または違法的に記録されているかを検出する記録状況検出部を備えている。
【0039】ある好ましい実施形態において、前記ディスク判別部の出力および前記記録状況検出部の出力に基づいて前記光ディスクの再生の許可/非許可を決定する再生制御部を有しており、前記再生制御部は、装填されている光ディスクが再生専用光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合、または、装填されている光ディスクが記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別し、かつ前記記録可能ディスクへの情報の記録が合法的であることを前記記録状況検出部が検出した場合に、前記光ディスクの再生を許可し、前記ディスク判別部が記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別し、かつ前記記録可能ディスクへの情報の記録が違法であることを前記記録状況検出部が検出した場合に、前記光ディスクの再生を許可しない。
【0040】本発明による光ディスク装置は、ディスクの記録面形状が異なる複数種類の光ディスクのうちから任意に選択された光ディスクが装填され得る光ディスク装置であって、装填された光ディスクの記録面にレーザ光を照射する光学系と、前記光ディスクからの反射光を受け、前記光ディスクの内周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第1出力信号、および、前記光ディスクの外周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第2出力信号を生成する光検出部と、前記レーザ光の前記光ディスク上における照射位置を移動させる照射位置制御部と、前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および/または第2出力信号の上側エンベロープ信号に基づいて、装填されている光ディスクの種類を判断するディスク判別部とを備えている。
【0041】本発明による光ディスク装置の駆動方法は、グルーブを有する記録可能ディスクおよびグルーブを有しない再生専用ディスクを含む複数種類の光ディスクのうちから任意に選択された光ディスクが装填され得る光ディスク装置の駆動方法であって、装填された光ディスクの記録面にレーザ光を照射するステップと、前記光ディスクからの反射光を受け、前記光ディスクの内周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第1出力信号、および、前記光ディスクの外周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第2出力信号を生成するステップと、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置が前記光ディスクの記録トラックを横断するように前記レーザ光の前記光ディスク上における照射位置を移動させるステップと、装填されている光ディスクがグルーブを有しているか否かを前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および/または第2出力信号の上側エンベロープ信号に基づいて判断するステップとを包含する。
【0042】ある好ましい実施形態において、装填されている前記光ディスクが再生専用ディスクであると判別した場合には前記光ディスクの再生を許可し、装填されている前記光ディスクが記録可能ディスクであると判別した場合には前記光ディスクの再生を許可しないステップをさらに包含する。
【0043】ある好ましい実施形態において、装填されている前記光ディスクが記録可能光ディスクであると判別した場合には、前記記録可能光ディスクに記録されている情報が合法的に記録されているか、または違法的に記録されているかを検出するステップを包含し、違法的に記録されている場合には、光ディスクの再生を行なわない。
【0044】
【発明の実施の形態】図4は、本発明の光ディスク装置に用いられる光ヘッドの構成例を示している。図示されている光ヘッド8は、半導体レーザ3、コリメートレンズ4、ビームスプリッタ5、対物レンズ6、および、フォトディテクタ7を含む光学系を搭載したユニットである。
【0045】図4は、光ディスク装置に光ディスク1が装填された状態の断面を模式的に示しており、装填された光ディスク1はモータ2によって回転させられる。
【0046】光ヘッド8の半導体レーザ3は、光ディスク1に照射するための光ビームを出力し、コリメートレンズ4は、半導体レーザ3から出力される光ビームを平行光に変換する。ビームスプリッタ5は、コリメートレンズ4から出射された平行光を対物レンズ6へ通過させるとともに、対物レンズ6から出射された平行光(光ディスク1からの反射光)をフォトディテクタ7のある方向へ分離する。対物レンズ6は、コリメートレンズ4および光ビームスプリッタ5を透過してきた平行光を集光して光ディスク1の記録面上に光ビームスポットを形成する。また、対物レンズ6は、光ディスク1で反射された光を平行光に変換してビームスプリッタ5へ出射する。
【0047】フォトディテクタ7は、ビームスプリッタ5から出射された平行光を受け、受けた光の強さ(光量)に比例した電気信号を出力する。この電気信号は、記録トラックに沿って記録された情報を含む高周波数(RF)成分を含んでいるので、本明細書では「RF信号」と称する。フォトディテクタ7は、図2を参照しながら説明した公知のフォトディテクタと同様に、複数の検出領域に分割されており、異なる検出領域に入射した光の強度を別々に検出することができる。
【0048】光ビームで光ディスクの記録面を照射すると、光ビームは光ディスクによって反射され、反射光ビームの強度分布(光軸に垂直な面内の分布)は、光ディスク上における光ビームの照射位置(光ビームスポットの位置)によって変化する。フォトディテクタ7は、このような反射光ビームについて、記録トラックの接線方向に沿って分割した2つの領域(内周側と外周側)の強度を別々に検出できるように構成されている。
【0049】このような構成のフォトディテクタ7からは、内周側RF信号と外周側RF信号が出力される。内周側RF信号は、光ディスク1上の光ビームスポットを記録トラック接線方向で2つの部分に分割した場合におけるディスク内周側部分の反射光量に比例した信号である。これに対して、外周側RF信号は、光ディスク1上の光ビームスポットを記録トラック接線方向で2つの部分に分割した場合におけるディスク外周側部分の反射光量に比例した信号である。
【0050】前述した従来技術では、フォトディテクタから出力されるRF信号の合計に基づいて、光ディスク上のグルーブの有無を検知しようとしているが、本発明では、フォトディテクタ7の出力を内周側RF信号と外周側RF信号に分離し、内周側RF信号若しくは外周側RF信号、または、これらのRF信号の差分に基づいて光ディスク1上のグルーブの有無を検出する。図3に記載しているエンベロープ信号は、フォトディテクタから出力されるRF信号の合計の上側エンベロープ信号であるが、この信号の振幅は状況によって非常に小さくなる場合があり、安定していない。これに対して、本発明の光ディスク装置で用いる内周側RF信号の上側エンベロープ信号や外周側RF信号の上側エンベロープ信号は、後に詳しく説明するように、振幅が大きく、安定している。
【0051】本発明の光ディスク装置において、光ディスク1のグルーブの有無をどのようにして検出するかを説明する前に、まず、図5および図6を参照しながら、外周側RF信号および内周側RF信号の波形を詳細に説明する。
【0052】図5は、再生専用ディスクの記録トラックを光ビームスポットが横断する様子と、その際に得られる外周および内周側RF信号波形を示している。なお、波形の上方向が反射光量の高い方向に対応する。
【0053】図5では、隣接する3本の記録トラック120が拡大表示されており、記録トラック120上にピット121が形成されている。また、光ディスクの内周側から外周側へ3本の記録トラックを横断する光ビームスポットの軌道122が図示されている。
【0054】図5には、軌道122に沿って光ビームスポットが移動した場合に得られる外周側RF信号123および内周側RF信号126の波形も示されている。
【0055】再生専用ディスクの記録面には、ピット121と鏡面が存在する。光ビームスポットの位置が鏡面にあるときは光の回折が起こらず、反射光量が最大である。一方、光ビームスポットの位置がピット121上または近傍にあるときは、光の回折により、光ビームスポットとピットの位置関係に依存して反射光量が減少する。このため、光ビームスポットがピット121の近傍にないときは、光ビームスポットの記録トラック120に対する相対的な位置関係によらない反射光量が得られる。この結果、外周側RF信号123の上側エンベロープ124および内周側RF信号126の上側エンベロープ127は、略一定レベルの信号となる。
【0056】これに対し、光ビームスポットの位置がピット121上またはビット121の近傍に位置するとき、外周側RF信号123および内周側RF信号126の大きさは小さくなる。このため、外周側RF信号123の下側エンベロープ125および内周側RF信号126の下側エンベロープ128は、光ビームスポットが記録トラック120を横断する際に変動する。
【0057】図6は、記録可能ディスクの記録トラックを光ビームスポットが横断する様子と、その際に得られる外周および内周側RF信号波形を示している。なお、波形の上方向が反射光量の高い方向に対応する。
【0058】図6では、隣接する3本のグルーブ130が拡大表示されており、グルーブ130に記録マーク131が形成されている。また、光ディスクの内周側から外周側へ3本のグルーブ130を横断する光ビームスポットの軌道132が図示されている。
【0059】図6には、軌道132に沿って光ビームスポットが移動した場合に得られる外周側RF信号133および内周側RF信号136の波形も示されている。
【0060】記録可能ディスクの記録面にはグルーブ131による凹凸が存在するため、この凹凸によって光の回折が起こる。このため、光ビームスポットのグルーブ中心からのオフセット量に比例して反射光量が変化する。また、記録マーク131の反射率が低いため、光ビームスポットの位置が記録マーク131上または近傍にあるときは、反射光量が減少する。その結果、上側エンベロープ134および137は、光ビームスポットがグルーブ130を横断する際の光の回折の変化を反映して変動する。
【0061】なお、光ビームスポットがグルーブ130の中心、または隣接する1つのグルーブ130の中間に位置するときは、内周側と外周側の回折が対称になるため、内周側と外周側の反射光量は等しい。一方、光ビームスポットがグルーブ130のエッジに位置するときは、回折が対称にならない。具体的には、光ビームスポットがグルーブ130の内周側のエッジに位置するときは内周側よりも外周側の反射光量が少なく、光ビームスポットがグルーブ130の外周側のエッジに位置するときは、外周側よりも内周側の反射光量が少ない。したがって、外周側RF信号133の上側エンベロープ134と内周側RF信号136の上側エンベロープ137の波形は、相互に略反転した関係(位相が略180°ずれた関係)にある。
【0062】なお、光ビームスポットが記録マーク131上または近傍に位置する間は、外周側RF信号133および内周側RF信号136の値は減少する。このため、下側エンベロープ135、138も、光ビームスポットがグルーブ130を横断する状態を反映して変動する。
【0063】以上のように、現在広く用いられている記録可能ディスクおよび再生専用ディスクの間には、グルーブの有無によって、外周RF信号の上側エンベロープまたは内周側RF信号の上側エンベロープに違いが見られる。すなわち、グルーブが存在する光ディスクの場合は、光スポットのグルーブ横断周波数と等しい周波数で上記RF信号の上側エンベロープが変動する。これに対して、グルーブが存在しない光ディスクの場合は、上記RF信号の上側エンベロープに変動がなく、略一定の値となる。
【0064】本発明の光ディスク装置では、グルーブの有無による上記信号波形の違いを利用して記録可能ディスクと再生専用ディスクとを判別する。
【0065】なお、本実施形態では、フォトディテクタ7の構成を、光ビームスポットの反射光量を記録トラックの接線方向に2分割して検出できる構成を採用している。故に、内周側RF信号は光ビームスポットの内周側全体の反射光量に比例した信号であり、外周側RF信号は、光ビームスポットの外周側全体の反射光量に比例した信号である。しかし、フォトディテクタ7の構成は、このような構成に限定されず、光ビームスポットの反射光量を記録トラックまたはグルーブの接線方向に2分割し、さらに前記接線方向と垂直な方向に2分割して検出できる構成を採用してもよい。このような4分割フォトディテクタを採用する場合は、内周側の一部の反射光量に比例した2つの信号のどちらか、および外周側の一部の反射光量に比例した2つの信号のどちらかを内周側RF信号および外周側RF信号として用いても良い。この場合も、図5および図6に示した波形と同様の波形を持つ信号を得ることができ、グルーブの有無を検知し、記録可能ディスクと再生専用ディスクの判別を行なうことができる。また、この場合において、記録トラックの接線方向に対して対称な位置からの反射光量に応じた信号を内周側RF信号および外周側RF信号とすることが好ましい。そのようにすることにより、内周側RF信号の上側エンベロープと外周側RF信号の上側エンベロープの波形が相互に略反転した関係となるからである。
【0066】フォトディテクタの構成は、上記のものに限定されず、さらに多数の領域に分割されていてもよい。
【0067】(実施形態1)次に、本発明による光ディスク装置の第1の実施形態を説明する。図7は、本実施形態の光ディスク装置における主要部分の構成を示している。
【0068】図7の光ディスク装置は、図4に示す光ヘッド8を備えるとともに、以下に説明する構成要素、すなわち、トラッキング誤差検出部9、照射位置制御部10、ピーク検波回路11、振幅検出部12、ディスク判別部13、記録状況検出部14、および再生制御部15を備えている。
【0069】トラッキング誤差検出部9は、光ヘッド8のフォトディテクタ7から出力される信号を受け取り、フォトディテクタ7の出力信号からトラッキング誤差を検出してトラッキング誤差信号を生成する。
【0070】照射位置制御部10は、トラッキング誤差検出部9が出力するトラッキング誤差信号に基づいて制御信号を生成し、光ヘッド8へ出力する。この制御信号により、光ヘッド8を駆動するアクチュエータなどの動作が調節され、光ディスク1上における光ビームスポットの照射位置が制御される。
【0071】トラッキング誤差検出部9および照射位置制御部10の構成や動作は公知のものであってよい。
【0072】本実施形態のピーク検波回路11は、フォトディテクタ7が出力する外周側RF信号を受け取り、その上側エンベロープ信号を生成する。
【0073】振幅検出部12は、ピーク検波回路11が出力する上側エンベロープ信号の振幅(図9参照)を検出し、上側エンベロープ信号の極値のうち反射光量が高い方の極値によって上記振幅を正規化した信号を生成する。
【0074】ディスク判別部13は、振幅検出部12が出力する信号に基づいて、光ディスク装置に装填された光ディスク1がグルーブを有するか否か、すなわち、再生専用ディスクであるか記録可能ディスクであるかを判別する。この判別の結果、装填された光ディスクが再生専用ディスクの場合は、“0”を示す2値信号を記録状況検出部14と再生制御部15へ出力する。一方、装填された光ディスクが記録可能ディスクの場合は、“1”を示す2値信号を記録状況検出部14および再生制御部15へ出力する。
【0075】記録状況検出部14は、ディスク判別部13が出力する2値信号が“1”を示す場合、フォトディテクタ7の出力信号に基づいて、光ディスクに記録されている情報が合法的に記録されているか、または違法的に記録されているかを検出する。そして、記録が合法的である場合は、“0”を示す2値信号を再生制御部15へ出力する。一方、記録が違法的である場合は、“1”を示す2値信号を再生制御部15へ出力する。なお、ディスク判別部13が出力する2値信号が“0”を示す場合、記録状況検出部14は何も行なわず、“0”を示す2値信号を再生制御部15へ出力する。
【0076】本実施形態における再生制御部15は、ディスク判別部13が出力する2値信号と記録状況検出部14が出力する2値信号とのAND演算を行なう。AND演算の結果が“0”である場合は、装填された光ディスク1の再生を「許可」を示す再生制御信号を本装置の再生動作部(不図示)へ出力する。一方、AND演算の結果が“1”である場合は、「不許可」を示す再生制御信号を本装置の再生動作部(不図示)へ出力する。
【0077】次に、図8を参照しながら、振幅検出部12の詳細を説明する。図8は、振幅検出部12の内部構成を示している。
【0078】最大小値検出部300は、ピーク検波回路11が出力する上側エンベロープ信号の定められた第1の時間内における最大値と最小値を検出する(図9参照)。なお、定められた第1の時間は、光ビームスポットの位置が複数回記録トラックまたはグルーブを横断する時間であり、例えば0.020秒に設定される。最大小値検出部300は、内部に分割最大小値検出部301と平均値検出部302を有する。分割最大小値検出部301は、上記の定められた第1の時間を複数分割した第2の時間内ごとにピーク検波回路11が出力する上側エンベロープ信号の最大値と最小値を検出する。なお、定められた第2の時間は光ビームスポットの位置が少なくとも1回以上記録トラックを横断する時間であり、例えば0.002秒に設定される。
【0079】平均値検出部302は、分割最大小値検出部301が検出した複数の最大値の平均値と複数の最小値の平均値をそれぞれ検出し、その値を定められた第1の時間内における上側エンベロープ信号の最大値および最小値として出力する。なお平均値を検出する際に、複数の最大値および最小値のそれぞれの中での最大値および最小値を除外して平均値を検出する。
【0080】最大小値差検出部303は、最大小値検出部300が出力する最大値と最小値の差を上側エンベロープ信号の振幅絶対値として検出する。
【0081】振幅正規化部304は、最大小値差検出部303が出力する振幅絶対値を、最大小値検出部300が出力する最大値によって正規化し、上側エンベロープ信号の振幅正規化値として検出する。
【0082】本実施形態の振幅検出部12は、上記の構成を有することにより、ピーク検波回路11が出力する上側エンベロープ信号の交流振幅を検出することができる。
【0083】次に、記録状況検出部14の構成を詳細に説明する。
【0084】記録状況検出部14は、装填されている光ディスクを記録可能ディスクであるとディスク判別部13が判定した場合、記録されている情報が合法的な記録によるものか、違法的な記録によるものかを検出する。この検出は、例えば光ディスク時様にコンテンツの他に記録マークに重畳して記録されている副情報を用いて行なうことができる。このような検出方法は、特許文献2に記載されている。特許文献2に記載されている技術よれば、記録マークの光ディスク円周方向の位相ずれによって副情報が記録されている場合に、合法的な記録と判定する。違法な記録を行った場合、位相ずれがなくなるため、副情報は記録されない。
【0085】記録状況検出部14は、フォトディテクタ7の出力信号から記録マークの位相ずれを検出することによって副情報の有無を検出し、副情報がある場合は合法的な記録であると判定し、ない場合は違法的な記録であると判定する。
【0086】次に、ディスク判別のフローを説明する。
【0087】まず、モータ2により、装填された光ディスク1が回転する。照射位置制御部10は、回転する光ディスク1の記録面に光ビームスポットを形成した状態で、光ビームスポットが光ディスク1の記録トラックを横断するように光ヘッド8の位置制御を行なう。このとき、フォトディテクタ7が出力する外周側および内周側RF信号は、図5および図6に示すような波形を示す。
【0088】以降の動作については、図9を用いて説明する。図9は、図7に示す本実施形態における構成要素の入出力信号の波形の一例を示している。図9(a)は、グルーブを有する記録可能ディスクが光ディスク装置に装填されている場合に得られる信号波形の一例を示し、図9(b)は、グルーブを有さない再生専用ディスクが光ディスク装置に装填されている場合に得られる信号波形の一例を示している。
【0089】図9(a)および(b)に示されている外周側RF信号Aはフォトディテクタ7の出力信号であり、上側エンベロープ信号Bはピーク検波回路11によって外周側RF信号Aのピーク検波を行なった結果得られる信号である。トラッキング誤差信号Cは、トラッキング誤差検出部9の出力信号である。トラッキング誤差信号Cの周波数は、光ディスク上における光ビームスポットが光ディスク1の記録トラックを横断する周波数と等しい。
【0090】記録可能ディスクが光ディスク装置に装填されている場合は、図9(a)に示すように、外周側RF信号Aの上側エンベロープはトラッキング誤差信号Cと同じ周波数で振動する。このため、上側エンベロープ信号Bはトラッキング誤差信号Cと同周波数で振動する信号となる。したがって、トラッキング誤差信号Cの数周期に渡って振幅検出部12内部の最大小値検出部300により上側エンベロープ信号Bの最大値と最小値とを検出し、最大小値差検出部303によりその差を検出して得られる振幅絶対値は、ある一定以上の値となる。さらに、振幅正規化部304によって上側エンベロープBの最大値で正規化を行なって得られる振幅正規化値も、ある一定以上の値となる。
【0091】再生専用ディスクが光ディスク装置に装填されている場合、図9(b)に示すように、外周側RF信号Aの上側エンベロープはほとんど変動しない。このため上側エンベロープ信号Bもほとんど変動のない信号となる。したがって、振幅検出部12によってトラッキング誤差信号Cの数周期に渡って上側エンベロープ信号Bの振幅正規化値を検出した値は、略0(ゼロ)となる。
【0092】以上のようにして、ディスク判別部13は、振幅検出部12が求めた値が一定以上の値の場合に装填ディスクが記録可能ディスクであると判別し、一定以下の値の場合は装填ディスクが再生専用ディスクであると判定する。
【0093】上記の説明では、外周側RF信号を用いて判別を行っているが、内周側RF信号を用いて判別を行なうこともできる。
【0094】また、フォトディテクタ7が、光ビームスポットの反射光量を記録トラックまたはグルーブの接線方向に2分割し、さらに前記接線方向と垂直な方向に2分割して検出できる構成を採用しても良い。このような構成のフォトディテクタを用いると、内周側の一部の反射光量に比例した2つの信号のどちらか、および外周側の一部の反射光量に比例した2つの信号のどちらかを内周側RF信号および外周側RF信号として用いることができる。
【0095】ディスク判別以降のフローは、以下のとおりである。
【0096】記録状況検出部14は、装填されている光ディスクが記録可能ディスクであるとディスク判別部13が判定した場合、その光ディスクに記録されている情報が合法的な記録によるものか、違法的な記録によるものかを検出し、検出結果に依存した2値信号を出力する。装填されている光ディスクが再生専用ディスクであるとディスク判別部13が判定した場合は、2値信号の値を“0”として出力する。
【0097】再生制御部15は、ディスク判別部13および記録状況検出部14が出力する2つの2値信号のAND演算を行なう。ここで、装填されている光ディスクが再生専用ディスクである場合、および合法的に記録された記録可能ディスクである場合の演算結果は“0”となり、再生を許可する。違法的に記録された記録可能ディスクである場合の演算結果は“1”であり、再生を許可しない。
【0098】本実施形態の光ディスク装置における再生動作部は、このような再生の許可および不許可の指示に従って再生動作を行なうことになる。
【0099】光ディスクの記録トラックの接線方向に2分割したフォトディテクタの出力信号の一方を用いて得られる上側エンベロープ信号の振幅は、従来技術におけるエンベロープ信号の振幅の数倍となる。したがって、高い信頼性を持ってディスク判別を行なうことができる。その結果、再生専用ディスクおよび合法的に記録された記録可能ディスクは再生するが、違法的に記録された記録可能ディスクは再生せず、違法ディスクの流布を強力に防止することができる。
【0100】副情報の記録は、記録マークの位相ずれを用いて行なう例に限らない。記録が合法的であるか違法的であるかの検出も、副情報を利用する例に限らず、他に様々な検出方法を用いることが可能である。
【0101】記録可能ディスク上の情報が合法的に記録されているか否かを検出する記録状況検出部14は、本発明の光ディスク装置にとって不可欠の構成要素ではない。この記録状況検出部14を備える代わりに、ディスク判別部13の判定結果のみに基づいて再生制御部15が装填光ディスクの再生の許可または不許可を決定してもよい。この場合、ディスク判別部13が出力する2値信号の値が“0”である場合は装填された光ディスク1の再生を許可とし、“1”である場合は不許可とする再生制御信号を本光ディスク装置の再生動作部(不図示)へ出力する。このような光ディスク装置では、再生専用ディスクのみを再生し、記録可能ディスクは再生しない。したがって、違法的に記録されている可能性のある光ディスクは再生しないため、違法ディスクの流布を強力に防止することができる。
【0102】定められた第1の時間および第2の時間については、光ビームスポットが記録トラックを横断する速度を予想して計算される一定の時間であってもよい。あるいは、トラッキング誤差検出部9が出力するトラッキング誤差信号の周期を随時観測し、所定数の周期が観測される時間であってもよい。前者の場合は、ディスク判別時におけるソフトウェアやハードウェアの負担を最小限にして実現できる。後者の場合は、振幅検出動作中に光ディスクの回転速度の変化や偏心等によって光ビームスポットが記録トラックを横断する速度が変化しても、一定の横断回数ごとに安定して最大小値を検出できるため、振幅検出の信頼性を向上できる。
【0103】照射位置制御部10が光ディスク上の光ビームスポットに記録トラックを横断させる方法には、大きく分けて以下の2通りある。
【0104】第1の方法は、光ビームスポットの位置を光ディスクの一定の半径位置に固定し、光ディスクの回転の偏心によって記録トラックまたはグルーブが光ビームスポットに対して相対的に半径方向に移動するのを利用する方法である。この方法では、光ヘッド8を半径方向へ移動させる必要がないため、ソフトウェア等における移動制御処理の負担がなく簡単に実現できるうえ、消費電力も軽減できる。
【0105】第2の方法は、光ヘッド8を光ディスク1の内周向きまたは外周向きの一定の半径方向へ移動させることで光ビームスポットに記録トラックを横断させる方法である。この方法によれば、光ビームスポットが記録トラックを横断する方向が一定である。したがって、ある一本の記録トラックを横断する間に光ディスクの偏心によって横断方向が逆向きになるようなことがない。このため、上側エンベロープ信号の振幅が低下せず、安定した振幅検出を行なえる。
【0106】光ディスクの半径方向への移動制御については、あらかじめ記録トラックの半径方向の幅、ならびに、光ビームスポットを移動させる速度および横断させる本数に基づいて計算される一定の時間移動させてもよい。あるいは、トラッキング誤差検出部9が出力するトラッキング誤差信号の周期を随時観測し、一定の周期が観測されるまで半径方向へ移動させてもよい。前者の場合は、ディスク判別時におけるソフトウェアやハードウェアの負担を最小限にして実現できる。後者の場合は振幅検出動作中に光ディスクの回転速度の変化や偏心等によって光ビームスポットが記録トラックおよびグルーブを横断する速度が変化しても、一定の回数横断させることができるため、安定した振幅検出を行なえる。
【0107】上側エンベロープ信号の交流振幅検出では、振幅正規化部304によって上側エンベロープ信号の最大値、すなわち外周側RF信号または内周側RF信号の反射光量最大値によって正規化を行なう。反射光量最大値は、光ビームスポットの形状や光量分布の違い、および光ディスクの種類ごとに異なる反射率のみによって実質的に決まる。したがって、反射光量最大値による正規化を行なうと、上側エンベロープ信号の振幅から、これらの影響を除去することができ、グルーブの有無による振幅の違いをより明確に検出できる。
【0108】本実施形態では、図8に示すように、最大小値検出部300の定められた第1の時間内における最大値と最小値の検出において、分割最大小値検出部301によって定められた第1の時間を複数分割して複数回最大値と最小値を検出し、平均値検出部302によってこれらの複数の値を平均化した値を検出する。このような検出方式を採用するため、ノイズや、光ディスクの記録面の欠陥、DVD−RディスクやDVD−RWディスクに存在するLPP(Land Pre−Pit)等によって、グルーブの有無とは関係なく上側エンベロープ信号が突出する変化を検出したとしても、その影響を緩和でき、振幅の誤検出を防止できる。
【0109】上記の平均化を行なう際、複数の最大値および最小値のそれぞれの中での最大値および最小値を除外して平均化することが好ましい。これにより、ノイズや記録面の欠陥、およびLPPの影響をより軽減することができる。
【0110】なお、複数の最大値および最小値のそれぞれ中での最大値および最小値だけでなく、それぞれに大きさで順ずる複数の値をさらに除外して平均化してもよい。これにより、さらにノイズや記録面の欠陥、およびLPPの影響を軽減することができる。
【0111】本実施形態では、振幅検出の信頼性を向上させるために分割最大小値検出部301および平均値検出部302による平均化や、振幅正規化部304による正規化を行なっている。しかし、これらの処理を省略しても、上側エンベロープ信号の振幅を検出できる。最大値および最小値は、順次サンプルした値を比較することで検出でき、簡単な回路構成またはプログラムによって実現できる。このため、平均化や正規化の処理を省略すれば、より簡単な構成を採用しながら短時間で振幅を検出することができる。
【0112】振幅検出部12の振幅検出方法について、以上に述べた方法とは異なる方法を採用することも可能である。図10は、振幅検出部12の内部構成の他の例を示している。図10の同期検波部305は、ピーク検波回路11が出力する上側エンベロープ信号に対して、トラッキング誤差検出部9が出力するトラッキング誤差信号による同期検波を行なって検出される値を上側エンベロープ信号の振幅として出力する。
【0113】トラッキング誤差信号の周波数は、光ディスク上の光ビームスポットが光ディスクの記録トラックを横断する周波数と等しい。したがって、同期検波によって上側エンベロープ信号中のトラッキング誤差信号の周波数と等しい周波数を持つ成分の振幅を検出すれば、グルーブの影響による変動を抽出することになる。その結果、より厳密にグルーブの有無を検出できる。なお、トラッキング誤差信号の生成は、プッシュプル方式であるか位相差方式であるかを問わない。
【0114】図8を参照しながら説明したのと同様に、同期検波部305の出力をさらに振幅正規化部によって上側エンベロープ信号の反射光量最大値による正規化を行なってもよい。正規化を行なうことにより、さらに厳密にグルーブの有無を検出できる。
【0115】(実施形態2)次に、本発明による光ディスク装置の第2の実施形態を説明する。図11は、本実施形態の光ディスク装置の主要部分を示している。図11R>1において、図7に示す構成要素に対応する構成要素には同一の参照符号を付している。本光ディスク装置は、図11に示すように、実施形態1と同様の構成を有しているが、フォトディテクタ7が出力する外周側RF信号および内周側RF信号の両方についてビーク検波を行い、その差分を求めている点で異なっている。
【0116】以下、本実施形態の光ディスク装置の構成要素を詳細に説明する。
【0117】本実施形態のトラッキング誤差検出部20は、第1の実施形態と同様に、フォトディテクタ7の出力信号からトラッキング誤差を検出してトラッキング誤差信号を生成する。また、照射位置制御部26は、トラッキング誤差検出部20の出力信号であるトラッキング誤差信号に基づいて光ヘッド8へ制御信号を出力し、光ビームスポットの照射位置を制御する。
【0118】本実施形態におけるピーク検波回路は、ピーク検波回路21および22によって実現しており、ピーク検波回路21および22は、それぞれ、フォトディテクタ7が出力する内周側RF信号および外周側RF信号の上側エンベロープを検出し、内周上側エンベロープ信号および外周上側エンベロープ信号を生成する。これらの上側エンベロープ信号は、差分検出部23および振幅検出部24へ出力される。
【0119】差分検出部23は、ピーク検波回路21および22から出力される内周上側エンベロープ信号および外周上側エンベロープ信号の差分を検出して、差分信号を生成する。差分信号は振幅検出部24へ出力される。
【0120】振幅正規化部としても機能する振幅検出部24は、差分検出部23が出力する差分信号の振幅を検出し、内周上側エンベロープ信号と外周上側エンベロープ信号の反射光量が高い方の極値の平均値によって正規化する。正規化された信号は、ディスク判別部25へ出力される。
【0121】ディスク判別部25は、振幅検出部24が出力する振幅値に基づいて、装填された光ディスク1が再生専用ディスクであるか記録可能ディスクであるかを判別する。層分されている光ディスクが再生専用ディスクの場合は、“0”を示す2値信号を記録状況検出部27および再生制御部28へ出力する。一方、装填されている光ディスクが記録可能ディスクの場合は、“1”を示す2値信号を記録状況検出部27および再生制御部28へ出力する。
【0122】記録状況検出部27は、ディスク判別部25の出力する2値信号が“1”である場合に、光ディスク1な記録されている情報が合法的に記録されているか、または違法的に記録されているかを検出する。そいて、合法的である場合は“0”、違法的である場合は“1”を示す2値信号を再生制御部28へ出力する。一方、ディスク判別部25の出力が“0”である場合、記録状況検出部27は何も行なわず、“0”を示す2値信号を再生制御部28へ出力する。
【0123】再生制御部28は、ディスク判別部25が出力する2値信号とディスク判別部27が出力する2値信号のAND演算を行なう。演算結果が“0”である場合、装填された光ディスク1の再生を許可とし、“1”である場合は不許可とする再生制御信号を本装置の再生動作部(不図示)へ出力する。
【0124】次に、振幅検出部24の詳細について説明する。図12は振幅検出部24の内部構成を示す図である。
【0125】最大小値検出部310は、差分検出部23が出力する差分信号の定められた第1の時間内における最大値と最小値を検出する。なお、定められた第1の時間は、光ビームスポットの位置が複数回記録トラックまたはグルーブを横断する時間である。
【0126】最大小値検出部310は、内部に分割最大小値検出部311と平均値検出部312を有する。分割最大小値検出部311は、定められた第1の時間を複数分割した第2の時間内ごとに、差分検出部23が出力する差分信号の最大値と最小値を検出する。なお、定められた第2の時間は光ビームスポットの位置が少なくとも1回以上記録トラックまたはグルーブを横断する時間である。
【0127】平均値検出部312は、分割最大小値検出部311が検出した複数の最大値の平均値と複数の最小値の平均値をそれぞれ検出する。そして、その値を定められた第1の時間内における差分信号の最大値および最小値として出力する。なお、平均値を検出する際に、複数の最大値および最小値のそれぞれの中での最大値および最小値を除外して平均値を検出する。
【0128】最大小値差検出部313は、最大小値検出部310が出力する最大値と最小値の差を差分信号の振幅絶対値として検出する。
【0129】最大光量検出部314は、ピーク検波回路21および22が出力する内周上側エンベロープ信号と外周上側エンベロープ信号の反射光量最大値を検出し、さらに、これらの平均値を検出して振幅正規化部315へ出力する。
【0130】振幅正規化部315は、最大小値差検出部303が出力する振幅絶対値を最大光量検出部314が出力する値によって正規化し、差分信号の振幅正規化値として検出する。
【0131】本実施形態の振幅検出部24は、このようにして差分検出部23が出力する差分信号の交流振幅を検出する。
【0132】次に、記録状況検出部27の詳細を説明する。
【0133】記録状況検出部27は、ディスク判別部25が装填されている光ディスクを記録可能ディスクであると判定した場合、記録されている情報が合法的な記録によるものか、違法的な記録によるものかを検出する。この検出は、実施形態1について述べたように、特許文献2に記載されているような副情報を用いて行なうことができる。記録状況検出部27は、フォトディテクタ7の出力信号から副情報の有無を検出し、副情報がある場合は合法的な記録であると判定し、ない場合は違法的な記録であると判定する。
【0134】次に、本実施形態におけるディスク判別のフローを説明する。
【0135】まず、モータ2によって光ディスク1が回転する。照射位置制御部26は、回転する光ディスク1の記録面に光ビームスポットが照射された状態で、光ビームスポットが光ディスク1の記録トラックを横断するように光ヘッドの位置制御を行なう。このとき、フォトディテクタ7が出力する外周側および内周側RF信号は、図5および図6に示すような波形を示す。
【0136】以降の動作については、図13を用いて説明する。図13は、図11に示す本実施形態における構成要素の入出力信号の波形の一例を示している。図13(a)は、グルーブを有する記録可能ディスクを光ディスク装置に装填した場合に得られる信号波形の一例を示し、図13(b)は、グルーブを有さない再生専用ディスクを光ディスク装置に装填した場合に得られる信号波形の一例を示している。
【0137】図13(a)および(b)に示されている内周側RF信号Dおよび外周側RF信号Eは、フォトディテクタ7の出力信号である。内周上側エンベロープ信号Fはピーク検波回路21によって内周側RF信号Dのピーク検波を行なった結果得られる信号であり、外周上側エンベロープ信号Gはピーク検波回路22によって外周側RF信号Eのピーク検波を行なった結果得られる信号である。差分信号Hは、差分検出部23によって前記内周上側エンベロープ信号Fと前記外周上側エンベロープ信号Gの差を検出した信号である。トラッキング誤差信号Iは、トラッキング誤差検出部20の出力信号である。トラッキング誤差信号Iの周波数は、光スポットの位置が光ディスク1の記録トラックを横断する周波数と等しい。
【0138】記録可能ディスクが光ディスク装置に装填されている場合、図13(a)に示すように、内周上側エンベロープ信号Fおよび外周上側エンベロープ信号Gは、トラッキング誤差信号Iと同周波数で振動する。また、両上側エンベロープ信号F、Gの波形は、略互いに反転した関係にある。このため、内周上側エンベロープ信号Fと外周上側エンベロープ信号Gの差を示す差分信号Hは、トラッキング誤差信号Iと同じ周波数で振動する。したがって、振幅検出部24によってトラッキング誤差信号Iの数周期に渡って差分信号Hの振幅を決定すると、その振幅の大きさは、ある一定以上の値となる。さらに、振幅正規化部315によって内周上側エンベロープ信号および外周上側エンベロープ信号の最大値の平均値による正規化を行なうと、それによって得られる振幅正規化値も、ある一定以上の値となる。
【0139】再生専用ディスクが光ディスク装置に装填されているの場合、図13(b)に示すように、外周側RF信号Dおよび内周側RF信号の上側エンベロープは、ほとんど変動しない。このため、差分信号Hも、ほとんど変動のない信号となる。したがって、振幅検出部24によってトラッキング誤差信号Iの数周期に渡って差分信号Hの振幅正規化値を検出すると、その検出した値は略0となる。
【0140】本実施形態のディスク判別部25は、上記のようにして振幅検出部24が求めた値が一定以上の値の場合に、記録可能ディスクであると判別し、一定以下の値の場合は再生専用ディスクであると判定する。
【0141】なお、フォトディテクタ7は、光ビームスポットの反射光量を記録トラックまたはグルーブの接線方向に2分割し、さらに前記接線方向と垂直な方向に2分割して検出できる構成を備えていてもよい。そして、記録トラックの接線方向に対して等しい位置からの反射光量に応じた信号となるように、内周側の一部の反射光量に比例した信号および外周側の一部の反射光量に比例した信号を検出し、これらの信号を内周側RF信号および外周側RF信号としても良い。
【0142】ディスク判別以降のフローは、以下のとおりである。
【0143】記録状況検出部27は、装填されている光ディスクが記録可能ディスクであるとディスク判別部25が判定した場合、光ディスクに記録されている情報が合法的な記録によるものか、違法的な記録によるものかを検出し、検出結果に依存した2値信号を出力する。装填されている光ディスクが再生専用ディスクであるとディスク判別部25が判定した場合は何も検出せず、2値信号の値を“0”にして出力する。
【0144】再生制御部28は、ディスク判別部25および記録状況検出部27が出力する2つの2値信号のAND演算を行なう。ここで、装填されている光ディスクが再生専用ディスクである場合、および合法的に記録された記録可能ディスクである場合の演算結果は“0”となり、再生を許可する。一方、違法的に記録された記録可能ディスクである場合の演算結果は“1”であり、再生を許可しない。本実施形態における光ディスク装置の再生動作部は、このような再生の許可および不許可の指示に従って再生動作を行なう。
【0145】本実施形態で用いる差分信号Hの振幅は、第1の実施形態で得られる上側エンベロープ信号の振幅の約2倍である。また、差分検出部によって同相ノイズが除去される。したがって、より高い信頼性を持ってディスク判別を行なうことができる。その結果、再生専用ディスクおよび合法的に記録された記録可能ディスクは再生するが、違法的に記録された記録可能ディスクは再生せず、違法ディスクの流布を強力に防止することができる。
【0146】なお、記録可能ディスクの記録が違法的であるか合法的であるかの検出については、第1の実施形態で述べたのと同様に副情報を利用する例に限らず、他に様々な検出方法を採用することができる。
【0147】また、記録可能ディスクが合法的に記録されているか違法的に記録されているかを検出する記録状況検出部27を備えず、再生制御部28はディスク判別部25の判定結果のみから装填されている光ディスクの再生の許可または不許可を決定してもよい。この場合、ディスク判別部25が出力する2値信号の値が“0”である場合は装填された光ディスク1の再生を許可とし、“1”である場合は不許可とする再生制御信号を本装置の再生動作部(不図示)へ出力する。このような場合、再生専用ディスクのみを再生し、記録可能ディスクは再生しない。したがって、違法的に記録されている可能性のある光ディスクは再生しないため、違法ディスクの流布を強力に防止することができる。
【0148】定められた第1の時間および第2の時間は、第1の実施形態について述べたように、あらかじめ光ビームスポットが記録トラックを横断する速度を予想して計算される一定の時間であってもよいし、トラッキング誤差検出部20が出力するトラッキング誤差信号の周期を随時観測し、一定の周期が観測される時間であってもよい。これらの利点は、第1の実施形態で述べた内容と同じである。
【0149】照射位置制御部26による光ビームスポットの位置制御も第1の実施形態と同様に行なえ、光ビームスポットに記録トラックを横断させる方法も、前述のように2通りある。
【0150】差分信号の交流振幅検出は、振幅正規化部315によって内周上側エンベロープ信号と外周上側エンベロープ信号の最大値の平均値、すなわち外周側RF信号と内周側RF信号の反射光量最大値の平均値によって正規化を行なっている。反射光量最大値は、略光ビームスポットの形状や光量分布の違い、および光ディスクの種類ごとに異なる反射率のみから決まる値である。したがって、反射光量最大値による正規化を行なうと、上側エンベロープ信号の振幅においてこれらの影響を除去することができ、グルーブの有無による振幅の違いをより明確に検出できる。
【0151】本実施形態では、最大小値検出部310の定められた第1の時間内における最大値と最小値の検出において、分割最大小値検出部311によって定められた第1の時間を複数分割して複数回最大値と最小値を検出し、平均値検出部312によってこれらの複数の値を平均化した値を検出する。このため、ノイズや光ディスクの記録面の欠陥、DVD−RディスクおよびDVD−RWディスクに存在するLPP等によってグルーブの有無とは関係なく差分信号が突出する変化を検出してもその影響を緩和でき、振幅の誤検出を防止できる。
【0152】平均化する際に、複数の最大値および最小値のそれぞれの中での最大値および最小値を除外することが好ましい。これにより、ノイズや記録面の欠陥、およびLPPの影響をより軽減することができる。また、複数の最大値および最小値のそれぞれ中での最大値および最小値だけでなく、それぞれに大きさで順ずる複数の値をさらに除外して平均化してもよい。これにより、さらにノイズや記録面の欠陥、およびLPPの影響を軽減することができる。
【0153】本実施形態では、振幅検出の信頼性を向上させるために分割最大小値検出部311および平均値検出部312による平均化や、振幅正規化部315による正規化を行なっている。しかし、これらの処理を省略しても、差分信号の振幅を検出できる。最大値および最小値の検出は、順次サンプルした値を比較することで検出でき、簡単な回路構成またはプログラムによって実現できる。このため、平均化や正規化の処理を省略すれば、より簡単な構成を採用しながら短時間で振幅を検出することができる。
【0154】振幅検出部24の振幅検出方法について、以上に述べた方法とは異なる方法を採用することも可能である。図14は、振幅検出部24の内部構成の他の例を示している。図14の同期検波部316は、差分検出部23が出力する差分信号に対して、トラッキング誤差検出部20が出力するトラッキング誤差信号による同期検波を行なって検出される値を差分信号の振幅として出力する。
【0155】このような構成によれば、同期検波によって差分信号中のトラッキング誤差信号の周波数と等しい周波数を持つ成分の振幅を検出できる。このため、グルーブの影響による変動を抽出でき、より厳密にグルーブの有無を検出できる。なお、トラッキング誤差信号の生成は、プッシュプル方式であるか位相差方式であるかを問わない。
【0156】また、同期検波部316の出力を、図12に示す場合と同様に、さらに振幅正規化部によって内周上側エンベロープ信号と外周上側エンベロープ信号の反射光量最大値の平均値による正規化を行なってもよい。正規化を行なうことにより、さらに厳密にグルーブの有無を検出できる。
【0157】次に、図15を参照しながら、第1の実施形態と第2の実施形態で用いられるピーク検波回路を説明する。
【0158】図15は、ピーク検波回路の回路構成を示す図である。図15において、Qはトランジスタ、Cはコンデンサ、R1およびR2は抵抗を示している。
【0159】ピーク検波回路は、入力される信号の最大値を検出して、上側エンベロープ信号を出力する。抵抗R1は、最大値に対する応答速度に時定数を与え、応答速度を遅くするために挿入されている。フォトディテクタから出力される内周側および外周側RF信号は、急速に変動して値の大きい方向に突出することがある。これは、信号に重畳するノイズや、光ディスクの記録面の欠陥やDVD−RディスクおよびDVD−RWディスクに存在するLPPの影響による。抵抗R1が回路に挿入されていないと、このような変動に対して上側エンベロープ信号が応答してしまい、振幅検出部で検出される振幅が、本来検出されるべき値よりも大きくなり、グルーブの有無の検出を誤る可能性がある。
【0160】本実施形態では、上側エンベロープ信号が、このような内周側および外周側RF信号の急速な変動に応答するのを抑制するため、抵抗R1とコンデンサCによってローパスフィルタを構成している。このローパスフィルタにより、内周側および外周側RF信号の高周波数成分を取り除くことができる。上記のような急速な変動からの影響を小さくするようにローパスフィルタのカットオフ周波数を設計すれば、上側エンベロープ信号の応答が抑制される。このため、振幅の誤検出を避け、高い信頼性を持ってグルーブの有無を検出することができる。
【0161】
【発明の効果】本発明によれば、光ビームスポットの形状や光量分布の違いに影響を受けることなく、光ディスクの表面形態の違いを適確に検知し、それによって光ディスクの種類を正確に判別することができる光ディスク装置が提供される。また、本発明の好ましい実施形態では、光ディスクが再生専用ディスクか記録可能ディスクであるかを適確に判別することにより、記録可能ディスクの場合に記録されている情報が著作権を侵害するか否かを判断する。そして、著作権を侵害するような情報の記録がなされている場合は、光ディスクの再生を許可しないため、著作権侵害に係る不正なコピーのなされた光ディスクの拡布を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、再生専用ディスクの記録面の一部を切り取った斜視図であり、(b)は、記録可能ディスクの記録面の一部を切り取った斜視図である。
【図2】光ディスク装置のグルーブ検出に用いられる装置の構成を示す図である。
【図3】(a)は、記録可能ディスクが装填されている場合に得られるRF信号Hとエンベロープ信号Iの波形図であり、(b)は再生専用ディスクが装填されている場合に得られるRF信号Hとエンベロープ信号Iの波形図である。
【図4】本発明の光ディスク装置に用いられ得る光ヘッドの構成を示す図である。
【図5】再生専用ディスクの記録トラックを光ビームスポットが横断する様子と、その際に得られる外周および内周側RF信号波形を示す図である。
【図6】記録可能ディスクの記録トラックを光ビームスポットが横断する様子と、その際に得られる外周および内周側RF信号波形を示す図である。
【図7】本発明の光ディスク装置の第1の実施形態の構成を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における振幅検出部12の内部構成を示すブロック図である。
【図9】(a)は、本発明の第1の実施形態において、グルーブを有する記録可能ディスクが光ディスク装置に装填された場合に得られる信号波形の一例を示す図であり、(b)は、グルーブを有さない再生専用ディスクが光ディスク装置に装填された場合に得られる信号波形の一例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態における振幅検出部12の内部構成の他の例を示している。
【図11】本発明の第2の実施形態の構成を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における振幅検出部24の内部構成を示す図である。
【図13】(a)は、本発明の第1の実施形態において、グルーブを有する記録可能ディスクを光ディスク装置に装填した場合に得られる信号波形の一例を示す図であり、(b)は、グルーブを有さない再生専用ディスクを光ディスク装置に装填した場合に得られる信号波形の一例を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における振幅検出部24の内部構成の他の例を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態におけるピーク検波回路の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
1 光ディスク
2 モータ
8 光ヘッド
3 半導体レーザ
4 コリメートレンズ
5 ビームスプリッタ
6 対物レンズ
7 フォトディテクタ
9 トラッキング誤差検出部
10 照射位置制御部
11 ピーク検波回路
12 振幅検出部
13 ディスク判別部
14 記録状況検出部
15 再生制御部
20 トラッキング誤差検出部
21 ピーク検波回路
22 ピーク検波回路
23 差分検出部
24 振幅検出部
25 ディスク判別部
26 照射位置制御部
27 記録状況検出部
28 再生制御部
120 記録トラック
121 ピット
122 光ビームスポットの軌道
123 外周側RF信号
126 内周側RF信号
130 グルーブ
131 記録マーク
132 光ビームスポットの軌道
133 外周側RF信号
136 内周側RF信号
140 記録トラック
141 ピット
142 スペース
143 グルーブ
144 記録マーク
145 スペース
300 最大小値検出部
301 分割最大小値検出部
302 平均値検出部
303 最大小値差検出部
304 振幅正規化部
305 同期検波部
310 最大小値検出部
311 分割最大小値検出部
312 平均値検出部
313 最大小値差検出部
314 最大光量検出部
315 振幅正規化部
316 同期検波部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 グルーブを有する第1の光ディスクおよびグルーブを有しない第2の光ディスクを含む複数種類の光ディスクのうちから任意に選択された光ディスクが装填され得る光ディスク装置であって、装填された光ディスクの記録面にレーザ光を照射する光学系と、前記光ディスクからの反射光を受け、前記光ディスクの内周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第1出力信号、および、前記光ディスクの外周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第2出力信号を生成する光検出部と、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置が前記光ディスクの記録トラックを横断するように前記レーザ光の前記光ディスク上における照射位置を移動させる照射位置制御部と、装填されている光ディスクがグルーブを有しているか否かを前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および/または第2出力信号の上側エンベロープ信号に基づいて判断するディスク判別部と、を備えている光ディスク装置。
【請求項2】 前記第1の光ディスクは記録膜を備えた記録可能光ディスクであり、前記第2の光ディスクは前記記録トラックに沿って形成された複数のピットを有する再生専用光ディスクである、請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】 前記光検出部は、前記光ディスクからの反射光を受光し、前記レーザ光が照射された部分の光を、少なくとも前記記録トラックの接線方向に2分割するように前記光ディスクからの反射光を分割し、その各光量に応じた信号を出力する、請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】 前記ディスク判別部は、前記第1出力信号または前記第2出力信号を受け取り、受け取った信号について高強度側のピーク検波を行なうことにより受光量の最大値を検出し、前記上側エンベロープ信号を生成するピーク検波回路と、前記上側エンベロープ信号の交流振幅を検出する振幅検出部とを有する、請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】 前記ディスク判別部は、前記第1出力信号および前記第2出力信号を受け取り、受け取った出力信号の各々について高強度側のピーク検波を行なうことにより受光量の最大値を検出し、前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および前記第2出力信号の上側エンベロープ信号を生成するピーク検波回路と、前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および前記第2出力信号の上側エンベロープ信号の差を検出する差分検出部と、前記差分検出部の出力する信号の交流振幅を検出する振幅検出部と、を有する、請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】 前記ピーク検波回路から出力される信号の極値のうち、反射光量の高い方の極値によって前記振幅検出部の出力信号を正規化する振幅正規化部をさらに有している、請求項4または5に記載の光ディスク装置。
【請求項7】 前記ピーク検波回路は、前記光ディスクの内周側から反射された光の全光量に応じた第1出力信号、および/または、前記光ディスクの外周側から反射された光の全光量に応じた第2出力信号を受け取り、前記第1出力信号および/または第2出力信号の反射光量の高い方のピーク検波を行なう、請求項4または5に記載の光ディスク装置。
【請求項8】 前記レーザ光の照射位置と前記記録トラックの中心とのずれに応じたトラッキング誤差信号を、前記光検出部の出力信号に基づいて出力するトラッキング誤差検出部を備え、前記振幅検出部は、前記ピーク検波回路の出力信号のうち、前記トラッキング誤差検出部の出力信号に同期した成分の振幅を検出する同期検波部を有し、前記同期検波部の出力を前記交流振幅として出力する請求項4または5に記載の光ディスク装置。
【請求項9】前記振幅検出部は、定められた第1の時間内における前記ピーク検波回路の出力信号の最大値および最小値を検出する最大小値検出部と、前記最大小値検出部が検出した最大値と最小値との間にある差を検出する最大小値差検出部とを有し、前記最大小値差検出部の出力を前記交流振幅として出力する請求項4または5に記載の光ディスク装置。
【請求項10】 前記最大小値検出部は、前記定められた第1の時間を複数に分割した第2の時間内ごとに前記ピーク検波回路の出力信号の最大値と最小値を検出する分割最大小値検出部と、前記分割最大小値検出部が検出した複数の最大値の平均値および複数の最小値の平均値を検出する平均値検出部を有し、前記平均値検出部が出力する前記複数の最大値の平均値および複数の最小値の平均値を、前記ピーク検波回路の出力信号の定められた第1の時間内における最大値および最小値とする請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項11】 前記平均値検出部は、前記分割最大小値検出部が検出した前記複数最大値中の最大値および最小値または最大値および最小値とそれぞれに大きさで順ずる複数の値、および前記複数最小値中の最大値および最小値または最大値および最小値とそれぞれに大きさで順ずる複数の値を除外して前記複数最大値および複数最小値の平均値を検出する請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項12】 前記光検出部の出力信号に基づき、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置が前記記録トラックをある時から定められた回数横断する時間を検出する横断時間検出部を有し、前記最大小値検出部は、前記定められた第1および第2の時間を前記横断時間検出部が出力する時間とする請求項10または11に記載の光ディスク装置。
【請求項13】 前記ピーク検波回路は、前記光検出部から出力された前記第1出力信号および/または前記第2出力信号の波形を鈍らせる回路要素を有している請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項14】 前記照射位置制御部は、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置を前記光ディスクの一定の半径位置に固定し、回転する前記光ディスクの偏心によって前記レーザ光の照射位置を前記記録トラックの中心からオフセットさせる請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項15】 前記照射位置制御部は、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置を前記光ディスクの半径方向に移動させ、それによって前記レーザ光の照射位置を前記記録トラックの中心からオフセットさせる請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項16】 前記ディスク判別部の出力に基づいて前記光ディスクの再生の許可/非許可を決定する再生制御部を有しており、前記再生制御部は、装填されている前記光ディスクが再生専用光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合には前記光ディスクの再生を許可し、装填されている前記光ディスクが記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合には前記光ディスクの再生を許可しない請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項17】 装填されている前記光ディスクが記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合に、前記記録可能光ディスクに記録されている情報が合法的に記録されているか、または違法的に記録されているかを検出する記録状況検出部を備えている請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項18】 前記ディスク判別部の出力および前記記録状況検出部の出力に基づいて前記光ディスクの再生の許可/非許可を決定する再生制御部を有しており、前記再生制御部は、装填されている光ディスクが再生専用光ディスクであると前記ディスク判別部が判別した場合、または、装填されている光ディスクが記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別し、かつ前記記録可能ディスクへの情報の記録が合法的であることを前記記録状況検出部が検出した場合に、前記光ディスクの再生を許可し、前記ディスク判別部が記録可能光ディスクであると前記ディスク判別部が判別し、かつ前記記録可能ディスクへの情報の記録が違法であることを前記記録状況検出部が検出した場合に、前記光ディスクの再生を許可しない、請求項17に記載の光ディスク装置。
【請求項19】 ディスクの記録面形状が異なる複数種類の光ディスクのうちから任意に選択された光ディスクが装填され得る光ディスク装置であって、装填された光ディスクの記録面にレーザ光を照射する光学系と、前記光ディスクからの反射光を受け、前記光ディスクの内周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第1出力信号、および、前記光ディスクの外周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第2出力信号を生成する光検出部と、前記レーザ光の前記光ディスク上における照射位置を移動させる照射位置制御部と、前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および/または第2出力信号の上側エンベロープ信号に基づいて、装填されている光ディスクの種類を判断するディスク判別部と、を備えている光ディスク装置。
【請求項20】 グルーブを有する記録可能ディスクおよびグルーブを有しない再生専用ディスクを含む複数種類の光ディスクのうちから任意に選択された光ディスクが装填され得る光ディスク装置の駆動方法であって、装填された光ディスクの記録面にレーザ光を照射するステップと、前記光ディスクからの反射光を受け、前記光ディスクの内周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第1出力信号、および、前記光ディスクの外周側から反射された光の少なくとも一部の光量に応じた第2出力信号を生成するステップと、前記光ディスク上における前記レーザ光の照射位置が前記光ディスクの記録トラックを横断するように前記レーザ光の前記光ディスク上における照射位置を移動させるステップと、装填されている光ディスクがグルーブを有しているか否かを前記第1出力信号の上側エンベロープ信号および/または第2出力信号の上側エンベロープ信号に基づいて判断するステップと、を包含する光ディスク装置の駆動方法。
【請求項21】 装填されている前記光ディスクが再生専用ディスクであると判別した場合には前記光ディスクの再生を許可し、装填されている前記光ディスクが記録可能ディスクであると判別した場合には前記光ディスクの再生を許可しないステップをさらに包含する請求項20に記載の光ディスク装置の駆動方法。
【請求項22】 装填されている前記光ディスクが記録可能光ディスクであると判別した場合には、前記記録可能光ディスクに記録されている情報が合法的に記録されているか、または違法的に記録されているかを検出するステップを包含し、違法的に記録されている場合には、光ディスクの再生を行なわない請求項21に記載の光ディスク装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図15】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2003−178469(P2003−178469A)
【公開日】平成15年6月27日(2003.6.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−274226(P2002−274226)
【出願日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】