説明

光ディスク装置

【課題】スピンドルモータのバラツキ及びディスク慣性のバラツキによらずオーバーシュート/アンダーシュートを抑えてスピンドルモータを所定の回転数に加減速する。
【解決手段】回転誤差演算回路53は、FG周期カウントデータ52から目標値フィルタ56の出力である目標値フィルタ出力データ57を減算し、その減算値に誤差補正ゲインKCPを乗算した値を、回転数誤差データ58として出力する。回転数誤差データ58を用いたCAV制御によって目標トラックにおける線速度近傍に達してPLL回路24が同期引き込みできたら、システムコントローラによってCLV/CAV切り替え器33をそれまでの端子33b側から端子33a側に切り替えることにより、予め設定された目標線速度カウントデータ設定レジスタ31に設定した目標線速度カウントデータ30を目標値とする線速度誤差データ32によるCLV制御に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置に係り、特にディスク状情報記録再生媒体である光ディスクを回転させるスピンドルモータの回転制御機能を備えた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、スパイラル状または同心円状のトラックがデータ記録再生面に形成された光ディスクを回転させ、その光ディスクのデータ記録再生面に光スポットを合焦点させるフォーカスサーボに入った後、光ピックアップ内の対物レンズを通してデータ記録再生面に照射される光ビームが上記トラックに追従するようにトラッキングサーボループをオンさせ、目的のトラックにデータを記録し又は目的のトラックからデータを再生する。そのために、トラッキング制御装置は、光スポットの目的のトラック中心からの位置誤差(位置ずれの方向及び量)を表すトラッキングエラー信号が零となるように、光ピックアップ内の上記対物レンズを移動させる。
【0003】
また、上記のスパイラル状又は同心円状のトラックは、その溝状のトラック壁がトラックピッチに比べ僅かに蛇行して形成されている。この蛇行したトラックは、ウォブルと呼ばれ、その蛇行の振幅はトラッキングに影響を及ぼさないように設定され、また、その蛇行の周波数はトラッキング制御帯域に比べ十分高く設定されている。そのために光ビームは、このウォブルに追従せず、ほぼトラック中心をトレースすることになる。
【0004】
上記のウォブルを再生して得られるウォブル信号は、光ディスクからの反射光を、光ディスクの半径方向に対し内周側の光電変換器及び外周側の光電変換器によりそれぞれ光電変換して得られた信号の差分をとったプッシュプル信号をバンドパスフィルタに通すことによって検出される。このバンドパスフィルタの出力信号に同期して動作するPLL回路(位相同期ループ)出力信号によって記録すべきトラックアドレスを検出すると共に、スピンドルモータを等線速度(CLV)制御するためのスピンドル制御信号及び記録データを送り出す記録クロックを得る。
【0005】
また、良好な記録を行うためには、制御しようとする線速度に最適なレーザパワー等記録条件に合わせる必要がある。そのため、光ビームが追従しているトラックは、ディスクの内周から外周までトラック接線方向記録密度(線記録密度)が一定になるように記録を行う。よって、CLV制御される光ディスクの回転数は、光ビームが外周のトラック位置にあるときよりも内周のトラック位置にあるときの方が速い。
【0006】
そのため、現在光ビームが追従しているトラックが外周にあり、記録しようとするトラックが内周にある場合は、スピンドルモータを加速させ記録しようとするトラックにおける相対線速度が目標とする相対線速度の許容範囲内に入ってから、記録動作に入る必要がある。例えば、今目標とする相対線速度を3.49m/secで、光ビームが光ディスクの外周半径58mmにあるとすると、光ディスクの回転数は、575(=(3.49/(2×0.058×π))×60)rpmであり、この状態から内周半径24mm位置にあるトラックを3.49m/secの相対線速度で記録するためには、スピンドルモータ回転数を1389(=(3.49/(2×0.024×π))×60)rpmまで加速させる必要がある。
【0007】
図7(a)に示すように、このような目標回転数のステップ状変化をスピンドルモータに与えると、図7(b)に示すように回転数に大きなオーバーシュートを生じる。このため、図7(c)に示すように、ウォブル信号に同期して動作するPLLは、一度はロック状態となるが、スピンドルモータの回転数のオーバーシュートによりPLLのロック可能範囲を超え、同期が外れる問題がある。
【0008】
記録クロック用PLLによって作り出される記録クロックのジッタは、記録された信号のジッタとなるため、良好な記録クロックを得るためには、PLLの応答周波数を狭め、PLL内に存在する記録クロックを発振する、入力電圧に比例して出力発振周波数が変わるVCO(Voltage Controled Oscillator)のVCO感度を下げる(入力電圧変化に対し発振周波数範囲を狭くする)構成とする(ロック範囲を狭くする)ことが望ましい。
【0009】
これに対し、スピンドルモータの加減速時のオーバーシュート/アンダーシュートに対して記録クロック用PLLが追従できるようにする場合は、PLLの特性は、ロック範囲を広くすることが望ましい。従って、良好な記録クロックを得る場合に要求されるPLLの特性と、スピンドルモータの加減速時のオーバーシュート/アンダーシュートに対して記録クロック用PLLが追従できるようにする場合に要求されるPLLの特性とは、相反する特性である。
【0010】
そこで、このようなスピンドルモータの加減速制御時に、強制加減速信号を使い、強制加減速信号終了後、比例ゲインを上げて制御を行い整定したら戻す技術が従来知られている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1にはスピンドル加減速時に補償系OPアンプ(演算増幅器)のフィードバックコンデンサをショートすることにより、加減速中の大きな速度誤差が生じている間にコンデンサが電荷を蓄えないようにすることにより、加速時のオーバーシュート及び減速時のアンダーシュートを抑える技術も開示されている。
【0011】
【特許文献1】特許第3833395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような特許文献1記載の、スピンドルモータの加減速制御時のオーバーシュート及びアンダーシュートを抑える従来技術によっても、スピンドルモータのバラツキ及びディスク慣性のバラツキに対し、強制加減速信号を用いるため、スピンドルモータの加減速特性にバラツキが生じ易いという課題がある。
【0013】
また、スピンドルモータの加減速時のオーバーシュート及びアンダーシュートに追従するよう記録クロック生成用PLLの追従性を上げることは、記録クロックの時間軸変動(ジッタ)を悪化させる要因になるという課題がある。更に、従来は無駄なオーバーシュート及びアンダーシュートが大きいため、目標回転数に達するまでに無駄な電力を消費するという課題もある。
【0014】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、スピンドルモータのバラツキ及びディスク慣性のバラツキによらずオーバーシュート/アンダーシュートを抑えてスピンドルモータを所定の回転数に加減速することができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明の他の目的は、記録クロックのジッタを抑制し、更には消費電力も低減し得る光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、第1の発明の光ディスク装置は、情報の記録又は再生のために光ディスクを回転駆動するモータの制御機能を備えた光ディスク装置において、
目標回転数の情報に対して、ステップ状入力波形を滑らかな出力波形とする所定の演算を行うフィルタと、光ディスクに一定周期で記録された信号の再生信号を、目標線速度の情報と減算することにより第1の誤差信号を生成する第1の誤差信号生成手段と、モータからの回転速度信号を、フィルタから出力された目標回転数の情報と減算することにより第2の誤差信号を生成する第2の誤差信号生成手段と、第1及び第2の誤差信号の一方を選択する選択手段と、選択手段により選択された第1又は第2の誤差信号に対して、所定の補償演算を行う補償演算手段と、補償演算手段から出力された信号に基づいて、モータを駆動するモータ駆動手段とを有することを特徴とする。
【0017】
また、上記の目的を達成するため、第2の発明の光ディスク装置は、情報の記録又は再生のために光ディスクを回転駆動するモータの制御機能を備えた光ディスク装置において、
目標線速度の情報に対して、ステップ状入力波形を滑らかな出力波形とする所定の演算を行う第1のフィルタと、目標回転数の情報に対して、ステップ状入力波形を滑らかな出力波形とする所定の演算を行う第2のフィルタと、光ディスクに一定周期で記録された信号の再生信号を、第1のフィルタから出力された目標線速度の情報と減算することにより第1の誤差信号を生成する第1の誤差信号生成手段と、モータからの回転速度信号を、第2のフィルタから出力された目標回転数の情報と減算することにより第2の誤差信号を生成する第2の誤差信号生成手段と、第1及び第2の誤差信号の一方を選択する選択手段と、選択手段により選択された第1又は第2の誤差信号に対して、所定の補償演算を行う補償演算手段と、補償演算手段から出力された信号に基づいて、モータを駆動するモータ駆動手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スピンドルモータ及び光ディスク慣性のバラツキによらずオーバーシュート/アンダーシュートを抑えてスピンドルモータを所定の回転数に加減速することができる。これにより、本発明によれば、ウォブル信号が入力されるPLL回路のロック範囲を記録クロックのジッタを抑えるために比較的狭くした構成としても、PLL回路が同期外れを起こすことなくスピンドルモータを所望の回転数に加減速制御することができ、従来に比べて消費電力も低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について図面と共に詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明になる光ディスク装置の第1の実施の形態の構成図を示す。同図において、光ディスク1は、スピンドルモータ2によって回転駆動される。光ディスク1の記録再生面のデータの読み書きはピックアップ3から光ディスク1の記録再生面に照射される光ビームによって行われる。ピックアップ3は、図示していないピックアップ粗動モータによって目標とするトラック近傍に位置決めされている。また、ピックアップ3内の対物レンズは、光ビームが光ディスク1上の記録再生面に焦点を結ぶように図示していないディスク回転軸方向に移動可能なフォーカスアクチュエータによって位置決めされている。また、ピックアップ内の対物レンズは、光ビームが光ディスク1上の同心円状もしくはスパイラル状の記録再生トラックに追従するように図示していないディスク半径方向に移動可能なトラッキングアクチュエータによって位置決めされている。
【0021】
ピックアップ3内の半径方向に分割した内周側光電変換器と外周側光電変換器は、光ディスク1からの反射光をそれぞれ受光して、その受光光量に比例したレベルの電流信号4、5を出力する。これらの電流信号4、5は、電流電圧変換回路6及び7に入力され電流信号が電圧信号に変換される。プッシュプル信号生成回路8は、電流電圧変換回路6から出力された内周側電圧と、電流電圧変換回路7から出力された外周側電圧との差信号であるプッシュプル信号9を生成する。このプッシュプル信号9は、ディスク半径方向に分割した光電変換器の内周側信号と外周側信号の差であるからトラック中心からのずれを示す成分と、トラック溝がトラックピッチに比べ僅かに蛇行して形成されていることによるウォブル成分とを含む。
【0022】
ウォブルの周波数はトラッキング制御帯域に比べ十分高く設定されているため、プッシュプル信号9はトラッキング位置決め制御に必要な低域成分を取り出すためのローパスフィルタ(LPF)10に入力され、ここで、ウォブル成分が除去されてトラッキング位置決め制御に必要な低域成分であるトラッキングエラー信号11となり、A/D変換器12に入力される。A/D変換器12は、アナログ信号であるトラッキングエラー信号11をデジタル信号であるトラッキングエラーデータ13に変換する。
【0023】
演算プロセッサ14は図示していないシステムコントローラからの命令に基づき、トラッキングエラーデータ13を読み取り、そのトラッキングエラーデータ13に対して予め設定された演算を施して位置誤差データを得、更にその位置誤差データに所定の補償演算を行ってデジタルトラッキング操作量15を生成する。D/A変換器16は、演算プロセッサ14から出力されたデジタルトラッキング操作量15をアナログトラッキング操作量17に変換し、トラッキングアクチュエータ駆動回路18に出力する。トラッキングアクチュエータ駆動回路18は、アナログトラッキング操作量17に比例した電流をピックアップ3内の対物レンズをディスク半径方向に移動させるトラッキングアクチュエータに供給し、トラッキングエラー信号11が最小となるように対物レンズを移動する。これにより、ピックアップ3内の光源から出射し、対物レンズを透過して光ディスク1に照射される光スポットが、トラック上を追従するように制御される。
【0024】
次に、スピンドルモータを等線速度(CLV;Constant Linear Velocity)方式で制御する構成を説明する。図1において、上記プッシュプル信号9は、前述したように、ディスク半径方向に分割した2つの光電変換器から出力される内周側信号と外周側信号との差であるから、トラック中心からのずれを示す低域成分と、トラック溝がトラックピッチに比べ僅かに蛇行して形成されていることによる高域のウォブル成分とを含む。
【0025】
バンドパスフィルタ(BPF)20は、トラッキング制御帯域に比べ十分高く設定されているウォブル周波数を通過中心周波数とし、上記のウォブル信号9から、トラック中心からのずれを示す低域成分を除去して、高域のウォブル信号21を通過させる。波形整形回路22は、このウォブル信号21を波形整形して2値化ウォブル信号23としてPLL回路24に供給する。PLL回路24は、この2値化ウォブル信号23に位相同期したウォブルクロック信号25を生成する。このウォブルクロック信号25は、分周器26に入力され所定の周波数に分周された後、ウォブル周期カウンタ回路27に入力される。ウォブル周期カウンタ回路27は、ウォブルクロック信号25を分周した信号の1周期時間を所定のクロックでカウントすることにより、ウォブル周期データ28を得る。
【0026】
線速度誤差演算回路29は、ウォブル周期カウンタ回路27から出力されたウォブル周期データ28と、図示していないシステムコントローラが、予め目標線速度カウントデータ設定レジスタ31に設定した目標線速度カウントデータ30とを入力として受け、これらのデータ28、30に基づいて、線速度誤差を演算する。線速度誤差演算回路29は、前記第1の誤差信号生成手段を構成している。
【0027】
この線速度誤差演算回路29について図2を使って説明する。図2は、線速度誤差演算回路29の一例のブロック線図を示す。図2において、線速度誤差演算回路29は、ウォブル周期データ28から予め設定されている目標線速度カウントデータ30を減算し、その減算出力に誤差補正ゲインKCPを乗算することで線速度誤差データ32を生成して出力する。ここで、上記の誤差補正ゲインKCPは、CLV制御における線速度誤差データ32と回転数一定の等角速度(CAV; Constant Angular Velocity)制御時における回転数誤差データ58のゲインとが同一になるように設定されている。
【0028】
ウォブル周期データ28が目標線速度カウントデータ30より小さいならば、現在線速度は目標線速度より速く、このとき線速度誤差データ32は負となり、スピンドルモータ2を減速させるよう働く。また、ウォブル周期データ28が目標線速度カウントデータ30より大きいならば、現在線速度は目標線速度より遅く、このとき線速度誤差データ32は正となり、スピンドルモータ2を加速させるよう働く。
【0029】
図1のCLV/CAV切り替え器33は、現在CLV制御であるならば端子33a側に接続され、線速度誤差演算回路29から出力された線速度誤差データ32を誤差データ34としてスピンドルモータ補償演算回路35に供給する。
【0030】
次に、スピンドルモータ補償演算回路35について図3を使って説明する。図3はスピンドルモータ補償演算回路35の一例のブロック線図を示す。図3において、スピンドルモータ補償演算回路35は、誤差データ34に係数KPを乗算した比例操作量と、誤差データ34を加算器と遅延器とからなる回路部により積算して得た誤差データ34の積算値にKIを乗算した積分操作量とを加算することにより、スピンドルモータ操作量データ36を演算生成する。
【0031】
スピンドルモータ操作量データ36は、図1のPWM出力回路37に入力されてパルス幅変調(PWM)された後、平滑回路38によって平滑化されてアナログスピンドルモータ操作量39に変換される。スピンドルモータ駆動回路40は、アナログスピンドルモータ操作量39に基づいてスピンドルモータ2を回転駆動することにより、光ディスク1上の現在の光スポット半径位置における相対線速度を所定の相対線速度となるようスピンドルモータ2を回転制御する。
【0032】
このようなウォブル周期を一定に保つCLV制御は、トラッキングサーボがトラックをトレースしているトラックオン状態において、トラックの蛇行を検知することによって得られるウォブル信号を使っている。このためピックアップ3を所定のアドレスに移動させるシーク動作中は、トラックオン状態ではないため正確なウォブル信号は得られない。このため、シーク動作中は、スピンドルモータ2から得られる回転パルス信号を使うCAV制御によってスピンドルモータ2を加減速させる。
【0033】
シーク動作後のトラックにおける線速度が、PLL回路24の同期引き込み可能範囲まで、スピンドルモータ2を加減速させる際に用いるCAV(Constant Angular Velocity)制御の構成を図1で説明する。スピンドルモータ2からは、1回転当たり所定数のパルスであるFG(Frequency Generator)信号50が出力され、FG周期カウンタ回路51に入力される。FG周期カウンタ回路51は、FG信号50の立ち上がりエッジ毎に、隣接する立ち上がりエッジ間の時間間隔(FG周期)を一定周期のクロックでカウントし、そのカウント値をFG周期カウントデータ52として出力する。FG周期カウントデータ52は、回転誤差演算回路53に入力される。
【0034】
回転誤差演算回路53は、線速度誤差演算回路29と同様な構成であり、前記第2の誤差信号生成手段を構成している。回転誤差演算回路53は、FG周期カウントデータ52から目標値フィルタ56の出力である目標値フィルタ出力データ57を減算し、その減算値に誤差補正ゲインKCPを乗算した値を、回転数誤差データ58として出力する。上記FG周期カウントデータ52が目標値フィルタ出力データ57より小さいならば、現在回転数は目標値フィルタ出力より速く、このとき回転数誤差データ58は負となり、スピンドルモータ2を減速させるよう働く。また、FG周期カウントデータ52が目標値フィルタ出力データ57より大きいならば、現在回転数は目標値フィルタ出力より遅く、このとき回転数誤差データ58は正となり、スピンドルモータ2を加速させるよう働く。
【0035】
ここで、図示していないシステムコントローラは、記録又は再生すべきアドレスからディスク半径位置を計算し、そのディスク半径位置で所定の線速度となるようなスピンドル回転数を求め、その回転数となる目標FG周期カウントデータ55を求める。そして、その目標FG周期カウントデータ55の値を目標FG周期カウントデータ設定レジスタ54にセットする。目標値フィルタ56は、この目標FG周期カウントデータ55を、後述するようにステップ状入力波形を滑らかな出力波形にするフィルタリングを行って目標値フィルタ出力データ57を生成する。
【0036】
選択手段であるCLV/CAV切り替え器33は、現在CAV制御であるならば、端子33b側に接続され、回転数誤差データ58を誤差データ34としてスピンドルモータ補償演算回路35に入力する。
【0037】
前述した図3の構成のスピンドルモータ補償演算回路35は、入力された誤差データ34からスピンドルモータ操作量データ36を演算算出し、それを図1のPWM出力回路37、平滑回路38を通してアナログスピンドルモータ操作量39に変換してスピンドルモータ駆動回路40に供給させる。スピンドルモータ駆動回路40は、回転数誤差データ58に基づいて生成されたアナログスピンドルモータ操作量39により、光ディスク1の回転数が記録または再生すべきトラックのあるディスク半径位置で所定の回転数となるようスピンドルモータ2を回転制御する。
【0038】
次に、第2のフィルタである目標値フィルタ56の構成例について説明する。図4は、目標値フィルタ56の一実施の形態のブロック線図を示す。同図において、目標値フィルタ56は、目標FG周期カウントデータ55に乗算器61でゲインKAを乗算する一方、遅延器62で1サンプル周期遅延して得た1サンプル前の目標FG周期カウントデータ55に乗算器63でゲインKBを乗算し、乗算器61、63の各出力を入力加算器64で加算する。更に、目標値フィルタ56は、目標値フィルタ出力データ57を遅延器66で1サンプル周期遅延して得た1サンプル前の目標値フィルタ出力データに乗算器67でゲインKCを乗算して得た乗算結果に、入力加算器64の加算結果と加算器65で加算することで、加算器65から目標値フィルタ出力データ57を得る。
【0039】
目標値フィルタ56の動作例を図5の波形で説明する。現在光ビームが追従しているトラックが内周トラックにあり、記録しようとするトラックが外周トラックにある場合は、CLV方式で記録しようとする外周トラックにおける線速度が、PLLが同期引き込みできる線速度近傍になるまでスピンドルモータ2を減速させる必要がある。
【0040】
図5(a)の時刻0から時刻tまでにおいては、光ビームが追従しているトラックが内周トラックにあるため、図示していないシステムコントローラは、内周トラックにおいて所定の線速度となるようなFG周期カウントデー夕Targ1を目標FG周期カウントデータ設定レジスタ54にセットしている。よって、目標値フィルタ56の入力である目標FG周期カウントデータ55はTarg1であり、目標値フィルタ出力データ57もTarg1となり、スピンドルモータ2は、FG周期カウントデータ52がTarg1となるような回転数で動作している。
【0041】
次に時刻tにおいて、図示していないシステムコントローラは、記録しようとするトラックが外周トラックにあるため、光ピックアップ3を記録しようとする外周トラック近傍に移動させると共に、記録すべきアドレスから半径位置を計算し、その半径位置で所定の線速度となるようなスピンドルモータ回転数を求め、その回転数となるFG周期カウントデータTarg2を目標FG周期カウントデータ設定レジスタ54にセットする。
【0042】
これにより、目標値フィルタ56の入力である目標FG周期カウントデータ55は、図5(a)のようにステップ状に変化する。これにより、目標値フィルタ56の出カである目標値フィルタ出力データ57は図5(b)のようなステップ入力を鈍らせた波形となり、滑らかに目標値フィルタ入力Targ2まで立ち上がる。
【0043】
この目標FG周期カウントデータ55をスピンドルモータCAVフィードバック制御の目標値とすることにより、オーバーシュートを抑えた応答が図5(c)のように実現できる。図示していないシステムコントローラは、スピンドルモータ2の回転数が記録しようとする外周トラックでの線速度近傍に達し、外周トラックにおいてPLL回路24が同期引き込みできたことを確認後、CLV/CAV切り替え器33を端子33b側から端子33a側に切り替えることで、スピンドルモータ2から得られるFG信号50を使ったCAV制御から、光ディスク1から得られるウォブル信号21に同期したPLL回路24から得られるウォブルクロック信号25を使ったCLV制御へ移行し、記録すべきアドレスから記録動作を開始する。
【0044】
このように、本実施の形態では、目標値フィルタ56から出力される目標値フィルタ出力データ57を用いて生成した回転数誤差データ58によるCAV制御によって目標トラックにおける線速度近傍に達してPLL回路24が同期引き込みできたら、システムコントローラによってCLV/CAV切り替え器33をそれまでの端子33b側から端子33a側に切り替えることにより、予め設定された目標線速度カウントデータ設定レジスタ31に設定した目標線速度カウントデータ30を目標値とする線速度誤差データ32によるCLV制御に切り替える。
【0045】
これにより、本実施の形態によれば、スピンドルモータ2及び光ディスク慣性のバラツキによらずオーバーシュート/アンダーシュートを抑えてスピンドルモータ2を所定の回転数に加減速することができるため、PLL回路24のロック範囲を記録クロックのジッタを抑えるために比較的狭くした構成としても、PLL回路24が同期外れを起こすことなくスピンドルモータ2を所望の回転数に加減速制御することができる。これにより、従来に比べて消費電力も低減できる。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図6は、本発明になる光ディスク装置の第2の実施の形態の構成図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図1の第1の実施の形態では、CAV制御によって目標トラックにおける線速度近傍に達したら、システムコントローラによって予め設定された目標線速度カウントデータ設定レジスタ31に設定した目標線速度カウントデータ30を目標値とするCLV制御に切り替える。しかし、CLV制御の目標速度カウントデータ30は、CLV制御が収束した時点での最終目標値であるためCAVからCLVに切り替えた時点では、まだ線速度はこの値には達していないため、切り替えにより大きな誤差を生じ、スピンドル操作量の暴れを生じることがあり得る。
【0048】
そこで、本実施の形態は、図6に示すように、目標線速度カウントデータ設定レジスタ70及びCLV目標値フィルタ72を設け、目標線速度カウントデータ30をCLV目標値フィルタ72から得ることにより、CAV制御からCLV制御への切り替えを滑らかに実現することを可能としたものである。
【0049】
図6において、目標線速度カウントデータ設定レジスタ70は、図示していないシステムコントローラにより、記録線速度に対応する目標線速度カウントデータがセットされる。この目標線速度カウントデータ設定レジスタ70から出力された目標線速度カウントデータ71は、第1のフィルタであるCLV目標値フィルタ72に供給される。
【0050】
CLV目標値フィルタ72は、目標値フィルタ56と同様の構成であり、目標値フィルタ56と同様の特性を示す。従って、CLV目標値フィルタ72の入力信号である目標線速度カウントデータ設定レジスタ70から出力された目標線速度カウントデータ71が例えば、図5(a)に示す波形の場合は、CLV目標値フィルタ72の出力信号である目標線速度カウントデータ30は、図5(b)に示す波形となる。このように、CLV目標値フィルタ72は、目標値フィルタ56と同様に、ステップ状の入力信号に対して漸近的に収束する信号を出力する。
【0051】
CLV目標値フィルタ72と目標値フィルタ56との違いは、目標値フィルタ56がスピンドルモータ2から得られるFG信号50の周期を目標回転数とする周期を入力とする(スピンドルモータ2を目標回転数となるように制御するCAV制御である)のに対し、CLV目標値フィルタ72は、スピンドルモータ2に装着された光ディスク1のトラックを僅かに蛇行させることによって形成されたウォブル信号21の周期を目標線速度とする周期を入力とする(光スポットとトラックとの接線方向の相対線速度が目標線速度となるように制御するCLV制御である)点である。
【0052】
光ディスク1に情報を記録するためには、予め決められた線速度において記録することが好ましいため、現在トラックにおけるディスク半径位置とは異なる半径位置のトラックにアクセスして情報を記録する場合、線速度を記録に最適な所定の線速度にするためには、スピンドルモータ2の加減速を伴う。このような場合、まずFG信号によるCAV制御によって、所定の線速度となる回転数近傍まで加減速制御を行い、その後、ウォブル信号によるCLV制御に切り替え、線速度が所定の値になるように制御する。
【0053】
この切り替えにおいて、第1の実施の形態では、直接目標ウォブル周期を与えるため、現在トラックと次にアクセスしようとするトラックとの間の距離によっては、スピンドルモータ2の駆動電流の急激な変化を与えることがある。
【0054】
これに対し、本実施の形態では、CLV目標値フィルタ72によってステップ状の入力信号に対して漸近的に収束する目標線速度カウントデータ30を出力して線速度誤差演算回路29に供給するようにしたため、CAV制御からCLV制御への切り替え時のスピンドルモータ2の駆動電流の急激な変化を抑え、CAV制御からCLV制御への切り替えを滑らかに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の光ディスク装置の第1の実施の形態の構成図である。
【図2】図1中の線速度誤差演算回路の一例のブロック線図である。
【図3】図1中のスピンドルモータ補償演算回路の一例のブロック線図である。
【図4】図1中の目標値フィルタの一実施の形態のブロック線図である。
【図5】図1中の目標値フィルタの入出力波形とFG周期カウントデータの波形を説明する図である。
【図6】本発明の光ディスク装置の第2の実施の形態の構成図である。
【図7】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
1 光ディスク
2 スピンドルモータ
3 ピックアップ
6、7 電流電圧変換回路
8 プッシュプル信号生成回路
10 ローパスフィルタ(LPF)
11 トラッキングエラー信号
12 A/D変換器
14 演算プロセッサ
16 D/A変換器
18 トラッキングアクチュエータ駆動回路
20 バンドパスフィルタ(BPF)
21 ウォブル信号
22 波形整形回路
24 PLL回路
26 分周器
27 ウォブル周期カウンタ回路
29 線速度誤差演算回路
31、70 目標線速度カウントデータ設定レジスタ
33 CLV/CAV切り替え器
35 スピンドルモータ補償演算回路
37 PWM出力回路
38 平滑回路
40 スピンドルモータ駆動回路
51 FG周期カウンタ回路
53 回転誤差演算回路
56 目標値フィルタ
54 目標FG周期カウントデータ設定レジスタ
72 CLV目標値フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報の記録又は再生のために光ディスクを回転駆動するモータの制御機能を備えた光ディスク装置において、
目標回転数の情報に対して、ステップ状入力波形を滑らかな出力波形とする所定の演算を行うフィルタと、
前記光ディスクに一定周期で記録された信号の再生信号を、目標線速度の情報と減算することにより第1の誤差信号を生成する第1の誤差信号生成手段と、
前記モータからの回転速度信号を、前記フィルタから出力された前記目標回転数の情報と減算することにより第2の誤差信号を生成する第2の誤差信号生成手段と、
前記第1及び第2の誤差信号の一方を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記第1又は第2の誤差信号に対して、所定の補償演算を行う補償演算手段と、
前記補償演算手段から出力された信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動手段と
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
情報の記録又は再生のために光ディスクを回転駆動するモータの制御機能を備えた光ディスク装置において、
目標線速度の情報に対して、ステップ状入力波形を滑らかな出力波形とする所定の演算を行う第1のフィルタと、
目標回転数の情報に対して、ステップ状入力波形を滑らかな出力波形とする所定の演算を行う第2のフィルタと、
前記光ディスクに一定周期で記録された信号の再生信号を、前記第1のフィルタから出力された前記目標線速度の情報と減算することにより第1の誤差信号を生成する第1の誤差信号生成手段と、
前記モータからの回転速度信号を、前記第2のフィルタから出力された前記目標回転数の情報と減算することにより第2の誤差信号を生成する第2の誤差信号生成手段と、
前記第1及び第2の誤差信号の一方を選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された前記第1又は第2の誤差信号に対して、所定の補償演算を行う補償演算手段と、
前記補償演算手段から出力された信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動手段と
を有することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−230801(P2009−230801A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74887(P2008−74887)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】