光ディスク装置
【課題】
光ディスク装置のサーボ制御において、精度よく繰り返し制御を行うことである。さらに、前記繰り返し制御を用いることで、安定したサーボ性能を有する光ディスク装置を提供することである。
【解決手段】
サーボ乱れを検出した回転位相範囲を含む所定の回転位相範囲において、回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する前記繰り返し制御系の抑圧度を増加する。
光ディスク装置のサーボ制御において、精度よく繰り返し制御を行うことである。さらに、前記繰り返し制御を用いることで、安定したサーボ性能を有する光ディスク装置を提供することである。
【解決手段】
サーボ乱れを検出した回転位相範囲を含む所定の回転位相範囲において、回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する前記繰り返し制御系の抑圧度を増加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報を記録もしくは再生を行う光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置におけるサーボ追従偏差の要因の一つとして、光ディスクが回転することによって生じる、周期的な外乱が挙げられる。このような周期的な外乱への追従性能を向上させるための一つの方法は、サーボゲインを高くして許容外乱量を増加させる方法である。
【0003】
しかし一方で特許文献1には、『DVD再生を高速化するとサーボ帯域をさらに広げるためカットオフを上げる必要がある。例えば、カットオフを10kHzにすると上記共振が存在した場合発振は避けられない。』との記載がある。
【0004】
周期的な外乱への追従性能を向上させる別の方法として、従来から繰り返し制御が知られている。
【0005】
特許文献2によれば、外部から所定値以上の振動が光ディスク装置に加えられたことを検知し、当該検知信号に基づいて光ディスクの回転周波数領域のゲインを増加させる動作を中止すると共に、前記サーボ制御のサーボ帯域全体のゲインを増大させる技術が開示されている。
【0006】
特許文献3によれば、繰り返し制御の学習度合いを変化させ、トラック相関が弱いとき繰り返し学習能力を下げる技術が開示されている。
【0007】
特許文献4によれば、フィルターの出力信号と遅延していない位置誤差信号PESとを加算して新たな内部状態信号として遅延記憶素子に出力する加算器を備えた構成の繰り返し制御が開示されている。
【0008】
一方、光ディスクを回転した時に生じる周期的な外乱成分としては、偏芯・面ぶれ成分以外に、デビエーションと呼ばれる成分が存在することが知られている。特許文献5によれば「案内溝を有する光ディスクでは、ディスクスタンパの劣化やディスク形成不良などにより溝形状の不良部分(デビエーション)を有する場合がある。このようなディスクを高倍速で走行した場合、特に外周部において、溝反射信号に広帯域の特有のノイズ成分が混入する。」との記載がある。
【0009】
また、特許文献6によれば、欠陥区間を算出し、算出された欠陥区間はサーボ制御のループ利得を下げてカットオフ周波数を低くし、欠陥区間以外ではループ利得を上げてカットオフ周波数を高くする手法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−84620
【特許文献2】特開平11−213403
【特許文献3】特開平8−77589
【特許文献4】特開2001−126421
【特許文献5】特開2007−207390
【特許文献6】特開2003−67951
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が対象とする課題は大きく三つある。第一の課題は、高倍速時にデビエーションと呼ばれる成分の抑圧とサーボ安定性の両立が困難であることである。フォーカス系・トラッキング系の制御に用いるサーボエラー信号には、サーボ系が抑圧しきれない成分が残留誤差となって現れる。そのため、光ディスクに面ぶれ・偏芯が存在する場合、サーボエラー信号においては回転周波数の信号変動成分が観測される。同様に、ディスクのトラックの部分的な歪み(以下、デビエーションと呼ぶ)が存在した場合には、サーボエラー信号に高周波数の信号変動として観測される。
【0012】
図18はデビエーション通過時のサーボエラー信号の模式図である。Vrefはサーボエラー信号の基準レベルである。以下では、デビエーション通過時にサーボエラー信号に観測される、高周波数の信号変動成分をデビエーション成分と呼ぶ。デビエーション成分は図18のAの部分に相当する。図18に示すように、デビエーション成分は回転周期に同期して発生し、1回転周期ごとに略等しい信号変動波形となる。これはデビエーションがディスクの製造工程に起因する局所的な歪みであるため、ディスク1回転中の特定の角度において発生し、また隣接するトラックにおいても略等しい形状でトラックが歪んでいるためである。
【0013】
デビエーション成分は欠陥や傷といった外乱成分と比較すると低い周波数であり、サーボゲインを上げて追従することが有効な対策である。一方、欠陥や傷といった外乱成分は周波数が高く、サーボゲインを下げてサーボの応答を小さくし、無理に追従しようとしないことが有効な対策となる。
【0014】
デビエーション成分は回転周期に同期した信号波形であるので、フーリエ変換により回転周波数とその高次成分の和で表すことができるため、繰り返し制御によって抑圧することが可能である。
【0015】
光ディスク装置が追従するトラックのフォーカス方向・トラッキング方向の物理的な精度は、光ディスクの規格として規定されている。従って規格に準拠した光ディスクは、規格で規定されたサーボ特性を用いて抑圧できることが保証されている。しかし実際には、規格を満足しないデビエーションを持った光ディスクが市場に存在する可能性がある。このようなディスクに対応する場合には、規格で想定されているより優れた追従性能が光ディスク装置のサーボ性能として要求される。
【0016】
一方、所定の規格に準拠した光ディスクに対し前記規格以上の倍速での記録・再生に対応することで、記録・再生にかかる時間を短縮したいという要求もある。この場合にも、規格で想定されているより優れた追従性能が要求される。
【0017】
上述したような、規格で想定されているより優れた追従性能が光ディスク装置のサーボ性能として要求される場合には、さらにサーボゲインを上げて抑圧度を増す必要がある。しかし特許文献1に開示されているように、倍速が速くなるほど追従に必要となるサーボゲインは高くなる。しかし光ディスク装置のアクチュエータには副共振が存在するため、定常特性としてサーボゲインが高い状態からさらにサーボゲインを上げた場合、副共振周波数においてサーボ安定性が劣化し、発振するなどの現象を招いてしまう。そのため、特に高倍速時は、定常状態からさらにサーボゲインを上げることが困難である。この結果、デビエーション成分のような高周波数の外乱に対して特に抑圧ゲインが不足し、最悪の場合には追従しきれずにサーボが外れる現象が発生する。このように、高倍速時にデビエーション抑圧とサーボ安定性の両立が困難であることが第一の課題である。
【0018】
この課題に対応するためには、繰り返し制御を用いることでデビエーション成分に対する抑圧度を上げることが要求されることを本発明者は見出した。本発明が対象とする課題のうち、以降で説明する第二、第三の課題は、繰り返し制御でデビエーション成分を抑圧する上での課題である。
【0019】
第二の課題は、デビエーション波形の変形に対する抑圧の速さである。デビエーション成分は1回転周期ごとに略等しい波形となるが、完全に一致せず、周回ごとにデビエーション波形が変形していく場合がある。そのため、繰り返し制御実施中にデビエーション成分の波形が周回ごとに変形していった場合であっても、デビエーション成分が速やかに抑圧されることが要求されることを本発明者は見出した。
【0020】
第三の課題は、回転に同期しない周波数成分の外乱に対する追従性能である。繰り返し制御は回転に同期した周波数成分(以下、回転同期成分と呼ぶ)の外乱がサーボ系に入力された場合には抑圧効果を有する。一方で、回転に同期しない周波数成分(以下、回転非同期成分と呼ぶ)の外乱がサーボ系に入力された場合には、繰り返し制御を用いない場合と比べても追従性能が劣化してしまうことが知られている。回転非同期成分としては、衝撃や振動などが挙げられる。回転同期成分と回転非同期成分が同時にサーボ系に入力された場合であっても、追従性能劣化を最小限に抑える光ディスク装置が望まれた。
【0021】
以上から、定常状態よりもサーボゲインを上げることの困難な光ディスク装置を想定し、デビエーションの定常的な抑圧性能と、周回ごとのデビエーション変形への速やかな抑圧性能とを有し、更には回転非同期成分が加えられた場合でも追従性能劣化を最小限に抑える光ディスク装置の構成が望まれることを本発明者は見出した。
【0022】
この課題を解決するための手法としては例えば、特許文献2がある。本手法は振動が加えられたことを検知して繰り返し制御の出力を中止すると同時にサーボ制御のサーボ帯域全体のゲインを増大させる。しかし高周波数であるデビエーション成分が外乱としてサーボ系に入力される場合を考えると、繰り返し制御を用いずにサーボゲインの変更だけで抑圧するには、上述したように副共振周波数での発振現象が避けられないという課題がある。
【0023】
また、他の手法として特許文献3がある。これは振動やディスクの傷等の突発的な外乱が印加された場合に学習補償部のフィードフォワードループにおけるアッテネータ量を小さくするものであるが、本手法もデビエーション成分に関して考慮されていない。例えば車載機器など、定常的な回転非同期の振動が加わる条件下に置かれた光ディスク装置で、デビエーションが存在する光ディスクに対して記録・再生を行う場合には、常に上記アッテネータ量が小さくなってしまうため、デビエーション成分に対する抑圧が不足しサーボが外れてしまうという課題がある。
【0024】
また、別の手法として特許文献6がある。これは欠陥区間を算出し、算出された欠陥区間はサーボ制御のループゲインを下げる手法である。デビエーション成分の場合にはサーボゲインを上げることが有効であるため、この手法をこの課題に適用すると、デビエーション区間を算出し、算出されたデビエーション区間はサーボ制御のループゲインを上げる、となる。『ループゲインを上げる』場合、通常は『サーボ帯域全体のゲインを増大させる』ことを意味するのが一般的である。サーボ帯域全体のゲインを上げた場合、サーボ帯域内のすべての周波数において抑圧度を増す効果がある。即ち、デビエーション成分、回転同期成分、回転非同期成分のいずれに対しても、追従性能を向上させることが可能である。これに対し、学習補償部のフィードフォワードループにおけるアッテネータ量を大きくした場合にもサーボ帯域全体でなく、回転周波数の高次周波数においてのみゲインが増加する特性となるが、この場合には回転非同期成分に対して追従性能が劣化するという欠点がある。従って通常『ループゲインを上げる』場合は、『サーボ帯域全体のゲインを増大させる』ことを意味する。
【0025】
算出されたデビエーション区間でサーボ帯域全体のゲインを増大させることを考えると、上述したように高倍速時には副共振周波数において発振条件になってしまうという問題がある。デビエーションを検出した区間だけであっても、サーボが発振してしまう現象は避ける必要がある。そのため、本手法は特に高倍速時に採用できないという課題がある。
【0026】
また、他の手法として特許文献4がある。本手法では、繰り返し制御系の構成として、遅延記憶手段の出力信号と遅延していない位置誤差出力とを加算して新たな内部状態信号として前記遅延記憶手段に出力する加算器を設ける構成とし、更に繰り返し制御の出力信号に対してゲインを乗じる乗算器におけるゲインを小さくすることにより、回転非同期成分に対する追従性能劣化を回避している。しかし本手法は学習の収束性が遅くなるという欠点がある。そのため、繰り返し制御実施中にデビエーション成分の波形が周回ごとに変形していく場合への対応が困難である。
【0027】
以上の問題を鑑み、本発明の目的は、繰り返し制御を用いる光ディスク装置のトラック追従性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の目的は、その一例として、サーボ乱れを検出した回転位相範囲を含む所定の回転位相範囲において、回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する前記繰り返し制御系の抑圧度を増加することで達成できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、光ディスク装置のトラック追従性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の光ディスク装置の実施例を、図を用いて説明する。
【0031】
本発明はトラッキング制御、フォーカス制御共に適用可能であるが、ここではトラッキング制御を例に説明を行う。
【実施例1】
【0032】
図1は本実施例の光ディスク装置を示すブロック図である。
【0033】
符号101は光ディスクであり、レーザ光の照射により情報の読み取り、消去、又は書き込みが行われる。
【0034】
符号102は対物レンズであり、レーザ光を集光して光ディスク101の記録面にレーザの焦点を合わせる。
【0035】
符号103は光ピックアップであり、図示していないトラッキングアクチュエータを備える。また、光ディスク101からの反射光を検出し、反射光量に応じた電気信号を出力する光検出器(図示していない)を備える。
【0036】
符号104はスピンドルモータであり、光ディスク101を所定の線速度で回転駆動する。以下、スピンドルモータ104の回転周期をTrotで表す。
【0037】
符号105はトラッキングエラー信号生成回路であり、光ピックアップ103内の光検出器の出力信号から、トラッキングエラー信号TE1を生成して出力する。
【0038】
符号106は加算器であり、トラッキングエラー信号TE1と、後述する可変ゲイン112から出力される補償信号REPOUTとを加算した信号TE2を出力する。
【0039】
符号107はトラッキング制御回路であり、TE2信号に対して、ゲイン及び位相の補償を行い、駆動信号TRDを生成する。
【0040】
符号108はドライバ回路であり、トラッキング制御回路107の出力するTRD信号を増幅し、光ピックアップ103内のトラッキングアクチュエータへ供給する。
【0041】
符号109は回転位相検出回路であり、スピンドルモータ104の出力信号から、回転位相情報ROTPHASEを出力する。ROTPHASE情報は、0からN−1(N:1以上の整数)までの値を取り、スピンドルモータの1回転をN等分して位相情報とするものとする。
【0042】
即ち、スピンドルモータの回転軸の回転角をθ度(0≦θ<360)とした場合、ROTPHASE情報の値PHは
【0043】
【数1】
(関数int(a)は、引数aに対し、a以下の最大の整数を返す関数。)
で算出される。ROTPHASE情報はTROT/Nの周期で値が更新される。
【0044】
符号110はローパスフィルタであり、TE2信号中に含まれる高周波数成分を減衰させる。
【0045】
符号111は遅延記憶回路であり、ROTPHASE情報に基づきローパスフィルタ110の出力信号を取り込み、1回転をN分割して信号の値を記憶する。また記憶した値を元に、サーボ系に入力される周期的な外乱を補償するための信号を、回転に同期させて出力する。
【0046】
符号112は可変ゲインであり、遅延記憶回路111の出力信号に対して所定の係数Kを乗じて、補償信号REPOUTとして出力する。可変ゲイン112に設定される値Kは、後述するデビエーション検出回路112の出力するゲイン切り替え指示情報GAINSELに基づき変更され、Kの値は0以上1以下の値を取るものとする。
【0047】
符号113はデビエーション検出回路であり、TE2信号とROTPHASE情報を入力とし、ゲイン切り替え指示情報GAINSELを出力する。
【0048】
ここで、本実施例における遅延記憶回路111の構成について、図2を用いて説明する。
【0049】
符号201は記憶回路であり、1回転をN分割して信号の値を記憶するために、N個存在する。記憶回路201は、本実施例のトラッキングサーボ系がデジタルサーボで実現される場合に、例えばフラッシュメモリにより構成できる。
【0050】
符号202は第一のセレクタであり、ローパスフィルタ110の出力信号を入力とし、出力としてN個の記憶回路201を切り替える。第一のセレクタ202は、ROTPHASE情報の値が変化するタイミングで、ROTPHASE情報の値に対応した記憶回路201を選択する。セレクタ202によって選択された記憶回路は、セレクタ202による選択のタイミングにおける入力信号の値を記憶する。
【0051】
符号203は遅延回路であり、ROTPHASE情報の値を所定の時間、遅延させた位相情報である、出力位相情報OUTPHASEを生成する。以下では、遅延回路203における遅延時間をTdlyとする。
【0052】
符号204は第二のセレクタであり、OUTPHASE情報の値が変化するタイミングで、OUTPHASE情報の値に対応した記憶回路201を選択し、選択された記憶回路201に記憶されている値を遅延記憶回路111の出力信号として出力する。
【0053】
次に遅延回路203の動作を、図3のタイミングチャートを用いて説明する。図3(a)はROTPHASE情報、(b)はOUTPHASE情報、(c)はOUTPHASE情報の変形例を示している。
【0054】
図3(b)は、ROTPHASE情報に対して所定の値(図中ではiとした)を加算したものをOUTPHASE情報とする構成の場合を示している。本構成は、本実施例のトラッキングサーボ系がデジタルサーボで実現される場合であれば、フラッシュメモリ等に保存されているROTPHASE情報に所定の値を加えた値をOUTPHASE情報として格納すればよく、簡単な構成で実現できる。これにより、遅延回路における遅延時間は、ROTPHASE情報の更新周期であるTROT/Nの精度で調整することができる。
【0055】
次に、図3(c)に示した変形例について説明する。図3(b)においては、遅延回路における遅延時間をTROT/Nの精度で調整するとしたが、TROT/Nの精度である必要はない。図3(c)の変形例においては、遅延回路における遅延時間Tdly2はTROT/Nより短い時間精度で調整されるものとする。
【0056】
次に、遅延記憶回路111の動作を、図4の波形図を用いて説明する。図4は遅延記憶回路111における各部の信号波形を示している。Vrefはトラッキングエラー信号の基準レベルである。図4(a)はローパスフィルタ110の出力信号波形、(b)は記憶回路201により記憶された信号を等価的に示した波形、(c)は遅延記憶回路111の出力信号波形である。
【0057】
図4から明らかなように、ROTPHASE情報に基づいてTROT/Nの時間間隔で入力信号の値が記憶され、遅延回路における遅延時間Tdlyが経過した後に、記憶された値が出力される。
【0058】
ここで遅延時間Tdlyは、光ディスクの1回転周期から、ローパスフィルタ110における遅延時間及び記憶回路201におけるホールド動作による遅延時間を引いた時間だけ、信号を遅延させるものとする。これにより、繰り返し制御ループ伝播中の信号遅延が補正され、正確に1回転周期が経過したタイミングで加算器106にてREPOUT信号が加算される。
【0059】
ここで、繰り返し制御を実施しない場合のトラッキングサーボについて、開ループ伝達関数のボード線図を図5に示す。図5においてAで示した周波数は回転周波数である。本実施例では一例として、回転周波数を100Hzとしている。また、Dで示した周波数範囲は、デビエーションが存在する周波数範囲を示しており、本実施例ではDの周波数範囲において抑圧効果を持つ繰り返し制御系を考える。
【0060】
なお本実施例では、遅延記憶回路111を構成する記憶回路201の総数Nは、図5においてDで示した周波数範囲に含まれる周波数のデビエーション成分の形状を記憶できるだけの大きな数であるとする。
【0061】
ローパスフィルタ110のボード線図の一例を図6に示す。ローパスフィルタ110の低域ゲインは0dBとし、またカットオフ周波数は、周波数範囲Dの上限周波数とする。これにより、周波数範囲Dに含まれる周波数の信号成分は減衰せずに通過するため、その周波数範囲に含まれる外乱成分に対しては繰り返し制御による補償信号REPOUTが出力される。一方、周波数範囲Dの上限周波数以上の周波数の信号成分は減衰するため、高周波数の外乱成分に対しては、補償信号REPOUTは出力されない。
【0062】
また、ローパスフィルタ110の位相特性は、通過域において直線位相特性を有する。これは、ローパスフィルタ110を通過する際の遅延時間が、周波数範囲Dにおいて一定となり、繰り返し制御の性能を向上させることができるためである。
【0063】
次に、本実施例におけるデビエーション検出回路113の構成について、図7を用いて説明する。
【0064】
符号701はバンドパスフィルタであり、デビエーション検出回路の入力信号であるTE2信号に対して、回転周波数成分やその2次成分、3次成分を減衰させ、かつ高周波数のノイズ成分を減衰させた信号TE3を出力する。
【0065】
符号702はデビエーション検出情報生成回路であり、内部にタイマを有し、TE3信号とROTPHASE情報を入力信号として、デビエーションが検出された回転位相の範囲を示すDEVIDET情報を出力する。
【0066】
符号703はゲイン切り替え指示情報生成回路であり、DEVIDET情報とROTPHASE情報を元に、可変ゲイン112の値Kの変更を指示するGAINSEL情報を生成して出力する。
【0067】
バンドパスフィルタ701の周波数特性の一例を図8に示す。図8におけるAは回転周波数、Bは回転周波数の2倍の周波数、Cは回転周波数の3倍の周波数を示す。また、周波数範囲Dはデビエーションが存在する周波数範囲を示している。
【0068】
バンドパスフィルタのゲイン特性は、周波数範囲Dを通過域に含み、周波数A、B、Cは減衰域に含む。従って、偏芯による回転周波数成分やその2次成分、3次成分は減衰される。またバンドパスフィルタのゲイン特性は、周波数範囲Dの上限周波数以上において減衰する特性とする。これにより、ローパスフィルタ110による減衰によって繰り返し制御によるREPOUT信号が出力されない高周波数のノイズ成分についても、減衰させることが可能となる。
【0069】
バンドパスフィルタ701の効果について、図9の波形図を用いて説明する。図9(a)はTE2信号、(b)はTE3信号を示している。図9(a)中、符号Aはデビエーション、符号Bは高周波数のノイズ成分を示している。
【0070】
バンドパスフィルタ701を通過したことにより、図9(b)に示すTE3信号では、偏芯による回転周波数成分および高周波数のノイズ成分が減衰される。即ち、TE3信号は、デビエーション成分のみを抽出した信号となる。
【0071】
次に、デビエーション検出情報生成回路702の動作について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
デビエーション検出情報生成回路702は動作を開始すると(ステップS1001)、TE3信号の絶対値を監視し、TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えたかどうかを検出する(ステップS1002)。TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えていない場合(ステップS1002でNoの場合)、ステップ1002に戻る。
【0073】
TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えた場合(ステップS1002でYesの場合)、その時点の回転位相をROTPHASE情報から取得しデビエーション検出開始位相値として記憶する(ステップS1003)。続いてタイマをスタートし、TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えてからの時間を計測する(ステップS1004)。
【0074】
次に、タイマをスタートしてからToutが経過したかを判断する(ステップ1005)。
【0075】
タイマをスタートしてからToutが経過していない場合(ステップS1005でNoの場合)、TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回ったかどうかを検出する(ステップS1006)。TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回っていない場合(ステップS1006でNoの場合)、ステップ1005に戻る。
【0076】
TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回った場合(ステップS1006でYesの場合)、その時点の回転位相をROTPHASE情報から取得し、デビエーション検出終了位相値として記憶する(ステップS1007)。この時、既にデビエーション検出終了位相値が保存済みであっても、デビエーション検出終了位相値を上書きするものとする。この動作により、所定のタイムアウト時間Tout内に複数回Vthを超えた期間が存在する場合、前記複数の期間は1つのデビエーションであると判定される。ステップS1007の後、ステップ1005に戻る。
【0077】
タイマをスタートしてからToutが経過した場合(ステップS1005でYesの場合)、デビエーション検出終了位相値が保存済みであるかを判断する(ステップS1008)。
【0078】
デビエーション検出終了位相値が保存済みの場合(ステップS1008でYesの場合)、デビエーション検出開始位相値からデビエーション検出終了位相値までの期間に単一のデビエーションが存在したと確定し、DEVIDET情報を作成、出力して(ステップS1009)、ステップ1002に戻る。
【0079】
ここでステップS1009のDEVIDET情報の作成について説明する。デビエーション検出開始位相値がm、デビエーション検出終了位相値がnである場合、DEVIDET情報は回転位相mから回転位相nの期間に対して、前後に所定の回転位相を付加した回転位相の範囲を示すものとする。例えば、上記所定の回転位相範囲が1である場合、DEVIDET情報はm−1からn+1の範囲を示す。
【0080】
一方、デビエーション検出終了位相値が保存済みでない状態でタイマをスタートしてからToutが経過した場合(ステップS1008でNoの場合)には、記憶済みのデビエーション検出開始位相値を破棄して(ステップ1011)、ステップ1002に戻る。
【0081】
デビエーション検出情報生成回路702におけるデビエーション検出について、図11の波形図を用いて説明する。図11の(1)〜(3)では、デビエーションの形状の種類として3種類を挙げている。図11(1)はTE3信号に含まれる単一のデビエーション波形が正側だけ閾値Vthを超える場合を示している。図11(2)はTE3信号に含まれる単一のデビエーション波形が正側と負側の両方で閾値Vthを超える場合を示している。また、図11(3)は1周に2つのデビエーションが存在した場合を示している。
【0082】
図11の(1)〜(3)の各図において、(a)はTE3信号、(b)はタイマの計測開始からタイムアウト期間Toutが経過するまでの期間を矢印で示したものである。また(c−1)、(c−2)はデビエーション検出情報生成回路702の出力するDEVIDET情報を模式的に示したものであり、(c−1)はROTPHASE情報、(c−2)はDEVIDET情報の示す範囲でHighレベルとなる信号を示している。
【0083】
図11(1)の場合のデビエーション検出について説明する。デビエーション検出情報生成回路702はTE3信号の絶対値が閾値Vthを超えた時刻t11においてタイマをスタートし、その時点での回転位相m1をデビエーション検出開始位相として記憶する。また、TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回った時刻t12において、その時点での回転位相n1をデビエーション検出終了位相として記憶する。その後タイムアウト時間Toutが経過したことにより、単一のデビエーションが存在した期間として時刻t11から時刻t12の期間と確定する。
【0084】
図から明らかなように、時刻t11から時刻t12の期間はTE3信号の絶対値が閾値Vthを超えている期間であるが、デビエーション波形の先頭部分及び末尾部分(TE3信号の絶対値が閾値Vthを越えていない期間)が含まれていない。そのため、DEVIDET情報が示す範囲は、回転位相m1から回転位相n1の期間に対して、前後に所定の回転位相を付加した回転位相の範囲とする。図11では、回転位相m1から回転位相n1の期間に対して、前後に回転位相1を付加してDEVIDET情報を出力する例を示しており、図11の場合には回転位相m1−1から回転位相n1+1の範囲を示すDEVIDET情報が出力され、該範囲においてデビエーションが検出されたことを意味する。
【0085】
続いて、図11(2)のように正側と負側の両方で閾値Vthを超える場合について説明する。TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えた時刻t21においてタイマをスタートし、その時点での回転位相m2をデビエーション検出開始位相として記憶する。その後、時刻t22においてTE3信号の絶対値が閾値Vthを下回り、その時点での回転位相n2がデビエーション検出終了位相として記憶される。しかし図11(2)のデビエーション波形の場合、タイムアウト時間Toutが経過する前に時刻t23において再度、TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回るため、デビエーション検出終了位相は時刻t23での回転位相n3に上書きされる。その後タイムアウト時間Toutが経過したことにより、単一のデビエーションが存在した時間として時刻t21から時刻t23の期間と確定される。この結果、図11(2)の場合には回転位相m2−1から回転位相n3+1の範囲を示すDEVIDET情報が出力される。
【0086】
図11(3)は1周に2つのデビエーションが存在した場合について説明する。なお、図11(3)においては、(c−1)を省略した。仮にタイムアウト時間Toutを設けない構成とすると、2つのデビエーションを単一のデビエーションと判定してしまうことになるが、タイムアウト時間Toutを設けたことにより、2つのデビエーションを分離して検出することができる。
【0087】
続いて、本実施例におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703について説明する。
【0088】
ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、デビエーション検出回路702の出力するDEVIDET情報とROTPHASE情報を入力として、直前の1回転分のDEVIDET情報を記憶する。また、直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報に基づきGAINSEL情報を生成する。またゲイン切り替え指示情報生成回路703は、ROTPHASE情報から回転位相を取得し、所定の回転位相となったタイミングにおいてGAINSEL情報を出力する。
【0089】
次に、出力されるGAINSEL情報について説明する。直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報が示す回転位相範囲においては可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0090】
また、上記以外の(デビエーションが検出されなかった)回転位相においては、可変ゲイン112の値を0.5とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0091】
図12はゲイン切り替え指示情報生成回路703の各部の波形について、一例を示したものである。図12(a)はTE3信号、(b)はROTPHASE情報、(c)はGAINSEL情報が指示する可変ゲイン112の値Kを示している。
【0092】
図12においては、時刻t31からt32においてデビエーション検出回路702によってデビエーションが検出され、回転位相m4−1から回転位相n4+1の範囲を示すDEVIDET情報が出力される。ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、回転位相がm4−1になる時刻t33において可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。その後、回転位相がn4+1になる時刻t34において可変ゲインの値を0.5に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0093】
以上の動作により、直前の1回転においてデビエーションが検出された回転位相範囲において、可変ゲイン112の値が増加する。
【0094】
次に、デビエーションが検出された回転位相範囲において可変ゲイン112の値を増加することによる効果について、以下、ボード線図を用いて説明する。
【0095】
繰り返し制御単体のボード線図を図13に示す。可変ゲイン112をK=1とした繰り返し制御を適用した場合のボード線図を図13(1)、及び可変ゲイン112をK=0.5とした繰り返し制御を適用した場合のボード線図を図13(2)に示す。
【0096】
繰り返し制御単体のゲイン線図は回転周波数の整数倍においてゲインがピークとなる櫛型状の特性となる。また、回転周波数の1.5倍、2.5倍といった0.5の奇数倍の周波数においては、ゲインが負となる。回転周波数の0.5の奇数倍の周波数におけるゲインG[dB]は、可変ゲイン102の値Kを用いて
【0097】
【数2】
と表すことができる。即ち、K=1の場合のゲイン低下は−6dB(図13(1)のAで示したゲイン値)、K=0.5の場合のゲイン低下は−3.52dB(図13(2)のBで示したゲイン値)である。
【0098】
一般に、サーボ系に対して加えられる外乱成分に対しての抑圧度は、感度関数のゲインによって表されることが知られている。本実施例のトラッキングサーボについて、感度関数のゲイン特性を図14に示す。感度関数のゲインが小さいほど、抑圧効果が大きいことを意味する。
【0099】
可変ゲイン112をK=1とした繰り返し制御を適用した場合の感度関数のゲイン特性を図14(1)、及び可変ゲイン112をK=0.5とした繰り返し制御を適用した場合の感度関数のゲイン特性を図14(2)に示す。なお、図14(1)及び図14(2)における破線は、繰り返し制御を用いない場合の感度関数のゲイン特性を示している。
【0100】
図14において、Aで示した周波数は回転周波数であり、Dで示した周波数範囲は、デビエーションが存在する周波数範囲である。また、Eで示した周波数は、回転周波数の0.5の奇数倍の周波数の一例として3.5倍の周波数を示し、Fで示した周波数は回転周波数の整数倍の周波数の一例として10倍の周波数を示している。
【0101】
図14からわかるように、繰り返し制御を用いた場合の感度関数のゲインは、Fで示した周波数のように回転周波数の整数倍の周波数においてゲインが急峻に低下し、繰り返し制御を用いない場合と比較して感度関数のゲインが低下する。また、Kの値が大きくなるほど回転周波数の整数倍の周波数における感度関数のゲインは小さくなる。そのため回転同期成分に対する抑圧を考えた時、K=1において抑圧度は最大となり、良好に抑圧することができる。
【0102】
一方、Eで示した周波数のように回転周波数の整数倍でない、回転に同期しない周波数においては、繰り返し制御を用いない場合と比較して感度関数のゲインが増加する周波数範囲が存在する。即ち、回転周波数の整数倍以外の外乱成分がトラッキングサーボ系に入力された場合に繰り返し制御を用いると、かえってサーボの追従性能が劣化する場合がある。更に前記感度関数のゲイン増加は、Kの値を大きくしていくほど大きくなる。そのため回転非同期成分よる追従性能劣化を考えた時、K=1において最も追従性能が悪くなる。これは図13で示した繰り返し制御単体のゲイン線図において、Kを大きくするほど回転周波数の0.5の奇数倍の周波数におけるゲインが小さくなることに起因している。回転非同期の成分がサーボ系に入力される場合としては、例えば車載機器として光ディスク装置が用いられた場合の振動が挙げられる。
【0103】
そのため従来の繰り返し制御では、デビエーションに対する抑圧不足という課題と、回転非同期成分に対する追従性能劣化という課題のそれぞれについて、光ディスク装置としての性能に及ぼす影響度合いを鑑みて、Kを1より小さい値、例えばK=0.5として繰り返し制御を用いていた。
【0104】
しかしながら前述したように、光ディスク装置のサーボ性能として規格で想定されているよりも優れた追従性能が要求される場合を鑑みると、回転非同期成分に対する追従性能劣化はK=0.5の程度のままに保ちつつ、デビエーションに対する抑圧度を更に増加させたいという要求が存在した。
【0105】
そこで本実施例の構成による光ディスク装置の効果について、シミュレーション波形を用いて説明する。図15は定常的な回転非同期の振動が加わる光ディスク装置において、デビエーションの存在する光ディスクを用いた場合を想定したシミュレーション結果である。回転非同期の振動成分の周波数は回転周波数の3.5倍とし、図14においてEで示した周波数に相当する。また、デビエーション成分の周波数は回転周波数の10倍とし、図14においてFで示した周波数に相当する。
【0106】
図15(1)は本実施例の光ディスク装置を用いた場合のシミュレーション結果を示す。図15(a)はTE1信号、(b)は可変ゲイン112の値Kを示す。また、図(2)は可変ゲイン112をK=1の固定値で使用した場合のTE信号、(3)は可変ゲイン112をK=0.5の固定値で使用した場合のTE信号である。(2)、(3)については、従来技術による繰り返し制御であり、可変ゲイン112の値は固定であるため、可変ゲイン112の値を示す図は省略している。
【0107】
(1)から(3)に示したすべてのシミュレーションに関して記憶回路201への信号の記憶は時間軸上のt=0から開始されており、繰り返し制御の出力は1回転周期後のt=Trotのタイミングから開始されている。従って、t=0からt=Trotの期間のTE1信号波形は、繰り返し制御を用いない場合のTE1信号波形を示している。
【0108】
まず、デビエーション成分に着目する。t=0からt=Trotの期間のAで示した部分が、繰り返し制御を用いていない場合のデビエーション成分の波形である。これに対し、図15(1)、(2)では、デビエーション成分は良好に抑圧されていることがわかる。一方、K=0.5とした場合の(3)ではデビエーション成分に対して抑圧効果はあるものの、(1)、(2)と比較すると抑圧度は小さく、TE1信号に残存する振幅が大きいことがわかる。
【0109】
次に、回転非同期の振動成分に着目する。繰り返し制御を用いる(1)から(3)のすべての場合において、回転非同期の振動成分の振幅はt=Trot以降において増幅されている。中でもK=1とした場合の(2)の場合に、振幅は最も大きい。これに対して、(1)、(3)では(2)と比較すると小さな振幅にとどまっており、非回転同期成分による追従性能劣化が小さいことがわかる。
【0110】
このように、従来技術による繰り返し制御では、K=0.5とするとデビエーション成分の抑圧が不足し、K=1で用いると回転非同期成分による追従性能劣化が大きいという課題があった。
【0111】
図15(2)のように定常的な振動成分が残存する場合には、トラック中央に対してレーザ光が蛇行した状態のまま情報の記録もしくは再生を行っていることになり、光ディスク装置としての情報の記録性能、もしくは再生性能に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、定常的な振動成分はできるだけ小さく抑えることが望ましい。
【0112】
本実施例の構成の光ディスク装置は、デビエーション成分に対する抑圧度はK=1と同等の抑圧度を有し、また回転非同期成分による追従性能劣化はK=0.5の程度を維持することができる。
【0113】
以上の動作により、実施例1による光ディスク装置は、デビエーション成分に対する抑圧度を高めつつ、回転非同期の成分による追従性能劣化を抑制することができ、トラッキングサーボのトラック追従性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0114】
本発明における実施例2について、以下に説明する。
【0115】
本実施例の光ディスク装置を示すブロック図は、実施例1のブロック図である図1と共通である。
【0116】
実施例1では、DEVIDET情報が示す回転位相範囲において可変ゲイン112の値を変更する動作とした。しかし可変ゲイン112の値の変化量が大きい場合、値を変更するタイミングでサーボ追従性能が劣化する可能性がある。
【0117】
実施例1においては、可変ゲイン112の値が変化する際の変化量[dB]は、
【0118】
【数3】
である。例えば光ディスクに偏芯成分が存在した場合、偏芯成分に対する補償信号REPOUTは、可変ゲイン112の値によって振幅が2倍に変化する。
REPOUT信号の波形が急激に変化することはサーボ系にとって外乱となるため、可変ゲイン112の値を変更するタイミングでサーボ追従性能が一時的に劣化する可能性がある。
【0119】
本実施例では、以上の問題を鑑み、可変ゲイン112を変更する際のサーボ追従性能を向上させるための実施の形態である。
【0120】
本実施例における光ディスク装置は、実施例1と比べて、デビエーション検出回路113を構成するゲイン切り替え指示情報生成回路703の動作が異なる。
【0121】
本実施例におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703は、デビエーション検出回路702の出力するDEVIDET情報とROTPHASE情報を入力として、直前の1回転分のDEVIDET情報を記憶する。また、直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報に基づきGAINSEL情報を生成する。またゲイン切り替え指示情報生成回路703は、ROTPHASE情報から回転位相を取得し、所定の回転位相となったタイミングにおいてGAINSEL情報を出力する。
【0122】
次に、出力されるGAINSEL情報について説明する。直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報が示す回転位相範囲においては可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0123】
加えて、前記DEVIDET情報が示す回転位相範囲の前後の、所定の回転位相期間は可変ゲインの値を0.7とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0124】
また、上記以外の回転位相においては、可変ゲインの値を0.5とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0125】
図16はゲイン切り替え指示情報生成回路703の各部の波形について、一例を示したものである。図16(a)はTE3信号、(b)はROTPHASE情報、(c)はGAINSEL情報が指示する可変ゲイン112の値Kを示している。
【0126】
図16においては、前記所定の回転位相期間は回転位相1とした場合を示している。時刻t41から時刻t42においてデビエーション検出回路702によってデビエーションが検出され、回転位相m5−1から回転位相n5+1を示すDEVIDET情報が出力される。ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、回転位相がm5−2になる時刻t43において可変ゲインの値を0.7とするよう指示するGAINSEL情報を出力し、続いて回転位相がm5−1になる時刻t44において可変ゲインの値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。その後、回転位相がn4+1になる時刻t45において可変ゲインの値を0.7に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力し、回転位相がn4+2になる時刻t46において可変ゲインの値を0.5に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0127】
以上の動作により、可変ゲイン112の値は段階的に、増加もしくは減少する。本実施例においては、可変ゲイン112の値が変化する際の変化量[dB]は
【0128】
【数4】
であり、実施例1の場合の6dBよりも小さい。そのため、ゲイン変化時のREPOUT信号波形の変化も小さく、可変ゲイン112の値が変化する際にサーボ系に加わる外乱を小さくすることができる。
【0129】
以上の動作により、実施例2による光ディスク装置は、デビエーションを検出した回転位相において可変ゲイン112値を変化させる際に段階的に変化させて、トラッキングサーボのトラック追従性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0130】
本発明における実施例3について、以下に説明する。
【0131】
本実施例の光ディスク装置を示すブロック図は、実施例1のブロック図である図1と共通である。
【0132】
実施例1におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703は、直前の1回転分のDEVIDET情報を記憶する構成とした。しかし光ディスク装置に一時的に衝撃が加わることによってTE1信号が変動した場合、実施例1の構成では衝撃によるTE1信号変動をデビエーションと誤検出して、可変ゲイン112の値を増加してしまう可能性がある。
【0133】
本実施例では、以上の問題を鑑み、光ディスクに衝撃が加わった場合にデビエーションを誤検出しないための実施の形態である。
【0134】
本実施例における光ディスク装置は、実施例1と比べて、デビエーション検出回路113を構成するゲイン切り替え指示情報生成回路703の動作が異なる。
【0135】
本実施例におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703は、デビエーション検出回路702の出力するDEVIDET情報とROTPHASE情報を入力として、直前の2回転分のDEVIDET情報を記憶する。また、直前の2回転において記憶されたDEVIDET情報に基づきGAINSEL情報を生成する。またゲイン切り替え指示情報生成回路703は、ROTPHASE情報から回転位相を取得し、所定の回転位相となったタイミングにおいてGAINSEL情報を出力する。
【0136】
次に、出力されるGAINSEL情報について説明する。ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、2回転前の周回で記憶されたDEVIDET情報と、1回転前の周回で記憶されたDEVIDET情報とを元に、それぞれが示す回転位相範囲のうちで重複する回転位相範囲について、可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0137】
また、上記以外の回転位相範囲においては、可変ゲインの値を0.5とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0138】
図17はゲイン切り替え指示情報生成回路703の各部の波形について、一例を示したものである。図17(a)はTE3信号、(b)はROTPHASE情報、(c)はGAINSEL情報が指示する可変ゲイン112の値Kを示している。
【0139】
図17においては、デビエーション成分の波形が周回ごとに変形していく場合の波形図を示している。まず、時刻t51から時刻t52においてデビエーション検出回路702によってデビエーションが検出され、回転位相m6−1から回転位相n6+1を示すDEVIDET情報が出力される。
【0140】
また、次の周回においては時刻t53から時刻t54においてデビエーションが検出される。この時、図17に示すように時刻t54時点での回転位相は直前の周回よりも1ずれてn6+1であった場合を用いて説明する。回転位相m6−1から回転位相n6+2の範囲を示すDEVIDET情報が出力される。
【0141】
ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、上記2回転分のDEVIDET情報を記憶し、回転位相範囲が重複する回転位相範囲を算出する。図17の場合には、該重複する回転位相範囲は回転位相m6−1から回転位相n6+1の範囲となる。
【0142】
従って、ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、次に回転位相がm4−1になる時刻t55において可変ゲインの値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。その後、回転位相がn4+1になる時刻t56において可変ゲインの値を0.5に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0143】
光ディスク装置に衝撃が加えられた場合は、衝撃が加わった周回においてのみ、TE3信号が変動する。従って図17から明らかなように、衝撃が加わった場合であっても可変ゲイン112の値は増加されない。
【0144】
以上の動作により、実施例3による光ディスク装置は、衝撃が加わったことによるTE1信号の変動をデビエーションと誤検出してしまうことを回避し、トラッキングサーボのトラック追従性能を向上させることができる。
【0145】
以上の実施例におけるDEVIDET情報が示す範囲は、デビエーション検出開始位相値からデビエーション検出終了位相値までの期間に対して、前後に所定の回転位相を付加した回転位相の範囲とした。しかし所定の回転位相を付加せずに、DEVIDET情報が示す範囲は、デビエーション検出開始位相値からデビエーション検出終了位相値までとしてもよい。
【0146】
以上の実施例におけるデビエーション検出情報生成回路702は、タイマを有し、TE3信号が所定のタイムアウト時間Tout内に複数回Vthを超えた期間が存在する場合、前記複数の期間は一つのデビエーションであると判定する構成とした。このためToutが経過した後に単一のデビエーションが存在したと確定するため、デビエーション検出情報生成回路702は少なくとも1回転分のDEVIDET情報を記憶しておき、デビエーションを検出してから1回転後の周回において初めて可変ゲイン112の値を変更した。
【0147】
しかしデビエーション検出情報生成回路702はタイムアウトを持たない構成とし、TE3信号がVthを超えたことをもって即座にデビエーションを検出したと判定し、1回転を待たずに可変ゲイン112を変更する構成としてもよい。
【0148】
また以上の実施例におけるデビエーション検出情報生成回路702は、TE3信号の絶対値を監視し、TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えたか否かに着目してデビエーションを検出する動作としたが、デビエーションの検出方法はこの手法に限定されるものではない。例えば、TE3信号の絶対値が所定の閾値Vth2を超えている時間Tth2を計測し、Tth2が所定の値を超えたか否かに着目してデビエーションを検出する動作としてもよい。
【0149】
以上の実施例におけるデビエーション検出回路113は、内部にバンドパスフィルタ701を有し、バンドパスフィルタ701により偏芯による回転周波数成分および高周波数のノイズ成分が減衰したTE3信号を生成し、デビエーションの検出を行った。しかし一般にTE2信号に含まれる偏芯成分の振幅は小さいので、バンドパスフィルタ701の代わりにローパスフィルタを用い、ノイズのみを減衰させる構成としてもよい。
【0150】
更には、遅延記憶回路111を構成するN個の記憶回路201に記憶された信号波形はTE2信号に対してローパスフィルタ110による帯域制限がかけられた直前1回転分の信号波形であることに着目すれば、以上の実施例におけるデビエーション検出回路113は、記憶回路201に保存された値を取り込み、この値を用いてデビエーションの検出を行う構成としてもよい。
【0151】
以上の実施例においては、定常状態の可変ゲイン112の値を0.5、デビエーションを検出した回転位相における可変ゲイン112の値を抑圧効果が最大となる1としたが、別の値を用いても構わない。例えば、デビエーションを検出した回転位相における可変ゲイン112の値を0.8としてもよい。
【0152】
また、以上の実施例におけるデビエーション検出回路113は、加算器106の出力信号であるTE2信号を用いてデビエーションを検出する構成としたが、サーボループ中の別の信号であっても構わない。デビエーションを検出するのに用いる信号は、加算器106よりも後段の信号であることが望ましい。これは図15で示したように、可変ゲイン112の値Kが1に近い繰り返し制御を適用した状態では、加算器の前段のTE1信号においてはデビエーションが抑圧されてしまうため、デビエーションの存在有無を検出する元信号としては適さないためである。ただし、デビエーションを検出した回転位相における可変ゲイン112の値Kとして1より小さい値を使用する場合には、TE1信号を用いた場合でもデビエーション検出は可能である。従ってデビエーション検出回路113は、TE2信号に対してトラッキング制御回路107によるゲインと位相の補償がなされた後の信号であるTRD信号を用いてデビエーションの検出を行う構成としてもよい。
【0153】
以上の実施例においては、可変ゲイン112は遅延記憶回路111の後段に接続された構成としたが、可変ゲイン112は繰り返し制御ループのどの位置に接続されていても構わない。例えば、遅延記憶回路111の後段ではなく、ローパスフィルタ110の直前に可変ゲイン112が挿入された構成であってもよい。
【0154】
また、以上の実施例における繰り返し制御は、トラッキングエラー信号に対して信号を取り込んで補償信号を加算する構成としたが、TRD信号に対して信号を取り込んで補償信号を加算する構成としても構わない。さらには、トラッキング制御手段の内部の信号を取り込んで補償信号を加算する構成としてもよい。
【0155】
以上の実施例における繰り返し制御は1回転をN分割して信号の値を記憶する構成としたが、本発明は1回転以上の信号を記憶する構成の繰り返し制御に対しても、同様に適用可能である。
【0156】
また、以上の実施例では、デビエーションの検出された回転位相において、繰り返し制御ループ上の可変ゲイン112の値を増加する構成としたが、本発明の趣旨は、デビエーションの検出された回転位相において、定常状態よりも回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する抑圧度が増加した繰り返し制御を用いることにあり、ゲインの変更以外の手法により抑圧度を増してもよい。
【0157】
また、特許文献4に開示されているように、本明細書に記載した実施例で説明した繰り返し制御とは異なる構成の繰り返し制御に関しても、デビエーションの検出された回転位相において、定常状態よりも回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する抑圧度が増加した繰り返し制御の特性を用いることにより、本発明が同様に適用可能であることは明らかである。
【0158】
また、本発明は光ディスク装置のフォーカス制御に関しても、同様に適用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の実施例1を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の遅延記憶回路を示す構成図である。
【図3】本発明の実施例1の遅延回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施例1の遅延記憶回路を説明する波形図である。
【図5】本発明の実施例1のトラッキングサーボの開ループ伝達関数のボード線図である。
【図6】本発明の実施例1のローパスフィルタのボード線図である。
【図7】本発明の実施例1のデビエーション検出回路を示す構成図である。
【図8】本発明の実施例1のバンドパスフィルタのボード線図である。
【図9】本発明の実施例1のバンドパスフィルタを説明する波形図である。
【図10】本発明の実施例1のデビエーション検出情報生成回路の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施例1のデビエーション検出情報生成回路を説明する波形図である。
【図12】本発明の実施例1のゲイン切り替え指示情報生成回路を説明する波形図である。
【図13】本発明の実施例1の繰り返し制御単体のボード線図である。
【図14】本発明の実施例1のトラッキングサーボの感度関数のゲイン特性である。
【図15】本発明の実施例1を説明する波形図である。
【図16】本発明の実施例2のゲイン切り替え指示情報生成回路を説明する波形図である。
【図17】本発明の実施例3のゲイン切り替え指示情報生成回路を説明する波形図である。
【図18】サーボエラー信号中のデビエーション成分を説明する波形図である。
【符号の説明】
【0160】
101…光ディスク、102…対物レンズ、103…光ピックアップ、104…スピンドルモータ、105…トラッキングエラー信号生成回路、106…加算器、107…トラッキング制御回路、108…ドライバ回路、109…回転位相検出回路、110…ローパスフィルタ、111…遅延記憶回路、112…可変ゲイン、113…デビエーション検出回路、201…記憶回路、202…第一のセレクタ、203…遅延回路、204…第二のセレクタ、701…バンドパスフィルタ、702…デビエーション検出情報生成回路、703…ゲイン切り替え指示情報生成回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報を記録もしくは再生を行う光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置におけるサーボ追従偏差の要因の一つとして、光ディスクが回転することによって生じる、周期的な外乱が挙げられる。このような周期的な外乱への追従性能を向上させるための一つの方法は、サーボゲインを高くして許容外乱量を増加させる方法である。
【0003】
しかし一方で特許文献1には、『DVD再生を高速化するとサーボ帯域をさらに広げるためカットオフを上げる必要がある。例えば、カットオフを10kHzにすると上記共振が存在した場合発振は避けられない。』との記載がある。
【0004】
周期的な外乱への追従性能を向上させる別の方法として、従来から繰り返し制御が知られている。
【0005】
特許文献2によれば、外部から所定値以上の振動が光ディスク装置に加えられたことを検知し、当該検知信号に基づいて光ディスクの回転周波数領域のゲインを増加させる動作を中止すると共に、前記サーボ制御のサーボ帯域全体のゲインを増大させる技術が開示されている。
【0006】
特許文献3によれば、繰り返し制御の学習度合いを変化させ、トラック相関が弱いとき繰り返し学習能力を下げる技術が開示されている。
【0007】
特許文献4によれば、フィルターの出力信号と遅延していない位置誤差信号PESとを加算して新たな内部状態信号として遅延記憶素子に出力する加算器を備えた構成の繰り返し制御が開示されている。
【0008】
一方、光ディスクを回転した時に生じる周期的な外乱成分としては、偏芯・面ぶれ成分以外に、デビエーションと呼ばれる成分が存在することが知られている。特許文献5によれば「案内溝を有する光ディスクでは、ディスクスタンパの劣化やディスク形成不良などにより溝形状の不良部分(デビエーション)を有する場合がある。このようなディスクを高倍速で走行した場合、特に外周部において、溝反射信号に広帯域の特有のノイズ成分が混入する。」との記載がある。
【0009】
また、特許文献6によれば、欠陥区間を算出し、算出された欠陥区間はサーボ制御のループ利得を下げてカットオフ周波数を低くし、欠陥区間以外ではループ利得を上げてカットオフ周波数を高くする手法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−84620
【特許文献2】特開平11−213403
【特許文献3】特開平8−77589
【特許文献4】特開2001−126421
【特許文献5】特開2007−207390
【特許文献6】特開2003−67951
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が対象とする課題は大きく三つある。第一の課題は、高倍速時にデビエーションと呼ばれる成分の抑圧とサーボ安定性の両立が困難であることである。フォーカス系・トラッキング系の制御に用いるサーボエラー信号には、サーボ系が抑圧しきれない成分が残留誤差となって現れる。そのため、光ディスクに面ぶれ・偏芯が存在する場合、サーボエラー信号においては回転周波数の信号変動成分が観測される。同様に、ディスクのトラックの部分的な歪み(以下、デビエーションと呼ぶ)が存在した場合には、サーボエラー信号に高周波数の信号変動として観測される。
【0012】
図18はデビエーション通過時のサーボエラー信号の模式図である。Vrefはサーボエラー信号の基準レベルである。以下では、デビエーション通過時にサーボエラー信号に観測される、高周波数の信号変動成分をデビエーション成分と呼ぶ。デビエーション成分は図18のAの部分に相当する。図18に示すように、デビエーション成分は回転周期に同期して発生し、1回転周期ごとに略等しい信号変動波形となる。これはデビエーションがディスクの製造工程に起因する局所的な歪みであるため、ディスク1回転中の特定の角度において発生し、また隣接するトラックにおいても略等しい形状でトラックが歪んでいるためである。
【0013】
デビエーション成分は欠陥や傷といった外乱成分と比較すると低い周波数であり、サーボゲインを上げて追従することが有効な対策である。一方、欠陥や傷といった外乱成分は周波数が高く、サーボゲインを下げてサーボの応答を小さくし、無理に追従しようとしないことが有効な対策となる。
【0014】
デビエーション成分は回転周期に同期した信号波形であるので、フーリエ変換により回転周波数とその高次成分の和で表すことができるため、繰り返し制御によって抑圧することが可能である。
【0015】
光ディスク装置が追従するトラックのフォーカス方向・トラッキング方向の物理的な精度は、光ディスクの規格として規定されている。従って規格に準拠した光ディスクは、規格で規定されたサーボ特性を用いて抑圧できることが保証されている。しかし実際には、規格を満足しないデビエーションを持った光ディスクが市場に存在する可能性がある。このようなディスクに対応する場合には、規格で想定されているより優れた追従性能が光ディスク装置のサーボ性能として要求される。
【0016】
一方、所定の規格に準拠した光ディスクに対し前記規格以上の倍速での記録・再生に対応することで、記録・再生にかかる時間を短縮したいという要求もある。この場合にも、規格で想定されているより優れた追従性能が要求される。
【0017】
上述したような、規格で想定されているより優れた追従性能が光ディスク装置のサーボ性能として要求される場合には、さらにサーボゲインを上げて抑圧度を増す必要がある。しかし特許文献1に開示されているように、倍速が速くなるほど追従に必要となるサーボゲインは高くなる。しかし光ディスク装置のアクチュエータには副共振が存在するため、定常特性としてサーボゲインが高い状態からさらにサーボゲインを上げた場合、副共振周波数においてサーボ安定性が劣化し、発振するなどの現象を招いてしまう。そのため、特に高倍速時は、定常状態からさらにサーボゲインを上げることが困難である。この結果、デビエーション成分のような高周波数の外乱に対して特に抑圧ゲインが不足し、最悪の場合には追従しきれずにサーボが外れる現象が発生する。このように、高倍速時にデビエーション抑圧とサーボ安定性の両立が困難であることが第一の課題である。
【0018】
この課題に対応するためには、繰り返し制御を用いることでデビエーション成分に対する抑圧度を上げることが要求されることを本発明者は見出した。本発明が対象とする課題のうち、以降で説明する第二、第三の課題は、繰り返し制御でデビエーション成分を抑圧する上での課題である。
【0019】
第二の課題は、デビエーション波形の変形に対する抑圧の速さである。デビエーション成分は1回転周期ごとに略等しい波形となるが、完全に一致せず、周回ごとにデビエーション波形が変形していく場合がある。そのため、繰り返し制御実施中にデビエーション成分の波形が周回ごとに変形していった場合であっても、デビエーション成分が速やかに抑圧されることが要求されることを本発明者は見出した。
【0020】
第三の課題は、回転に同期しない周波数成分の外乱に対する追従性能である。繰り返し制御は回転に同期した周波数成分(以下、回転同期成分と呼ぶ)の外乱がサーボ系に入力された場合には抑圧効果を有する。一方で、回転に同期しない周波数成分(以下、回転非同期成分と呼ぶ)の外乱がサーボ系に入力された場合には、繰り返し制御を用いない場合と比べても追従性能が劣化してしまうことが知られている。回転非同期成分としては、衝撃や振動などが挙げられる。回転同期成分と回転非同期成分が同時にサーボ系に入力された場合であっても、追従性能劣化を最小限に抑える光ディスク装置が望まれた。
【0021】
以上から、定常状態よりもサーボゲインを上げることの困難な光ディスク装置を想定し、デビエーションの定常的な抑圧性能と、周回ごとのデビエーション変形への速やかな抑圧性能とを有し、更には回転非同期成分が加えられた場合でも追従性能劣化を最小限に抑える光ディスク装置の構成が望まれることを本発明者は見出した。
【0022】
この課題を解決するための手法としては例えば、特許文献2がある。本手法は振動が加えられたことを検知して繰り返し制御の出力を中止すると同時にサーボ制御のサーボ帯域全体のゲインを増大させる。しかし高周波数であるデビエーション成分が外乱としてサーボ系に入力される場合を考えると、繰り返し制御を用いずにサーボゲインの変更だけで抑圧するには、上述したように副共振周波数での発振現象が避けられないという課題がある。
【0023】
また、他の手法として特許文献3がある。これは振動やディスクの傷等の突発的な外乱が印加された場合に学習補償部のフィードフォワードループにおけるアッテネータ量を小さくするものであるが、本手法もデビエーション成分に関して考慮されていない。例えば車載機器など、定常的な回転非同期の振動が加わる条件下に置かれた光ディスク装置で、デビエーションが存在する光ディスクに対して記録・再生を行う場合には、常に上記アッテネータ量が小さくなってしまうため、デビエーション成分に対する抑圧が不足しサーボが外れてしまうという課題がある。
【0024】
また、別の手法として特許文献6がある。これは欠陥区間を算出し、算出された欠陥区間はサーボ制御のループゲインを下げる手法である。デビエーション成分の場合にはサーボゲインを上げることが有効であるため、この手法をこの課題に適用すると、デビエーション区間を算出し、算出されたデビエーション区間はサーボ制御のループゲインを上げる、となる。『ループゲインを上げる』場合、通常は『サーボ帯域全体のゲインを増大させる』ことを意味するのが一般的である。サーボ帯域全体のゲインを上げた場合、サーボ帯域内のすべての周波数において抑圧度を増す効果がある。即ち、デビエーション成分、回転同期成分、回転非同期成分のいずれに対しても、追従性能を向上させることが可能である。これに対し、学習補償部のフィードフォワードループにおけるアッテネータ量を大きくした場合にもサーボ帯域全体でなく、回転周波数の高次周波数においてのみゲインが増加する特性となるが、この場合には回転非同期成分に対して追従性能が劣化するという欠点がある。従って通常『ループゲインを上げる』場合は、『サーボ帯域全体のゲインを増大させる』ことを意味する。
【0025】
算出されたデビエーション区間でサーボ帯域全体のゲインを増大させることを考えると、上述したように高倍速時には副共振周波数において発振条件になってしまうという問題がある。デビエーションを検出した区間だけであっても、サーボが発振してしまう現象は避ける必要がある。そのため、本手法は特に高倍速時に採用できないという課題がある。
【0026】
また、他の手法として特許文献4がある。本手法では、繰り返し制御系の構成として、遅延記憶手段の出力信号と遅延していない位置誤差出力とを加算して新たな内部状態信号として前記遅延記憶手段に出力する加算器を設ける構成とし、更に繰り返し制御の出力信号に対してゲインを乗じる乗算器におけるゲインを小さくすることにより、回転非同期成分に対する追従性能劣化を回避している。しかし本手法は学習の収束性が遅くなるという欠点がある。そのため、繰り返し制御実施中にデビエーション成分の波形が周回ごとに変形していく場合への対応が困難である。
【0027】
以上の問題を鑑み、本発明の目的は、繰り返し制御を用いる光ディスク装置のトラック追従性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の目的は、その一例として、サーボ乱れを検出した回転位相範囲を含む所定の回転位相範囲において、回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する前記繰り返し制御系の抑圧度を増加することで達成できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、光ディスク装置のトラック追従性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の光ディスク装置の実施例を、図を用いて説明する。
【0031】
本発明はトラッキング制御、フォーカス制御共に適用可能であるが、ここではトラッキング制御を例に説明を行う。
【実施例1】
【0032】
図1は本実施例の光ディスク装置を示すブロック図である。
【0033】
符号101は光ディスクであり、レーザ光の照射により情報の読み取り、消去、又は書き込みが行われる。
【0034】
符号102は対物レンズであり、レーザ光を集光して光ディスク101の記録面にレーザの焦点を合わせる。
【0035】
符号103は光ピックアップであり、図示していないトラッキングアクチュエータを備える。また、光ディスク101からの反射光を検出し、反射光量に応じた電気信号を出力する光検出器(図示していない)を備える。
【0036】
符号104はスピンドルモータであり、光ディスク101を所定の線速度で回転駆動する。以下、スピンドルモータ104の回転周期をTrotで表す。
【0037】
符号105はトラッキングエラー信号生成回路であり、光ピックアップ103内の光検出器の出力信号から、トラッキングエラー信号TE1を生成して出力する。
【0038】
符号106は加算器であり、トラッキングエラー信号TE1と、後述する可変ゲイン112から出力される補償信号REPOUTとを加算した信号TE2を出力する。
【0039】
符号107はトラッキング制御回路であり、TE2信号に対して、ゲイン及び位相の補償を行い、駆動信号TRDを生成する。
【0040】
符号108はドライバ回路であり、トラッキング制御回路107の出力するTRD信号を増幅し、光ピックアップ103内のトラッキングアクチュエータへ供給する。
【0041】
符号109は回転位相検出回路であり、スピンドルモータ104の出力信号から、回転位相情報ROTPHASEを出力する。ROTPHASE情報は、0からN−1(N:1以上の整数)までの値を取り、スピンドルモータの1回転をN等分して位相情報とするものとする。
【0042】
即ち、スピンドルモータの回転軸の回転角をθ度(0≦θ<360)とした場合、ROTPHASE情報の値PHは
【0043】
【数1】
(関数int(a)は、引数aに対し、a以下の最大の整数を返す関数。)
で算出される。ROTPHASE情報はTROT/Nの周期で値が更新される。
【0044】
符号110はローパスフィルタであり、TE2信号中に含まれる高周波数成分を減衰させる。
【0045】
符号111は遅延記憶回路であり、ROTPHASE情報に基づきローパスフィルタ110の出力信号を取り込み、1回転をN分割して信号の値を記憶する。また記憶した値を元に、サーボ系に入力される周期的な外乱を補償するための信号を、回転に同期させて出力する。
【0046】
符号112は可変ゲインであり、遅延記憶回路111の出力信号に対して所定の係数Kを乗じて、補償信号REPOUTとして出力する。可変ゲイン112に設定される値Kは、後述するデビエーション検出回路112の出力するゲイン切り替え指示情報GAINSELに基づき変更され、Kの値は0以上1以下の値を取るものとする。
【0047】
符号113はデビエーション検出回路であり、TE2信号とROTPHASE情報を入力とし、ゲイン切り替え指示情報GAINSELを出力する。
【0048】
ここで、本実施例における遅延記憶回路111の構成について、図2を用いて説明する。
【0049】
符号201は記憶回路であり、1回転をN分割して信号の値を記憶するために、N個存在する。記憶回路201は、本実施例のトラッキングサーボ系がデジタルサーボで実現される場合に、例えばフラッシュメモリにより構成できる。
【0050】
符号202は第一のセレクタであり、ローパスフィルタ110の出力信号を入力とし、出力としてN個の記憶回路201を切り替える。第一のセレクタ202は、ROTPHASE情報の値が変化するタイミングで、ROTPHASE情報の値に対応した記憶回路201を選択する。セレクタ202によって選択された記憶回路は、セレクタ202による選択のタイミングにおける入力信号の値を記憶する。
【0051】
符号203は遅延回路であり、ROTPHASE情報の値を所定の時間、遅延させた位相情報である、出力位相情報OUTPHASEを生成する。以下では、遅延回路203における遅延時間をTdlyとする。
【0052】
符号204は第二のセレクタであり、OUTPHASE情報の値が変化するタイミングで、OUTPHASE情報の値に対応した記憶回路201を選択し、選択された記憶回路201に記憶されている値を遅延記憶回路111の出力信号として出力する。
【0053】
次に遅延回路203の動作を、図3のタイミングチャートを用いて説明する。図3(a)はROTPHASE情報、(b)はOUTPHASE情報、(c)はOUTPHASE情報の変形例を示している。
【0054】
図3(b)は、ROTPHASE情報に対して所定の値(図中ではiとした)を加算したものをOUTPHASE情報とする構成の場合を示している。本構成は、本実施例のトラッキングサーボ系がデジタルサーボで実現される場合であれば、フラッシュメモリ等に保存されているROTPHASE情報に所定の値を加えた値をOUTPHASE情報として格納すればよく、簡単な構成で実現できる。これにより、遅延回路における遅延時間は、ROTPHASE情報の更新周期であるTROT/Nの精度で調整することができる。
【0055】
次に、図3(c)に示した変形例について説明する。図3(b)においては、遅延回路における遅延時間をTROT/Nの精度で調整するとしたが、TROT/Nの精度である必要はない。図3(c)の変形例においては、遅延回路における遅延時間Tdly2はTROT/Nより短い時間精度で調整されるものとする。
【0056】
次に、遅延記憶回路111の動作を、図4の波形図を用いて説明する。図4は遅延記憶回路111における各部の信号波形を示している。Vrefはトラッキングエラー信号の基準レベルである。図4(a)はローパスフィルタ110の出力信号波形、(b)は記憶回路201により記憶された信号を等価的に示した波形、(c)は遅延記憶回路111の出力信号波形である。
【0057】
図4から明らかなように、ROTPHASE情報に基づいてTROT/Nの時間間隔で入力信号の値が記憶され、遅延回路における遅延時間Tdlyが経過した後に、記憶された値が出力される。
【0058】
ここで遅延時間Tdlyは、光ディスクの1回転周期から、ローパスフィルタ110における遅延時間及び記憶回路201におけるホールド動作による遅延時間を引いた時間だけ、信号を遅延させるものとする。これにより、繰り返し制御ループ伝播中の信号遅延が補正され、正確に1回転周期が経過したタイミングで加算器106にてREPOUT信号が加算される。
【0059】
ここで、繰り返し制御を実施しない場合のトラッキングサーボについて、開ループ伝達関数のボード線図を図5に示す。図5においてAで示した周波数は回転周波数である。本実施例では一例として、回転周波数を100Hzとしている。また、Dで示した周波数範囲は、デビエーションが存在する周波数範囲を示しており、本実施例ではDの周波数範囲において抑圧効果を持つ繰り返し制御系を考える。
【0060】
なお本実施例では、遅延記憶回路111を構成する記憶回路201の総数Nは、図5においてDで示した周波数範囲に含まれる周波数のデビエーション成分の形状を記憶できるだけの大きな数であるとする。
【0061】
ローパスフィルタ110のボード線図の一例を図6に示す。ローパスフィルタ110の低域ゲインは0dBとし、またカットオフ周波数は、周波数範囲Dの上限周波数とする。これにより、周波数範囲Dに含まれる周波数の信号成分は減衰せずに通過するため、その周波数範囲に含まれる外乱成分に対しては繰り返し制御による補償信号REPOUTが出力される。一方、周波数範囲Dの上限周波数以上の周波数の信号成分は減衰するため、高周波数の外乱成分に対しては、補償信号REPOUTは出力されない。
【0062】
また、ローパスフィルタ110の位相特性は、通過域において直線位相特性を有する。これは、ローパスフィルタ110を通過する際の遅延時間が、周波数範囲Dにおいて一定となり、繰り返し制御の性能を向上させることができるためである。
【0063】
次に、本実施例におけるデビエーション検出回路113の構成について、図7を用いて説明する。
【0064】
符号701はバンドパスフィルタであり、デビエーション検出回路の入力信号であるTE2信号に対して、回転周波数成分やその2次成分、3次成分を減衰させ、かつ高周波数のノイズ成分を減衰させた信号TE3を出力する。
【0065】
符号702はデビエーション検出情報生成回路であり、内部にタイマを有し、TE3信号とROTPHASE情報を入力信号として、デビエーションが検出された回転位相の範囲を示すDEVIDET情報を出力する。
【0066】
符号703はゲイン切り替え指示情報生成回路であり、DEVIDET情報とROTPHASE情報を元に、可変ゲイン112の値Kの変更を指示するGAINSEL情報を生成して出力する。
【0067】
バンドパスフィルタ701の周波数特性の一例を図8に示す。図8におけるAは回転周波数、Bは回転周波数の2倍の周波数、Cは回転周波数の3倍の周波数を示す。また、周波数範囲Dはデビエーションが存在する周波数範囲を示している。
【0068】
バンドパスフィルタのゲイン特性は、周波数範囲Dを通過域に含み、周波数A、B、Cは減衰域に含む。従って、偏芯による回転周波数成分やその2次成分、3次成分は減衰される。またバンドパスフィルタのゲイン特性は、周波数範囲Dの上限周波数以上において減衰する特性とする。これにより、ローパスフィルタ110による減衰によって繰り返し制御によるREPOUT信号が出力されない高周波数のノイズ成分についても、減衰させることが可能となる。
【0069】
バンドパスフィルタ701の効果について、図9の波形図を用いて説明する。図9(a)はTE2信号、(b)はTE3信号を示している。図9(a)中、符号Aはデビエーション、符号Bは高周波数のノイズ成分を示している。
【0070】
バンドパスフィルタ701を通過したことにより、図9(b)に示すTE3信号では、偏芯による回転周波数成分および高周波数のノイズ成分が減衰される。即ち、TE3信号は、デビエーション成分のみを抽出した信号となる。
【0071】
次に、デビエーション検出情報生成回路702の動作について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
デビエーション検出情報生成回路702は動作を開始すると(ステップS1001)、TE3信号の絶対値を監視し、TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えたかどうかを検出する(ステップS1002)。TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えていない場合(ステップS1002でNoの場合)、ステップ1002に戻る。
【0073】
TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えた場合(ステップS1002でYesの場合)、その時点の回転位相をROTPHASE情報から取得しデビエーション検出開始位相値として記憶する(ステップS1003)。続いてタイマをスタートし、TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えてからの時間を計測する(ステップS1004)。
【0074】
次に、タイマをスタートしてからToutが経過したかを判断する(ステップ1005)。
【0075】
タイマをスタートしてからToutが経過していない場合(ステップS1005でNoの場合)、TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回ったかどうかを検出する(ステップS1006)。TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回っていない場合(ステップS1006でNoの場合)、ステップ1005に戻る。
【0076】
TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回った場合(ステップS1006でYesの場合)、その時点の回転位相をROTPHASE情報から取得し、デビエーション検出終了位相値として記憶する(ステップS1007)。この時、既にデビエーション検出終了位相値が保存済みであっても、デビエーション検出終了位相値を上書きするものとする。この動作により、所定のタイムアウト時間Tout内に複数回Vthを超えた期間が存在する場合、前記複数の期間は1つのデビエーションであると判定される。ステップS1007の後、ステップ1005に戻る。
【0077】
タイマをスタートしてからToutが経過した場合(ステップS1005でYesの場合)、デビエーション検出終了位相値が保存済みであるかを判断する(ステップS1008)。
【0078】
デビエーション検出終了位相値が保存済みの場合(ステップS1008でYesの場合)、デビエーション検出開始位相値からデビエーション検出終了位相値までの期間に単一のデビエーションが存在したと確定し、DEVIDET情報を作成、出力して(ステップS1009)、ステップ1002に戻る。
【0079】
ここでステップS1009のDEVIDET情報の作成について説明する。デビエーション検出開始位相値がm、デビエーション検出終了位相値がnである場合、DEVIDET情報は回転位相mから回転位相nの期間に対して、前後に所定の回転位相を付加した回転位相の範囲を示すものとする。例えば、上記所定の回転位相範囲が1である場合、DEVIDET情報はm−1からn+1の範囲を示す。
【0080】
一方、デビエーション検出終了位相値が保存済みでない状態でタイマをスタートしてからToutが経過した場合(ステップS1008でNoの場合)には、記憶済みのデビエーション検出開始位相値を破棄して(ステップ1011)、ステップ1002に戻る。
【0081】
デビエーション検出情報生成回路702におけるデビエーション検出について、図11の波形図を用いて説明する。図11の(1)〜(3)では、デビエーションの形状の種類として3種類を挙げている。図11(1)はTE3信号に含まれる単一のデビエーション波形が正側だけ閾値Vthを超える場合を示している。図11(2)はTE3信号に含まれる単一のデビエーション波形が正側と負側の両方で閾値Vthを超える場合を示している。また、図11(3)は1周に2つのデビエーションが存在した場合を示している。
【0082】
図11の(1)〜(3)の各図において、(a)はTE3信号、(b)はタイマの計測開始からタイムアウト期間Toutが経過するまでの期間を矢印で示したものである。また(c−1)、(c−2)はデビエーション検出情報生成回路702の出力するDEVIDET情報を模式的に示したものであり、(c−1)はROTPHASE情報、(c−2)はDEVIDET情報の示す範囲でHighレベルとなる信号を示している。
【0083】
図11(1)の場合のデビエーション検出について説明する。デビエーション検出情報生成回路702はTE3信号の絶対値が閾値Vthを超えた時刻t11においてタイマをスタートし、その時点での回転位相m1をデビエーション検出開始位相として記憶する。また、TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回った時刻t12において、その時点での回転位相n1をデビエーション検出終了位相として記憶する。その後タイムアウト時間Toutが経過したことにより、単一のデビエーションが存在した期間として時刻t11から時刻t12の期間と確定する。
【0084】
図から明らかなように、時刻t11から時刻t12の期間はTE3信号の絶対値が閾値Vthを超えている期間であるが、デビエーション波形の先頭部分及び末尾部分(TE3信号の絶対値が閾値Vthを越えていない期間)が含まれていない。そのため、DEVIDET情報が示す範囲は、回転位相m1から回転位相n1の期間に対して、前後に所定の回転位相を付加した回転位相の範囲とする。図11では、回転位相m1から回転位相n1の期間に対して、前後に回転位相1を付加してDEVIDET情報を出力する例を示しており、図11の場合には回転位相m1−1から回転位相n1+1の範囲を示すDEVIDET情報が出力され、該範囲においてデビエーションが検出されたことを意味する。
【0085】
続いて、図11(2)のように正側と負側の両方で閾値Vthを超える場合について説明する。TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えた時刻t21においてタイマをスタートし、その時点での回転位相m2をデビエーション検出開始位相として記憶する。その後、時刻t22においてTE3信号の絶対値が閾値Vthを下回り、その時点での回転位相n2がデビエーション検出終了位相として記憶される。しかし図11(2)のデビエーション波形の場合、タイムアウト時間Toutが経過する前に時刻t23において再度、TE3信号の絶対値が閾値Vthを下回るため、デビエーション検出終了位相は時刻t23での回転位相n3に上書きされる。その後タイムアウト時間Toutが経過したことにより、単一のデビエーションが存在した時間として時刻t21から時刻t23の期間と確定される。この結果、図11(2)の場合には回転位相m2−1から回転位相n3+1の範囲を示すDEVIDET情報が出力される。
【0086】
図11(3)は1周に2つのデビエーションが存在した場合について説明する。なお、図11(3)においては、(c−1)を省略した。仮にタイムアウト時間Toutを設けない構成とすると、2つのデビエーションを単一のデビエーションと判定してしまうことになるが、タイムアウト時間Toutを設けたことにより、2つのデビエーションを分離して検出することができる。
【0087】
続いて、本実施例におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703について説明する。
【0088】
ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、デビエーション検出回路702の出力するDEVIDET情報とROTPHASE情報を入力として、直前の1回転分のDEVIDET情報を記憶する。また、直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報に基づきGAINSEL情報を生成する。またゲイン切り替え指示情報生成回路703は、ROTPHASE情報から回転位相を取得し、所定の回転位相となったタイミングにおいてGAINSEL情報を出力する。
【0089】
次に、出力されるGAINSEL情報について説明する。直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報が示す回転位相範囲においては可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0090】
また、上記以外の(デビエーションが検出されなかった)回転位相においては、可変ゲイン112の値を0.5とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0091】
図12はゲイン切り替え指示情報生成回路703の各部の波形について、一例を示したものである。図12(a)はTE3信号、(b)はROTPHASE情報、(c)はGAINSEL情報が指示する可変ゲイン112の値Kを示している。
【0092】
図12においては、時刻t31からt32においてデビエーション検出回路702によってデビエーションが検出され、回転位相m4−1から回転位相n4+1の範囲を示すDEVIDET情報が出力される。ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、回転位相がm4−1になる時刻t33において可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。その後、回転位相がn4+1になる時刻t34において可変ゲインの値を0.5に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0093】
以上の動作により、直前の1回転においてデビエーションが検出された回転位相範囲において、可変ゲイン112の値が増加する。
【0094】
次に、デビエーションが検出された回転位相範囲において可変ゲイン112の値を増加することによる効果について、以下、ボード線図を用いて説明する。
【0095】
繰り返し制御単体のボード線図を図13に示す。可変ゲイン112をK=1とした繰り返し制御を適用した場合のボード線図を図13(1)、及び可変ゲイン112をK=0.5とした繰り返し制御を適用した場合のボード線図を図13(2)に示す。
【0096】
繰り返し制御単体のゲイン線図は回転周波数の整数倍においてゲインがピークとなる櫛型状の特性となる。また、回転周波数の1.5倍、2.5倍といった0.5の奇数倍の周波数においては、ゲインが負となる。回転周波数の0.5の奇数倍の周波数におけるゲインG[dB]は、可変ゲイン102の値Kを用いて
【0097】
【数2】
と表すことができる。即ち、K=1の場合のゲイン低下は−6dB(図13(1)のAで示したゲイン値)、K=0.5の場合のゲイン低下は−3.52dB(図13(2)のBで示したゲイン値)である。
【0098】
一般に、サーボ系に対して加えられる外乱成分に対しての抑圧度は、感度関数のゲインによって表されることが知られている。本実施例のトラッキングサーボについて、感度関数のゲイン特性を図14に示す。感度関数のゲインが小さいほど、抑圧効果が大きいことを意味する。
【0099】
可変ゲイン112をK=1とした繰り返し制御を適用した場合の感度関数のゲイン特性を図14(1)、及び可変ゲイン112をK=0.5とした繰り返し制御を適用した場合の感度関数のゲイン特性を図14(2)に示す。なお、図14(1)及び図14(2)における破線は、繰り返し制御を用いない場合の感度関数のゲイン特性を示している。
【0100】
図14において、Aで示した周波数は回転周波数であり、Dで示した周波数範囲は、デビエーションが存在する周波数範囲である。また、Eで示した周波数は、回転周波数の0.5の奇数倍の周波数の一例として3.5倍の周波数を示し、Fで示した周波数は回転周波数の整数倍の周波数の一例として10倍の周波数を示している。
【0101】
図14からわかるように、繰り返し制御を用いた場合の感度関数のゲインは、Fで示した周波数のように回転周波数の整数倍の周波数においてゲインが急峻に低下し、繰り返し制御を用いない場合と比較して感度関数のゲインが低下する。また、Kの値が大きくなるほど回転周波数の整数倍の周波数における感度関数のゲインは小さくなる。そのため回転同期成分に対する抑圧を考えた時、K=1において抑圧度は最大となり、良好に抑圧することができる。
【0102】
一方、Eで示した周波数のように回転周波数の整数倍でない、回転に同期しない周波数においては、繰り返し制御を用いない場合と比較して感度関数のゲインが増加する周波数範囲が存在する。即ち、回転周波数の整数倍以外の外乱成分がトラッキングサーボ系に入力された場合に繰り返し制御を用いると、かえってサーボの追従性能が劣化する場合がある。更に前記感度関数のゲイン増加は、Kの値を大きくしていくほど大きくなる。そのため回転非同期成分よる追従性能劣化を考えた時、K=1において最も追従性能が悪くなる。これは図13で示した繰り返し制御単体のゲイン線図において、Kを大きくするほど回転周波数の0.5の奇数倍の周波数におけるゲインが小さくなることに起因している。回転非同期の成分がサーボ系に入力される場合としては、例えば車載機器として光ディスク装置が用いられた場合の振動が挙げられる。
【0103】
そのため従来の繰り返し制御では、デビエーションに対する抑圧不足という課題と、回転非同期成分に対する追従性能劣化という課題のそれぞれについて、光ディスク装置としての性能に及ぼす影響度合いを鑑みて、Kを1より小さい値、例えばK=0.5として繰り返し制御を用いていた。
【0104】
しかしながら前述したように、光ディスク装置のサーボ性能として規格で想定されているよりも優れた追従性能が要求される場合を鑑みると、回転非同期成分に対する追従性能劣化はK=0.5の程度のままに保ちつつ、デビエーションに対する抑圧度を更に増加させたいという要求が存在した。
【0105】
そこで本実施例の構成による光ディスク装置の効果について、シミュレーション波形を用いて説明する。図15は定常的な回転非同期の振動が加わる光ディスク装置において、デビエーションの存在する光ディスクを用いた場合を想定したシミュレーション結果である。回転非同期の振動成分の周波数は回転周波数の3.5倍とし、図14においてEで示した周波数に相当する。また、デビエーション成分の周波数は回転周波数の10倍とし、図14においてFで示した周波数に相当する。
【0106】
図15(1)は本実施例の光ディスク装置を用いた場合のシミュレーション結果を示す。図15(a)はTE1信号、(b)は可変ゲイン112の値Kを示す。また、図(2)は可変ゲイン112をK=1の固定値で使用した場合のTE信号、(3)は可変ゲイン112をK=0.5の固定値で使用した場合のTE信号である。(2)、(3)については、従来技術による繰り返し制御であり、可変ゲイン112の値は固定であるため、可変ゲイン112の値を示す図は省略している。
【0107】
(1)から(3)に示したすべてのシミュレーションに関して記憶回路201への信号の記憶は時間軸上のt=0から開始されており、繰り返し制御の出力は1回転周期後のt=Trotのタイミングから開始されている。従って、t=0からt=Trotの期間のTE1信号波形は、繰り返し制御を用いない場合のTE1信号波形を示している。
【0108】
まず、デビエーション成分に着目する。t=0からt=Trotの期間のAで示した部分が、繰り返し制御を用いていない場合のデビエーション成分の波形である。これに対し、図15(1)、(2)では、デビエーション成分は良好に抑圧されていることがわかる。一方、K=0.5とした場合の(3)ではデビエーション成分に対して抑圧効果はあるものの、(1)、(2)と比較すると抑圧度は小さく、TE1信号に残存する振幅が大きいことがわかる。
【0109】
次に、回転非同期の振動成分に着目する。繰り返し制御を用いる(1)から(3)のすべての場合において、回転非同期の振動成分の振幅はt=Trot以降において増幅されている。中でもK=1とした場合の(2)の場合に、振幅は最も大きい。これに対して、(1)、(3)では(2)と比較すると小さな振幅にとどまっており、非回転同期成分による追従性能劣化が小さいことがわかる。
【0110】
このように、従来技術による繰り返し制御では、K=0.5とするとデビエーション成分の抑圧が不足し、K=1で用いると回転非同期成分による追従性能劣化が大きいという課題があった。
【0111】
図15(2)のように定常的な振動成分が残存する場合には、トラック中央に対してレーザ光が蛇行した状態のまま情報の記録もしくは再生を行っていることになり、光ディスク装置としての情報の記録性能、もしくは再生性能に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、定常的な振動成分はできるだけ小さく抑えることが望ましい。
【0112】
本実施例の構成の光ディスク装置は、デビエーション成分に対する抑圧度はK=1と同等の抑圧度を有し、また回転非同期成分による追従性能劣化はK=0.5の程度を維持することができる。
【0113】
以上の動作により、実施例1による光ディスク装置は、デビエーション成分に対する抑圧度を高めつつ、回転非同期の成分による追従性能劣化を抑制することができ、トラッキングサーボのトラック追従性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0114】
本発明における実施例2について、以下に説明する。
【0115】
本実施例の光ディスク装置を示すブロック図は、実施例1のブロック図である図1と共通である。
【0116】
実施例1では、DEVIDET情報が示す回転位相範囲において可変ゲイン112の値を変更する動作とした。しかし可変ゲイン112の値の変化量が大きい場合、値を変更するタイミングでサーボ追従性能が劣化する可能性がある。
【0117】
実施例1においては、可変ゲイン112の値が変化する際の変化量[dB]は、
【0118】
【数3】
である。例えば光ディスクに偏芯成分が存在した場合、偏芯成分に対する補償信号REPOUTは、可変ゲイン112の値によって振幅が2倍に変化する。
REPOUT信号の波形が急激に変化することはサーボ系にとって外乱となるため、可変ゲイン112の値を変更するタイミングでサーボ追従性能が一時的に劣化する可能性がある。
【0119】
本実施例では、以上の問題を鑑み、可変ゲイン112を変更する際のサーボ追従性能を向上させるための実施の形態である。
【0120】
本実施例における光ディスク装置は、実施例1と比べて、デビエーション検出回路113を構成するゲイン切り替え指示情報生成回路703の動作が異なる。
【0121】
本実施例におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703は、デビエーション検出回路702の出力するDEVIDET情報とROTPHASE情報を入力として、直前の1回転分のDEVIDET情報を記憶する。また、直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報に基づきGAINSEL情報を生成する。またゲイン切り替え指示情報生成回路703は、ROTPHASE情報から回転位相を取得し、所定の回転位相となったタイミングにおいてGAINSEL情報を出力する。
【0122】
次に、出力されるGAINSEL情報について説明する。直前の1回転において記憶されたDEVIDET情報が示す回転位相範囲においては可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0123】
加えて、前記DEVIDET情報が示す回転位相範囲の前後の、所定の回転位相期間は可変ゲインの値を0.7とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0124】
また、上記以外の回転位相においては、可変ゲインの値を0.5とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0125】
図16はゲイン切り替え指示情報生成回路703の各部の波形について、一例を示したものである。図16(a)はTE3信号、(b)はROTPHASE情報、(c)はGAINSEL情報が指示する可変ゲイン112の値Kを示している。
【0126】
図16においては、前記所定の回転位相期間は回転位相1とした場合を示している。時刻t41から時刻t42においてデビエーション検出回路702によってデビエーションが検出され、回転位相m5−1から回転位相n5+1を示すDEVIDET情報が出力される。ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、回転位相がm5−2になる時刻t43において可変ゲインの値を0.7とするよう指示するGAINSEL情報を出力し、続いて回転位相がm5−1になる時刻t44において可変ゲインの値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。その後、回転位相がn4+1になる時刻t45において可変ゲインの値を0.7に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力し、回転位相がn4+2になる時刻t46において可変ゲインの値を0.5に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0127】
以上の動作により、可変ゲイン112の値は段階的に、増加もしくは減少する。本実施例においては、可変ゲイン112の値が変化する際の変化量[dB]は
【0128】
【数4】
であり、実施例1の場合の6dBよりも小さい。そのため、ゲイン変化時のREPOUT信号波形の変化も小さく、可変ゲイン112の値が変化する際にサーボ系に加わる外乱を小さくすることができる。
【0129】
以上の動作により、実施例2による光ディスク装置は、デビエーションを検出した回転位相において可変ゲイン112値を変化させる際に段階的に変化させて、トラッキングサーボのトラック追従性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0130】
本発明における実施例3について、以下に説明する。
【0131】
本実施例の光ディスク装置を示すブロック図は、実施例1のブロック図である図1と共通である。
【0132】
実施例1におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703は、直前の1回転分のDEVIDET情報を記憶する構成とした。しかし光ディスク装置に一時的に衝撃が加わることによってTE1信号が変動した場合、実施例1の構成では衝撃によるTE1信号変動をデビエーションと誤検出して、可変ゲイン112の値を増加してしまう可能性がある。
【0133】
本実施例では、以上の問題を鑑み、光ディスクに衝撃が加わった場合にデビエーションを誤検出しないための実施の形態である。
【0134】
本実施例における光ディスク装置は、実施例1と比べて、デビエーション検出回路113を構成するゲイン切り替え指示情報生成回路703の動作が異なる。
【0135】
本実施例におけるゲイン切り替え指示情報生成回路703は、デビエーション検出回路702の出力するDEVIDET情報とROTPHASE情報を入力として、直前の2回転分のDEVIDET情報を記憶する。また、直前の2回転において記憶されたDEVIDET情報に基づきGAINSEL情報を生成する。またゲイン切り替え指示情報生成回路703は、ROTPHASE情報から回転位相を取得し、所定の回転位相となったタイミングにおいてGAINSEL情報を出力する。
【0136】
次に、出力されるGAINSEL情報について説明する。ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、2回転前の周回で記憶されたDEVIDET情報と、1回転前の周回で記憶されたDEVIDET情報とを元に、それぞれが示す回転位相範囲のうちで重複する回転位相範囲について、可変ゲイン112の値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0137】
また、上記以外の回転位相範囲においては、可変ゲインの値を0.5とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0138】
図17はゲイン切り替え指示情報生成回路703の各部の波形について、一例を示したものである。図17(a)はTE3信号、(b)はROTPHASE情報、(c)はGAINSEL情報が指示する可変ゲイン112の値Kを示している。
【0139】
図17においては、デビエーション成分の波形が周回ごとに変形していく場合の波形図を示している。まず、時刻t51から時刻t52においてデビエーション検出回路702によってデビエーションが検出され、回転位相m6−1から回転位相n6+1を示すDEVIDET情報が出力される。
【0140】
また、次の周回においては時刻t53から時刻t54においてデビエーションが検出される。この時、図17に示すように時刻t54時点での回転位相は直前の周回よりも1ずれてn6+1であった場合を用いて説明する。回転位相m6−1から回転位相n6+2の範囲を示すDEVIDET情報が出力される。
【0141】
ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、上記2回転分のDEVIDET情報を記憶し、回転位相範囲が重複する回転位相範囲を算出する。図17の場合には、該重複する回転位相範囲は回転位相m6−1から回転位相n6+1の範囲となる。
【0142】
従って、ゲイン切り替え指示情報生成回路703は、次に回転位相がm4−1になる時刻t55において可変ゲインの値を1とするよう指示するGAINSEL情報を出力する。その後、回転位相がn4+1になる時刻t56において可変ゲインの値を0.5に戻すよう指示するGAINSEL情報を出力する。
【0143】
光ディスク装置に衝撃が加えられた場合は、衝撃が加わった周回においてのみ、TE3信号が変動する。従って図17から明らかなように、衝撃が加わった場合であっても可変ゲイン112の値は増加されない。
【0144】
以上の動作により、実施例3による光ディスク装置は、衝撃が加わったことによるTE1信号の変動をデビエーションと誤検出してしまうことを回避し、トラッキングサーボのトラック追従性能を向上させることができる。
【0145】
以上の実施例におけるDEVIDET情報が示す範囲は、デビエーション検出開始位相値からデビエーション検出終了位相値までの期間に対して、前後に所定の回転位相を付加した回転位相の範囲とした。しかし所定の回転位相を付加せずに、DEVIDET情報が示す範囲は、デビエーション検出開始位相値からデビエーション検出終了位相値までとしてもよい。
【0146】
以上の実施例におけるデビエーション検出情報生成回路702は、タイマを有し、TE3信号が所定のタイムアウト時間Tout内に複数回Vthを超えた期間が存在する場合、前記複数の期間は一つのデビエーションであると判定する構成とした。このためToutが経過した後に単一のデビエーションが存在したと確定するため、デビエーション検出情報生成回路702は少なくとも1回転分のDEVIDET情報を記憶しておき、デビエーションを検出してから1回転後の周回において初めて可変ゲイン112の値を変更した。
【0147】
しかしデビエーション検出情報生成回路702はタイムアウトを持たない構成とし、TE3信号がVthを超えたことをもって即座にデビエーションを検出したと判定し、1回転を待たずに可変ゲイン112を変更する構成としてもよい。
【0148】
また以上の実施例におけるデビエーション検出情報生成回路702は、TE3信号の絶対値を監視し、TE3信号の絶対値が閾値Vthを超えたか否かに着目してデビエーションを検出する動作としたが、デビエーションの検出方法はこの手法に限定されるものではない。例えば、TE3信号の絶対値が所定の閾値Vth2を超えている時間Tth2を計測し、Tth2が所定の値を超えたか否かに着目してデビエーションを検出する動作としてもよい。
【0149】
以上の実施例におけるデビエーション検出回路113は、内部にバンドパスフィルタ701を有し、バンドパスフィルタ701により偏芯による回転周波数成分および高周波数のノイズ成分が減衰したTE3信号を生成し、デビエーションの検出を行った。しかし一般にTE2信号に含まれる偏芯成分の振幅は小さいので、バンドパスフィルタ701の代わりにローパスフィルタを用い、ノイズのみを減衰させる構成としてもよい。
【0150】
更には、遅延記憶回路111を構成するN個の記憶回路201に記憶された信号波形はTE2信号に対してローパスフィルタ110による帯域制限がかけられた直前1回転分の信号波形であることに着目すれば、以上の実施例におけるデビエーション検出回路113は、記憶回路201に保存された値を取り込み、この値を用いてデビエーションの検出を行う構成としてもよい。
【0151】
以上の実施例においては、定常状態の可変ゲイン112の値を0.5、デビエーションを検出した回転位相における可変ゲイン112の値を抑圧効果が最大となる1としたが、別の値を用いても構わない。例えば、デビエーションを検出した回転位相における可変ゲイン112の値を0.8としてもよい。
【0152】
また、以上の実施例におけるデビエーション検出回路113は、加算器106の出力信号であるTE2信号を用いてデビエーションを検出する構成としたが、サーボループ中の別の信号であっても構わない。デビエーションを検出するのに用いる信号は、加算器106よりも後段の信号であることが望ましい。これは図15で示したように、可変ゲイン112の値Kが1に近い繰り返し制御を適用した状態では、加算器の前段のTE1信号においてはデビエーションが抑圧されてしまうため、デビエーションの存在有無を検出する元信号としては適さないためである。ただし、デビエーションを検出した回転位相における可変ゲイン112の値Kとして1より小さい値を使用する場合には、TE1信号を用いた場合でもデビエーション検出は可能である。従ってデビエーション検出回路113は、TE2信号に対してトラッキング制御回路107によるゲインと位相の補償がなされた後の信号であるTRD信号を用いてデビエーションの検出を行う構成としてもよい。
【0153】
以上の実施例においては、可変ゲイン112は遅延記憶回路111の後段に接続された構成としたが、可変ゲイン112は繰り返し制御ループのどの位置に接続されていても構わない。例えば、遅延記憶回路111の後段ではなく、ローパスフィルタ110の直前に可変ゲイン112が挿入された構成であってもよい。
【0154】
また、以上の実施例における繰り返し制御は、トラッキングエラー信号に対して信号を取り込んで補償信号を加算する構成としたが、TRD信号に対して信号を取り込んで補償信号を加算する構成としても構わない。さらには、トラッキング制御手段の内部の信号を取り込んで補償信号を加算する構成としてもよい。
【0155】
以上の実施例における繰り返し制御は1回転をN分割して信号の値を記憶する構成としたが、本発明は1回転以上の信号を記憶する構成の繰り返し制御に対しても、同様に適用可能である。
【0156】
また、以上の実施例では、デビエーションの検出された回転位相において、繰り返し制御ループ上の可変ゲイン112の値を増加する構成としたが、本発明の趣旨は、デビエーションの検出された回転位相において、定常状態よりも回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する抑圧度が増加した繰り返し制御を用いることにあり、ゲインの変更以外の手法により抑圧度を増してもよい。
【0157】
また、特許文献4に開示されているように、本明細書に記載した実施例で説明した繰り返し制御とは異なる構成の繰り返し制御に関しても、デビエーションの検出された回転位相において、定常状態よりも回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する抑圧度が増加した繰り返し制御の特性を用いることにより、本発明が同様に適用可能であることは明らかである。
【0158】
また、本発明は光ディスク装置のフォーカス制御に関しても、同様に適用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の実施例1を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の遅延記憶回路を示す構成図である。
【図3】本発明の実施例1の遅延回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施例1の遅延記憶回路を説明する波形図である。
【図5】本発明の実施例1のトラッキングサーボの開ループ伝達関数のボード線図である。
【図6】本発明の実施例1のローパスフィルタのボード線図である。
【図7】本発明の実施例1のデビエーション検出回路を示す構成図である。
【図8】本発明の実施例1のバンドパスフィルタのボード線図である。
【図9】本発明の実施例1のバンドパスフィルタを説明する波形図である。
【図10】本発明の実施例1のデビエーション検出情報生成回路の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施例1のデビエーション検出情報生成回路を説明する波形図である。
【図12】本発明の実施例1のゲイン切り替え指示情報生成回路を説明する波形図である。
【図13】本発明の実施例1の繰り返し制御単体のボード線図である。
【図14】本発明の実施例1のトラッキングサーボの感度関数のゲイン特性である。
【図15】本発明の実施例1を説明する波形図である。
【図16】本発明の実施例2のゲイン切り替え指示情報生成回路を説明する波形図である。
【図17】本発明の実施例3のゲイン切り替え指示情報生成回路を説明する波形図である。
【図18】サーボエラー信号中のデビエーション成分を説明する波形図である。
【符号の説明】
【0160】
101…光ディスク、102…対物レンズ、103…光ピックアップ、104…スピンドルモータ、105…トラッキングエラー信号生成回路、106…加算器、107…トラッキング制御回路、108…ドライバ回路、109…回転位相検出回路、110…ローパスフィルタ、111…遅延記憶回路、112…可変ゲイン、113…デビエーション検出回路、201…記憶回路、202…第一のセレクタ、203…遅延回路、204…第二のセレクタ、701…バンドパスフィルタ、702…デビエーション検出情報生成回路、703…ゲイン切り替え指示情報生成回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出手段と、
前記光検出手段の出力信号からサーボエラー信号を生成するサーボエラー信号生成手段と、
該サーボエラー信号に基づきサーボアクチュエータを駆動する駆動信号を生成してフィードバック制御を行うフィードバック制御手段と、
前記光ディスクを回転させるディスク回転手段と、
前記ディスク回転手段の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対して抑圧効果を持つ繰り返し制御手段と、
前記繰り返し制御手段の出力信号をサーボループ中の第一の所定信号に加算する加算手段と、
サーボループ中の第二の所定信号を用いてサーボ乱れを検出し、サーボ乱れが検出された前記回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶するサーボ乱れ検出手段とを備え、
回転位相が前記サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する前記繰り返し制御手段の抑圧度が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記所定の回転位相範囲の先頭もしくは終端において前記繰り返し制御系の抑圧度を変更する際、前記繰り返し制御手段の抑圧度を時間の経過とともに複数の抑圧度へと順次変更することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出手段と、
前記光検出手段の出力信号からサーボエラー信号を生成するサーボエラー信号生成手段と、
該サーボエラー信号に基づきサーボアクチュエータを駆動する駆動信号を生成してフィードバック制御を行うフィードバック制御手段と、
前記光ディスクを回転させるディスク回転手段と、
前記ディスク回転手段の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
前記光ディスク装置のサーボ系に入力される周期的な外乱を補償するための補償信号を、サーボループ中の第一の所定信号に加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号から前記補償信号を生成する補償信号生成手段と、
サーボループ中の第二の所定信号を用いてサーボ乱れを検出し、サーボ乱れが検出された前記回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶するサーボ乱れ検出手段とを備え、
前記補償信号生成手段は、
前記光ディスクの少なくとも1回転分にわたって、入力された信号を記憶するとともに、所定の時間の後に記憶した信号波形を出力する記憶手段と、
入力される信号に対して振幅の増幅・減衰を行う補償信号ゲインとを含む構成であり、
回転位相が前記サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、前記補償信号ゲインの値が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出手段と、
前記光検出手段の出力信号からサーボエラー信号を生成するサーボエラー信号生成手段と、
該サーボエラー信号に基づきサーボアクチュエータを駆動する駆動信号を生成してフィードバック制御を行うフィードバック制御手段と、
前記光ディスクを回転させるディスク回転手段と、
前記ディスク回転手段の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
前記光ディスク装置のサーボ系に入力される周期的な外乱を補償するための補償信号を、サーボループ中の第一の所定信号に加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号から前記補償信号を生成する補償信号生成手段と、
後述する記憶手段に記憶される値を用いてサーボ乱れを検出し、サーボ乱れが検出された前記回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶するサーボ乱れ検出手段とを備え、
前記補償信号生成手段は、
前記光ディスクの少なくとも1回転分にわたって、入力された信号を記憶するとともに、所定の時間の後に記憶した信号波形を出力する記憶手段と、
入力された信号に対して振幅の増幅・減衰を行う補償信号ゲインとを含む構成であり、
回転位相が前記サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、前記補償信号ゲインの値が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記補償信号生成手段は、ローパスフィルタを含み、
前記記憶手段は該ローパスフィルタの出力信号を記憶する構成であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記所定の回転位相範囲の先頭もしくは終端において前記補償信号ゲインの値を変更する際、前記補償信号ゲインの値を時間の経過とともに複数の値へと順次変更することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、前記第二の所定信号に対してローパスフィルタにより帯域制限をかけた信号の絶対値が、所定の値以上となることをもってサーボ乱れを検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、前記第二の所定信号に対してバンドパスフィルタにより帯域制限をかけた信号の絶対値が、所定の値以上となることをもってサーボ乱れを検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
請求項1または請求項3乃至請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、所定の期間のうちに複数のサーボ乱れが検出された場合は単一のサーボ乱れとして検出して、少なくとも1回転分のサーボ乱れ検出位相範囲を記憶し、
1回転前のサーボ乱れ検出位相範囲に基づき、該サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、前記補償信号ゲインの値が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
請求項1または請求項3乃至請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、サーボ乱れが少なくとも連続する2回転にわたって共通の前記回転位相の範囲にて検出されたことをもって、該共通の回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記第二の所定信号は、サーボループにおいて前記加算手段の後段の信号であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記第二の所定信号は、前記加算手段の出力信号であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項1】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出手段と、
前記光検出手段の出力信号からサーボエラー信号を生成するサーボエラー信号生成手段と、
該サーボエラー信号に基づきサーボアクチュエータを駆動する駆動信号を生成してフィードバック制御を行うフィードバック制御手段と、
前記光ディスクを回転させるディスク回転手段と、
前記ディスク回転手段の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対して抑圧効果を持つ繰り返し制御手段と、
前記繰り返し制御手段の出力信号をサーボループ中の第一の所定信号に加算する加算手段と、
サーボループ中の第二の所定信号を用いてサーボ乱れを検出し、サーボ乱れが検出された前記回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶するサーボ乱れ検出手段とを備え、
回転位相が前記サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、回転周波数の整数倍の周波数の外乱に対する前記繰り返し制御手段の抑圧度が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記所定の回転位相範囲の先頭もしくは終端において前記繰り返し制御系の抑圧度を変更する際、前記繰り返し制御手段の抑圧度を時間の経過とともに複数の抑圧度へと順次変更することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出手段と、
前記光検出手段の出力信号からサーボエラー信号を生成するサーボエラー信号生成手段と、
該サーボエラー信号に基づきサーボアクチュエータを駆動する駆動信号を生成してフィードバック制御を行うフィードバック制御手段と、
前記光ディスクを回転させるディスク回転手段と、
前記ディスク回転手段の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
前記光ディスク装置のサーボ系に入力される周期的な外乱を補償するための補償信号を、サーボループ中の第一の所定信号に加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号から前記補償信号を生成する補償信号生成手段と、
サーボループ中の第二の所定信号を用いてサーボ乱れを検出し、サーボ乱れが検出された前記回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶するサーボ乱れ検出手段とを備え、
前記補償信号生成手段は、
前記光ディスクの少なくとも1回転分にわたって、入力された信号を記憶するとともに、所定の時間の後に記憶した信号波形を出力する記憶手段と、
入力される信号に対して振幅の増幅・減衰を行う補償信号ゲインとを含む構成であり、
回転位相が前記サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、前記補償信号ゲインの値が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出手段と、
前記光検出手段の出力信号からサーボエラー信号を生成するサーボエラー信号生成手段と、
該サーボエラー信号に基づきサーボアクチュエータを駆動する駆動信号を生成してフィードバック制御を行うフィードバック制御手段と、
前記光ディスクを回転させるディスク回転手段と、
前記ディスク回転手段の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
前記光ディスク装置のサーボ系に入力される周期的な外乱を補償するための補償信号を、サーボループ中の第一の所定信号に加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号から前記補償信号を生成する補償信号生成手段と、
後述する記憶手段に記憶される値を用いてサーボ乱れを検出し、サーボ乱れが検出された前記回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶するサーボ乱れ検出手段とを備え、
前記補償信号生成手段は、
前記光ディスクの少なくとも1回転分にわたって、入力された信号を記憶するとともに、所定の時間の後に記憶した信号波形を出力する記憶手段と、
入力された信号に対して振幅の増幅・減衰を行う補償信号ゲインとを含む構成であり、
回転位相が前記サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、前記補償信号ゲインの値が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記補償信号生成手段は、ローパスフィルタを含み、
前記記憶手段は該ローパスフィルタの出力信号を記憶する構成であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記所定の回転位相範囲の先頭もしくは終端において前記補償信号ゲインの値を変更する際、前記補償信号ゲインの値を時間の経過とともに複数の値へと順次変更することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、前記第二の所定信号に対してローパスフィルタにより帯域制限をかけた信号の絶対値が、所定の値以上となることをもってサーボ乱れを検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、前記第二の所定信号に対してバンドパスフィルタにより帯域制限をかけた信号の絶対値が、所定の値以上となることをもってサーボ乱れを検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
請求項1または請求項3乃至請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、所定の期間のうちに複数のサーボ乱れが検出された場合は単一のサーボ乱れとして検出して、少なくとも1回転分のサーボ乱れ検出位相範囲を記憶し、
1回転前のサーボ乱れ検出位相範囲に基づき、該サーボ乱れ検出位相範囲を含む所定の回転位相範囲内となる期間において、前記補償信号ゲインの値が増加することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
請求項1または請求項3乃至請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記サーボ乱れ検出手段は、サーボ乱れが少なくとも連続する2回転にわたって共通の前記回転位相の範囲にて検出されたことをもって、該共通の回転位相の範囲をサーボ乱れ検出位相範囲として記憶することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記第二の所定信号は、サーボループにおいて前記加算手段の後段の信号であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
請求項1または請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記第二の所定信号は、前記加算手段の出力信号であることを特徴とする光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−160848(P2010−160848A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2122(P2009−2122)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
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