説明

光ディスク装置

【課題】レーザダイオードの経時劣化に応じて、レーザダイオードの負荷を上げる以外の手法でも、安定的に動作できるようにする光ディスク装置を提供することである。
【解決手段】光ディスクdの再生を行うレーザダイオード22を有する光ピックアップ11を備えたBD再生装置(光ディスク装置)10において、レーザダイオード22の劣化に応じて増加する駆動電流値が所定の閾値を超えた場合、サーボエラー又はディスク判別ミスに対するリトライ回数の上限を上げる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザダイオードのレーザで記録媒体の再生及び/又は記録を行う光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置の光ピックアップにはレーザダイオードが使用されている。このレーザダイオードには寿命があり、使用時間及び使用出力に応じて性能が劣化する。そして、性能劣化が一定以上になると、例えば、ディスクの種類の判別を誤ったり、光ディスクの再生中にサーボエラーを生じたりするなどの不具合が起こる可能性が高くなる。
【0003】
こうした光ディスク装置のレーザダイオードの特性を考慮して、従来から様々な提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、光ヘッドにより記録媒体上にデータを記録する際の光ビームのパワー値を任意の値に設定する記録パワー値制御手段と、記録媒体上に記録したデータが正確に記録されたかをチェックする記録品質チェック手段と、記録品質チェック手段によって記録品質が異常と判断された場合に、記録パワー値制御手段によって記録パワー値を増加させて記録動作の再試行(ライトリトライ)を行うか、あるいは交替処理を行うかを判断する再試行判断手段と、記録動作時に使用する記録パワーの初期値を選択する記録パワー初期値選択手段とを備え、記録動作の再試行動作を行うことによって、記録媒体における最適な記録パワー値を検索しながら記録動作を行う光ディスク装置の構成が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、レーザ光を照射するレーザダイオードの電流経路に設けられ、所定時におけるレーザダイオードの駆動電流を検出する抵抗器と、抵抗器により検出されたレーザダイオードの駆動電流値を記憶するフラッシュROMと、フラッシュROMに記憶された所定時の駆動電流値と現在の駆動電流値とを比較する比較器とを備え、現在の駆動電流値が所定時の駆動電流値より所定量大きいときにレーザダイオードが劣化していると判断して、レーザダイオードのレーザ劣化判定をパワーメータや電流計等の外部機器を利用せずに装置内部で行う光記録再生装置の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−154330号公報
【特許文献2】特開平11−161995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザダイオードが経時劣化することを前提としたときの光ディスク装置の課題の1つとして、レーザダイオードがある程度経時劣化しても安定的に再生・録画動作できるようにすることが挙げられる。この課題について、特許文献1の手法では、記録パワー値を増加させるには限度があり、特許文献2にはレーザダイオードの劣化を補う技術については開示されていない。
【0008】
本発明は、レーザダイオードの経時劣化に応じて、レーザダイオードの負荷を上げる以外の手法でも、安定的に動作できるようにする光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、光ディスクの再生及び/又は記録を行うレーザダイオードを有する光ピックアップを備えた光ディスク装置において、前記レーザダイオードの劣化に応じて増加するパラメータが所定の閾値を超えた場合、前記レーザダイオードの劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限を上げることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、レーザダイオードの劣化に応じてリトライ回数の上限が上がり、エラーが抑制される。
【0011】
上記の光ディスク装置において、前記レーザダイオードの駆動電流値を測定して前記パラメータとすることが望ましい。前記駆動電流値は、例えば、所定時間毎に測定して記録すればよい。
【0012】
この構成によれば、レーザダイオードの駆動電流値というレーザダイオードの劣化に関わる値を用いることで、レーザダイオードの経時劣化を正確に知ることができる。
【0013】
また上記の光ディスク装置において、前記光ピックアップの温度を測定して前記パラメータとすることが望ましい。前記温度は、例えば、所定時間毎に測定して記録すればよい。
【0014】
この構成によれば、光ピックアップの温度というレーザダイオードの劣化に関わる値を用いることで、レーザダイオードの劣化を知ることができる。
【0015】
また上記の光ディスク装置において、前記レーザダイオードの累積使用時間を測定して前記パラメータとすることが望ましい。
【0016】
この構成によれば、レーザダイオードの累積使用時間というレーザダイオードの劣化に関わる値を用いることで、レーザダイオードの経時劣化を知ることができる。
【0017】
また上記の光ディスク装置において、前記閾値が複数設定され、各閾値を超える度に、前記レーザダイオードの劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限を上げるようにしてもよい。
【0018】
この構成によれば、レーザダイオードの劣化具合に応じて細かくリトライ回数を制御することができる。
【0019】
また、前記レーザダイオードの劣化によって生じるエラーは、具体的には、サーボエラー又はディスク判別ミスとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、レーザダイオードの劣化に応じてエラーに対するリトライ回数の上限を上げることにより、初期値のリトライ回数ではサーボエラーなどが解消しない場合に対処できる。その結果、再生性能が向上し、安定的に動作する光ディスク装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のBD再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のBD再生装置における再生時の動作の一部を示すフローチャートである。
【図3】本発明のBD再生装置におけるIopに対するリトライ回数の上限Nを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、光ディスク装置の一例としてBD(Blu-ray Disc)再生装置を用いて説明する。図1は、BD再生装置10の構成を示すブロック図である。BD再生装置10は、光ピックアップ11と、RFアンプ12と、モータ14と、サーボ回路14と、信号処理回路15と、トラックバッファ16と、システムデコーダ17と、システムマイコン(制御部)18と、表示部19と、フラッシュROM20とを備えている。
【0023】
光ピックアップ11は、所定波長のレーザ光をディスクdの記録面に向けて照射し、その反射光を受けて電気信号(反射光検出信号)に変換する。また光ピックアップ11は、この反射光検出信号をRFアンプ12に供給する。なお、光ピックアップ11は、ディスクdから対象のデータを適宜読み出すことができるように、所定のガイド軸等により、ディスクdの径方向に移動自在に支持されている。
【0024】
また光ピックアップ11には、温度計21が備えられている。温度計21は光ピックアップ11内の温度、特にディスクdの再生を行うレーザダイオード周辺の温度を測定することが望ましく、サーミスタなどを用いることができる。
【0025】
ここで、光ピックアップ11に搭載されている再生用のレーザダイオード22は、同一の駆動電流が流された場合であっても、温度変化や経時劣化に応じて出力するレーザ強度が変化する。そこで、光ピックアップ11では、例えば、レーザダイオード22の出力するレーザ強度を検出し、レーザ強度を再生処理可能な値にするよう駆動電流を調整するようになっている。調整した後の駆動電流値(Iop)は、フラッシュROM20などに記録する。
【0026】
RFアンプ12は、光ピックアップ11より供給された反射光検出信号からRF信号、トラッキング信号、及びフォーカス信号等を生成する。更に、RF信号をデータスライスした二値化信号を生成する。RFアンプ12は、生成したトラッキング信号等をサーボ回路14に供給し、また、生成した二値化信号を再生信号として信号処理回路15に供給する。
【0027】
モータ13は、ディスクdを搭載する所定のターンテーブルを回転させるためのスピンドルモータ等からなる。モータ13は、サーボ回路14により制御され、ディスクdを例えば線速度が一定となるように回転駆動させる。
【0028】
サーボ回路14は、モータ13を駆動制御し、所定の回転速度で回転駆動させる。また、サーボ回路14は、RFアンプ12から供給されるトラッキング信号等によりスレッドモータ(不図示)を駆動制御し、光ピックアップ11をディスクdの径方向に適宜移動させる。
【0029】
信号処理回路15は、RFアンプ12から供給される再生信号を復調し、そして、誤り訂正等を行う。信号処理回路15は、この復調等により得られた復調データをトラックバッファ16に順次供給する。
【0030】
トラックバッファ16は、所定容量のRAM等からなり、信号処理回路15から供給された復調データを順次記憶する。なお、トラックバッファ16に記憶された復調データは、システムデコーダ17へ逐次供給される。
【0031】
システムデコーダ17は、トラックバッファ16から供給される復調データをデコードし、映像データ及び音声データ等を生成する。システムデコーダ17は、生成した映像データ及び音声データ等を所定のAVアンプ等に供給する。
【0032】
システムマイコン18は、例えば、ROM、RAM、及びCPUを備えた1チップマイコン等からなり、BD再生装置10全体を制御する。例えば、システムマイコン18は、読み出し対象となる対象データのアドレスを設定し、サーボ回路14等を制御して、設定したアドレスの対象データをサーチする。そして、サーチした対象データをディスクdから読み出し、信号制御回路15を制御して、読み出した対象データ(再生信号)の復調及び誤り訂正等を行い、復調データをトラックバッファ16に格納する。システムマイコン18は、これらアドレス設定、サーチ、読み出し、復調・誤り訂正、データ格納等からなる一連の動作をトラックバッファ16の空き容量等に応じて繰り返し行う。
【0033】
またこれらの動作と並行して、システムマイコン18は、システムデコーダ17を制御してトラックバッファ16に格納されている復調データをデコードし、映像データ及び音声データ等を順次再生する。
【0034】
表示部19は、LCD(Liquid Crystal Display)パネル等からなり、BD再生装置10の動作状況等を表示する。
【0035】
次に、BD再生装置10の動作について説明する。図2はBD再生装置10における再生時の動作の一部を示すフローチャートである。
【0036】
ディスクdの再生が指示されると、システムマイコン18の制御により、ステップS10において、ディスクdの回転駆動が開始される。それとともに、ステップS11へ進んで、システムマイコン18はフラッシュROM20に記録されているレーザダイオード22の最新のIopを読み出す。なお、IopのフラッシュROM20への記録は、所定時間毎(例えば1時間毎)、再生開始毎など、適時更新することで最新の情報に保つことができる。
【0037】
次にステップS12へ進んで、読み出したIopが第1閾値T1を超えているか否かを判別する。第1閾値T1は、レーザダイオード22の劣化がある程度進み、サーボエラー(フォーカスエラー、トラッキングエラー)やディスク判別ミスなどレーザダイオード22の劣化によって生じる不具合が起こりやすくなっているかどうかを判断するための閾値であり、例えば40mAとすることができる。
【0038】
ステップS12においてIop≦T1である場合は、不具合が生じる程レーザダイオード22は劣化していないと判断し、ステップS13へ進んでレーザダイオード22の劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限Nを初期値であるN1(例えば10回)とする。
【0039】
一方、ステップS12においてIop>T1である場合は、少なくともレーザダイオード22の劣化がある程度進み、レーザダイオード22の劣化によって生じる不具合が起こりやすくなっている(第1段階)と判断し、ステップS14へ進む。
【0040】
ステップS14では、読み出したIopが第2閾値T2を超えているか否かを判別する。第2閾値T2は、レーザダイオード22の劣化が第1段階よりもさらに進み、サーボエラー(フォーカスエラー、トラッキングエラー)やディスク判別ミスなどレーザダイオード22の劣化によって生じる不具合がさらに起こりやすくなっているかどうかを判断するための閾値であり、例えば60mAとすることができる。
【0041】
ステップS14においてIop≦T2である場合は、第1段階であると判断し、ステップS15へ進んでレーザダイオード22の劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限Nを初期値N1よりも大きいN2(例えば15回)とする。
【0042】
一方、ステップS14においてIop>T2である場合は、レーザダイオード22の劣化が第1段階よりもさらに進み、レーザダイオード22の劣化によって生じる不具合がさらに起こりやすくなっている(第2段階)と判断し、ステップS16へ進む。
【0043】
ステップS16では、レーザダイオード22の劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限NをN2よりも大きいN3(例えば20回)とする。
【0044】
図3は、Iopに対するリトライ回数の上限Nを、上記の例示した値に基づいてグラフ化したものである。これによると、レーザダイオード22の劣化が進むにつれてリトライ回数Nの上限を上げているのが一目でわかる。
【0045】
このように、レーザダイオード22の劣化に応じて増加するIopが所定の閾値を超えた場合、レーザダイオード22の劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数Nの上限をN2、N3と上げることにより、初期値N1のリトライ回数ではサーボエラーなどが解消しない場合に対処できる。その結果、再生性能が向上し、安定的に動作するBD再生装置10が得られる。
【0046】
なお、上記の実施形態では2つの閾値T1、T2を採用したが、閾値の数には特に限定はなく、1つでも3つ以上でも構わない。好ましくは、閾値が複数設定され、各閾値を超える度に、レーザダイオード22の劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限Nを上げることである。
【0047】
また、上記の実施形態ではIopを用いてリトライ回数の上限Nを決定したが、レーザダイオード22の劣化に応じて変化するパラメータであれば、Iopの代わりに用いることができる。
【0048】
例えば、上記のパラメータとして温度計21で測定された温度を用いることができる。温度が高いということはレーザダイオード22が劣化しているということに繋がるからである。この場合、温度を所定時間毎に測定してフラッシュROM20に記録し、そこから読み出した温度を、例えば第1閾値や第2閾値となる予め設定された温度と比較することにより、図2と同様の処理でリトライ回数の上限Nを決定することができる。
【0049】
また例えば、上記のパラメータとしてレーザダイオード22の累積使用時間を用いることもできる。累積使用時間が長いということはレーザダイオード22が経時劣化しているということに繋がるからである。累積使用時間は例えばシステムマイコン18で管理することができる。この場合、例えば第1閾値や第2閾値となる予め設定された累積使用時間と比較することにより、図2と同様の処理でリトライ回数の上限Nを決定することができる。
【0050】
なお、レーザダイオード22の劣化に応じて減少するパラメータを採用した場合は、所定の閾値を下まわった場合、サーボエラーに対するリトライ回数の上限を上げるようにすればよい。また、上記の各種パラメータを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記の実施形態では再生装置を例に説明したが、録画や録音機能を有する装置においては、録画時や録音時の動作に対する不具合を抑制するために本発明を上記の実施形態と同様に適用できる。その際、レーザダイオードは、再生及び記録を行うもの、再生のみを行うもの、記録のみを行うものを適宜組み合わせて使用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、レーザダイオードのレーザで記録媒体の再生及び/又は記録を行う装置、つまり、BD、DVD、CDなどの光ディスクの再生又は/及び記録を行う光ディスク装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 BD再生装置(光ディスク装置)
11 光ピックアップ
22 レーザダイオード
d 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの再生及び/又は記録を行うレーザダイオードを有する光ピックアップを備えた光ディスク装置において、
前記レーザダイオードの劣化に応じて増加するパラメータが所定の閾値を超えた場合、前記レーザダイオードの劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限を上げることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記レーザダイオードの駆動電流値を測定して前記パラメータとすることを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記駆動電流値を所定時間毎に測定して記録することを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記光ピックアップの温度を測定して前記パラメータとすることを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記温度を所定時間毎に測定して記録することを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記レーザダイオードの累積使用時間を測定して前記パラメータとすることを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記閾値が複数設定され、各閾値を超える度に、前記レーザダイオードの劣化によって生じるエラーに対するリトライ回数の上限を上げることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記レーザダイオードの劣化によって生じるエラーが、サーボエラー又はディスク判別ミスであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108329(P2011−108329A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263160(P2009−263160)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】