説明

光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法

【課題】DVDやCDドライブの光ピックアップの対物レンズ116はプラスチックを材料とするものが多い。しかしBDドライブでは温度による特性変化に対する仕様が厳しいため、ガラスレンズを使っており原価低減を妨げている。プラスチックレンズの温度特性を正しく補正するには、レンズそのものの温度を正確に計測する必要があるが、そのために温度センサ117をレンズに接近して設けたのでは、価格や重量の問題がある。
【解決手段】フォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号の変動量をもとに対物レンズ116の動作中の温度を知るようにする。これをもとに、たとえば球面収差、レーザパワー、フォーカスオフセット、チルトなどの補正を行うことで、レンズ近くに温度センサを新たに設けなくとも温度特性の補正をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法に係わり、特に光ピックアップの球面収差をはじめとする事項の、温度特性補正を改良することができる光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置の分野においては、DVD(Digital Versatile Disc)に続いて、BD(Blu−ray Disc)を記録媒体に用いる製品が普及してきている。BDではいっそう記録の高密度化が進み、たとえば動画記録時の記録可能時間が長時間化しているが、光ピックアップをはじめとする構成要素の仕様も厳しくなっており、たとえば温度変化に対する特性の変化も厳しく規定されている。
【0003】
このためBD用の光ピックアップの対物レンズには、球面収差をはじめとする特性変化の大きいプラスチックレンズは殆ど使用されておらず、ガラスレンズが使用されている。この点がDVDやCDと異なり、原価低減を進めるうえで一つの問題となっていた。温度特性を補正するには、対物レンズの温度を正確に知ることが第一に必要であるが、従来の光ピックアップは温度センサを有していても、必ずしも対物レンズの温度を正確に測定できる位置には設けられていなかった。
【0004】
これに対して特許文献1においては、対物レンズを伝熱性の高い固定部材を介してレンズホルダに取付け、その固定部材に温度センサを設けて対物レンズの温度を正確に知る方法を開示している。
【0005】
【特許文献1】特開2008−97775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献での開示は前記した問題に一つの解決策を与えるが、新たに温度センサが必要となって価格の上昇の懸念があり、また対物レンズを搭載するアクチュエータの負荷が重くなって、フォーカスやトラッキングの良好な制御をするうえで望ましくない。
【0007】
本発明の目的はこの課題を解決した光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法を提供することにあり、特に光ピックアップの球面収差をはじめとする事項の、温度特性を改良することができる光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明による光ディスク装置は、レーザ光を発生するレーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を光ディスクに集光する対物レンズと、前記対物レンズを駆動するアクチュエータと、球面収差を補正する球面収差補正素子と、前記アクチュエータと前記球面収差補正素子に駆動電力を送るドライバと、前記ドライバを制御する制御回路とを有し、前記制御回路は、前記制御回路から前記ドライバへの信号変動量が所定値以上のときに前記球面収差補正素子を動かすよう制御することを特徴としている。
【0009】
また本発明は光ディスクを記録媒体とし、前記記録媒体に信号を記録再生する光ピックアップを有する光ディスク記録再生装置であって、前記光ピックアップは、前記記録再生を行うためのレーザ光を発生するレーザ光源と、該レーザ光源からのレーザ光を前記記録媒体に照射し前記記録媒体からの反射光を集光するための対物レンズと、該対物レンズを搭載し少なくも前記対物レンズのフォーカス調整と、前記記録媒体の記録トラックに対するトラッキング調整と、前記記録媒体に対向する際の傾きを調整するためのチルト調整とを行うアクチュエータと、前記対物レンズの球面収差を補正するための球面収差補正素子と、前記対物レンズの集光したレーザ光を検出して電気信号に変換する光検出器と、前記光ピックアップの内部温度を検出する温度センサとを有し、前記光検出器から出力された電気信号を演算して少なくもフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号を生成する信号生成回路と、該信号生成回路で生成されたフォーカス誤差信号をもとに前記アクチュエータのフォーカス調整のためのフォーカス駆動信号を生成するフォーカス駆動信号生成回路と、前記信号生成回路で生成されたトラッキング誤差信号をもとに前記アクチュエータのトラッキング調整のためのトラッキング駆動信号を生成するトラッキング駆動信号生成回路と、前記フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、フォーカス駆動信号、トラッキング駆動信号のうちの少なくも一つの信号変動量を計測する信号変動量計測回路と、該信号変動量計測回路で計測された信号変動量から判断してこれが所定値よりも大きい場合に球面収差補正駆動信号を生成する球面収差補正駆動信号生成回路と、該球面収差補正駆動信号生成回路からの球面収差補正駆動信号が入力され前記球面収差補正素子を駆動する球面収差補正素子駆動回路とを有したことを特徴としている。
【0010】
さらに本発明は光ディスクを記録媒体とし、前記記録媒体に信号を記録再生する光ピックアップを有する光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法であって、前記光ピックアップの内部温度に基づき前記光ピックアップの温度特性を補正する初期補正ステップと、前記光ピックアップの出力から少なくもフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号を生成し、該フォーカス誤差信号もしくは該トラッキング誤差信号をもとにシステム制御回路内で生成した信号の変動量に基づき計測した前記光ピックアップに搭載されている対物レンズの温度上昇量と前記光ピックアップの内部温度との和の温度を求める第1の温度測定ステップと、前記光ピックアップを用いて記録再生動作を行う記録再生ステップと、該記録再生ステップが記録再生動作を開始した後に、前記光ピックアップの出力から少なくもフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号を生成し、該フォーカス誤差信号もしくは該トラッキング誤差信号をもとにシステム制御回路内で生成した信号の変動量に基づき計測した前記光ピックアップに搭載されている対物レンズの温度上昇量と前記光ピックアップの内部温度との和の温度を求める第2の温度測定ステップと、前記第1の温度測定ステップで求めた温度と、前記第2の温度測定ステップ温度計測ステップで求めた温度との差の絶対値が所定値よりも大きい場合には、前記第2の温度計測ステップで求めた温度に基づき前記光ピックアップの温度変化によって生じる収差を再補正する再補正ステップとを有し、電気信号の変動量をもとに温度特性を補正することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光ピックアップの球面収差をはじめとする事項の、温度特性を改良することができる光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いながら説明する。
まず図1に基づき光ディスク記録再生装置の動作を説明する。図1は本発明の一実施例を示すシステムブロック図である。
【0013】
最初に情報信号の記録再生動作について説明する。システム制御回路130の一部であるスピンドルモータ駆動信号生成回路136では、記録再生する位置に応じた速度で光ディスク100を回転させるためのスピンドルモータ駆動信号が生成される。この駆動信号はスピンドルモータ駆動回路124を介して光ディスク100を回転させるスピンドルモータ101に与えられる。このため光ディスク100は所定の速度で回転駆動される。
【0014】
情報信号を記録する際には、システム制御回路130の一部であるレーザ光源駆動信号生成回路137では、記録する情報信号に基づくレーザ光源駆動信号が生成され、レーザ光源駆動回路125を介して光ピックアップ110のレーザ光源111を駆動する。レーザ光源111では情報記録のためのレーザ光が発生される。このレーザ光はビームスプリッタ112、球面収差補正素子113、立上げミラー114を介してアクチュエータ115に搭載された対物レンズ116に与えられ、光ディスク100の記録面に焦点を結んで情報を記録する。
【0015】
光ディスク100に記録された情報信号を再生する場合には、さきのレーザ光源111からレーザ光が光ディスク100に照射され、その反射光が対物レンズ116、立上げミラー114、球面収差補正素子113を介し、さらにビームスプリッタ112の反射面で反射されて光検出器118に焦点を結んで電気信号に変換され、信号生成回路121に与えられる。さきの光検出器118の出力である電気信号は、さらに図示しない再生信号処理回路にも与えられて、記録再生過程における符号の誤りを訂正されたうえで、元のデータ、映像信号、音声信号などに戻される。
【0016】
次にシステム制御回路130における装置の制御方法について述べる。ここでは特に、アクチュエータ115、球面収差補正素子113の制御方法を扱う。
さきの光検出器118で電気信号に変換された光ピックアップ110からの信号は、信号生成回路121に与えられる。この光ピックアップ110からの信号は記録動作と再生動作のいずれにおいても、光ディスク100からの反射光に応じて得ることができる。信号生成回路121にはフォーカス誤差信号生成回路121aとトラッキング誤差信号生成回路121bを含んでいる。これらは光検出器118から与えられた信号を演算し、フォーカス誤差信号FESとトラッキング誤差信号TESを得るためのものであり、誤差信号に基づいて光ディスク100に対する対物レンズ116の位置や向きを調整するアクチュエータ115を駆動する。アクチュエータ115により微動された対物レンズ116からの反射光の変化を検出することで、対物レンズ116が光ディスク100の記録面にフォーカスを結び、また記録トラックの中心をトラックトレースするように制御できる。
【0017】
フォーカス誤差信号FESは、図示しないフィルタ回路で高周波成分を取除き、制御周波数帯域の成分を取出すなどして、フォーカス駆動信号生成回路134に与えられる。これはフォーカス駆動信号生成回路134で電力増幅されてフォーカス駆動信号FODが生成される。さらにFODがアクチュエータ駆動回路123を介してアクチュエータ115を駆動することで、対物レンズ116が光ディスク100の記録面にフォーカスを結ぶようにできる。
【0018】
一方、トラッキング誤差信号TESは、同様に図示しないフィルタ回路で高周波成分を取除き、制御周波数帯域の成分を取出すなどして、トラッキング駆動信号生成回路133に与えられる。これはトラッキング駆動信号生成回路133で電力増幅されてトラッキング駆動信号TRDが生成される。さらにTRDがアクチュエータ駆動回路123を介してアクチュエータ115を駆動することで、対物レンズ116が光ディスク100の記録トラックの中心をトラッキングするようにできる。
【0019】
このほかアクチュエータ駆動回路123にはチルト駆動信号生成回路135からのチルト駆動信号TLDも供給されている。これは対物レンズ116の光ディスク100に対する傾きを補正するものであり、光ディスク100に若干の取付け状態の違いがあっても、対物レンズ116が正しく対向するように制御している。
【0020】
前記したフォーカスとトラッキングは当然ながら、光ディスク100が記録再生装置の記録再生動作中において制御する必要がある。しかし、これまでチルトについては使用する光ディスクに対してプリセット調整をするのみか、対物レンズ116の径方向位置により光ディスクの傾きが異なるため、径位置によって補正量を変えるのが通常であった。
【0021】
次に、球面収差補正駆動信号生成回路132で生成された球面収差補正駆動信号は、球面収差補正素子駆動回路122を介して球面収差補正素子113に与えられ、これを挿入された光ディスクに対して良好な記録再生性能が得られるよう球面収差を補正するように駆動する。
【0022】
球面収差やチルトの補正については、その温度特性の補正も含め使用するレンズによって方法が異なることが多い。たとえば対物レンズ116にガラスレンズを使用する場合には温度特性は小さいために、球面収差補正素子113における補正をプリセット調整するにとどめる場合が多い。プラスチックレンズを使用する場合は、一般にこれよりも温度特性が大きいため、温度特性補正が必要な場合が多い。
【0023】
次に図1の一実施例におけるさらなる特徴について述べる。
球面収差の温度特性の補正は、温度センサ117で測定した光ピックアップ110の内部温度を契機として用いても行える。しかし、この温度センサ117は必ずしも対物レンズ116の近くに設けられるとは限らず、また対物レンズ116の正確な温度を知るためにこれに接した位置に設けたのでは、アクチュエータ115の負荷となって望ましくない。
【0024】
本実施例においては、さきのフォーカス誤差信号FESとトラッキング誤差信号TES、ないしフォーカス駆動信号FODとトラッキング駆動信号TRDの変動量から対物レンズの正確な温度を知り、球面収差補正を行うことを特徴としている。たとえば、FESとTESが信号変動量計測回路131に与えられ、計測された変動量に応じた信号が球面収差補正駆動信号生成回路132に供給されても良く、またFESとTESの代わりに、FODとTRDなどシステム制御回路130内で生成される信号が信号変動量計測回路131に与えられても同様に機能させることができる。
【0025】
これにより、対物レンズ116の球面収差の温度特性が従来よりも高い精度で補正され、たとえば記録媒体にBDを用いる記録再生装置の対物レンズにも、プラスチックレンズを使用できるようにしている。もちろんBDを用いる装置に対象を限定するものではなく、DVDやCD、今後一般化すると思われる複数の記録層を有する多層型ディスクでも有効である。ガラスレンズを用いる装置に適用しても良い。
【0026】
次に、この球面収差の温度特性の補正方法につき、図2から図4を用いて説明する。
図2はアクチュエータ115を駆動する際の駆動電力と、対物レンズ116の温度上昇量の関係を示す特性図の一例である。図2から明らかなように、対物レンズの温度上昇量(図の縦軸)は、アクチュエータ駆動回路123から出力される駆動電力(図の横軸)に対して明確な相関が認められる。主にはアクチュエータ駆動による電力消費により対物レンズの温度上昇が起こることがわかる。すると対物レンズ116そのものに温度センサを設けなくとも、この駆動電力を測定すれば実質的に温度上昇を計測できることになる。しかし電圧や電流と異なり、電力を直接測定する構成要素を付加することはコストの関係で望ましくない。
【0027】
図3はアクチュエータ115の駆動信号変動量と、アクチュエータ115の駆動電力の関係を示す特性図の一例である。前者(図の横軸)は図1の信号変動量計測回路131で得られるものであって、FESとTESないしFODとTRDの変動振幅を示すものであり、反射光に含まれるノイズ、光ディスクの偏芯や面振れをその要因に含んでいる。後者(図の縦軸)は図2の横軸と同じものである。図中のディスクA〜Dで示したようなディスクの種類によって、アクチュエータ駆動電力は異なる。たとえばRAM型のディスクはR型のディスクよりも駆動電力が大きく、双方の面でフォーマットの異なるような両面ディスクにおいても大きくなる傾向がある。また同じ種類であっても個々のディスクごとにある程度のバラツキがある。図3から明らかなように、アクチュエータ駆動電力はその駆動信号変動量に対して、明確な相関が認められる。映像や音声などのコンテンツ情報を記録再生した信号とは異なり、FESやTESに含まれるノイズは、主信号であるFESやTESに近い振幅レベルを持っている。このためアクチュエータ駆動電力はノイズ、光ディスクの偏芯や面振れの大きさに支配され、前記の相関がとれている。
【0028】
図4はフォーカス誤差信号FESとフォーカス駆動信号FODの時間変化の一例を示す波形図である。なお図示していないが、トラッキング誤差信号TESとトラッキング駆動信号TRDについても、類似の波形図が得られる。図3において最も大きい駆動電力を要するディスクAは図4(a)に、次に駆動電力が大きいディスクBは図4(b)に示すようなFESとFODの波形となっている。いずれも短い周期の変動は主にノイズ成分である。図4(a)では図4(b)よりもノイズの振幅が大きく、当然ながら前者の方がアクチュエータ115を駆動するための電力が大きい。なお、FESとFODの波形は類似しているが、前記したようにFODはFESから主に制御周波数帯域の成分がフィルタリングされ、さらに電力増幅されている。
【0029】
図2と図3より、対物レンズ116の温度上昇量(図2の縦軸)はアクチュエータ駆動信号の信号変動量(図3の横軸)との間には明確な関係があることが分かる。したがい、FES、TESないしFOD、TRDの信号変動量から対物レンズの温度上昇を知ることができ、球面収差などの温度特性を補正することができる。ここで用いるのは信号変動量であり、図1の場合は信号変動量計測回路131でFES、TES、FOD、TRDなどの電圧ないし電流変動量を計測すれば良いので、さきに述べたような電力測定をする構成要素は不要となる。なお、電圧か電流のいずれを計測するかは回路設計の都合次第でどちらでも良く、ともに本発明の範疇にある。
【0030】
なお、ここでアクチュエータ駆動信号の信号変動量から求められる温度上昇量とは、温度センサ117で測定した光ピックアップ110の内部温度に対する温度上昇量であり、これを前記内部温度に加算することで、対物レンズ116そのものの温度を求めることができる。
【0031】
図1はこのうち、信号変動量計測回路131がFES、TES、FOD、TRDのうち少なくも一つを用いて、その信号変動量を計測する場合を示している。この信号変動量を対物レンズ116の温度上昇量を示すものとして球面収差補正駆動信号生成回路132に与え、対物レンズ116の球面収差の温度特性を高い精度で補正するようにしている。
【0032】
このようにして温度特性の補正を従来よりも高い精度で行うことにより、たとえばBDを記録媒体として使用する場合においても、対物レンズにプラスチックレンズを使用することができる。
【0033】
さらに図1においては、さきの信号変動量計測回路131での計測結果が球面収差補正素子駆動信号生成回路132だけでなく、フォーカス駆動信号生成回路134、チルト駆動信号生成回路135、レーザ光源駆動信号生成回路137にも供給することができる。この場合、対物レンズ116そのものの温度を知って温度特性を補正する方法は、球面収差の補正のみならず、フォーカス、チルトで発生する温度特性の補正にも適用できる。フォーカスに関しては対物レンズ116の形状が温度変化し、また材料の屈折率に温度特性がある場合などに温度特性の補正を行うことが有効である。チルトに関しても光ディスク100や対物レンズ116の角度状態で生じるコマ収差の温度特性が大きい場合には、本実施例でこれを補正することができる。また対物レンズ116をはじめとする光学系構成要素の光透過率の温度特性に依存せずに一定の光量を得るよう、レーザ光源111の光量を制御することもできる。このようにして、本発明をさらに多種の事項の温度特性補正に幅広く適用することができる。
【0034】
なお、温度特性の補正に用いる駆動信号を生成する構成要素について、図1では132、134、135、137の回路で示したが、これは本発明の限定条件ではない。たとえば信号変動量計測回路131での計測結果に基づき、光ピックアップ110の構成要素をどのように変化させれば温度特性を補正できるのかを予め学習して学習テーブルを準備し、これを記録再生装置に搭載するファームウェアに反映すれば、この学習テーブルを用いた温度特性補正をすることができる。この場合も本発明の範疇にある。
【0035】
また、信号変動量計測回路131の計測結果を用いた温度特性補正を、時間的に連続して行うことは必ずしも必要としない。後に図5でも説明するが、前回温度特性補正を行った後、温度が所定の値以上に変化した際に、改めて温度特性補正を行うようにして良い。この場合は、たとえば信号変動量計測回路131の出力に、ホールド回路を設けるなどすると良い。
【0036】
次に図5を用いて動作フローを説明する。図5は本発明の一実施例を示す動作フロー図である。ここでは図1で説明したうちで、球面収差、フォーカスオフセット、チルト、レーザパワーの温度特性を補正する場合を述べるが、そのうちいくつか、たとえば球面収差のみを補正する場合も本実施例の範疇にある。
まずステップS61において、たとえば光ディスク100が記録再生装置に装着された際に、球面収差、フォーカスオフセット、チルト、レーザパワーの調整が行われ、最初の温度特性の補正を終了させる。
【0037】
ステップS62では、この時信号変動量計測回路131で計測した信号変動量から対物レンズの温度上昇量を求め、これをさきの温度センサ117で測定された内部温度に加算して、対物レンズそのものの温度T0を求める。
【0038】
次いでステップS63では光ディスク100に対する記録再生の動作に伴う処理を開始する。
【0039】
所定の時間後にステップ64では、既に記録再生動作を停止しこれに伴う処理が終了しているかを判定する。既に終了している場合には(図中でYes)、温度特性を補正するための動作を改めて行うことなく動作フローを終了する。
【0040】
いまだ終了していない場合には(図中でNo)、ステップS65でその時点の対物レンズそのものの温度T1を、信号変動量計測回路131で計測した信号変動量から求めた対物レンズ116の温度上昇量と、温度センサ117で測定した内部温度とを加算して求める。
【0041】
次いでステップS66でさきの温度T0と所定時間後の温度T1との差の絶対値が、所定の温度差Tnよりも大きいか否かを判定する。所定の温度差Tnとは、改めて温度特性の補正を行う必要のある温度差をもって定めると良い。
【0042】
ステップS66での判定の結果、T0とT1の差の絶対値がTnよりも小さい場合には(図中のYes)、温度特性の再補正をする必要がないので、ステップS64に戻り同様の動作を繰返す。
【0043】
ステップS66での判定の結果、T0とT1の差の絶対値がTnよりも大きい場合には(図中のNo)、ここで温度特性の再補正をする必要があるので、ステップS67で記録再生処理を中断し、ステップS68で対物レンズの温度がT1である時に適するよう球面収差、フォーカスオフセット、チルト、レーザパワーなどの再補正を行う。
【0044】
次いでステップS62に戻り改めてその時点の温度T0を測定し、以下同様の動作を繰返す。
【0045】
なおステップS67で記録再生処理を中断し、ステップS63で再度処理を開始するとしたが、前記の再補正に要する時間に見合った容量のバッファメモリに情報信号を蓄えることで、記録再生処理を中断させることなく、再補正を完了させることもできる。
【0046】
以上の一実施例において、温度T0とT1の差の絶対値を所定の温度差Tnと比較しているので、動作開始後に対物レンズ116の温度が上昇した時だけでなく、下降した時にも再補正をかけることができる。
【0047】
また温度差Tnは一つの値であることに限定しない。たとえば球面収差とチルトで互いに異なる値としたり、温度の上昇と下降で別の値としたり、全ての事項で別な値にすることも可能であり、いずれも本発明の範疇にある。このようにすれば、特に温度特性が問題になる事項に対して適切に再補正をかけることができる。
【0048】
ステップS63からステップS64に入るまで所定の時間をおく場合を説明したが、これも限定条件ではなく、時間をおくことなく常にステップS64からステップS68の動作を行っても良い。このようにすればステップS66で所定の温度差Tnを越えた際に、直ちに再補正をかけることができる。時間契機に限らず、対物レンズを半径方向に動かすシーク動作や、フォーカスしている記録層を移動するフォーカスジャンプ動作を行う際に温度確認する方法などもある。
【0049】
また所定の温度差Tnを小さい値とすれば、温度差を発生後直ちに再補正をかけることができる。
【0050】
そのほか動作に変更を加えた変形例も考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【0051】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明はここに記載された光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法における実施例に限定されるものではなく、他の光ディスク記録再生装置および光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法にも広く適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例を示すシステムブロック図である。
【図2】アクチュエータ駆動電力と対物レンズ温度上昇量の関係の一例を示す特性図である。
【図3】アクチュエータ駆動信号の変動量と駆動電力の関係の一例を示す特性図である。
【図4】フォーカス誤差信号FESとフォーカス駆動信号FODの時間変化の一例を示す波形図である。
【図5】本発明の一実施例を示す動作フロー図である。
【符号の説明】
【0053】
100:光ディスク、110:光ピックアップ、111:レーザ光源、113:球面収差補正素子、115:アクチュエータ、116:対物レンズ、117:温度センサ、118:光検出器、121:信号生成回路、122:球面収差補正素子駆動回路、123:アクチュエータ駆動回路、125:レーザ光源駆動回路、130:システム制御回路、131:信号変動量計測回路、132:球面収差補正素子駆動信号生成回路、133:トラッキング駆動信号生成回路、134:フォーカス駆動信号生成回路、135:チルト駆動信号生成回路、137:レーザ光源駆動信号生成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生するレーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光を光ディスクに集光する対物レンズと、
前記対物レンズを駆動するアクチュエータと、
球面収差を補正する球面収差補正素子と、
前記アクチュエータと前記球面収差補正素子に駆動電力を送るドライバと、
前記ドライバを制御する制御回路とを有し、
前記制御回路は、前記制御回路から前記ドライバへの信号変動量が所定値以上のときに前記球面収差補正素子を動かすよう制御する
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置であって、
前記レーザ光源が収容される光ピックアップと、
前記光ピックアップ内に収容される温度センサとを有し、
前記制御回路は、前記制御回路から前記ドライバへの信号変動量と前記温度センサにより測定された温度変化量とが所定値以上のときに前記球面収差補正素子を動かすよう制御することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
光ディスクを記録媒体とし、前記記録媒体に信号を記録再生する光ピックアップを有する光ディスク記録再生装置であって、
前記光ピックアップは、前記記録再生を行うためのレーザ光を発生するレーザ光源と、
該レーザ光源からのレーザ光を前記記録媒体に照射し前記記録媒体からの反射光を集光するための対物レンズと、
該対物レンズを搭載し少なくも前記対物レンズのフォーカス調整と、前記記録媒体の記録トラックに対するトラッキング調整と、前記記録媒体に対向する際の傾きを調整するためのチルト調整とを行うアクチュエータと、
前記対物レンズの球面収差を補正するための球面収差補正素子と、
前記対物レンズの集光したレーザ光を検出して電気信号に変換する光検出器と、
前記光ピックアップの内部温度を検出する温度センサとを有し、
前記光検出器から出力された電気信号を演算して少なくもフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号を生成する信号生成回路と、
該信号生成回路で生成されたフォーカス誤差信号をもとに前記アクチュエータのフォーカス調整のためのフォーカス駆動信号を生成するフォーカス駆動信号生成回路と、
前記信号生成回路で生成されたトラッキング誤差信号をもとに前記アクチュエータのトラッキング調整のためのトラッキング駆動信号を生成するトラッキング駆動信号生成回路と、
前記フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、フォーカス駆動信号、トラッキング駆動信号のうちの少なくも一つの信号変動量を計測する信号変動量計測回路と、
該信号変動量計測回路で計測された信号変動量から判断してこれが所定値よりも大きい場合に球面収差補正駆動信号を生成する球面収差補正駆動信号生成回路と、
該球面収差補正駆動信号生成回路からの球面収差補正駆動信号が入力され前記球面収差補正素子を駆動する球面収差補正素子駆動回路と
を有したことを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスク記録再生装置であって、前記信号変動量計測回路は前記フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号、フォーカス駆動信号、トラッキング誤差信号のうちの少なくも一つの電圧変動量ないし電流変動量を計測することにより、前記信号変動量を得ることを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項5】
請求項3に記載の光ディスク記録再生装置であって、前記信号変動量計測回路で計測された信号変動量をもとに、前記温度センサで検出された内部温度に対する前記対物レンズの温度上昇量を計測し、該温度上昇量と前記内部温度との和の温度変化が所定値より大きい場合に、前記球面収差補正駆動信号生成回路は前記球面収差補正駆動信号を生成することを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項6】
請求項3に記載の光ディスク記録再生装置であって、前記フォーカス駆動信号生成回路からのフォーカス駆動信号が入力され前記アクチュエータを駆動して前記対物レンズのフォーカス調整を行うアクチュエータ駆動回路とを有したことを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項7】
請求項3に記載の光ディスク記録再生装置であって、前記信号変動量計測回路で計測された信号変動量をもとにチルト駆動信号を生成するチルト駆動信号生成回路と、該チルト駆動信号生成回路からのチルト駆動信号が入力され前記アクチュエータを駆動して前記対物レンズのチルト調整を行うアクチュエータ駆動回路とを有したことを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項8】
請求項3に記載の光ディスク記録再生装置であって、前記信号変動量計測回路で計測された信号変動量をもとにレーザ光源駆動信号を生成するレーザ光源駆動信号生成回路と、該レーザ光源駆動信号生成回路からのレーザ光源駆動信号が入力され前記レーザ光源を駆動して光量調整を行うレーザ光源駆動回路とを有したことを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項9】
光ディスクを記録媒体とし、前記記録媒体に信号を記録再生する光ピックアップを有する光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法であって、
前記光ピックアップの内部温度に基づき前記光ピックアップの温度特性を補正する初期補正ステップと、
前記光ピックアップの出力から少なくもフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号を生成し、該フォーカス誤差信号もしくは該トラッキング誤差信号をもとにシステム制御回路内で生成した信号の変動量に基づき計測した前記光ピックアップに搭載されている対物レンズの温度上昇量と前記光ピックアップの内部温度との和の温度を求める第1の温度測定ステップと、
前記光ピックアップを用いて記録再生動作を行う記録再生ステップと、該記録再生ステップが記録再生動作を開始した後に、前記光ピックアップの出力から少なくもフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号を生成し、該フォーカス誤差信号もしくは該トラッキング誤差信号をもとにシステム制御回路内で生成した信号の変動量に基づき計測した前記光ピックアップに搭載されている対物レンズの温度上昇量と前記光ピックアップの内部温度との和の温度を求める第2の温度測定ステップと、
前記第1の温度測定ステップで求めた温度と、前記第2の温度測定ステップ温度計測ステップで求めた温度との差の絶対値が所定値よりも大きい場合には、前記第2の温度計測ステップで求めた温度に基づき前記光ピックアップの温度変化によって生じる収差を再補正する再補正ステップと
を有し、電気信号の変動量をもとに温度特性を補正することを特徴とする光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法。
【請求項10】
請求項9に記載の光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法であって、前記光ピックアップの温度上昇量を計測する信号変動量は、フォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号から生成され、光ピックアップのアクチュエータを駆動する信号の基となるフォーカス駆動信号とトラッキング駆動信号のうち少なくもいずれか一方の信号変動量であることを特徴とする光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法。
【請求項11】
請求項9に記載の光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法であって、温度変化によって生じる収差を再補正する再補正ステップにおいて、温度変化の条件によって必要な補正量をあらかじめメモリに記憶しておくことを特徴とする光ディスク記録再生装置の光ピックアップの温度特性補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−79945(P2010−79945A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243872(P2008−243872)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】